(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047199
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】工具ホルダー
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156155
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】514004541
【氏名又は名称】株式会社リガー
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 敬一郎
【テーマコード(参考)】
3C012
【Fターム(参考)】
3C012BG01
(57)【要約】
【課題】不使用時の係止によって工具の落下等を防止しつつ、使用時における迅速な係止解除を実現し、作業者にとっての利便性を向上する。
【解決手段】工具ホルダー10の係止具20は、互いに直交する第1及び第2方向を包含する平面に沿う基部21と、基部21から突出する突出部22と、突出部22の反基部側に設けられた板部23と、を有し、板部23は、第1方向他方側の厚みが一方側よりも小さい変寸部23aを備え、工具ホルダー10の被係止具30は、互いに直交する第4及び第5方向を包含する平面に沿っており第4方向一方側から他方側に向かって幅が漸減する切欠き溝32が形成された平面部31と、切欠き溝32のうち第4方向一方側の領域32bを塞ぐように平面部31に弾性的に当接する板材37と、を有し、板材37は、平面部31への当接領域37aよりも第4方向他方側に平面部31から離間する傾斜部37bを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具に取り付けられる係止具と、
前記係止具が係止される被係止具と、
を有する工具ホルダーであって、
前記係止具は、
互いに直交する第1方向及び第2方向を包含する平面に沿う略平面状の基部と、
前記基部の前記第1方向の一方側の部位に設けられ、前記第1方向及び前記第2方向に対し直交する第3方向の一方側へ突出する突出部と、
前記突出部の反基部側に設けられた板部と、
前記基部の前記第1方向の他方側の部位に設けられ、前記工具が取り付けられる取付部と、
を有し、
前記板部は、
前記第1方向他方側の前記第3方向における厚み寸法が、前記第1方向一方側の前記第3方向における厚み寸法よりも小さくなるように構成された変寸部を備え、
前記被係止具は、
互いに直交する第4方向及び第5方向を包含する平面に沿う略平面状に構成され、前記第4方向の一方側から他方側に向かって前記第5方向における幅寸法が漸減する形状の切欠き溝が形成された平面部と、
前記第4方向及び前記第5方向に直交する第6方向における前記平面部の一方側でかつ前記第5方向の一方側及び他方側それぞれに設けられ、前記第4方向を長さ方向とし前記第5方向を幅方向とする長孔をそれぞれ有する2つの装着部と、
前記切欠き溝のうち前記第4方向他方側の端部に開口を残しつつ当該切欠き溝のうち前記開口よりも前記第4方向一方側の領域の少なくとも一部を塞ぐように、前記平面部の前記第6方向一方側の面に弾性的に当接する板材を含む、ばね機構と、
を有し、
前記板材は、
前記平面部に当接する当接領域よりも前記第4方向他方側に、当該第4方向他方側へ向かうにつれて前記平面部から離間する傾斜部を備える
ことを特徴とする工具ホルダー。
【請求項2】
請求項1記載の工具ホルダーにおいて、
前記ばね機構は、前記板材として、
前記第4方向一方側に固定端を備えかつ前記第4方向他方側に自由端を備えた板ばねを有する
ことを特徴とする工具ホルダー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の工具ホルダーにおいて、
前記板材は、
前記当接領域と前記傾斜部との間に、それらを接続する曲面部を備える
ことを特徴とする工具ホルダー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の工具ホルダーにおいて、
前記係止具の前記板部は、
前記変寸部と、
前記変寸部の第1方向一方側に連設され、前記第1方向の全域にわたって前記厚み寸法が均一な均厚部と、
を備えることを特徴とする工具ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を係止するための工具ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具を腰ベルトに係止するための工具ホルダーを設けて、工具の不使用時に工具をぶら下げるようにする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、工具を工具ホルダーにぶら下げる際、不用意に工具が落下しないように図られている。しかしながら、工具が比較的堅固に工具ホルダーに取り付けられる構造であるため、使用時に工具を工具ホルダーから迅速に取り外すことができず、作業者にとっての利便性が損なわれていた。すなわち、工具の落下防止と使用時の迅速な取り外しとの両立が困難であった。
【0005】
本発明の目的は、不使用時の係止によって工具の落下等を防止しつつ、使用時における迅速な係止解除を実現し、作業者にとっての利便性を向上することができる工具ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、工具に取り付けられる係止具と、前記係止具が係止される被係止具と、を有する工具ホルダーであって、前記係止具は、互いに直交する第1方向及び第2方向を包含する平面に沿う略平面状の基部と、前記基部の前記第1方向の一方側の部位に設けられ、前記第1方向及び前記第2方向に対し直交する第3方向の一方側へ突出する突出部と、前記突出部の反基部側に設けられた板部と、前記基部の前記第1方向の他方側の部位に設けられ、前記工具が取り付けられる取付部と、を有し、前記板部は、前記第1方向他方側の前記第3方向における厚み寸法が、前記第1方向一方側の前記第3方向における厚み寸法よりも小さくなるように構成された変寸部を備え、前記被係止具は、互いに直交する第4方向及び第5方向を包含する平面に沿う略平面状に構成され、前記第4方向の一方側から他方側に向かって前記第5方向における幅寸法が漸減する形状の切欠き溝が形成された平面部と、前記第4方向及び前記第5方向に直交する第6方向における前記平面部の一方側でかつ前記第5方向の一方側及び他方側それぞれに設けられ、前記第4方向を長さ方向とし前記第5方向を幅方向とする長孔をそれぞれ有する2つの装着部と、前記切欠き溝のうち前記第4方向他方側の端部に開口を残しつつ当該切欠き溝のうち前記開口よりも前記第4方向一方側の領域の少なくとも一部を塞ぐように、前記平面部の前記第6方向一方側の面に弾性的に当接する板材を含む、ばね機構と、を有し、前記板材は、前記平面部に当接する当接領域よりも前記第4方向他方側に、当該第4方向他方側へ向かうにつれて前記平面部から離間する傾斜部を備える、ことを特徴としている。
【0007】
本願発明の工具ホルダーは、上記のように、工具に取り付けられる係止具と、係止具が係止される被係止具と、を有している。被係止具は、例えば作業者の腰ベルトに装着されて用いられ、作業者は、係止具を被係止具に係止させることで、工具を使用しないときに腰ベルトからぶら下げた態様とすることができる。
【0008】
すなわち、係止具の基部の第1方向一方側には突出部が設けられ、その突出部のうち基部と反対側には、板部が設けられている。
【0009】
一方、被係止具の平面部には切欠き溝が形成されており、平面部の第6方向一方側の面にばね機構の板材が弾性的に当接するときには、板材は、切欠き溝のうち第4方向他方側の端部に開口を残しつつそれより一方側の領域の少なくとも一部を塞いでいる。作業者が工具を上記のようにぶら下げたい場合には、工具に取り付けられた係止具の上記板部を切欠き溝にあてがうようにする。これにより、板部が板材を第6方向の一方側へと押圧して変位させることで上記の塞いだ状態を解消し、板部は切欠き溝を超えて平面部よりも第6方向の一方側へと進入することができる。そしてその際、作業者が板部を第4方向の他方側へ向かって動かすことにより、板部の第6方向他方側に位置する突出部を、幅狭となっている切欠き溝の上記開口へと移動させることで、最終的に板部を開口の縁部に係合させることができる。
【0010】
このように突出部及び板部が開口付近まで移動することで、上述のように係止具の板部から押圧され一旦第6方向一方側に変位したばね機構の板材は、当該押圧から解放されて第6方向他方側へと戻り、前述のように切欠き溝の開口以外の領域の少なくとも一部を塞ぐ状態に復帰する。以上の結果、被係止具の平面部よりも第6方向一方側に係止具の板部を位置させた状態での、係止具と被係止具との係止状態が実現する。
【0011】
この係止状態で上記のような塞ぎ状態に復帰した板材において、当接領域が当接しているのに加え、その当接領域の第4方向他方側には傾斜部が備えられている。また、板材は、前述のように当接領域が当接した塞ぎ状態においても、切欠き溝のうちその当接領域よりも第4方向他方側に位置する開口は塞いでいない。傾斜部は、第4方向一方側から他方側へ向かうにつれて平面部から離間するような傾き形状で構成されており、言い換えれば、開口側へ向かうにしたがって平面部との間の隙間が拡大するような形状となっている。
【0012】
一方、係止具においては、上記係止状態では前述のように工具がぶら下がった状態となるため、上記取付部が位置する第1方向他方側を、被係止具の第4方向他方側に一致させた姿勢(倒立姿勢)となる。この結果、前述のように切欠き溝の開口付近で係合している板部は、第1方向他方側の厚み寸法が一方側の厚み寸法よりも小さくなるように構成される変寸部のうち、第1方向一方側に位置する厚み寸法の大きい側を上記傾斜部側へ向けた姿勢となる。そうすると、仮に、この姿勢、言い換えれば工具がぶら下がった状態と同様の姿勢にて板部が第4方向一方側に移動したとしても、上記のように開口付近に位置する板部側へ向かって拡大する隙間の形状と傾斜部側が厚肉化している変寸部の形状との間で、大きい側小さい側の相対位置関係が互いに整合しないため、板部は上記隙間へ円滑に入り込むことができない。これにより、板部が隙間に入り込み板材が第6方向一方側に変位することで板部及び突出部が切欠き溝の第6方向他方側へ離脱してしまうのを防止できるため、不用意に係止具と被係止具との係止が解除されて、作業者が誤って工具を落下させてしまうのを防止できる。
【0013】
これに対し、作業者が工具を使用するために係止具と被係止具との係止を解除したい場合は、前述のようにぶら下がった状態から工具の上下を反転させた逆姿勢(正立姿勢)とすればよい。この場合、上記取付部が位置する第1方向他方側が、被係止具の第4方向一方側に一致した姿勢となる。この結果、前述のように切欠き溝の開口付近で係合している板部は、第1方向他方側の厚み寸法が一方側の厚み寸法よりも小さくなる変寸部のうち、第1方向他方側に位置する厚み寸法の小さい側を上記傾斜部側へ向けた姿勢となる。そうすると、この姿勢、言い換えれば工具を正立させた状態に相当する上記逆姿勢にて板部を第4方向一方側に移動させれば、上記のように開口付近に位置する板部側へ向かって拡大する隙間の形状と傾斜部側が薄肉化している変寸部の形状で、大きい側小さい側の相対位置関係が互いに整合し、板部を上記隙間へと円滑に入り込ませることができる。これにより、隙間に入り込ませた板部が板材を第6方向一方側に変位させることで、板部及び突出部を切欠き溝よりも第6方向他方側へと離脱させて、係止具と被係止具との係止を解除することができる。
【0014】
以上のように、本願発明によれば、工具がぶら下がった状態では係止具と被係止具との係止状態が解除されず、工具を正立させた状態でのみ係止具と被係止具との係止状態を解除することができる。これにより、係止状態の解除による工具の落下等を防止しつつ、使用時における迅速な係止状態の解除を実現し、作業者にとっての利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不使用時の係止によって工具の落下等を防止しつつ、使用時における迅速な係止解除を実現し、作業者にとっての利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による工具ホルダーによって工具を上・下逆さまにしてぶら下げた状態(倒立姿勢)を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による工具ホルダーによってぶら下げられた状態の工具の上下を反転させた状態(正立姿勢)を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による工具ホルダーを構成する係止具が取り付けられた状態の工具を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による工具ホルダーを構成する係止具を示す図であり、(a)は第2方向他方側から見た図を示し、(b)は第3方向一方側から見た図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態による工具ホルダーを構成する被係止具を示す図であり、(a)は第5方向一方側から見た図を示し、(b)は第6方向他方側から見た図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による工具ホルダーを構成する係止具及び被係止具の係止状態を示す概念的な透視図であり、(a)は
図1をA方向から見た図を示し、(b)は
図2をA方向から見た図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態による工具ホルダーに工具をぶら下げて係止させる様子を説明する概念的な透視図であり、(a)板部が切欠き溝にあてがわれた状態を示し、(b)板部が板材を押圧して変位させた状態を示し、(c)板部が切欠き溝を超えて進入した状態を示し、(d)板部が切欠き溝の開口に係合した状態を示す。
【
図8】本発明の一実施形態による工具ホルダーによってぶら下げられた工具の係止状態を説明する概念的な透視図であり、(a)板部が傾斜部から離間した状態を示し、(b)板部が傾斜部の先端に当接した状態を示し、(c)傾斜部の先端に当接した板部が少し傾斜した状態を示し、(d)傾斜部に当接した板部が大きく傾斜した状態を示す。
【
図9】本発明の一実施形態による工具ホルダーから工具を係止解除させる様子を説明する概念的な透視図であり、(a)板部が傾斜部から離間し第6方向他方側に寄った状態を示し、(b)傾斜部から離間した板部が第6方向一方側に寄った状態を示し、(c)板部が傾斜部の先端に寄った状態を示し、(d)板部が傾斜部と平面部との隙間に入り込んだ状態を示す。
【
図10】本発明の変形例1による工具ホルダーを構成する被係止具を示す断面図(第5方向一方側から見た図)である。
【
図11】本発明の変形例2による工具ホルダーを構成する係止具を示す図(第2方向他方側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
<構成>
本実施形態による工具ホルダー10及び工具ホルダー10に係止される工具1を説明する図を、
図1~
図8に示す。
【0019】
工具1は、作業者がネジ回しやボルト締め等の作業を行うための機器であり、本実施形態においてバッテリ駆動式のインパクトドライバである。工具1は、略銃形状の本体2と、本体2のバレル部の先端に設けられておりドライバ等の先端工具(図示せず)が装着されるチャック3と、本体2のグリップ部に設けられており工具1の起動/停止操作を行うためのトリガー4と、本体2のグリップ部の基端に設けられておりバッテリユニット5が装着されるバッテリ装着部6と、を有している。また、本体2のグリップ部の基端側には、工具ホルダー10を構成する係止具20(後述)を取り付け可能な被取付部7が形成されている。被取付部7の詳細については後述する。なお、工具1は、インパクトドライバに限定されるものではなく、スクリュードライバ、ドライバドリル、グラインダ、及び、ハンマなどであってもよく、また、工具1の駆動源も、バッテリユニット5に限定されるものではなく、交流電源などの他の駆動源であってもよい。
【0020】
工具ホルダー10は、工具1を使用しないときに例えば作業者の腰ベルトからぶら下げた状態で係止するための保持具であり、工具1に取り付けられる係止具20と、係止具20が係止される被係止具30と、を有している。
【0021】
係止具20は、基部21と、突出部22と、板部23と、取付部24と、を有している。なお、以下の説明において、係止具20に関する方向は、
図4中に示される矢印の方向(第1~第3方向)に対応している。
【0022】
基部21は、互いに直交する第1方向及び第2方向を包含する平面に沿う略平面状の部分である。ここで、第1方向は、工具1の持ち上げ時(
図2、
図4、
図6(b)及び
図9参照)やぶら下げ時(
図1、
図3、
図4、
図6(a)、
図8及び
図9参照)の鉛直方向に対応し、第2方向は、工具1の持ち上げ時やぶら下げ時の水平方向に対応する。また、工具1の持ち上げ時の姿勢を正立姿勢とし、工具1のぶら下げ時の姿勢を倒立姿勢とする。基部21は、第1方向の長さ寸法が第2方向の長さ寸法よりも長い略長方形状をなしている。なお、基部21の形状は、略長方形状に限られるものではなく、第1方向及び第2方向を包含する平面に沿う略平面状であれば、他の形状であってもよい。
【0023】
突出部22は、基部21の第1方向の一方側の部位に設けられ、第1方向及び第2方向に対し直交する第3方向の一方側へ突出する部分である。ここで、第3方向は、作業者の腰ベルトに向かって遠近する方向(
図3、
図4(a)及び
図6~
図9の略水平方向)に対応する。また、第1方向の一方側は、工具1のぶら下げ時の上側(工具1の持ち上げ時の下側)に対応し、第3方向の一方側は、作業者の腰ベルトに近づく側に対応する。突出部22は、この例では、基部21から延びる略丸軸形状をなしている。
【0024】
板部23は、突出部22の反基部21側に設けられた部分である。板部23は、この例では、略円板形状をなしている。板部23の直径Dは、突出部22の直径よりも大きい。板部23は、第1方向他方側の第3方向における厚み寸法が、第1方向一方側の第3方向における厚み寸法よりも小さくなるように構成された変寸部23aを備えている。ここで、第1方向他方側は、第1方向一方側の反対側、すなわち、工具1のぶら下げ時の下側(工具1の持ち上げ時の上側)に対応する。変寸部23aは、第3方向における厚み寸法が第1方向一方側端から第1方向他方側端に向かうにつれて漸減する形状をなす部分であり、本実施形態において、板部23の第1方向一方側端から第1方向他方側端の全体にわたって形成されている。
【0025】
取付部24は、基部21の第1方向の他方側の部位に設けられ、工具1が取り付けられる部分である。取付部24は、工具1の被取付部7に取り付けられる。取付部24は、基部21の第1方向の他方側端から第3方向の他方側(作業者の腰ベルトから遠ざかる側)に向かって延びる爪部であり、被取付部7は、取付部24を挿入可能な溝部である。なお、取付部24及び被取付部7は、爪部及び溝部に限られるものではなく、互いに取り付け可能な構造を有していれば、他の構造であってもよい。
【0026】
被係止具30は、平面部31と、2つの壁部33と、基部34と、2つの装着部35と、ばね機構36と、を有している。なお、以下の説明において、被係止具30に関する方向は、
図5中に示される矢印の方向(第4~第6方向)に対応している。
【0027】
平面部31は、互いに直交する第4方向及び第5方向を包含する平面に沿う略平面状に構成された部分である。ここで、第4方向は、被係止具30が作業者の腰ベルトに装着された状態において鉛直方向からやや傾いた面に沿う方向(
図5(a)及び
図6~
図9参照)に対応し、第5方向は、被係止具30が作業者の腰ベルトに装着された状態における水平方向(
図1、
図2及び
図5(b)参照)に対応する。平面部31は、略長方形状をなしている。平面部31には、第4方向の一方側(被係止具30が作業者の腰ベルトに装着された状態における上側)から他方側(被係止具30が作業者の腰ベルトに装着された状態における下側)に向かって第5方向における幅寸法が漸減する形状の切欠き溝32が形成されている。切欠き溝32の第5方向における幅寸法Wは、第4方向の一方側端において係止具20の板部23の直径Dよりも大きく、この一方側端から第4方向の他方側の途中部分に向かって板部23の直径Dよりも大きいままで漸減し、この途中部分から板部23の直径Dよりも小さい、かつ、係止具20の突出部22の直径よりも大きいままで漸減している。これにより、係止具20は、切欠き溝32に引っ掛けられて被係止具30に係止可能になっている(
図1、
図2及び
図6~
図9参照)。なお、切欠き溝32の形状は、本実施形態の形状に限られるものではなく、第4方向の一方側から他方側に向かって第5方向における幅寸法が漸減しており係止具20を引っ掛けることが可能な形状であれば、他の形状であってもよい。
【0028】
壁部33は、第4方向及び第5方向に直交する第6方向に沿う略平面状に構成された部分である。ここで、第6方向は、被係止具30が作業者の腰ベルトに装着された状態において作業者の腰ベルトに向かって遠近する方向(
図5(a)及び
図6~
図9参照)に対応する。壁部33は、平面部31の第5方向の一方側端及び他方側端のそれぞれから第6方向の一方側(作業者の腰ベルトに近づく側)に向かって延びている。また、壁部33は、平面部31の第4方向一方側端よりも第4方向一方側にはみ出すように延びている。
【0029】
基部34は、2つの壁部33の第6方向一方側端間を繋ぐ第5方向に沿う略平面状の部分であり、平面部31よりも第6方向一方側に位置している。
【0030】
装着部35は、第4方向及び第5方向に直交する第6方向における平面部31の一方側でかつ第5方向の一方側及び他方側それぞれに設けられた台座的な部分である。装着部35は、第4方向を長さ方向とし第5方向を幅方向とする長孔35aを有している。長孔35aは、作業者の腰ベルトを通すための孔である(
図1及び
図5(b)参照)。なお、長孔35aは、腰ベルトを通すことができれば足りるため、本実施形態のような長孔部分のみでなく、装着部35の一部(例えば第4方向他方側端など)を切り欠いて長孔部分に繋げたような形状であってもよいし、本実施形態のような略矩形形状でなくてもよい。
【0031】
ばね機構36は、板材37と、板材37を基部34に固定するネジ38と、を有している。なお、ネジ38に代えて、鋲及びリベットにより板材37を基部34に固定するようにしてもよい。板材37は、第6方向における位置が、平面部31と基部34との間に位置している。板材37は、この例では、第4方向一方側に固定端を備えかつ第4方向他方側に自由端を備えた板ばねからなる。板材37の第4方向一方側の固定端は、ネジ38によって基部34に固定されている。板材37は、切欠き溝32のうち第4方向他方側の端部に開口32aを残しつつ、切欠き溝32のうち開口32aよりも第4方向一方側の領域32bの少なくとも一部を塞ぐように、平面部31の第6方向一方側の面に弾性的に当接している。板材37の第5方向における幅寸法Bは、第5方向における2つの壁部33どうしの間隔よりも少し小さく、かつ、係止具20の板部23の直径Dよりも大きい。板材37は、平面部31に当接する当接領域37aよりも第4方向他方側に、第4方向他方側へ向かうにつれて平面部31から離間する傾斜部37bを備えている。傾斜部37bは、第4方向他方側に自由端をなす曲がり部であり、その曲がりの程度は、傾斜部37bの自由端と平面部31との隙間Saが、係止具20の板部23の第1方向一方側の第3方向における厚み寸法Daよりも小さくなるように(
図8(c)及び
図8(d)参照)、かつ、係止具20の板部23の第1方向他方側の第3方向における厚み寸法Dbよりも大きくなるように(
図9(c)参照)、設定されている。また、板材37は、当接領域37aと傾斜部37bとの間に、それらを接続するR形状の曲面部37cを備えている。
【0032】
<工具ホルダーによる工具の係止及び係止解除>
上記のように、本実施形態の工具ホルダー10は、工具1に取り付けられる係止具20と、係止具20が係止される被係止具30と、を有している。被係止具30は、例えば作業者の腰ベルトに装着されて用いられ、作業者は、係止具20を被係止具30に係止させることで、工具1を使用しないときに腰ベルトからぶら下げた態様とすることができる(
図1、
図2、
図6(a)及び
図7~
図9参照)。
【0033】
まず、作業者が工具1をぶら下げたい場合には、工具1に取り付けられた係止具20の板部23を切欠き溝32にあてがうようにする(
図7(a)参照)。これにより、板部23が板材37を第6方向の一方側へと押圧して変位させることで板材37が領域32bを塞いだ状態を解消し(
図7(b)参照)、板部23は切欠き溝32を超えて平面部31よりも第6方向の一方側へと進入することができる(
図7(c)参照)。そしてその際、作業者が板部23を第4方向の他方側へ向かって動かすことにより、板部23の第6方向他方側に位置する突出部22を、幅狭となっている切欠き溝32の開口32aへと移動させることで、最終的に板部23を開口32aの縁部に係合させることができる(
図7(d)参照)。
【0034】
このように突出部22及び板部23が開口32a付近まで移動することで、上述のように係止具20の板部23から押圧され一旦第6方向一方側に変位した板材37は、当該押圧から解放されて第6方向他方側へと戻り、前述のように切欠き溝32の開口32a以外の領域32bの少なくとも一部を塞ぐ状態に復帰する(
図7(d)参照)。以上の結果、被係止具30の平面部31よりも第6方向一方側に係止具20の板部23を位置させた状態での、係止具20と被係止具30との係止状態が実現する(
図6(a)、
図7(d)及び
図8(a)参照)。
【0035】
そして、係止具20と被係止具30とが係止した状態においては、前述のように工具1がぶら下がった状態となるため、係止具20の取付部24が位置する第1方向他方側を、被係止具30の第4方向他方側に一致させた姿勢(倒立姿勢)となる(
図6(a)及び
図8参照)。この結果、前述のように切欠き溝32の開口32a付近で係合している板部23は、第1方向他方側の厚み寸法Dbが一方側の厚み寸法Daよりも小さくなるように構成される変寸部23aのうち、第1方向一方側に位置する厚み寸法の大きい側(寸法Da側)を板材37の傾斜部37b側へ向けた姿勢となる。そうすると、仮に、この姿勢、言い換えれば工具1がぶら下がった状態と同様の姿勢にて板部23が第4方向一方側に移動したとしても、上記のように開口32a付近に位置する板部23側へ向かって拡大する隙間の形状と傾斜部37b側が厚肉化している変寸部23aの形状との間で、大きい側小さい側の相対位置関係が互いに整合しないため、板部23は上記隙間へ円滑に入り込むことができない(
図8(b)~
図8(d)参照)。これにより、板部23が隙間に入り込み板材37が第6方向一方側に変位することで板部23及び突出部22が切欠き溝32の第6方向他方側へ離脱してしまうのを防止できるため、不用意に係止具20と被係止具30との係止が解除されて、作業者が誤って工具1を落下させてしまうのを防止できる。
【0036】
次に、作業者が工具1を使用するために係止具20と被係止具30との係止を解除したい場合は、前述のようにぶら下がった状態から工具1の上下を反転させた逆姿勢(正立姿勢)とすればよい。この場合、係止具20の取付部24が位置する第1方向他方側が、被係止具30の第4方向一方側に一致した姿勢となる(
図6(b)及び
図9(a)参照)。この結果、前述のように切欠き溝32の開口32a付近で係合している板部23は、第1方向他方側の厚み寸法Dbが一方側の厚み寸法Daよりも小さくなる変寸部23aのうち、第1方向他方側に位置する厚み寸法の小さい側(寸法Db側)を傾斜部37b側へ向けた姿勢となる。そうすると、この姿勢、言い換えれば工具1を正立させた状態に相当する上記逆姿勢にて板部23を第4方向一方側に移動させれば(
図9(b)及び
図9(c)参照)、上記のように開口32a付近に位置する板部23側へ向かって拡大する隙間の形状と傾斜部37b側が薄肉化している変寸部23aの形状で、大きい側小さい側の相対位置関係が互いに整合し、板部23を上記隙間へと円滑に入り込ませることができる(
図9(d)参照)。これにより、隙間に入り込ませた板部23が板材37を第6方向一方側に変位させることで、板部23及び突出部22を切欠き溝32よりも第6方向他方側へと離脱させて、係止具20と被係止具30との係止を解除することができる。
【0037】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態では、工具ホルダー10の係止具20が、互いに直交する第1及び第2方向を包含する平面に沿う基部21と、基部21から突出する突出部22と、突出部22の反基部側に設けられた板部23と、を有し、板部23は、第1方向他方側の厚みが一方側よりも小さい変寸部23aを備え、工具ホルダー10の被係止具30が、互いに直交する第4及び第5方向を包含する平面に沿っており第4方向一方側から他方側に向かって幅が漸減する切欠き溝32が形成された平面部31と、切欠き溝32のうち第4方向一方側の領域32bの少なくとも一部を塞ぐように平面部31に弾性的に当接する板材37と、を有し、板材37は、平面部31への当接領域37aよりも第4方向他方側に平面部31から離間する傾斜部37bを備えている(
図4、
図5及び
図6参照)。
【0038】
このような本実施形態によれば、工具1がぶら下がった状態では係止具20と被係止具30との係止状態が解除されず(
図8参照)、工具1を正立させた状態でのみ係止具20と被係止具30との係止状態を解除することができる(
図9参照)。これにより、係止状態の解除による工具1の落下等を防止しつつ、使用時における迅速な係止状態の解除を実現し、作業者にとっての利便性を向上することができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、ばね機構36が、板材37として、第4方向一方側に固定端を備えかつ第4方向他方側に自由端を備えた板ばねを有している(
図5及び
図6~
図9参照)。このように、板材37として板ばねを用い板材37自体にばね機能を持たせることで、板材37とは別に板材37を付勢するコイルばねを設ける場合等に比べ、簡易な構造とすることができる。これにより、より低コストに、第6方向一方側への変位による突出部22及び板部23の平面部31乗り越え許容機能、及び、第6方向他方側への復帰による突出部22及び板部23の平面部31乗り越え禁止機能、を実現することができる。
【0040】
また、本実施形態では特に、板材37が、当接領域37aと傾斜部37bとの間に、それらを接続する曲面部37cを備えている(
図5及び
図6参照)。これにより、係止具20と被係止具30との係止時において板部23が板材37を押圧しつつ平面部31よりも第6方向一方側に進入する動作(
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)参照)、及び、係止解除時において板部23が板材37を押圧しつつ平面部31よりも第6方向他方側へ離脱する動作(
図9(c)及び
図9(d)参照)、をスムーズに行うことができる。
【0041】
<変形例1>
上記実施形態では、ばね機構36を構成する板材37として板ばねを用いることで、板材37自体にばね機能を持たせているが、これに限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、板材37として、ばね機能を有しない素材を用いて、この板材37を第6方向他方側に付勢するコイルばね39を設けてもよい。この場合、板材37とコイルばね39とが、ばね機構36を構成することとなる。
【0042】
<変形例2>
上記実施形態では、係止具20の板部23が、第3方向における厚み寸法が第1方向一方側端から第1方向他方側端に向かうにつれて漸減する形状をなしている変寸部23aを備えているが、これに限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、板部23が、第1方向一方側端から第1方向他方側に向かって厚み寸法が均一な厚肉均厚部23bと、均厚部23bよりも厚み寸法が階段状に小さくなる段差部23dと、段差部23dから第1方向他方側端に向かって厚み寸法が均一な薄肉均厚部23cと、を備えていてもよい。すなわち、板部23の厚み寸法が第1方向一方側から第1方向他方側に向かって階段状に小さくなってもよい。この場合は、このような階段形状の板部23のうち第1方向他方側の厚み寸法Dbが一方側の厚み寸法Daよりも小さくなるように構成されることから、板部23全体が変寸部に相当している。
【0043】
<変形例3>
上記実施形態では、係止具20の板部23が、第3方向における厚み寸法が第1方向一方側端から第1方向他方側端に向かうにつれて漸減する形状をなしている変寸部23aを備えているが、これに限定されるものではない。例えば、板部23が、第3方向における厚み寸法が第1方向一方側から第1方向他方側に向かうにつれて漸減する変寸部23aと、変寸部23aの第1方向一方側に連設され第1方向の全域にわたって厚み寸法が均一な均厚部と、を備えていてもよい。この場合には、係止具20の第1方向と被係止具30の第4方向とが高精度に略平行になったときにのみ、板部23を隙間へと入り込ませて係止具20と被係止具30との係止を解除できる構成を実現することができる。
【0044】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0045】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0046】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 工具
10 工具ホルダー
20 係止具
21 基部
22 突出部
23 板部
23 変寸部
24 取付部
30 被係止具
31 平面部
32 切欠き溝
35 装着部
35a 長孔
36 ばね機構
37 板材
37a 当接領域
37b 傾斜部
37c 曲面部