(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047165
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】エアフィルタ用塵埃捕捉剤、ならびにそれを用いたエアフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/00 20060101AFI20230329BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B01D39/00 C
B01D39/00 B
A61L9/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156116
(22)【出願日】2021-09-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】505427573
【氏名又は名称】井上 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩義
【テーマコード(参考)】
4C180
4D019
【Fターム(参考)】
4C180AA16
4C180AA17
4C180CC16
4C180DD09
4D019AA01
4D019BC09
4D019CA02
4D019CB06
(57)【要約】
【課題】 HEPAフィルタなどのエアフィルタの作製にあたり、ウイルス、アレルゲンなどの空気中を浮遊する塵埃を効果的に捕捉できかつ弱毒化できる、エアフィルタ用塵埃捕捉剤、ならびにそれを用いたエアフィルタを提供すること。
【解決手段】 本発明のエアフィルタ用塵埃捕捉剤は、界面活性剤および水を含有する。本発明によれば、様々な疾患の原因となり得る、空気中に浮遊するウイルスおよびアレルゲンなどの物質を効率良く吸着し、かつ弱毒化できる。これにより、屋内の空気環境をより清浄なものにすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤および水を含有する、エアフィルタ用塵埃捕捉剤。
【請求項2】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載のエアフィルタ用塵埃捕捉剤。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、オクチルフェノールエトキシレートおよびヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載のエアフィルタ用塵埃捕捉剤。
【請求項4】
フィルタ基材と、該フィルタ基材に担持された請求項1から3のいずれかに記載のエアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体とを備える、エアフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ基材がHEPAフィルタ基材である、請求項4に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
エアフィルタの製造方法であって、
フィルタ基材に請求項1から3のいずれかに記載のエアフィルタ用塵埃捕捉剤を付与する工程、および
該フィルタ基材に付与された該エアフィルタ用塵埃捕捉剤を乾燥させる工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ用塵埃捕捉剤、ならびにそれを用いたエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
空気環境と疾患の多様な関係が探求されている。我が国の空気環境は、1968年の大気汚染防止法の制定につながった硫黄酸化物(SOx)などの産業排出型汚染(公害と呼ばれた)から車両や私たちの生活から排出されるより広範な化学物質による汚染を対象として対策が取られて来た。
【0003】
より近年には地球環境への高い関心から二酸化炭素を含めた国際的な空気汚染に対する対策が求められている。そのような中で、日本人は1日の3分の2以上を自宅で過ごしており(NHK調査;2016年)、家屋の空気環境を清浄に保つことが重要となる。
【0004】
こうした家屋の空気清浄には、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で、例えばHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)と呼ばれる高精度のエアフィルタが使用される。HEPAフィルタは、空気清浄機やクリーンルームのメインフィルタとして用いられる。
【0005】
2019年より世界中で問題となっているコロナ禍において、HEPAフィルタは新型コロナウイルスを除去するフィルタとして欧州を中心に認証されており、医療従事者のマスクなどにも実装されている。
【0006】
さらに、HEPAフィルタによる家屋の空気清浄は、スギ花粉などに起因するアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の予防や症状の緩和にも重要な役割を果たすことが考えられている。
【0007】
しかし、こうしたHEPAフィルタには、近年、各種ウイルスやアレルゲンの吸着や弱毒化に関する性能向上が課題となっている。特に家屋内に浮遊する塵埃(例えば、ウイルスおよびアレルゲン)を効果的に捕捉し、かつ人体にとって一層安全な空気環境を提供することが所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、HEPAフィルタなどのエアフィルタの作製にあたり、ウイルス、アレルゲンなどの空気中を浮遊する塵埃を効果的に捕捉できかつ弱毒化できる、エアフィルタ用塵埃捕捉剤、ならびにそれを用いたエアフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、界面活性剤および水を含有する、エアフィルタ用塵埃捕捉剤である。
【0010】
1つの実施形態では、上記界面活性剤は非イオン性界面活性剤を含む。
【0011】
さらなる実施形態では、上記非イオン性界面活性剤は、オクチルフェノールエトキシレートおよびヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0012】
本発明はまた、フィルタ基材と、該フィルタ基材に担持された上記エアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体とを備える、エアフィルタである。
【0013】
1つの実施形態では、上記フィルタ基材はHEPAフィルタ基材である。
【0014】
本発明はまた、エアフィルタの製造方法であって、
フィルタ基材に上記エアフィルタ用塵埃捕捉剤を付与する工程、および
該フィルタ基材に付与された該エアフィルタ用塵埃捕捉剤を乾燥させる工程、
を含む、方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、様々な疾患の原因となり得る、空気中に浮遊するウイルスおよびアレルゲンなどの物質を効率良く吸着し、かつ弱毒化できる。これにより、屋内の空気環境をより清浄なものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(エアフィルタ用塵埃捕捉剤)
本発明のエアフィルタ用塵埃捕捉剤は、界面活性剤および溶媒を含有する。
【0017】
ここで、本明細書中に用いられる用語「塵埃」とは、例えば0.01μm~100μの平均粒子径を有する物質または物体であり、例えば空気中に浮遊するウイルス;バクテリア、カビ、花粉等のアレルゲン;タバコの煙;が包含される。本明細書中に用いられる用語「塵埃捕捉剤」は、上記塵埃を引き寄せてその場に留め、その分散を停止または防止することができる組成物を指していう。
【0018】
界面活性剤は、例えば生化学一般において使用されるものであり、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸ナトリウム塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、および第4級アンモニウム塩ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。陽イオン性界面活性剤の具体的な例としては、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、および脂肪酸塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。陰イオン性界面活性剤の具体的な例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、脂肪酸カリウム(ラウリン酸カリウム)、脂肪酸ナトリウム(ラウリン酸ナトリウム)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキリエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルジエチレントリアミノ酢酸、ジアルキルジエチレントリアミノ酢酸、およびアルキルアミンオキシド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。両性界面活性剤の具体的な例としては、塩化アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酸ベタイン、2-アルキル-1-(2ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム-1-アセテート、アルキルジアミノエチルグリシン、ジアルキルジアミノエチルグリシン、およびアルキルジメチルアミンオキシド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、および脂肪酸アルカノールアミド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、オクチルフェノールエトキシレート、ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル、アルキルグルコシド、アシルグリセリン、ソルビタンモノアルカノエート、ソルビタンジアルカノエート、ソルビタントリアルカノエート、アシルスクロース、アルキリポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、アシルポリエチレングリコール、アシルポリオキシエチレンソルビタン、およびアルカノール脂肪酸アミド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
本発明においては、花粉抗原や種々のウイルスに対する弱毒化に効果的であるという理由から、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含むことが好ましく、オクチルフェノールエトキシレートおよび/またはヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテルを含むことがより好ましい。
【0024】
本発明のエアフィルタ用塵埃捕捉剤に含まれる界面活性剤の含有量は、全体質量を基準として、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.08質量%~3質量%である。エアフィルタ用塵埃捕捉剤に含まれる界面活性剤の含有量が0.05質量%を下回ると、後述のエアフィルタに適用された際にウイルスおよびアレルゲンなどの物質を効率良く吸着し、かつ弱毒化することが困難となる場合がある。エアフィルタ用塵埃捕捉剤に含まれる界面活性剤の含有量が5質量%を上回ると、当該エアフィルタに適用された際のウイルスおよびアレルゲンなどの物質の吸着性能に変化がなく、むしろエアフィルタの強度、組織性などを低下させる場合がある。
【0025】
本発明において、溶媒は、例えば、水(例えば、純水、イオン交換水、RO水、蒸留水、および水道水、ならびにそれらの組み合わせ)、エタノール、メタノール、その他の有機溶媒(例えばアルカン類(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなど)、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、酢酸エステル類(酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシルなど)、およびケトン類(ジエチルケトン、チオケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど))、イオン性液体(例えば、有機窒素(アンモニウム)系液体、有機リン(ホスホニウム)系液体、および有機硫黄(スルホニウム)系液体など)、水酸化ナトリウム水溶液、および過酸化水素水、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。溶媒は、上記界面活性剤を溶解して均一な溶液を形成して、エアフィルタの製造の際にフィルタ基材に付与した際に界面活性剤とフィルタ基材との接触性を向上できる点で有用である。
【0026】
本発明はまた、上記界面活性剤および溶媒以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、抗菌剤、抗ウイルス剤、消臭剤、分散剤、アルカリ剤、水軟化剤、および安定化剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明のエアフィルタ用塵埃捕捉剤における上記界面活性剤の作用を損なわない程度に当業者によって適宜選択され得る。
【0027】
本発明のエアフィルタ用塵埃捕捉剤は、屋内の空気浮遊物質として存在し得るアレルゲンやウイルスを吸着かつ弱毒化するための材料として、後述するようなエアフィルタの製造のために使用される。
【0028】
(エアフィルタ)
本発明のエアフィルタは、フィルタ基材と、当該フィルタ基材に担持された上記エアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体とを備える。
【0029】
フィルタ基材は、例えば0.1μm~500μmの平均孔径を有する、メッシュ状、スポンジ状、および/またはマルチフィラメント様の材料で構成されておる。フィルタエレメントまたは単にエレメントとも呼ばれることがある。フィルタ基材を構成する材料は、ポリエルテル繊維、アクリル繊維、モダクリル繊維などの化学繊維、ポリウレタンフォームなどの樹脂、ステンレススチール、焼結金属などが挙げられる。フィルタ基材は、例えば、プリーツ型またはフラット型などの任意の形態を有する。
【0030】
フィルタ基材はまた、HEPAフィルタ、プレフィルタ、中高性能フィルタ、ULPAフィルタのいずれのフィルタ用の基材であってもよい。屋内空調用のフィルタ基材として汎用されており、各種疾患、アレルギーの原因となり得るウイルス、バクテリア、カビ、花粉等の所定の塵埃の捕捉に適しているとの理由から、フィルタ基材は、HEPAフィルタ用の基材(HEPAフィルタ基材)であることが好ましい。
【0031】
本発明のエアフィルタを構成する乾燥体は、上記エアフィルタ用塵埃捕捉剤が乾燥して得られたものであり、それ自体の含水量は特に限定されない。例えば、この乾燥体は、所定の湿度(例えば、0%~100%)を有する空間内に配置または存在するものであり、当該湿度に伴って吸湿したものであってもよい。
【0032】
本発明において、エアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体は、上記フィルタ基材に担持されている。ここで、本明細書中に用いられる用語「エアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体のフィルタ基材への担持」とは、例えば、フィルタ基材の表面にエアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥体が均一または不均一に分散して吸着、コーティング、または結合されていること、フィルタ基材の内部にエアフィルタ用塵埃捕捉剤の浸潤していること、およびそれらの組み合わせのいずれをも包含していう。
【0033】
本発明のエアフィルタは例えば以下のようにして製造される。
【0034】
まず、フィルタ基材に上記エアフィルタ用塵埃捕捉剤が付与される。
【0035】
フィルタ基材へのエアフィルタ用塵埃捕捉剤の付与は、例えば、塵埃捕捉剤を含む浴への浸漬、フィルタ基材への塵埃捕捉剤の噴霧または塗布などの方法によって行われる。このような浸漬、噴霧または塗布において使用される手段は当業者によって適宜選択され得る。
【0036】
本発明においては、フィルタ基材の全面に対して、均一かつ簡便にエアフィルタ用塵埃捕捉剤を付与することができるという理由から、フィルタ基材を、エアフィルタ用塵埃捕捉剤を含む浴内に浸漬して当該付与を行うことが好ましい。なお、この浸漬にあたり採用される浴温および浸漬時間は特に限定されず、当業者によって適宜条件が選択され得る。
【0037】
その後、フィルタ基材に付与されたエアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥が行われる。
【0038】
乾燥に要する温度および時間もまた特に限定されず当業者によって適切な条件が選択され得る。
【0039】
このようにして、フィルタ基材上にエアフィルタ用塵埃捕捉剤の乾燥が担持されたエアフィルタを製造できる。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
(実施例1:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(1))
界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレートを使用し、これに蒸留水を添加して0.5質量%の濃度を有する塵埃捕捉剤溶液(EJ1)を調製した。
【0042】
次いで、この塵埃捕捉剤溶液(EJ1)に、3cm×3cmに切り出したHEPAフィルタ(パナソニックホームズ株式会社製)を所定時間浸漬し、取り出した後自然乾燥して、エアフィルタサンプル(EA1)を作製した。
【0043】
スギ花粉を生理食塩水に添加して3質量%のスギ花粉試験液を作製し、当該試験液60μLを上記で得られたエアフィルタサンプル(EA1)上に滴下し、自然乾燥させた後、湿度40%および温度25℃で一定に保持された恒温恒湿層(SUNPLATEC社製STC-V)内で24時間インキュベートした。次いで、恒温恒湿層からサンプルを取り出して純水中に浸漬して2時間転倒混和することにより含有成分を溶解し、得られた溶液中に存在する花粉抗原(スギ花粉抗原CryJ1)量(サンプル中の花粉抗原量)(μg)を、CryJ1測定ELISAキット(株式会社特殊免疫研究所製)を用いて測定した。
【0044】
一方、上記エアフィルタサンプル(EA1)に代えて、3cm×3cmに切り出した分析用濾紙(東洋濾紙株式会社製アドバンテックNo.1)をコントロールとして用いたこと以外は上記と同様にしてCryJ1測定ELISAキットから測定された花粉抗原量(コントロール中の花粉抗原量)(μg)を対比し、以下の式:
【0045】
【0046】
に基づいて花粉抗原(スギ花粉抗原CryJ1)の生存率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2~7:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(1))
オクチルフェノールエトキシレートの代わりに、表1に示す界面活性剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして塵埃捕捉剤溶液(EJ2)~(EJ7)を調製し、かつ実施例1と同様にしてエアフィルタサンプル(EA2)~(EA7)を作製した。次いで、これらのエアフィルタサンプル(EA2)~(EA7)を用いたこと以外は実施例1と同様にして当該サンプル(EA2)~(EA7)を用いた際の花粉抗原量をCryJ1測定ELISAキットで測定し、その生存率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
表1に示すように、実施例1~7で作製されたエアフィルタサンプル(EA1)~(EA7)はいずれも、コントールと比較して花粉抗原の存在率を低下させており、スギ花粉を効果的に捕捉できかつ弱毒化できることがわかる。特に界面活性剤として非イオン性界面活性剤を含む塵埃捕捉剤溶液(EJ1)、(EJ2)または(EJ7)をエアフィルタサンプル(EA1)、(EA2)および(EA7)の花粉抗原の存在率は低く、エアフィルタ用塵埃捕捉剤として非イオン性界面活性剤を含んでいる場合、スギ花粉の弱毒化を一層効果的に高めることができるとわかる。
【0050】
(実施例8:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(8))
界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレートを使用し、これに蒸留水を添加して0.1質量%の濃度を有する塵埃捕捉剤溶液(EJ8)を調製した。この塵埃捕捉剤溶液(EJ8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタサンプル(EA8)を作製し、さらに実施例1と同様にして当該サンプル(EA8)を用いた際の花粉抗原量をCryJ1測定ELISAキットで測定して、その生存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例9:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(98))
界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレートを使用し、これに蒸留水を添加して1.0質量%の濃度を有する塵埃捕捉剤溶液(EJ9)を調製した。この塵埃捕捉剤溶液(EJ9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタサンプル(EA9)を作製し、さらに実施例1と同様にして当該サンプル(EA9)を用いた際の花粉抗原量をCryJ1測定ELISAキットで測定して、その生存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例10:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(10))
界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレートの代わりにヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテルを使用し、これに蒸留水を添加して0.1質量%の濃度を有する塵埃捕捉剤溶液(EJ10)を調製した。この塵埃捕捉剤溶液(EJ10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタサンプル(EA10)を作製し、さらに実施例1と同様にして当該サンプル(EA10)を用いた際の花粉抗原量をCryJ1測定ELISAキットで測定して、その生存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0053】
(実施例11:エアフィルタ用塵埃捕捉剤およびエアフィルタの作製(11))
界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレートの代わりにヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテルを使用し、これに蒸留水を添加して1.0質量%の濃度を有する塵埃捕捉剤溶液(EJ10)を調製した。この塵埃捕捉剤溶液(EJ10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタサンプル(EA10)を作製し、さらに実施例1と同様にして当該サンプル(EA10)を用いた際の花粉抗原量をCryJ1測定ELISAキットで測定して、その生存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
表2に示すように、実施例8~11で作製されたエアフィルタサンプル(EA8)~(EA11)はいずれも、コントールと比較して花粉抗原の存在率を低下させており、界面活性剤の種類に関わらず、当該界面活性剤の含有量が高いほど、花粉抗原の存在率が低下して、スギ花粉の弱毒化をさらに一層高める傾向にあることがわかる(実施例9および11)。