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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047251
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】椅子の荷重支持構造体及び椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20230329BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176588
(22)【出願日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2021155717
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】益永 浩
(72)【発明者】
【氏名】石丸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】井澤 晶一
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 新平
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084EB05
3B084EC01
(57)【要約】
【課題】手動操作なしで受面構成部の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる椅子の荷重支持構造体及び椅子を提供する。
【解決手段】椅子1の荷重支持構造体は、着座者から荷重を受ける湾曲した受面20aを有する背凭れ板20(受面構成部)と、背凭れ板20を受面20aの裏側から支持する背凭れ支持部材7(荷重支持部)と、背凭れ板20が受けた荷重に応じて、受面20aの曲率半径を、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更する湾曲形状変更手段50と、受面20aの曲率半径を初期状態に戻す付勢手段60と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者から荷重を受ける湾曲した受面を有する受面構成部と、
前記受面構成部を前記受面の裏側から支持する荷重支持部と、
前記受面構成部が受けた荷重に応じて、前記受面の曲率半径を、初期状態の曲率半径から相対的に大きい曲率半径に変更する湾曲形状変更手段と、
前記受面の曲率半径を初期状態に戻す付勢手段と、を備える、椅子の荷重支持構造体。
【請求項2】
前記湾曲形状変更手段は、
前記荷重支持部に支持されていない前記受面構成部の幅方向両側の自由端部と、
前記自由端部よりも幅方向内側において、前記荷重支持部に支持される前記受面構成部の被支持部と、を備える、請求項1に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項3】
前記被支持部は、幅方向に離間して一対で設けられている、請求項2に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項4】
前記荷重支持部は、
前記一対の被支持部を支持する一対の支持部と、
前記一対の支持部の間を接続すると共に、前記受面構成部が受けた荷重に応じて前記一対の被支持部の間を裏側から表側に向かって押圧する板バネ部と、を備える、請求項3に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項5】
前記受面構成部は、背凭れ板を形成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項6】
前記背凭れ板は、
前記背凭れ板の外形を形成する枠部と、
前記枠部の内側においてスリットを介して分離された複数の帯状部と、を備える、請求項5に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項7】
前記複数の帯状部は、前記背凭れ板の幅方向中央部で前記スリットを介して左右に分離された一対の帯状部を含み、
前記一対の帯状部のそれぞれの幅方向内側の端部は、前記背凭れ板の幅方向中央部で前記荷重支持部に支持されている、請求項6に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項8】
前記一対の帯状部のそれぞれの幅方向内側の端部は、前記荷重支持部によって上下方向に延びる回動軸回りに枢支される枢支軸を備える、請求項7に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項9】
前記受面構成部は、座板を形成している、請求項1~8のいずれか一項に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項10】
前記座板は、幅方向に離間して形成された一対の網状板部を備える、請求項9に記載の椅子の荷重支持構造体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の荷重支持構造体を備える、椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の荷重支持構造体及び椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、背凭れ(荷重支持構造体)の湾曲形状を大きく変更可能であると共に着座者を支持する力の低下を抑制可能である椅子が開示されている。この椅子は、着座者と接して荷重を受ける受面構成部を有する背凭れと、背凭れを背後から支える背凭れ支持部材(荷重支持部)と、受面構成部の湾曲形状を変更する湾曲形状変更手段と、を有し、湾曲形状変更手段は、背凭れ及び背凭れ支持部材のいずれか一方に移動可能に支持された操作部材を有し、操作部材は、背凭れ及び背凭れ支持部材のいずれか一方側に回転可能に支持される基端部と、基端部を中心に回動し、背凭れ及び背凭れ支持部材の他方側を押圧する先端部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6465525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記椅子においては、背凭れの幅方向両端部を、操作部材により押圧することで、背凭れの受面構成部の湾曲形状を変更することができるが、操作部材の手動操作が必要であることから調整作業に手間がかかる。また、多様な体格の着座者に対応するためには、操作部材の位置を多段階に調整可能とする必要があり、構造が複雑化する。
また、上記椅子においては、背凭れの受面構成部の湾曲形状を、曲率半径が大きい初期状態から、曲率半径が小さい状態へと変更する構成であるため、例えば初期状態以上の曲率半径に変更することは難しく、特に体格の大きな着座者の対応に課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、手動操作なしで受面構成部の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる椅子の荷重支持構造体及び椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る椅子の荷重支持構造体は、着座者から荷重を受ける湾曲した受面を有する受面構成部と、前記受面構成部を前記受面の裏側から支持する荷重支持部と、前記受面構成部が受けた荷重に応じて、前記受面の曲率半径を、初期状態の曲率半径から相対的に大きい曲率半径に変更する湾曲形状変更手段と、前記受面の曲率半径を初期状態に戻す付勢手段と、を備える。
【0007】
本態様によれば、着座者から荷重を受ける受面構成部の受面の曲率半径を、初期状態は小とし、受面構成部が受けた荷重に応じて、小から大に湾曲形状を変更する。これにより、体格の小さな着座者から体格の大きな着座者まで、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる。また、受面構成部への荷重が除荷された際には、付勢手段によって受面の曲率半径を初期状態に戻すことができる。したがって、手動操作なしで受面構成部の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる。
【0008】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記湾曲形状変更手段は、前記荷重支持部に支持されていない前記受面構成部の幅方向両側の自由端部と、前記自由端部よりも幅方向内側において、前記荷重支持部に支持される前記受面構成部の被支持部と、を備えてもよい。
本態様によれば、受面構成部の幅方向の両端部を荷重支持部に固定されない自由端部とし、受面構成部の幅方向内側の被支持部を支点として当該自由端部を変位させ、これを付勢手段により初期状態へ向けて付勢することで、着座者から受ける荷重との相殺状態を作り、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる湾曲形状を形成することができる。
【0009】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記被支持部は、幅方向に離間して一対で設けられていてもよい。
本態様によれば、受面構成部の被支持部を幅方向に離間して2箇所に分けることによって、一対の被支持部に対する幅方向外側と幅方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0010】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記荷重支持部は、前記一対の被支持部を支持する一対の支持部と、前記一対の支持部の間を接続すると共に、前記受面構成部が荷重を受けた際に前記一対の被支持部の間を裏側から表側に向かって押圧する板バネ部と、を備えてもよい。
本態様によれば、一対の被支持部の幅方向外側の自由端部が、受面の裏側に向かって弾性変位した際に、一対の被支持部の幅方向内側の領域が、板バネ部による押圧によって受面の表側に向かって弾性変位するため、自由端部の変位量が少なくても、受面構成部の湾曲形状を大きく変更することができる。
【0011】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記受面構成部は、背凭れ板を形成していてもよい。
本態様によれば、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる背凭れが得られる。
【0012】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記背凭れ板は、前記背凭れ板の外形を形成する枠部と、前記枠部の内側においてスリットを介して分離された複数の帯状部と、を備えてもよい。
本態様によれば、背凭れ板の外形を成す枠部の内側を、スリットを介して複数の帯状部に分離することで、枠部の内側が複数の帯状部によって個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0013】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記複数の帯状部は、前記背凭れ板の幅方向中央部で前記スリットを介して左右に分離された一対の帯状部を含み、前記一対の帯状部のそれぞれの幅方向内側の端部は、前記背凭れ板の幅方向中央部で前記荷重支持部に支持されてもよい。
本態様によれば、背凭れ板の幅方向中央部における分離によって、左右の一対の帯状部が個別に弾性変形できるため、幅方向中央部を起点とする背凭れ板の受面の湾曲形状の変更が容易になり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0014】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記一対の帯状部のそれぞれの幅方向内側の端部は、前記荷重支持部によって上下方向に延びる回動軸回りに枢支される枢支軸を備えてもよい。
本態様によれば、左右一対の帯状部の幅方向外側の枠部に着座者から荷重が加わると、当該一対の帯状部のそれぞれが、幅方向内側の端部に設けられた上下方向に延びる枢支軸を中心に回動するため、枠部への荷重入力に連動して背凭れ板が前後に変形し易くなる。
【0015】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記受面構成部は、座板を形成していてもよい。
本態様によれば、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる座が得られる。
【0016】
上記一態様の椅子の荷重支持構造体において、前記座板は、幅方向に離間して形成された一対の網状板部を備えてもよい。
本態様によれば、一対の網状板部の幅方向外側と幅方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0017】
本発明の一態様に係る椅子は、先に記載の荷重支持構造体を備える。
本態様によれば、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる椅子が得られる。
【発明の効果】
【0018】
上記各態様によれば、手動操作なしで受面構成部の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる椅子の荷重支持構造体及び椅子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る椅子を正面側から視た斜視図である。
図2】第1実施形態に係る椅子の正面図である。
図3図2に示す矢視III-III断面図である。
図4】第1実施形態の一変形例に係る椅子の正面図である。
図5】第1実施形態に係る座体及び座受部材の斜視図である。
図6】第1実施形態に係る座体及び座受部材の分解斜視図である。
図7】第1実施形態に係る座体及び座受部材の平面図である。
図8図7における矢視VIII-VIII断面図である。
図9図7における矢視IX-IX断面図である。
図10】第2実施形態に係る椅子の正面図である。
図11図10に示す領域XIの拡大図である。
図12図11に示す矢視XII-XII断面図である。
図13図11に示す矢視XIII-XIII断面図である。
図14図10に示す矢視XIV-XIV断面図である。
図15図10に示す矢視XV-XV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、椅子に正規姿勢で着座した人の正面が向く図中矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子に正規姿勢で着座した人の上側の図中矢印UPの指す向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子に正規姿勢で着座した人の左側の図中矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。なお、以下の説明では、椅子の荷重支持構造体の幅方向が、左右方向に一致する場合について例示する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る椅子1を正面側から視た斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の椅子1は、フロア上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、着座者が着座する座体4と、支基3の上面に取り付けられ座体4を支持する座受部材5と、座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ6と、背凭れ6を背後から支える背凭れ支持部材7(後述する図2参照)と、座体4に着座した着座者の肘を支持する肘掛け8と、を備えている。
【0022】
脚部2は、キャスタ2a付きの多岐脚11と、多岐脚11の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱12と、を備える。脚柱12の上端部には、支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。支基3には、脚柱12の昇降調整機構(不図示)と背凭れ支持部材7の傾動調整機構(不図示)と、が内蔵されている。なお、符号13は、支基3の側面に突設された傾動調整機構の操作ノブである。また、符号14は、座体4の屈伸状態の前端部を前方に延ばすスライダである。
【0023】
[背凭れの荷重支持構造体]
図2は、第1実施形態に係る椅子1の正面図である。なお、図2以降においては、座体4及び背凭れ6の要部の視認性を向上させるため、座板40及び背凭れ板20の表面を覆うクッション材及びシート表皮材を取り外している。図3は、図2に示す矢視III-III断面図である。
図2に示すように、背凭れ6は、背凭れ6の骨格を成す樹脂成形された背凭れ板20(受面構成部)を備えている。なお、図2に示す符号15は、支基3内の昇降調整機構の操作レバーである。
【0024】
背凭れ板20は、図2に示す正面視で、四隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。背凭れ板20は、背凭れ板20の外形を形成する枠部21と、枠部21の内側においてスリット23を介して分離された複数の帯状部22と、を備えている。帯状部22を分離するスリット23は、第1スリット23aと、第2スリット23bと、第3スリット23cと、を含んでいる。
【0025】
第1スリット23aは、背凭れ板20の左右方向の中間位置において上下方向に延在している。第1スリット23aは、枠部21の内側において、左右の帯状部22を分離しているスリットである。第2スリット23bは、第1スリット23aから左右両側に延在し、上下の帯状部22を分離しているスリットである。第2スリット23bは、上下方向に間隔をあけて複数段形成されている。これにより、枠部21の内側には、左右一対の帯状部22が多段で形成されている。
【0026】
第2スリット23bの水平面に対する角度は、一様ではなく、下から2段目の第2スリット23bを基準(0度)として、上段の第2スリット23bは、左右方向外側の端部が高くなる+側の角度を有し、逆に下段の第2スリット23bは、左右方向外側の端部が低くなる-側の角度を有する。また、上段の第2スリット23bは、上段になるほど水平面に対する角度が+側に大きくなっている。
【0027】
第3スリット23cは、第2スリット23bの左右方向外側の端部から、第2スリット23bと交差する方向に延在し、枠部21と帯状部22との境界を形成している。第3スリット23cは、第2スリット23bに対してL字状に屈曲し、枠部21と帯状部22との接続幅を、帯状部22の上下方向の幅よりも狭くしている。これにより、個々の帯状部22が、枠部21に対して個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0028】
上記構成の背凭れ板20は、図3に示すように、着座者から荷重を受ける湾曲した受面20aを有している。受面20aは、平面視で後方に凸となる湾曲形状を有している。背凭れ支持部材7は、背凭れ板20を受面20aの裏側から支持している。背凭れ支持部材7は、図2に示すように、上下方向に延びて背凭れ板20の左右方向の中央部を支持する第1支持部30と、第1支持部30の上端部から左右方向両側に延びて背凭れ板20の上端部を支持する第2支持部31と、を備えている。
【0029】
第1支持部30の下端部は、側面視略L字形状を有し、その前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。第1支持部30は、上下方向に延びる柱状に形成され、背凭れ板20の帯状部22の左右方向内側の端部を、後述する被支持部52を介して支持している。第2支持部31は、左右方向に延びる板状に形成され、背凭れ板20の枠部21の上端の左右方向に延びる一辺を、ボルトなどの固定部材32を介して複数箇所で固定している。
【0030】
図3に示すように、背凭れ板20は、背凭れ支持部材7に支持されていない左右方向両側の自由端部51と、自由端部51よりも左右方向内側において、背凭れ支持部材7に支持される被支持部52と、を備えている。自由端部51及び被支持部52は、背凭れ板20が受けた荷重に応じて、受面20aの曲率半径を、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更する湾曲形状変更手段50を構成している。
【0031】
自由端部51は、枠部21の左右方向両側、及び、左右の帯状部22の左右方向外側の端部によって形成されている。被支持部52は、背凭れ支持部材7に支持された左右の帯状部22の左右方向内側の端部によって形成されている。被支持部52は、左右方向に離間して一対で設けられていている。被支持部52は、背凭れ板20の裏面20b側に取り付けられたボールスタッド52aと、ボールスタッド52aを球面受けするソケット52bと、から形成されている。ソケット52bは、背凭れ支持部材7の第1支持部30の前側に固定された取付板33に取り付けられている。
【0032】
続いて、上記構成の背凭れ6の荷重支持構造体による形状変更について説明する。
【0033】
着座者が、背凭れ6に荷重をかけると、その荷重に応じて、背凭れ支持部材7に固定されない背凭れ板20の左右方向外側の自由端部51が、背凭れ板20の左右方向内側の被支持部52を支点として、後方に弾性変位する。背凭れ板20の自由端部51が後方に弾性変位すると、受面20aの曲率半径が、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更される。
【0034】
具体的には、着座者の体格(背中の幅)に応じて、自由端部51上において実際に押圧される部位が左右方向で差異があり、それによって、自由端部51の前後方向における後方への押圧量が変わる。つまり、被支持部52が自由端部51の弾性変位の支点となるので、被支持部52からの左右方向における距離が大きい部位であるほど、前後方向における後方への変位量が大きくなる。ここで、後方に弾性変位した自由端部51は、背凭れ板20自体の復元力によって、弾性変位前の初期状態に戻ろうとする。これが付勢手段60となり、自由端部51が初期状態へ向けて戻ろうとすることで、着座者から受ける荷重と付勢手段60の付勢力との相殺状態を作り、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる湾曲形状を形成することができる。
【0035】
また、被支持部52は、左右方向に離間して一対で設けられているため、一対の被支持部52に対する左右方向外側と左右方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなる。さらに、帯状部22は、スリット23によって左右に分離しているため、自由端部51が受面20aの裏側に向かって変位した際に、一対の被支持部52の間の領域(支持間部53と称する)が、受面20aの表側に向かって変位するため、自由端部51の変位量が少なくても、背凭れ板20の全体としての湾曲形状を大きく変更することができる。
【0036】
このように、本実施形態に係る背凭れ6の荷重支持構造体(椅子の荷重支持構造体)は、着座者から荷重を受ける湾曲した受面20aを有する背凭れ板20(受面構成部)と、背凭れ板20を受面20aの裏側から支持する背凭れ支持部材7(荷重支持部)と、背凭れ板20が受けた荷重に応じて、受面20aの曲率半径を、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更する湾曲形状変更手段50と、受面20aの曲率半径を初期状態に戻す付勢手段60(背凭れ板20)と、を備える。
【0037】
この構成によれば、着座者から荷重を受ける背凭れ板20の受面20aの曲率半径を、初期状態は小とし、背凭れ板20が受けた荷重に応じて、小から大に湾曲形状を変更する。これにより、体格の小さな着座者から体格の大きな着座者まで、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる。また、背凭れ板20への荷重が除荷された際には、付勢手段60によって受面20aの曲率半径を初期状態に戻すことができる。したがって、手動操作なしで背凭れ板20の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる。
【0038】
また、本実施形態では、湾曲形状変更手段50は、背凭れ支持部材7に支持されていない背凭れ板20の左右方向両側の自由端部51と、自由端部51よりも左右方向内側において、背凭れ支持部材7に支持される背凭れ板20の被支持部52と、を備えている。この構成によれば、背凭れ板20の左右方向両側の端部を背凭れ支持部材7に固定されない自由端部51とし、背凭れ板20の左右方向内側の被支持部52を支点として当該自由端部51を変位させ、これを付勢手段60により初期状態へ向けて付勢することで、着座者から受ける荷重と付勢手段60の付勢力との相殺状態を作り、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる湾曲形状を形成することができる。
【0039】
また、本実施形態では、被支持部52は、左右方向に離間して一対で設けられていている。この構成によれば、背凭れ板20の被支持部52を左右方向に離間して2箇所に分けることによって、一対の被支持部52に対する左右方向外側と左右方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。また、この構成によれば、一対の被支持部52の左右方向外側の自由端部51が、受面20aの裏側に向かって弾性変位した際に、一対の被支持部52の左右方向内側の領域(支持間部53)が、受面20aの表側に向かって弾性変位するため、自由端部51の変位量が少なくても、背凭れ板20の湾曲形状を大きく変更することができる。
【0040】
また、本実施形態では、背凭れ板20は、背凭れ6を形成している。この構成によれば、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる背凭れ6が得られる。
【0041】
また、本実施形態では、背凭れ板20は、背凭れ板20の外形を形成する枠部21と、枠部21の内側においてスリット23を介して分離された複数の帯状部22と、を備えている。この構成によれば、背凭れ板20の外形を成す枠部21の内側を、スリット23を介して複数の帯状部22に分離することで、枠部21の内側が複数の帯状部22によって個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0042】
また、本実施形態では、複数の帯状部22は、背凭れ板20の幅方向中央部でスリット23(第1スリット23a)を介して左右に分離された一対の帯状部22を含み、一対の帯状部22のそれぞれの幅方向内側の端部は、背凭れ板20の幅方向中央部で背凭れ支持部材7に支持されている。この構成によれば、背凭れ板20の幅方向中央部における分離によって、左右の一対の帯状部22が個別に弾性変形できるため、幅方向中央部を起点とする背凭れ板20の受面の湾曲形状の変更が容易になり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0043】
本実施形態に係る椅子1は、上記背凭れ6の荷重支持構造体を備えるため、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる。
【0044】
このように本実施形態によれば、手動操作なしで背凭れ6の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる。
【0045】
なお、上述した背凭れ6の荷重支持構造体は、図4に示すような構成であってもよい。
【0046】
図4は、第1実施形態の一変形例に係る椅子1の正面図である。
図4に示す背凭れ板20は、第3スリット23cが、第2スリット23bに対して上下方向両側に延びるT字状に形成され、枠部21と帯状部22との接続幅を、帯状部22の上下方向の幅よりも狭くしている。この構成であっても、上記実施形態と同様に、個々の帯状部22が、枠部21に対して個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0047】
[座体の荷重支持構造体]
図5は、第1実施形態に係る座体4及び座受部材5の斜視図である。図6は、第1実施形態に係る座体4及び座受部材5の分解斜視図である。図7は、第1実施形態に係る座体4及び座受部材5の平面図である。図8は、図7における矢視VIII-VIII断面図である。図9は、図7における矢視IX-IX断面図である。
図5に示すように、座体4は、座体4の骨格を成す樹脂成形された座板40(受面構成部)を備えている。
【0048】
座板40は、図7に示す平面視で、角部が丸みを帯びた略長方形状とされている。座板40は、中央板部41を挟んで左右方向に離間して形成された一対の網状板部42を備えている。一対の網状板部42は、座板40の後端縁から、座板40の前後方向の中間位置よりも前側まで延在している。網状板部42は、前後方向に延びるスリットの列が左右方向外側にわずかに湾曲しつつ、左右方向で隣り合うスリットの列同士が前後方向に略半ピッチずれることで形成されている。つまり、網状板部42は、千鳥状に配置されたスリットによって形成されている。
【0049】
座板40は、左右方向の中央部を形成する中央板部41と、中央板部41の左右方向両側に形成された一対の網状板部42と、一対の網状板部42の左右方向両側に形成された外側板部43と、を備えている。中央板部41の後側には、座受部材5の係止片74が係止する被係止部44が形成されている。また、中央板部41及び外側板部43には、網状板部42を挟んで配置され、図示しないシート表皮材を固定する固定片45が形成されている。
【0050】
上記構成の座板40は、図5に示すように、着座者から荷重を受ける湾曲した受面40aを有している。受面40aは、正面視で下方に凸となる湾曲形状を有している。座受部材5は、座板40を受面40aの裏側から支持している。座受部材5は、図6に示すように、平面視矩形状の本体部70Aと、本体部70Aの左右方向の側部70A1から左右方向外側に延出した肘掛け取付部70Bと、を備えている。座受部材5は、例えば絞り加工された板金や、アルミダイキャスト等の金属材料からなる強度部材であり、上下方向上側が開口する受け皿形状を有している。
【0051】
具体的に、座受部材5は、底壁部71と、底壁部71の周縁部から立設する側壁部72と、を有している。側壁部72の上端部には、外側に延出するフランジ73が設けられている。肘掛け8は、肘掛け取付部70Bに外嵌すると共に、肘掛け取付部70Bの底壁部71への下方からのねじ止めによって、肘掛け取付部70Bに取り付けられるようになっている。座板40は、図8に示すように、前後方向後側が座受部材5の係止片74に係止した状態で支持されると共に、前後方向前側が座受部材5の本体部70Aの前端縁のフランジ73に支持されるようになっている。
【0052】
図6に示すように、座受部材5の内側には、補強金具80と、バネ部材90とが取り付けられている。補強金具80は、左右の肘掛け取付部70Bの底壁部71に一対で取り付けられている。補強金具80は、肘掛け取付部70Bの底壁部71における肘掛け8のねじ止め部分を覆う箱状に形成されている。補強金具80の左右方向内側を向く端縁には、バネ部材90に係合する係合片81が形成されている。補強金具80の上面には、バネ部材90を位置決めする位置決め孔82が形成されている。
【0053】
バネ部材90は、左右方向に離間した一対の支持部91と、一対の支持部91の間を接続する板バネ部92と、一対の支持部91の左右方向外側に設けられた被取付部93と、を備えている。本実施形態の一対の支持部91、板バネ部92、及び被取付部93は、樹脂成形により一体的に形成されている。なお、一対の支持部91、板バネ部92、及び被取付部93の一部または全部は、一体成形されず別部品が組み合わせられたものであっても構わない。
【0054】
一対の支持部91は、正面視でC字状に形成されたバネ要素であって、C字状の隙間(ギャップ)が左右方向外側を向くように配設されている。一対の支持部91には、上下方向に貫通する貫通孔91aが形成されている。一対の支持部91は、座受部材5の本体部70Aの底壁部71に形成された一対の隆起部71Aを左右方向で挟む位置に配置されている。一対の隆起部71Aは、前後方向に平行に延び、座受部材5を支持する支基3内の構造物(調整機構等)との干渉を避けつつ、座受部材5の曲げ剛性を高めている。
【0055】
板バネ部92は、上下方向に厚みを有し、平面視で長方形に形成された平板状のバネ要素であって、一対の支持部91の間を接続している。被取付部93は、一対の支持部91のC字状のギャップの下側の部分から屈曲して左右方向外側に延伸している板片である。被取付部93の屈曲部には、補強金具80の係合片81が挿し込まれる係合孔93aが形成されている。被取付部93の下面には、補強金具80の位置決め孔82に差し込まれる位置決めピン93bが突設されている。
【0056】
図9に示すように、肘掛け取付部70Bの上方は、座板40によって覆われている。座体4と肘掛け取付部70Bとの間には、座体4の下方への変位を許容する上下方向の空間が形成されている。本実施形態では、肘掛け取付部70Bが左右方向において略水平に延びているのに対し、座板40は、左右方向外側に向かうに従って上側に反るように湾曲している。
【0057】
座板40は、座受部材5に支持されていない左右方向両側の自由端部51と、自由端部51よりも左右方向内側において、座受部材5のバネ部材90に支持される被支持部52と、を備えている。自由端部51及び被支持部52は、座板40が受けた荷重に応じて、受面40aの曲率半径を、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更する湾曲形状変更手段50を構成している。
【0058】
自由端部51は、座板40の左右方向両側の端部によって形成されている。被支持部52は、座板40の一対の網状板部42に対応して一対で設けられており、バネ部材90の一対の支持部91に支持されている。被支持部52は、座板40の裏面40b側に形成したボス52cを、支持部91の上側の貫通孔91aに挿入した後、ワッシャを外嵌し、支持部91の下側からタッピングネジ52dをボス52cに螺合することで形成されている。
【0059】
続いて、上記構成の座体4の荷重支持構造体による形状変更について説明する。
【0060】
着座者が、座体4に荷重をかけると、その荷重に応じて、座受部材5に固定されない座板40の左右方向外側の自由端部51が、座板40の左右方向内側の被支持部52を支点として、下方に弾性変位する。座板40の自由端部51が下方に弾性変位すると、受面40aの曲率半径が、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更される。
【0061】
具体的には、着座者の体格(臀部や大腿部の幅)に応じて、自由端部51上において実際に押圧される部位が左右方向で差異があり、それによって、自由端部51の上下方向における下方への押圧量が変わる。つまり、被支持部52が自由端部51の弾性変位の支点となるので、被支持部52からの左右方向における距離が大きい部位であるほど、上下方向における下方への変位量が大きくなる。ここで、下方に弾性変位した自由端部51は、座板40自体の復元力によって、弾性変位前の初期状態に戻ろうとする。これが付勢手段60となり、自由端部51が初期状態へ向けて戻ろうとすることで、着座者から受ける荷重と付勢手段60の付勢力との相殺状態を作り、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる湾曲形状を形成することができる。
【0062】
また、被支持部52は、左右方向に離間して一対で設けられているため、一対の被支持部52に対する左右方向外側と左右方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなる。座受部材5は、一対の被支持部52を支持する一対の支持部91と、一対の支持部91の間を接続すると共に、座板40が荷重を受けた際に一対の被支持部52の間を裏側から表側に向かって押圧する板バネ部92と、を備えている。
【0063】
座板40が荷重を受けると、板バネ部92が一対の支持部91との接続部(板バネ部92の両端部)を支点として上方に凸となるように曲がる。ここで、網状板部42の各縦長スリットが、左右方向に拡開することで、中央板部41の弾性変位が阻害されにくくなっている。これにより、一対の被支持部52の左右方向内側の領域(支持間部53を形成する中央板部41)が、板バネ部92による押圧によって受面40aの表側に向かって弾性変位するため、自由端部51の変位量が少なくても、座板40の湾曲形状を大きく変更することができる。
【0064】
このように、本実施形態に係る椅子1の荷重支持構造体は、着座者から荷重を受ける湾曲した受面40aを有する座板40と、座板40を受面40aの裏側から支持する座受部材5(荷重支持部)と、座板40が受けた荷重に応じて、受面40aの曲率半径を、初期状態の曲率半径(形状C1)から相対的に大きい曲率半径(形状C2)に変更する湾曲形状変更手段50と、受面40aの曲率半径を初期状態に戻す付勢手段60(座板40)と、を備える。なお、付勢手段60には、座板40の復元力だけでなくバネ部材90の復元力も含まれる。
【0065】
この構成によれば、着座者から荷重を受ける座板40の受面40aの曲率半径を、初期状態は小とし、座板40が受けた荷重に応じて、小から大に湾曲形状を変更する。これにより、体格の小さな着座者から体格の大きな着座者まで、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる。また、座板40への荷重が除荷された際には、付勢手段60によって受面40aの曲率半径を初期状態に戻すことができる。したがって、手動操作なしで座板40の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる。
【0066】
また、本実施形態では、湾曲形状変更手段50は、座受部材5に支持されていない座板40の左右方向両側の自由端部51と、自由端部51よりも左右方向内側において、座受部材5に支持される座板40の被支持部52と、を備えている。この構成によれば、座板40の左右方向両側の端部を座受部材5に固定されない自由端部51とし、座板40の左右方向内側の被支持部52を支点として当該自由端部51を変位させ、これを付勢手段60により初期状態へ向けて付勢することで、着座者から受ける荷重と付勢手段60の付勢力との相殺状態を作り、多様な体格の着座者にフィット感を与えることができる湾曲形状を形成することができる。
【0067】
また、本実施形態では、被支持部52は、左右方向に離間して一対で設けられていている。この構成によれば、座板40の被支持部52を左右方向に離間して2箇所に分けることによって、一対の被支持部52に対する左右方向外側と左右方向内側の領域が個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0068】
また、本実施形態では、座受部材5は、一対の被支持部52を支持する一対の支持部91と、一対の支持部91の間を接続すると共に、座板40が荷重を受けた際に一対の被支持部52の間を裏側から表側に向かって押圧する板バネ部92と、を備えている。この構成によれば、一対の被支持部52の左右方向外側の自由端部51が、受面40aの裏側に向かって弾性変位した際に、一対の被支持部52の左右方向内側の領域が、板バネ部による押圧によって受面40aの表側に向かって弾性変位するため、自由端部51の変位量が少なくても、座板40の湾曲形状を大きく変更することができる。
【0069】
また、本実施形態では、座板40は、座体4を形成していている。この構成によれば、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる座体4が得られる。
【0070】
また、本実施形態では、座板40は、左右方向に離間して形成された一対の網状板部42を備えている。この構成によれば、一対の網状板部42の左右方向外側の領域(外側板部43)と左右方向内側の領域(支持間部53を形成する中央板部41)が個別に弾性変形し易くなり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0071】
本実施形態に係る椅子1は、上記座体4の荷重支持構造体を備えるため、多様な体格の着座者に対し適切なフィット感を与えることができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、手動操作なしで座体4の湾曲形状を、多様な体格の着座者に応じて適宜変更することができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0074】
図10は、第2実施形態に係る椅子の正面図である。図11は、図10に示す領域XIの拡大図である。図12は、図11に示す矢視XII-XII断面図である。図13は、図11に示す矢視XIII-XIII断面図である。図14は、図10に示す矢視XIV-XIV断面図である。図15は、図10に示す矢視XV-XV断面図である。
図10に示すように、第2実施形態に係る椅子1は、湾曲形状変更手段50の被支持部52が、背凭れ板20と一体的に形成されている点で上記実施形態と異なる。
【0075】
第2実施形態の背凭れ板20は、図10に示す正面視で、四隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。背凭れ板20は、背凭れ板20の外形を形成する枠部21と、枠部21の内側においてスリット23を介して分離された複数の帯状部22と、枠部21の内側において左右の帯状部22の間に配置された柱状部24と、を備えている。スリット23は、第1スリット23aと、第2スリット23bと、第3スリット23cと、を含んでいる。
【0076】
柱状部24は、背凭れ板20の左右方向の中央部において上下方向に延びている。第2実施形態の第1スリット23aは、柱状部24の左右両側に形成されている。第2実施形態の第2スリット23bは、柱状部24の左側の第1スリット23aから左右方向外側に延在すると共に、柱状部24の右側の第1スリット23aから左右方向外側に延在している。
【0077】
第2実施形態の第3スリット23cは、第2スリット23bの左右方向外側の端部から、L字状に屈曲し、枠部21と帯状部22との接続幅を、帯状部22の上下方向の幅よりも狭くしている。なお、第2実施形態において、帯状部22の上下方向の幅は、左右方向内側の端部においても狭くなっており、その先細りの先端部に被支持部52が一体的に形成されている。
【0078】
背凭れ支持部材7は、上下方向に延びて、背凭れ板20の左右方向の中央部を支持する第1支持部30と、第1支持部30の上端部から左右方向両側に延びて、背凭れ板20の上端部を支持する第2支持部31と、を備えている。第1支持部30は、柱状部24の下端部と、柱状部24の上端部付近の2箇所を、ボルトなどの固定部材32を介して固定している。また、第2支持部31は、背凭れ板20の枠部21の上端の左右方向に延びる一辺の左右2箇所を、ボルトなどの固定部材32を介して固定している。
【0079】
図11に示すように、湾曲形状変更手段50の被支持部52は、帯状部22の左右方向内側の端部に一体的に形成されている。被支持部52は、背凭れ支持部材7によって上下方向に延びる回動軸回りに枢支される枢支軸100を備えている。背凭れ支持部材7は、被支持部52から上下方向両側に延びる一対の枢支軸100を枢支する一対の枢支部34を備えている。一対の枢支部34は、第1支持部30に一体的に形成されている。つまり、第2実施形態では、第1実施形態で述べたボールスタッド52a、ソケット52b、及び取付板33(図3参照)が無く、帯状部22が第1支持部30に直接支持されている。
【0080】
図12に示すように、被支持部52は、前後方向奥側に凸となるU字状の断面形状を有している。枢支軸100は、被支持部52の上下面から上下方向両側に突設されている。枢支軸100は、その先端部の前後方向奥側の角部を斜めに落とした傾斜面100aを有する円柱状に形成されている。枢支部34は、枢支軸100の前後方向手前側に係合するL字状のフック形状を有している。枢支部34の前後方向手前側を向く面には、枢支軸100の挿入時に、枢支軸100の傾斜面100aと摺接する傾斜面34aが形成されている。
【0081】
被支持部52は、枢支軸100よりも前後方向奥側に球面部101を有している。球面部101は、スリット102によって上下に分離している。なお、スリット102の上下方向の幅は、枢支軸100と枢支部34との係合代以上あるとよい。これにより、枢支部34の傾斜面34aに枢支軸100の傾斜面100aを合わせて、被支持部52を押し込んだときに、被支持部52がスリット102の上下方向の幅に応じて圧縮変形し、枢支軸100が枢支部34を乗り越える。その後、被支持部52が復元変形することで、枢支軸100が枢支部34の裏面側に係合する。なお、スリット102は、図11に示すように、被支持部52の弾性変形のし易さを調整するため、帯状部22まで延在させてもよい。
【0082】
第1支持部30は、枢支軸100が枢支部34に係合した状態で、球面部101と前後方向奥側で対向する球面受け部35を有している。球面受け部35は、図12及び図13に示すように、球面部101と、わずかに隙間110をあけて対向する対向面35aを有している。これにより、被支持部52(帯状部22)は、上下方向に延びる枢支軸100を中心とした回動だけでなく、前後方向に延びる軸回りの捩じり、左右方向に延びる軸回りの捩じりにも対応することができるようになる。
【0083】
上述した第2実施形態に係る背凭れ6の荷重支持構造体(椅子の荷重支持構造体)によれば、図10に示すように、複数の帯状部22は、背凭れ板20の幅方向中央部でスリット23を介して左右に分離された一対の帯状部22を含み、一対の帯状部22のそれぞれの幅方向内側の端部は、背凭れ板20の幅方向中央部で背凭れ支持部材7に支持されている。この構成によれば、背凭れ板20の幅方向中央部における分離によって、左右の一対の帯状部22が個別に弾性変形できるため、幅方向中央部を起点とする背凭れ板20の受面の湾曲形状の変更が容易になり、着座者の体格に対する追従性が向上する。
【0084】
また、第2実施形態では、一対の帯状部22のそれぞれの幅方向内側の端部は、図12に示すように、背凭れ支持部材7によって上下方向に延びる回動軸回りに枢支される枢支軸100を備える。この構成によれば、左右一対の帯状部22の幅方向外側の枠部21(自由端部51)に着座者から荷重が加わると、当該一対の帯状部22のそれぞれが幅方向内側の端部に設けられた上下方向に延びる枢支軸100を中心に回動するため、枠部21への荷重入力に連動して背凭れ板20が前後に変形し易くなる。また、球面部101と球面受け部35との間にわずかに隙間110をあけることで、前後方向に延びる軸回りの捩じり、左右方向に延びる軸回りの捩じりにも対応することができる。
【0085】
また、第2実施形態では、図14に示すように、背凭れ板20の柱状部24と背凭れ支持部材7の第1支持部30との間に、柱状部24の前後方向への弾性変形を許容する空間S1が形成されている。具体的に、柱状部24には、固定部材32による固定位置において、後方に突出するスペーサ部24aが設けられている。スペーサ部24aには、固定部材32(ボルト)の頭部を収容する有底筒状の座ぐりが形成されている。そして、柱状部24の上下2箇所の固定位置においてスペーサ部24aが第1支持部30の前面側に当接することで、空間S1が形成されている。
【0086】
背凭れ板20は、左右方向両側の自由端部51が前後方向に撓むという構成になっており、背凭れ支持部材7との固定位置が左右方向の中央部に限定されるが、上述した図2等に示す第1実施形態のように、その中央部で前後方向の遊びが無い場合、左右方向両側の自由端部51の撓みやすさと比較して、相対的に硬さを感じやすい。第2実施形態では、これを回避するため、柱状部24を上下2箇所で固定する固定部材32の固定位置の間で、第1支持部30に対する前後方向の遊び(空間S1)を持たせている。
【0087】
また、第2実施形態では、柱状部24は、前後方向に厚みを有する板状になっている。これにより、柱状部24が前後方向に撓み易くなっている。詳しくは、柱状部24は、図10に示すように、上下方向に延びる帯状体であり、左右方向に幅を有し、前後方向に厚みを有している。また、柱状部24は、平断面視及び側断面視のいずれにおいても板状になっている。
【0088】
また、第2実施形態では、図15に示すように、柱状部24の前面の位置は、被支持部52(詳しくは、帯状部22の左右方向内側の端部の前面の位置)よりも前方に位置している。これにより、柱状部24の前後方向の撓み代の大きさを確保することができ、また、柱状部24が被支持部52(硬さを感じやすい部分)よりも先行して着座者に当接することができる。なお、柱状部24と帯状部22との間には、前後方向に段差が生じるが、図1に示すように、背凭れ板20を覆うクッション材及びシート表皮材が取り付けられている場合には、着座者は当該段差を極端に感じることはない。
【0089】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0090】
例えば、座体4の荷重支持構造体で説明したバネ部材90を、背凭れ6の荷重支持構造体に適用してもよい。つまり、背凭れ6の湾曲形状変更手段50として、自由端部51、被支持部52に加え、バネ部材90(板バネ部92)を含んでもよいし、背凭れ6の付勢手段60として、背凭れ板20に加え、バネ部材90(支持部91)を含んでも良い。また、例えば、座体4の荷重支持構造体にバネ部材90が無く、座体4の湾曲形状変更手段50が自由端部51、被支持部52によって構成され、また、座体4の付勢手段60が座板40によって構成されていても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 椅子
4 座体
5 座受部材
6 背凭れ
7 背凭れ支持部材
20 背凭れ板
20a 受面
21 枠部
22 帯状部
23 スリット
40 座板
40a 受面
41 中央板部
42 網状板部
43 外側板部
50 湾曲形状変更手段
51 自由端部
52 被支持部
52a ボールスタッド
52b ソケット
52c ボス
52d タッピングネジ
53 支持間部
60 付勢手段
91 支持部
92 板バネ部
100 枢支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15