(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004722
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20230110BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106603
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】山中 久幸
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA15
2H087MA16
2H087MA17
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA53
2H087SA55
2H087SA56
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SB04
2H087SB15
2H087SB16
2H087SB17
2H087SB21
2H087SB26
2H087SB33
2H087SB34
2H087SB42
2H087SB43
2H087SB44
(57)【要約】
【課題】大口径比であり小型で光学性能の優れたズームレンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】物体側より正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、全体で正の中間群M、負のレンズ群F、及び後方群Rから構成され、中間群Mは物体側より、1又は2枚の正レンズからなる第一正部分群Mp1と、接合レンズ一つのみからなる第一負部分群Mn1と、物体側に凹面を向けた負レンズを有する第二負部分群Mn2と、1又は2枚の正レンズを有する第二正部分群Mp2とから構成され、第一負部分群Mn1を構成する接合レンズは物体側に凸面を向けた接合面を少なくとも1面有し、第二正部分群Mp2の最も像側のレンズは正レンズであり、ズーミングの際に隣接するレンズ群の間隔が変化し、フォーカシングの際にレンズ群Fは光軸上を移動し、所定の条件式を満足するズームレンズ及び撮像装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、1以上のレンズ群を有し、且つ、全体で正の屈折力となる中間群Mと、負の屈折力のレンズ群Fと、1以上のレンズ群を有する後方群Rとから構成され、
前記中間群Mは、物体側より順に、1又は2枚の正レンズからなる第一正部分群Mp1と、2枚以上のレンズを接合した接合レンズ一つのみからなる第一負部分群Mn1と、物体側に凹面を向けた負レンズを有する第二負部分群Mn2と、1又は2枚の正レンズを有する第二正部分群Mp2とから構成され、
前記第一負部分群Mn1を構成する接合レンズは、物体側に凸面を向けた接合面を少なくとも1面有し、
前記第二正部分群Mp2の最も像側のレンズは正レンズであり、
ズーミングに際して隣接するレンズ群の間隔が変化し、
フォーカシングに際して、前記レンズ群Fは光軸上を移動し、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
-1.30 ≦ fM/fMn1 < 0 ・・・(1)
但し、
fMn1:前記第一負部分群Mn1の焦点距離
fM :前記中間群Mの合成焦点距離
【請求項2】
前記後方群Rは全体で負の屈折力を有する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記後方群Rは、負の屈折力のレンズ群を少なくとも1つ有し、広角端から望遠端へのズーミングに際し、当該負の屈折力のレンズ群は物体側へ移動する請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
広角端から望遠端へのズーミングに際し、前記第1レンズ群が物体側に移動する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.15 ≦ Rmf/ft ≦ 0.70 ・・・(2)
但し、
Rmf:前記中間群Mの最も物体側のレンズ面の曲率半径
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-0.80 ≦ Rmb/ft ≦ -0.15 ・・・(3)
但し、
Rmb:前記中間群Mの最も像側のレンズ面の曲率半径
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【請求項7】
前記第2レンズ群の最も物体側のレンズ面は物体側に凸である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記中間群Mは負の屈折力を有する空気レンズを少なくとも一つ有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記中間群Mの最も物体側に正レンズPを有し、
当該正レンズPが以下の条件式(4)及び条件式(5)を同時に満足する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.01≦θgF-(-1.618×10-3×νd+0.6415)≦0.06・・・(4)
10 ≦ νd ≦ 35 ・・・(5)
但し、
θgF:前記正レンズPの材料のg線とF線の部分分散比
νd :前記正レンズPの材料のd線に対するアッベ数
【請求項10】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.3 ≦ BFw/Y ≦ 1.5 ・・・(6)
但し、
BFw:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスであって、カバーガラス厚を空気換算したときの値
Y:当該ズームレンズの最大像高
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子を用いた撮像装置が広く普及している。このような撮像装置として、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、放送用カメラ、監視カメラ、車載カメラ等種々のものがある。いずれの撮像装置においても大口径比であり、高い光学性能を有するズームレンズに対する市場の要求は強い。
【0003】
ズームレンズの光学構成として、例えば、最も物体側に正の屈折力のレンズ群を備えた、ポジティブリード型の構成が知られている。ポジティブリード型のズームレンズでは、一般に、物体側から2番目の第2レンズ群に強い負の屈折力を配置し、第2レンズ群に大きな変倍負担を持たせることで高変倍化を実現しやすい構成としている。このようなポジティブリード型のズームレンズでは、テレフォト傾向が強くなるため、焦点距離に比して光学全長を短縮することができる。
【0004】
ここで、Fナンバーが小さく、光学性能の高いズームレンズを得るには、大口径比化によって発生する諸収差を良好に補正する必要がある。そのため、Fナンバーの小さいズームレンズでは、Fナンバーの大きいズームレンズと比較すると、各レンズ群に強い屈折力を配置することが困難であり、全系が大型化し易い。また、Fナンバーの小さいズームレンズを得るには、像側、つまり全系の後方に強い正の屈折力のレンズ群を配置することが好ましい。しかしながら、全系の後方に強い正の屈折力のレンズ群を配置すると、テレフォト傾向の強いズームレンズを得ることが困難になり、光学全長の短縮化が困難となる。このように、大口径比化を図りつつ、高い光学性能を有し、さらに小型のズームレンズを実現するためには、各レンズ群のパワー配置、結像倍率、レンズ構成等を適切に設定する必要がある。
【0005】
また、近年、ライブビュー画像により撮像を行うデジタルスチルカメラ等が普及している。ライブビュー撮像時には像面位相差AF方式や、コントラストAF方式により被写体にピントを合わせることが行われている。特に、コントラストAF方式ではフォーカス群を常に移動させながら被写体にピントを合わせる。さらに、近年、トラッキングAFを採用するデジタルスチルカメラ等も広く普及している。トラッキングAFとは、撮像対象とする被写体に一度ピントを合わせた後は、被写体の移動に応じてフォーカス群を移動させながら被写体に常時ピントを合わせ続けるオートフォーカス機能をいう。
【0006】
このようにコントラストAFやトラッキングAFを利用して動画撮像等を行う場合、フォーカス群の移動に伴って、撮像面上での被写体の大きさが変化する現象がある。このようなフォーカス群の移動による像倍率の変化が大きい場合には、ライブビュー画像を観察する撮像者に違和感を生じさせることになる。この像倍率の変化は、光学系においてフォーカス群が物体側、つまり光学系の前方に配置されているほど、大きくなることが知られている。したがって、フォーカス群の配置を適切に設定する必要がある。
【0007】
現在、次のようなズームレンズが知られている。例えば、特許文献1には、物体側から順に、正・負・正・負・正の屈折力のレンズ群を備え、Fナンバーが1.9~F2.8程度の明るいズームレンズが開示されている。しかしながら、このズームレンズでは、第1レンズ群から第3レンズ群までの合成屈折力が弱いこと、及び、全系の後方に強い正の屈折力のレンズ群が配置されていることから、十分な小型化が実現されていない。
【0008】
特許文献2には、物体側から順に、正・負・正・負・正の屈折力のレンズ群を備え、F2.8程度の明るいズームレンズが開示されている。しかしながら、このズームレンズでは、絞りより物体側の第2レンズ群をフォーカス群としている。つまり、全系の前方にフォーカス群が配置されているため、像倍率変化が大きく、トラッキングAFやコントラストAFには好ましくないという問題がある。また、第2レンズ群は比較的重く、コントラストAFを採用する際には、当該ズームレンズでは、フォーカス群の重量のため、迅速なフォーカシングを行うことが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2017/99243公報
【特許文献2】特開2020-197600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は上記の問題に鑑みなされたものであって、大口径比でありながら、全体的に小型で、光学性能の優れたズームレンズ及び当該ズームレンズを有する撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本件発明に係るズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、1以上のレンズ群を有し、且つ、全体で正の屈折力となる中間群Mと、負の屈折力のレンズ群Fと、1以上のレンズ群を有する後方群Rとから構成され、前記中間群Mは、物体側より順に、1又は2枚の正レンズからなる第一正部分群Mp1と、2枚以上のレンズを接合した接合レンズ一つのみからなる第一負部分群Mn1と、物体側に凹面を向けた負レンズを有する第二負部分群Mn2と、1又は2枚の正レンズを有する第二正部分群Mp2とから構成され、前記第一負部分群Mn1を構成する接合レンズは、物体側に凸面を向けた接合面を少なくとも1面有し、前記第二正部分群Mp2の最も像側のレンズは正レンズであり、ズーミングに際して隣接するレンズ群の間隔が変化し、フォーカシングに際して、前記レンズ群Fは光軸上を移動し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
-1.30 ≦ fM/fMn1 < 0 ・・・(1)
但し、
fMn1:前記第一負部分群Mn1の焦点距離
fM :前記中間群Mの合成焦点距離
【0012】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本件発明によれば、大口径比でありながら、全体的に小型で、光学性能の優れたズームレンズ及び当該ズームレンズを有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図4】実施例1のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】実施例2のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図6】実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図7】実施例2のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図8】実施例2のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図9】実施例3のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図10】実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図11】実施例3のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図12】実施例3のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図13】実施例4のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図14】実施例4のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図15】実施例4のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図16】実施例4のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図17】実施例5のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図18】実施例5のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図19】実施例5のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図20】実施例5のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図21】実施例6のズームレンズの広角端におけるレンズ断面図である。
【
図22】実施例6のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図23】実施例6のズームレンズの中間焦点距離における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図24】実施例6のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0016】
1.ズームレンズ
1-1.光学構成
本実施の形態のズームレンズは物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、1以上のレンズ群を有し、且つ、全体で正の屈折力となる中間群Mと、負の屈折力のレンズ群Fと、1以上のレンズ群を有する後方群Rとから構成される。以下、当該ズームレンズの光学構成を説明する。
【0017】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は全体で正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、2枚の正レンズを含む構成とすれば、第1レンズ群に強い正の屈折力を配置することができる。その場合、高変倍比を達成しつつ、望遠端においてテレフォト傾向を強めることができ、全系の小型化を図ることが容易となる。なお、テレフォト傾向が強いとはテレフォト比の値が、より小さい値を示すことをいう。また、少なくとも1枚の負レンズを含む構成とすれば、球面収差、色収差等の補正が容易になるため、優れた光学性能を有するズームレンズを実現する上でより好ましい。
【0018】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は全体で負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、2枚以上の負レンズと、1枚以上の正レンズを含む構成とすれば、第2レンズ群に強い負の屈折力を配置することができる。その場合、第2レンズ群の変倍比を上げることが容易となり、高変倍比を達成しつつ、優れた光学性能を実現することが容易となる。また、第2レンズ群の最も物体側のレンズ面は物体側に凸であることが好ましい。これにより、広角端での像面湾曲を良好に補正することが容易となる。
【0019】
(3)中間群M
中間群Mは1以上のレンズ群から構成され、全体で正の屈折力を有する。当該ズームレンズにおいて、中間群Mは物体側より順に、1又は2枚の正レンズからなる第一正部分群Mp1と、2枚以上のレンズを接合した接合レンズ一つのみからなる第一負部分群Mn1と、物体側に凹面を向けた負レンズを有する第二負部分群Mn2と、1又は2枚の正レンズを有する第二正部分群Mp2とから構成される。また、中間群Mは第2レンズ群と、レンズ群Fとの間に配置される1以上のレンズ群から構成される。本発明においてレンズ群はズーミングの際の可変間隔を境に区分するものとする。中間群Mが1つのレンズ群により構成される場合、隣接する部分群の間はズーミングの際も間隔の変化しない固定間隔となる。中間群Mが2つ以上のレンズ群により構成される場合、これらの部分群のうち、一部の部分群間はズーミングの際の可変間隔であってもよいし、一部の部分群内に可変間隔が含まれていてもよい。
【0020】
中間群Mの最も物体側に第一正部分群Mp1を配置することで、当該ズームレンズ全系の小型化が容易となる。また、最も像側に第二正部分群Mp2を配置することで、当該ズームレンズ全系で明るいFナンバーを確保することが容易となる。
また、大口径比であり、且つ、小型のズームレンズを実現するには、中間群Mに強い正の屈折力を配置して光束を収束させることが好ましい。中間群Mに強い正の屈折力を配置した場合、中間群Mで発生するアンダー方向の球面収差及び像面湾曲を強い発散作用によって補正する必要がある。そこで、当該ズームレンズでは、中間群Mに第一負部分群Mn1及び第二負部分群Mn2を配置することで、中間群Mに第一正部分群Mp1及び第二正部分群Mp2により比較的強い正の屈折力を配置しつつ、上記アンダー方向の球面収差及び像面湾曲を強い発散作用により良好に補正可能とし、大口径比でありながら、全体的に小型で、光学性能の優れたズームレンズを実現するものとした。
【0021】
以下、各部分群の好ましい構成について説明する。
第一正部分群Mp1は正の屈折力の部分群である。第一正部分群Mp1は1又は2枚の正レンズから構成される限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。第一正部分群Mp1の最も物体側のレンズは、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであることが好ましい。このように構成することで、さらに中間群Mの小径化が容易となる。
【0022】
第一負部分群Mn1は負の屈折力の部分群である。第一負部分群Mn1は2枚以上のレンズを接合した接合レンズの一つのみから構成されればよく、その他の点については特に限定されるものではない。例えば、当該接合レンズは、物体側に凸面を向けた接合面を少なくとも1面有することが好ましい。物体側に凸面を向けた接合面を有する接合レンズにより第一負部分群Mn1を構成すれば、全ズーム領域で像面湾曲を良好に補正することがより容易となる。
【0023】
第二負部分群Mn2は負の屈折力の部分群である。第二負部分群Mn2は物体側に凹面を向けた負レンズを有する。第二負部分群Mn2はこの負レンズを有する限り、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。当該負レンズ以外に他の負レンズを含んでいてもよいし、全体が負の屈折力を示す限り正レンズを含んでいてもよい。また、当該負レンズの物体側面は像側面に対し、より強い曲率を有することが好ましい。それにより、球面収差をより良好に補正することができる。
【0024】
第二正部分群Mp2は正の屈折力の部分群である。第二正部分群Mp2は少なくとも1又は2枚の正レンズを有し、最も像側のレンズが正レンズである限り、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。第二正部分群Mp2の最も像側の正レンズの像側面は、像側に凸であることが好ましい。これにより当該ズームレンズ全系で明るいFナンバーを確保することが容易となる。
【0025】
中間群Mは負の屈折力を有する空気レンズを少なくとも1つ有することが好ましい。これにより、中間群Mにおける上記発散作用を確保し易くなり、球面収差、像面湾曲をより良好に補正することが容易となる。なお、空気レンズの屈折力は、空気間隔をあけて隣接配置されるレンズ面間の形状によって負の屈折力又は正の屈折力を生じる。当該ズームレンズでは負の屈折力を有する空気レンズを有するため、当該空気レンズは両凸形状、平凸形状又は正メニスカス形状の正レンズと同様の形状を呈する。
【0026】
また、中間群Mが2以上のレンズ群からなる場合は、ズーミングに際して隣接するレンズ群の光軸上の間隔を変化させることで、収差変動を抑制することが容易になるため、より光学性能の高いズームレンズを得ることができる。但し、中間群Mを構成するレンズ群の数が多くなると、小型のズームレンズを得ることが困難になる。従って、小型のズームレンズを得る上で、中間群Mを構成するレンズ群の数は3以下であることが好ましい。
【0027】
中間群Mに含まれる接合レンズについて、各接合レンズを構成するレンズをレンズLCn(n=1,2,3・・・)としたとき、各レンズLCnの屈折力φLCnは、φLCn≧0.005を満たすことが好ましい。この構成によって、接合レンズの接合面の発散作用を強くすることが容易となる。屈折力φLCnは下記式で定義する。「n」は中間群Mにおける各レンズLCnの物体側からの配置順序を表すものとする。
φLCn=|(NLCn-1)(1/LCnR1-1/LCnR2)|
NLCn:前記レンズLCnの材料のd線における屈折率
LCnR1:前記レンズLCnの物体側面の曲率半径
LCnR2:前記レンズLCnの像側面の曲率半径
但し、レンズ面の曲率中心がレンズ面よりも像側にある場合は曲率半径の符号を正とし、レンズ面の曲率中心がレンズ面よりも物体側にある場合は曲率半径の符号を負とする。また、曲率半径の符号は他の条件式についても同様である。
【0028】
(4)レンズ群F
レンズ群Fはフォーカシングに際して、光軸上を移動するフォーカス群である。中間群Mの像側に配置されるレンズ群Fは、中間群Mにより収斂された光束が入射するため、レンズ径を小さく、軽量な構成とすることが容易である。従って、レンズ群Fをフォーカス群とすることで、高速なオートフォーカスを実現することができ、フォーカス駆動系の負荷を低減させることも容易になる。レンズ群Fは全体で負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、より好ましくは、1枚の負レンズと1枚の正レンズを接合した接合レンズのみで構成することが好ましい。このような構成により、フォーカス群の軽量化による高速なオートフォーカスの実現と、物体距離全般に亘って球面収差、色収差等の諸収差が良好に補正された高性能なズームレンズを得ることが容易となる。
【0029】
(5)後方群R
後方群Rは1以上のレンズ群を有する。後方群Rはレンズ群Fから像面までの間に配置されるレンズ群により構成される。後方群Rは少なくとも1つの負の屈折力のレンズ群を有することが好ましく、全体として負の屈折力を有することが好ましい。このような構成とすることで、望遠端においてよりテレフォト傾向の強いズームレンズを得ることが容易になり、望遠端における光学全長を短縮することが容易となる。後方群Rは2つ以上のレンズ群を備えてもよいが、ズームレンズを構成するレンズ群の数が増えると、小型化を図ることが困難となる。
【0030】
(6)開口絞り
開口絞りは中間群Mの物体側、または中間群M内に配置することが好ましい。特に、中間群Mの物体側、すなわち第一正部分群Mp1の物体側に隣接して配置することで、広角端における第1レンズ群の有効径を小さくすることが容易となる。
【0031】
1-2.動作
(1)ズーミング
当該ズームレンズは、ズーミングに際して隣接するレンズ群の光軸上の間隔を変化させることにより変倍する。各レンズ群はズーミングに際して、互いの光軸上の間隔が変化すればよく、全てのレンズ群が光軸に沿って移動してもよいし、一部のレンズ群が光軸方向に固定されていてもよい。
【0032】
各レンズ群の移動の有無は特に限定されるものではないが、第1レンズ群、中間群Mを構成するレンズ群のうち少なくとも1つのレンズ群、及び、レンズ群Fは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、それぞれが物体側へ移動することが好ましい。これらのレンズ群をこのように移動させると、第2レンズ群以降の各レンズ群の変倍作用に無理が生じにくくなり、高変倍化と高性能化が両立し易い構成となる。
【0033】
第2レンズ群は広角端から望遠端へのズーミングに際して、像側に移動することが好ましい。第2レンズ群を像側に移動させることで、望遠端での中間群Mのレンズ外径を抑えることが容易となり、絞りユニットの径小化、及び当該ズームレンズの小型軽量化が容易となる。
【0034】
後方群Rが負の屈折力のレンズ群を含む場合、広角端から望遠端へのズーミングに際し、当該負の屈折力のレンズ群は物体側へ移動することが好ましい。ズーミングの際の移動をこのようにすることで、後方群Rの変倍作用を上げることができる。そのため、各レンズ群の移動量を少なくすることができ、より小型で高変倍比のズームレンズを得ることが容易となる。
【0035】
後方群Rが2つ以上のレンズ群を含む場合、鏡筒のカム構造の複雑化を避けるためにも、後方群Rの最も像側に配置されるレンズ群はズーミングに際して光軸上に固定であることが好ましい。
【0036】
(2)フォーカシング
当該ズームレンズは、無限遠から近距離へのフォーカシングに際し、レンズ群Fを光軸上に沿って像側に移動させることで行う。レンズ群Fは中間群Mの像側、つまり当該ズームレンズにおいて後方に配置されている。従って、レンズ群Fをフォーカス群とすることで、フォーカス群の移動に伴う画角の変動を抑制することができる。そのため、コントラストAF方式を採用する場合は勿論のこと、像面位相差AF方式を採用する場合にも、トラッキングAF機能を用いた動画撮像等に適したズームレンズを得ることができる。
【0037】
1-3.条件式
当該ズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0038】
-1.30 ≦ fM/fMn1 < 0 ・・・(1)
但し、
fMn1:第一負部分群Mn1の焦点距離
fM :前記中間群Mの合成焦点距離
【0039】
条件式(1)は中間群Mの焦点距離と第一負部分群Mn1の焦点距離との比を適切に設定するための条件式である。条件式(1)を満足させることで、全ズーム領域で球面収差及び像面湾曲を良好に補正することができる。従って、中間群Mに強い正の屈折力を配置したときも、これらの収差を良好に補正することができ、大口径比化を図りつつ小型で光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0040】
これに対して、条件式(1)の数値が下限値未満となると、第一負部分群Mn1による負の発散作用が強くなり過ぎ、球面収差と像面湾曲をバランス良く良好に補正することが困難となる。一方、条件式(1)の数値が上限値を超えると、第一負部分群Mn1による負の発散作用が小さくなる。中間群Mに強い正の屈折力を配置すると、アンダー傾向となる球面収差及び像面湾曲を良好に補正することが困難となる。
【0041】
上記効果を得る上で、条件式(1)の値は負であることが求められ、条件式(1)の上限値は-0.02であることが好ましく、-0.05であることがより好ましい。また、条件式(1)の下限値は-1.20であることが好ましく、-1.10であることがより好ましい。
【0042】
1-3-2. 条件式(2)
0.15 ≦ Rmf/ft ≦ 0.70 ・・・(2)
但し、
Rmf:中間群Mの最も物体側のレンズ面の曲率半径
ft:望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0043】
条件式(2)は中間群Mの最も物体側のレンズ面の曲率半径と望遠端における当該ズームレンズの焦点距離との比を適切に設定するための条件式である。条件式(2)を満足する場合、中間群Mの最も物体側のレンズ面は物体側に凸となる。条件式(2)を満足させることで、全長の小型化と光学性能のバランスを取ることが容易になる。なお、中間群Mの最も物体側のレンズ面は第一正部分群Mp1の最も物体側のレンズ面を意味する。
【0044】
これに対して、条件式(2)の数値が下限値未満になると、全長の小型化を図ることは容易となるが、中間群Mの最も物体側のレンズ面で発生する球面収差及び像面湾曲が強いアンダー傾向となり、これらを良好に補正することが困難となる。一方、条件式(2)の数値が上限値を超えると、大口径比化を図りつつ、小型のズームレンズを得るには、中間群Mにおいて光束を強く収束させる必要が生じ、そのため中間群Mに配置する正の屈折力のレンズ枚数が多くなり、全長の小型化を図ることが困難となる。
【0045】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は0.65であることが好ましく、0.6であることがより好まく、0.55であることがさらに好ましい。また、条件式(2)の下限値は0.20であることが好ましく、0.25であることがより好ましい。
【0046】
1-3-3.条件式(3)
-0.80 ≦ Rmb/ft ≦ -0.15 ・・・(3)
但し、
Rmb:中間群Mの最も像側のレンズ面の曲率半径
ft :望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0047】
条件式(3)は中間群Mの最も像側のレンズ面の曲率半径と望遠端における当該ズームレンズの焦点距離との比を適切に設定するための条件式である。条件式(3)を満足する場合、中間群Mの最も像側のレンズ面は像側に凸となる。条件式(3)を満足させることで、当該ズームレンズの所望の明るさを確保しつつ、全長の小型化を図ることが容易となる。なお、中間群Mの最も像側のレンズ面は第二正部分群Mp2の最も像側のレンズ面を意味する。
【0048】
これに対して、条件式(3)の数値が下限値未満になると、第1レンズ群から中間群Mまでの明るさを確保することが困難となる。一方、条件式(3)の数値が上限値を超えると、全長の小型化を図ることは容易となるが、中間群Mの最も像側のレンズ面の曲率が強くなり過ぎて、球面収差及び像面湾曲を良好に補正することが困難となる。
【0049】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は-0.20であることが好ましく、-0.25であることがより好ましい。また、条件式(3)の下限値は-0.75であることが好ましく、-0.70であることがより好ましく、-0.65であることがさらに好ましい。
【0050】
1-3-4.条件式(4)及び条件式(5)
中間群Mの最も物体側、つまり第一正部分群Mp1の最も物体側に正レンズPを有し、この正レンズPが以下の条件式(4)及び条件式(5)を同時に満足することが好ましい。
0.01≦θgF-(-1.618×10-3×νd+0.6415)≦0.06・・・(4)
10 ≦ νd ≦ 35 ・・・(5)
但し、
d線,F線,C線,g線に対する正レンズPの屈折率をそれぞれnd,nF,nC,ngとするとき、
θgF:正レンズPの部分分散比θgF=(ng-nF)/(nF-nC)
νd :正レンズPのd線に対するアッベ数νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0051】
条件式(4)は正レンズPの材料の異常分散性を規定するための条件式である。条件式(5)は正レンズPの材料のd線に対するアッベ数を規定するための条件式である。条件式(4)及び条件式(5)を同時に満足する正レンズPが中間群Mの最も物体側に配置されることで、全ズーム領域で軸上色収差を良好に補正することができる。一般に、正の屈折力のレンズ群に含まれる正レンズは、低分散側の材料を用いることで、色収差補正を行うが、当該ズームレンズの中間群Mは、発散面による発散作用が大きく、短波長側の軸上色収差がオーバー傾向にある。したがって、正レンズPを高分散側の硝材とすることで、良好な色収差補正が容易となる。
【0052】
これに対して、条件式(4)の数値が下限未満、又は条件式(5)の数値が上限を超えると、F線及びg線等の短波長側の軸上色収差がオーバー傾向となり、補正が困難となる。一方、条件式(4)の数値が上限値を超え、又は条件式(5)の数値が下限未満となると、F線及びg線等の短波長側の軸上色収差がアンダー傾向となり、補正が困難となる。
【0053】
上記効果を得る上で、条件式(4)の上限値は0.05であることが好ましい。また、条件式(4)の下限値は0.02であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
また、上記効果を得る上で、条件式(5)の上限値は30であることが好ましく、25であることがより好ましく、23であることがさらに好ましい。また、条件式(5)の下限値は15であることが好ましく、18であることがより好ましい。
【0054】
1-3-5. 条件式(6)
0.3 ≦ BFw/Y ≦ 1.5 ・・・(6)
但し、
BFw:広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスであって、カバーガラス厚を空気換算したときの値。
Y:当該ズームレンズの最大像高
【0055】
条件式(6)は広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスと当該ズームレンズの最大像高との比を規定するための条件式である。条件式(6)を満足させることで、広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスを短くすることができ、全長の小型化を図ることができる。
【0056】
条件式(6)の数値が下限値未満になると、広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスが短くなり過ぎて、撮像面への入射光の光軸に対する傾斜角度が大きくなり過ぎる。一方、条件式(6)の数値が上限値を超えると、広角端における当該ズームレンズのバックフォーカスが長くなり過ぎて、当該ズームレンズの全長の小型化を図ることが困難になる。
【0057】
上記効果を得る上で、条件式(6)の上限値は1.3であることが好ましく、1.2であることがより好ましく、1.1であることがさらに好ましい。また、条件式(6)の下限値は0.4であることが好ましく、0.5であることがより好ましく、0.6であることがさらに好ましい。
【0058】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子はズームレンズの像側に設けられることが好ましい。撮像素子として、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等を好適に用いることができる。
【0059】
特に、上記ズームレンズによれば、大口径比でありながら、全体的に小型で、光学性能が優れている。また、上記ズームレンズは、フォーカス群の移動に伴う画角の変動を抑制することができ、コントラストAF方式を採用する場合は勿論のこと、像面位相差AF方式を採用する場合にも、トラッキングAF機能を用いた動画撮像等に適している。そのため、当該ズームレンズを採用することで、トラッキングAF機能を有する動画撮像に適した撮像装置とすることができる。
【0060】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0061】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の断面図である。実施例1のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、負の屈折力の第2レンズ群G2と、正の屈折力の第3レンズ群G3と、負の屈折力の第4レンズ群G4と、負の屈折力の第5レンズ群G5とから構成される。第3レンズ群G3は中間群Mに相当する。第4レンズ群G4はレンズ群Fに相当する。第5レンズ群G5は後方群Rに相当する。
【0062】
広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側に移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動する。
無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群G4(レンズ群F)が像側に移動することで行う。
開口絞りSは、第3レンズ群G3の物体側に隣接して配置される。
【0063】
以下、各レンズ群の構成を説明する。
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2を接合した接合レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3とから構成される。
【0064】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5と、両凹レンズL6と、両凹レンズL7及び両凸レンズL8を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL9とから構成される。
【0065】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL10と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12、両凸レンズL13及び両凹レンズL14の3枚のレンズを接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL15と、両凸レンズL16とから構成される。負メニスカスレンズL15は物体側面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL16は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。正メニスカスレンズL10と正メニスカスレンズL11とから第一正部分群Mp1が構成される。正メニスカスレンズL10は正レンズPであり、物体側面が物体側に凸となっている。負メニスカスレンズL12、両凸レンズL13及び両凹レンズL14の3枚のレンズを接合した接合レンズにより第一負部分群Mn1が構成される。負メニスカスレンズL12と両凸レンズL13との接合面は物体側に凸面を向けている。負メニスカスレンズL15により第二負部分群Mn2が構成される。両凸レンズL16により第二正部分群Mp2が構成される。当該両凸レンズL16の像側面は像側に凸である。また、両凹レンズL14と、負メニスカスレンズL15との間は両凸形状の空気レンズとなっており、負の屈折力を有する。
【0066】
第4レンズ群G4は、両凸レンズL17と両凹レンズL18とを接合した接合レンズから構成される。
【0067】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL19及び両凸レンズL20を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL21とから構成される。負メニスカスレンズL21は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。
【0068】
なお、
図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサ、CMOSセンサなどの撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、像面IPの物体側にはカバーガラスCG等の実質的な屈折力を有さない平行平板を備える。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0069】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「レンズ群データ」、「非球面係数」を示す。また、各条件式(1)~条件式(7)の値(表1)、各条件式を求めるために用いた各値と各実施例のφLCnの値(表2)は実施例6の後にまとめて示す。
【0070】
「レンズデータ」において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」は光軸上のレンズ肉厚又は空気間隔、「nd」はd線(波長λ=587.56nm)における屈折率、「νd」はd線におけるアッベ数を示している。また、「面番号」の欄において面番号の次に付した「ASPH」はそのレンズ面が非球面であることを示し、「S」はその面が開口絞りであることを示す。「d」の欄において、「d(0)」、「d(5)」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時に変化する可変間隔であることを意味する。また、曲率半径の欄の「∞」は無限大を意味し、そのレンズ面が平面であることを意味する。表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」であり、他の表においても同じである。
【0071】
「諸元表」において、「f」は当該ズームレンズの焦点距離、「FNo.」はFナンバー、「ω」は半画角、「Y」は像高を示している。それぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における値を示している。
【0072】
「可変間隔」において、広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時及び近距離物体合焦時の値をそれぞれ示している。
【0073】
[レンズ群データ]では、各レンズ群の焦点距離を示している。
【0074】
「非球面係数」は、次のようにして非球面形状を定義したときの非球面係数を示す。但し、xは光軸方向の基準面からの変位量、rは近軸曲率半径、Hは光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、kは円錐係数、Anはn次の非球面係数とする。また「非球面係数」の表において「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0075】
【0076】
これらの各表における事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0077】
また、
図2、
図3及び
図4に当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図は実線がd線(波長587.56nm)、破線がC線(波長656.28nm)、一点鎖線がg線(波長435.84nm)における球面収差をそれぞれ示す。非点収差図は縦軸が半画角(ω)、横軸がデフォーカスであり、実線がd線のサジタル像面(ds)を示し、破線がd線のメリディオナル像面(dm)をそれぞれ示す。歪曲収差図は、縦軸が半画角(ω)、横軸が歪曲収差である。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以下では説明を省略する。
【0078】
[レンズデータ]
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d(0)
1 192.4282 1.5000 1.91082 35.25
2 100.0065 10.0532 1.49700 81.61
3 -252.2417 0.2000
4 71.5654 6.5650 1.49700 81.61
5 192.2789 d(5)
6 83.7631 1.5000 1.87070 40.73
7 28.8102 8.6177
8 520.2462 4.1099 1.80518 25.46
9 -79.0552 0.4606
10 -180.0295 1.2000 1.87070 40.73
11 128.0584 4.0554
12 -37.2450 1.2000 1.59282 68.62
13 46.6295 5.0613 1.91082 35.25
14 -120.2559 1.9148
15 -42.1599 1.2000 1.72916 54.67
16 -83.9970 d(16)
17S ∞ 1.2000
18 38.6389 5.2507 1.92286 20.88
19 120.0000 0.1500
20 35.4374 5.0901 1.59282 68.62
21 97.2289 0.4000
22 96.5811 1.3000 1.84666 23.78
23 19.5924 13.1150 1.61800 63.39
24 -28.9537 1.3000 1.90366 31.31
25 150.9663 2.2521
26ASPH -112.3666 1.5000 1.80625 40.91
27 -14100.5277 0.2067
28ASPH 40.3440 7.2282 1.77377 47.17
29ASPH -38.9138 d(29)
30 105.0374 3.0753 1.92286 20.88
31 -93.2811 0.9000 1.80100 34.97
32 27.9385 d(32)
33 55.5333 1.2000 1.91082 35.25
34 18.9288 9.5794 1.59270 35.31
35 -48.7564 6.1999
36ASPH -23.1657 1.8000 1.69350 53.18
37ASPH -77.5216 d(37)
38 ∞ 2.5000 1.51680 64.20
39 ∞ 1.0000
像面 ∞
【0079】
[諸元表]
広角端 中間 望遠端
f 36.0267 74.9717 145.5296
FNo. 2.0604 2.6090 2.9089
ω 30.9716 15.3720 8.0578
Y 21.6330 21.6330 21.6330
【0080】
[可変間隔]
広角端 中間 望遠端 広角端 中間 望遠端
d(0) ∞ ∞ ∞ 626.8162 611.5614 586.0399
d(5) 1.0000 29.0327 59.7393 1.0000 29.0327 59.7393
d(16) 34.1032 11.6612 1.3000 34.1032 11.6612 1.3000
d(29) 2.2957 5.3936 3.4962 3.1957 8.3197 11.9612
d(32) 9.3997 9.8819 13.0383 8.4997 6.9558 4.5732
d(37) 13.5000 19.5839 23.5011 13.5000 19.5839 23.5011
【0081】
[レンズ群データ]
群番号 焦点距離
G1 142.9320
G2 -30.6227
G3 32.3890
G4 -55.4052
G5 -136.9750
【0082】
[非球面係数]
面番号 k A4 A6 A8 A10 A12
26 -4.7618 -1.12558E-05 -5.41558E-09 2.44928E-11 6.66569E-15 -8.00140E-17
28 -2.2576 -4.43682E-06 -2.17277E-09 -1.47235E-11 7.75635E-14 -1.53877E-16
29 0.0000 -1.98686E-06 3.48149E-09 -1.33604E-11 6.20532E-14 -1.57248E-16
36 -0.5742 3.82990E-06 1.75904E-08 -4.02738E-10 1.60174E-12 -2.66841E-15
37 0.0000 -6.60728E-06 -1.46925E-09 -2.17773E-10 7.57891E-13 -1.17814E-15
広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は像側に移動し第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側に移動し、第5レンズ群G5は物体側へ移動する。
無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングは、第4レンズ群G4(レンズ群F)が像側に移動することで行う。
開口絞りSは、第3レンズ群G3の物体側に隣接して配置される。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4と、両凹レンズL5及び両凸レンズL6を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7とから構成される。負メニスカスレンズL4は物体側面に、非球面形状に成型された複合樹脂膜が貼付された複合樹脂型非球面レンズである。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8と、両凸レンズL9と、両凹レンズL10及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11を接合した接合レンズと、両凹レンズL12及び両凸レンズL13を接合した接合レンズと、両凸レンズL14と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15とから構成される。両凸レンズL9は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。両凸レンズL14は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。正メニスカスレンズL8と両凸レンズL9とから第一正部分群Mp1が構成される。正メニスカスレンズL8は正レンズPであり、物体側面が物体側に凸となっている。両凹レンズL10及び正メニスカスレンズL11を接合した接合レンズにより第一負部分群Mn1が構成される。当該接合レンズの接合面は物体側に凸面を向けている。両凹レンズL12及び両凸レンズL13を接合した接合レンズから第二負部分群Mn2が構成される。両凸レンズL14と正メニスカスレンズL15とから第二正部分群Mp2が構成される。また、正メニスカスレンズL11と、両凹レンズL12との間は両凸形状の空気レンズとなっており、負の屈折力を有する。
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL18及び両凸レンズL19を接合した接合レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL20とから構成される。負メニスカスレンズL20は両面を非球面形状とするガラスモールド型非球面レンズである。