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  • 特開-希土類磁性体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047307
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】希土類磁性体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230329BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 45/00 20230101ALI20230329BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230329BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230329BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230329BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230329BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20230329BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
C22C28/00 A
C22C45/00
B22F3/00 F
B22F1/00 Y
B22F1/05
B22F3/24 B
B22F3/24 K
B22F9/04 E
B22F9/04 D
B22F9/08 A
C22C33/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139952
(22)【出願日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】202111121038.0
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台東星磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】王伝申
(72)【発明者】
【氏名】彭衆傑
(72)【発明者】
【氏名】楊昆昆
(72)【発明者】
【氏名】丁開鴻
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB12
4K017BB13
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA09
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018BB07
4K018BD01
4K018CA04
4K018CA11
4K018CA23
4K018FA06
4K018FA08
4K018FA11
4K018KA61
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB11
5E040HB14
5E040HB15
5E040NN01
5E040NN06
5E062CD04
5E062CG07
(57)【要約】
【課題】重希土類元素の使用量を抑えながらも良好な磁気特性を有する磁性体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】Nd-Fe-B系主合金及び重希土類拡散源を含み、Nd-Fe-B系主合金は、Nd-Fe-B系合金、低融点紛体及びその他添加剤を含み、重希土類拡散源はRH相に分布し、希土類磁性体は主相、R元素シェル層、遷移金属元素シェル層及び三角領域を有し、R元素シェル層のRは、Nd、Pr、Ce、La、Hо、Gdの少なくとも一つであり、遷移金属元素シェル層の遷移金属は、Cu、Al、Gaの少なくとも一つであり、三角領域は、第一スキャン点がNdFe、第二スキャン点がNdFe、第三スキャン点がNdFeで示される構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁性体であって、
Nd-Fe-B系主合金及び重希土類拡散源を含み、
前記Nd-Fe-B系主合金は、Nd-Fe-B系合金、低融点合金及びその他添加剤を含み、
前記Nd-Fe-B系合金の原料は、それぞれ重量百分率で、
28%≦R≦30%、
0.8%≦B≦1.2%、
0%≦Hо≦5%、
0%≦M≦3%、であり、
前記Rは、Nd、Prの少なくとも一つ、
前記Mは、Co、Tiの少なくとも一つ、
その他の成分はFeであり、
前記低融点合金は、NdCu、NdAl、NdGaの少なくとも一つ、
各成分は重量百分率で、
0%≦NdCu≦3%、
0%≦NdAl≦3%、
0%≦NdGa≦3%、であり、
前記重希土類拡散源は、R1-x-yの式で示され、
Rは、Nd、Pr、Ce、La、Ho、Gdの少なくとも一つ、
Hは、Tb、Dyの少なくとも一つ、
Mは、Al、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも一つであり、
x、yはそれぞれ重量百分率で、10%<x≦50%、40%<y≦70%であり、
前記重希土類拡散源はRH相に分布し、RHM相はモザイク状に均一に分布し、
前記希土類磁性体は主相、R元素シェル層、遷移金属元素シェル層、及び前記主相、前記R元素シェル層、前記遷移金属元素シェル層で囲まれる三角領域を有し、前記R元素シェル層のRは、Nd、Pr、Ce、La、Hо、Gdの少なくとも一つであり、前記遷移金属元素シェル層の遷移金属は、Cu、Al、Gaの少なくとも一つであり、
前記三角領域は、第一スキャン点がNdFe、第二スキャン点がNdFe、第三スキャン点がNdFeで示され、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、La、Hо、Gdの少なくとも一つ、MはAl、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも三つ、a、b、c、dはそれぞれ重量百分率で、30%≦a≦70%、5%≦b≦40%、5%≦c≦35%、0%≦d≦15%であり、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、Laの少なくとも一つ、HはTb、Dyの少なくとも一つ、KはHо又はGdであり、MはAl、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも三つであり、e、f、g、h、i、jはそれぞれ重量百分率で、25%≦e≦65%、5%≦f≦35%、5%≦g≦30%、5%≦h≦30%、5%≦i≦10%、0%≦j≦10%であり、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、LaHо、Gdの少なくとも一つ、DはAl、Cu、Gaの少なくとも一つ、MはTi、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも一つであり、k、l、m、n、oはそれぞれ重量百分率で、30%≦k≦70%、5%≦l≦35%、5%≦m≦35%、5%≦n≦25%、0%≦o≦10%、である
ことを特徴とする希土類磁性体。
【請求項2】
前記希土類磁性体の厚さは、0.3~6.0mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の低重希土類磁性体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の希土類磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)前記Nd-Fe-B系合金の原料を溶錬及びストリップキャスト法によりNd-Fe-B系合金薄片を作成し、前記Nd-Fe-B系合金薄片を150~400μmの大きさに粉砕し、
(ステップ2)粉砕した前記Nd-Fe-B系合金薄片と前記低融点合金の粉末及び潤滑剤を混合及び撹拌し、混合物を水素処理炉に投入して水素吸着処理及び脱水素処理を行い、ジェットミルでNd-Fe-B系合金粉末に粉砕し、
(ステップ3)前記Nd-Fe-B系合金粉末を圧縮成形処理及び焼結処理して前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体を作成し、
(ステップ4)焼結後の前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体を所望の形状に加工し、前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体に垂直、又は、C軸に平行な面に前記重希土類拡散源の薄膜を形成し、
(ステップ5)拡散処理及び時効処理を行う、
ことを特徴とする希土類磁性体の製造方法。
【請求項4】
前記重希土類拡散源は、噴霧製粉法、アモルファスストリップ法又はインゴットにより作成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の低重希土類磁性体の製造方法。
【請求項5】
前記(ステップ2)における前記脱水素処理における脱水素温度は、400~600℃である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の希土類磁性体の製造方法。
【請求項6】
前記(ステップ2)における前記低融点合金の前記粉末の粒子径は、200nm~4μmであり、
前記Nd-Fe-B系合金粉末の粒子径は3~5μmである、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の希土類磁性体の製造方法。
【請求項7】
前記(ステップ3)における焼結工程の焼結温度は980~1060℃、焼結時間は6~15時間である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の希土類磁性体の製造方法。
【請求項8】
前記(ステップ5)における前記拡散処理の温度は850~930℃、拡散時間は6~30時間、
前記時効処理の温度は420~680℃、時効時間は3~10時間、昇温速度は1~5℃/分、降温速度は5~20℃/分である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の希土類磁性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nd-Fe-B系磁性体の技術分野に属し、特に重希土類の含有量を少なくしつつも、磁性体性能を高くできる磁性体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd-Fe-B系焼結永久磁性体は、電子情報機器、医療機器、新エネルギー自動車、家電、ロボット等のハイテク分野で広く利用されている。過去数十年におけるNd-Fe-B系永久磁性体の発展は目覚ましく、残留磁気に関する磁気特性は、基本的には理論的な極限に達している一方、保磁力については、理論値との差が大きいことから、磁性体の保磁力の向上は、本分野における重要な研究テーマになっている。
【0003】
一方、従来のNd-Fe-B系焼結永久磁性体は、性能を向上させる目的でTbやDyといった重希土類元素が大量に使用されていることから製造コストが高くなっていた。結晶粒界拡散技術の登場によって重希土類元素の含有量を大幅に削減することができたが、昨今の重希土類元素の価格の高騰に伴い、コストは高騰したままである。このように、重希土類元素の含有量の低減は依然として重要なテーマである。重希土類元素の拡散メカニズムによれば、硬化させたNdFe14Bの主相は、多くのコアシェル構造が形成されるため、保磁力が向上するが、磁性体及び拡散源の研究は、引き続き重要な研究テーマとなっている。
【0004】
上記のとおり、重希土類元素を拡散させることで保磁力が顕著に向上するが、重希土類元素は資源に乏しく非常に高価であることから、多くの研究者が重希土類元素の使用を極力抑えながらも、保磁力を維持・向上可能な拡散方法を開発してきた。
【0005】
例えば、中国特許公開CN106024253A号公報には、磁性体の表面に重希土類Tb、Dy又はHоをコーティングして、HRリッチ層及び(R,HR)-Fe(Cо)-M1相で主相を覆うコアシェル構造を有するM2ホウ素化物相を形成する技術が開示されている。また、中国特許公開CN108305772A号公報には、R1-R2-M型合金の水素化物粉末を主たる拡散源とする技術が開示されている。また、中国特許公開CN111524674A号公報には、結晶粒界エピタキシャル層を含む磁性体、即ち二粒子粒界相RHoCuX1を特徴とする磁性体に拡散を行う技術が開示されている。
【0006】
上記各技術は、磁性体に特定相を形成するか、又は低コスト拡散源によって磁性体の製造コストを削減しているが、特定の方法で製造した磁性体に特定の結晶粒界構造を有する拡散源を組み合わせることで磁気特性を向上させ、重希土類元素の含有量を限界まで削減できるNd-Fe-B系磁性体の及び製造方法は存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開CN106024253A号公報
【特許文献2】中国特許公開CN108305772A号公報
【特許文献3】中国特許公開CN111524674A号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、特定成分のNd-Fe-B系磁性体上に特定の結晶粒界を分布させ重希土類拡散源薄膜を用いて拡散処理及び時効処理を行うことにより、特定の結晶粒界構造分布を有するNd-Fe-B系磁性体を作成し、重希土類元素の使用量を抑えながらも良好な磁気特性を有する磁性体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本願発明は、希土類磁性体であって、
Nd-Fe-B系主合金及び重希土類拡散源を含み、
前記Nd-Fe-B系主合金は、Nd-Fe-B系合金、低融点合金及びその他添加剤を含み、
前記Nd-Fe-B系合金の原料は、それぞれ重量百分率で、
28%≦R≦30%、
0.8%≦B≦1.2%、
0%≦Hо≦5%、
0%≦M≦3%、であり、
前記Rは、Nd、Prの少なくとも一つ、
前記Mは、Co、Tiの少なくとも一つ、
その他の成分はFeであり、
前記低融点合金は、NdCu、NdAl、NdGaの少なくとも一つ、
各成分は重量百分率で、
0%≦NdCu≦3%、
0%≦NdAl≦3%、
0%≦NdGa≦3%、であり、
前記重希土類拡散源は、R1-x-yの式で示され、
Rは、Nd、Pr、Ce、La、Ho、Gdの少なくとも一つ、
Hは、Tb、Dyの少なくとも一つ、
Mは、Al、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも一つであり、
x、yはそれぞれ重量百分率で、10%<x≦50%、40%<y≦70%であり、
前記重希土類拡散源はRH相に分布し、RHM相はモザイク状に均一に分布し、
前記希土類磁性体は主相、R元素シェル層、遷移金属元素シェル層、及び前記主相、前記R元素シェル層、前記遷移金属元素シェル層で囲まれる三角領域を有し、前記R元素シェル層のRは、Nd、Pr、Ce、La、Hо、Gdの少なくとも一つであり、前記遷移金属元素シェル層の遷移金属は、Cu、Al、Gaの少なくとも一つであり、
前記三角領域は、第一スキャン点がNdFe、第二スキャン点がNdFe、第三スキャン点がNdFeで示され、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、La、Hо、Gdの少なくとも一つ、MはAl、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも三つ、a、b、c、dはそれぞれ重量百分率で、30%≦a≦70%、5%≦b≦40%、5%≦c≦35%、0%≦d≦15%であり、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、Laの少なくとも一つ、HはTb、Dyの少なくとも一つ、KはHо又はGdであり、MはAl、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも三つであり、e、f、g、h、i、jはそれぞれ重量百分率で、25%≦e≦65%、5%≦f≦35%、5%≦g≦30%、5%≦h≦30%、5%≦i≦10%、0%≦j≦10%であり、
前記NdFeにおいて、RはPr、Ce、LaHо、Gdの少なくとも一つ、DはAl、Cu、Gaの少なくとも一つ、MはTi、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも一つであり、k、l、m、n、oはそれぞれ重量百分率で、30%≦k≦70%、5%≦l≦35%、5%≦m≦35%、5%≦n≦25%、0%≦o≦10%、であることを特徴とする。
【0010】
前記希土類磁性体の厚さは、0.3~6.0mmである、ことを特徴とする。
【0011】
前記希土類磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)前記Nd-Fe-B系合金の原料を溶錬及びストリップキャスト法によりNd-Fe-B系合金薄片を作成し、前記Nd-Fe-B系合金薄片を150~400μmの大きさに粉砕し、
(ステップ2)粉砕した前記Nd-Fe-B系合金薄片と前記低融点合金の粉末及び潤滑剤を混合及び撹拌し、混合物を水素処理炉に投入して水素吸着処理及び脱水素処理を行い、ジェットミルでNd-Fe-B系合金粉末に加工し、
(ステップ3)前記Nd-Fe-B系合金粉末を圧縮成形処理及び焼結処理して前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体を作成し、
(ステップ4)焼結後の前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体を所望の形状に加工し、前記Nd-Fe-B系主合金からなる磁性体に垂直、又は、C軸に平行な面に前記重希土類拡散源の薄膜を形成し、
(ステップ5)拡散処理及び時効処理を行う、ことを特徴とする。
【0012】
前記重希土類拡散源は、噴霧製粉法、アモルファスストリップ法又はインゴットにより作成される、ことを特徴とする。
【0013】
前記(ステップ2)における前記脱水素処理における脱水素温度は、400~600℃である、ことを特徴とする。
【0014】
前記(ステップ2)における前記低融点合金の前記粉末の粒子径は、200nm~4μmであり、
前記Nd-Fe-B系合金粉末の粒子径は3~5μmである、ことを特徴とする。
【0015】
前記(ステップ3)における焼結工程の焼結温度は980~1060℃、焼結時間は6~15時間である、ことを特徴とする。
【0016】
前記(ステップ5)における前記拡散処理の温度は850~930℃、拡散時間は6~30時間、
前記時効処理の温度は420~680℃、時効時間は3~10時間、昇温速度は1~5℃/分、降温速度は5~20℃/分である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来技術と対比して、以下の有益な効果を奏する。
【0018】
(1)結晶粒界が低融点に設計された磁性体に特殊な結晶粒界構造を有する拡散源を用いて拡散処理及び時効処理することにより、特定の結晶粒界構造を有する重希土類元素の含有量(使用量)が少ないNd-Fe-B系磁性体を得ることができる一方、保磁力の向上を実現することができる。
【0019】
(2)希土類磁性体に含まれるNdCu、NdAl、NdGaの低融点合金相は、磁性体の結晶粒界の拡散係数の増加に優れ、拡散源の拡散効率を向上することができる。
【0020】
(3)拡散源の結晶粒界構造はRH相に分布し、RHM相はモザイク状に均一に分布することから、低融点相及び重希土類相が同時に速やかに磁性体内に入り込み、拡散係数が大きく高まると同時に、磁気絶縁作用を有するシェル層を良好に形成することができたため、良好な保磁力向上作用を奏する。
【0021】
(4)重希土類元素を拡散した後の磁性体は、Feの含有量が30%未満である相を備えることから、非鉄磁性を有し、良好な磁気絶縁作用を奏する。
【0022】
(5)磁性体中の重希土類元素の含有量(使用量)を削減できるため、磁性体の製造コストを削減でき、製造方法は簡易であり大量生産を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】重希土類元素を拡散させた磁性体のミクロ構造を電子顕微鏡で撮影した写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明の実施例につき、比較例と合わせて詳細に説明する。
【0025】
表1、表2に示す番号1~22は、実施例1~22、比較例1~22で共通に使用する拡散処理前のNd-Fe-B系磁性体であり、当該磁性体の原料となるNd-Fe-B系合金は、それぞれ重量百分率で28%≦R≦30%、0.8%≦B≦1.2%、0%≦Hо≦5%、0%≦M≦3%、であり、Rは、Nd、Prの少なくとも一つ、Mは、Co、Tiの少なくとも一つ、その他の成分はFeとした。また、低融点合金は、重量百分率で0~3%のNdCu、0~3%のNdAl、0~3%のNdGaとした。
【0026】
拡散処理前のNd-Fe-B系磁性体の製造方法は以下の通りである。
(ステップ1)ステップ2で添加する低融点合金以外の成分を溶錬し、スプリットキャスト法を用いてNd-Fe-B系合金の薄片を作成し、その後、粉砕機によって150~400μmの大きさに粉砕した。
【0027】
(ステップ2)粒子径を200nm~4μmとした低融点合金であるNdCu、NdAl、NdGaの粉末を、粉砕後のNd-Fe-B系合金の薄片に添加した。
【0028】
(ステップ3)Nd-Fe-B系合金の薄片、低融点合金の粉末及び潤滑剤を混合・撹拌し、その後、水素処理炉に投入して水素吸着処理及び脱水素処理を行った。脱水素温度は400~600℃、ジェットミルを用いて粒度D50で粒子径3~5μmの合金粉末に加工した。
【0029】
(ステップ4)上記合金粉末を磁場配向成型及び冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0030】
(ステップ5)上記素地を真空炉で焼結し、Arガスで急速冷却し、その後、第1次時効処理及び第2次時効処理を行い、基本となる磁性体1~22を作成した。
【0031】
表1における空欄は、当該元素を含まないことを示しており、番号1~22に係る拡散処理前のNd-Fe-B系磁性体の磁気特性は、表2に示すとおりである。

【0032】
表1

【0033】
表2
【0034】
表3は本願発明に係る実施例1~22の拡散処理パラメータ及び拡散処理後の磁気特性を示し、表4は比較例1~22の拡散処理パラメータ及び拡散処理後の磁気特性を示している。
【0035】
実施例1~22における拡散源は、RxHyM1-x-yの式で示され、RはNd、Pr、Ce、La、Ho、Gdの少なくとも一つ、HはTb、Dyの少なくとも一つ、MはAl、Cu、Ga、Ti、Co、Mg、Zn、Snの少なくとも一つであり、x、yはそれぞれ重量百分率で、10%<x≦50%、40%<y≦70%である。
【0036】
前記したNd-Fe-B系磁性体を、それぞれ所望のサイズに切断し、C軸に垂直な二つの面に上記成分の重希土類拡散源スラリーを塗布した。重希土類元素の重量増加は1.0w%、重希土類合金中の重希土類含有量は1.0w%であった。
【0037】
Nd-Fe-B系主合金に最適化プロセス試験を実施し、磁気特性を最良化した後に拡散試験を行った。重希土類合金の拡散後の保磁力の増加幅は8~9.5kOeに達した。Dy又はTbの使用量は少なく、磁性体の製造コストの大幅な削減を実現した。
【0038】
Dy合金又はTb合金を拡散したものを実施例とし、Dy又はTbのみを拡散したものを比較例とした。各実施例における具体的なパラメータを表3で、各比較例における具体的なパラメータを表4でそれぞれ示す。

【0039】
表3

【0040】
表4
【0041】
上記各データによれば、まずストリップキャスト薄片の結晶粒界にNdCu、又はNdAl、又はNdGa低融点粉体を添加して、低融点結晶チャネルを備え、磁性体への拡散に適したNd-Fe-B系磁性体を製造した。このNd-Fe-B系磁性体は、特に重希土類合金拡散源の拡散に有利であり、重希土類合金拡散源の拡散後にはΔHcj>11.0kОeとなり、保磁力の向上が顕著であることが分かる。
【0042】
実施例1と比較例1は、同一サイズのNd-Fe-B系磁性体であり、同一の拡散温度及び時効温度等の条件で拡散処理を行ったものである。各実施例と各比較例の分析結果は以下の通りである。
【0043】
実施例1は、Nd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは260μm、脱水素温度は450℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は600nm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。PrDyCuを拡散させた結果、拡散前と比べて残留磁束密度Brは0.20kGs低下し、保磁力Hcjは10.21kOe増加した。一方、比較例1は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて残留磁束密度Brは0.19kGs低下し、保磁力Hcjは8.21kOe増加した。実施例1及び比較例1ともに保磁力は増加しているが、PrDyCuを拡散させた実施例1の方がDyのみを拡散させた比較例1に比べて明らかに保磁力の増加幅は大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0044】
実施例2は、比較例2と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例2のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは290μm、脱水素温度は550℃、酸素含有量は500ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例2は、拡散前と比べて、PrTbCuCeを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.21kGs低下し、保磁力Hcjは11.78kOe増加した。一方、比較例2は、Tbのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.21kGs低下し、Hcjは9.30kOe増加した。実施例2及び比較例2ともに保磁力は増加しているが、PrTbCuCeを拡散させた実施例2の方がTbのみを拡散させた比較例2に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0045】
実施例3は、比較例3と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例3のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは250μm、脱水素温度は520℃、酸素含有量は1000ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は3μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例3は、拡散前と比べて、PrDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.22kGs低下し、保磁力Hcjは7.58kOe増加した。一方、比較例3は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは5.08kOe増加した。実施例3及び比較例3ともに保磁力は増加しているが、PrDyCuを拡散させた実施例3の方がDyのみを拡散させた比較例3に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0046】
実施例4は、比較例4と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例4のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは150μm、脱水素温度は600℃、酸素含有量は500ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は3μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例4は、拡散前と比べて、PrGdDyCuCoを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.26kGs低下し、保磁力Hcjは7.52kOe増加した。一方、比較例4は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.23kGs低下し、Hcjは5.02kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrGdDyCuCoを拡散させた実施例4の方がDyのみを拡散させた比較例4に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0047】
実施例5は、比較例5と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。 実施例5のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは260μm、脱水素温度は500℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例5は、拡散前と比べて、NdDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは9.51kOe増加した。一方、比較例5は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.23kGs低下し、Hcjは7.51kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、NdDyCuを拡散させた実施例5の方がDyのみを拡散させた比較例5に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0048】
実施例6は、比較例6と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。 実施例6のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは300μm、脱水素温度は570℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は2μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例6は、拡散前と比べて、NdDyCuLaを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.23kGs低下し、保磁力Hcjは8.06kOe増加した。一方、比較例6は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.21kGs低下し、Hcjは6.81kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、NdDyCuLaを拡散させた実施例6の方がDyのみを拡散させた比較例6に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0049】
実施例7は、比較例7と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例7のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは270μm、脱水素温度は480℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は4μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例7は、拡散前と比べて、NdDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.22kGs低下し、保磁力Hcjは8.82kOe増加した。一方、比較例7は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.21kGs低下し、Hcjは7.32kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、NdDyCuを拡散させた実施例7の方がDyのみを拡散させた比較例7に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0050】
実施例8は、比較例8と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。 実施例8のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは230μm、脱水素温度は500℃、酸素含有量は900ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は200nm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例8は、拡散前と比べて、PrDyCuTiを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.21kGs低下し、保磁力Hcjは8.85kOe増加した。一方、比較例8は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.19kGs低下し、Hcjは7.85kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuTiを拡散させた実施例8の方がDyのみを拡散させた比較例8に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0051】
実施例9は、比較例9と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。 実施例9のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは280μm、脱水素温度は550℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は700nm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例9は、拡散前と比べて、PrDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.24kGs低下し、保磁力Hcjは9.35kOe増加した。一方、比較例9は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.22kGs低下し、Hcjは7.35kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuを拡散させた実施例9の方がDyのみを拡散させた比較例9に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0052】
実施例10は、比較例10と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例10のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは240μm、脱水素温度は460℃、酸素含有量は650ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は900nm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例10は、拡散前と比べて、PrHoTbCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.22kGs低下し、保磁力Hcjは12.08kOe増加した。一方、比較例10は、Tbのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.21kGs低下し、Hcjは9.90kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrHoTbCuを拡散させた実施例10の方がTbのみを拡散させた比較例10に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0053】
実施例11は、比較例11と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例11のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは400μm、脱水素温度は540℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は4μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例11は、拡散前と比べて、PrDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.21kGs低下し、保磁力Hcjは7.74kOe増加した。一方、比較例11は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは4.74kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuを拡散させた実施例11の方がDyのみを拡散させた比較例1に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0054】
実施例12は、比較例12と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例12のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは350μm、脱水素温度は550℃、酸素含有量は600ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例12は、拡散前と比べて、PrDyCuZnを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.22kGs低下し、保磁力Hcjは8.10kOe増加した。一方、比較例12は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは5.10kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuZnを拡散させた実施例12の方がDyのみを拡散させた比較例12に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0055】
実施例13は、比較例13と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例13のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは250μm、脱水素温度は450℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例13は、拡散前と比べて、PrDyCuGaを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは7.60kOe増加した。一方、比較例13は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.23kGs低下し、Hcjは5.60kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuGaを拡散させた実施例13の方がDyのみを拡散させた比較例13に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0056】
実施例14は、比較例14と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例14のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは260μm、脱水素温度は550℃、酸素含有量は600ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は2μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3.8μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例14は、拡散前と比べて、PrDyCuGaを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.22kGs低下し、保磁力Hcjは8.25kOe増加した。一方、比較例14は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.21kGs低下し、Hcjは6.75kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuGaを拡散させた実施例14の方がDyのみを拡散させた比較例14に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0057】
実施例15は、比較例15と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例15のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは280μm、脱水素温度は480℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例15は、拡散前と比べて、PrDyCuGaを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは8.98kOe増加した。一方、比較例15は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.23kGs低下し、Hcjは7.48kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuGaを拡散させた実施例15の方がDyのみを拡散させた比較例15に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0058】
実施例16は、比較例16と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例16のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは250μm、脱水素温度は500℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は2μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3.5μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例16は、拡散前と比べて、PrDyCuAlを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.23kGs低下し、保磁力Hcjは8.94kOe増加した。一方、比較例16は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.22kGs低下し、Hcjは7.44kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuAlを拡散させた実施例16の方がDyのみを拡散させた比較例16に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0059】
実施例17は、比較例17と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例17のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは290μm、脱水素温度は400℃、酸素含有量は600ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は4μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例17は、拡散前と比べて、PrDyCuAlSnを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは8.37kOe増加した。一方、比較例17は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは6.57kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuAlSnを拡散させた実施例17の方がDyのみを拡散させた比較例17に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0060】
実施例18は、比較例18と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例18のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは270μm、脱水素温度は450℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は2μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3.8μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例18は、拡散前と比べて、PrDyCuAlを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.26kGs低下し、保磁力Hcjは8.60kOe増加した。一方、比較例18は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.25kGs低下し、Hcjは7.10kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuAlを拡散させた実施例18の方がDyのみを拡散させた比較例18に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0061】
実施例19は、比較例19と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例19のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは250μm、脱水素温度は550℃、酸素含有量は850ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例19は、拡散前と比べて、PrGdDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは8.50kOe増加した。一方、比較例19は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.24kGs低下し、Hcjは6.00kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrGdDyCuを拡散させた実施例19の方がDyのみを拡散させた比較例19に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0062】
実施例20は、比較例20と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例20のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは290μm、脱水素温度は570℃、酸素含有量は800ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は2μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例20は、拡散前と比べて、PrDyCuMgを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.20kGs低下し、保磁力Hcjは7.60kOe増加した。一方、比較例20は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは6.00kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuMgを拡散させた実施例20の方がDyのみを拡散させた比較例20に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0063】
実施例21は、比較例21と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例21のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは260μm、脱水素温度は530℃、酸素含有量は600ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は3μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例21は、拡散前と比べて、PrDyCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.25kGs低下し、保磁力Hcjは9.50kOe増加した。一方、比較例21は、Dyのみを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.24kGs低下し、Hcjは7.00kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrDyCuを拡散させた実施例21の方がDyのみを拡散させた比較例21に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0064】
実施例22は、比較例22と同一のNd-Fe-B系磁性体及びサイズである。実施例22のNd-Fe-B系合金薄片の平均サイズは240μm、脱水素温度は570℃、酸素含有量は700ppm、低融点粉体の平均粒子径D50は1μm、ジェットミル粉砕後の合金粉末の平均粒子径D50は4μmであった。同一の拡散温度及び時効温度等の条件で、実施例22は、拡散前と比べて、PrTbCuを拡散させた後に、残留磁束密度Brは0.20kGs低下し、保磁力Hcj11.00kOe増加した。一方、比較例22は、Tbを拡散させた結果、拡散前と比べて、Brは0.20kGs低下し、Hcjは9.00kOe増加した。保磁力はいずれも明らかに増加しているが、PrTbCuを拡散させた実施例22の方がTbのみを拡散させた比較例22に比べてHcjの増加幅がより大きく、磁性体性能の優位性は明白である。
【0065】
上記の重希土類合金を拡散させた磁性体の磁気特性は、純重希土類を拡散させた磁性体の磁気特性と対比して明らかに優れることが判明したことから、重希土類合金を拡散させた磁性体のミクロ構造を測定した。ZEISS社製走査型電子顕微鏡で測定し、オックスフォードEDSで磁性体サンプルの元素の組成を測定した。
【0066】
ここで、以下の通り定義する。希土類シェル層、即ちR元素シェル層とは、結晶粒子を連続的に60%以上取り囲んだものを指し、遷移金属元素シェル層とは、結晶粒子を連続的に40%以上取り囲んだものを指す。
【0067】
三つの点a、b、cは、異なる位置におけるサンプリングポイントであり、それぞれaが第一スキャン点、bが第二スキャン点、cが第三スキャン点に対応する。サイズが1μm未満の小さな三角領域は、6:14相型のCuリッチ相である。つまり、スポットスキャニングの化学式は、Fe30-51(NdPr)45-60Cu2-15Ga0-5Co0-5、又は、Fe30-51(NdPr)45-60Dy2-15Cu2-15Ga0-5Co0-5である。ここで、各元素の右下の数値は要素の重量百分率パーセントである。図1に示すように、その他の三つの点は即ちSEMであり、3の位置におけるサンプリングポイントである。拡散源を拡散させてR元素シェル層及び遷移金属元素シェル層を形成し、三つの点a、b、cで行った統計分析の結果は、以下の通りである(化学式の右下の数値は重量百分率パーセントである)。
【0068】
実施例1では、PrDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd70Fe15Pr10Cuと、第二スキャン:Nd50Fe20Pr15Dy10Cuと、第三スキャン点:Nd70FePrCu15Coを形成した。
【0069】
実施例2では、PrTbCuCeを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Tb、Ce希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50FePr25Ce10CuGaAlと、第二スキャン点:Nd55Fe15Pr10CeTb10Cuと、第三スキャン点:Nd50Fe20Pr10CeCu15Coを形成した。
【0070】
実施例3では、PrDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu及びAl金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd65Fe20Pr17CuGaAlと、第二スキャン点:Nd50Fe27Pr13DyCuと、第三スキャン点:Nd50Fe20Pr10Cu15CoAlを形成した。
【0071】
実施例4では、PrGdDyCuCoを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Gd、Dy希土類シェル層及びCu及びCo金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50Fe18Pr17CuCoAlと、第二スキャン点:Nd45Fe15Pr15DyGd10CuAlと、第三スキャン点:Nd45Fe25Pr10Cu10CoAlを形成した。
【0072】
実施例5では、NdDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Nd、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd65Pr15Fe10CuCoと、第二スキャン点:Nd55Pr10Dy15Fe20と、第三スキャン点:Nd50Fe15Pr10Cu20Coを形成した。
【0073】
実施例6では、NdDyCuLaを拡散しており、拡散後の磁性体は、Nd、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50Pr15Fe20LaCuGaと、第二スキャン点:Nd55FePr16LaDy20と、第三スキャン点:Nd55Fe20Pr10LaCu10を形成した。
【0074】
実施例7では、NdDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Nd、Dy希土類シェル層及びCu及びAl金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd60Pr10Fe15Cu10Alと、第二スキャン点:Nd50Fe20Pr10CuDy15Alと、第三スキャン点:Nd50Fe25Pr10CuCoAlを形成した。
【0075】
実施例8では、PrDyCuTiを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd45Pr30Fe14CuTiと、第二スキャン点:Nd25Pr20Dy18Fe30TiCuと、第三スキャン点:Nd35Fe25Pr20Cu18Coを形成した。
【0076】
実施例9では、PrDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50Pr25Fe20Cuと、第二スキャン点:Nd35Fe14Pr20Dy25CoCuと、第三スキャン点:Nd45Fe20Pr15Cu15Coを形成した。
【0077】
実施例10では、PrHoTbCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Tb、Ho希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd40Pr35Fe20Cuと、第二スキャン点:Nd30Fe25Pr21Dy12HoCoCuと、第三スキャン点:Nd35Fe30Pr25CuCoを形成した。
【0078】
実施例11では、PrDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd58Fe18Pr15CuGaAlと、第二スキャン点:Nd50Fe10Pr15Dy20Cuと、第三スキャン点:Nd45Fe20Pr10Cu18CoGaを形成した。
【0079】
実施例12では、PrDyCuZnを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Zn金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd60Fe15Pr15ZnGaAlと、第二スキャン点:Nd50Fe10Pr20Dy10CuZnGaと、第三スキャン点:Nd50Fe25PrCu10CoZnを形成した。
【0080】
実施例13では、PrDyCuGaを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Ga金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd55Pr20Fe15GaCuと、第二スキャン点:Nd40Fe10Pr30Dy16Cuと、第三スキャン点:Nd35Fe30Pr20CuGaCoを形成した。
【0081】
実施例14では、PrDyCuGaを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Ga金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50Pr25Fe15GaCuと、第二スキャン点:Nd35Fe15Pr30Dy15Cuと、第三スキャン点:Nd30Pr25Fe35CuGaを形成した。
【0082】
実施例15では、PrDyCuGaを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Ga金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd40Pr25Fe20GaCuと、第二スキャン点:Nd40Fe12Pr30Dy15Cuと、第三スキャン点:Nd45Pr25Fe15CuGaCoを形成した。
【0083】
実施例16では、PrDyCuAlを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Al金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd45Fe40PrCuAlと、第二スキャン点:Nd65Fe10PrDy10CuAlと、第三スキャン点:Nd50Fe20Pr10Cu15Alを形成した。
【0084】
実施例17では、PrDyCuAlSnを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Al金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd50Fe20Pr15SnCuAlと、第二スキャン点:Nd55FePr25DyCuAlと、第三スキャン点:Nd45Fe15Pr20Cu15GaAlを形成した。
【0085】
実施例18では、PrDyCuAlを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Al金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd60Fe20Pr10CuAlと、第二スキャン点:Nd35Fe35Pr10Dy10CuAlと、第三スキャン点:Nd55Fe10Pr13Cu15GaAlを形成した。
【0086】
実施例19では、PrGdDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy、Gd希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd55Fe10Pr35と、第二スキャン点:Nd45FePr25Dy15GdCuと、第三スキャン点:Nd35Fe20Pr35CuCoを形成した。
【0087】
実施例20では、PrDyCuMgを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu、Mg金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd45Fe20Pr20CuGaMgAlと、第二スキャン点:Nd45Fe15Pr20Dy20と、第三スキャン点:Nd40Fe20Pr15Cu20Gaを形成した。
【0088】
実施例21では、PrDyCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Dy希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd45Fe15Pr25CuGaCoTiと、第二スキャン点:Nd40Fe15Pr10Dy30Hoと、第三スキャン点:Nd35Fe30Pr15Cu15GaCoを形成した。
【0089】
実施例22では、PrTbCuを拡散しており、拡散後の磁性体は、Pr、Tb希土類シェル層及びCu金属元素シェル層を備え、三角領域の第一スキャン点:Nd30Fe30Pr25Cu10Gaと、第二スキャン点:Nd50Fe15Pr20Tb15と、第三スキャン点:Nd40Fe20Pr20Cu10GaCoを形成した。
【0090】
上記実施例の方法を参照することで、本明細書に列挙したその他原料及び条件等で実験を行ったとしても、本発明の低重希土類磁性体を製造することができる。
【0091】
上記各実施例は、いずれも本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の技術思想の範囲内で行われる修正、改良等は、全て本発明の保護範囲内に属する。

図1