(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047288
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム及び靴底
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230329BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230329BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20230329BHJP
A47G 27/02 20060101ALN20230329BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/48 004
A43B13/04 A
A47G27/02 Z
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122079
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021155130
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】大村 京平
【テーマコード(参考)】
3B120
4F050
4J034
【Fターム(参考)】
3B120AB15
3B120EB11
4F050BA43
4F050HA56
4F050HA73
4J034BA07
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4J034DB03
4J034DB07
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
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4J034HC06
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4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA03
4J034QB01
4J034QB14
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】
反発弾性が良好であるとともに硬度が適度に小さく、かつ永久圧縮歪にも優れるポリウレタンフォーム、及び当該ポリウレタンフォームを用いて構成された靴底を提供する。
【解決手段】
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、ポリオール成分が、1種以上のポリプロピレン系グリコールを含むとともに、1種以上のポリプロピレン系グリコールの総和100質量%において個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールを50質量%未満(但し0を含む)の範囲で含み、1種以上のポリプロピレン系グリコールは、全体の重量平均分子量が4000以上9000以下であり、全体の平均官能基数が2.50以上4.00以下であり、全体の平均当量が1600以上2500以下となるようポリウレタンフォームを構成し、また当該ポリウレタンフォームを靴底部材として用いて靴底を構成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、
ポリオール成分が、1種以上のポリプロピレン系グリコールを含むとともに、
前記1種以上のポリプロピレン系グリコールの総和100質量%において個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールを50質量%未満(但し0を含む)の範囲で含み、
前記1種以上のポリプロピレン系グリコールは、
全体の重量平均分子量が4000以上9000以下であり、
全体の平均官能基数が2.50以上4.00以下であり、
全体の平均当量が1600以上2500以下である
ことを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
JIS K 7312:1996に準拠し、アスカーゴム硬度計C硬度を用いて測定された硬度が10以上25以下であり、
JIS K 6255:2013に準拠して測定された反発弾性率が50%以上である請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS K 6262:2013に準拠して測定された圧縮永久歪率が20%以下である請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリオール成分100質量%において、1種以上のポリプロピレン系グリコールを90質量%以上含む請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
イソシアネートインデックスが0.8以上1.11以下である請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
任意の部分又は全体が、請求項1又は2に記載のポリウレタンフォームを靴底部材として用いて構成されたことを特徴とする靴底。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム及び靴底に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の用途における構成部材としてポリウレタンフォームやエチレン-酢酸ビニル共重合体フォームなどの発泡体が使用されている。たとえばポリウレタンフォームを用いて製造された靴底部材は、反発弾性に優れており、一般使用のシューズはもちろん、ウォーキングシューズ、ランニングシューズ、トレッキングシューズなどの運動用シューズの靴底の構成部材として使用されている。また、上記ポリウレタンフォームは、靴底部材としての用途に限らず、たとえば作業場における床敷きのマットや精密機械を設置する際の下敷き用マットなどのマット部材としても使用することができる。
【0003】
反発弾性に優れる靴底を用いた運動用シューズは、蹴り出しがサポートされ足運びが容易となるので、長時間のランニングやウォーキングにおいて、疲労の蓄積を軽減する効果が期待される。また反発弾性に優れる靴底は、運動用シューズに限らず、たとえばビジネスシューズなどを含む日常生活において使用される一般使用の靴においても、歩き易さや疲れ難さなどの効果をもたらし得る。
尚、本発明に関し靴底とは、靴の底部分を指し、靴底部材とは、靴底の一部又は全部を構成する構成部材(材料)を指す。
【0004】
たとえば、特許文献1には、高反発弾性率を幅広い温度帯域で有し、機械的強度や生産性に優れるポリウレタンインテグラルスキンフォームの提供を課題とする発明が開示されている。具体的には、特許文献1には、有機イソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、発泡剤(D)を原料とし、有機イソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1000~3500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7~25質量%の有機イソシアネート(a1)であるポリウレタンインテグラルスキンフォームの発明が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、耐久性があって反発性等も備えたポリウレタンフォームの提供を課題とするポリウレタンフォームが開示されている。具体的には、特許文献2には、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料からなり、ポリオール成分が、数平均分子量が300~3000、平均官能基数が2~3、及び平均水酸基価が50~200mgKOH/gのポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、上記イソシアネート成分が、所定のイソシアネート基末端プレポリマーと、所定の変性MDIとを含み、当該プレポリマーと当該変性MDIとの含有比率、イソシアネートインデックス、及び圧縮永久歪が所定範囲に特定されたポリウレタンフォームが開示されている。
【0006】
また特許文献3には、高いオキシエチレン含有量を有するポリエーテルポリオールとMDIベースのイソシアネートとをモールド中にて反応させることによって軟質ポリウレタンフォームを製造する方法が開示されている。特許文献3には、かかる製造方法によれば、モールド成型時の脱型が容易であり、また圧縮永久歪などに優れるポリウレタンフォームを製造することができ、製造されたポリウレタンフォームはたとえばポリウレタン製の家具部品、自動車座席などの自動車部品の製造に使用される旨、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-204635号公報
【特許文献2】特開2017-105913号公報
【特許文献3】特表2003-523425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで靴底やマットなど、使用者の体重が繰り返し負荷される用途に関する技術分野では、クッション性に優れ体重をかけた際の足裏の感触が良好である等の理由から、硬度が適度に低いウレタンフォームが好まれる。そのため、これらの用途に用いられるポリウレタンフォームは、反発弾性に優れるとともに、硬度が適度に低いことが好ましい。
【0009】
しかしながら、ポリウレタンフォームの反発弾性を向上させた場合、一般的には、当該ポリウレタンフォームの硬度も上がる傾向にある。加えて、靴底部材やマットなどのように、繰り返し荷重がかかる用途に用いられたウレタンフォームは、家具等に用いられた場合に比べて商品寿命が短い傾向にある。また特に反発弾性が高く、あるいは硬度が低いポリウレタンフォームは、圧縮永久歪が大きい傾向にあるという問題があった。
【0010】
したがって、反発弾性が良好であるとともに硬度が適度に小さく、かつ圧縮永久歪が小さいポリウレタンフォームの提供が期待される。かかる期待を満足させるという観点において、上記特許文献1~3はいずれも改善の余地があった。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、反発弾性が良好であるとともに硬度が適度に小さく、かつ永久圧縮歪にも優れるポリウレタンフォーム、及び当該ポリウレタンフォームを用いて構成された靴底を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、ポリオール成分が、1種以上のポリプロピレン系グリコールを含むとともに、前記1種以上のポリプロピレン系グリコールの総和100質量%において個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールを50質量%未満(但し0を含む)の範囲で含み、前記1種以上のポリプロピレン系グリコールは、全体の重量平均分子量が4000以上9000以下であり、全体の平均官能基数が2.50以上4.00以下であり、全体の平均当量が1600以上2500以下であることを特徴とする。
【0013】
また本発明の靴底は、本発明のポリウレタンフォームを靴底部材として用いて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を備える本発明によれば、良好な反発弾性を維持しつつ、適度に低い硬度を示し、かつ圧縮永久歪にも優れるポリウレタンフォームの提供が可能である。
本発明のポリウレタンフォームは上述する優れた物性を備え、種々の技術分野に使用可能である。たとえば、本発明のポリウレタンフォームを用いて構成された靴底部材を備える靴底は、運動用シューズ又は日常使用の靴の靴底として好ましく使用される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリウレタンフォーム]
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分、発泡剤、触媒、整泡剤及びイソシアネート成分等を用いて製造される。そのため、本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分及びその他の成分の全部又は一部を含む。
本発明のポリウレタンフォームに含まれるポリオール成分は、1種以上のポリプロピレン系グリコールを含む。本発明では、上記1種以上のポリプロピレン系グリコールの総和100質量%において、個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールを50質量%未満(但し0を含む)の範囲で含む。
上記1種以上のポリプロピレン系グリコールは、全体の重量平均分子量が4000以上8200以下であり、全体の平均官能基数が2.50以上4.00以下であり、全体の平均当量が1600以上2500以下である。
以下において本発明に関し、本発明のポリウレタンフォームを構成するために用いられるポリオール成分に含まれる1種以上ポリプロピレン系グリコールを、「ポリプロピレン系グリコール群」と呼ぶ場合がある。つまり、本発明のポリウレタンフォームにおいて、2種以上のポリプロピレン系グリコールを含む場合には、これらをまとめて「ポリプロピレン系グリコール群」と呼び、ポリオール成分として含まれるポリプロピレン系グリコールが1種である場合であっても、便宜上、この1種のポリプロピレン系グリコールをポリプロピレン系グリコール群と呼ぶ場合がある。
上記個別の重量平均分子量とは、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールそれぞれの重量平均分子量を指す。また上記全体の重量平均分子量とは、ポリプロピレン系グリコール群100質量%に含まれる各ポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量と質量割合とを用いて算出されたポリプロピレン系グリコール群の重量平均分子量を指す。
【0016】
上述する構成を満たすことで、本発明は、高い反発弾性と、低い硬度とを併せ持ち、かつ圧縮永久歪にも優れたポリウレタンフォームを提供することが可能である。また本発明のポリウレタンフォームは、成形後の収縮率が小さいか、または実質的に収縮しないため、成形性が良好である。以下に、本発明のポリウレタンフォームの詳細について説明する。尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限および下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限および下限のすべての組み合わせから決定することができる。
【0017】
[ポリオール成分]
ポリオール成分は、ポリオールを含む。本発明におけるポリオール成分は、ポリプロピレン系グリコールを含むものである。
【0018】
ポリプロピレン系グリコール:
上記ポリオール成分に含まれるポリプロピレン系グリコールは、1種であってもよく、また2種以上であってもよい。本発明の目的効果の妨げにならない範囲において、上記ポリプロピレン系グリコールとして、ポリウレタンフォームの製造にあたり用いられ得る全てのポリプロピレン系グリコールから採用し得る。
より具体的には、上記ポリプロピレン系グリコールは、オキシプロピレン骨格を含むポリグリコールであればよく、たとえば、ポリプロピレングリコールのホモポリマーであってもよく、またオキシプロピレンとその他の成分とからなる共重合体であってもよく、中でもオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体であるグリコール(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)は、好適である。
尚、ポリオール成分に含まれるポリプロピレン系グリコールが2種以上であるとは、異なる化合物名の2種以上のポリプロピレン系グリコールを含む態様、及び同じ化合物名であって互いに重量平均分子量、官能基数及び当量のいずれか又は全てが異なる2種以上のポリプロピレン系グリコールを含む態様のいずれも含む。たとえば、後者の一例として、ポリウレタンフォームにおいてポリオール成分として重量平均分子量が異なる2種以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含む態様が挙げられる。
【0019】
ポリプロピレン系グリコールは非晶性であり、良好な反発弾性を妨げず低い硬度を実現可能なポリオールである。かかる観点から、本発明では、ポリオール成分100質量%において、1種以上のポリプロピレン系グリコール(ポリプロピレン系グリコール群)が90質量%以上含まれることが好ましく、95質量以上含まれることがより好ましく、実質的に100質量%含まれることが特に好ましい。本発明の趣旨を逸脱しない場合において、ポリオール成分100質量%において、100質量%未満のポリプロピレン系グリコール群と、それ以外のポリオールを含んでいてもよい。
【0020】
(重量平均分子量)
上述するポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量は特に限定されないが、3000以上10000以下であることが好ましく、4000以上10000以下であることがより好ましく、4500以上10000以下であることがさらに好ましく、6500以上9000以下であることが特に好ましい。ポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量が3000以上であることにより、ポリウレタンフォームの硬度を低下させる効果が高くなり、この傾向は、重量平均分子量が大きくなるほど顕著である。また上記重量平均分子量を10000以内とすることで、ウレタン反応時におけるポリオールとイソシアネートとの反応性を良好に維持することができ、ポリウレタンフォームの成形性が良い。
【0021】
一方、本発明では、上述するポリプロピレン系グリコール群の全体の重量平均分子量は4000以上9000以下となるよう調整される。上記全体の重量平均分子量は、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールが、1種である場合には当該ポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量に相当する。ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールが2種以上である場合には、かかる2種以上の各ポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量と配合比率から全体の重量平均分子量を算出される。
上記全体の重量平均分子量が4000未満であると、ポリウレタンフォームの成形時の収縮の発生や硬化不良が生じ、あるいは良好な反発弾性率や圧縮永久歪が示され難い。また、上記全体の重量平均分子量が9000を超える場合、成形されるポリウレタンフォームの粘性が過剰に高くなり成形性が不良になる虞がある。これらの観点から、上述するポリプロピレン系グリコール群の全体の重量平均分子量は4500以上8700以下であることが好ましく、5000以上8500以下であることがより好ましく、5500以上8200以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明では上述するとおり種々の重合平均分子量を示すポリプロピレン系グリコールを使用することができるが、ポリプロピレン系グリコール群100質量%において個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールは50質量%未満(但し0を含む)の範囲で含有されることが肝要である。たとえば2種以上のポリプロピレン系グリコールを含むポリプロピレン系グリコール群の重量平均分子量が上述する好ましい範囲であっても、ポリプロピレン系グリコール群100質量%において個別の重量平均分子量が4000以下であるポリプロピレン系グリコールを50質量%以上含む場合には、製造時のポリウレタンフォームの収縮が著しく、製品として使用に足るものが製造されない虞がある。
【0023】
(平均官能基数)
本発明のポリオールとして用いられるポリプロピレン系グリコールの個別の平均官能基数は特に限定されないが、2以上4以下であることが好ましい。ポリプロピレン系グリコールの個別の平均官能基数が2以上4以下であることにより、良好な反応性となり、容易にポリウレタンフォームの成形が可能である。
尚、個別の平均官能基数とは、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールそれぞれの平均官能基数を指す。
【0024】
本発明において、上記ポリプロピレン系グリコール群の全体の平均官能基数は2.50以上4.00以下となるよう調整される。当該全体の平均官能基数は、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールが、1種である場合には当該ポリプロピレン系グリコールの個別の平均官能基数に相当し、また2種以上である場合には、かかる2種以上の各ポリプロピレン系グリコールの個別の平均官能基数と配合比率から算出される。
上記全体の平均官能基数が2.50未満であると、製造時のポリウレタンフォームの収縮が顕著である場合がある。また、上記全体の平均官能基数が4.00を超える場合、架橋点が増え、フォームが硬くなるという問題がある。これらの観点から、上記ポリプロピレン系グリコール群の全体の平均官能基数は2.60以上、4.00以下であることが好ましく、2.70以上4.00以下であることがより好ましく、2.90以上、4.00以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(平均当量)
本発明のポリオールとして用いられるポリプロピレン系グリコールの個別の平均当量は特に限定されないが、1600以上2500以下であることが好ましい。ポリプロピレン系グリコールの個別の平均当量が上述する好ましい範囲である場合、後述する全体の平均当量を良好な数値範囲に調整し易い。
尚、個別の平均当量とは、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールそれぞれの平均当量を指す。また、本発明に関し、当量とは、PPGの重量平均分子量を個別の平均官能基数で割った値を指す。
【0026】
本発明において、ポリオールに含まれるポリプロピレン系グリコール群の全体の平均当量は1600以上2500以下となるよう調整される。上記全体の平均当量は、ポリプロピレン系グリコール群に含まれるポリプロピレン系グリコールが、1種である場合には当該ポリプロピレン系グリコールの個別の平均当量に相当し、また2種以上である場合には、かかる2種以上の各ポリプロピレン系グリコールの個別の平均当量と配合比率から算出される。
上記全体の平均当量が1600未満であると、ポリウレタンフォームの成形時の収縮の発生や硬化不良が生じ、あるいは良好な反発弾性率や圧縮永久歪が示され難い。また、上記全体の平均当量が2500を超える場合、成形されるポリウレタンフォームの粘性が過剰に高くなり成形性が不良になり、あるいは良好な反発弾性率が示されにくい場合がある。これらの観点から、ポリオールに含まれるポリプロピレン系グリコール群の全体の平均当量は1600以上2400以下であることが好ましく、1700以上2400以下であることがより好ましく、1800以上2400以下であることがさらに好ましい。
【0027】
[イソシアネート成分]
本発明のポリウレタンフォームは、イソシアネート成分を含む。上記イソシアネート成分は、イソシアネートを含むものである。
イソシアネート成分に含まれるイソシアネートとしては、ポリウレタンフォームを製造する際に用いられる従来公知のイソシアネートを適宜選択して用い得る。上記イソシアネートは1種で用いられてもよく、また2種以上を混合して用いられてもよい。また1種以上のイソシアネートと、後述するイソシアネート基末端プレポリマーとを混合して用いてもよく、イソシアネートとして、イソシアネート基末端プレポリマーのみを用いてもよい。
【0028】
変性MDI:
より具体的には、イソシアネート成分に含まれるイソシアネートとしては、変性MDI(変性ジフェニルメタンジイソシアネート)が含まれることが好ましい。
常温で液体である変性MDIの具体例としては、たとえば、ポリメリック体(クルードMDI)、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体などが挙げられる。中でも、ポリオール成分との反応後の分子(架橋)構造が優れる点から、変性MDIとして、ポリメリック体(クルードMDI)及び/又はカルボジイミド変性体が選択されることが好ましい。またポリメリック体(クルードMDI)としては、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリフェニルメタンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とのポリイソシアネート混合物等が挙げられる。
【0029】
イソシアネート基末端プレポリマー:
イソシアネート成分に含まれるイソシアネート基末端プレポリマー(以下、単にプレポリマーともいう)としては、重量平均分子量が3000以上9000以下のポリオール成分に対してイソシアネート成分を反応させたものであり、イソシアネート基含有率が3質量%以上15質量%以下のイソシアネート基末端プレポリマーが含まれることが好ましい。
イソシアネート基末端プレポリマーに用いられるポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等があげられる。中でも、ポリエーテルポリオールを用いるのが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、前述したポリプロピレン系グリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等が用いられ、ポリプロピレン系グリコールを用いるのがより好ましい。
ポリオール成分の重量平均分子量が9000を超え、あるいはイソシアネート基含有率が3質量%未満のプレポリマーを用いた場合、製造されるポリウレタンフォームの発泡性が不十分となり硬度が高くなる場合があり、またそのようなプレポリマーは、粘度が大きく、他の材料との混合が困難になり易く生産性に劣る場合がある。
一方、ポリオール成分の重量平均分子量が3000未満であり、あるいはイソシアネート基含有率が15質量%を超えるプレポリマーを用いた場合、製造されるポリウレタンフォームは発泡が進み過ぎて、良好な反発弾性が示されない場合がある。
【0030】
上記プレポリマーは、ポリオールとイソシアネートとを、イソシアネート基が過剰(イソシアネート基含有率が3~15質量%)となるように反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーである。
【0031】
上述するポリオール成分とイソシアネート成分との配合比は、本発明の所期の課題を達成する範囲において適宜決定することができるが、たとえばイソシアネートインデックスが0.8以上1.11以下となるよう調整されることが好ましく、1.03以上1.07以下に調整されることがより好ましい。上記範囲のイソシアネートインデックスが満たされたポリウレタンフォームは、硬度が小さく、かつ良好な反発弾性が示され易い。イソシアネートインデックスが0.8未満である場合、ポリウレタンフォームの反発弾性率が十分に高くならない場合があり、1.11を超える場合、ポリウレタンフォームの硬度が十分に小さくならない場合がある。
尚、イソシアネートインデックスは、ポリウレタンフォームの製造に用いられるイソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、ポリオール成分に含まれる活性水素(イソシアネート反応性水素原子)との当量比を算出することで特定される。
【0032】
本発明のポリウレタンフォームを製造する際、上記ポリオール成分に加え、適宜、整泡剤、触媒、架橋剤、発泡剤などの添加剤が使用される。したがって、本発明のポリウレタンフォームにこれらの添加剤の一部又は全部が含まれていてもよい。
【0033】
整泡剤:
整泡剤は、ポリプロピレン系グリコールを含むポリオール成分と、イソシアネートとを反応させウレタン反応を生じさせ、モールド(成形型)内で発泡硬化させる際、ウレタンフォームのセルサイズを良好なものとするために用いられる。整泡剤は、ウレタンフォームの製造に使用できるものであれば特に限定されない。良好な反発弾性が得られやすいという観点からは、整泡剤の粘度は300~2000mPa・s(25℃)であることが好ましく、800~1000mPa・s(25℃)であることがより好ましい。かかる好適な粘度範囲であるシリコーン系化合物の整泡剤が特に好ましい。
整泡剤の粘度が300mPa・s(25℃)未満であると、整泡作用が弱く、セルが粗大化してしまい、高い反発弾性が得られない虞がある。一方、粘度が2000mPa・s(25℃)を超えると、ポリウレタン原料中に整泡剤が均一に分散しづらくなり、得られるフォームのセルサイズが均一になり難く、また、局所的に物性が変化してしまう虞がある。
【0034】
上記好適な粘度範囲のシリコーン系化合物を整泡剤として用いる場合は、当該シリコーン系化合物は、ポリオール100質量部に対して、0.5質量部以上9質量部以下の範囲で用いられることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下の範囲で用いられることがより好ましい。0.5質量部未満であると、整泡作用が弱く、セルが粗大化してしまい、高い反発弾性が得られない虞がある。一方、9質量部を超えると、反発弾性に劣る上、ポリウレタンフォーム表面から整泡剤が染み出すブリードアウトが生じる虞があり、他部材との接着を阻害するなど、取扱い性にも劣る場合がある。上記好適な粘度範囲のシリコーン系化合物の添加量を、上述するポリオール成分100質量部に対して、5質量部以下とすることで、ポリウレタンフォームの表面にべたつきが発生することがなく、高品質なポリウレタンフォームを提供することができる。
【0035】
触媒:
触媒は、従来からポリウレタンフォームの製造に使用されているものであればよく、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミンなどのアミン系触媒、ビスマス触媒などの金属触媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。
添加量は、ポリオール100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0036】
架橋剤:
架橋剤は、従来からポリウレタンフォームの製造に使用されているものであればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ショ糖、ソルビトール、グルコース等のアルコール類が使用できる。特に、これらのうち、3官能以上のものが好ましい。
【0037】
発泡剤:
発泡剤としては、たとえば水やジクロロメタン、シクロペンタン、二酸化炭素等を用いることができる。
水を用いた場合の添加量としては、ポリオール100質量部に対し、0.5質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
発泡剤の添加量が0.5質量部未満の場合、発泡が不十分となる虞がある。一方、発泡剤の添加量が3質量部を超える場合、発泡が進み過ぎ、得られるポリウレタンフォームのセルが荒れ、ポリウレタンフォーム内部が割れやすいなどフォーム状態が劣るほか、反発弾性に劣る傾向にある。
【0038】
その他の成分:
本発明のポリウレタンフォームの原料には、上述するポリオール成分、及びイソシアネート成分、および架橋剤、発泡剤、触媒、整泡剤、架橋剤などの任意の成分の他に、必要に応じて、下記添加剤を使用してもよい。具体的には、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤など、ポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用される一種以上の添加剤を、本発明の効果が得られる範囲内において使用してもよい。使用された添加剤のうちの一部又は全部が本発明のポリウレタンフォームに残存していてもよい。
【0039】
[ポリウレタンフォームの物性]
上述する本発明のポリウレタンフォームは、良好な反発弾性を維持しつつ、適度に低い硬度を示し、かつ圧縮永久歪にも優れるポリウレタンフォームの提供が可能である。これらを含めた本発明にポリウレタンフォームの物性について以下に説明する。
【0040】
反発弾性率:
本発明のポリウレタンフォームは、当該ポリウレタンフォームを靴底やマットに用いた場合に、蹴り出しが良く足運びがスムーズであるという観点から、反発弾性率50%以上であることが好ましく、57%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
一方、本発明において反発弾性率の上限は特に限定されないが、硬度や機械的物性とのバランスを良好に図りやすいという観点からは、80%未満であることが好ましく、75%未満であることがより好ましく、70%未満であることがさらに好ましい。
本発明のポリウレタンフォームの反発弾性率は、JIS K 6255:2013に準拠して測定される。
【0041】
硬度:
本発明のポリウレタンフォームの硬度は、適度な柔軟性を発揮するという観点から25以下であることが好ましく、23以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。硬度が25以下であるポリウレタンフォームを用いて構成される靴底は、クッション性が良好であり歩行の感触が良く、また接地時における膝などへの負担が軽減され、疲れが感じ難いといった効果を奏する。
良好な衝撃吸収性を維持するという観点からは、上記硬度は10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、14以上であることがさらに好ましい。ポリウレタンフォームの硬度が低すぎると、歩行が不安定になり、あるいは足裏が地面に底着きし衝撃を受ける場合がある。本発明のポリウレタンフォームをマット部材として使用する場合にも、硬度は、上述する範囲であることが好適である。
本発明のポリウレタンフォームの硬度は、JIS K 7312:1996に準拠し、温度条件23±2℃の条件下で、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定される。
【0042】
中でも、本発明のポリウレタンフォームは、JIS K 7312:1996に準拠し、アスカーゴム硬度計C硬度を用いて測定された硬度が10以上25以下であり、JIS K 6255:2013に準拠して測定された反発弾性率が50%以上であることが好ましい。かかるポリウレタンフォームであれば、歩行の感触が良好であり、足が接地した時の衝撃が良好に吸収され膝などへの負担が軽減されるため、疲労が蓄積し難い優れた靴底及びマットを提供することができる。
【0043】
圧縮永久歪:
また本発明のポリウレタンフォームは、製品寿命の長い商品を提供するという観点からは、JIS K 6262:2013に準拠して測定された圧縮永久歪が20%以下であることが好ましく、19%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
ここで、靴底を構成するポリウレタンフォームは、靴の使用によって連続的に荷重を受け続け、かつ歩行や走行により断続的に衝撃が与えられるため、使用環境が過酷である。したがって一般的に、靴底部材の高反発弾性や柔軟性といった優れた効果は長期間維持され難い。しかし硬度が10以上25以下であり、反発弾性率が50%以上であり、かつ圧縮永久歪が20%以下であるポリウレタンフォームは、靴底、マットあるいは座面部材といった荷重を繰り返し受け易い用途における製品寿命を延ばすことができ好ましい。
【0044】
上記圧縮永久歪は、JIS K 6262:2013に準拠し、ポリウレタンフォームから直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を切り出して圧縮永久歪測定用試験片とし、これを用いて、圧縮率25%、40℃、24時間の条件下で測定される。
【0045】
見掛け密度:
本発明のポリウレタンフォームの見掛け密度は特に限定されないが、0.15g/cm3以上0.40g/cm3以下の範囲であることが好ましい。
本発明のポリウレタンフォームの見掛け密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0046】
引張強度・最大伸び:
本発明のポリウレタンフォームの引張強度は特に限定されないが、0.20kPa以上であることが好ましく、0.25kPa以上であることがより好ましい。本発明のポリウレタンフォームの最大伸びは特に限定されないが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。上述する範囲の引張強度及び/又は最大伸びを示すポリウレタンフォームであれば、製品寿命の長い商品を提供することが容易である。
【0047】
上述する引張強度(kPa)及び最大伸び(%)は、JIS K 6400-5:2012に準拠して測定される。具体的にはポリウレタンフォームを、JIS K 6400-5:2012で規定している2号形ダンベル形状の寸法に裁断して試験片を作成し、当該試験片の両端部を固定具に挟み、引張速度500mm/分で長さ方向に引っ張り、破断したときの最大力と標線間距離を測定し、下記(式1)及び(式2)にて引張強度(kPa)及び最大伸び(%)が求められる。
[式1]
引張強度(kPa)=(破断時の最大力/測定前断面積の平均値)×1000
[式2]
最大伸び(%)=((破断時の標線間距離-破断前の標線間距離)/破断前の標線間距離)×100
【0048】
収縮性:
本発明のポリウレタンフォームは、製造後の収縮が少ないか、または実質的に収縮が生じない傾向にあり成形性の点でも優れる。
本発明に関していう収縮性とは、製造直後の収縮率(収縮性1)と、製造後、所定の条件で養生された後の収縮率(収縮性2)を指す。本発明のポリウレタンフォームは、製造直後の収縮率である収縮性1が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、実質的に0%であることが特に好ましい。上記範囲の収縮性1を示すポリウレタンフォームは、靴底部材等のように他の部材と積層させて積層体を構成する部材として用いられる場合に、他の部材に対する寸法のずれが生じ難く、成形性に優れる。
また、本発明のポリウレタンフォームは、収縮性1が有意な数値で表された場合であっても、養生後に示される収縮性2が良好と判断されれば、製品上の寸法安定性があると判断され、好ましい。
【0049】
本発明に関し収縮性1は、成形型から取り出したポリウレタンフォームを、速やかに温度条件23±2℃、養生時間1時間の条件で養生し、その後に、金型の寸法から算出される容量(体積)と得られたポリウレタンフォームの容量(体積)の比率から算出される収縮率(%)を示す。収縮率が2%未満である場合には、寸法安定性が良好であると判断される。
【0050】
本発明に関し収縮性2は、収縮性1において収縮率が有意(たとえば2%以上)に確認されたポリウレタンフォームを、温度条件23±2℃、養生時間48時間の条件で養生し、その後に、金型の寸法から算出される容量(体積)と養生後のポリウレタンフォームの容量(体積)の比率から算出される収縮率(%)を示す。収縮性1と同等に、養生後に収縮率が2%未満であれば寸法安定性が良好と判断される。
【0051】
以上に説明する本発明のポリウレタンフォームは、種々の用途に用いることができる。中でも本発明のポリウレタンフォームは、良好な反発弾性を示すとともに硬度も低く抑えられ、かつ圧縮永久歪にも優れるという点から、靴底部材として用いられることが好ましい。すなわち、本発明の靴底は、任意の部分又は全体が、上述する本発明のポリウレタンフォームを靴底部材として用いて構成される。
【0052】
[靴底]
本発明の靴底は、任意の部分又は全体が、上述する本発明のポリウレタンフォームを靴底部材として用いて構成される。
かかる本発明の靴底は、本発明のポリウレタンフォームの好ましい効果を享受し、足裏の感触が良好であり、かつ歩行時の蹴り出しがサポートされ足運びが容易となると共に膝などの故障の発生を低減させる。したがって、上記靴底を備える靴は、運動用シューズ及び一般用のシューズなどの多様な靴として優れる。
なお、本発明の靴底は、その一部を構成する構成部材が本発明のポリウレタンフォームであってもよいし、靴底全体が本発明のポリウレタンフォームにより構成されてもよい。ここで靴底とは、靴の底部分であって一体的な構成であってもよいし、インソール及び/又はミッドソールと、アウトソールといった複数のパーツから構成されたものであってもよい。たとえばインソール、ミッドソール、アウトソールといった靴底を構成する靴底部材のいずれか1以上のパーツ全体が、本発明のポリウレタンフォームから構成されてもよいし、任意の1パーツにおける任意の部分が本発明のポリウレタンフォームで構成されていてもよい。
【0053】
たとえば、全体が本発明のポリウレタンフォームで構成されたインソール、あるいは、任意の部分(たとえば踵部分)が本発明のポリウレタンフォームで構成されたインソールを用いる靴底は、本発明の靴底として好ましい態様の一つである。本発明のポリウレタンフォームは、適度な反発弾性力と柔軟性を備え、且つ圧縮永久歪にも優れることから、インソールの構成部材として好ましい。かかるインソールを備える靴底は、足当たりが良く、靴を履いたときに足裏に違和感をあたえ難く、かつ、長時間歩いた場合であっても足裏における疲労感が蓄積され難い上、商品寿命が長い。
【0054】
[マット]
また本発明のポリウレタンフォームは、マットの構成部材としても好適に使用可能である。即ち、本発明のポリウレタンフォームの、良好な反発弾性を示すとともに硬度も低く抑えられ、かつ圧縮永久歪にも優れるという点は、マット、特には床敷マットにおいても優れた効果を発揮する。
本発明のポリウレタンフォームで製造されたマットを床に敷き、その上で長時間、作業、歩行、又は起立などを行った場合、疲労の蓄積が軽減される。
【実施例0055】
表1、2に示す配合で、ポリオール成分、整泡剤、触媒、イオン交換水を含むA液を調製した。またイソシアネート成分として、ウレタンプレポリマー及び/又はカルボジイミド変性ジフェニルメタンイソシアネート(変性MDI)を含むB液を準備した。
ポリオール成分100質量部に対するイソシアネート成分の配合量及びイソシアネートインデックスが表1、2に示す値となるよう、上記A液におけるポリオール成分とB液におけるイソシアネート成分とを調整し、A液及びB液をモールド内に注入した。そしてモールド温度40℃の条件下で反応させた後、脱型してポリウレタンフォームを得た。
なお、表1、2に示すA液及びB液に含まれる各成分の配合を示す数値の単位は質量部である。
【0056】
<ポリオール成分>
実施例及び比較例に用いたポリオール成分であるポリプロピレングリコール1~9(PPG1~9)は以下のとおりであり、いずれもポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。PPG1~9の個別の重量平均分子量、官能基数、当量は表1、2に示す。
尚、表中、ポリプロピレングリコールをPPG、1種以上のポリプロピレン系グリコール(ポリプロピレン系グリコール群)をPPG群、重量平均分子量をMwと表記した。
・PPG1:三洋化成工業株式会社製、サンニックスKC-737
・PPG2:三洋化成工業株式会社製、サンニックスKC-285
・PPG3:AGC株式会社製、EXCENOL 837
・PPG4:AGC株式会社製、EXCENOL 510
・PPG5:AGC株式会社製、EXCENOL 820
・PPG6:三洋化成工業株式会社製、サンニックスPA-3000
・PPG7:AGC株式会社製、EXCENOL3030F2
・PPG8:三井化学SKCポリウレタン株式会社製、アクトコールD2000
・PPG9:AGC株式会社製、プレミノールS3011
<整泡剤>
・シリコーン系化合物:粘度:900mPa・s(25℃)
<触媒>
・アミン系触媒:トリエチレンジアミン(東ソー(株)製、商品名TEDA-L33)
<発泡剤>
・イオン交換水
<イソシアネート成分>
・イソシアネート:カルボジイミド変性ジフェニルメタンイソシアネート(変性MDI)、平均官能基数2、イソシアネート基含有率28.2質量%
・ウレタンプレポリマー:イソシアネート基末端プレポリマー(重量平均分子量4000のPPGと4、4’-MDIを反応させたプレポリマー、イソシアネート基含有率8.01質量%)
【0057】
各実施例及び各比較例に用いたポリプロピレングリコール群(PPG群)の官能基数の算術平均値である全体の平均官能基数を算出した。同様に各実施例及び各比較例に用いたポリプロピレングリコール群(PPG群)の当量の算術平均値である全体の平均当量を算出した。また、各ポリプロピレン系グリコールの個別の重量平均分子量と配合比率からPPG群の全体の重量平均分子量(Mw)を算出した。以上のとおり算出された値は、いずれも表1、2に示した。
【0058】
各実施例及び各比較例で得られたポリウレタンフォームを適宜に寸法にカットして試験片を作成し、以下に示す測定を行った。測定結果は表1、2に示す。
<見掛け密度(g/cm3)>
15mm×15mm×10mmの直方体にカットした試験片を用い、JIS K 7222:2005に準拠して見掛け密度を測定した。
<アスカーC硬度>
厚み12.5mmにカットした試験片を用い、JIS K 7312:1996に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いてポリウレタンフォームの硬度(アスカーC硬度)を測定した。
<反発弾性率(%)>
厚み12.5mmにカットした試験片を用い、JIS K 6255:2013に準拠して反発弾性率を測定した。
<引張強度・最大伸び>
JIS K 6400-5:2012に準拠してポリウレタンフォームの引張強さ(kPa)及び伸び(%)を測定した。具体的にはポリウレタンフォームを、JIS K 6400-5:2012で規定している2号形ダンベル形状の寸法に裁断して試験片を作成し、当該試験片の両端部を固定具に挟み、引張速度500mm/分で長さ方向に引っ張り、破断したときの最大力と標線間距離を測定し、下記(式1)及び(式2)にて求めた。
[式1]
引張強度(kPa)=(破断時の最大力/測定前断面積の平均値)×1000
[式2]
最大伸び(%)=((破断時の標線間距離-破断前の標線間距離)/破断前の標線間距離)×100
<圧縮永久歪>
ポリウレタンフォームから直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を切り出して圧縮永久歪測定用試験片とした。上記圧縮永久歪測定試験片を用いて、圧縮率25%、40℃、24時間の条件下で、JIS K 6262:2013に準拠して、圧縮永久歪(%)を測定した。
<収縮性>
収縮性1:
モールド(金型)から取り出し、温度条件23±2℃、養生時間1時間の条件で養生したポリウレタンフォームの外形の寸法と質量から体積V1を算出した。そして上記体積V1とモールドの容量(体積)V2を用い下記(式3)により収縮率を算出し、これを収縮性1とした。尚、表1、2の収縮性1では、収縮率が0%~2%未満である場合には0%と表記し、収縮率が2%以上の場合には、その数値を表記した。
[式3]
収縮率(%)=[(V2-V1)/V2]×100
収縮性2:
上記収縮性1において、収縮率が2%以上であったポリウレタンフォームを温度条件23±2℃、養生時間48時間の条件で養生した。養生後のポリウレタンフォームの外形の寸法と質量から体積V3を算出した。そして上記体積V3とモールドの容量(体積)V2を用い下記(式4)により収縮率(%)を算出し、以下の評価基準で評価した。
尚、収縮性1において収縮率が0%~2%未満であったものについては収縮性2に関しては測定を行っていないため、n.t.(not tested)と示した。
[式4]
収縮率(%)=[(V2-V3)/V2]×100
(評価基準)
収縮性〇・・・収縮率2%未満
収縮性×・・・収縮率2%以上
【0059】
【0060】
本発明のポリウレタンフォームは、反発弾性に優れるものでありながら、硬度も低く、かつ圧縮永久歪にも優れる。そのため、本発明のポリウレタンフォームは、靴底部材又はマット部材として好適である。特には、本発明のポリウレタンフォームは、シューズのインソール部材としてより好ましい。加えて、本発明のポリウレタンフォームは、マット部材、ヘルメットの内部部材、プロテクター、車両用の緩衝材料、床材など、衝撃吸収性、反発弾性、適度な柔軟性、良好な機械的強度等が必要とされる用途に広く用いることができる。
上述のとおり優れた効果を奏する本発明のポリウレタンフォームは、シューズやマットの技術分野のみならず、かかる良好な性質が活かされる種々の技術分野に利用され得る。