IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特開-無線車上局システム 図1
  • 特開-無線車上局システム 図2
  • 特開-無線車上局システム 図3A
  • 特開-無線車上局システム 図3B
  • 特開-無線車上局システム 図3C
  • 特開-無線車上局システム 図4
  • 特開-無線車上局システム 図5
  • 特開-無線車上局システム 図6
  • 特開-無線車上局システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047270
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】無線車上局システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/16 20090101AFI20230329BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20230329BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20230329BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20230329BHJP
   H04W 84/08 20090101ALI20230329BHJP
【FI】
H04W36/16
H04W4/42
H04W4/00 110
H04W24/08
H04W84/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053445
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021155158
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成田 真也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和人
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067DD34
5K067EE24
5K067HH22
5K067JJ12
5K067JJ31
(57)【要約】
【課題】アナログ無線システムとデジタル無線システムを運用状態に追従して切替可能な、アナログ・デジタル併用機能を装備した列車無線車上局を提供する。
【解決手段】無線地上局システムと通信する無線車上局システムであって、アナログ波によって前記無線地上局システムと通信するアナログ車上局と、デジタル波によって前記無線地上局システムと通信するデジタル車上局と、前記アナログ車上局及び前記デジタル車上局の一方をインターフェイス装置と接続するインターフェイス切替装置とを備え、前記デジタル車上局は、起動時にデジタル波の通信状態及び運用状態を監視し、前記監視の結果に基づいて、アナログ波又はデジタル波に自動的に追従するように切り替え信号を前記インターフェイス切替装置に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線地上局システムと通信する無線車上局システムであって、
アナログ波によって前記無線地上局システムと通信するアナログ車上局と、
デジタル波によって前記無線地上局システムと通信するデジタル車上局と、
前記アナログ車上局及び前記デジタル車上局の一方をインターフェイス装置と接続するインターフェイス切替装置とを備え、
前記デジタル車上局は、
起動時にデジタル波の通信状態及び運用状態を監視し、
前記監視の結果に基づいて、アナログ波又はデジタル波に自動的に追従するように切り替え信号を前記インターフェイス切替装置に出力することを特徴とする無線車上局システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線車上局システムであって、
前記デジタル車上局は、操作部を有し、
前記デジタル車上局は、前記操作部の操作に基づいて、前記デジタル車上局と接続する信号又は前記アナログ車上局と接続する信号を前記インターフェイス装置に出力することを特徴とする無線車上局システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線車上局システムであって、
前記デジタル車上局は、
前記デジタル波の通信状態及び運用状態を判定し、
前記判定の結果がデジタル波運用中である場合、前記デジタル車上局と接続する信号を前記インターフェイス装置に出力することを特徴とする無線車上局システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の無線車上局システムであって、
前記デジタル車上局は、前記デジタル波の通信状態及び運用状態のみによって、前記デジタル波が運用中であるかを判定することを特徴とする無線車上局システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一つに記載の無線車上局システムであって、
前記デジタル車上局は、前記通信状態が同期確立であり、かつ前記運用状態が試験中でない場合、前記デジタル波が運用中であると判定することを特徴とする無線車上局システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線車上局システムであって、
前記デジタル車上局は、
起動後の第1の所定時間、前記通信状態を繰り返し判定し、
前記通信状態が同期確立である場合、第2の所定時間、前記運用状態を繰り返し判定し、
前記第2の所定時間連続して前記運用状態が試験中でない場合、前記デジタル波運用中であると判定することを特徴とする無線車上局システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線車上局システムに関し、特に、アナログ無線システムとデジタル無線システムとが併用される環境において、アナログ無線システムとデジタル無線システムとを選択的に切り替える方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ無線システムからデジタル無線システムへの切り替えにおいて、地上側でアナログ無線システムとデジタル無線システムを併用で運用し、車上側ではアナログ車上局を取り外し、デジタル車上局を取り付けて更新する方法が多かった。
【0003】
しかしながら、アナログ無線システムとデジタル無線システムを併用せずに、あるタイミングで全面的に切り替える場合、車上局側で、車両回路及び車載設備とのインターフェイス装置で、アナログ車上局又はデジタル車上局のいずれかに切り替えて接続する必要があるためアナログ・デジタル車上局を搭載し、切替機能を有する必要がある。
【0004】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2007-82075号公報)には、予め設定された軌道に沿って移動する移動局装置と、軌道に沿って設けられる複数の基地局装置と、複数の基地局装置を管理する制御局装置を備え、移動局装置と基地局装置とが無線により通信し、移動局装置が軌道に沿って移動するに従って複数の基地局装置のそれぞれへハンドオフする構成において、移動局装置は自装置の進行方向を特定する情報を基地局装置を介して制御局装置へ送信し、制御局装置は、移動局装置から送信される情報を基地局装置を介して受信し、受信された情報に基づいて移動局装置のハンドオフ先となる基地局装置を予測し、予測結果に基づいてハンドオフを制御する無線通信システムが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-82075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アナログ無線システムとデジタル無線システムを併用せずに、あるタイミングで全面的に切り替える場合、システム移行準備期間において、アナログ無線システムで運用中に地上側のデジタル無線システムで試験電波を送信することがある。無線システムの基地局装置は電波を常時送信しており、運用中の車上局システムは、アナログ波はアナログ車上局にて受信し、デジタル波はデジタル車上局にて受信する。しかし、アナログ車上局とデジタル車上局間にて相互に受信状態を共有していない。そのため、アナログ電波の有無ではデジタル無線システムの運用状況の正確な把握が困難である。したがって、運用中のシステムへの車両回路及びインターフェイス装置の自動的かつ正確な切り替えが困難である。
【0007】
基本的にはデジタル無線システムの試験電波は正しく設定し送信するが、試験電波の設定を間違えた場合、または、デジタル波を送信できない場合はアナログ車上局とデジタル車上局を選択することができない。
【0008】
本発明は、デジタル車上局の無線にてアナログ無線システムとデジタル無線システムを選択して切り替え可能、かつデジタル車上局操作器を基にデジタル無線システムを固定またはアナログ無線システムとデジタル無線システムを切り替え可能な列車無線車上局の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、無線地上局システムと通信する無線車上局システムであって、アナログ波によって前記無線地上局システムと通信するアナログ車上局と、デジタル波によって前記無線地上局システムと通信するデジタル車上局と、前記アナログ車上局及び前記デジタル車上局の一方をインターフェイス装置と接続するインターフェイス切替装置とを備え、前記デジタル車上局は、起動時に通信状態及び運用状態を監視し、前記監視結果に基づいて、アナログ波又はデジタル波に自動的に追従するように切り替え信号を前記インターフェイス切替装置に出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一例の無線通信システムでは、前記デジタル車上局は、操作部を有し、前記デジタル車上局は、前記操作部の操作に基づいて、前記デジタル車上局と接続する信号又は前記アナログ車上局と接続する信号を前記インターフェイス装置に出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一例の無線通信システムでは、前記デジタル車上局は、前記デジタル波の通信状態及び運用状態を判定し、前記判定の結果がデジタル波運用中である場合、前記デジタル車上局と接続する信号を前記インターフェイス装置に出力することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一例の無線通信システムでは、前記デジタル車上局は、前記デジタル波の通信状態及び運用状態のみによって、前記デジタル波運用中であるかを判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一例の無線通信システムでは、前記デジタル車上局は、前記通信状態が同期確立であり、かつ前記運用状態が試験中でない場合、前記デジタル波運用中であると判定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一例の無線通信システムでは、前記デジタル車上局は、起動後の第1の所定時間、前記通信状態を繰り返し判定し、前記通信状態が同期確立である場合、第2の所定時間、前記運用状態を繰り返し判定し、前記第2の所定時間連続して前記運用状態が試験中でない場合、前記デジタル波運用中であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、スムーズにシステム切替を実施できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の列車無線車上局システムの構成図である。
図2】本発明の実施例1の列車無線車上局システムの構成図である。
図3A】本発明の実施例1のデジタル車上局の制御部が起動時に実行するアナログ・デジタル切替判定処理のフローチャートである。
図3B】本発明の実施例1のデジタル車上局の制御部が起動時に実行するアナログ・デジタル切替判定処理のフローチャートである。
図3C】本発明の実施例1の操作器のボタン操作に起因して制御部が実行するアナログ・デジタル切替処理のフローチャートである。
図4】本発明の実施例1のデジタル車上局の操作器の構成図である。
図5】本発明の実施例2の無線通信システムの構成図である。
図6】本発明の実施例2の列車無線車上局システムの構成図である。
図7】本発明の実施例2のデジタル車上局の制御部が実行するアナログ・デジタル切替判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1の無線通信システムを構成する列車無線車上局システムの構成図である。
【0018】
本実施例の列車無線車上局システム20は、アナログ列車無線地上局システム1、及びデジタル列車無線地上局システム2に接続される。列車無線車上局システム20は、アナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6を有する。アナログ車上局3はアナログ列車無線地上局システム1と通信し、デジタル車上局4は、デジタル列車無線地上局システム2と通信する。インターフェイス切替装置6は、車両回路5Aをアナログ車上局3及びデジタル車上局4のいずれかと接続する。車両回路5Aは、車両の走行を統合的に制御する装置や、列車無線車上局システム20を介して司令所と音声通話が可能となる車載装置(非常通報装置、車内放送装置、マスコンキー)である。
【0019】
また、本実施例の列車無線車上局システム20は、先頭号車(1号車)に設置されるアナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6と、末尾号車(8号車)に設置されるアナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6とを有する。1号車のインターフェイス切替装置6と8号車のインターフェイス切替装置6は、引き通し線を介して音声及び車上局の状態を通信している。また、1号車のデジタル車上局4と8号車のデジタル車上局4は、引き通し線を介して操作器の信号を通信している。
【0020】
このように、本実施例の無線通信システムでは、アナログ無線システムとデジタル無線システムとの移行中は、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2が併設されており、列車無線車上局システム20は、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2の一方と送信する。
【0021】
図2は、実施例1の列車無線車上局システム20の構成図である。
【0022】
列車無線車上局システム20は、前述したように、アナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6を有する。デジタル車上局4は、制御部7、無線部8、操作器9及び共用器11を有する。
【0023】
制御部7は、不揮発メモリ、既発メモリ、プロセッサ(CPU)で構成している。制御部7の不揮発メモリには、線区毎のプログラムが格納されており、入力されるマスコンキーの情報に従って、いずれかのプログラムを選択的して揮発メモリに展開して起動する。ある線区のプログラムが起動するとアナログ・デジタル切替判定処理(図3C)を実行し、システムの運用状況に応じてアナログ列車無線地上局システム1又はデジタル列車無線地上局システム2のいずれかと通信する。また、図4に示すデジタル車上局4の操作器9の複数のボタンを操作した際に、アナログ/デジタル切替処理(図3C)を実行する。
【0024】
無線部8は、異なるチャネルで通信する複数の無線機、例えば、異なる周波数チャネルで通信する制御チャネル用デジタル無線機81、通信チャネル用デジタル無線機82及び直接防護用デジタル無線機83を有する。制御チャネル用デジタル無線機81は、デジタル列車無線地上局システム2との間で制御信号を送受信する。通信チャネル用デジタル無線機82は、デジタル列車無線地上局システム2との間で音声通話信号を送受信する。直接防護用デジタル無線機83は、列車防護用の信号を送受信する。
【0025】
操作器9は、チャネルを選択したり、防護発報や防護受報のために操作されるスイッチ、動作状態を示すランプや表示器、デジタル車上局4で通話するための送受話器を有する。操作器9は、アナログ車上局3と共通でもよい。
【0026】
図4は、実施例1のデジタル列車無線車上局の操作器の構成例を示す図である。
【0027】
操作器9は、ハンドセット901、防護発報ボタン902、非常発報ボタン903、回生ブレーキ復帰ボタン904、了解ボタン905、電源ランプ906、話中ランプ907、自車故障ランプ908,他車故障ランプ909、非常通報ランプ910、入庫ランプ911、応答ボタン912、割込ボタン913、自車/他車ボタン914、良好/失敗ボタン915、7セグメント表示器916、手動切替ボタン917、線区切替ボタン918、及び音量変更ボタン919を有する。
【0028】
ハンドセット901は、通話の際に使用する送話器及び受話器を有する。
【0029】
防護発報ボタン902は、デジタル車上局4から防護発報をデジタル列車無線地上局システム2に送信するために操作される。非常発報ボタン903は、デジタル車上局4から非常発報をデジタル列車無線地上局システム2に送信するために操作される。回生ブレーキ復帰ボタン904は、デジタル車上局4が受信した防護発報信号に基づいて作動した回生ブレーキの復帰のために操作される。了解ボタン905は、一斉通話や個別通話でのデジタル列車無線地上局システム2からの了解に対する確認のために操作される。
【0030】
電源ランプ906は、デジタル車上局4の電源オン状態に基づいて点灯する。話中ランプ907は、デジタル列車無線地上局システム2との通話中に点灯する。自車故障ランプ908は、当該操作器9が設けられた車両のデジタル車上局4の故障時に点灯する。他車故障ランプ909は、当該操作器9が設けられた車両と逆側の車両のデジタル車上局4の故障時に点灯する。非常通報ランプ910は、非常通報の通話中に点灯する。入庫ランプ911は、車庫に入庫するときに点灯する。
【0031】
応答ボタン912は、着信中に操作すると、当該着信に応答し、司令側の音声をスピーカから出力する。割込ボタン913は、他の車上局の通話に割り込んで通話するために操作される。自車/他車ボタン914は、冗長構成の現用デジタル車上局4を切り替えるために操作される。又は、自車/他車ボタン914は、現用のデジタル車上局4が当該操作器9が設けられた車両の車上局である場合は自車を点灯し、当該操作器9が設けられた車両と逆側の車両の車上局である場合は他車を点灯する。
【0032】
良好/失敗ボタン915は、車庫から出庫時に操作され、車上局としての健全性を確認する。健全性確認結果が良好であれば良好ランプを所定時間点灯後に消灯し、健全性確認結果が不良であれば失敗ランプを所定時間点灯後に消灯する。
【0033】
7セグメント表示器916は、二桁の数字を表示可能な表示デバイスであり、例えば線区切替操作時に線区を表す数字を表示する。
【0034】
手動切替ボタン917及び線区切替ボタン918は、線区を切り替える際に操作される。例えば、手動切替ボタン917を操作すると点灯し、手動切替ボタン917の点灯中に線区切替ボタン918を操作すると7セグメント表示器916の表示が切り替わり、点灯中の手動切替ボタン917を操作すると消灯し、7セグメント表示器916に表示された線区に切り替わる。
【0035】
音量変更ボタン919は、スピーカから出力される音量を小ボタン・中ボタン・大ボタンによって切り替える。なお、ロータリスイッチで音量を選択するものでもよい。
【0036】
共用器11は、無線部8とアンテナ12Aの間に設けられ、異なる周波数の信号を混合及び分離して、必要な周波数の信号を各無線機81~83に配分し、他の周波数の信号を抑圧する。なお、アナログ車上局3はデジタル車上局4と異なるアンテナ12Bに接続されるが、共用器11を介して、共通のアンテナ12Aに接続されてもよい。
【0037】
図3A図3Bは、実施例1のデジタル車上局4の制御部7が実行するアナログ・デジタル切替判定処理のフローチャートである。
【0038】
まず、デジタル車上局4は、車両回路5Aから線区情報を受け取る(S101)。例えば、車両回路5Aに挿入されたマスコンキーの操作によって線区を判定し、インターフェイス切替装置6に線区情報を入力してもよい。また、操作器9に設けられた線区選択ボタンの操作によって線区情報が入力されてもよい。
【0039】
制御部7は、入力された線区情報に対応する線区プログラムを起動する(S102)。線区3プログラムにはアナログ・デジタル切替機能が実装されている。線区3プログラムが起動した場合にはステップS103以後のアナログ・デジタル切替処理が実行され、線区1~2プログラムが起動した場合にはステップS103以後のアナログ・デジタル切替処理を実行せず、プログラムで指定された周波数において無線部8が起動し、デジタル列車無線地上局システム2と通信が可能となる。
【0040】
その後、制御部7は、デジタル固定かを判定し(S103)、デジタル固定であれば、デジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S104)。制御部7は、デジタル固定でなければ、アナログ固定かを判定する(S105)。制御部7は、アナログ固定であれば、アナログ指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S106)。
【0041】
例えば、デジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信(S104)する前に、デジタル固定状態を車上局7が不揮発メモリに保持した場合、又は、操作器9にて図3Cに示す操作を行いデジタルを選択した場合に、デジタル固定と判定される(S103でYES)。
【0042】
また、操作器9にて図3Cに示す操作を行いアナログを選択した場合に、アナログ固定と判定される(S104でYES)。
【0043】
制御部7は、デジタル固定でもアナログ固定でもなければ、デジタル試験継続数及びアナログ試験継続数を0に設定する(S107)。そして、制御部7は、デジタルが受信できない場合にアナログ運用にするためのアナログ運用判定タイマを起動する(S108)。そして、制御部7は、アナログ運用判定タイマが満了しているかを判定し、アナログ運用判定タイマが満了している場合は、アナログ運用に悪影響を及ぼさないよう、デジタル無線機の送受信を停止する(S110)。さらに、アナログ指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S106)。
【0044】
アナログ運用判定タイマが満了していなければ、同期中か判定する(S112)。同期なしの場合は、アナログ試験継続数及びデジタル試験継続数を0に設定する(S127)。同期中かの判定にて、同期ありの場合は、デジタル波が試験中か判定する(S113)。
【0045】
制御部7は、デジタル波が試験中の場合、デジタル試験継続数を0に設定し、アナログ試験継続数に1を加算する(S114)。その後、アナログ試験継続数が所定閾値を超えたか判定する(S115)。アナログ試験継続数が所定閾値を超えた場合はデジタル無線機の送受信を停止し(S110)、アナログ指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S126)。アナログ試験継続数が所定閾値を超えていない場合はアナログ運用判定タイマ満了の判定(S109)に戻る。
【0046】
制御部7は、デジタル波が非試験中の場合、デジタル試験継続数に1を加算し、アナログ試験継続数を0に設定し(S116)、デジタル試験継続数が所定閾値を超えたか判定する(S117)。デジタル試験継続数が所定閾値を超えた場合はデジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S124)。デジタル試験継続数が所定閾値を超えない場合はアナログ運用判定タイマ満了の判定(S109)に戻る。
【0047】
なお、アナログ・デジタル切替判定処理は、プログラム起動時のみではなく、デジタル列車無線地上局システム2の通信状態及び運用状態を繰り返し判定し、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への切替後にも、デジタル列車無線地上局システム2からアナログ列車無線地上局システム1へ再度切替可能としてもよい。例えば、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への切替後、列車無線車上局システム20で切り戻し操作を行うことなく、デジタル列車無線地上局システム2のトラブルによってアナログ列車無線地上局システム1に切り戻しが可能となり、アナログ無線システムとデジタル無線システムを併用運用できる。
【0048】
このように、列車無線車上局システム20は、デジタル列車無線の通信状態と運用状態を判定して、インターフェイス切替装置6の動作を切り替えて、デジタル列車無線地上局システム2を優先しつつ、アナログ列車無線地上局システム1及びデジタル列車無線地上局システム2のいずれにも接続できるようにしている。
【0049】
さらに、本実施例のデジタル車上局4は、操作器9の複数のボタンを組み合わせた操作によって、アナログ波やデジタル波とは関係なく、デジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信できるように構成されている。
【0050】
図3Cは、実施例1の操作器9のボタン操作に起因して制御部7が実行するアナログ・デジタル切替処理のフローチャートである。
【0051】
まず、制御部7は、複数ボタン押下継続数を0に設定する(S201)。そして、制御部7は、ボタン操作判定タイマを起動し(S202)、ボタン操作判定タイマの満了(S203)のタイミングで、複数のボタンが操作中であるかを判定する(S204)。複数のボタンが操作中でない場合、S202へ戻り、ボタン操作判定タイマを起動して、ボタン操作を判定する。一方、複数のボタンが操作中である場合、複数ボタン操作継続数を1増加する(S205)。
【0052】
そして、制御部7は、複数ボタン操作継続数が所定の閾値を超えたかを判定する(S206)。その結果、複数ボタン操作継続数が所定の閾値を超えない場合は、S202に戻り、ボタン操作判定タイマを起動して、ボタン操作を判定する。一方、複数ボタン操作継続数が規定値を超える場合、複数のボタンの操作が所定時間継続しているので、複数ボタン操作継続数を0に設定し(S207)、デジタル選択状態を操作器9の7セグメント表示器916に表示し(S208)、デジタル固定を不揮発メモリに保持する(S209)。そして、デジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S210)。
【0053】
このように、任意の複数のボタンの操作が所定時間継続すると、アナログ車上局3による通信からデジタル車上局4による通信に切り替えるので、係員の手動によって、アナログ通信からデジタル通信に切り替えできる。なお、デジタル通信への切り替えのために操作されるボタンを特定のボタンに限定してもよい。さらに、アナログ通信からデジタル通信への切り替えと、デジタル通信からアナログ通信への切り替えを選択可能としてもよい。さらに、操作器9の操作によってアナログ通信が不可能なデジタル通信固定に切替可能としてもよい。
【0054】
以上に説明したように、本発明の実施例1によると、デジタル波及びデジタル波の試験電話の状態により、自動的にデジタル波とアナログ波を選択できる。また、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2を併用せずに、あるタイミングで全面的に切り替える場合でも、線区プログラムにアナログ・デジタル切替判定処理を実装するので、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への移行準備期間において、自動的にインターフェイス切替装置6を運用中のアナログ車上局3又はデジタル車上局4に切替可能となり、システム切替をスムーズに実施できる。さらに、車上局の操作器によってアナログ波とデジタル波を予備的に切り替えできる。
【0055】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を説明する。図5は、実施例2の無線通信システムの構成図である。
【0056】
本実施例の無線通信システムは、アナログ列車無線地上局システム1、デジタル列車無線地上局システム2、及び列車無線車上局システム20を有する。列車無線車上局システム20は、アナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6を有する。アナログ車上局3はアナログ列車無線地上局システム1と通信し、デジタル車上局4は、デジタル列車無線地上局システム2と通信する。インターフェイス切替装置6は、車両回路・インターフェイス装置5Bをアナログ車上局3及びデジタル車上局4のいずれかと接続する。車両回路・インターフェイス装置5Bは、車両の走行を統合的に制御する電子回路や、列車無線車上局システム20を介して司令所と音声通話が可能となる車載装置(非常通報装置、車内放送装置など)である。
【0057】
このように、本実施例の無線通信システムでは、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2が併設されており、列車無線車上局システム20は、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2のいずれとも通信可能となっている。例えば、アナログ無線システムとデジタル無線システムとの間の移行中や、一つの線区内でアナログ無線システムとデジタル無線システムが併設される場合がある。また、アナログ無線システムとデジタル無線システムとの移行中は、アナログ列車無線地上局システム1及びデジタル列車無線地上局システム2が同時に送信しており、車両回路・インターフェイス装置5Bをアナログ車上局3又はデジタル車上局4のいずれかに接続する必要がある。
【0058】
図6は、実施例2の列車無線車上局システム20の構成図である。
【0059】
列車無線車上局システム20は、前述したように、アナログ車上局3、デジタル車上局4及びインターフェイス切替装置6を有する。デジタル車上局4は、制御部7、無線部8、操作器9及び共用器11を有する。
【0060】
制御部7は、メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサ(CPU)で構成される。制御部7には、線区毎のプログラムが搭載されており、入力されたマスコンキーの情報に従って、いずれかのプログラムが選択的に起動される。線区4プログラムにはアナログ・デジタル切替機能が実装されており、線区4プログラムが起動するとアナログ・デジタル切替判定処理(図7)が実行され、システムの運用状況に応じてアナログ列車無線地上局システム1又はデジタル列車無線地上局システム2のいずれかと通信する。
【0061】
無線部8は、異なるチャネルで通信する複数の無線機、例えば、異なる周波数チャネルで通信する制御チャネル用デジタル無線機81、通信チャネル用デジタル無線機82及び直接防護用デジタル無線機83を有する。制御チャネル用デジタル無線機81は、デジタル列車無線地上局システム2との間で制御信号を送受信する。通信チャネル用デジタル無線機82は、デジタル列車無線地上局システム2との間で音声通話信号を送受信する。直接防護用デジタル無線機83は、列車防護用の信号を送受信する。
【0062】
操作器9は、チャネルを選択したり、防護発報や防護受報のために操作されるスイッチ、動作状態を示すランプや表示器、デジタル車上局4で通話するための送受話器を有する。操作器9は、アナログ車上局3と共通でもよい。
【0063】
共用器11は、無線部8とアンテナ12Aの間に設けられ、異なる周波数の信号を混合及び分離して、必要な周波数の信号を各無線機81~83に配分し、他の周波数の信号を抑圧する。なお、アナログ車上局3はデジタル車上局4と異なるアンテナ12Bに接続されるが、共用器11を介して、共通のアンテナ12Aに接続されてもよい。
【0064】
図7は、実施例2のデジタル車上局4の制御部7が実行するアナログ・デジタル切替判定処理のフローチャートである。
【0065】
まず、デジタル車上局4は、車両回路・インターフェイス装置5Bから線区情報を受け取る(S101)。例えば、車両回路・インターフェイス装置5Bがマスターコントローラに挿入されたマスコンキーの操作によって線区を判定し、インターフェイス切替装置6に線区情報を入力してもよい。また、操作器9に設けられた線区選択ボタンの操作によって線区情報が入力されてもよい。
【0066】
制御部7は、入力された線区情報に対応する線区プログラムを起動する(S102)。前述したように、線区4プログラムにはアナログ・デジタル切替機能が実装されている。線区4プログラムが起動した場合にはステップS103以後のアナログ・デジタル切替処理が実行され、線区1~3プログラムが起動した場合にはステップS103以後のアナログ・デジタル切替処理を実行せず、プログラムで指定された周波数において無線部8が起動し、デジタル列車無線地上局システム2と通信が可能となる。
【0067】
その後、制御部7は、デジタル車上局4とデジタル列車無線地上局システム2との通信状態を判定するデジタル同期判定監視処理を起動する(S103)。デジタル同期判定監視処理では、デジタル同期判定タイマを起動し(S104)、デジタル同期判定タイマ満了まで、デジタル波の通信状態(例えば、同期が確立しているか)を繰り返し判定する(S105)。
【0068】
そして、デジタル車上局4とデジタル列車無線地上局システム2との同期が確立していなければ、ステップS110に進み、デジタル同期判定タイマが満了するまで、ステップS105からステップS109の処理を繰り返し実行する。なお、デジタル同期判定タイマで所定時間判定するのではなく、予め定められた回数判定してもよい。
【0069】
一方、デジタル車上局4とデジタル列車無線地上局システム2との同期が確立していれば、デジタル列車無線地上局システム2の運用状態を判定するデジタル運用判定定周期監視処理を起動する(S106)。デジタル運用判定定周期監視処理では、デジタル運用判定タイマを起動し(S107)、デジタル運用判定タイマ満了まで、デジタル列車無線地上局システム2が試験中信号を送信しているかを繰り返し判定する(S108)。なお、デジタル運用判定タイマで所定時間判定するのではなく、予め定められた回数判定してもよい。デジタル運用判定タイマの期間中においてデジタル列車無線地上局システム2から送信された試験中信号を受信すれば、デジタル列車無線地上局システム2は運用中でないと判定し、デジタル運用判定タイマの満了及びデジタル同期判定タイマの満了を待って(S109、S110)、デジタル無線通信不可の判定結果を出力し(S111)、アナログ指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S112)。インターフェイス切替装置6は、アナログ車上局3と車両回路・インターフェイス装置5Bを接続して、アナログ無線通信を運用する。
【0070】
一方、デジタル列車無線地上局システム2との同期が確立しているが、デジタル運用判定タイマの全期間中においてデジタル列車無線地上局システム2から送信された試験中信号を受信しなければ、デジタル列車無線地上局システム2は運用中であると判定し、デジタル運用判定タイマの満了及びデジタル同期判定タイマの満了を待って(S113、S114)、デジタル無線通信可能の判定結果を出力し(S115)、デジタル指定信号をインターフェイス切替装置6へ送信する(S116)。インターフェイス切替装置6は、デジタル車上局4と車両回路・インターフェイス装置5Bを接続して、デジタル無線通信を運用する。
【0071】
なお、アナログ・デジタル切替判定処理は、プログラム起動時のみではなく、デジタル列車無線地上局システム2の通信状態及び運用状態を繰り返し判定し、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への切替後にも、デジタル列車無線地上局システム2からアナログ列車無線地上局システム1へ再度切替可能としてもよい。例えば、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への切替後、列車無線車上局システム20で切り戻し操作を行うことなく、デジタル列車無線地上局システム2のトラブルによってアナログ列車無線地上局システム1に切り戻しが可能となり、アナログ無線システムとデジタル無線システムを併用運用できる。
【0072】
このように、列車無線車上局システム20は、デジタル列車無線の通信状態と運用状態を判定して、インターフェイス切替装置6の動作を切り替えて、デジタル列車無線地上局システム2を優先しつつ、アナログ列車無線地上局システム1及びデジタル列車無線地上局システム2のいずれにも接続できるようにしている。
【0073】
以上に説明したように、本発明の実施例2によると、アナログ列車無線地上局システム1とデジタル列車無線地上局システム2を併用せずに、あるタイミングで全面的に切り替える場合でも、線区プログラムにアナログ・デジタル切替判定処理を実装するので、アナログ列車無線地上局システム1からデジタル列車無線地上局システム2への移行準備期間において、自動的にインターフェイス切替装置6を運用中のアナログ車上局3又はデジタル車上局4に切替可能となり、システム切替をスムーズに実施できる。
【0074】
以上、本発明についてアナログ列車無線システムとデジタル列車無線システムが併用される環境において、デジタル車上局4がアナログ列車無線システムとデジタル列車無線システムを選択的に切り替える方法を説明した。本発明は、アナログ無線システムからデジタル無線システムを所定のタイミングで一斉に切り替える場合に好適であるが、単に、アナログ無線システムとデジタル無線システムが併用される場合や、列車無線システムではない他の無線システムにも適用可能である。
【0075】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0076】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウエアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウエアで実現してもよい。
【0077】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0078】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0079】
1 アナログ列車無線地上局システム
2 デジタル列車無線地上局システム
3 アナログ車上局
4 デジタル車上局
5A 車両回路
5B 車両回路・インターフェイス装置
6 インターフェイス切替装置
7 制御部
8 無線部
9 操作器
11 共用器
12A、12B アンテナ
20 列車無線車上局システム
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7