(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047316
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】加飾薄状物及び加飾薄状物を備えた表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20230329BHJP
G09F 13/12 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G09F13/04 Z
G09F13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145325
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021155688
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】笹川 裕万
(72)【発明者】
【氏名】越水 隆典
【テーマコード(参考)】
5C096
【Fターム(参考)】
5C096AA12
5C096BA01
5C096CB01
5C096CC06
5C096FA02
5C096FA05
5C096FA11
5C096FA12
5C096FA17
5C096FA18
(57)【要約】
【課題】背後側の光照射が無い場合に背後側に位置する構造物を隠蔽し、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制することができる加飾薄状物を提供する。
【解決手段】本発明に係る加飾薄状物は、透光性を有する薄状基体と、薄状基体の視認側の表面を構成し、透光性を有する加飾層と、視認側の反対側の背後側の表面を構成する透光調整層と、を備え、透光調整層は、全光線透過率が3%~50%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する薄状基体と、
前記薄状基体の視認側の表面を構成し、透光性を有する加飾層と、
前記視認側の反対側の背後側の表面を構成する透光調整層と、
を備え、
前記透光調整層は、
全光線透過率が3%~50%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である、
加飾薄状物。
【請求項2】
前記透光調整層は、光拡散反射層とスモーク層とを含み、
前記光拡散反射層は、前記スモーク層よりも高い全光線透過率を有し、且つ、前記スモーク層よりも高いヘーズを有する、
請求項1に記載の加飾薄状物。
【請求項3】
前記光拡散反射層は、偏光パール顔料を含み、全光線透過率が70%~99%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である、
請求項2に記載の加飾薄状物。
【請求項4】
前記加飾層は、前記薄状基体と直交する方向に積層した複数の層で構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の加飾薄状物。
【請求項5】
前記加飾層と前記透光調整層とのいずれか一方又は両方は、直接に前記薄状基体の表面に一体化形成されているか、又は中間層を介して前記薄状基体に接合されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の加飾薄状物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の前記加飾薄状物と、
光表示デバイスと、
を備え、
前記光表示デバイスは、光照射により前記加飾薄状物の背後側において光表示させる、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾薄状物に関し、より詳しくは、バックライティング可能な加飾薄状物、及び加飾薄状物を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックライティング可能な加飾薄状物は、電器製品や自動車部品等に用いられる。加飾薄状物の外観面には、文字、図形等のパターン形状の透光部とその周囲の遮光部とを有する。当該加飾薄状物の背後側から光源で照らすと、透光部のみが光が透過し、透光部のパターン形状が視認される。背後側から光源で照らされていない状態では、パターン形状が視認されない。
【0003】
この種のバックライティング可能な加飾薄状物として、例えば、特許文献1に記載された加飾薄状物がある。
図8は、従来のバックライティング可能な加飾薄状物を示す断面図である(特許文献1)。図示のように、当該加飾薄状物は、透光部1と当該透光部に隣接する遮光部2とを有する。透光部1の周辺領域において、成形品表面に、視認側から遮光層9及び着色透光層8が順次積層形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の加飾薄状物は、背後側から光源3で照らすと透光部1のパターンが浮き出るが、背後側から光源で照らされていない状態では、そのパターンが周囲の遮光部と同化して、その存在がわからなくなり、成形品表面の意匠性を向上させることができる。しかしながら、加飾薄状物の背後側の光照射が無い場合においても、視認側の照明により、視認側から透光部を通して、背後側の光源を含む構造物が透けて見えてしまう場合がある。更に、透光部に形成されたパターン形状に限らず、加飾薄状物の背後側の光表示を、視認側において視認させる要望がある。従って、従来のバックライティング可能な加飾薄状物においては、背後側の光照射が無い場合に背後側に位置する構造物を隠蔽し、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制するという観点で改善の余地がある。
【0006】
そこで、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、背後側の光照射が無い場合に背後側に位置する構造物を隠蔽し、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制することができる加飾薄状物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示に係る加飾薄状物は、透光性を有する薄状基体と、薄状基体の視認側の表面を構成し、透光性を有する加飾層と、視認側の反対側の背後側の表面を構成する透光調整層と、を備え、透光調整層は、全光線透過率が3%~50%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である。
【0008】
なお、本明細書において、「薄状」とは、厚さが薄い状態、すなわち、厚さが平面寸法と比較してはるかに小さい状態であり、「薄状物」とは、素材や用途を問わず、厚さが薄い状態の物の総称であり、例えば、シート、フィルム、パネル等が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、加飾薄状物において、背後側の光照射が無い場合は、背後側に位置する構造物を隠蔽でき、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】高い光吸収率の減光層を備える加飾薄状物による、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
【
図2】透光性及び拡散反射性を兼ね備える拡散反射透光層を視認側に配置した加飾薄状物による、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
【
図3】透光性及び拡散反射性を兼ね備える拡散反射透光層を背後側に配置した加飾薄状物による、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る加飾薄状物を備えた表示装置(実施例1)のイメージ断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態2に係る加飾薄状物を備えた表示装置のイメージ断面図である。
【
図6】本開示の比較例に係る加飾薄状物を備えた表示装置のイメージ断面図である。
【
図7】実施例1の加飾薄状物を備えた表示装置(a1-c1)、及び比較例の加飾薄状物を備えた表示装置(a2-c2)による視認側における光表示の一例を示す図である。
【
図8】従来のバックライティング可能な加飾薄状物を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1態様によれば、透光性を有する薄状基体と、薄状基体の視認側の表面を構成し、透光性を有する加飾層と、視認側の反対側の背後側の表面を構成する透光調整層と、を備え、透光調整層は、全光線透過率が3%~50%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である、加飾薄状物を提供する。
【0012】
この態様によれば、加飾薄状物の背後側の光照射が無い場合は、背後側に位置する構造物を隠蔽でき、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制することができる。
【0013】
本開示の第2態様によれば、透光調整層は、光拡散反射層とスモーク層とを含み、光拡散反射層は、スモーク層よりも高い全光線透過率を有し、且つ、スモーク層よりも高いヘーズを有する、第1態様に記載の加飾薄状物を提供する。
【0014】
本開示の第3態様によれば、光拡散反射層は、偏光パール顔料を含み、全光線透過率が70%~99%であり、且つ、ヘーズが50%~99%である、第2態様に記載の加飾薄状物を提供する。
【0015】
本開示の第4態様によれば、加飾層は、薄状基体と直交する方向に積層した複数の層で構成されている、第1から第3態様のいずれか1つに記載の加飾薄状物を提供する。
【0016】
本開示の第5態様によれば、加飾層と透光調整層とのいずれか一方又は両方は、直接に薄状基体の表面に一体化形成されているか、又は中間層を介して薄状基体に接合されている、第1から第4態様のいずれか1つに記載の加飾薄状物を提供する。
【0017】
本開示の第6態様によれば、第1から第5態様のいずれか1つに記載の加飾薄状物と、光表示デバイスと、を備え、光表示デバイスは、光照射により加飾薄状物の背後側において光表示させる、表示装置を提供する。
【0018】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0019】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0020】
添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0021】
<本発明に至る経緯>
先ずは、
図1乃至
図3を参照しながら、本発明に至る過程について説明する。
【0022】
加飾薄状物の視認側の照明により、視認側から透光部を通して、背後側に位置する構造物が透けて見えることを防止するためには、高い光吸収率を有する減光層を利用することが考えられる。
図1は、高い光吸収率の減光層を備える加飾薄状物10aによる、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
図1(a)に示すように、加飾薄状物10aは、視認側Fから背後側Bに向かって、透光性を有する加飾層11aと、高い光吸収率を有する減光層12aと、透光性を有する基体13aとが順に積層形成されている。これによって、背後側の光照射が無い場合に、視認側Fにおける照明体20aからの光は、減光層12aによって吸収され、僅かな光のみが基体13aを透過するため、背後側Bに位置する構造物30aを隠蔽することができる。
【0023】
しかしながら、この場合、
図1(b)に示すように、背後側Bに位置する構造物30aに含まれる光表示35aを、視認側Fにおいて視認させるためには、減光層12aによる大幅な光減衰が生じるため、光源の出力を増加する必要がある。特に、背後側におけるモニターのような大きな光表示を視認側Fにおいて視認させる場合には、光源の必要な出力の増大に伴い、消費電力や発熱の問題が深刻となる。
【0024】
図1(b)に示す問題を解決するためには、発明者らは、透光性及び拡散反射性を兼ね備える拡散反射透光層を採用することを考えた。
図2は、透光性及び拡散反射性を兼ね備える拡散反射透光層を視認側に配置した加飾薄状物による、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
図2(a)に示すように、加飾薄状物10bは、視認側Fから背後側Bに向かって、透光性を有する加飾層11bと、拡散反射透光層12bと、透光性を有する基体13bとが順に積層形成されている。これによって、背後側の光照射が無い場合に、視認側Fにおける照明体20bから発されて、拡散反射透光層12bに到達した光の一部が拡散反射されるため、一部の光が基体13bを透過しても、背後側Bに位置する構造物30bは、視認側Fから加飾薄状物10bを透けて見えづらくなり、一定の透光性を保持したまま構造物30bを隠蔽することができる。
【0025】
しかしながら、
図2(b)に示すように、背後側Bに位置する構造物30bに含まれる光表示35bを、視認側Fにおいて視認させるときに、背後側Bにおける光表示35bの位置から離れた位置に拡散反射透光層12bを配置しているため、拡散反射透光層12bによる光の拡散反射により、視認側Fの視認者から見て、本来の位置からずれて光表示が視認される光経路が発生してしまう。具体的には、例えば、背後側Bにおける光表示位置S1からの光は、光経路P1に沿って拡散反射透光層12bに到達した後、拡散反射透光層12bにより拡散反射され、偏向の光経路P2に沿って視認者の目に到達する。なお、本明細書においては、説明をシンプルにするため、光の屈折により加飾薄状物に含まれる各層の界面における光経路の変化を考慮しない。このとき、拡散反射透光層12bが光表示位置S1から離れて、基体13bの視認側に配置されているため、光経路P1に沿った光は、基体13bの表面と直交する光経路O1から大きく離れて拡散反射透光層12bに到達する。その結果、偏向の光経路P2は、光経路O1と角度β1を成して視認者の目に到達し、視認者は、偏向の光経路P2の延長線にある位置S2に、本来光表示位置S1にある光表示の像を視認する。位置S2は、本来光表示位置S1から大きくずれており、本来光表示位置S2における光表示と、本来光表示位置S1における光表示の像とが重なる。このように、異なる位置の光表示の像が多数積み重なると、視認側Fにおいて全体的にぼやけた表示が視認されることになる。
【0026】
図2(b)に示す問題を回避するため、本発明者らは、加飾薄状物において、背後側の光表示の視認性を改善することを検討した。
【0027】
図3は、透光性及び拡散反射性を兼ね備える拡散反射透光層を背後側に配置した加飾薄状物による、背後側に位置する構造物の隠蔽(a)及び背後側の光表示の視認(b)を示すイメージ断面図である。
図3(a)に示すように、加飾薄状物10cは、視認側Fから背後側Bに向かって、透光性を有する加飾層11cと、透光性を有する基体13cと、拡散反射透光層12cとが順に積層形成されている。このような構成を有する加飾薄状物10cは、
図2(a)の加飾薄状物10bと同様に、背後側の光照射が無い場合に、視認側Fにおける照明体20cから発されて、拡散反射透光層12cに到達した光の一部が拡散反射されるため、一部の光が基体13bを透過しても、背後側Bに位置する構造物30cは、視認側Fから加飾薄状物10cを透けて見えづらくなり、一定の透光性を保持したまま構造物30cを隠蔽することができる。
【0028】
次に、
図3(b)に示すように、背後側Bに位置する構造物30cに含まれる光表示35cを、視認側Fにおいて視認させるときに、光表示からの光は、拡散反射透光層12bにより拡散反射されるが、背後側Bにおける光表示35cの近傍に拡散反射透光層12cを配置することによって、視認側Fの視認者から見て、光表示が本来の位置からのずれを抑制することができる。具体的には、例えば、背後側Bにおける光表示位置T1からの光は、光経路Q1に沿って拡散反射透光層12cに到達した後、拡散反射透光層12cにより拡散反射され、偏向の光経路Q2に沿って視認者の目に到達する。このとき、拡散反射透光層12cが、基体13bの背後側に、光表示35cの近傍に配置されているため、光経路Q1に沿った光は、基体13bの表面と直交する光経路O1から大きく離れることなく、拡散反射透光層12cに到達する。その結果、偏向の光経路Q2と光経路O1との成す角度β2は、
図2(b)に示す角度β1に比べ遥かに小さい。視認者は、偏向の光経路Q2の延長線にある位置T2に本来光表示位置T1における光表示の像を視認する。位置T2は、位置T1から大きくずれないため、異なる位置の光表示の像の積み重ねが軽減され、視認側Fにおける表示のぼやけを抑制することができる。このように、拡散反射透光層の配置を変更することにより、視認側における表示のぼやけを抑制する加飾薄状物の構成を見出し、本発明に至った。
【0029】
また、本構成において、基体13cを挟んで加飾層11cと、拡散反射透光層12cとを配置している。視認側Fに加飾層11cを形成することによって、加飾層11cに施された意匠を視認させ、加飾薄状物の意匠性を生かすことができる。
【0030】
以下、
図4から
図5を参照して本開示の実施の形態に係る加飾薄状物を備えた表示装置について説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図4は、本開示の実施の形態1に係る加飾薄状物を備えた表示装置500aのイメージ断面図である。
図4に示す表示装置500aは、加飾薄状物100aと光表示デバイス30とを備えている。光表示デバイス30は、発光体(図示せず)と表示部32とを含むことができる。表示装置500aは、表示部32が「ON」状態にあるとき、加飾薄状物100aの背後側Bに位置する光表示35を加飾薄状物100aの視認側Fに視認させ、表示部32が「OFF」状態に切り替えると、背後側Bに位置する光表示デバイス30の全体を隠蔽することができる。
【0032】
(加飾薄状物100aの構成)
図4に示すように、表示装置500aに備えている加飾薄状物100aは、視認側Fから背後側Bに向かって、透光性を有する加飾層101と、透光性を有する薄状基体106と、透光性及び拡散反射性を兼ね備える透光調整層102が順に積層形成されている。
【0033】
加飾層101は、透光性を有し、薄状基体の表面と直交する方向に積層した複数の層で構成することができる。本実施の形態において、加飾層101は、加飾の柄を表現するための印刷層105と、構成全体の視認側Fの表面を保護するハードコート層104によって構成されている。印刷層105は、透光性を有する薄状基体106の視認側に直接印刷されてもよく、ハードコート層104は熱真空ラミネートによって印刷層105に積層して一体化されてもよい。また、本開示の加飾層101はこれに限定されない。例えば、加飾層101は、触感を与えるための凹凸触感層、又は、様々な装飾効果、例えば、木目柄、マット面、金属面等を表す装飾層等を更に含むこともできる。
【0034】
また、印刷層105は、透光性を確保しやすく、印刷解像度も高くしやすいインクジェット印刷法が好ましいが、スクリーン印刷法やグラビア印刷法といった他の印刷法を用いてもよい。ハードコート層104は、構成全体を保護する要求に応じて、紫外線カット層、アンカー層、接着層等複数層で構成してもよい。
【0035】
薄状基体106の形状は、平らな板状であってもよく、三次元形状であってもよい。薄状基体106の材料として、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリル樹脂等があり、いずれも透光性のあるものが用いられる。薄状基体106は加飾層101及び透光調整層102に対して支持を提供し、加飾薄状物100a全体の必要な強度を担保することができる。
【0036】
また、本実施の形態において、薄状基体106は0.5mm以上の厚さを有し、より好ましくは、1mm以上、5mm以下の厚さを有する。また、例えば、
図4に示す加飾薄状物100aにおいて、薄状基体106の厚さは、加飾層101と、薄状基体106と、透光調整層102との厚さの合計の80%以上、100%未満であることが好ましい。このように、所定の厚さを有する薄状基体を設けることによって、自立性及び一定の強度を有する加飾薄状物を構成することができ、容易に表示装置に組み付けることができる。
【0037】
透光調整層102は、本実施の形態において、光拡散反射層107と、スモーク層108とによって構成され、光拡散反射層107とスモーク層108とは、それぞれ薄状基体106の背後側Bからスクリーン印刷法にて積層印刷して形成されてもよい。また、本実施の形態において、光拡散反射層107とスモーク層108とは、
図4に示す積層順で構成されているが、本開示はこれに限定されることなく、光拡散反射層107とスモーク層108とは、逆の積層順で構成されてもよい。
【0038】
光拡散反射層107は、例えば、偏光パール顔料を含む層で構成することができる。パール顔料は、雲母(マイカ)の鱗状の微粒子の表面に二酸化チタン等の高屈折率材料からなる被覆層を有する薄板状微粒子が挙げられ、光の拡散反射性と透光性とを兼ね備えている。パール顔料には、例えば、白色パール顔料、干渉パール顔料、又は着色パール顔料がある。本開示は、光拡散反射層107に含まれるパール顔料の種類又は着色を限定しない。スモーク層108は、例えば、スモーク顔料を含む層で構成することができ、加飾薄状物100aの全体を通しての光透過率を調整するために用いられている。本実施の形態において、光拡散反射層107は、スモーク層108に比べ、より高い全光線透過率を有する。
【0039】
また、本発明では透明性の指標としてヘーズ(Haze)を用いる。ヘーズとは曇りの度合のことで、ガラス、プラスチックや液体などの透明材料の透明の程度を表わすものであり、試験片の拡散透過光の全光線透過光に対する割合の100分率で表される。したがって、ヘーズ値が小さいほど、拡散光の透過が少なく、材料の曇り度が低いことを意味する。本実施の形態において、光拡散反射層107は、スモーク層108に比べ、より高いヘーズ値を有する。
【0040】
厚さ20-30μmの光拡散反射層107と、厚さ5-20μmのスモーク層108と、光拡散反射層107及びスモーク層108を重ねた透光調整層102とのそれぞれについて、厚さが約188μmの測定用の透明PETフィルムに印刷して作製した測定用サンプルを用いて、光の透過特性及びヘーズを測定した。測定は、ヘーズメーター NDH 7000SP II(日本電色工業)を用いて、JIS K 7361-1(ISO 13468-1)による全光線透過率と、JIS K 7136(ISO 14782)によるヘーズの測定結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1に示すように、光拡散反射層107は、全光線透過率が70%~99%であって、ヘーズが50%~99%である。スモーク層108により光透過率を調整した結果、透光調整層102は、全光線透過率が3%~50%であって、且つ、ヘーズが50%~99%である。このように構成された透光調整層102によって、本実施の形態の加飾薄状物100aは、背後側の光照射が無い場合に、背後側に位置する光表示デバイス30の全体を隠蔽し、背後側の光照射がある場合に、背後側に位置する光表示35を視認側Fに視認させることができる。
【0043】
透光調整層102の厚さは、目的に応じて、一般に、数μmから数十μmで構成することができる。本実施の形態において、加飾薄状物100aの全体を通しての光透過率は約10%である。
【0044】
本実施の形態において、表示装置500aの光表示デバイス30は、加飾薄状物100aの背後側Bに配置されている。光表示デバイス30に備えている発光体は、一般の照明用光源であってもよく、LED又はレーザ等の発光デバイスであってもよい。表示部32は、例えば、高輝度モニターを用いてもよく、発光体の作動により「ON」と「OFF」とで切り替えてもよい。表示部32が「ON」状態にあるとき、発光体の光照射によって加飾薄状物100aの背後側Bに光表示35を表示させる。
【0045】
前述したように、透光調整層102を背後側に位置する光表示35の近傍に配置することによって、視認側Fにおける表示のぼやけを抑制することができる。好ましくは、透光調整層102と、加飾薄状物100aの背後側Bに位置する光表示35との間の距離は5mm以下である。
【0046】
また、本開示の加飾薄状物の加飾層101と透光調整層102とは、薄状基体106の表面に一体化形成されてもよく、中間層を介して薄状基体106に接合されてもよい。
【0047】
(実施の形態2)
図5は、本開示の実施の形態2に係る加飾薄状物を備えた表示装置500bのイメージ断面図である。
図5において、
図4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0048】
(加飾薄状物100bの構成)
図5に示すように、表示装置500bに備えている加飾薄状物100bは、
図4に示す加飾薄状物100aと同様に、透光性を有する加飾層101と、透光性を有する薄状基体106と、透光性及び拡散反射性を兼ね備える透光調整層102とを備えている。
【0049】
本実施の形態において、加飾層101は、加飾の柄を表現する印刷層105と、加飾薄状物100bの視認側Fの表面を保護するハードコート層104と、薄状基体106の視認側Fにインサート成形された第1のインサートフィルム301とによって構成されている。印刷層105は、第1のインサートフィルム301に直接印刷され、ハードコート層104は熱真空ラミネートによって印刷層105に積層して一体化される。
【0050】
また、加飾薄状物100bの透光調整層102は、光拡散反射層107と、スモーク層108と、薄状基体106の背後側Bにインサート成形された第2のインサートフィルム302とによって構成されている。光拡散反射層107とスモーク層108とは、それぞれ第2のインサートフィルム302にスクリーン印刷法にて積層印刷することができる。
【0051】
第1のインサートフィルム301及び第2のインサートフィルム302は、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリル樹脂等の材料により構成され、いずれも透光性のあるものが用いられる。
【0052】
なお、本実施の形態において、加飾層101と透光調整層102とは、それぞれ第1のインサートフィルム301と第2のインサートフィルム302とを介して薄状基体106に接合されているが、本開示は、これに限定されない。例えば、加飾層101と透光調整層102とは、いずれか一方が直接に薄状基体106の表面に積層形成され、他方がインサートフィルムを介して薄状基体106に接合されてもよい。
【0053】
上述したように構成された表示装置500a又は表示装置500bによれば、表示部32が「OFF」状態にあるとき、加飾薄状物100a又は100bの背後側Bに位置する光表示デバイス30の全体を隠蔽し、表示部32が「ON」状態にあるとき、背後側Bに位置する光表示35を視認側に視認させ、且つ、視認側における表示のぼやけを抑制することができる。
【0054】
(実施例1及び比較例)
次に、
図4に示す加飾薄状物100aを備えた表示装置500aを実施例1とし、
図6に示す加飾薄状物300を備えた表示装置600を比較例として、透光調整層を、加飾薄状物の背後側に位置する光表示の近傍に配置することによって、視認側Fにおける表示のぼやけの抑制効果について検証を行った。
【0055】
図6は、本開示の比較例に係る加飾薄状物300を備えた表示装置600のイメージ断面図である。なお、
図6において、
図4と同じ構成の要素については同じ符号を用いている。
図6に示す表示装置600の加飾薄状物300は、実施例1の加飾薄状物100a(
図4)と同様に、透光性を有する加飾層101と、透光性を有する薄状基体106と、透光性及び拡散反射性を兼ね備える透光調整層102とを備えている。実施例1の加飾薄状物100aと比較例の加飾薄状物300とは、透光調整層102の配置において異なる。
図6に示すように、加飾薄状物300の透光調整層102は、背後側に位置する光表示35から離れて、薄状基体106の視認側に、加飾層101に接合した配置されている。本検証において、実施例1と比較例との対応する各層の構成及び厚さが同じで、光表示デバイス30は、光表示35が加飾薄状物の背後側の表面と接触するように配置された。
【0056】
図7は、実施例1の加飾薄状物100aを備えた表示装置500a(a1-c1)、及び比較例の加飾薄状物300を備えた表示装置600(a2-c2)による視認側Fにおける表示を示す図である。薄状基体106の厚さを1.0mm(a1、a2)と、2.0mm(b1、b2)と、3.0mm(c1、c2)としたとき、実施例1と比較例とのそれぞれの検証結果を
図7に示している。図示のように、比較例の加飾薄状物300を備えた表示装置600を用いたとき(a2-c2)に、視認側Fにおける表示がぼやけていた。また、薄状基体106の厚さの増加につれ、視認側Fにおける表示のぼやけがより顕著であった。これに対し、実施例1の加飾薄状物100aを備えた表示装置500aを用いた場合(a1-c1)に、視認側Fにおいて、表示のぼやけが改善され、より鮮明な表示が得られた。加飾薄状物の透光調整層102を、背後側に位置する光表示35の近傍に配置することによって、視認側Fにおける表示のぼやけを抑制することが確認できた。
【0057】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るバックライティング可能な加飾薄状物によれば、背後側の光表示がOFFのときに、背後側の構造物が隠蔽され、光表示がONのときに、視認側において、表示のぼやけが抑制され、鮮明な表示を視認させることができる。本発明は、車載部品、家電製品、住宅用品等の分野で空間に溶け込むようなシームレスな意匠性、質感を有し、必要時のみ光表示が視認可能な加飾パネルの用途として幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0059】
30 光表示デバイス
32 表示部
35 光表示
100a,100b,300 加飾薄状物
101 加飾層
102 透光調整層
104 ハードコート層
105 印刷層
106 薄状基体
107 光拡散反射層
108 スモーク層
301,302 インサートフィルム
500a,500b,600 表示装置