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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047313
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】遠心機及び遠心機の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20230329BHJP
   B04B 3/00 20060101ALI20230329BHJP
   B04B 7/04 20060101ALI20230329BHJP
   B04B 15/06 20060101ALI20230329BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230329BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20230329BHJP
   C12M 1/12 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
G01N35/02 E
B04B3/00 D
B04B7/04
B04B15/06
C12M1/00 Z
B08B3/04 Z
C12M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022144670
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】10 2021 124 023.9
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】522362578
【氏名又は名称】ブルーキャットバイオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マン ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】フェイスト フランク
【テーマコード(参考)】
2G058
3B201
4B029
4D057
【Fターム(参考)】
2G058CC02
2G058FB02
2G058FB13
2G058FB14
2G058FB15
3B201AA47
3B201AB53
3B201BB01
3B201BB21
3B201BB62
3B201BB87
3B201BB92
3B201BB94
3B201BB95
3B201CD42
3B201CD43
4B029AA11
4B029AA27
4B029BB01
4B029DG04
4B029DG10
4D057AA16
4D057AB01
4D057AC01
4D057AD01
4D057AE03
4D057AF01
4D057BA01
4D057BA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応容器ユニットを洗浄するための遠心機、及びそのような遠心機の洗浄方法に関する。
【解決手段】遠心機は、ロータとロータチャンバとを有し、このロータチャンバ内に上記ロータが配置及び搭載されており、このロータは、反応容器ユニットを受け入れるための受け入れ領域を特徴とする。ロータチャンバはハウジングによって画定され、このハウジングは、反応容器から排出された液体を流し出すための出口を有し、ロータチャンバに洗浄溶液を充填するための入口を備え、これにより、ロータが回転するときに、ロータ2は、少なくとも部分的に洗浄溶液に浸漬され、洗浄溶液をロータチャンバ内に分配し、かつ/又は入口は、洗浄溶液が回転するロータによって供給されるときに洗浄溶液がロータチャンバ9内に分配されるように設計されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(2)とロータチャンバ(9)とを有する、反応容器ユニット(7)を洗浄するための遠心機(1)であって、前記ロータチャンバ(9)内に前記ロータ(2)は配置されて回転可能に搭載されており、前記ロータ(2)は、前記反応容器ユニット(7)を受け入れるための受け入れ領域(6)を含み、
前記ロータチャンバ(9)はハウジング(3)によって画定され、前記ハウジング(3)は、反応容器から排出された任意の液体を排出するための出口を有し、前記ロータチャンバ(9)に洗浄溶液を供給するための入口を備え、前記洗浄溶液が、前記反応容器ユニット(7)を有さない前記ロータ(2)の回転によって、前記ロータ(2)との接触によって前記ロータチャンバ(9)内に分配されて、前記ロータチャンバ(9)が洗浄されるようになっており、
前記ロータ(2)の回転軸(5)は設置面(16)に平行に延びる遠心機(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(3)の前記出口が前記入口も形成することを特徴とする請求項1に記載の遠心機(1)。
【請求項3】
前記出口及び前記入口を形成する前記ハウジング(3)の開口部が、分岐を有し入口ライン及び出口ラインに分岐する液体ラインに接続され、前記出口ラインが、液体を排出するように設計されており、前記入口ラインが、液体を供給するように設計されており、前記出口ラインが、前記出口ラインを遮断するための遮断要素(36)を有することを特徴とする請求項2に記載の遠心機(1)。
【請求項4】
前記入口ラインが、前記遠心機(1)に統合された分注装置に流体的に連結されており、前記入口ラインに、前記分注装置によって洗浄溶液を供給することが可能であることを特徴とする請求項3に記載の遠心機(1)。
【請求項5】
前記出口が吸引ポンプ及びサイフォン(41)を有し、前記サイフォンが、前記吸引ポンプが作動されないとき、所定の充填レベルを下回る充填レベルを有する液体が前記ロータチャンバ(9)内に残るように設計されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項6】
充填レベルを検出するために、前記ロータチャンバ(9)内に充填レベルセンサが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項7】
前記洗浄溶液が供給されるときに前記洗浄溶液が前記ロータ(2)と接触することができるように、前記入口が前記ロータ(2)の回転軸の上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項8】
前記入口が、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に噴霧するための1つ以上のノズルを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項8】
前記ロータチャンバ(9)が、所定のレベル(43)まで前記洗浄溶液で満たされており、
前記ロータ(2)が、回転中に、前記ロータ(2)が少なくとも部分的に前記洗浄溶液に浸漬され、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に分配するように設計されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項10】
反応容器ユニット(7)を洗浄するための遠心機(1)の洗浄方法であって、前記遠心機(1)は、ロータ(2)とロータチャンバ(9)とを含み、前記ロータチャンバ(9)内に前記ロータ(2)が配置されて回転可能に搭載されており、前記ロータ(2)は、前記反応容器ユニット(7)を受け入れるための受け入れ領域(6)を含み、以下の
前記ロータチャンバ(9)に、少なくとも所定のレベル(43)まで洗浄液を満たし、前記ロータ(2)が回転すると、前記ロータ(2)が少なくとも部分的に前記洗浄溶液に浸漬されるようにし、かつ/又は前記洗浄溶液を、前記洗浄溶液が前記ロータ(2)と接触することができ、かつ/若しくは前記ロータチャンバ(9)内に噴霧されるように、前記ロータチャンバ(9)に供給する工程と、
前記ロータ(2)を回転させ、これにより、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に分配する工程と、
前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)から除去する工程と
が実施される方法。
【請求項11】
前記洗浄溶液が、例えばホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを含有する非発泡性洗浄溶液であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄溶液が、発泡性洗浄溶液、特に界面活性剤含有洗浄溶液であり、前記洗浄溶液を除去するために、例えばアルコールを含有する泡分解溶液が前記ロータチャンバ(9)に供給されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
泡分解溶液の供給中又は供給後に、前記ロータ(2)が回転され、前記泡分解溶液が前記ロータチャンバ(9)内に分配されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の遠心機(1)が使用されることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとロータチャンバとを有する、反応容器ユニットを洗浄するための遠心機であって、ロータチャンバ内にロータが配置されて回転可能に搭載され、ロータは、反応容器ユニットを受け入れるための受け入れ領域を含む遠心機に関する。さらには、本発明は、そのような遠心機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第937502A2号明細書は、マイクロタイタープレートを取り扱う方法であって、マイクロタイタープレートが遠心法によって洗浄される方法を記載する。この目的のために、マイクロタイタープレートは、マイクロタイタープレートの開口部が回転軸から離れるように向けられるように、コンベヤベルトを介して回転ハウジング内に配置される。
【0003】
国際公開第2015/018878A1号パンフレットは、マイクロタイタープレートを遠心機のロータに引き込むか、又はこのロータから押し出すことができる弾性アームを含む別の遠心機を開示する。このロータは、周囲のハウジング及び下側領域に配置された溝に対して非常に短い距離しか有していない。この短い部分は、結果として生じる循環風によって反応容器から漏出した液体を溝に送り込み、次いでポンプを使用してそれを送り出すことを目的とする。距離が小さいため、液面が溝の上方になる恐れがある。これは、ロータが、回転するときに液体中に沈むということを引き起こす可能性がある。これは、液体が洗剤を含有する洗浄溶液である場合にとりわけ重要である。というのも、そのときロータは液体を叩いて泡立てることになるからである。この泡沫は、ロータの容積の大部分を迅速に満たし、扉から逃げることができる。また、発泡材料は、記載されたポンプによってうまく送り出されることができず、むしろロータチャンバ内又は溝内に留まる。溝に対するロータの近接距離は、主に、所望の循環風を生成するように選択されるロータチャンバの円筒形状に起因する。
【0004】
遠心機の円筒形ロータチャンバでは、回転するロータによって循環風が発生することが知られている。これに関連して、米国特許出願公開第2007/0037684A1号明細書、独国特許出願公開第10355179A1号明細書、独国特許第1033446号明細書、欧州特許出願公開第2705903A1号明細書及び独国特許出願公開第2404036号明細書が参照される。
【0005】
国際公開第2018/234420A1号パンフレットは、反応容器ユニットを洗浄するための別の遠心機を開示する。この遠心機は、ロータとロータチャンバとを含み、このロータチャンバ内にロータが回転可能に搭載されている。反応容器ユニットは、その開口部が外側を向くように遠心機に挿入され、その結果、ロータが回転すると、内部の試薬がそれぞれの反応容器から押し出される。これにより、反応容器が実質的に残留物なしで洗浄されることが可能になる。この遠心機は分注ユニットを有することができ、この分注ユニットは複数の分注ノズルを含む。この分注ノズルは、好ましくは、ラインに沿って並んで配置され、このラインは、遠心機の搬入(ローディング)又は搬出(アンローディング)の間の反応容器ユニットの移動方向に対して横方向に延びる。分注ユニットのノズルは、遠心機に反応容器ユニットを搬入搬出するための開口部に隣接して配置される。
【0006】
別の遠心機が国際公開第2017/125598A1号パンフレットに開示されており、この遠心機は、今度は、搬入搬出装置を有し、この搬入搬出装置内に反応容器ユニットが剛性スライドロッドによって位置決めされる。
【0007】
中国特許出願公開第102175855A号明細書は、完全自動360°プレート洗浄機を開示する。この機械の回転軸は水平面に平行に延び、複数のプレートが1つのハウジング内で同時に洗浄されることを可能にし、それによって効率を上昇させ、コストを大幅に低減する。
【0008】
米国特許第4,953,575号明細書は、キュベット用の洗浄装置に関する。この目的のために、キュベットはロータ内のホルダーに置かれる。ロータを回転させることにより、キュベットから液体が除去される。開示された遠心機ハウジングは、除去された液体がハウジングから出ることができる開口部をその最低点に有する。
【0009】
特開2009-264927号公報は、マイクロタイタープレートを配置することができるドラムを含む装置を開示する。このドラムは、複数のマイクロタイタープレートを搬入することができ、次いで、それらは、水平回転軸の周りを回転する。ドラムには、マイクロタイタープレートの開口部がドラムの内側に向けられるようにマイクロタイタープレートが装填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第937502A2号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/018878A1号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0037684A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10355179A1号明細書
【特許文献5】独国特許第1033446号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2705903A1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第2404036号明細書
【特許文献8】国際公開第2018/234420A1号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2017/125598A1号パンフレット
【特許文献10】中国特許出願公開第102175855A号明細書
【特許文献11】米国特許第4,953,575号明細書
【特許文献12】特開2009-264927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、反応容器ユニットを洗浄するための遠心機であって、ロータとロータチャンバとを有し、このロータチャンバ内にロータが回転可能に搭載されており、汚染は、その遠心機によって回避されるべきであり、信頼性のある長期操作が可能である遠心機を作り出すという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項に係る対象によって解決される。本発明の有利な実施形態は、それぞれの従属請求項において特定される。
【0013】
本発明に係る反応容器ユニットを洗浄するための遠心機(遠心分離機)は、ロータとロータチャンバとを含み、このロータチャンバ内に上記ロータが配置及び搭載(装着)されており、このロータは、反応容器ユニットを受け入れるための受け入れ領域を含む。ロータチャンバはハウジングによって画定され、このハウジングは、反応容器から排出された液体を除去するためのドレインを有し、ロータチャンバに洗浄溶液を充填するための入口を備え、ロータの回転によって洗浄溶液がロータチャンバ内に分配されるようになっている。
【0014】
従って、洗浄溶液をこの遠心機に供給し、ロータチャンバ内に分配することができる。ロータは、ここでは洗浄溶液を分配するために使用される。これは、遠心機を洗浄するプロセスの説明において以下でより詳細に論じられる。
【0015】
ロータが回転すると、ロータは少なくとも部分的に洗浄溶液に浸漬され、洗浄溶液をロータチャンバ内に分配することができ、かつ/又は、この取り込みは、洗浄溶液が回転するロータを通して供給されるときに洗浄溶液がロータチャンバ内に分配されるように設計される。これにより、洗浄溶液は、ロータと接触し、ロータで生じる遠心力によって分配されることができ、かつ/又はロータによって生成される空気流によって同伴され、従って分配されることができる。
【0016】
遠心機において反応容器ユニットを洗浄する場合、その際に、反応容器の内容物が反応容器ユニットから放出されるが、反応容器内容物の残留物がロータチャンバ内に残り、別の反応容器ユニットに移送される恐れがある。これは、化学的試料又は生物学的試料が反応容器ユニットに含まれる場合に特に重要である。生物学的試料の場合、別の反応容器ユニットに移されるただ1つの分子、例えばDNA鎖の一部が許容できない汚染物となる可能性がある。
【0017】
反応容器ユニットを洗浄するためのそのような遠心機は、現在、使用されて大きい成功を収めている。しかしながら、それらは定期的に洗浄される必要がある。本発明に係る遠心機の設計は、遠心機の独立した又は自動的な洗浄を可能にする。これにより、遠心機が自動プロセスの一部となり、オペレータによる手動の介入を必要とせずに時々洗浄プロセスを受けることが可能になる。例えば、この遠心機は、手動の介入を必要とせずに数時間続く作業サイクルで数回洗浄することができる。これは、反応容器ユニットを洗浄するための従来の遠心機と比較して大きな利点である。
【0018】
ハウジングの出口は、入口も形成することができる。例えば、出口又は入口を形成するハウジングの開口部は、流体ラインが入口ライン及び出口ラインに分岐するように分岐を有する流体ラインに接続されてもよい。出口ラインは流体を排出するように設計され、入口ラインは流体を供給するように設計される。出口ラインは、出口ラインを遮断するための遮断要素を有する。出口ラインが遮断要素によって遮断される場合、流体又は洗浄溶液は、出口ラインを通って流れることなく入口ラインを介して供給されることができ、専らロータチャンバに供給される。
【0019】
上記遮断要素は、バルブとすることができ、又は、出口ラインの少なくとも一部がホースとして設計されている場合、好ましくは自動作動するホースクランプとすることができる。このホースクランプは、それを自動的に動作させるためのアクチュエータを備えることができる。このアクチュエータは、偏心器(eccentric)として、又は電気的な若しくは空気圧によるピストン機構として設計することができる。
【0020】
入口ラインは、当該遠心機に統合された分注装置に流体的に連結されることもでき、それによって、入口ラインに、分注装置によって洗浄溶液を供給することが可能になる。遠心機のこのような実施形態では、分注装置は、反応容器ユニットの反応容器内に溶液を分注する機能と、ロータチャンバに洗浄溶液を供給する機能の両方を有する。
【0021】
上記ドレインは、吸引ポンプ及びサイフォンを備えることができ、このサイフォンは、吸引ポンプが作動されないとき、所定の充填レベルを下回る充填レベルを有する液体がロータチャンバ内に残るように設計される。このようにして、吸引ポンプの非作動は、洗浄溶液のレベルが所定の充填レベルを超えないことを条件として、ロータチャンバ内に存在する洗浄溶液がロータチャンバ内に留まることを保証することができる。この所定の充填レベルのレベルは、好ましくは、ロータが回転中に液体中に浸漬し、その液体を少なくとも部分的に搬送するように選択される。従って、サイフォンは、吸引ポンプが作動しない場合に、特定の充填レベルまで出口ラインを遮断する遮断要素を形成する。
【0022】
充填レベルを検出するために、ロータチャンバ内にレベルセンサを設けることができる。このレベルセンサは、液体の表面を走査する超音波センサとすることができる。測定を妨げないような位置にロータを回転させることが有用である。充填レベルは、ハウジングの内面に取り付けられ液体の特定のレベルを測定するために使用される、1つ以上の温度センサによって形成されることもできる。
【0023】
上記入口は、洗浄溶液が供給されるときに洗浄溶液がロータと接触することができるように、ロータの回転軸の上方に位置することができる。ロータは、当然ながら、入口によって運ばれる洗浄溶液と接触しない位置にあってもよく、例えば、鉛直方向(垂直)に整列される。これにより、このようにして供給された洗浄流体は、回転するロータ、特に高速回転するロータによって搬送され、ロータチャンバ内に分配される。この分配には数rpmの低速でさえ充分である。通常、ロータは、少なくとも10rpm又は少なくとも50rpm以上の速度で回転される。ロータが洗浄溶液中に浸漬されることができるように洗浄溶液がロータチャンバ内に所定のレベルまで導入されるとき、ロータは、100rpmより速く回転されるべきではない。他方で、洗浄溶液がロータチャンバの底部に集まることなく、例えば気化によって洗浄溶液がロータチャンバに導入される場合、ロータは、例えば少なくとも100rpmのより高速で動作させることもできる。この場合、少なくとも500rpm又は少なくとも1000rpmの速度も適切である可能性がある。
【0024】
入口は、洗浄溶液をロータチャンバ内に噴霧(霧化)するための1つ以上のノズルを有することもできる。このようにロータチャンバ内で噴霧された洗浄溶液も、ロータを回転させることによって、ロータチャンバ内で均等に分配されることが可能である。
【0025】
本発明の別の態様は、反応容器ユニットを洗浄するための遠心機の洗浄方法であって、この遠心機は、ロータとロータチャンバとを含み、このロータチャンバ内に上記ロータが配置されて回転可能に搭載されており、上記ロータは、反応容器ユニットを受け入れるための受け入れ領域を含む方法に関する。この手順では、以下の工程が実行される。
ロータチャンバに、少なくとも所定のレベルまで洗浄溶液を満たし、ロータが回転すると、ロータは少なくとも部分的に洗浄溶液に浸漬されるようにし、かつ/又は洗浄溶液を、洗浄溶液がロータと接触することができ、かつ/若しくは洗浄溶液がロータの回転時に空気流によって同伴されるロータチャンバの領域に導入されるように、ロータチャンバに供給する工程と、
ロータを回転/移動させ、これにより、洗浄溶液をータチャンバ内に分配する工程と、
洗浄溶液をロータチャンバから除去する工程。
【0026】
洗浄溶液が除去されると、ロータチャンバ内の汚染物質が運ばれる。洗浄溶液は、ドレインを介して流し出すことができ、従ってロータチャンバから除去することができる。これは、例えば、ドレインパイプ内の遮断要素を開放することによって制御することができる。
【0027】
ロータは、このような遠心機において2つの機能を有する。一方では、ロータは、ロータを回転させることによって、反応容器ユニットの個々の反応容器から内容物を放出して反応容器ユニットを空にする役割を果たす。他方で、ロータは、ロータチャンバ内に洗浄溶液を分配し、従ってロータチャンバの均等かつ信頼性の高い洗浄を確実にするようにも働く。一方で、洗浄溶液の分配は、回転中に少なくとも部分的に洗浄溶液に浸漬され洗浄溶液を運ぶロータによって達成することができる。しかしながら、洗浄溶液は、洗浄溶液がロータによって直接運ばれ、又はロータによって生成される気流とともに運ばれてロータチャンバ内に分配されるように供給されてもよい。これは、特に、洗浄溶液がロータチャンバ内に噴霧される場合に当てはまり、この場合、洗浄溶液のミストは、ロータを回転させることによってロータチャンバ内に均等に分配される。
【0028】
洗浄溶液は、例えば、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを含有する非発泡性洗浄溶液であることができる。そのような非発泡性洗浄溶液は、さらなる活動なしに、それ自体でロータチャンバから流れ出すことができる。ロータの回転は、洗浄溶液をドレインに推進し、それをロータチャンバから除去する働きをしてもよい。しかしながら、洗浄溶液は、ロータが静止しているときにも、ドレインパイプが対応して遮断されていない場合、自動的に流れ出すことができる。
【0029】
洗浄溶液は、発泡性洗浄溶液、特に界面活性剤を含有する洗浄溶液であることもできる。この洗浄溶液がロータを通って分配されると、洗浄溶液はロータチャンバ内で発泡する。発泡した洗浄溶液を除去するために、例えばアルコールを含有する泡分解溶液を、ロータチャンバに供給することができる。これは、泡沫を崩壊させ、ドレインを通って流出させる。ロータチャンバからの洗浄溶液の流出又は除去は、この場合も、非発泡性洗浄溶液の場合と同様にロータを回転させることによって支援されることが可能である。
【0030】
1つの泡分解溶液も、ロータを回転させることによる供給中又は供給後にロータチャンバ内に分配されて、泡分解溶液をロータチャンバ内に効果的に分配することができる。
【0031】
このプロセスでは、先に説明した遠心機を使用することができる。
【0032】
本発明は、図面を用いて例として以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】遠心機のハウジングの一部の斜視図である。
図2】斜め前方から見た、図1のハウジングの一部の断面図である。
図3図1のハウジングの一部の縦断面図である。
図4a図1のハウジング部分を有する第1の実施形態に係る遠心機の縦断面図である。
図4b図1のハウジング部分を有する第2の実施形態に係る遠心機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る遠心機(遠心分離機)1(図4a)は、ロータ2と、ハウジング3と、ロータ2を回転軸5の周りに回転させるための駆動装置4とを有する。
【0035】
ロータは、反応容器ユニット7を受け入れるための少なくとも1つの受け入れ領域6を有する。反応容器ユニット7は、通常、マイクロタイタープレートである。このようなマイクロタイタープレートは、異なる数の反応容器を用いて設計することができる。6~4096個の反応容器を有するマイクロタイタープレートが一般的であり、96個、384個又は1536個の反応容器を有するマイクロタイタープレートが最も一般的なバージョンである。384個又は1536個の反応容器を有するマイクロタイタープレートの場合、個々の反応容器は非常に薄いため、毛細管力のみによって液体が通常その中に付着し、従って、そのようなマイクロタイタープレートをその開口部を下向きにして配置しても、液体は流出しないことになる。これは、反応容器がより少ないマイクロタイタープレートには当てはまらない。これは、反応容器の各々がより大きいからである。そのような反応容器ユニット7は、受け入れ領域6に単独で、又はキャリアユニットに載せて挿入することができる。好ましくは、搬入搬出装置8に結合することができる結合要素を有するキャリアユニットが使用される。そのような搬入搬出装置は、例えば、独国特許出願公開第102016101163号明細書に記載されている。これは、以下により詳細に説明される。
【0036】
ハウジング3は、ロータチャンバ9を画定する。本実施形態例では、ハウジング3のロータチャンバ9を画定する領域は、下側シェル10と、上側シェル11と、前端壁12と、後端壁13とから形成されている。後端壁に隣接して、ハウジングのさらなる部分があるが、これは添付の図面には示されていない。
【0037】
前端壁12及び後端壁13はそれぞれ、ロータ2の連続シャフト15が回転可能に装着されるボールベアリング14を収容する。シャフト15の中心線は回転軸5を形成する。回転軸5は、下側シェル10の下面によって形成される設置面16と平行に延びている。
【0038】
シャフト15の後端は、駆動装置4に連結されている。ハウジングの後端に隣接するハウジングのさらなる部分は、駆動装置17と、搬入搬出装置8と、遠心機1のすべての構成要素を制御する中央制御装置(図示せず)とを含む。
【0039】
前端壁12の外側には、反応容器ユニット7を取り込むためのバルコニー18が取り付けられている。バルコニー18の高さには、前端壁12に搬入搬出開口部19が設けられ、この搬入搬出開口部19を通して、反応容器ユニット7をロータチャンバ9に挿入して再度押し出すことができる。搬入搬出開口部19には、ロータチャンバを閉鎖できるように回動扉20が設けられている。
【0040】
この扉20に隣接して、いくつかの分注ノズル40を有する分注ユニット39及び/又は特にラインスキャンカメラの形態の光学検出ユニットを設けることができる。
【0041】
搬入搬出装置8は、スライドロッド(図示せず)を有し、このスライドロッドは、ロータチャンバ9を通って水平に移動することができ、その自由端は後端壁13の通路開口部21を通る。搬入搬出装置8は、この目的のためにリニアドライブを有し、その結果、スライドロッドは、その長手方向に沿って直線的に移動することができる。スライドロッドは、その自由端に結合要素を有し、この結合要素は、キャリアユニット又は反応容器ユニット7上の対応する結合要素に結合することができ、その結果、反応容器ユニットを有するキャリアユニット又は反応容器ユニットは、スライドロッドをバルコニー18から搬入搬出開口部19を通ってロータチャンバ9内に移動させることによって直接移動することができ、この場合、ロータ2は、キャリアユニット又は反応容器ユニットがロータ2の受け入れ領域6内に移動されるように、受け入れ領域6が搬入搬出開口部19に隣接して配置される。スライドロッドとキャリアユニット又は反応容器ユニット7との間の結合は、キャリアユニット又は反応容器ユニットがロータ2内で自由に移動可能であるように解放することができ、従ってロータはこのユニットとともに回転することができる。
【0042】
搬入搬出装置8のスライドロッドによって、キャリアユニット又は反応容器ユニット7は、ロータ2の受け入れ領域6から押し出され、搬入搬出開口部19を通ってバルコニー18上に戻ることができる。バルコニー18では、反応容器ユニット7は、例えばロボットによって取り外されることができる。
【0043】
下側シェル10は、回転軸5にほぼ平行に延びるチャネル22を有する。チャネル22は、後端壁13から前端壁12の領域まで延在し、前部に向かって傾いて又は傾斜している(図4a)。出口開口部23は、下側シェル10の前側に形成され、チャネル22の前側には、チャネル22が流れ込む出口開口部23がある。出口開口部23には、ホース25を接続することができる接続ピボット24が配置されている。ホース25は、概して、遠心機1内の反応容器ユニット7の反応容器から放出される液体が受け入れられる受入容器(図示せず)内に開口する。この容器は、好ましくは、通気開口部を有するか、又はホースは、ホース25を通って遠心機を出る液体が容器内にいかなる背圧も生成しないように、いくらかの隙間を伴って容器を通って延在する。
【0044】
下側シェル10は、チャネル22に隣接する内面を有し、各内面は、チャネル22の上縁から外向きに傾斜している(図2)。それゆえ、これらの内面は漏斗26を形成し、以下では漏斗面27と呼ばれる。漏斗面27は、水平に対して約30°~60°の角度で傾斜している。実質的に平面であるとは、漏斗面が0.5m超、好ましくは1m超の曲率半径を有することを意味する。本実施形態例において、漏斗面27は、ロータ2が水平位置にあるときでも、ロータ2の領域を越えてその方向に横方向に延在する。
【0045】
漏斗26又は漏斗表面27の外縁から、下側シェル10の内面は、ほぼ鉛直方向上向きに延びている。従って、それらは垂直面28を形成する。
【0046】
上側シェル11は、下側シェル10の上縁に取り付けられており、断面が半円状のチャネル様形状である。上側シェル11の内面は、垂直面28と面一に合流する。それゆえ、ハウジング3の断面は円筒形ではなく、シェル11の上部領域において円筒形の曲率を有するにすぎないが、下側シェル10は、断面が漏斗形状であり、チャネル22内で終端する。チャネル22は、漏斗形状の下側シェル10から下向きにわずかに凹んでおり、ほぼ垂直に配置された2つの側壁37a、37bを有する。チャネル自体は、その中の液体が排出するように傾斜して形成される。
【0047】
本実施形態では、下側シェル10及び上側シェル11は、金属製である。下側シェル10及び上側シェル11の内面は、滑らかなプラスチック層でコーティングされており、それにより、反応容器ユニット7の反応容器から放出された液体は、内面に沿って急速に流れ出し、漏斗26によってチャネル22に案内され、そこでロータチャンバ9から出る。プラスチック層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製である。
【0048】
漏斗22の上縁は、ロータ2の最大半径の少なくとも1.32倍だけ回転軸から離間している。これにより、漏斗26内に、1回転中にロータ2に触れない自由空間が形成される。液体はこの自由空間に蓄積することができる。図2は、ロータと接触することなく漏斗26内に蓄積することができる液体の最高レベル29を示す。これにより、反応容器ユニット7の大容量の反応容器の場合、その中の液体の主要部分を一度に空にし、漏斗26にこれを集めることが可能になり、その結果、液体は、出口開口部23を通って徐々に流出することができる。
【0049】
さらには、ロータからのチャネル22の距離が大きく、従って断面が大きいため、回転中にロータによって生成される空気流はこの領域で最も低く、従って液体は漏斗の底部、すなわちチャネル22に沈降することができ、出口開口部23を通ってチャネル22から流出する。流速が低いため、チャネル22に隣接する漏斗形状の領域に位置する液体が空気流によって上方に押し上げられる危険性もほとんどない。
【0050】
チャネルは、ほぼ垂直な側壁37a、37bによって画定されるので、たとえ空気流が回転方向38に発生しても、その空気流はチャネルから液体を追い出すことができない。従って、液体は、チャネル22内に一旦捕捉され、出口開口部23を通って出ることができるのみである。図2に示される実施形態例では、空気流は、ロータの回転方向38においてチャネル22の下流に位置する側壁37aに衝突することができる。しかし、側壁37aは流れの方向に対してほぼ垂直であるので、チャネル内の流体はもはやロータチャンバ内に戻ることができない。原理的には、回転方向38のチャネル22の下流側にほぼ垂直な側壁を有するチャネルであればよい。しかしながら、製造に関しては、2つのほぼ垂直な側壁37a及び37bを有するチャネルを製造することが好都合である。
【0051】
漏斗26及びチャネル22のこの形成により、吸引ポンプを使用する必要性がない。
【0052】
分注ヘッドとも呼ぶことができる分注ユニット30は、直線に沿って配置され開口部が下向きの複数の分注ノズル31を有する。分注ユニット30は試薬ライン32に接続され、この試薬ラインを介して試薬が分注ユニット30に供給され、試薬は次いで個々の分注ノズル31を通って下方に分注される。基本的に、分注ユニットは、搬入搬出装置8によって反応容器ユニット7が分注ユニット30を通過して移動されるときに、反応容器ユニット7の反応容器に試薬を充填することができるという、国際公開第2018/234420A1号パンフレットから公知である機能を有する。
【0053】
本発明の第1の実施形態(図4a)では、バルコニー18は、図4aに示すように、上方に開いたチャネル33を備えて分注ユニット30の下の領域に形成され、チャネル33には、反応容器ユニット7が分注ノズル31の下に配置されていない場合に、分注ノズル31によって分注された試薬が収集される。チャネル33は回収管34に連通して接続されており、チャネル33に回収された試薬は回収管34を介して流出する。回収ホース34は、分岐35においてホース25内に開口している。ロータチャンバ9に対しては、分岐35から始まって、回収ホースは、入口ラインを形成し、ホース25は、ロータチャンバ9から液体を排出するための出口ラインを形成する。遮断要素36が、分岐35の下流のホース25に配置され、これによってホース25の通路を遮断することができる。遮断要素36は、好ましくは、ホースの通路を開閉するための電気的に作動する弁とすることができる。遮断要素はまた、ホースクランプであってもよく、このホースクランプは、例えばアクチュエータによって、又は偏心器によって開閉することができる。
【0054】
遮断要素36がホース25の通路を遮断し、洗浄溶液が分注ユニット30によって回収ホース34を介して供給されると、洗浄溶液はホース25及び出口開口部23を介してロータチャンバ9内に流れ込む。このとき、出口開口部23は洗浄溶液の入口として機能する。原理上、洗浄溶液をロータチャンバ9にバルコニー18の頂部のレベルまで供給することが可能である。しかしながら、シャフト15のボールベアリング14に洗浄溶液を溢れさせないことが好都合である。ロータチャンバ9は、レベル29(図2)の上方まで洗浄溶液で満たされており、従って、ロータ2が回転すると、ロータ2は洗浄溶液に浸漬され、洗浄溶液の一部を取り込み、それをロータチャンバ9内に分配する。実際には、ロータチャンバ9は、図2に示すように、レベル43まで充填されていることが示されている。レベル43は、ロータ2の回転中にほとんど触れられないレベル29から、ロータ2の半径の約5%分、好ましくはロータ2の半径の少なくとも10%分、上方にある。
【0055】
ロータ2を回転させることによって、洗浄溶液はロータチャンバ9内に分配され、その結果、ロータチャンバ9のすべての部位が洗浄溶液と接触する。
【0056】
ロータ2を回転させることによって洗浄溶液が分配されている間、洗浄溶液は分注ユニット30を介して補充され続けて、洗浄溶液のレベルが低下するのを減速又は防止することができる。
【0057】
洗浄溶液がロータチャンバ9内に充分に分布している場合、洗浄溶液が不純物を吸収できるように所定時間待つことができる。このとき、ロータの回転を停止することができ、又は空気流によってロータチャンバ内の洗浄溶液の連続的な旋回を引き起こすために、ロータがさらに回転される。
【0058】
この洗浄工程が完了すると、ロック要素36が開かれ、洗浄溶液が出口開口部23を通って流出する。これは、洗浄溶液がチャネル22内に駆動されるように、ロータによるさらなる回転によって支援されてもよい。
【0059】
このロータチャンバ9の洗浄プロセスは、完全に自動的に実行することができ、中央制御装置によって制御される。
【0060】
使用される洗浄溶液は、好ましくは非発泡性洗浄溶液、例えばホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドであり、これらを用いるとロータチャンバ9全体を確実に消毒することができる。
【0061】
しかしながら、生物学的試料、特に細菌を含有する試料の場合、洗浄溶液が界面活性剤を含有し、これがロータの回転時に洗浄溶液の発泡をもたらすと有利である。洗浄溶液の発泡は、ロータチャンバ9内の洗浄溶液の非常に迅速かつ均一な分配を引き起こし、このため、ロータチャンバ9内でロータを回転させる回転速度及び/又は継続時間が、非発泡性洗浄溶液の分配と比較して著しく低減される可能性があり、又は低減されるはずである。発泡した洗浄溶液を再びロータチャンバ9から完全に除去するために、泡を壊す溶液が分注ユニット30及び回収ホース34を介してロータチャンバ9に供給されて、ロータ2を回転させることにより分配される。その結果、ロータチャンバ内の泡が崩壊し、洗浄溶液が泡分解溶液とともにロータチャンバ9から流出する。このような泡分解溶液は、例えば、アルコールを含有してもよい。アルコールを含有する溶液は、非常に迅速に蒸発し、結果としてロータチャンバ9が相応して迅速に乾燥するという利点も有する。
【0062】
遠心機1の第2の実施形態例(図4b)は、以下で別段説明されない限り、第1の実施形態と実質的に同じに設計されており、従って、同じ部品には同じ参照符号が与えられ、再度説明されることはない。
【0063】
第2の実施形態例は、分注ユニットを有する必要がない。後端13には、シャフト15の上方領域に、試薬ライン32に接続されてロータチャンバ9内に開口する供給開口部39が形成されている。本実施形態において、噴霧ノズル40は、供給開口部39に配置されており、噴霧ノズル40を用いて、試薬ライン32を介して供給された試薬はロータチャンバ9内に噴霧される。供給開口部39から洗浄溶液を供給することにより、洗浄溶液はロータチャンバ9に入り、噴霧ノズル40により噴霧されてミストとなり、このミストは、ロータ2の回転によりロータチャンバ9内に均等に分配される。洗浄溶液の一部はチャネル22に沈降し、出口開口部23及びホース25を介してロータチャンバ9から流れ出す。これにより、洗浄溶液をロータチャンバ9内に連続的に循環させて排出し、ロータチャンバ9から汚染物質を除去することができる。ホース25の通路を遮断し、洗浄溶液をロータチャンバ9内に保持するために、遮断要素36をホース25内に任意選択で設けることができる。
【0064】
ロータチャンバ内の洗浄溶液の最も均一な分布を達成するために、洗浄プロセス中にロータを異なる方向に交互に回転させることも有用である場合がある。
【0065】
原理上、噴霧器ノズル40を供給開口部39内に配置しないことも可能である。これは、ロータチャンバの寸法、ロータ、及びロータの回転中にロータによって生成される空気流に依存する。従って、洗浄溶液の充分な分配は、噴霧ノズルを必要とすることなく、ロータの回転のみ及びロータによって生成される空気流によって達成することができる。他方では、回転軸5の方向におけるロータチャンバ9の全幅にわたって均一な分布を達成するために、特に上側シェル11にもいくつかの供給開口部39を設けることも好都合である場合がある。
【0066】
圧力ノズルを供給開口部(複数可)39に挿入することもできる。圧力ノズルは、洗浄溶液が所定の圧力でノズルに供給されると開口するノズルである。その結果、ロータチャンバへの洗浄溶液の供給タイミングを精密に制御することができる。圧力ノズルは、噴霧ノズルであることも可能である。
【0067】
さらには、第2の実施形態例においても、遮断要素36がホース25内に設けられる場合、図2のレベル43に対応する充填レベルに達するまで、供給開口部39を介してロータチャンバ9内に多量の洗浄溶液を導入することができる。次いで、ロータを回転させることにより、上記第1の実施形態例で説明したように、洗浄溶液をロータチャンバ9内に均等に分配することができる。
【0068】
さらに、第2の実施形態例は、ホース25がサイフォン41(図4b)へと形成される、すなわち、ホース25が出口開口部23からある距離だけ上方に向けられ、次いで下方に偏向され、その結果、ホース25に流入する液体が、ロータチャンバ9内の液体レベルがサイフォンのレベルに達したときにのみサイフォンに打ち勝つだけであるという効果に向けて改変することができる。ホース25のこのような配置では、必要に応じてロータチャンバ9からサイフォン41を通過して液体を完全に吸引するために、吸引ポンプ42をホース25内に設ける必要があり、又は、サイフォン41が持ち上げられてホース25内に収容された液体が重力のみによって流出するようにホース25を下降させる昇降機構が設けられてもよい。
【0069】
第2の実施形態例においても、非発泡性洗浄溶液又は発泡性洗浄溶液を供給することができる。発泡性洗浄溶液を用いる場合には、第1の実施形態例と同様に、ロータチャンバ9から発泡性洗浄溶液を除去するために、ロータチャンバ9に泡分解溶液を供給するのが好都合である。
【0070】
上記の実施形態例及び変形例は、洗浄溶液及び/又は複数種の洗浄溶液を異なる方法でロータチャンバ9に供給又はロータチャンバ9から排出してロータチャンバ9を洗浄することができることを示す。すべての実施形態例及び変形例に共通するのは、遠心機1に本質的に存在するロータ2を使用して、洗浄溶液をロータチャンバ9内に均等に分配することである。ロータ2が回転する回転速度及び継続時間は、ロータ内部9の幾何学的形状及び洗浄溶液の挙動に応じて調整されるべきである。この場合、ロータチャンバ9内の洗浄溶液の可能な限り均一な分布を得るために、ロータ2を少なくとも1回時計回り方向に回転させ、少なくとも1回反時計回り方向に回転させることが(遠心機の構造設計にかかわらず)特に好都合であってもよい。1つ以上の噴霧ノズル40が使用される場合、噴霧ノズル40が洗浄溶液の効率的な噴霧を提供するように圧力下で洗浄溶液を供給することが望ましい。
【0071】
洗浄溶液の供給及び均一な分配、並びにロータチャンバ9からの除去は、完全に自動的に行うことができる。その結果、遠心機1は、多くの反応容器ユニット7が繰り返し洗浄される自動製造プロセスにおいて使用することができ、その際ある反応容器ユニット7から別の反応容器ユニット7への汚染が生じないことが長期間にわたって保証される。ロータチャンバ9の洗浄操作の間隔は、反応容器ユニット7に含まれる試薬の量及び反応性に応じて調整されるべきである。例えば、そのような洗浄操作は、10分以下又は60分以下の間隔で行うことができる。しかしながら、反応性が低い試薬及び少量の場合、そのような洗浄操作を1日1回のみ行うことも適切であってもよい。
【0072】
上記洗浄プロセスは、内部を完全に消毒し、ウイルス、細菌又は他の感染性因子による汚染を確実に防止するために使用することができる。
【0073】
加えて、DNAを含有する試料については、薬剤を溶媒として使用して核酸を破壊し、従って汚染を排除することができる。これらの薬剤は、例えば、過塩素酸塩、強酸化剤及び/又はデオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)等の酵素である。
【0074】
ロータチャンバ9の予期せぬ汚染が生じた場合には、例えば排出中の反応容器ユニット7の破砕の場合には、このシステムは、内部又はユニットを開く必要なく完全に洗浄されることが可能である。
【0075】
本発明は、以下のように簡潔に要約することができる。
【0076】
本発明は、反応容器ユニット7を洗浄するための遠心機1、及びそのような遠心機1の洗浄方法に関する。遠心機1は、ロータ2とロータチャンバ9とを有し、このロータチャンバ9内にロータが配置及び搭載されており、このロータは、反応容器ユニットを受け入れるための受け入れ領域を特徴とする。ロータチャンバ9はハウジング3によって画定され、ハウジング3は、反応容器から排出された液体を流し出すための出口を有し、ロータチャンバ9に洗浄溶液を充填するための入口を備え、これにより、ロータ2が回転するときに、ロータ2は、少なくとも部分的に洗浄溶液に浸漬され、洗浄溶液をロータチャンバ9内に分配し、かつ/又は入口は、洗浄溶液が回転するロータ2によって供給されるときに洗浄溶液がロータチャンバ9内に分配されるように設計されている。
【符号の説明】
【0077】
1 遠心機 21 通路開口部
2 ロータ 22 チャネル
3 ハウジング 23 出口開口部
4 駆動装置 24 接続ピボット
5 回転軸 25 ホース
6 受け入れ領域 26 漏斗
7 反応容器ユニット 27 漏斗面
8 搬入搬出装置 28 垂直面
9 ロータチャンバ 29 レベル
10 下側シェル 30 分注ユニット
10a 下側シェル 31 分注ノズル
11 上側シェル 32 試薬ライン
11a 上側シェル 33 チャネル
12 前端壁 34 回収ホース
12a 前端壁 35 分岐
13 後端壁 36 遮断要素
13a 後端壁 37a 側壁
14 ボールベアリング 37b 側壁
15 シャフト 38 回転方向
16 設置面 39 供給開口部
17 ロータチャンバ 40 噴霧器ノズル
18 バルコニー 41 サイフォン
19 散気通気開口部 42 吸引ポンプ
20 扉 43 レベル
図1
図2
図3
図4a
図4b
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(2)とロータチャンバ(9)とを有する、反応容器ユニット(7)を洗浄するための遠心機(1)であって、前記ロータチャンバ(9)内に前記ロータ(2)は配置されて回転可能に搭載されており、前記ロータ(2)は、前記反応容器ユニット(7)を受け入れるための受け入れ領域(6)を含み、
前記ロータチャンバ(9)はハウジング(3)によって画定され、前記ハウジング(3)は、反応容器から排出された任意の液体を排出するための出口を有し、前記ロータチャンバ(9)に洗浄溶液を供給するための入口を備え、前記洗浄溶液が、前記反応容器ユニット(7)を有さない前記ロータ(2)の回転によって、前記ロータ(2)との接触によって前記ロータチャンバ(9)内に分配されて、前記ロータチャンバ(9)が洗浄されるようになっており、
前記ロータ(2)の回転軸(5)は設置面(16)に平行に延びる遠心機(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(3)の前記出口が前記入口も形成することを特徴とする請求項1に記載の遠心機(1)。
【請求項3】
前記出口及び前記入口を形成する前記ハウジング(3)の開口部が、分岐を有し入口ライン及び出口ラインに分岐する液体ラインに接続され、前記出口ラインが、液体を排出するように設計されており、前記入口ラインが、液体を供給するように設計されており、前記出口ラインが、前記出口ラインを遮断するための遮断要素(36)を有することを特徴とする請求項2に記載の遠心機(1)。
【請求項4】
前記入口ラインが、前記遠心機(1)に統合された分注装置に流体的に連結されており、前記入口ラインに、前記分注装置によって洗浄溶液を供給することが可能であることを特徴とする請求項3に記載の遠心機(1)。
【請求項5】
前記出口が吸引ポンプ及びサイフォン(41)を有し、前記サイフォンが、前記吸引ポンプが作動されないとき、所定の充填レベルを下回る充填レベルを有する液体が前記ロータチャンバ(9)内に残るように設計されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項6】
充填レベルを検出するために、前記ロータチャンバ(9)内に充填レベルセンサが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項7】
前記洗浄溶液が供給されるときに前記洗浄溶液が前記ロータ(2)と接触することができるように、前記入口が前記ロータ(2)の回転軸の上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項8】
前記入口が、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に噴霧するための1つ以上のノズルを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項9】
前記ロータチャンバ(9)が、所定のレベル(43)まで前記洗浄溶液で満たされており、
前記ロータ(2)が、回転中に、前記ロータ(2)が少なくとも部分的に前記洗浄溶液に浸漬され、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に分配するように設計されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の遠心機(1)。
【請求項10】
反応容器ユニット(7)を洗浄するための遠心機(1)の洗浄方法であって、前記遠心機(1)は、ロータ(2)とロータチャンバ(9)とを含み、前記ロータチャンバ(9)内に前記ロータ(2)が配置されて回転可能に搭載されており、前記ロータ(2)は、前記反応容器ユニット(7)を受け入れるための受け入れ領域(6)を含み、以下の
前記ロータチャンバ(9)に、少なくとも所定のレベル(43)まで洗浄液を満たし、前記ロータ(2)が回転すると、前記ロータ(2)が少なくとも部分的に前記洗浄溶液に浸漬されるようにし、かつ/又は前記洗浄溶液を、前記洗浄溶液が前記ロータ(2)と接触することができ、かつ/若しくは前記ロータチャンバ(9)内に噴霧されるように、前記ロータチャンバ(9)に供給する工程と、
前記ロータ(2)を回転させ、これにより、前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)内に分配する工程と、
前記洗浄溶液を前記ロータチャンバ(9)から除去する工程と
が実施される方法。
【請求項11】
前記洗浄溶液が、例えばホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを含有する非発泡性洗浄溶液であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄溶液が、発泡性洗浄溶液、特に界面活性剤含有洗浄溶液であり、前記洗浄溶液を除去するために、例えばアルコールを含有する泡分解溶液が前記ロータチャンバ(9)に供給されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
泡分解溶液の供給中又は供給後に、前記ロータ(2)が回転され、前記泡分解溶液が前記ロータチャンバ(9)内に分配されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の遠心機(1)が使用されることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【外国語明細書】