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特開2023-47257導電性ペーストの製造方法及び積層セラミックキャパシタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047257
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】導電性ペーストの製造方法及び積層セラミックキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230329BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230329BHJP
   B22F 1/107 20220101ALI20230329BHJP
【FI】
H01G4/30 311D
H01B13/00 Z
H01G4/30 517
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
B22F9/00 B
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 M
B22F1/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000090
(22)【出願日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126518
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テ ギュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、エウン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ビュン ロク
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA07
4K018AA40
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC13
4K018BD04
4K018CA09
4K018CA33
4K018KA33
5E001AB03
5E001AC09
5E001AH01
5E001AJ01
5E082AB03
5E082BC36
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082LL01
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】
セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する際に、セラミックグリーンシート中の有機バインダーを膨潤または溶解させるシートアタック(sheet attack)現象が発生せず、結果的に得られる積層セラミックキャパシタのショート不良を防止する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物を形成する段階と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物を形成する段階と、上記第1及び第2混合物を混合して第3混合物を形成する段階と、を含む導電性ペーストの製造方法を提供する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物を形成する段階と、
親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物を形成する段階と、
前記第1及び第2混合物を混合して第3混合物を形成する段階と、を含む、導電性ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記第3混合物を撹拌する段階をさらに含む、請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記第2混合物に対する前記第1混合物の体積比率は1以下である、請求項1または2に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項4】
前記第1混合物の粒子の直径は0.1~100μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項5】
前記第1混合物における前記分散剤の含有量は0.01wt%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項6】
前記金属粉末は、Ni、Cu、Au、Ag、Pd、Pt及びこれらの合金からなる群から選択されたいずれか1つ以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項7】
セラミックグリーンシートを設ける段階と、
前記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを形成する段階と、
前記導電性ペーストが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を形成する段階と、
前記セラミック積層体を焼成する段階と、
前記セラミック積層体の外部に外部電極を形成する段階と、を含み、
前記導電性ペーストは、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物とを含み、前記第1混合物が前記第2混合物内に分散されたエマルジョンである、積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項8】
前記第2混合物に対する前記第1混合物の体積比率は1以下である、請求項7に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項9】
前記第1混合物の粒子の直径は0.1~100μmである、請求項7または8に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記第1混合物における前記分散剤の含有量は0.01wt%以上である、請求項7から9のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記金属粉末は、Ni、Cu、Au、Ag、Pd、Pt及びこれらの合金からなる群から選択されたいずれか1つ以上である、請求項7から10のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストの製造方法及び積層セラミックキャパシタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、導電性ペーストの製造方法及び積層セラミックキャパシタの製造方法に関するものである。特に、積層セラミックキャパシタの内部電極を形成するためにセラミックグリーンシート上に直接形成される導電性ペーストに関するものである。
【0003】
現在、積層セラミックキャパシタは、セラミックグリーンシートと導電性ペーストを用いた内部電極パターンを交差積層して形成する。セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウム(BaTiO3)等に代表されるセラミック粉末と有機バインダーを主成分とする。
【0004】
従来は、疎水性を示す有機溶媒に有機バインダーを溶解させたビヒクル中に金属粉末が分散された形態の導電性ペーストを使用していた。
【0005】
したがって、図1のように、従来の導電性ペーストを形成し乾燥して、第1及び第2内部電極パターン21、22が既に積層されたセラミックグリーンシート10上に形成される場合、導電性ペースト中の有機溶媒がセラミックグリーンシート10中の有機バインダーを膨潤または溶解させる「シートアタック(sheet attack)」現象が発生した。
【0006】
このようなシートアタック現象は、最終製品である積層セラミックキャパシタの誘電体層の絶縁性を低下させたり、ショート発生率を増加させたりする等の問題をもたらした。
【0007】
このような問題点を解決するために、特許文献1では、金属粉末、エチルセルロースなどの樹脂で構成される有機バインダー及びジヒドロテルピネオールなどの溶剤で構成される導電性ペーストを開示している。
【0008】
しかし、溶剤としてジヒドロテルピネオールを使用する場合、上記溶剤の含有量が十分でないと、導電性ペーストの粘性が高くなり、作業性を著しく低下させるという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2では、金属成分、水溶性樹脂及び水を含有する導電性ペーストを開示しているが、金属粉末の表面全体を親水性に改質しなければならないという問題点が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP 1997-017687 A
【特許文献2】JP 1999-233388 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のいくつかの目的の一つは、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する際に、セラミックグリーンシート中の有機バインダーを膨潤または溶解させるシートアタック(sheet attack)現象が発生せず、結果的に得られる積層セラミックキャパシタのショート不良を防止することである。
【0012】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物を形成する段階と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物を形成する段階と、上記第1及び第2混合物を混合して第3混合物を形成する段階と、を含む導電性ペーストの製造方法を提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、セラミックグリーンシートを設ける段階と、上記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを形成する段階と、上記導電性ペーストが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を形成する段階と、上記セラミック積層体を焼成する段階と、上記セラミック積層体の外部に外部電極を形成する段階と、を含み、上記導電性ペーストは、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物とを含み、上記第1混合物が上記第2混合物内に分散されたエマルジョンである積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態による導電性ペーストの製造方法及び積層セラミックキャパシタの製造方法を提供することにより、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する際に、シートアタック(sheet attack)現象が発生せず、結果的に得られる積層セラミックキャパシタの誘電体層の絶縁性の低下防止、及びショート不良率を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の導電性ペーストを印刷して第1及び第2内部電極パターンをセラミックグリーンシート上に形成したことを示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による導電性ペーストの製造工程を示す工程フローチャートである。
図3】本発明の一実施形態による導電性ペーストの製造工程を概略的に示す概略図である。
図4図3のP領域を示す拡大図である。
図5】本発明の実施形態による導電性ペーストの乾燥塗膜を光学顕微鏡(Optical microscope)によって分析した写真である。
図6】本発明の実施形態によって製造された導電性ペーストを含む積層セラミックキャパシタの斜視図である。
図7図6の積層セラミックキャパシタをA-A'線に沿って切断した断面図である。
図8】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造工程を示す工程フローチャートである。
図9】導電性ペーストが形成されたセラミックグリーンシートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、X方向は第2方向、Y方向は第3方向、Z方向は第1方向または積層方向と定義することができる。
【0020】
[導電性ペーストの製造方法]
以下、図2図5を参照して、本発明の一実施形態による導電性ペーストの製造方法について詳細に説明する。
【0021】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による導電性ペーストの製造方法は、金属粉末101、分散剤102及び疎水性溶媒103を含む第1混合物110を形成する段階(S1)と、親水性バインダー201及び親水性溶媒202を含む第2混合物210を形成する段階(S2)と、上記第1及び第2混合物110、210を混合して第3混合物310を形成する段階(S3)と、を含む。
【0022】
以下、本実施形態による導電性ペーストの製造工程を各段階別に詳細に説明する。
【0023】
図3を参照すると、金属粉末101、分散剤102及び疎水性溶媒103を含む第1混合物110を形成することができる(S1)。
【0024】
金属粉末101は、導電性を有すれば十分であり、特に制限されるものではないが、例えば、Ni、Cu、Au、Ag、Pd、Pt及びこれらの合金からなる群から選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0025】
分散剤102としては、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などを使用することができ、これらを単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0026】
後述するように、上記第1混合物に含まれる分散剤102は、第1混合物110と第2混合物210の界面に吸着される。この場合、分散剤102の疎水性基は第1混合物110側に、親水性基は第2混合物210側に吸着される。
【0027】
分散剤102が第1混合物110及び第2混合物210の界面に吸着されると、第3混合物310は水中油滴型(oil in water)エマルジョンの形態でより安定的に保持されることができる。
【0028】
疎水性溶媒103は、疎水性を示すものであれば十分であり、特に制限されるものではないが、例えば、ジヒドロテルピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のアセテート系溶剤、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のテルペン系溶剤、トリデカン、ノナン、シクロヘキサン等の炭化水素系、カルボキシル酸系及びエステル系溶剤などの有機溶媒を使用することができる。
【0029】
但し、第1混合物110の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、セラミック共材など、各種の添加剤をさらに含むことができる。
【0030】
図3を参照すると、第1混合物110は、疎水性溶媒103内に上記金属粉末101及び分散剤102が均一に分散されている形態で存在する。
【0031】
次に、親水性バインダー201及び親水性溶媒202を含む第2混合物210を形成することができる(S2)。
【0032】
バインダーは、セラミックグリーンシートと導電性ペーストに含まれる粒子の間の結合性の向上に寄与する有機成分である。親水性バインダー201は、親水性を示すものであれば十分であり、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、セルロースまたは水溶性アクリル樹脂などを使用することができる。
【0033】
親水性バインダー201は、第1混合物110粒子内の金属粉末111などに影響を与えず、導電性ペーストの乾燥時に金属粉末の集合体が分散できるマトリックスの役割を果たす。
【0034】
親水性溶媒202は、親水性バインダー201を溶解し得るものであれば十分であり、特に制限されるものではないが、例えば、水またはジメチルスルホキシドなどを使用することができる。
【0035】
図3を参照すると、第2混合物210は、親水性202溶媒内に親水性バインダー201が分散されている形態で存在する。
【0036】
次に、第1混合物110と第2混合物210とを混合して第3混合物310を形成することができる(S3)。
【0037】
本発明の一実施形態による導電性ペーストの製造方法は、第3混合物310を撹拌する段階をさらに含むことができる。
【0038】
図3を参照すると、撹拌された第3混合物301はエマルジョン(Emulsion)の状態で存在することができる。エマルジョンとは、ある液体中にその液体に溶解されない他の液体粒子が、コロイド粒子又はそれより大きい粒子として分散された物質を意味する。
【0039】
本発明の一実施形態によると、第2混合物210に対する第1混合物110の体積比率は1以下であってもよい。第2混合物210に対する第1混合物110の体積比率が1以下である場合、第3混合物310は疎水性を示す上記第1混合物110が親水性を示す第2混合物210内に球状の粒子形態で分散された水中油滴型(oil in water)エマルジョンの状態で存在することができる。
【0040】
図3を参照すると、第2混合物210内に分散された第1混合物110粒子の直径は、好ましくは0.1~100μmであってもよい。上記第1混合物110の粒子の直径が0.1~100μmである場合、第1混合物110は一定の大きさの粒子として第2混合物210内に分散されて均一な形態のエマルジョンを形成することができる。
【0041】
従来の導電性ペーストは、金属粉末とバインダーなどの疎水性を示す有機溶媒に分散させて製造した。この場合、導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷して内部電極を形成する際に、導電性ペーストに含まれた有機溶媒とセラミックグリーンシートに含まれる有機バインダーとが互いに相溶性を有し、導電性ペーストが既に積層されたセラミックグリーンシートを溶解または膨潤させるという問題点が存在していた。
【0042】
後述するように、本発明の一実施形態によって製造された導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に形成する場合は、第3混合物310状態の導電性ペーストが既に積層されたセラミックグリーンシート上に形成される。
【0043】
すなわち、親水性を示す第2混合物210が上記セラミックグリーンシート上に存在するが、互いに相溶性を有さない。また、第1混合物110は、第2混合物210内に分散された球状の粒子形態で存在するため、第1混合物110は上記セラミックグリーンシート上に存在しない。したがって、第1混合物110の疎水性溶媒103が、上記積層されたセラミックグリーンシート中の有機バインダーを膨潤又は溶解させることはない。
【0044】
セラミックグリーンシートに形成された導電性ペーストを乾燥する過程を経る間にも、第1混合物110内の分散剤102により、第3混合物310はエマルジョンの形態を保持することができる。結局、疎水性溶媒103及び親水性溶媒202のみが乾燥過程で除去され、上記乾燥された導電性ペーストは、親水性バインダー201からなるマトリックス内に金属粉末の集合体が均一かつ稠密に分散された形態を有する。
【0045】
したがって、積層セラミックキャパシタの製造工程で導電性ペーストが形成された複数のセラミックグリーンシートを積層しても、既に積層されたセラミックグリーンシートに対するシートアタック(sheet attack)現象が発生しなくなる。
【0046】
図4を参照すると、上記第1混合物に含まれる分散剤102は、第1混合物110と第2混合物210の界面に吸着される。この場合、上記分散剤の疎水性基102aは第1混合物側に、親水性基102bは第2混合物側に吸着される。上記分散剤が第1混合物110及び第2混合物210の界面に吸着されると、水中油滴型(oil in water)エマルジョンの形態がより安定的に保持されることができる。
【0047】
第1混合物110における分散剤102の含有量は、好ましくは0.01wt%以上であってもよい。
【0048】
第1混合物110における分散剤102の含有量が0.01wt%以上である場合、水中油滴型(oil in water)エマルジョンの形態がより安定的に保持されることができる。すなわち、複数の積層工程を経る間にも水中油滴型(oil in water)エマルジョンの形態が保持され、既に積層されたセラミックグリーンシートに対するシートアタック現象を抑制することができる。
【0049】
[実験例]
27.68wt%のNi粉末と0.5wt%の既存の界面活性剤(ED116、アミン系分散剤)及び溶媒としてヘキシルアセテートを含む第1混合物と、バインダーとして5wt%のポリビニルアルコール及び溶媒として水を含む第2混合物を形成した。
【0050】
上記第1混合物と第2混合物を体積比率1:5で混合して第3混合物を形成し、撹拌してエマルジョン形態の導電性ペーストを作製した。
【0051】
上記製造された導電性ペーストをPETフィルム上にブレードでコーティングした後、60℃で熱風乾燥して第1及び第2混合物に存在する溶媒を全て蒸発させて導電性ペーストの乾燥塗膜を形成し、光学顕微鏡(OM)でこれを観察した。
【0052】
図5を参照すると、第1及び第2混合物の各溶媒は全て除去される。すなわち、親水性バインダーは乾燥後にも存在し、親水性乾燥塗膜を形成する。
【0053】
また、乾燥過程を経る間にも分散剤は残留し、エマルジョンの形態が保持される。したがって、Ni粉末は、親水性バインダー内に均一かつ稠密に分散された球状のNi集合体の形態で存在することが確認できる。
【0054】
[積層セラミックキャパシタの製造方法]
本発明の一実施形態によって製造された導電性ペーストは、積層セラミックキャパシタにおいて内部電極を製造するための用途として使用されることができる。
【0055】
図6は、本発明の実施形態による導電性ペーストを含む積層セラミックキャパシタ400の斜視図であり、図7は、図6の積層セラミックキャパシタ400をA-A'線に沿って切断した断面図である。
【0056】
図6及び図7を参照すると、上記セラミック本体410は、複数の誘電体層411と、誘電体層411上に形成された第1及び第2内部電極421、422とを含み、第1及び第2内部電極421、422が形成された複数の誘電体層411が積層されて形成されてもよい。また、第1及び第2内部電極421、422は、一誘電体層411を挟んで互いに対向するように配置されてもよい。上記第1及び第2内部電極は、本発明の実施形態によって製造された導電性ペーストにより形成されてもよい。
【0057】
上記セラミック本体410の外部には第1及び第2外部電極431、432が形成され、それぞれ第1及び第2内部電極421、422と電気的に接続する。具体的に、上記第1及び第2外部電極431、432は、上記第1及び第2内部電極421、422とそれぞれ電気的に連結されるようにセラミック本体410の外部面に別の導電性ペーストを塗布した後、焼結して形成することができる。
【0058】
図8は、本発明の実施形態による積層セラミックキャパシタ400の製造工程の工程フローチャートである。
【0059】
図8を参照すると、積層セラミックキャパシタの製造方法は、セラミックグリーンシートを設ける段階(P1)と、上記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを形成する段階(P2)と、上記導電性ペーストが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を形成する段階(P3)と、上記セラミック積層体を焼成する段階(P4)と、上記セラミック積層体の外部に外部電極を形成する段階(P5)と、を含み、上記導電性ペーストは、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物とを含み、上記第1混合物が上記第2混合物内に分散されたエマルジョンであることを特徴とする。
【0060】
以下では、本発明の実施形態による積層セラミックキャパシタの製造工程を各段階別に詳細に説明する。
【0061】
まず、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのセラミックパウダー及び有機バインダーなどを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設ける(P1)。
【0062】
次に、上記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを形成する(P2)。上記導電性ペーストは、金属粉末、分散剤及び疎水性溶媒を含む第1混合物と、親水性バインダー及び親水性溶媒を含む第2混合物とを含み、上記第1混合物が上記第2混合物内に分散されたエマルジョンであることを特徴とする。
【0063】
導電性ペーストを形成する方法は特に制限されるものではないが、例えば、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができる。
【0064】
次に、上記導電性ペーストが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を形成し(P3)、上記積層体の外部に外部電極を形成する(P4)。上記外部電極を形成する段階は、外部電極用ペーストを用いて行うことができる。上記外部電極用ペーストの塗布は、上記積層体を外部電極用ペーストにディッピング(dipping)して行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
図9は、既に積層されたセラミックグリーンシート111上に本発明の実施形態による導電性ペーストを形成したものを示す。
【0066】
本発明の実施形態による導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に形成する場合、親水性を示す上記第2混合物210'が上記セラミックグリーンシート111上に存在するが、第2混合物210'とセラミックグリーンシート111中の有機バインダー等は互いに相溶性を有さない。
【0067】
また、第1混合物110'は第2混合物210'内に分散された球状の粒子形態で存在するため、第1混合物110'はセラミックグリーンシート上111に存在しない。したがって、第1混合物110'の疎水性溶媒103'が積層されたセラミックグリーンシート111中の有機バインダーを膨潤または溶解させない。
【0068】
セラミックグリーンシートに形成された導電性ペーストを乾燥する過程を経る間にも、第1混合物110'内の分散剤102'により、導電性ペーストはエマルジョンの形態を保持することができる。
【0069】
結局、疎水性溶媒103'及び親水性溶媒202'のみが乾燥過程で除去され、乾燥された導電性ペーストは、親水性バインダー201'からなるマトリックス内に金属粉末101'の集合体が均一かつ稠密に分散された形態を有するようになる。
【0070】
したがって、積層セラミックキャパシタの製造工程で導電性ペーストが形成された複数のセラミックグリーンシートが積層されても、既に積層されたセラミックグリーンシートに対するシートアタック(sheet attack)現象は発生しない。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的事項から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には自明なものである。
【符号の説明】
【0072】
11、111:セラミックグリーンシート
21:第1内部電極パターン
22:第2内部電極パターン
101、101':金属粉末
102、102':分散剤
102a:分散剤の疎水性基
102b:分散剤の親水性基
103、103':疎水性溶媒
110、110':第1混合物
201、201':親水性バインダー
202、202':親水性溶媒
210、210':第2混合物
310、310':第3混合物
400:積層セラミックキャパシタ
410:セラミック本体
411:誘電体層
421:第1内部電極
422:第2内部電極
431:第1外部電極
432:第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9