(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047340
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】遅延ロックループの遅延変動の低減
(51)【国際特許分類】
H03L 7/081 20060101AFI20230329BHJP
H03L 7/07 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H03L7/081
H03L7/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151014
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】17/485,082
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】松並 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】二村 一好
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和広
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106CC21
5J106CC59
5J106DD24
5J106DD32
5J106DD47
5J106FF09
5J106GG10
5J106GG16
5J106GG17
5J106HH03
5J106KK14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スレーブ遅延線の遅延セルの遅延変動を除去するデバイス、システム及び装置を提供する。
【解決手段】遅延ロックループ(DLL)システム400は、制御電圧を発生させるチャージポンプ114に対して直列に接続する位相周波数検出器112を有するマスタDLL110を含む。スレーブDLL130は、マスタDLLに結合されており、かつ、遅延線140を有する。遅延線は、スレーブクロックを受信するバッファ142及びバッファと遅延クロックを出力する出力端子との間に結合され、かつ、制御電圧によって可変制御される遅延セル列145を含む。マスタDLL及びスレーブDLLは、負荷過渡特性に応じてアンダーシュート又はオーバーシュートを受ける電源から電力を供給される。スレーブDLLの遅延線と電源の出力側との間には、バッファの第1の出力及び遅延クロックを入力とする排他的論理和ゲート462を含むダミー負荷460が結合される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ遅延ロックループ(DLL)と、スレーブDLLと、ダミー負荷と、を含むデバイスであって、
前記マスタ遅延ロックループ(DLL)は、制御電圧を発生させるチャージポンプに対して直列に接続された位相周波数検出器を含み、
前記スレーブDLLは、前記マスタDLLに結合されており、遅延線を含み、前記遅延線は、
スレーブクロックを受信するバッファと、
前記バッファと遅延クロックを出力する出力端子との間に結合されており、前記制御電圧によって可変制御される遅延セル列と、
を含み、
前記マスタDLLおよび前記スレーブDLLのそれぞれは、負荷過渡特性に応じてアンダーシュートまたはオーバーシュートのうちの一方を受ける電源から電力を供給されており、
前記ダミー負荷は、前記スレーブDLLの前記遅延線と前記電源の出力側との間に結合されており、前記バッファの第1の出力と前記遅延クロックとを入力として受信する排他的論理和(XOR)ゲートを含む、
デバイス。
【請求項2】
前記スレーブクロックは、前記スレーブDLLが前記電源からの電流を消費する場合に、前記第1の出力および前記遅延線からの前記遅延クロックにより前記ダミー負荷をディスエーブルさせるためのものである、
請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記電源は、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)である、
請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記ダミー負荷は、
第1のトランジスタと、
前記XORゲートの出力側と前記第1のトランジスタのゲートとの間に結合されたインバータと、
前記第1のトランジスタのドレインと前記電源の出力側との間に結合された第1の抵抗と、
をさらに含む、
請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記ダミー負荷は、
負荷選択信号を復号化するデコーダと、
各ANDゲートが前記インバータの出力と前記デコーダからの複数の出力のうちの1つの出力とを入力として受信するANDゲートアレイと、
前記第1のトランジスタを含み、前記ANDゲートアレイの各ANDゲートからの複数の出力のうちの1つの出力によって制御されるゲートを有するトランジスタアレイと、
前記第1の抵抗を含み、各抵抗が前記トランジスタアレイの各トランジスタのドレインと前記電源との間に結合されており、各抵抗がそれぞれ異なる抵抗値を有する抵抗アレイと、
をさらに含む、
請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記スレーブDLLの前記遅延線は、前記バッファと前記遅延セル列との間に直列に接続されたダミー遅延バッファをさらに含む、
請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、
前記遅延セル列の各遅延セルの出力を入力として受信し、前記遅延クロックを出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサに結合された処理デバイスと、
をさらに含み、
前記処理デバイスは、前記遅延セル列のうちの1つの遅延セルの出力を前記マルチプレクサに選択させるための遅延タップ選択信号を形成する、
請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、
前記第1の出力と前記XORゲートとの間に結合された第1の遅延調整バッファと、
前記遅延クロックと前記XORゲートとの間に結合された第2の遅延調整バッファと、
前記第1の遅延調整バッファと前記第2の遅延調整バッファとに結合された処理デバイスと、
をさらに含み、
前記処理デバイスは、
前記第1の出力のタイミングを微調整するための第1の遅延調整信号を前記第1の遅延調整バッファに供給し、
前記遅延クロックのタイミングを微調整するための第2の遅延調整信号を前記第2の遅延調整バッファに供給する、
請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
マスタ遅延ロックループ(DLL)と、スレーブDLLと、ダミー負荷と、を含むシステムであって、
前記マスタ遅延ロックループ(DLL)は、
制御電圧を発生させるチャージポンプと、
マスタクロックを受信し、前記制御電圧によって可変制御される第1の遅延セル列と、
前記チャージポンプの入力側に接続された位相周波数検出器と、
を含み、
前記スレーブDLLは、前記マスタDLLに結合されており、遅延線を含み、前記マスタDLLおよび前記スレーブDLLのそれぞれは、負荷過渡特性に応じてアンダーシュートまたはオーバーシュートのうちの一方を受ける電源によって電力を供給されており、
前記ダミー負荷は、前記スレーブDLLの前記遅延線と前記電源の出力側との間に結合されており、
前記ダミー負荷は、
前記遅延線によって選択的にイネーブルされる第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタに対して直列に選択的に接続され、前記制御電圧によって選択的にイネーブルされる1つまたは複数の第2のトランジスタと
を含み、
前記チャージポンプは、
出力側に前記制御電圧を発生させるカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の一部であり、前記位相周波数検出器によってバイアスされるバイアス電流回路と、
を含む、
システム。
【請求項10】
前記システムは、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)である電源をさらに含む、
請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記スレーブDLLの前記遅延線は、
スレーブクロックを受信するバッファと、
前記バッファと遅延クロックを出力する出力端子との間に結合されており、同様に前記制御電圧によって可変制御される第2の遅延セル列と、
を含む、
請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記スレーブクロックは、前記スレーブDLLが前記電源からの電流を消費する場合に、前記ダミー負荷をディスエーブルさせるためのものである、
請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、
前記第2の遅延セル列の各遅延セルの出力を入力として受信し、前記遅延クロックを出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサに結合されており、前記第2の遅延セル列のうちの1つの遅延セルの出力を前記マルチプレクサに選択させるための遅延タップ選択信号を形成する処理デバイスと、
をさらに含む、
請求項11記載のシステム。
【請求項14】
前記ダミー負荷は、
前記バッファの第1の出力および前記遅延クロックを入力として受信する排他的論理和(XOR)ゲートと、
前記XORゲートの出力側と前記第1のトランジスタのゲートとの間に結合されたインバータと、
前記第1のトランジスタのドレインと前記電源の出力側との間に結合された抵抗と、
をさらに含む、
請求項11記載のシステム。
【請求項15】
前記チャージポンプの前記カレントミラー回路は、
第1のpFETおよび第2のpFETを含み、前記第1のpFETのゲートおよび前記第2のpFETのゲートが前記位相周波数検出器に選択的に接続される、相互接続されたp型電界効果トランジスタ(FET)の対と、
前記第2のpFETのドレインに接続されたドレインを有するn型FET(nFET)と、
を含み、
前記nFETの前記ドレインは、前記nFETのゲートに接続されており、前記制御電圧を発生させる、
請求項9記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のpFETのソースと前記第2のpFETのソースとは、前記電源に結合されており、前記nFETのソースは、グラウンドに結合されている、
請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記チャージポンプの前記カレントミラー回路は、
第1のpFETおよび第2のpFETを含み、前記第1のpFETのゲートおよび前記第2のpFETのゲートが前記位相周波数検出器に選択的に接続され、前記制御電圧を発生させる、相互接続されたp型FETの対と、
前記第2のpFETのドレインに接続されたドレインを有するn型FET(nFET)と、
を含む、
請求項9記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のpFETのソースと前記第2のpFETのソースとは、前記電源に結合されており、前記nFETのソースは、グラウンドに結合されている、
請求項17記載のシステム。
【請求項19】
装置であって、
制御電圧を発生させるチャージポンプに対して直列に接続された位相周波数検出器を含むマスタ遅延ロックループ(DLL)と、
前記マスタDLLに結合されており、前記制御電圧によって制御される遅延線を含むスレーブDLLであって、スレーブクロックを選択的に受信し、遅延クロックを選択的に出力するスレーブDLLと、
前記マスタDLLおよび前記スレーブDLLに電力を供給し、負荷過渡特性に応じてアンダーシュートまたはオーバーシュートの一方を受ける電源と、
前記スレーブDLLと同一であり、ダミースレーブクロックを選択的に受信するダミースレーブDLLであって、その出力側が前記電源の出力側に接続されているダミースレーブDLLと、
前記スレーブクロックと前記ダミースレーブクロックとに動作可能に結合され、前記スレーブクロックが前記スレーブDLLに入力されていない場合にのみ、前記ダミースレーブクロックを前記ダミースレーブDLLに入力させる処理デバイスと、
を含む装置。
【請求項20】
前記電源は、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)である、
請求項19記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
電子機器では、遅延ロックループ(DLL)は、位相ロックループ(PLL)と同様のデジタル回路であり、主たる相違点は、内部電圧制御発振器が存在せず、遅延線によって置き換えられていることである。DLLは、クロック信号(例えば、周期的な波形を有する信号)の位相を変化させ、通常は、集積回路(例えば、自動車での使用が増加しているダイナミックランダムアクセスメモリデバイスまたはメモリ制御ユニット)のクロック立ち上がり対データ出力の有効タイミング特性を向上させるために使用可能である。また、DLLは、クロック回復(CDR)にも使用することができる。DLLは、外部からデジタル回路のクロックパスに配置される負遅延ゲートと見なすことができる。
【0002】
本開示を、添付図面の各図において、限定としてではなく例示として示す。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】少なくともいくつかの実施形態による遅延ロックループ(DLL)システムの概略的なブロック図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による、スレーブDLLがマスタDLLの周波数の1/8を有しうることを示す一組のタイミンググラフである。
【
図2B】いくつかの実施形態による、スレーブDLLがマスタDLLの周波数の1/2を有しうることを示す一組のタイミンググラフである。
【
図3A】少なくともいくつかの実施形態による遅延セルの概略的なブロック図である。
【
図3B】いくつかの実施形態による、容量結合に起因する遅延セルのバイアスノードでの変動を示すグラフである。
【
図4】少なくともいくつかの実施形態による、ダミー負荷を使用するDLLシステムの概略的なブロック図である。
【
図5】少なくともいくつかの実施形態による、
図4のDLLシステムの動作を示す一組のグラフである。
【
図6】少なくとも1つの他の実施形態によるダミー負荷を示す概略的なブロック図である。
【
図7】少なくとも1つの実施形態による遅延タップセレクタをさらに含むDLLシステムの概略的なブロック図である。
【
図8A】少なくともいくつかの実施形態による、1つまたは複数のダミースレーブDLLを使用したDLLシステムの概略的なブロック図である。
【
図8B】少なくとも1つの実施形態による、
図8AのDLLシステムの動作を示す一組のグラフである。
【
図9A】少なくとも1つの実施形態による、ダミー負荷に送信される制御電圧を発生させるチャージポンプのカレントミラー回路を示す概略的なブロック図である。
【
図9B】少なくとも1つの代替的な実施形態による、ダミー負荷に送信される制御電圧を発生させるチャージポンプのカレントミラー回路を示す概略的なブロック図である。
【
図10】少なくとも1つの実施形態による、バイアス電圧の直流電圧(DC)変動を相殺するためのキャパシタとしてダミートランジスタを用いる遅延セルの回路を示す図である。
【
図11A】少なくとも1つの実施形態による、
図10の回路の可変容量選択ケイパビリティを提供する回路を示す図である。
【
図11B】一実施形態による、
図11Aの可変容量選択ケイパビリティを提供するトランジスタアレイを示す図である。
【
図12】少なくともいくつかの実施形態による、スレーブ遅延レイの1つまたは複数のインバータにバイアス電圧を供給するために使用されるダミー負荷を含む概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の説明は、スレーブDLLがDLLシステム内またはDLLデバイス内で動作を開始するまたは停止する際に生じる遅延ロックループ(DLL)セルにおける供給電圧偏差およびバイアス電圧偏差を低減するための本明細書に記載の技術の種々の実施形態の良好な理解を提供するための多数の具体的な詳細、例えば特定のシステム、デバイス、構成要素、方法などの実施例を説明する。ただし、少なくともいくつかの実施形態につきこれらの具体的な詳細がなくても実施できることは、当業者には明らかであろう。他の事例において、本明細書に記載する技術を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構成要素、要素または方法は、詳細には記載しないかまたは単純なブロック図の形式で提示する。したがって、以下に記載する特定の詳細は、単なる例示である。特定の実現形態は、これらの例示的な詳細とは異なることもあるが、それでもなお本開示の範囲内にあると考えられる。
【0005】
ここでの説明における「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」および「種々の実施形態」についての言及は、各実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、ステップ、動作または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、説明の種々の箇所における「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」および「種々の実施形態」なる語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0006】
説明は、詳細な説明の一部を成す添付図面の参照を含む。図面は、例示的な実施形態による例示を示す。本明細書において「実施例」とも称されうるこれらの実施形態は、本明細書に記載する特許請求される主題の各実施形態を当業者が実施できるよう十分に詳細に記載されている。各実施形態が組み合わされてもよいし、他の実施形態が利用されてもよいし、または特許請求される主題の範囲および趣旨から逸脱することなく、構造的、論理的かつ電気的な変更が行われてもよい。本明細書に記載する各実施形態は、主題の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、当業者が主題を実践でき、形成でき、かつ/または使用できるようにすることを意図したものであることを理解されたい。
【0007】
図1は、少なくともいくつかの実施形態による遅延ロックループ(DLL)システム100の概略的なブロック図である。当該実施形態では、DLLシステムが、負荷過渡特性に応じてアンダーシュートまたはオーバーシュートのうちの一方を受ける電源101を含んでいる。一実施形態では、電源101は低ドロップアウトレギュレータ(LDO)である。電源の電圧出力を平滑化するために従来大きく作製されていた電源の出力側に、キャパシタ105が結合されている。当該実施形態では、DLLシステム100は、クロック基準と遅延セルを選択的に制御する制御電圧とを形成するマスタDLL110をさらに含む。DLLシステム100は、1つまたは複数のスレーブDLL130~130Nをさらに含みうる。電源101は、VCCA入力によって示されているように、マスタDLL110と1つまたは複数のスレーブDLL130~130Nとの両方に電力を供給することができる。
【0008】
少なくともいくつかの実施形態では、マスタDLL110は、制御電圧を発生させるチャージポンプ114と、チャージポンプ114の入力側に接続された位相周波数検出器112と、マスタ遅延線120と、を含む。位相周波数検出器112は、例えば、検出されたアップ信号およびダウン信号をチャージポンプ114に供給することができ、これにより、チャージポンプは、クロック出力の特定の位相のための制御電圧を発生させる。マスタ遅延線120はさらに、マスタクロックを受信するバッファ122、ならびにこのバッファ122とマスタ遅延線120の出力端子との間に結合された遅延セル列125を含むことができる。いくつかの実施形態では、バッファ122と遅延セル列125との間にダミー遅延バッファ124が直列に接続されている。いくつかの実施形態では、遅延セル列125は、遅延クロック、例えばシフトされた位相のクロックを一時的に記憶する際のバッファとして実現可能である。図示されているように、遅延セル列125の出力は、位相周波数検出器112にフィードバックすることができる。こうした実施形態では、制御電圧をダミー遅延バッファ124と遅延セル列125の各遅延セルとに供給することができる。
【0009】
少なくともいくつかの実施形態では、DLLシステム100は、位相周波数検出器112からの出力であるマスタ基準クロックとダミー遅延バッファ124の出力とを選択するマルチプレクサ116をさらに含む。DLLシステム100は、タップ選択信号を受信して、遅延セル列125の出力側に接続された遅延タップ線126から遅延タップ列のうちの1つの遅延タップを選択するマルチプレクサ118をさらに含むことができる。このように、マルチプレクサ118は、選択されたマスタ遅延クロックを出力することができる。遅延タップ線126のタップ数は16個として示されているが、より少ないタップまたはより多くのタップを使用することができる。
【0010】
種々の実施形態では、1つまたは複数のスレーブDLL130~130NのスレーブDLL130は、スレーブ遅延線140を含む。スレーブ遅延線は、スレーブクロックを受信するバッファ142、ならびにバッファ142と出力端子との間に結合された遅延セル列145を含むことができる。いくつかの実施形態では、バッファ142と遅延セル列125との間にダミー遅延バッファ144が直列に接続されている。ダミー遅延バッファ144の出力は基準クロックを提供することができる。いくつかの実施形態においては、遅延セル列145が、遅延クロックを一時的に記憶する際のバッファとして実現されている。出力端子は、遅延セル列145の出力側に接続されている遅延タップ線146から選択されうる遅延クロック(例えば、delay_clock[15:0])を出力する。当該遅延クロックは、スレーブクロックと比較して特定の位相シフトを含みうる。遅延タップ線146のタップ数は16個として示されているが、より少ないタップまたはより多くのタップを使用することができる。こうした実施形態では、チャージポンプ114から出力される制御電圧が、ダミー遅延バッファ144と遅延セル列145の各遅延セルとに供給される。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、スレーブDLL130がイネーブルされた場合またはスレーブDLL130が動作を開始した場合、電源101からスレーブDLL130(例えばVCCA)への供給電流が増大する。いくつかのDLLシステムでは、電源出力電圧がアンダーシュート(またはオーバーシュート)を受けることにより、マスタDLL110およびスレーブDLL130の両方の出力遅延クロックの遅延変動が引き起こされる。同様に、スレーブDLL130がディスエーブルされた場合またはスレーブDLL130が動作を停止した場合には、電源101からの供給電流が減少する。いくつかのDLLシステムでは、電源出力がアンダーシュート(またはオーバーシュート)を受けることにより、マスタDLL110およびスレーブDLL130の両方の出力遅延クロックの遅延変動が引き起こされる。遅延変動を解決するにはキャパシタ105を使用するだけでは不十分であり、部分的な解決手段として十分に大きな回路空間を要するので、スタンドアローンの解決手段としての追加の電力およびコストが要求される。
【0012】
図2Aは、いくつかの実施形態による、スレーブDLL130がマスタDLL110の周波数の1/8を有しうることを示す一組のタイミンググラフである。当該実施形態では、スレーブDLL130は、マスタDLL110のクロックサイクルの1/8の期間中、電源101からの電流を消費する。
図2Bは、いくつかの実施形態による、スレーブDLLがマスタDLLの周波数の1/2を有しうることを示す一組のタイミンググラフである。当該実施形態では、スレーブDLL130は、マスタDLL110のクロックサイクルの1/2の期間中、電源101からの電流を消費する。スレーブDLL130が電流を消費するマスタDLL入力クロックのサイクルの割合が大きいほど、上記の基準遅延変動が発生しうる時間が長くなる。ここでの種々の図面を通して示されている解決手段の少なくともいくつかは、スレーブDLL130が電源電流を消費すること、例えば電源電圧偏差を消費することに起因したこうした遅延変動を最小化する。
【0013】
図3Aは、少なくともいくつかの実施形態による遅延セル300の概略的なブロック図である。遅延セル300は、マスタ遅延線120の遅延セル列125またはスレーブ遅延線140の遅延セル列145の少なくとも一部の遅延セルを表現していると考えることができる。いくつかの実施形態では、遅延セル300は、直列に接続された2つの可変遅延インバータ301aおよび301bのセットを含む。一実施形態では、当該2つの可変遅延インバータ301aおよび301bのセットは、p型電界効果トランジスタ(pFET)のセットおよびこれに接続されたn型FET(nFET)のセットを含むが、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などの他のタイプのトランジスタを使用してもよい。
【0014】
より具体的には、少なくともいくつかの実施形態では、遅延セル300のpFETのセットは、相互接続されたゲートならびに電源101に結合されたソースを有する第1のpFET303aおよび第2のpFET303bと、それぞれ第1のpFET303aおよび第2のpFET303bのドレインに接続されたソースを有する第3のpFET306aおよび第4のpFET306bと、を含む。当該実施形態では、遅延セル300のnFETのセットは、それぞれ第3のpFET306aおよび第4のpFET306bのドレインに接続されたドレインを有する第1のnFET309aおよび第2のnFET309bと、相互接続されたゲートならびにそれぞれ第1のnFET309aおよび第2のnFET309bのソースに接続されたドレインを有する第3のnFET312aおよび第4のnFET312bと、を含む。第3のnFET312aおよび第4のnFET312bのソースはさらに、グラウンドに結合されている。
【0015】
当該実施形態では、第3のpFET306aおよび第1のnFET309aのゲートが入力クロックに相互接続されており、第4のpFET306bおよび第2のnFET309bのゲートが第3のpFET306aおよび第1のnFET309aのドレインに相互接続されている。よって、遅延セル300の出力を、第4のpFET306bおよび第2のnFET309bのドレインに形成することができる。
【0016】
種々の実施形態では、遅延セル300は、第1のpFET303aおよび第2のpFET303bのゲートで正の制御電圧(Vcp)を受信し、第3のnFET312aおよび第4のnFET312bのゲートで負の制御電圧(Vcn)を受信する。図示されているように、一般に、pFETのセットのバイアス電圧ノード“pa”および“pb”とnFETのセットのバイアス電圧ノード“na”および“nb”とに寄生容量が存在する。これらの寄生容量は制御電圧VcpおよびVcnにそれぞれ結合されているので、制御電圧VcpおよびVcn(本明細書ではバイアス電圧とも称される)は、スレーブ遅延線140のオンオフのトグルに起因した変動を受ける。例えば、バイアス電圧VcpおよびVcnの直流電圧変化は、容量結合により、所定の時定数で次第に目標バイアス電圧へと落ち着いていく。スレーブ遅延線140の遅延セルのこうした変動は、マスタ遅延線120の遅延セルに直接に対応する変動を生じさせる。なぜなら、バイアス電圧は、スレーブ遅延線140とマスタ遅延線120とに共通しているからである。種々の図面を通して本明細書に図示されている解決手段の少なくともいくつかは、遅延セルの寄生容量に起因するバイアス電圧偏差を最小化する。
【0017】
図3Bは、いくつかの実施形態による、容量結合に起因した遅延セルのバイアスノードの変動を示すグラフである。遅延セル300の(pFETのセットに関連する)Vccdおよび(nFETのセットに関連する)Vssdの電圧のピークが、遅延セル300のインバータ挙動に対して、バイアス電圧ノードnaにおいておよびその後にバイアス電圧ノードpbにおいて、またバイアス電圧ノードnbにおいておよびその後にバイアス電圧ノードpaおいて生じることが観察される。
【0018】
図4は、少なくともいくつかの実施形態による、例えば前述した供給電圧偏差を最小化するダミー負荷460を使用したDLLシステム400の概略的なブロック図である。いくつかの実施形態では、DLLシステム400はDLLシステム100の変形形態であり、したがって、DLLシステム100に対する変更箇所のみにラベルを付して詳細に説明する。任意の電源401aを使用することができるが、1つの可能な電源として低ドロップアウトレギュレータ(LDO)401bが示されている。
【0019】
少なくともいくつかの実施形態では、DLLシステム400は、スレーブ遅延線140と電源401aもしくはLDO401bの出力側との間に結合された1つまたは複数のダミー負荷460~460Nをさらに含む。一実施形態では、ダミー負荷460は、入力として、「基準PD_SDL」とのラベルが付されたバッファ142の第1の出力と、「遅延PD_SDL」とのラベルが付された遅延セル列145からの出力である遅延クロックと、を受信する、排他的論理和(XOR)ゲート462を含む。ダミー負荷460はさらに、第1のトランジスタ466、XORゲート462の出力側と第1のトランジスタ466のゲートとの間に結合されたインバータ464および第1のトランジスタ466のドレインと電源401aもしくはLDO401bの出力側との間に結合された第1の抵抗468を含むことができる。当該実施形態では、スレーブDLL130の遅延線140へのスレーブクロック入力により、スレーブDLL130が電流供給部からの電流を消費する場合にダミー負荷460がイネーブルされる。このことは
図5を参照してより詳細に示す。
【0020】
図4を引き続き参照すると、スレーブ遅延線140は、バッファ142からの第1の出力(基準PD_SDL)をバッファリングする第1のバッファ443と、遅延クロック(遅延PD_SDL)をバッファリングする第2のバッファ447と、をさらに含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、第1のバッファ443は、第1の出力側とXORゲート462との間に結合された第1の遅延調整バッファであり、第2のバッファ447は、遅延クロックとXORゲート462との間に結合された第2の遅延調整バッファである。当該実施形態では、DLLシステム400はさらに、第1の遅延調整バッファおよび第2の遅延調整バッファに結合されたコントローラ450(例えば処理デバイス)を含む。処理デバイスは、第1の遅延調整信号(「基準PD_adjust」)を第1の遅延調整バッファに供給してバッファ142からの第1の出力のタイミングを微調整し、第2の遅延調整信号(「遅延PD_adjust」)を第2の遅延調整バッファに供給して遅延クロックのタイミングを微調整するように構成可能である。
【0021】
図5は、少なくともいくつかの実施形態による
図4のDLLシステムの動作を示す一組のグラフであり、すなわち降順にて、マスタDLL入力クロック、スレーブDLL入力クロック、スレーブDLL電流消費、基準PD_SDL、遅延PD_SDLおよびインバータ464の出力側におけるダミー負荷イネーブル信号を表す波形である。当該実施形態では、ダミー負荷160は、スレーブDLL130が電源401aもしくはLDO401bからの電流を消費していない場合にイネーブルされる。ダミー負荷イネーブル信号は、基準PD_SDL信号と遅延PD_SDL信号との(スレーブ遅延線140からの)排他的論理和結合から、インバータ464によって反転された信号として形成される。
【0022】
したがって、当該実施形態では、ダミーイネーブル信号は、この例ではスレーブDLL130が電流を消費する場合に、マスタDLLクロックサイクルの1/8の期間を除いてイネーブルされる。スレーブDLL130がマスタDLLクロックサイクルのより高い割合で電源からの電流を消費する他の実施形態では、ダミー負荷イネーブル信号はより長い期間にわたってディスエーブルされることになる。換言すれば、スレーブクロックは、スレーブDLL130が電源401aもしくはLDO401bからの電流を消費する場合に、第1の出力およびスレーブ遅延線140からの遅延クロックによりダミー負荷をディスエーブルさせるためのものである。
【0023】
図6は、少なくとも1つの他の実施形態によるダミー負荷660を示す概略的なブロック図である。一実施形態では、ダミー負荷660は、
図4のダミー負荷460に代わるものまたは
図4のダミー負荷460を拡張したものであり、したがって、ダミー負荷660の各構成要素にはダミー負荷460の各構成要素と同一のもしくは同様の番号を付してある。当該実施形態では、ダミー負荷660は、負荷選択信号(load_select[n:0])を復号化するデコーダ654と、ANDゲートアレイ665a~665nのアレイと、を含み、ここで、各ANDゲートは入力としてインバータ464の出力およびデコーダ654からの複数の出力のうちの1つを受信する。ダミー負荷660はさらに、ANDゲートアレイ665a~665nのそれぞれのANDゲートからの複数の出力のうちの1つによって制御されるゲートを有する第1のトランジスタ466(例えば466が466aである)を含むトランジスタアレイ466a~466nを含みうる。ダミー負荷660はさらに、第1の抵抗468(例えば468が468aである)を含む抵抗アレイ468a~468nをさらに含むことができ、ここで、抵抗アレイ468a~468nのそれぞれの抵抗は、トランジスタアレイ466a~466nの各トランジスタのドレインと電源401aもしくはLDO401bとの間に結合されている。
【0024】
少なくともいくつかの実施形態では、抵抗アレイ468a~468nの各抵抗はそれぞれ異なる抵抗値を有する。当該実施形態では、コントローラ450は、抵抗アレイ468a~468nのうちの1つの抵抗に対応する抵抗値を有する抵抗を選択するための負荷選択信号をデコーダ654に送信することができ、これによりダミー負荷660の消費電流がスレーブDLL130の消費電流に一致する。したがって、スレーブDLL130の設計に付加的な変更が加えられても、コントローラ450によって可変に選択可能な抵抗を有するダミー負荷460に構造的な変更を行う必要はない。
【0025】
図7は、少なくとも1つの実施形態による遅延タップセレクタをさらに含むDLLシステム700の概略的なブロック図である。いくつかの実施形態では、DLLシステム700は
図4のDLLシステム400に対する拡張であり、したがって同じ構成要素には同一のラベルを付してあるので、あらためては説明しない。当該実施形態では、DLLシステム700はさらに、遅延セル列145の各遅延セルの出力を入力として受信しかつ遅延クロックを出力するマルチプレクサ748を含み、したがって、遅延クロックはスレーブ遅延線140からの各タップ出力でそれぞれ異なる位相を有しうる。当該実施形態では、スレーブ遅延線140はさらにバッファ列752を含み、このバッファ列752の各バッファは、各タップ出力に対応するそれぞれ異なる位相を有する対応する遅延クロックを出力する。さらに、当該実施形態では、コントローラ450(例えば処理デバイス)はマルチプレクサ748に結合されており、処理デバイスが、遅延セル列のうちの1つの遅延セルの出力をマルチプレクサに選択させるための遅延タップ選択信号を形成する。このようにして、コントローラ450は、1つまたは複数のダミー負荷460~460nのイネーブルおよびディスエーブルのタイミングを微調整することができる。
【0026】
図8Aは、少なくともいくつかの実施形態による、1つまたは複数のダミースレーブDLL860~860nを採用したDLLシステム800またはDLL装置の概略的なブロック図である。当該実施形態では、ダミー負荷に代えてダミースレーブDLL860を使用することができる。当該実施形態では、ダミースレーブDLL860は、スレーブDLL130と同様もしくは同一に設計されている。さらに、コントローラ450は、スレーブクロックがスレーブDLL130に入力されていない場合、ダミースレーブクロックをダミースレーブDLL860に入力させる。
【0027】
図8Bは、少なくとも1つの実施形態による、
図8AのDLLシステム800の動作を示す一組のグラフである。上述したように、スレーブDLL入力クロックがイネーブルされていない場合、コントローラ450は、ダミースレーブDLL860のダミースレーブクロックをイネーブルすることができ、ここでは、下2つのグラフに示されているように、スレーブDLL入力クロックおよびダミースレーブ入力クロックの両方の周波数が同一である。電圧変動を供給するためのこの解決手段は、複製されたハードウェアに起因する圧力、電圧、温度の条件に対して安定に機能することができる。よって、電源変動の除去タイミングに関する安定した信頼性の高い動作へのトレードオフとして、DLLシステム800内のダミースレーブDLL860の余分な回路領域が生じる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、DLLシステム800は、制御電圧を発生させるチャージポンプ114に対して直列に接続された位相周波数検出器112を含むマスタDLL100を含む。DLLシステム800はさらに、マスタDLL110に結合されたスレーブDLL130を含み、このスレーブDLL130は、遅延線、例えばスレーブ遅延線140を含む。遅延線は、制御電圧によって制御され、スレーブクロックを選択的に受信して遅延クロックを選択的に出力する。DLLシステム800はさらに、負荷過渡特性に応じてアンダーシュートまたはオーバーシュートの一方を受けつつマスタDLL110およびスレーブDLL130に電力を供給する電源401aもしくはLDO401bを備えている。DLLシステム800はさらに、スレーブDLL130と同一であってダミースレーブクロックを選択的に受信するダミースレーブDLL860を含む。当該実施形態では、ダミースレーブDLL860の出力側が電源401aもしくはLDO401bの出力側に接続されている。DLLシステム800はさらに、コントローラ450、例えばスレーブクロックおよびダミースレーブクロックに動作可能に結合された処理デバイスを含むことができる。ここでの少なくとも1つの実施形態によれば、処理デバイスは、スレーブクロックがスレーブDLLに入力されていない場合にのみ、ダミースレーブクロックをダミースレーブDLLに入力させる。
【0029】
図9Aは、少なくとも1つの実施形態による、ダミー負荷960Aに送信される制御電圧を発生させるチャージポンプ914のカレントミラー回路903を示す概略的なブロック図である。少なくともいくつかの実施形態では、チャージポンプ914は、本明細書で論じた先行のDLLシステムのチャージポンプ114である。当該実施形態では、チャージポンプ914は、遅延バッファ942、例えば本明細書において前述したスレーブDLL130のスレーブ遅延線140のバッファ142に接続されており、前述した制御電圧によってダミー負荷960Aに結合されている。
【0030】
当該実施形態では、ダミー負荷960Aは、遅延線、例えばスレーブ遅延線140によって選択的にイネーブルされる第1のトランジスタ466と、バッファの第1の出力およびスレーブ遅延線140の遅延クロックを入力として受信する排他的論理和(XOR)ゲート462と、XORゲート462の出力側と第1のトランジスタ466のゲートとの間に結合されたインバータ464と、を含む。ダミー負荷960Aはさらに、第1のトランジスタ466に対して直列に選択的に接続され、制御電圧によって選択的にイネーブルされる1つまたは複数の第2のトランジスタ966Aを含むことができる。より具体的には、1つまたは複数の第2のトランジスタ966Aは、1つまたは複数のトランジスタ966Aのゲートで制御電圧を受信し、グラウンドに接続されたソースを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の第2のトランジスタ966Aは、特定の抵抗値を得るために選択的に接続されるトランジスタバンクを含む。
【0031】
少なくとも当該実施形態では、チャージポンプ914は、電圧制御信号(Vc)を任意の時点でトランジスタスイッチ911に供給するためのアップ信号およびダウン信号を位相周波数検出器112から受信するように適応化されたフロントエンド回路909を含む。チャージポンプ914はさらに、出力側に制御電圧を発生させるカレントミラー903と、このカレントミラー903の一部であるバイアス電流回路913と、を含みうる。バイアス電流回路913は、位相周波数検出器112によって、例えばトランジスタスイッチ911の制御によって、バイアスされる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、カレントミラー回路903のバイアス電流回路913は、第1のpFET915および第2のpFET917を含む、相互接続されたp型電界効果トランジスタ(FET)の対を含んでおり、第1のpFET915および第2のpFET917のゲートは、例えばトランジスタスイッチ911を介して、位相周波数検出器112に選択的に接続される。カレントミラー回路903はさらに、第2のpFET917のドレインに接続されたドレインを有するn型FET(nFET)921を含み、このnFET921のドレインは、nFET921のゲートに接続されて制御電圧を発生させ、この制御電圧が遅延バッファ942とダミー負荷960Aとに送信される。当該実施形態では、第1のpFET915および第2のpFET917のソースが電源に結合されており、またnFET921のソースがグラウンドに結合されている。
【0033】
図9Bは、少なくとも1つの代替的な実施形態による、ダミー負荷960Bに送信される制御電圧を発生させるための、チャージポンプ914のカレントミラー回路903を示す概略的なブロック図である。
図9Aの実施形態とは異なり、
図9Bの実施形態では、制御電圧がバイアス電流回路913から直接に発生されるように変更されている。例えば、第1のpFET915および第2のpFET917のゲートが位相周波数検出器112に選択的に接続されて、このゲートによって制御電圧が発生され、遅延バッファ942とダミー負荷960Bとに送信されるようにすることができる。さらに、ダミー負荷960Bは、1つまたは複数の第2のトランジスタ966Bを含み、この第2のトランジスタ966Bは、第1のトランジスタ466に対して直列に選択的に接続され、かつ制御電圧に結合されたゲートを有し、電源、例えば電源401aもしくはLDO401bに接続されたソースを有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の第2のトランジスタ966Bは、特定の抵抗値を得るために選択的に接続されるトランジスタバンクを含む。
【0034】
図10は、少なくとも1つの実施形態による、バイアス電圧の直流電圧(DC)変動を相殺するためのキャパシタとしてダミートランジスタを使用する遅延セル1000の回路を示している。より具体的には、
図3Aを参照して論じた遅延セル300に対する拡張として、遅延セル1000には、遅延セル300のpFETのセットおよびnFETのセットと同じタイプの電流源であるキャパシタとして機能するダミートランジスタCpa,Cpb,Cna,Cnbのセットが追加されている。ダミートランジスタCpa,Cpb,Cna,Cnbは、各ダミートランジスタの第1の端子としてのソースおよびドレインを結合することによりキャパシタとして動作して、各トランジスタの第2の端子としてのゲートを接続することができ、ここで、ダミートランジスタCpa,CpbはpFETであり、トランジスタCna,CnbはnFETである。トランジスタCpa,Cpb,Cna,Cnbは、MOSFETまたは異なるタイプのトランジスタであってよいが、説明を簡単にするためにFETとして示す。
【0035】
少なくともいくつかの実施形態では、トランジスタCpaは(例えばpaノードの)第1のpFET303aのドレインと負の制御電圧(Vcn)との間に接続されており、トランジスタCpbは(例えばpbノードの)第2のpFET303bのドレインとVcnとの間に接続されており、paノードおよびpbノードのバイアス電圧の直流電圧変動が相殺される。当該実施形態では、トランジスタCnaは第1のnFET309aのソースと正の制御電圧(Vcp)との間に接続されており、トランジスタCnbは第2のnFET309bのソースとVcpとの間に接続されており、naノードおよびnbノードのバイアス電圧の直流電圧変動が相殺される。
【0036】
当該実施形態では、例えば、トランジスタCnaを介してVcpへのnaノードの電圧スイングを供給することにより、paノードからの、第1のpFET303aおよび第3のpFET306aの寄生ゲート‐ドレイン(Cgd)を介したノイズが相殺され、以降nbノードについても同様である。さらに、例えば、トランジスタCpaを介してVcnへのpbノードの電圧スイングを供給することにより、naノードからの、第1のnFET309aおよび第3のnFET312aの寄生ゲート‐ドレインを介したノイズが相殺され、以降pbノードについても同様である。
【0037】
種々の実施形態において、各ダミートランジスタCpa,Cpb,Cna,Cnbのそれぞれは、pFETまたはnFETのいずれにおいても、他のFETのほぼ1/2のサイズを有する。なぜなら、naノードまたはnbノードの電圧スイングがpaノードまたはpbノードの電圧スイングと等しければ、pFETのセットのそれぞれおよびnFETのセットのそれぞれの寄生Cgdが、寄生Cgdにダミートランジスタの寄生Cgsを加えたものに等しくなるからである。よって、例えばpbノードの電圧に等しいpaノードの電圧のパルス振幅と例えばnbノードの電圧に等しいnaノードの電圧のパルス振幅とに従ってダミートランジスタCpa,Cpb,Cna,Cnbのサイズを調整することにより、寄生容量によるノイズを最も効果的に相殺することができる。
【0038】
図11Aは少なくとも1つの実施形態による、
図10の回路の可変容量選択ケイパビリティを提供する回路を示す図である。当該実施形態では、ダミートランジスタCpaおよびCpbはそれぞれ、例えばp型トランジスタから成るトランジスタアレイとすることができ、ダミートランジスタCnaおよびCnbは、例えばn型トランジスタから成るトランジスタアレイとすることができる。
図11Bは、例として、トランジスタCpaに可変容量選択ケイパビリティを提供するトランジスタアレイを示している。
【0039】
当該実施形態では、コントローラ450は、容量選択信号1103を供給して、ダミートランジスタCpaに対する第1のトランジスタアレイの1つまたは複数の第1のダミートランジスタを選択し、ダミートランジスタCpbに対する第2のトランジスタアレイの1つまたは複数の第2のダミートランジスタを選択する。さらに、コントローラ450は、容量選択信号1106を提供して、ダミートランジスタCnaに対する第3のトランジスタアレイの1つまたは複数の第3のダミートランジスタを選択し、ダミートランジスタCnbに対する第4のトランジスタアレイの1つまたは複数の第4のダミートランジスタを選択することができる。
【0040】
図12は、少なくともいくつかの実施形態による、スレーブ遅延セルの1つまたは複数のインバータにバイアス電圧を供給するために使用されるダミー負荷1260を含む概略的なブロック図である。当該実施形態では、図示されているように、マスタ遅延線120およびスレーブ遅延線140に対する遅延セルがそれぞれ変化している。例えば、MDL遅延セル1200Aは、電源と相互結合された第1のpFETおよびnFET列との間に結合された第1のpFETを含み、この第1のpFETは、マスタクロック(MDLクロック)によって制御される第1のインバータ列をインスタンス化する。さらに、SDL遅延セル1200Bは、電源と相互結合された第2のpFETおよびnFET列との間に結合された第2のpFETを含み、この第2のpFETは、スレーブクロック(SDLクロック)によって制御される第2のインバータ列をインスタンス化する。正の制御電圧(Vcp)により第1のpFETおよび第2のpFETの両方がイネーブルされ、その一方で、ダミー負荷1260を使用して、第2のpFETのドレインおよび相互結合された第2のpFET列のpFETのソースをバイアスすることができる。いくつかの実施形態では、ダミー負荷は
図4または
図7のダミー負荷460である。
【0041】
当該実施形態では、Vcpバイアス電圧により、インバータの遅延が制御される。スレーブクロックがスレーブDLL130に到達すると、paノード電圧がインバータ電流によって降下し、次第に目標電圧へと落ち着いていき、ここで初期電圧は目標電圧よりも高く、これによりスレーブDLL遅延変動が生じる。スレーブ遅延線140の遅延セルにバイアス電圧を供給するためにダミー負荷1260を使用することにより、負荷電流が一定となり、例えば遅延変動を除去することができる。
【0042】
上記の説明では、詳細な説明のいくつかの部分をコンピュータメモリ内のデータビット上の演算のアルゴリズムおよび記号表現の観点において提示している。ここでのアルゴリズムの記述および表現は、データ処理分野の当業者が自身の作業の実質内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用する手段である。アルゴリズムは、本明細書においてかつ一般に、所望の結果をもたらす自己矛盾のない各ステップのシーケンスであると考えられる。各ステップは、物理量の物理的な操作を要求するものである。通常であって必須ではないが、ここでの量とは、記憶、転送、結合、比較および他の方式での操作が可能な電気的もしくは磁気的な信号の形態を有する。主として一般的な使用上の理由から、時に応じて当該信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、数値などのように称することが有益なこともあると判明している。
【0043】
ただし、これらの用語および同様の用語の全ては適切な物理量に関連付けられるべきであり、これらの量に適用される単なる便利なラベルにすぎないことに留意されたい。上記の説明から明らかであるように、特に別段の言明がない限り、説明全体を通して、「受信する」、「通信する」、「修正する」、「測定する」、「決定する」、「検出する」、「送信する」、「比較する」、「維持する」、「切り替える」、「制御する」などの用語を使用した論は、コンピューティングシステムのレジスタ内およびメモリ内の物理量(例えば電子的量)として表現されるデータをコンピューティングシステムのメモリ内またはレジスタ内または他の情報ストレージデバイス、伝送デバイスもしくはディスプレイデバイス内の物理量として同様に表現される他のデータへ操作および変換する、コンピューティングシステムまたは類似の電子コンピューティングデバイスのアクションおよびプロセスをいうものとする。
【0044】
「例」または「例示」なる用語は、本明細書では、例、事例または例示として機能することを意味するために使用される。「例」または「例示」として本明細書に記載される任意の態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示」なる用語の使用は、概念を具体的に提示することを意図するものである。本願において使用される場合、「または」なる用語は、排他的な「または」でなく、包括的な「または」を意味することを意図するものである。すなわち、特に別段の言明がない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」とは、自然な包含的順列のいずれか、すなわち、XがAを含む場合、XがBを含む場合、またはXがAとBとの両方を含む場合を意味することを意図するものであり、「XはAまたはBを含む」は、前述の事例のいずれのもとでも満たされる。さらに、本出願および添付の特許請求の範囲において使用される冠詞“a”および“an”は、特に別段の言明がない限り、または文脈から単数形に向けられていることが明らかでない限り、「1つ以上」を意味すると解されるべきである。さらに、全体を通して「実施形態」または「一実施形態」または「ある実施形態」または「1つの実施形態」なる用語の使用は、同じ実施形態または実施態様を意味するとの記載がない限り、このことを意図していない。
【0045】
本明細書にて説明した実施形態は、本明細書の動作を実行する装置にも関係しうる。当該装置は、必要な目的のために特別に構築されたものであってもよいし、またはコンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に作動またはリコンフィギュレーションされる汎用コンピュータを備えることもできる。このようなコンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に保存されていてよく、例えば、以下に限定されるわけではないが、フロッピーディスク、光学ディスク、CD‐ROMおよび磁気光学ディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カードもしくは光学カード、フラッシュメモリ、または電子命令を記憶するのに適した任意のタイプの媒体を含む。「コンピュータ可読記憶媒体」なる用語は、1つまたは複数の命令セットを格納した単一のまたは複数の媒体(例えば中央型もしくは分散型のデータベースおよび/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むものと解されたい。用語「コンピュータ可読媒体」とは、機械により実行され、かつここでの各実施形態の方法論のうちのいずれか1つもしくは複数を機械に実施させるための命令セットを記憶し、符号化し、または搬送することのできる任意の媒体を含むものであると解されたい。したがって、「コンピュータ可読記憶媒体」なる用語は、機械により実行され、かつここでの各実施形態の方法論のうちのいずれか1つもしくは複数を機械に実施させるための命令セットを格納することができる任意の媒体、例えば、以下に限定されるものではないが、ソリッドステートメモリ、光学媒体、磁気媒体を含むと解されたい。
【0046】
上記の説明は、本開示の複数の実施形態の良好な理解を提供するための多数の特定の詳細、例えば特定のシステム、構成要素、方法などの実施例を示している。上記の説明は、例示的であって限定的ではないことが意図されていることを理解されたい。上記の説明を読んで理解した当業者には他の多くの実施形態が明らかであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲に関して、かつ当該特許請求の範囲が権利付与する等価物の全範囲と共に、決定されるべきである。
【外国語明細書】