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特開2023-47342トランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047342
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】トランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151511
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21315189
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】フラスキーニ,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE04
4C601EE08
4C601GB03
4C601HH29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画像品質とフレームレートとの間のトレードオフを最適化することができる超音波信号処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子の信号の集合を処理する方法に関し、本方法は、受信した信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子の信号の集合を処理する方法であって、前記方法は、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、
前記複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記チャネルの数が、前記トランスデューサ要素のセットにおける前記トランスデューサ要素の数よりも少なく、かつ/又は
前記チャネルの数が前記合成波の数と一致しており、かつ/又は
前記複数の合成波のデータレートが、デジタル化されたときの受信された前記信号の集合のデータレートと比較して低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の合成波が、受信された前記信号の集合によって表される後方散乱波を近似するように再結合可能であり、かつ/又は合成可能である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の合成波が、
複数の発散波、
複数の平面波、及び
位相の異なる複数の波のうちの少なくとも1つであり、かつ/又は
受信された前記信号の集合が、後方散乱信号の集合である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ステップの前に、
少なくとも1つのパルスを媒体に送信する送信ステップと、
受信された前記信号の集合であるエコー信号の集合を、前記トランスデューサ要素のセットにより前記媒体から受信する受信ステップと、をさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
受信された前記信号の集合が超音波信号の集合であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が超音波トランスデューサ素子であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が行列アレイトランスデューサ素子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理ステップが、複数の合成波を得るために受信された前記信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記出力ステップの後に、
出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像が形成される、画像形成ステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記画像形成ステップが、出力された前記複数の合成波に基づいて集束ビーム形成を処理するステップ、かつ/又は
前記合成波の幾何学的形状の関数として、前記エコー画像を形成するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のチャネルが、物理チャネル及び/又はマルチプレクサチャネルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
データ処理部によって実行されると、前記データ処理部に前記方法の請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項12】
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理するシステムであって、前記システムは、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にし、かつ前記複数の合成波を複数のチャネルを介して出力するように構成された前処理部を備える、
システム。
【請求項13】
前記前処理部が、前記複数のチャネルを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されており、
前記外部処理システムが、出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像を形成する画像形成ステップを実行するように構成されており、かつ/又は
前記前処理部が、メイン処理部とは別個かつ/又は前記メイン処理部に対してリモートである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記前処理部及び前記トランスデューサ素子を含むプローブをさらに備える、請求項12又は14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記プローブが、ケーブル又は無線通信インターフェースを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されている、請求項12から14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステムに関する。具体的には、本方法は、トランスデューサ素子によって走査される媒体の画像データを提供するのに適している。一例として、本方法は、例えば超音波システムのような医療機器で用いられてもよい。
【背景技術】
【0002】
例えば医用画像処理、レーダ、ソナー、地震探査、無線通信、電波天文学、音響学及び生物医学の分野において、通信、画像処理又は走査を行う目的で複数のトランスデューサ要素又はトランシーバ(例えばアレイとして配置される)を使用することが知られている。一例として、超音波画像処理が挙げられる。
【0003】
従来の超音波画像処理方法では、超音波トランスデューサ要素のセットを有する超音波トランスデューサ素子(超音波プローブとも呼ばれる)を使用することができる。当該方法では、対応する送信ステップにおいて、1つ又は複数の超音波パルスがトランスデューサ要素によって媒体に送信される。次に、受信ステップにおいて、エコー信号の集合が、トランスデューサ要素のセットによって媒体から受信される。具体的には、トランスデューサ要素の各々は、受信したエコー信号を例えば電気信号に変換する。当該信号は、トランスデューサ要素によってさらに処理されてもよい。例えば、これらの信号はデジタル化されてもよく、かつ/又は信号調整ステップが実行されてもよい。
【0004】
当該信号は通常、次いで集中型画像処理システムに送信され、その際、各トランスデューサ要素はそれ自体のチャネルを使用する。集中型画像処理方法では、受信した信号をさらに処理して、例えばビーム形成方法を用いて、走査された媒体の画像を生成することができる。
【0005】
当該技術には、トランスデューサ要素と集中型画像処理システムとの間で(データ)帯域幅の拡大が必要になるという欠点がある。例えば、トランスデューサ素子が256個のトランスデューサ要素を備え、また媒体を撮像する際の音波発射ごとに1024個のサンプルが取得される場合、音波発射ごとに262000個のデータサンプルが生成され、次いで集中型画像処理システムのトランスデューサ要素から送信される。画像ごとの音波発射が256回になり、取得データサンプルごとに2バイト、かつ撮像フレームレートが80Hzになることを想定すると、トランスデューサ要素間の従来のデータリンクでは、集中型画像処理システムが必要とするデータ帯域幅は10GB/sを超える。
【0006】
このことから、例えば、大多数の従来型の無線通信技術では必要なデータ帯域幅を、とりわけ確実に得ることができないため、無線通信としてデータリンクを実装することは困難である。したがって、無線による送信がとにかく望まれる場合、データを通常、従来の圧縮技術を用いて送信前に圧縮するか、かつ/又は(時間及び/又は画像)解像度を下げている。しかしながら、当該技術は、最終画像データの品質を低下させ、これによって医師の診察をより困難にし、その信頼性を損なわせる恐れがあるという望ましくない効果を有する。
【0007】
医用超音波画像を形成する方法は、例えば特許文献1に開示されている。当該方法は、合成平面波による撮像方法に関する。当該方法は、媒体内で異なる角度の平面波を送信すること、及び後方散乱信号を受信する際にビーム形成を施し、次いで異なる画像を結合して最終画像に再合成することからなる。完全なアレイ上で平面波を送信すると、送信が単一の素子で実行され得る合成開口手法よりもはるかに高い圧力場が形成される。その上、軟組織で伝搬中に生じる超音波平面波の回折効果及び減衰効果が、単一の素子による送信と比較して著しく低くなる。
【0008】
更なる超音波画像処理の方法については、例えば特許文献2にあるものが知られている。当該方法は、少なくともa)複数の超音波が撮像領域内に送信され、各超音波に応答して、トランスデューサ要素のアレイによって生データの集合が取得される送信ステップであって、当該超音波が異なる空間周波数成分を有する、送信ステップと、b)撮像領域内の複数の仮想送信集束領域の各々を対象に、少なくとも1つのコヒーレントデータの集合が生データの集合から合成される、コヒーレンス強化ステップと、c)仮想送信集束領域の各々に含まれる複数の位置の各々を対象に、コヒーレントデータの集合を使用して、画像ピクセルがビーム形成によって計算される、ビーム形成ステップと、を含む。
【0009】
さらに、Montaldoらは、複合平面波送信のコヒーレント再結合を使用することにより、ビーム形成プロセスを改良して、超音波トランスデューサ要素の高いフレームレート機能を低下させることなく高品質のエコー画像を復元することを提案しており、これについては、Montaldo、GabrielとTanter、MickaelとBercoff、JeremyとBenech、NicolasとFink、Mathias(2009)による、非特許文献1を参照されたい。
【0010】
しかしながら、これらの既知の方法は、第一に超音波パルスを媒体に送信することに関係しているため、上述の問題に対処していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6551246号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009234230号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Coherent Plane-Wave Compounding for Very High Frame Rate Ultrasonography and Transient Elastography. IEEE transactions on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control.56.489-506.10.1109/TUFFC.2009.1067.
【発明の概要】
【0013】
処理後の信号を外部システムに送信するために必要なデータ帯域幅及び/又は必要な伝送チャネルの数を、データ品質を実質的に低下させることなく低減することができるように、前述の問題を克服すること、とりわけトランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステムを提供することが、現時点では依然として望ましい。とりわけ、処理後の信号が受信信号に基づいて画像形成のために構成された外部処理システムに出力された場合に、データ帯域幅の低減と、結果として生じる出力データ(即ち、処理後の信号)のデータレートの低減とによって画質が実質的に劣化しないことが望ましい。
【0014】
したがって、本開示の実施形態によれば、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法に関する。本方法は、
・受信した信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、
・これら複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む。
【0015】
このような方法を提供することにより、処理後の信号、即ち複数の合成波を出力するために必要なデータ帯域幅を低減することが可能になる。即ち、出力データのデータレートを低減することができる。このことはとりわけ、各トランスデューサ要素信号がそれ自体のチャネルで出力され得るとき、即ち、チャネルの数がトランスデューサ要素の数と一致するときの従来技術とを比較する場合に当てはまる。
【0016】
したがって、出力ステップは、従来技術と比較して最適化された出力ステップとして理解されてもよい。
【0017】
さらに、受信信号が処理(かつ/又は変換)されて複数の合成波になるため、トランスデューサ要素によって受信される原信号の集合からの情報を実質的に失うことなく、トランスデューサ素子の出力データレート、したがって、トランスデューサ素子と外部デバイス(例えば、集中型画像処理システム)との間で必要となる伝送リンクのデータ帯域幅を低減することができる。
【0018】
結果として、本方法を実行するために使用されるシステム、とりわけトランスデューサ素子の出力インターフェースのアーキテクチャを単純化することが可能になる。
【0019】
データレートが低減することにより、トランスデューサ素子の高フレームレートの取得がさらに実現する。
【0020】
付加的に、又は代替的に、データレートが低減するために、合成波を出力するために無線インターフェースを使用することができる。
【0021】
さらに、データレートが低減するために、合成波を送信し、かつ/又は処理するために必要な計算処理能力が減少し得る。
【0022】
トランスデューサ要素によって受信される信号の集合は、超音波が媒体を通過することに応答して、トランスデューサ要素によって取得される生データ及び/又は従来のRFデータの集合として理解されてもよい。超音波は、例えば、異なる空間周波数成分を有し得る。
【0023】
合成波はまた、例えば原信号の集合に含まれる情報を表す仮想波及び/又はシミュレート波として理解されてもよい。
【0024】
より具体的には、原信号の集合は合成波で近似してもよい。例えば、外部デバイスでは、動的受信集束を確実に行うために、従来のRFデータの代わりに合成波からビーム形成されてもよい。
【0025】
チャネルの数は、トランスデューサ要素のセットにおけるトランスデューサ要素の数よりも少なくてもよい。これにより、合成波を出力するために必要なデータ帯域幅を、従来技術と比較して低減することができる。
【0026】
例えば、チャネルの数は合成波の数と一致してもよい。トランスデューサ要素の数が例えば128であり、合成波の数が40である場合、データレートは3分の1未満に低下し得る。
【0027】
受信信号の集合はアナログ信号であってもよく、かつ/又は複数の合成波はデジタルデータを構成してもよい。したがって、例えば処理ステップは、受信信号の集合のA/D(アナログ-デジタル)変換を含んでもよい。あるいは、受信信号の集合は、別々に(例えば、トランスデューサ要素によって事前に)A/D変換されてもよく、デジタル化信号の集合は、処理ステップで処理されてもよい。
【0028】
複数の合成波のデータレートは、デジタル化されたときの受信信号の集合のデータレートと比較して低減し得る。即ち、複数の合成波を出力するために必要なデータ帯域幅は、デジタル化信号の集合を出力するために必要なデータ帯域幅よりも狭くてもよい。
【0029】
複数の合成波は、
・複数の発散波、
・複数の平面波、及び
・位相の異なる複数の波のうちの少なくとも1つであってもよいし、又はこれらのうちの1つを含んでもよい。
【0030】
例えば、合成波は、位相の異なる、即ちトランスデューサ要素に対する異なる受信角を有する平面波であってもよい。
【0031】
受信信号の集合は、後方散乱信号の集合であってもよい。例えば、トランスデューサ要素は、媒体から後方散乱信号を受信し、当該信号を例えば電気信号に変換することができる。
【0032】
本方法は、処理ステップの前に、
・少なくとも1つのパルスを媒体に送信する送信ステップと、
・受信信号の集合であるエコー信号の集合を、トランスデューサ要素のセットにより媒体から受信する受信ステップと、をさらに含んでもよい。
【0033】
例えば、送信ステップは、所与の点に集束する円筒波及び/又は異なる角度の合成平面波を、媒体に照射するステップを含んでもよい。受信ステップでは、当該照射ステップの後方散乱エコーが使用されてもよい。
【0034】
より具体的には、送信ステップでは、複数の超音波を撮像領域内に送信してもよく、また受信ステップでは、各超音波に応答してトランスデューサ要素のセットによって生データの集合が取得されてもよく、当該超音波は異なる空間周波数成分を有する。
【0035】
受信信号の集合は超音波信号の集合であってもよい。
【0036】
本トランスデューサ素子は超音波トランスデューサ素子であってもよい。トランスデューサ要素は、例えばトランスデューサアレイ、例えば1Dトランスデューサアレイ(トランスデューサ要素のラインを有する)、1.5Dトランスデューサアレイ(送信トランスデューサ要素の1ライン又は2ラインと、受信トランスデューサ要素の1ライン又は2ラインを有する)、又は2Dトランスデューサアレイ若しくはマトリックストランスデューサアレイ(トランスデューサ要素の複数のラインを有する)状であってもよい。しかしながら、本トランスデューサ素子は、超音波システムのトランスデューサ要素に限定されるものではない。代わりに、本トランスデューサ素子は、任意の種類の波を放射かつ受信することができる。更なる例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震探査システム、無線通信システム、電波天文システム、音響システム、非破壊検査(NDT)システム、及び/又は生物医学システムなどのトランスデューサ素子を含む。
【0037】
処理ステップは、複数の合成波を得るために受信信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを含んでもよい。
【0038】
本方法は、出力ステップの後に、複数の出力合成波に基づいてエコー画像が形成される、画像形成ステップをさらに含んでもよい。
【0039】
したがって、出力信号が、例えば外部処理システムなどの外部デバイスによって処理され得ることにより、媒体の画像データが取得されてもよい。
【0040】
画像形成ステップは、複数の出力合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。
【0041】
画像形成ステップは、合成波の幾何学的形状(又は合成波の幾何学的形状の所定の特性、例えば合成平面波の角度、即ち位相である)の関数として、エコー画像を形成するステップを含んでもよい。
【0042】
即ち、画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。したがって、合成平面波の角度に起因して生じる受信信号の伝搬遅延は、画像形成ステップにおいて当該角度を考慮することによって補償されてもよい。結果として、データ及び/又は画像(例えば、形成画像の)品質が、好適にはそのような伝搬遅延によって低下しないことになる。
【0043】
複数のチャネルは、物理チャネル及び/又はマルチプレクサ(仮想)チャネルであってもよい。
【0044】
本開示は、データ処理部によって実行されると、データ処理部に本開示による方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラムにさらに関する。トランスデューサ要素は、例えばデータ処理部に関連付けられてもよい。データ処理部は前処理部とも呼ばれてもよい。
【0045】
本開示はまた、コンピュータによって実行されると、本開示による方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムを記録した、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体にさらに関するものであってもよい。
【0046】
本開示は、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理するシステムにさらに関し、本システムは、
・受信した信号の集合を処理して複数の合成波にし、かつ
・複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力するように構成された前処理部を備える。
【0047】
前処理部は、複数のチャネルを介して外部(及び/又は中央)処理システムに複数の合成波を出力するように構成されてもよく、例えば、複数のチャネルを介して処理システムに接続可能であってもよい。
【0048】
外部処理システムは、複数の出力合成波に基づいてエコー画像を形成する画像形成ステップを実行するように構成されてもよい。
【0049】
前処理部は、メイン処理部とは別個かつ/又はこれに対してリモートであってもよい。
【0050】
本システムは、トランスデューサ要素を備えてもよい。
【0051】
本システムは、前処理部及びトランスデューサ要素を含み得る、プローブ(例えば、超音波プローブ)を備えてもよい。
【0052】
本システムは超音波システムであってもよい。
【0053】
プローブは、ケーブル又は無線通信インターフェースを介して外部処理システムに複数の合成波を出力するように構成されてもよい。
【0054】
本開示は、プラットフォーム、例えば、本開示によるシステムと外部処理システムとを備える医療プラットフォームにさらに関するものであってもよい。
【0055】
本システム及び/又はプラットフォームは更なる機能特性を備えてもよく、かつ/又は上述の方法ステップに対応して構成されてもよい。
【0056】
本開示及びその実施形態は、ヒト、植物、又は動物専用の医療システムの文脈で使用されてもよいが、考慮されるべき任意の(非生物)軟質材料の文脈でも使用されてもよい。
【0057】
他の点で矛盾しない限り、上述の要素と本明細書内の要素との組み合わせを行ってもよいことが意図される。
【0058】
前述の発明の概要及び以下の詳細な説明は、双方とも例示的且つ説明的なものにすぎず、例示を目的として提供されており、また、特許請求されるような本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0059】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、例示を目的として提供されており、また本開示の実施形態を説明と共に示し、その原理を支持し、かつ例示する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本開示の実施形態による方法の例示的な実施形態を示す図である。
図2】本開示の実施形態による、例示的なトランスデューサ要素アレイ及び入射平面波を概略的に示す図である。
図3a】媒体内の単一のターゲットリフレクタから後方散乱される球面波を概略的に示す図である。
図3b】本開示の実施形態による、後方散乱波を近似するために合成平面波を使用する原理を概略的に示す図である。
図4a】単一のターゲットリフレクタによる後方散乱信号の従来のRFデータ行列を概略的に示す図である。
図4b】本開示の実施形態による、平面波のRFデータ行列を概略的に示す図である。
図5a】トランスデューサ要素アレイが受信する信号を用いた、従来の画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。
図5b】本開示の実施形態による、画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。
図6】本開示の実施形態によるシステム、具体的には本開示の実施形態による超音波プラットフォームの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
ここで、本開示の例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。便宜上、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すために使用される。さらに、特定の実施形態、例えば図1の実施形態との関連で説明される特徴は、異なって記載されない限り、適宜、他の実施形態のうちのいずれにも同様に当てはまる。
【0062】
図1は、本開示の実施形態による方法の例示的な実施形態を示す図である。本方法は、システム1によって、より具体的には超音波プラットフォーム20によって実行されてもよい。いくつかの例を、図2及び図5に関連して説明する。
【0063】
本方法は、超音波システムによって実行される超音波方法であってもよい。利用可能な超音波方法は、Bモード撮像、せん断波エラストグラフィ撮像(本出願人によって開発されたShearWave(登録商標)モード、Ultrafast(商標)ドップラー撮像、又はAngio P.L.U.S(商標)という名称のangioモードの超音波撮像若しくは他の任意の超音波撮像モードを含む。しかしながら、本開示による方法は、超音波検査以外の他の技術分野にも同様に適用されてもよい。具体的には、被検査媒体又は環境のデータ/信号を取得するために複数のトランスデューサ要素を使用する、かつ/又は収集されたデータ/信号に基づいてビーム形成技術を任意選択的に使用することができる、任意の技術分野が考えられる。いくつかの例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震探査システム、無線通信システム、電波天文システム、音響システム、非破壊検査(NDT)システム、及び生物医学システムを使用する方法を含む。従来では同数のチャネル数をもたらす複数のトランスデューサ要素によってデータを取得する原理は、いずれの場合も同様である。したがって、本開示による方法は、これらの場合のそれぞれにおいて、上記と同様の肯定的な技術的効果、例えばデータ削減を実現することができる。しかしながら、ここで本開示を単に例示することを目的として、以下では超音波方法の例に言及する。
【0064】
ステップA1~A4は、本開示によるシステム1、より具体的には、例えば超音波プローブ1によって実行されてもよい。本システムは、望ましくは手持ち式システムである。例えば、本システムは、ステップA1及びA2を実行することができるトランスデューサ要素6と、ステップA3及びA4を実行することができる前処理部11とを備えてもよい。システム1の出力は、インターフェース10を介して中央又はメイン若しくは外部処理システム4に送信されてもよい。
【0065】
ステップB1は、中央(又はメイン若しくは外部)処理システム4によって実行されてもよい。ステップC1は、処理システム4に接続されたディスプレイ又は画面4aによって実行されてもよい。ただし、ステップB1は、システム1によっても同様に実行されてもよい。例えば、B1で生成された画像データは、その後システム1からディスプレイ4aに(例えば無線で)送信されてもよい。システム1がディスプレイを備え、なおかつすべてのステップA1~C1を実行することも可能である。
【0066】
ステップA1~C1は、連続的に、即ち順次実行されてもよい。また一方で、複数のステップのA2で収集されたエコー信号に基づいてステップA3が実行される前に、ステップA1及びA2が複数回実行されてもよい。例えば、受信ステップA2は、各送信ステップA1が実行されるごとに複数回(例えば512回)実行されてもよい。さらに、システム1は、これら複数のステップのA2によるデータをまとめて出力する前に、これらのデータを最初に収集してもよく、かつ/又はシステム4は、ステップB1及びB3が実行される前に、これらの出力をさらにバッファリングしてもよい。さらに、図1の方法1は繰り返し実行されてもよい。
【0067】
本方法は、以下のステップを含んでもよい。
【0068】
任意選択のステップA1では、少なくとも1つのパルスが媒体に送信される。例えば、送信ステップは、所与の点に収束する円筒波及び/又は異なる角度の合成平面波を、媒体に照射するステップを含んでもよい。より具体的には、送信ステップでは、複数の超音波を撮像領域内に送信することができる。
【0069】
任意選択のステップA2では、受信信号の集合であるエコー信号の集合が、トランスデューサ要素のセットによって媒体から受信される。受信ステップでは、ステップA1の照射ステップにおける後方散乱エコーが使用されてもよい。より具体的には、受信ステップでは、各超音波に応答して、トランスデューサ要素のセットによって生データの集合が取得されてもよい。受信信号の集合は超音波信号の集合であってもよい。
【0070】
ステップA3では、受信信号の集合は処理されて複数の合成波になる。例えば、当該処理ステップは、複数の合成波を得るために受信信号の集合がビーム形成される(事前)ビーム形成ステップを含んでもよい。例示的な実施形態を、図2に関連して以下に説明する。事前ビーム形成ステップは、アナログ-デジタル変換の前に、即ちアナログプロセッサを使用して実行されてもよく、又はアナログ-デジタル変換の後に、したがってデジタルプロセッサを使用して実行されてもよい。
【0071】
ステップA4では、複数の合成波が複数のチャネルを介して、例えばインターフェース10を介して外部システム4に出力される。
【0072】
任意選択のステップB1では、複数の出力合成波に基づいてエコー画像が形成される。画像形成ステップは、複数の出力合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。即ち、画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、例えば合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。
【0073】
任意選択のステップC1では、形成された画像が電子ディスプレイ又は画面に表示される。
【0074】
図2は、本開示の実施形態による、例示的なトランスデューサ要素アレイ及び平面波を概略的に示す図である。
【0075】
トランスデューサ要素6は、トランスデューサ要素X~XN-1と共にx軸に沿ってトランスデューサ要素アレイ状に配置されてもよい。超音波を表す受信信号τ(x0~N-1,θ)が、前処理部11によって共に収集かつ処理されて、異なる位相又は角度θを有する複数の合成平面波を得る。
【0076】
通常、特定の平面における平面波の表現は、次の式、即ちs(x、z、t、θ)の形式を有し得、式中、xはトランスデューサ要素が配置されている座標、zは媒体の深さ方向を表す座標、そしてtは時間である。平面波は、
を考慮に入れながら、
によって求められてもよく、
式中、Aは、受信した超音波信号のパワーの関数として設定されてもよい所定振幅であり、cは波の速度であり、fは波の中心周波数である。
【0077】
システム1によって処理されて出力される合成平面波は、式:p(t,θ)を有してもよい。フーリエ変換を参照しながら、処理ステップ(即ち、計算ステップ)について以下に説明する。
【0078】
通常、フーリエ変換は、
によって記述され得る。
【0079】
フーリエ変換は、式
の初等関数の線形結合への関数s(t、x、z)の展開として見ることができる。
【0080】
ここで、本開示を参照し、具体的には本開示による方法によって処理される合成波を参照すると、
は時間周波数f及び角度θを有する平面波と考えることができ、以下の通りとなる。
【0081】
したがって、フーリエ変換は、関数s(t、x、z)の平面波の線形結合への展開として見ることができる。
【0082】
式(5)の離散バージョンをとると、
となり、
の場合に以下の近似式
が得られ、
ここで、P*Qは使用される合成波の数であり、tは離散化された時間値であり、xは離散化されたx軸値であり、zは離散化されたz軸値であり、Mtはサンプル数(図4bの例では、M=512となる)であり、M、Mは事前定義された選択可能な値である。
【0083】
したがって、波(時間と空間との関数)のフーリエ変換が存在する限り、それは平面波列に(によって)展開(又は近似)され得る。誤差は、波の周波数成分に関するP及びQに依存する。
【0084】
図3aは、媒体内の単一のターゲットリフレクタから後方散乱される球面波を概略的に示す図である(十字で示す)。これに対応して、従来の方法では、動的受信集束を実行して超音波画像を取得することができる。しかしながら、本開示では、例えば図3bに示すように別の技法が例示されている。
【0085】
図3bは、本開示の実施形態による、後方散乱波を近似するために合成平面波を使用する原理を概略的に示す図である。図示のように、異なる角度を有する平面波は、図3aの後方散乱球面(及び発散)波を近似することができ、したがって従来の動的受信集束になる。合成平面波は、外部システム4に出力される前に、システム1における事前ビーム形成ステップで得られてもよい。次いで、平面波は、動的受信集束を得るために、例えばシステム4においてビーム形成されてもよい。
【0086】
例えば、従来それぞれの数のトランスデューサ要素(例えば、128個以上のトランスデューサ要素)によって提供される約120個の取得チャネルを必要とした集束と(画像解像度及び/又は品質の観点で)同等の最終画像を、約40個の平面波により得ることができる。したがって、提案している本方法は、システム1(例えば、プローブ1である)と外部システム4との間の伝搬時間によって生じるフレームレートの低下を克服することができる。したがって、これにより、システム1からシステム4に転送されるRFデータの量を、3分の1未満に減少させることができる。本方法は、画像品質とフレームレートとの間のトレードオフをさらに最適化することができる。さらに、本方法は、従来の画像処理システム(集束送信)と、合成開口ベースのシステム、例えばBモード、カラードプラ、せん断波エラストグラフィ、超高速ドプラ又はAngio+との両方で機能する。
【0087】
上述の波展開の理論は、行列アレイトランスデューサ要素において三次元に容易に拡張することができる。その場合、データサイズ削減の係数はその2乗になる(係数3は9となる)。
【0088】
図4aは、横(ここでは「x」)軸がトランスデューサ係数を示し、縦軸が時間(μs単位)を示す、単一のターゲットリフレクタによる後方散乱信号の従来のRFデータ行列を概略的に示す図である。図示の例では、256個のトランスデューサ要素を有するトランスデューサ要素が使用されており、512個のサンプルが収集されている。その結果、音波発射ごとに256個の要素×512個のサンプル=131072個のサンプルが収集されている。当該生RFデータは従来方式で、従来型のプローブによって出力され、外部システムに送信される。したがって、画像ごとの音波発射が128回になり、取得データサンプルごとに2バイト、かつ撮像フレームレートが80Hzになることを想定すると、これに応じて必要なデータ帯域幅は5GB/sを超えるものになる。
【0089】
図4bは、横軸がRX平面波角度(°)(即ち位相)を示し、縦軸が時間(μs単位)を示す、本開示の実施形態による、平面波のRFデータ行列を概略的に示す図である。合成平面波は、トランスデューサによって収集された原RFデータを(例えば図4aに示すように)それぞれ変換することによって得られてもよい。図4bに示す例示的なRFデータ行列がわずかに屈曲した形状になっているのは、合成平面波の角度によって時間遅延が生じることに起因し得る。そのような角度に依存する伝搬遅延は、図5bに関連して以下に説明するように、本開示の実施形態による画像形成プロセスにおいて補償することができる。
【0090】
図示の例では、60個の平面波が使用されており、512個のサンプルが収集されている。その結果、音波発射ごとに60個の平面波×512個のサンプル=30720個のサンプルが収集されている。当該生RFデータは従来方式で、従来型のプローブによって出力され、外部システムに送信される。したがって、これに応じて必要なデータ帯域幅は、図4aの従来の例と比較して4分の1よりもより狭くなる。
【0091】
図5aは、トランスデューサ要素アレイが受信する信号を用いた、従来の画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。図5bは、本開示の実施形態による、画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。図5a及び図5bの両方において、トランスデューサ要素6は、x軸(即ち、図5a及び図5bの横軸である)に沿ってトランスデューサ要素アレイ状に配置されてもよい。例えば、トランスデューサ要素アレイは、図2に関連して説明したものに対応してもよい。単一のトランスデューサ要素の幅はLであってもよい。隣接する2つのトランスデューサ要素間の距離は、dであってもよい。
【0092】
図5a及び図5bのz軸(即ち、縦軸)は、トランスデューサ要素アレイの主走査方向及び/又は被走査媒体の内部方向を表してもよい。具体的には、図5a及び図5bは、例えばトランスデューサ要素61(及び/又は他の任意のトランスデューサ要素)を使用して、点P(x、z)から後方散乱された波の例示的な受信方式を示してもよい。当該点は、位置x=-D、z=Dにあってもよい。
【0093】
本開示による方法では、トランスデューサ要素によって受信された信号が共に収集かつ処理されて、異なる角度又は位相を有する複数の合成平面波を得ることができる。図5bの例示的な受信方式では、角度θを有する1つの例示的な合成平面波が示されている。
【0094】
複数の合成平面波に基づいてエコー画像が形成されてもよい。当該画像形成プロセス(又はステップ)は、複数の合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。当該画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。したがって、従来の受信方式による受信遅延D/c(図5aに示すような)をD’/c(図5bに示すような)に置き換えてもよく、cは媒体内の波の速度である。伝搬遅延D/cは不変のままであってもよく、即ち、図5a及び図5bの受信方式において同様であってもよい。なお、図5a及び図5bでは、図5bの例示的な合成平面波の角度θの影響を反映するために、距離D/D’のみが概略的に示されている。
【0095】
したがって、画像形成プロセスにおいて、伝搬遅延は、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度の関数として補償され得る。結果として、形成された画像の画像品質が、好適にはそれぞれの伝搬遅延によって低下しないものとなる。
【0096】
図6は、本開示の実施形態によるシステム、具体的には本開示の実施形態による超音波プラットフォームの例示的な実施形態を示す図である。プラットフォーム20は、本開示によるシステム1を備えてもよい。本システム及び/又はプラットフォームは、本開示による方法を実行するように構成されてもよい。
【0097】
図6に示すプラットフォーム20は、粘弾性媒体2の超音波画像を提供するように構成されてもよい。圧縮超音波に応答して、媒体2が散乱する。当該媒体は、医療用途の場合、一例としてヒト又は動物の体、例えば患者の体の一部(乳房、肝臓、腹部など)であってもよい。当該システム1は、弾性せん断波の伝搬を観察して、媒体2の弾性の画像を提供するようにさらに構成されている。
【0098】
媒体の画像は、例えば、処理システム4(少なくとも、キーボードなどの入力インターフェース4bと、画面などの出力インターフェース4aとを備える)、又は他の任意の電子中央ユニットによって生成され、これにより、圧縮超音波が媒体2の外面3から媒体2へと送られる。当該波は、媒体2に含まれる散乱粒子5と相互作用し、これらの粒子は圧縮超音波を反射する。粒子5は、媒体2の任意の不均一性によって、とりわけ医療用途となれば、ヒト組織に存在するコラーゲン粒子によって構成され得る(これらの粒子は、超音波画像上に「スペックル」として知られる点を形成する)。
【0099】
媒体2を観察して媒体の画像を生成するために、超音波プローブ1状のシステムを使用し、これを観察媒体2の外面3に対して配置してもよい。当該プローブ、具体的にはそのトランスデューサ要素6は、例えば0.5~100MHzの周波数、好ましくは0.5~15MHzの周波数で、例えば4MHz程度の周波数において、エコー検査で通常使用される形式の圧縮超音波パルスをZ軸に沿って送信する。
【0100】
トランスデューサ要素6は、n個の超音波トランスデューサ要素T1,T2,…,Ti,…,Tnのアレイから構成されてもよく、nは1以上の整数である。
【0101】
当該トランスデューサ要素6は、例えば、Z軸に垂直なX軸に沿って位置合わせされたn=128個又は256個のトランスデューサ要素を含み得る、リニアアレイ状であってもよい。当該トランスデューサ要素はまた、トランスデューサ要素の二次元アレイ(平面又は非平面)であってもよい。
【0102】
トランスデューサ要素T1,T2,…Tnは、前処理部11及び/又は処理システム4によって互いから独立して制御されてもよい。前処理部11及び/又は処理システム4は、少なくとも1つの中央処理部(CPU)及び/又は少なくとも1つのグラフィック処理部(GPU)を備えてもよい。
【0103】
したがって、トランスデューサ要素T1~Tnは、
・「平面」圧縮超音波(即ちこの場合、波面がX平面、Z平面内で直線的である波)、又は媒体2内の観察視野全体を照明する他の任意のタイプの非集束波、例えば、種々のトランスデューサ要素T1~Tnにランダムな音響信号を放射させることによって生成される波のいずれか、
・あるいは媒体2の1つ又は複数の点に集束される圧縮超音波
を選択的に放射する。
【0104】
任意選択的に、いくつかの非集束圧縮波、例えば異なる角度の平面波を使用する合成画像処理技術が適用されてもよい。また、これらの平面波のそれぞれのエコー波を合成することにより、媒体の画像品質を向上させることができる。
【0105】
システム1は、具体的には、トランスデューサ要素6と前処理部11とを備える超音波プローブ状であってもよい。トランスデューサ要素6は信号の集合を収集し、次いで当該集合を前処理部11に送信してもよい。前処理部は、信号の集合を処理して複数の合成波にする。複数の合成波は、伝送インターフェース10(例えば、ケーブル又は無線通信インターフェース)を介して本システムによって、より具体的には前処理部11によって処理システム4に出力される。
【0106】
インターフェース11は、マルチチャネルリンク(例えば、物理チャネル又はマルチプレクサ論理チャネル)を含んでもよい。チャネルの数が、合成波の数と一致することが望ましい。本開示によるデータ削減により、インターフェースの必要なデータ帯域幅は、例えば1GB/s未満であってもよい。
【0107】
前処理部は、1つ又は複数のサブ部(図6には図示せず)、例えば、トランスデューサ要素に接続された送受信スイッチ、送受信スイッチに接続された信号調整部、信号調整部に接続されたRX(即ち、受信)平面処理部のうちの少なくとも1つを備えてもよい。RX(即ち、受信)平面処理部は、例えば上述したように、信号の集合を処理し、かつ/又はこれを複数の合成波に変換するように構成されてもよい。平面処理部は、例えば複数の合成波を得るために、受信信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを実行するように構成されてもよい。このため、平面処理部は、例えば受信平面波(RX平面)ビームフォーマであってもよい。
【0108】
したがって、受信平面波(RX平面)ビームフォーマは、信号調整部と、プローブ/システム1及び処理システム4を接続するバス又はインターフェースとの間の超音波プローブ/システムの従来のアーキテクチャ内に装着されてもよい。次いで、受信集束ビームフォーマは、動的受信集束を確実に行うために入射平面波に合わせて調整されてもよい。例えば、40本の平面波が、発散波又は集束波を近似することが分かっている。従来のアーキテクチャでは、例えば256個のトランスデューサ要素に対応する最大256個の受信チャネルを提案している。本提案のアーキテクチャを使用すると、例えば、本システム(即ち、プローブ)を処理システム4に接続するための40個のチャネル(合成波ごとに1つ)の伝送リンクとなり、同様の取得のために転送されるデータの削減率の点で6倍となり得る。したがって、当該技術を使用して伝送リンク10の容量を減少させるか、又は一定のチャネル容量でフレームレートを上昇させることができる。
【0109】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「~を含む(comprising a)」という用語が、特に明記しない限り「少なくとも1つを含む(comprising at least one)」と同義であると理解されるべきである。さらに、特許請求の範囲を含む本明細書に記載されたあらゆる範囲が、特に明記しない限り、その1つ又は複数の最終値を含むものと理解されるべきである。記載されている要素の特定の値が、当業者に知られている許容製造公差又は産業公差内にあると理解されるべきであり、また「実質的に(substantially)」並びに/又は「およそ(approximately)」及び/若しくは「ほぼ(generally)」という用語を使用することにより、そのような許容公差内にあることを意味していると理解されるべきである。
【0110】
本明細書における本開示が特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態が、本開示の原理及び用途を単に例示したものにすぎないことを理解されたい。
【0111】
本明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲が、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0112】
先行技術として特定された特許文献又は他の任意の事項への本明細書における言及は、当該文献若しくは他の事項が公知であること、又はそれが含む情報が特許請求の範囲のいずれかの優先日における共通の一般知識の一部であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子の信号の集合を処理する方法であって、前記方法は、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、
前記複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記チャネルの数が、前記トランスデューサ要素のセットにおける前記トランスデューサ要素の数よりも少なく、かつ/又は
前記チャネルの数が前記合成波の数と一致しており、かつ/又は
前記複数の合成波のデータレートが、デジタル化されたときの受信された前記信号の集合のデータレートと比較して低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の合成波が、受信された前記信号の集合によって表される後方散乱波を近似するように再結合可能であり、かつ/又は合成可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の合成波が、
複数の発散波、
複数の平面波、及び
位相の異なる複数の波のうちの少なくとも1つであり、かつ/又は
受信された前記信号の集合が、後方散乱信号の集合である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ステップの前に、
少なくとも1つのパルスを媒体に送信する送信ステップと、
受信された前記信号の集合であるエコー信号の集合を、前記トランスデューサ要素のセットにより前記媒体から受信する受信ステップと、をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
受信された前記信号の集合が超音波信号の集合であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が超音波トランスデューサ素子であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が行列アレイトランスデューサ素子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理ステップが、複数の合成波を得るために受信された前記信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記出力ステップの後に、
出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像が形成される、画像形成ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記画像形成ステップが、出力された前記複数の合成波に基づいて集束ビーム形成を処理するステップ、かつ/又は
前記合成波の幾何学的形状の関数として、前記エコー画像を形成するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のチャネルが、物理チャネル及び/又はマルチプレクサチャネルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
データ処理部によって実行されると、前記データ処理部に前記方法の請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項12】
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理するシステムであって、前記システムは、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にし、かつ前記複数の合成波を複数のチャネルを介して出力するように構成された前処理部を備える、
システム。
【請求項13】
前記前処理部が、前記複数のチャネルを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されており、
前記外部処理システムが、出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像を形成する画像形成ステップを実行するように構成されており、かつ/又は
前記前処理部が、メイン処理部とは別個かつ/又は前記メイン処理部に対してリモートである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記前処理部及び前記トランスデューサ素子を含むプローブをさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記プローブが、ケーブル又は無線通信インターフェースを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステムに関する。具体的には、本方法は、トランスデューサ素子によって走査される媒体の画像データを提供するのに適している。一例として、本方法は、例えば超音波システムのような医療機器で用いられてもよい。
【背景技術】
【0002】
例えば医用画像処理、レーダ、ソナー、地震探査、無線通信、電波天文学、音響学及び生物医学の分野において、通信、画像処理又は走査を行う目的で複数のトランスデューサ要素又はトランシーバ(例えばアレイとして配置される)を使用することが知られている。一例として、超音波画像処理が挙げられる。
【0003】
従来の超音波画像処理方法では、超音波トランスデューサ要素のセットを有する超音波トランスデューサ素子(超音波プローブとも呼ばれる)を使用することができる。当該方法では、対応する送信ステップにおいて、1つ又は複数の超音波パルスがトランスデューサ要素によって媒体に送信される。次に、受信ステップにおいて、エコー信号の集合が、トランスデューサ要素のセットによって媒体から受信される。具体的には、トランスデューサ要素の各々は、受信したエコー信号を例えば電気信号に変換する。当該信号は、トランスデューサ要素によってさらに処理されてもよい。例えば、これらの信号はデジタル化されてもよく、かつ/又は信号調整ステップが実行されてもよい。
【0004】
当該信号は通常、次いで集中型画像処理システムに送信され、その際、各トランスデューサ要素はそれ自体のチャネルを使用する。集中型画像処理方法では、受信した信号をさらに処理して、例えばビーム形成方法を用いて、走査された媒体の画像を生成することができる。
【0005】
当該技術には、トランスデューサ要素と集中型画像処理システムとの間で(データ)帯域幅の拡大が必要になるという欠点がある。例えば、トランスデューサ素子が256個のトランスデューサ要素を備え、また媒体を撮像する際の音波発射ごとに1024個のサンプルが取得される場合、音波発射ごとに262000個のデータサンプルが生成され、次いで集中型画像処理システムのトランスデューサ要素から送信される。画像ごとの音波発射が256回になり、取得データサンプルごとに2バイト、かつ撮像フレームレートが80Hzになることを想定すると、トランスデューサ要素間の従来のデータリンクでは、集中型画像処理システムが必要とするデータ帯域幅は10GB/sを超える。
【0006】
このことから、例えば、大多数の従来型の無線通信技術では必要なデータ帯域幅を、とりわけ確実に得ることができないため、無線通信としてデータリンクを実装することは困難である。したがって、無線による送信がとにかく望まれる場合、データを通常、従来の圧縮技術を用いて送信前に圧縮するか、かつ/又は(時間及び/又は画像)解像度を下げている。しかしながら、当該技術は、最終画像データの品質を低下させ、これによって医師の診察をより困難にし、その信頼性を損なわせる恐れがあるという望ましくない効果を有する。
【0007】
医用超音波画像を形成する方法は、例えば特許文献1に開示されている。当該方法は、合成平面波による撮像方法に関する。当該方法は、媒体内で異なる角度の平面波を送信すること、及び後方散乱信号を受信する際にビーム形成を施し、次いで異なる画像を結合して最終画像に再合成することからなる。完全なアレイ上で平面波を送信すると、送信が単一の素子で実行され得る合成開口手法よりもはるかに高い圧力場が形成される。その上、軟組織で伝搬中に生じる超音波平面波の回折効果及び減衰効果が、単一の素子による送信と比較して著しく低くなる。
【0008】
更なる超音波画像処理の方法については、例えば特許文献2にあるものが知られている。当該方法は、少なくともa)複数の超音波が撮像領域内に送信され、各超音波に応答して、トランスデューサ要素のアレイによって生データの集合が取得される送信ステップであって、当該超音波が異なる空間周波数成分を有する、送信ステップと、b)撮像領域内の複数の仮想送信集束領域の各々を対象に、少なくとも1つのコヒーレントデータの集合が生データの集合から合成される、コヒーレンス強化ステップと、c)仮想送信集束領域の各々に含まれる複数の位置の各々を対象に、コヒーレントデータの集合を使用して、画像ピクセルがビーム形成によって計算される、ビーム形成ステップと、を含む。
【0009】
さらに、Montaldoらは、複合平面波送信のコヒーレント再結合を使用することにより、ビーム形成プロセスを改良して、超音波トランスデューサ要素の高いフレームレート機能を低下させることなく高品質のエコー画像を復元することを提案しており、これについては、Montaldo、GabrielとTanter、MickaelとBercoff、JeremyとBenech、NicolasとFink、Mathias(2009)による、非特許文献1を参照されたい。
【0010】
しかしながら、これらの既知の方法は、第一に超音波パルスを媒体に送信することに関係しているため、上述の問題に対処していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6551246号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009234230号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Coherent Plane-Wave Compounding for Very High Frame Rate Ultrasonography and Transient Elastography. IEEE transactions on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control.56.489-506.10.1109/TUFFC.2009.1067.
【発明の概要】
【0013】
処理後の信号を外部システムに送信するために必要なデータ帯域幅及び/又は必要な伝送チャネルの数を、データ品質を実質的に低下させることなく低減することができるように、前述の問題を克服すること、とりわけトランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法及びシステムを提供することが、現時点では依然として望ましい。とりわけ、処理後の信号が受信信号に基づいて画像形成のために構成された外部処理システムに出力された場合に、データ帯域幅の低減と、結果として生じる出力データ(即ち、処理後の信号)のデータレートの低減とによって画質が実質的に劣化しないことが望ましい。
【0014】
したがって、本開示の実施形態によれば、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ要素によって受信される信号の集合を処理する方法に関する。本方法は、
・受信した信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、
・これら複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む。
【0015】
このような方法を提供することにより、処理後の信号、即ち複数の合成波を出力するために必要なデータ帯域幅を低減することが可能になる。即ち、出力データのデータレートを低減することができる。このことはとりわけ、各トランスデューサ要素信号がそれ自体のチャネルで出力され得るとき、即ち、チャネルの数がトランスデューサ要素の数と一致するときの従来技術とを比較する場合に当てはまる。
【0016】
したがって、出力ステップは、従来技術と比較して最適化された出力ステップとして理解されてもよい。
【0017】
さらに、受信信号が処理(かつ/又は変換)されて複数の合成波になるため、トランスデューサ要素によって受信される原信号の集合からの情報を実質的に失うことなく、トランスデューサ素子の出力データレート、したがって、トランスデューサ素子と外部デバイス(例えば、集中型画像処理システム)との間で必要となる伝送リンクのデータ帯域幅を低減することができる。
【0018】
結果として、本方法を実行するために使用されるシステム、とりわけトランスデューサ素子の出力インターフェースのアーキテクチャを単純化することが可能になる。
【0019】
データレートが低減することにより、トランスデューサ素子の高フレームレートの取得がさらに実現する。
【0020】
付加的に、又は代替的に、データレートが低減するために、合成波を出力するために無線インターフェースを使用することができる。
【0021】
さらに、データレートが低減するために、合成波を送信し、かつ/又は処理するために必要な計算処理能力が減少し得る。
【0022】
トランスデューサ要素によって受信される信号の集合は、超音波が媒体を通過することに応答して、トランスデューサ要素によって取得される生データ及び/又は従来のRFデータの集合として理解されてもよい。超音波は、例えば、異なる空間周波数成分を有し得る。
【0023】
合成波はまた、例えば原信号の集合に含まれる情報を表す仮想波及び/又はシミュレート波として理解されてもよい。
【0024】
より具体的には、原信号の集合は合成波で近似してもよい。例えば、外部デバイスでは、動的受信集束を確実に行うために、従来のRFデータの代わりに合成波からビーム形成されてもよい。
【0025】
チャネルの数は、トランスデューサ要素のセットにおけるトランスデューサ要素の数よりも少なくてもよい。これにより、合成波を出力するために必要なデータ帯域幅を、従来技術と比較して低減することができる。
【0026】
例えば、チャネルの数は合成波の数と一致してもよい。トランスデューサ要素の数が例えば128であり、合成波の数が40である場合、データレートは3分の1未満に低下し得る。
【0027】
受信信号の集合はアナログ信号であってもよく、かつ/又は複数の合成波はデジタルデータを構成してもよい。したがって、例えば処理ステップは、受信信号の集合のA/D(アナログ-デジタル)変換を含んでもよい。あるいは、受信信号の集合は、別々に(例えば、トランスデューサ要素によって事前に)A/D変換されてもよく、デジタル化信号の集合は、処理ステップで処理されてもよい。
【0028】
複数の合成波のデータレートは、デジタル化されたときの受信信号の集合のデータレートと比較して低減し得る。即ち、複数の合成波を出力するために必要なデータ帯域幅は、デジタル化信号の集合を出力するために必要なデータ帯域幅よりも狭くてもよい。
【0029】
複数の合成波は、
・複数の発散波、
・複数の平面波、及び
・位相の異なる複数の波のうちの少なくとも1つであってもよいし、又はこれらのうちの1つを含んでもよい。
【0030】
例えば、合成波は、位相の異なる、即ちトランスデューサ要素に対する異なる受信角を有する平面波であってもよい。
【0031】
受信信号の集合は、後方散乱信号の集合であってもよい。例えば、トランスデューサ要素は、媒体から後方散乱信号を受信し、当該信号を例えば電気信号に変換することができる。
【0032】
本方法は、処理ステップの前に、
・少なくとも1つのパルスを媒体に送信する送信ステップと、
・受信信号の集合であるエコー信号の集合を、トランスデューサ要素のセットにより媒体から受信する受信ステップと、をさらに含んでもよい。
【0033】
例えば、送信ステップは、所与の点に集束する円筒波及び/又は異なる角度の合成平面波を、媒体に照射するステップを含んでもよい。受信ステップでは、当該照射ステップの後方散乱エコーが使用されてもよい。
【0034】
より具体的には、送信ステップでは、複数の超音波を撮像領域内に送信してもよく、また受信ステップでは、各超音波に応答してトランスデューサ要素のセットによって生データの集合が取得されてもよく、当該超音波は異なる空間周波数成分を有する。
【0035】
受信信号の集合は超音波信号の集合であってもよい。
【0036】
本トランスデューサ素子は超音波トランスデューサ素子であってもよい。トランスデューサ要素は、例えばトランスデューサアレイ、例えば1Dトランスデューサアレイ(トランスデューサ要素のラインを有する)、1.5Dトランスデューサアレイ(送信トランスデューサ要素の1ライン又は2ラインと、受信トランスデューサ要素の1ライン又は2ラインを有する)、又は2Dトランスデューサアレイ若しくはマトリックストランスデューサアレイ(トランスデューサ要素の複数のラインを有する)状であってもよい。しかしながら、本トランスデューサ素子は、超音波システムのトランスデューサ要素に限定されるものではない。代わりに、本トランスデューサ素子は、任意の種類の波を放射かつ受信することができる。更なる例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震探査システム、無線通信システム、電波天文システム、音響システム、非破壊検査(NDT)システム、及び/又は生物医学システムなどのトランスデューサ素子を含む。
【0037】
処理ステップは、複数の合成波を得るために受信信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを含んでもよい。
【0038】
本方法は、出力ステップの後に、複数の出力合成波に基づいてエコー画像が形成される、画像形成ステップをさらに含んでもよい。
【0039】
したがって、出力信号が、例えば外部処理システムなどの外部デバイスによって処理され得ることにより、媒体の画像データが取得されてもよい。
【0040】
画像形成ステップは、複数の出力合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。
【0041】
画像形成ステップは、合成波の幾何学的形状(又は合成波の幾何学的形状の所定の特性、例えば合成平面波の角度、即ち位相である)の関数として、エコー画像を形成するステップを含んでもよい。
【0042】
即ち、画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。したがって、合成平面波の角度に起因して生じる受信信号の伝搬遅延は、画像形成ステップにおいて当該角度を考慮することによって補償されてもよい。結果として、データ及び/又は画像(例えば、形成画像の)品質が、好適にはそのような伝搬遅延によって低下しないことになる。
【0043】
複数のチャネルは、物理チャネル及び/又はマルチプレクサ(仮想)チャネルであってもよい。
【0044】
本開示は、データ処理部によって実行されると、データ処理部に本開示による方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラムにさらに関する。トランスデューサ要素は、例えばデータ処理部に関連付けられてもよい。データ処理部は前処理部とも呼ばれてもよい。
【0045】
本開示はまた、コンピュータによって実行されると、本開示による方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムを記録した、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体にさらに関するものであってもよい。
【0046】
本開示は、トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理するシステムにさらに関し、本システムは、
・受信した信号の集合を処理して複数の合成波にし、かつ
・複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力するように構成された前処理部を備える。
【0047】
前処理部は、複数のチャネルを介して外部(及び/又は中央)処理システムに複数の合成波を出力するように構成されてもよく、例えば、複数のチャネルを介して処理システムに接続可能であってもよい。
【0048】
外部処理システムは、複数の出力合成波に基づいてエコー画像を形成する画像形成ステップを実行するように構成されてもよい。
【0049】
前処理部は、メイン処理部とは別個かつ/又はこれに対してリモートであってもよい。
【0050】
本システムは、トランスデューサ要素を備えてもよい。
【0051】
本システムは、前処理部及びトランスデューサ要素を含み得る、プローブ(例えば、超音波プローブ)を備えてもよい。
【0052】
本システムは超音波システムであってもよい。
【0053】
プローブは、ケーブル又は無線通信インターフェースを介して外部処理システムに複数の合成波を出力するように構成されてもよい。
【0054】
本開示は、プラットフォーム、例えば、本開示によるシステムと外部処理システムとを備える医療プラットフォームにさらに関するものであってもよい。
【0055】
本システム及び/又はプラットフォームは更なる機能特性を備えてもよく、かつ/又は上述の方法ステップに対応して構成されてもよい。
【0056】
本開示及びその実施形態は、ヒト、植物、又は動物専用の医療システムの文脈で使用されてもよいが、考慮されるべき任意の(非生物)軟質材料の文脈でも使用されてもよい。
【0057】
他の点で矛盾しない限り、上述の要素と本明細書内の要素との組み合わせを行ってもよいことが意図される。
【0058】
前述の発明の概要及び以下の詳細な説明は、双方とも例示的且つ説明的なものにすぎず、例示を目的として提供されており、また、特許請求されるような本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0059】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、例示を目的として提供されており、また本開示の実施形態を説明と共に示し、その原理を支持し、かつ例示する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本開示の実施形態による方法の例示的な実施形態を示す図である。
図2】本開示の実施形態による、例示的なトランスデューサ要素アレイ及び入射平面波を概略的に示す図である。
図3a】媒体内の単一のターゲットリフレクタから後方散乱される球面波を概略的に示す図である。
図3b】本開示の実施形態による、後方散乱波を近似するために合成平面波を使用する原理を概略的に示す図である。
図4a】単一のターゲットリフレクタによる後方散乱信号の従来のRFデータ行列を概略的に示す図である。
図4b】本開示の実施形態による、平面波のRFデータ行列を概略的に示す図である。
図5a】トランスデューサ要素アレイが受信する信号を用いた、従来の画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。
図5b】本開示の実施形態による、画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。
図6】本開示の実施形態によるシステム、具体的には本開示の実施形態による超音波プラットフォームの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
ここで、本開示の例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。便宜上、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すために使用される。さらに、特定の実施形態、例えば図1の実施形態との関連で説明される特徴は、異なって記載されない限り、適宜、他の実施形態のうちのいずれにも同様に当てはまる。
【0062】
図1は、本開示の実施形態による方法の例示的な実施形態を示す図である。本方法は、システム1によって、より具体的には超音波プラットフォーム20によって実行されてもよい。いくつかの例を、図2及び図5に関連して説明する。
【0063】
本方法は、超音波システムによって実行される超音波方法であってもよい。利用可能な超音波方法は、Bモード撮像、せん断波エラストグラフィ撮像(本出願人によって開発されたShearWave(登録商標)モード、Ultrafast(商標)ドップラー撮像、又はAngio P.L.U.S(商標)という名称のangioモードの超音波撮像若しくは他の任意の超音波撮像モードを含む。しかしながら、本開示による方法は、超音波検査以外の他の技術分野にも同様に適用されてもよい。具体的には、被検査媒体又は環境のデータ/信号を取得するために複数のトランスデューサ要素を使用する、かつ/又は収集されたデータ/信号に基づいてビーム形成技術を任意選択的に使用することができる、任意の技術分野が考えられる。いくつかの例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震探査システム、無線通信システム、電波天文システム、音響システム、非破壊検査(NDT)システム、及び生物医学システムを使用する方法を含む。従来では同数のチャネル数をもたらす複数のトランスデューサ要素によってデータを取得する原理は、いずれの場合も同様である。したがって、本開示による方法は、これらの場合のそれぞれにおいて、上記と同様の肯定的な技術的効果、例えばデータ削減を実現することができる。しかしながら、ここで本開示を単に例示することを目的として、以下では超音波方法の例に言及する。
【0064】
ステップA1~A4は、本開示によるシステム1、より具体的には、例えば超音波プローブ1によって実行されてもよい。本システムは、望ましくは手持ち式システムである。例えば、本システムは、ステップA1及びA2を実行することができるトランスデューサ要素6と、ステップA3及びA4を実行することができる前処理部11とを備えてもよい。システム1の出力は、インターフェース10を介して中央又はメイン若しくは外部処理システム4に送信されてもよい。
【0065】
ステップB1は、中央(又はメイン若しくは外部)処理システム4によって実行されてもよい。ステップC1は、処理システム4に接続されたディスプレイ又は画面4aによって実行されてもよい。ただし、ステップB1は、システム1によっても同様に実行されてもよい。例えば、B1で生成された画像データは、その後システム1からディスプレイ4aに(例えば無線で)送信されてもよい。システム1がディスプレイを備え、なおかつすべてのステップA1~C1を実行することも可能である。
【0066】
ステップA1~C1は、連続的に、即ち順次実行されてもよい。また一方で、複数のステップのA2で収集されたエコー信号に基づいてステップA3が実行される前に、ステップA1及びA2が複数回実行されてもよい。例えば、受信ステップA2は、各送信ステップA1が実行されるごとに複数回(例えば512回)実行されてもよい。さらに、システム1は、これら複数のステップのA2によるデータをまとめて出力する前に、これらのデータを最初に収集してもよく、かつ/又はシステム4は、ステップB1及びB3が実行される前に、これらの出力をさらにバッファリングしてもよい。さらに、図1の方法1は繰り返し実行されてもよい。
【0067】
本方法は、以下のステップを含んでもよい。
【0068】
任意選択のステップA1では、少なくとも1つのパルスが媒体に送信される。例えば、送信ステップは、所与の点に収束する円筒波及び/又は異なる角度の合成平面波を、媒体に照射するステップを含んでもよい。より具体的には、送信ステップでは、複数の超音波を撮像領域内に送信することができる。
【0069】
任意選択のステップA2では、受信信号の集合であるエコー信号の集合が、トランスデューサ要素のセットによって媒体から受信される。受信ステップでは、ステップA1の照射ステップにおける後方散乱エコーが使用されてもよい。より具体的には、受信ステップでは、各超音波に応答して、トランスデューサ要素のセットによって生データの集合が取得されてもよい。受信信号の集合は超音波信号の集合であってもよい。
【0070】
ステップA3では、受信信号の集合は処理されて複数の合成波になる。例えば、当該処理ステップは、複数の合成波を得るために受信信号の集合がビーム形成される(事前)ビーム形成ステップを含んでもよい。例示的な実施形態を、図2に関連して以下に説明する。事前ビーム形成ステップは、アナログ-デジタル変換の前に、即ちアナログプロセッサを使用して実行されてもよく、又はアナログ-デジタル変換の後に、したがってデジタルプロセッサを使用して実行されてもよい。
【0071】
ステップA4では、複数の合成波が複数のチャネルを介して、例えばインターフェース10を介して外部システム4に出力される。
【0072】
任意選択のステップB1では、複数の出力合成波に基づいてエコー画像が形成される。画像形成ステップは、複数の出力合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。即ち、画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、例えば合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。
【0073】
任意選択のステップC1では、形成された画像が電子ディスプレイ又は画面に表示される。
【0074】
図2は、本開示の実施形態による、例示的なトランスデューサ要素アレイ及び平面波を概略的に示す図である。
【0075】
トランスデューサ要素6は、トランスデューサ要素X~XN-1と共にx軸に沿ってトランスデューサ要素アレイ状に配置されてもよい。超音波を表す受信信号τ(x0~N-1,θ)が、前処理部11によって共に収集かつ処理されて、異なる位相又は角度θを有する複数の合成平面波を得る。
【0076】
通常、特定の平面における平面波の表現は、次の式、即ちs(x、z、t、θ)の形式を有し得、式中、xはトランスデューサ要素が配置されている座標、zは媒体の深さ方向を表す座標、そしてtは時間である。平面波は、
を考慮に入れながら、
によって求められてもよく、
式中、Aは、受信した超音波信号のパワーの関数として設定されてもよい所定振幅であり、cは波の速度であり、fは波の中心周波数である。
【0077】
システム1によって処理されて出力される合成平面波は、式:p(t,θ)を有してもよい。フーリエ変換を参照しながら、処理ステップ(即ち、計算ステップ)について以下に説明する。
【0078】
通常、フーリエ変換は、
によって記述され得る。
【0079】
フーリエ変換は、式
の初等関数の線形結合への関数s(t、x、z)の展開として見ることができる。
【0080】
ここで、本開示を参照し、具体的には本開示による方法によって処理される合成波を参照すると、
は時間周波数f及び角度θを有する平面波と考えることができ、以下の通りとなる。
【0081】
したがって、フーリエ変換は、関数s(t、x、z)の平面波の線形結合への展開として見ることができる。
【0082】
式(5)の離散バージョンをとると、
となり、
の場合に以下の近似式
が得られ、
ここで、P*Qは使用される合成波の数であり、tは離散化された時間値であり、xは離散化されたx軸値であり、zは離散化されたz軸値であり、Mtはサンプル数(図4bの例では、M=512となる)であり、M、Mは事前定義された選択可能な値である。
【0083】
したがって、波(時間と空間との関数)のフーリエ変換が存在する限り、それは平面波列に(によって)展開(又は近似)され得る。誤差は、波の周波数成分に関するP及びQに依存する。
【0084】
図3aは、媒体内の単一のターゲットリフレクタから後方散乱される球面波を概略的に示す図である(十字で示す)。これに対応して、従来の方法では、動的受信集束を実行して超音波画像を取得することができる。しかしながら、本開示では、例えば図3bに示すように別の技法が例示されている。
【0085】
図3bは、本開示の実施形態による、後方散乱波を近似するために合成平面波を使用する原理を概略的に示す図である。図示のように、異なる角度を有する平面波は、図3aの後方散乱球面(及び発散)波を近似することができ、したがって従来の動的受信集束になる。合成平面波は、外部システム4に出力される前に、システム1における事前ビーム形成ステップで得られてもよい。次いで、平面波は、動的受信集束を得るために、例えばシステム4においてビーム形成されてもよい。
【0086】
例えば、従来それぞれの数のトランスデューサ要素(例えば、128個以上のトランスデューサ要素)によって提供される約120個の取得チャネルを必要とした集束と(画像解像度及び/又は品質の観点で)同等の最終画像を、約40個の平面波により得ることができる。したがって、提案している本方法は、システム1(例えば、プローブ1である)と外部システム4との間の伝搬時間によって生じるフレームレートの低下を克服することができる。したがって、これにより、システム1からシステム4に転送されるRFデータの量を、3分の1未満に減少させることができる。本方法は、画像品質とフレームレートとの間のトレードオフをさらに最適化することができる。さらに、本方法は、従来の画像処理システム(集束送信)と、合成開口ベースのシステム、例えばBモード、カラードプラ、せん断波エラストグラフィ、超高速ドプラ又はAngio+との両方で機能する。
【0087】
上述の波展開の理論は、行列アレイトランスデューサ要素において三次元に容易に拡張することができる。その場合、データサイズ削減の係数はその2乗になる(係数3は9となる)。
【0088】
図4aは、横(ここでは「x」)軸がトランスデューサ係数を示し、縦軸が時間(μs単位)を示す、単一のターゲットリフレクタによる後方散乱信号の従来のRFデータ行列を概略的に示す図である。図示の例では、256個のトランスデューサ要素を有するトランスデューサ要素が使用されており、512個のサンプルが収集されている。その結果、音波発射ごとに256個の要素×512個のサンプル=131072個のサンプルが収集されている。当該生RFデータは従来方式で、従来型のプローブによって出力され、外部システムに送信される。したがって、画像ごとの音波発射が128回になり、取得データサンプルごとに2バイト、かつ撮像フレームレートが80Hzになることを想定すると、これに応じて必要なデータ帯域幅は5GB/sを超えるものになる。
【0089】
図4bは、横軸がRX平面波角度(°)(即ち位相)を示し、縦軸が時間(μs単位)を示す、本開示の実施形態による、平面波のRFデータ行列を概略的に示す図である。合成平面波は、トランスデューサによって収集された原RFデータを(例えば図4aに示すように)それぞれ変換することによって得られてもよい。図4bに示す例示的なRFデータ行列がわずかに屈曲した形状になっているのは、合成平面波の角度によって時間遅延が生じることに起因し得る。そのような角度に依存する伝搬遅延は、図5bに関連して以下に説明するように、本開示の実施形態による画像形成プロセスにおいて補償することができる。
【0090】
図示の例では、60個の平面波が使用されており、512個のサンプルが収集されている。その結果、音波発射ごとに60個の平面波×512個のサンプル=30720個のサンプルが収集されている。当該生RFデータは従来方式で、従来型のプローブによって出力され、外部システムに送信される。したがって、これに応じて必要なデータ帯域幅は、図4aの従来の例と比較して4分の1よりもより狭くなる。
【0091】
図5aは、トランスデューサ要素アレイが受信する信号を用いた、従来の画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。図5bは、本開示の実施形態による、画像形成プロセスの例示的な受信方式を概略的に示す図である。図5a及び図5bの両方において、トランスデューサ要素6は、x軸(即ち、図5a及び図5bの横軸である)に沿ってトランスデューサ要素アレイ状に配置されてもよい。例えば、トランスデューサ要素アレイは、図2に関連して説明したものに対応してもよい。単一のトランスデューサ要素の幅はLであってもよい。隣接する2つのトランスデューサ要素間の距離は、dであってもよい。
【0092】
図5a及び図5bのz軸(即ち、縦軸)は、トランスデューサ要素アレイの主走査方向及び/又は被走査媒体の内部方向を表してもよい。具体的には、図5a及び図5bは、例えばトランスデューサ要素61(及び/又は他の任意のトランスデューサ要素)を使用して、点P(x、z)から後方散乱された波の例示的な受信方式を示してもよい。当該点は、位置x=-D、z=Dにあってもよい。
【0093】
本開示による方法では、トランスデューサ要素によって受信された信号が共に収集かつ処理されて、異なる角度又は位相を有する複数の合成平面波を得ることができる。図5bの例示的な受信方式では、角度θを有する1つの例示的な合成平面波が示されている。
【0094】
複数の合成平面波に基づいてエコー画像が形成されてもよい。当該画像形成プロセス(又はステップ)は、複数の合成波に基づく集束ビーム形成プロセスを含んでもよい。当該画像形成プロセスは、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度を考慮に入れてもよい。したがって、従来の受信方式による受信遅延D/c(図5aに示すような)をD’/c(図5bに示すような)に置き換えてもよく、cは媒体内の波の速度である。伝搬遅延D/cは不変のままであってもよく、即ち、図5a及び図5bの受信方式において同様であってもよい。なお、図5a及び図5bでは、図5bの例示的な合成平面波の角度θの影響を反映するために、距離D/D’のみが概略的に示されている。
【0095】
したがって、画像形成プロセスにおいて、伝搬遅延は、合成波の幾何学的形状、とりわけ合成平面波の角度の関数として補償され得る。結果として、形成された画像の画像品質が、好適にはそれぞれの伝搬遅延によって低下しないものとなる。
【0096】
図6は、本開示の実施形態によるシステム、具体的には本開示の実施形態による超音波プラットフォームの例示的な実施形態を示す図である。プラットフォーム20は、本開示によるシステム1を備えてもよい。本システム及び/又はプラットフォームは、本開示による方法を実行するように構成されてもよい。
【0097】
図6に示すプラットフォーム20は、粘弾性媒体2の超音波画像を提供するように構成されてもよい。圧縮超音波に応答して、媒体2が散乱する。当該媒体は、医療用途の場合、一例としてヒト又は動物の体、例えば患者の体の一部(乳房、肝臓、腹部など)であってもよい。当該システム1は、弾性せん断波の伝搬を観察して、媒体2の弾性の画像を提供するようにさらに構成されている。
【0098】
媒体の画像は、例えば、処理システム4(少なくとも、キーボードなどの入力インターフェース4bと、画面などの出力インターフェース4aとを備える)、又は他の任意の電子中央ユニットによって生成され、これにより、圧縮超音波が媒体2の外面3から媒体2へと送られる。当該波は、媒体2に含まれる散乱粒子5と相互作用し、これらの粒子は圧縮超音波を反射する。粒子5は、媒体2の任意の不均一性によって、とりわけ医療用途となれば、ヒト組織に存在するコラーゲン粒子によって構成され得る(これらの粒子は、超音波画像上に「スペックル」として知られる点を形成する)。
【0099】
媒体2を観察して媒体の画像を生成するために、超音波プローブ1状のシステムを使用し、これを観察媒体2の外面3に対して配置してもよい。当該プローブ、具体的にはそのトランスデューサ要素6は、例えば0.5~100MHzの周波数、好ましくは0.5~15MHzの周波数で、例えば4MHz程度の周波数において、エコー検査で通常使用される形式の圧縮超音波パルスをZ軸に沿って送信する。
【0100】
トランスデューサ要素6は、n個の超音波トランスデューサ要素T1,T2,…,Ti,…,Tnのアレイから構成されてもよく、nは1以上の整数である。
【0101】
当該トランスデューサ要素6は、例えば、Z軸に垂直なX軸に沿って位置合わせされたn=128個又は256個のトランスデューサ要素を含み得る、リニアアレイ状であってもよい。当該トランスデューサ要素はまた、トランスデューサ要素の二次元アレイ(平面又は非平面)であってもよい。
【0102】
トランスデューサ要素T1,T2,…Tnは、前処理部11及び/又は処理システム4によって互いから独立して制御されてもよい。前処理部11及び/又は処理システム4は、少なくとも1つの中央処理部(CPU)及び/又は少なくとも1つのグラフィック処理部(GPU)を備えてもよい。
【0103】
したがって、トランスデューサ要素T1~Tnは、
・「平面」圧縮超音波(即ちこの場合、波面がX平面、Z平面内で直線的である波)、又は媒体2内の観察視野全体を照明する他の任意のタイプの非集束波、例えば、種々のトランスデューサ要素T1~Tnにランダムな音響信号を放射させることによって生成される波のいずれか、
・あるいは媒体2の1つ又は複数の点に集束される圧縮超音波
を選択的に放射する。
【0104】
任意選択的に、いくつかの非集束圧縮波、例えば異なる角度の平面波を使用する合成画像処理技術が適用されてもよい。また、これらの平面波のそれぞれのエコー波を合成することにより、媒体の画像品質を向上させることができる。
【0105】
システム1は、具体的には、トランスデューサ要素6と前処理部11とを備える超音波プローブ状であってもよい。トランスデューサ要素6は信号の集合を収集し、次いで当該集合を前処理部11に送信してもよい。前処理部は、信号の集合を処理して複数の合成波にする。複数の合成波は、伝送インターフェース10(例えば、ケーブル又は無線通信インターフェース)を介して本システムによって、より具体的には前処理部11によって処理システム4に出力される。
【0106】
インターフェース11は、マルチチャネルリンク(例えば、物理チャネル又はマルチプレクサ論理チャネル)を含んでもよい。チャネルの数が、合成波の数と一致することが望ましい。本開示によるデータ削減により、インターフェースの必要なデータ帯域幅は、例えば1GB/s未満であってもよい。
【0107】
前処理部は、1つ又は複数のサブ部(図6には図示せず)、例えば、トランスデューサ要素に接続された送受信スイッチ、送受信スイッチに接続された信号調整部、信号調整部に接続されたRX(即ち、受信)平面処理部のうちの少なくとも1つを備えてもよい。RX(即ち、受信)平面処理部は、例えば上述したように、信号の集合を処理し、かつ/又はこれを複数の合成波に変換するように構成されてもよい。平面処理部は、例えば複数の合成波を得るために、受信信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを実行するように構成されてもよい。このため、平面処理部は、例えば受信平面波(RX平面)ビームフォーマであってもよい。
【0108】
したがって、受信平面波(RX平面)ビームフォーマは、信号調整部と、プローブ/システム1及び処理システム4を接続するバス又はインターフェースとの間の超音波プローブ/システムの従来のアーキテクチャ内に装着されてもよい。次いで、受信集束ビームフォーマは、動的受信集束を確実に行うために入射平面波に合わせて調整されてもよい。例えば、40本の平面波が、発散波又は集束波を近似することが分かっている。従来のアーキテクチャでは、例えば256個のトランスデューサ要素に対応する最大256個の受信チャネルを提案している。本提案のアーキテクチャを使用すると、例えば、本システム(即ち、プローブ)を処理システム4に接続するための40個のチャネル(合成波ごとに1つ)の伝送リンクとなり、同様の取得のために転送されるデータの削減率の点で6倍となり得る。したがって、当該技術を使用して伝送リンク10の容量を減少させるか、又は一定のチャネル容量でフレームレートを上昇させることができる。
【0109】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「~を含む(comprising a)」という用語が、特に明記しない限り「少なくとも1つを含む(comprising at least one)」と同義であると理解されるべきである。さらに、特許請求の範囲を含む本明細書に記載されたあらゆる範囲が、特に明記しない限り、その1つ又は複数の最終値を含むものと理解されるべきである。記載されている要素の特定の値が、当業者に知られている許容製造公差又は産業公差内にあると理解されるべきであり、また「実質的に(substantially)」並びに/又は「およそ(approximately)」及び/若しくは「ほぼ(generally)」という用語を使用することにより、そのような許容公差内にあることを意味していると理解されるべきである。
【0110】
本明細書における本開示が特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態が、本開示の原理及び用途を単に例示したものにすぎないことを理解されたい。
【0111】
本明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲が、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0112】
先行技術として特定された特許文献又は他の任意の事項への本明細書における言及は、当該文献若しくは他の事項が公知であること、又はそれが含む情報が特許請求の範囲のいずれかの優先日における共通の一般知識の一部であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0113】
本開示の態様
(第1態様)
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子の信号の集合を処理する方法であって、前記方法は、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にする処理ステップと、
前記複数の合成波を、複数のチャネルを介して出力する出力ステップと、を含む、
方法。
【0114】
(第2態様)
前記チャネルの数が、前記トランスデューサ要素のセットにおける前記トランスデューサ要素の数よりも少なく、かつ/又は
前記チャネルの数が前記合成波の数と一致しており、かつ/又は
前記複数の合成波のデータレートが、デジタル化されたときの受信された前記信号の集合のデータレートと比較して低減する、第1態様に記載の方法。
【0115】
(第3態様)
前記複数の合成波が、受信された前記信号の集合によって表される後方散乱波を近似するように再結合可能であり、かつ/又は合成可能である、第1又は第2態様に記載の方法。
【0116】
(第4態様)
前記複数の合成波が、
複数の発散波、
複数の平面波、及び
位相の異なる複数の波のうちの少なくとも1つであり、かつ/又は
受信された前記信号の集合が、後方散乱信号の集合である、
第1から第3態様のいずれかに記載の方法。
【0117】
(第5態様)
前記処理ステップの前に、
少なくとも1つのパルスを媒体に送信する送信ステップと、
受信された前記信号の集合であるエコー信号の集合を、前記トランスデューサ要素のセットにより前記媒体から受信する受信ステップと、をさらに含む、
第1から第4態様のいずれかに記載の方法。
【0118】
(第6態様)
受信された前記信号の集合が超音波信号の集合であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が超音波トランスデューサ素子であり、かつ/又は
前記トランスデューサ素子が行列アレイトランスデューサ素子である、第1から第5態様のいずれかに記載の方法。
【0119】
(第7態様)
前記処理ステップが、複数の合成波を得るために受信された前記信号の集合がビーム形成されるビーム形成ステップを含む、第1から第6態様のいずれかに記載の方法。
【0120】
(第8態様)
前記出力ステップの後に、
出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像が形成される、画像形成ステップをさらに含む、第1から第7態様のいずれかに記載の方法。
【0121】
(第9態様)
前記画像形成ステップが、出力された前記複数の合成波に基づいて集束ビーム形成を処理するステップ、かつ/又は
前記合成波の幾何学的形状の関数として、前記エコー画像を形成するステップを含む、
第8態様に記載の方法。
【0122】
(第10態様)
前記複数のチャネルが、物理チャネル及び/又はマルチプレクサチャネルである、第1から第9態様のいずれかに記載の方法。
【0123】
(第11態様)
データ処理部によって実行されると、前記データ処理部に前記方法の第1から第10態様のいずれかに記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラム。
【0124】
(第12態様)
トランスデューサ要素のそれぞれのセットを含むトランスデューサ素子によって受信される信号の集合を処理するシステムであって、前記システムは、
受信された前記信号の集合を処理して複数の合成波にし、かつ前記複数の合成波を複数のチャネルを介して出力するように構成された前処理部を備える、
システム。
【0125】
(第13態様)
前記前処理部が、前記複数のチャネルを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されており、
前記外部処理システムが、出力された前記複数の合成波に基づいてエコー画像を形成する画像形成ステップを実行するように構成されており、かつ/又は
前記前処理部が、メイン処理部とは別個かつ/又は前記メイン処理部に対してリモートである、第12態様に記載のシステム。
【0126】
(第14態様)
前記前処理部及び前記トランスデューサ素子を含むプローブをさらに備える、第12又は第13態様に記載のシステム。
【0127】
(第15態様)
前記プローブが、ケーブル又は無線通信インターフェースを介して外部処理システムに前記複数の合成波を出力するように構成されている、第14態様に記載のシステム。
【外国語明細書】