(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047346
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】板状の擬ベーマイト
(51)【国際特許分類】
C01F 7/36 20060101AFI20230329BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230329BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230329BHJP
【FI】
C01F7/36
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/489
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152555
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126182
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユン ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ク
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェ スク
【テーマコード(参考)】
4G076
5H021
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA10
4G076AA21
4G076AB13
4G076BA12
4G076BA13
4G076BB08
4G076BC01
4G076BC02
4G076BD02
4G076BE11
4G076CA02
4G076CA08
4G076CA26
4G076CA33
4G076DA18
4G076DA30
4G076FA08
5H021BB01
5H021BB13
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE22
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
【課題】本開示は、ナノサイズの薄い板状の擬ベーマイトおよびこれを製造する方法に関する。
【解決手段】本開示の一側面で提供する板状の擬ベーマイトの製造方法は、先ず、塩基性溶液で反応させた後、酸性溶液で再分散する従来の方法とは異なり、ワンポット方式で製造して製造工程を単純化することができ、二次電池用セパレータなどの生産産業において有用に用いられることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルミニウム前駆体水溶液から凝縮反応の副生成物を蒸留によって除去するステップと、
(b)前記副生成物が除去されたアルミニウム前駆体水溶液に有機酸を投入して酸性溶液を製造するステップと、
(c)前記酸性溶液を密閉型反応器で昇温して反応させるステップとを含む、板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項2】
前記酸性溶液は、pHが2~6である、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム前駆体および有機酸のモル数の比が1:0.001~1:1である、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項4】
前記有機酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シユウ酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項5】
前記(c)ステップは、160℃~250℃に昇温して6時間~50時間反応させる、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項6】
前記(c)ステップは、2bar~100barの圧力下で160℃~250℃に昇温し、6時間~25時間反応させる、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項7】
前記板状の擬ベーマイトは、長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが1nm~10nmである、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項8】
前記板状の擬ベーマイトは、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200である、請求項1に記載の板状の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項9】
長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが1nm~10nmである、板状の擬ベーマイト。
【請求項10】
長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200である、請求項9に記載の板状の擬ベーマイト。
【請求項11】
X線回折(XRD)スペクトル上で、2θ=10゜~20゜の範囲の(020)面のピーク半値幅が0.85゜~8.35゜である、請求項9に記載の板状の擬ベーマイト。
【請求項12】
固体アルミニウム核磁気共鳴スペクトル上で、60ppm~75ppmに該当するピーク強度の最大値(IA)に対する5ppm~25ppmに該当するピーク強度の最大値(IB)の比(IB/IA)が20以上である、請求項9に記載の板状の擬ベーマイト。
【請求項13】
板状の擬ベーマイト0.1wt%~30wt%、有機酸0.1wt%~10wt%および残部の溶媒を含み、
前記板状の擬ベーマイトの長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが1nm~10nmである、板状の擬ベーマイト溶液。
【請求項14】
長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200である、請求項13に記載の板状の擬ベーマイト溶液。
【請求項15】
pHが2~6である、請求項13に記載の板状の擬ベーマイト溶液。
【請求項16】
請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の板状の擬ベーマイトを含む組成物を多孔性セパレータの片面または両面にコーティングして形成されたコーティング層を含む、複合セパレータ。
【請求項17】
請求項16に記載の複合セパレータを含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノサイズの薄い板状の擬ベーマイトおよびこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池用セパレータ(Separator)とは、電気自動車、携帯電話、ノート型パソコンなどに使用される二次電池において、正極と負極の接触を遮断して電極間の電気接触を防ぐことで、安定性を高める微細フィルムである。リチウムイオン二次電池用セパレータは、数十ナノメートルサイズの気孔を有しており、このような気孔を介してリチウムイオンが通過し、電池の機能を発揮する。
【0003】
一般的に使用されるポリオレフィン系セパレータは、高温で熱収縮がひどく、物理的に耐久性が弱い。したがって、電池に異常が発生して内部の温度が上昇すると、セパレータの変形が起こりやすく、深刻な場合、電極と電極との接触を充分に防止することができなくなり、ショート(short)による爆発が発生し得る。
【0004】
最近、電気自動車、電動工具、ESS(Energy storage system)などのように、電池の高出力/高容量を要する条件では、電池の異常挙動時に発生する発火および爆発の可能性が既存の電池に比べて数倍~数十倍である。そのため、電池の温度上昇に備えられる高温熱安定性に優れたセパレータの開発が切実に必要となっている。
【0005】
このような安定性の問題を解決するために、既存のポリオレフィン系セパレータの片面や両面に、無機粒子を使用して、無機粒子層を形成した複合セパレータが開発されている。これに使用される無機粒子の一例としては、アルミナ(Alumina)、水酸化アルミニウム(Aluminum Hydroxide)、シリカ(Silica)、酸化バリウム(Barium Oxide)、酸化チタン(Titanium Oxide)、酸化マグネシウム(Magnesium Oxide)、水酸化マグネシウム(Magnesium Hydroxide)、粘土(Clay)、ガラス粉末(Glass powder)、ベーマイト(Boehmite)またはこれらの混合物などがある。このような無機粒子を使用することで、安定性は向上しているが、依然として十分ではなく、安定性の問題に関する研究は依然として必要な状況である。
【0006】
安定性がより高い電池を製造するための方法の一つとして、ナノサイズのバインダーを用いて、前記無機粒子層がポリオレフィン系セパレータの片面や両面にコーティングされる時の接着力をより向上させる方法がある。したがって、ポリオレフィン系セパレータと無機粒子層との接着力を向上させてより安定した電池を製造することができるナノサイズのバインダーに関する研究が必要である。
【0007】
一方、擬ベーマイト(Pseudoboehmite)は、ベーマイトの一種として、AlO(OH)の化学式を有し、水分含量が高く、微細結晶を有するベーマイトである。ナノサイズの擬ベーマイトは、酸性または塩基性水溶液の条件で、アルミナ前駆体から様々な形態を有する結晶を形成することができる。
【0008】
現在知られているところによると、ナノワイヤ(nanowire)またはナノロッド(nanorod)などの形態を有するベーマイトは、酸性条件で生成されると知られており、シート(Sheet)またはプレート(Plate)などの形態を有するベーマイトは、塩基性条件で形成されると知られている。一例として、韓国登録特許KR10-0793052は、板状のベーマイトは、塩基性水溶液または酸と塩基の混合溶液で合成され、針状のベーマイトは、酸性溶液で合成される実施例を開示している。
【0009】
しかし、板状に製造するために塩基性条件で製造する時に、厚さを十分に薄くすることができない問題が依然として存在し、実質的に薄い板状のベーマイトを製造することが困難であるという問題があった。
【0010】
このために、塩基性条件で先ず結晶を形成し、遠心分離または溶媒蒸発などの後処理により酸性溶液で結晶を成長させる方法を採択する必要があるが、工程が複雑であり、製造された厚さも依然として10nm以内の薄膜もしくは5nm以内の薄膜に製造することは困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の一課題は、酸性条件でも著しく薄い厚さを有する板状の擬ベーマイト(Pseudoboehmite)およびこれを製造する方法を提供することである。
【0012】
本開示の他の一課題は、酸性条件で、一例として1nm~10nm、他の一例として1nm~5nmの非常に薄い厚さを有する板状の擬ベーマイトおよびこれを製造する方法を提供することである。
【0013】
本開示のさらに他の一課題は、酸性条件で、一例として1nm~10nm、他の一例として1nm~5nmの非常に薄い厚さを有し、且つ長径および短径が5nm~200nmであることができ、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5以上、例えば、5~200の範囲を有する板状の擬ベーマイトおよびこれを製造する方法を提供することである。
【0014】
本開示のさらに他の一課題は、商業化に適するワンポット方式による板状の擬ベーマイトの製造方法およびその生成物として板状の擬ベーマイトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本開示は、針状およびロッド状が生成されると知られている酸性条件でも、より薄い厚さを有する板状の擬ベーマイト(Pseudoboehmite)を製造する方法を提供することができる。
【0016】
本開示の一例は、(a)アルミニウム前駆体水溶液から凝縮反応の副生成物を蒸留によって除去するステップと、(b)前記副生成物が除去されたアルミニウム前駆体水溶液に有機酸を投入して酸性溶液を製造するステップと、(c)前記酸性溶液を密閉型反応器で昇温して反応させるステップとを含む、板状の擬ベーマイトの製造方法を提供することができる。
【0017】
本開示の一例として、前記酸性溶液は、pHが2~6であることができる。
【0018】
本開示の一例として、前記有機酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シユウ酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される1種または2種以上の混合物であることができる。
【0019】
本開示の一例として、前記有機酸は、酢酸および乳酸から選択される1種または2種の有機酸を使用する時に、より薄い板状の擬ベーマイトを提供することができる。
【0020】
本開示の一例として、前記アルミニウム前駆体および有機酸のモル数の比が1:0.001~1:1であることができる。
【0021】
本開示の一例として、前記(c)ステップは、160℃~250℃に昇温して6時間~50時間、または8時間~50時間反応させることができる。
【0022】
本開示の一例として、前記(c)ステップは、2bar~100barの圧力下で160℃~250℃に昇温し、6時間~25時間反応させることができる。
【0023】
本開示において、圧力を高めるほど、板状の擬ベーマイトを製造する時間を短縮することができる。
【0024】
すなわち、本開示は、酸性水溶液で温度と圧力および時間を調節することで、従来、針状やロッド状に製造される擬ベーマイトを板状の擬ベーマイト形状に製造することができる。
【0025】
本開示の一例として、前記板状の擬ベーマイトは、長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが1nm~10nmであることができる。
【0026】
本開示の一例として、前記板状の擬ベーマイトは、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200であることができる。
【0027】
また、本開示の他の一例は、長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが、一例として、1nm~10nmである板状の擬ベーマイトを提供することができる。
【0028】
本開示の一例として、前記長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200の範囲である擬ベーマイトを提供することができる。
【0029】
本開示の一例として、前記板状の擬ベーマイトは、X線回折(XRD)スペクトル上で、2θ=10゜~20゜の範囲の(020)面のピーク半値幅が0.85゜以上であることができる。
【0030】
本開示の一例として、前記板状の擬ベーマイトは、固体アルミニウム核磁気共鳴スペクトル上で、60ppm~75ppmに該当するピーク強度の最大値(IA)に対する5ppm~25ppmに該当するピーク強度の最大値(IB)の比(IB/IA)が20以上であることができる。
【0031】
本開示のさらに他の一例は、板状の擬ベーマイト0.1wt%~30wt%、有機酸0.1wt%~10wt%および残部の溶媒を含み、前記擬ベーマイトの長径および短径が5nm~200nmであり、厚さが1nm~10nmである板状の擬ベーマイト溶液を提供することができる。
【0032】
本開示の一例として、前記擬ベーマイトの長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200であることができる。
【0033】
本開示の一例として、前記溶液のpHは2~6であることができる。
【0034】
本開示のさらに他の一例は、前記板状の擬ベーマイトを含む組成物を多孔性セパレータの片面または両面にコーティングして形成されたコーティング層を含む複合セパレータを提供することができる。
【0035】
本開示のさらに他の一例は、前記複合セパレータを含む二次電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
本開示の一側面で提供する板状の擬ベーマイト(Pseudoboehmite)の製造方法は、著しく薄い板状の擬ベーマイトを製造することができる。
【0037】
本開示の他の一側面で提供する板状の擬ベーマイトの製造方法は、先ず、塩基性溶液で反応させた後、酸性溶液で再分散して結晶化する従来の方法とは異なり、ワンポット方式で製造することで、製造工程を単純化することができる。
【0038】
本開示の他の一側面で提供する二次電池用複合セパレータは、前記板状の擬ベーマイトを用いて形成されたコーティング層を含むことで、熱安定性が向上した二次電池を製造するのに用いられることができる。
【0039】
本開示において、圧力を高めるほど、板状の擬ベーマイトを製造する時間を短縮することができる。
【0040】
すなわち、本開示は、酸性水溶液で温度と圧力および時間を調節することで、従来、酸性溶液で針状やロッド状にのみ製造されるものと知られている手段によっても板状の擬ベーマイトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施例1で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図2】実施例5で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図3】比較例1で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図4】比較例2で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図5】比較例3で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図6】比較例4で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図7】比較例5で製造された擬ベーマイトの透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【
図8】実施例1で製造された擬ベーマイトのX-線回折スペクトルを示す図である。
【
図9】実施例1で製造された擬ベーマイトの固体アルミニウム核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示で使用される用語は、他に定義されない限り、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。また、本開示で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本開示を制限することを意図しない。
【0043】
本開示の明細書および添付の特許請求の範囲にて使用される単数形態は、文脈で特別な脂示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0044】
本開示を記述する明細書の全般にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特別に反対意味の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0045】
本開示において、擬ベーマイトの「長径」とは、擬ベーマイトの最も長い長さを意味し、「短径」とは、前記長径の軸と直交する最も長い長さを意味する。
【0046】
本開示において、長径、短径および厚さは、5個の透過電子顕微鏡(TEM、JEOL Ltd、JEM-2100f)イメージでそれぞれ20個の粒子を任意に選択して測定した値の平均から求める。
【0047】
本開示において、「板状」とは、擬ベーマイト粒子が板状形態であることを意味し、これは、擬ベーマイトの厚さが平面部分の長径または短径より小さいことを意味する。本開示の一実施形態による擬ベーマイトは、著しく薄い厚さを有することから、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200であることができる。
【0048】
本開示において、「ロッド(rod)状」とは、擬ベーマイトの長径が短径より大きい形態を有するものであり、長径/短径の比が5以上または10以上であることができる。「針(needle)状」とは、端面が尖ったような形態を有するものであり、長径/短径の比がロッド状より大きいことができる。
【0049】
本開示の発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸性条件で針状またはロッド状ではなく、板状の形態を有するとともに、その厚さが著しく薄い擬ベーマイトを製造することに成功した。
【0050】
また、本開示の発明者らは、塩基性条件で結晶化するステップの後に、後処理として酸城条件で再分散するステップを行わず、ワンポット方式で板状の擬ベーマイトを製造することができることを見出し、本開示を完成するに至った。
【0051】
以下、本開示について詳細に説明する。
【0052】
本開示の発明者らは、酸性水溶液で温度と圧力および時間を調節することで、従来、酸性溶液で針状やロッド状にのみ製造されると知られている製造方法でも板状の擬ベーマイト(Pseudoboehmite)を製造することができることを初めて知り、本開示を完成した。
【0053】
上記目的を達成するための本開示の一例は、(a)アルミニウム前駆体水溶液から凝縮反応の副生成物を蒸留によって除去するステップと、(b)前記副生成物が除去されたアルミニウム前駆体水溶液に有機酸を投入して酸性溶液を製造するステップと、(c)前記酸性溶液を密閉型反応器で昇温して反応させるステップとを含む、板状の擬ベーマイトの製造方法を提供する。
【0054】
以下、前記製造方法の各ステップについて説明する。
【0055】
先ず、アルミニウム前駆体水溶液の凝縮反応副生成物(例えば、アルミニウム前駆体がアルミニウムイソプロポキシドである場合、イソプロピルアルコールを意味する)を蒸留によって除去する(a)ステップについて具体的に説明する。
【0056】
前記アルミニウム前駆体は、アルミニウム含有物質を意味し、例えば、アルミニウム酢酸塩、アルミニウム硝酸塩、アルミニウム硫酸塩、アルミニウムハライド、アルミニウム硫化物、アルミニウム水酸化物、アルミニウム酸化物、アルミニウムオキシ水酸化物、アルミニウムアルコキシドまたはこれらの混合物であることができる。前記アルミニウム前駆体の例をより具体的に挙げると、Al2O3、Al(OH)3、Al2(SO4)3、AlCl3、Al(O-i-Pr)3、Al(NO3)3、AlF3またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。特に、アルミニウムアルコキシドは、加水分解反応がよりよく起こり、副生成物の除去が容易であることを特徴とする。具体的には、2~5炭素数のアルコキシ基を有するアルミニウムアルコキシドがアルミニウム前駆体として用いられることができ、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウムsec-ブトキシドなどが挙げられる。
【0057】
一具現例において、前記蒸留は、上述の凝縮反応副生成物を除去することができる限り、実験条件を適宜変更することができ、例えば、前記アルミニウム前駆体水溶液を85℃~120℃または80℃~100℃の温度で加熱して行われることができる。具体的には、前記蒸留は、減圧蒸留であることができ、より具体的には、800mBar以下、700mBar以下、600mBar以下または300mBar以上に減圧して行われることができる。例えば、300mBar~800mBar、300mBar~700mBarまたは300mBar~600mBarに減圧しながら行われることができる。
【0058】
本開示の一実施形態として前記副生成物を除去するステップは、例えば、アルミニウムイソプロポキシド水溶液を95℃で加熱し、500mBarに減圧して、溶液内で凝縮反応の副生成物であるイソプロピルアルコールを除去することができる。
【0059】
前記副生成物を加熱しながら蒸留して副生成物を除去するステップで有機酸が投入される場合、原因は分からないが、板状の形態の擬ベーマイトが生成されず、針状またはロッド状の擬ベーマイトが生成されるため、副生成物の除去ステップで有機酸が投入されないことが、本開示の一つの特徴になることができる。
【0060】
前記副生成物が除去された反応溶液に有機酸を投入し、密閉型反応器(オートクレーブ)に投入して、160℃以上、6時間以上の反応時間で反応させることで、板状の擬ベーマイトを製造することができる。
【0061】
前記温度、圧力および反応条件は、本開示の目的である板状の擬ベーマイトが生成される限り、変更可能である。
【0062】
以下、前記副生成物が除去されたアルミニウム前駆体水溶液に有機酸を投入して酸性溶液を製造する(b)ステップについてより具体的に説明する。
【0063】
前記酸性溶液のpHは、特に限定されないが、2~6、3~5または3.3~4.6であることができる。
【0064】
本開示の板状の擬ベーマイトを製造するために、有機酸を使用して前記範囲のpHを有する溶液を使用し、本開示の加圧(常圧を含む)および加温条件で合成することで、酸性条件でも、針状またはロッド状ではなく、板状の形態の擬ベーマイトが製造されることができる。それだけでなく、製造された擬ベーマイトは、1nm~10nm、または1nm~5nmの非常に薄い厚さを有することができる。
【0065】
また、製造された擬ベーマイトは、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200であり、長径/短径の比が5以上であることができる。例えば、長径/短径の比が10以上であることができる。
【0066】
本開示の目的を達成するために、前記アルミニウム前駆体および有機酸のモル数の比は、必ずしもこれに制限されるものではないが、例えば、1:0.001~1:1、具体的には1:0.01~1:1、さらに具体的には1:0.05~1:0.5であることができる。
【0067】
前記有機酸は、板状の擬ベーマイトを製造するためにpHを調節する役割をするものであり、本開示の目的を達成することができる限り、制限されないが、酢酸(Acetic acid)、プロピオン酸(Propionic acid)、酪酸(Butyric acid)、乳酸(Lactic acid)、シユウ酸(Oxalic acid)、リンゴ酸(Malic acid)、酒石酸(Tartaric Acid)およびクエン酸(Citric acid)のいずれか一つまたは二つ以上の混合物であることができる。
【0068】
前記有機酸は、酢酸または乳酸から選択されるいずれか一つ以上の有機酸を使用する場合、より薄い板状のものを得ることができる。
【0069】
以下、前記酸性溶液を密閉型反応器で昇温して反応させる(c)ステップについてより具体的に説明する。
【0070】
前記(c)ステップは、前記酸性溶液を密閉型反応器で昇温して反応させるステップであり、前記酸性溶液を密閉型反応器で160℃以上の温度で常圧または加圧して6時間以上反応させるステップであることができる。
【0071】
本開示の一実施形態において、前記昇温する反応温度は、160℃以上であることができ、例えば、160℃~250℃、165℃~250℃、または170℃~250℃であることができる。
【0072】
前記昇温して反応させる反応時間は、6時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、具体的には15時間以上であることができ、50時間以下であることができ、これに制限されるものではないが、例えば、6時間~50時間または8時間~50時間であることができる。
【0073】
本開示の一例において、前記反応時間を5時間または5時間より短くして反応する場合、原因は分からないが、針状およびロッド状の擬ベーマイトが生成されて本開示の板状のものを得ることができなかった。
【0074】
このような理由は、明確ではないが、前記酸性溶液を160℃未満の温度で結晶化する場合、結晶化がまともに行われず、結晶自体が形成されないか、針状とロッド状が混合された形態であることもあり、針(needle)状またはロッド(rod)状の粒子が生成されると考えられる。前記温度として250℃超の温度で結晶化する場合、過剰な結晶成長によって結晶サイズが大きくなるため、板状の形態が無くなり得、また、結晶サイズが大きくなるため、セパレータの表面にコーティングする場合、コーティング性能が劣り得、また、超薄膜状のコーティング層が形成されず、好ましくない。
【0075】
すなわち、前記酸性溶液を上述の温度範囲で反応させる時に、6時間未満で反応させる場合、板状の擬ベーマイトが製造されるのに十分な時間ではなく、板状ではなく針状またはロッド状の粒子が生成されることがある。したがって、前記温度範囲で昇温して6時間以上、具体的には8時間以上の反応を行うことが、本開示で目的とする板状の擬ベーマイトを製造することができ、好ましい。
【0076】
また、本開示の一実施形態において、密閉型反応器で反応させる時の反応圧力は、前記温度範囲で反応時間を充分に長くする場合、常圧で反応しても板状の擬ベーマイトが生成されることができるが、反応時間を短縮することに関係なく板状の形態を得るためには、昇圧することも可能である。しかし、加圧および前記反応温度でも安定的に優れた形態の板状の擬ベーマイトを製造するためには、密閉型反応器で、2bar~100barの圧力下で、160℃~250℃に昇温し、6時間以上の反応を行ったときに板状の擬ベーマイトが製造されることができ、前記条件を満たすことができない場合、板状ではなく針状またはロッド状の擬ベーマイトが生成されることがあり、好ましくない。
【0077】
下記条件は、本開示の目的が達成される限り、実験環境に応じて適宜変更可能であることは言うまでもなく、例えば、前記反応圧力は、2bar~50bar、3bar~25barであることができ、常圧下で反応する場合の反応時間は、6時間以上、8時間以上、または10時間以上であることができ、例えば、6時間~25時間であることができる。
【0078】
また、圧力を加える方法は、一例として、閉鎖された加圧容器で温度を昇温して溶媒の蒸気圧に上げることもでき、空気または不活性気体を投入して圧力を調節することができる。
【0079】
以下、前記製造方法により製造される板状の擬ベーマイトについて具体的に説明する。
【0080】
前記板状の擬ベーマイトは、必ずしもこれに制限されるものではないが、例えば、長径および短径が5nm~200nm、5nm~100nm、または5nm~50nmであることができ、また、長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200、5~100、または5~50であることができる。長径と短径の長さは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、長径/厚さの比と短径/厚さの比も互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0081】
また、板状の擬ベーマイトの厚さは、10nm以下、5nm以下、4nm以下、2nm以下、0.1nm以上、または1nm以上であることができる。例えば、1nm~10nm、1nm~5nm、1nm~4nmまたは1nm~2nmであることができる。
【0082】
本開示の他の一例は、長径および短径が5nm~200nm、5nm~100nm、または5nm~50nmであることができ、厚さが1nm~10nmまたは1nm~5nmであることができる板状の擬ベーマイトを提供することができる。
【0083】
前記擬ベーマイトの長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200、5~100、または5~50であることができる
【0084】
また、前記擬ベーマイトは、X線回折(XRD)スペクトル上で、2θ=10゜~20゜の範囲の(020)面のピーク半値幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)が、0.85゜以上、2.0゜以上、3.0゜以上、4.0゜以上、8.35゜以下、7.0゜以下、または5.0゜以下であることができる。
【0085】
前記ピーク半値幅は、例えば、0.85゜~8.35゜、0.85゜~7.0゜、2.0゜~7.0゜、3.0゜~7.0゜、4.0゜~7.0゜または4.0゜~5.0゜であることができ、下記式1は、シェラーの式であり、これより結晶のサイズを計算することができる。
【0086】
[式1]
L=0.9*λ/(β*cosθ)
【0087】
(L=結晶サイズ、
λ=Cu Kα波長、
β=半値幅(Full Width at Half Maximum)、
θ=半値幅の中心回折角度(bragg angle))
【0088】
2θ=10゜~20゜の範囲の(020)面のピーク半値幅が0.85゜以上である場合には、10nm以下のサイズを有することができ、8.35゜以下である場合には、1nm以上のサイズを有することができると計算されることができる。
【0089】
前記擬ベーマイトは、X線回折(XRD)スペクトル上で、2θ=10゜~20゜の範囲の(020)面のピーク半値幅が0.85゜以上を示すことで、10nm以下の厚さを有する擬ベーマイトであることを確認することができる。
【0090】
また、前記板状の擬ベーマイトは、固体アルミニウム核磁気共鳴スペクトル上で、60ppm~75ppmに該当するピーク強度の最大値に対する5ppm~25ppmに該当するピーク強度の最大値の比が20以上であることができる。
【0091】
化学的移動値5ppm~25ppmに該当するピークは、擬ベーマイト構造のアルミニウム八面体(Oh、Octahedral)によるものであり、化学的移動値60ppm~75ppmに該当するピークは、不純物であるアルミニウム四面体(Td、Tetrahedral)によるものである。本開示による擬ベーマイトは、60ppm~75ppmに該当するピーク強度の最大値に対する5ppm~25ppmに該当するピーク強度の最大値の比が20以上または30以上であることで、不純物が少なく、純度が高い擬ベーマイトイムであることが認められる。前記比が大きいほど、純度が高い粒子であることを示すため、上限は特に制限されない。
【0092】
本開示のさらに他の一例は、板状の擬ベーマイト0.1wt%~30wt%、有機酸0.1wt%~10wt%および残部の溶媒を含み、前記擬ベーマイトの長径および短径が5nm~200nm、5nm~100nm、または5nm~50nmであることができ、厚さが1nm~10nmまたは1nm~5nmであることができる板状の擬ベーマイト溶液を提供することができる。
【0093】
前記擬ベーマイトの長径/厚さの比および短径/厚さの比が5~200、5~100、または5~50であることができる擬ベーマイト溶液を提供することができる。
【0094】
前記擬ベーマイト溶液は、擬ベーマイト水溶液であることができる。
【0095】
前記溶媒は、上述のアルミニウム前駆体を溶解することができる限り、制限されないが、水であることができ、水の代わりに有機溶媒を使用することもでき、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒドおよびこれらの混合物などから選択されるいずれか一つ以上であることができる。
【0096】
具体的には、前記板状の擬ベーマイトは、全体溶液の重量に対して0.1wt%~30wt%、0.5wt%~20wt%、または1wt%~10wt%の範囲で含まれることができ、前記有機酸は全体溶液の重量に対して0.1wt%~10wt%、0.2wt%~8wt%、または0.4wt%~5wt%の範囲で含まれることができ、残りは、上述のような溶媒として含まれることができる。
【0097】
前記溶液のpHは、2~6または3~5であることができる。
【0098】
本開示のさらに他の一例は、前記板状の擬ベーマイトを含む組成物を多孔性セパレータの片面または両面にコーティングして形成されたコーティング層を含む複合セパレータを提供することができる。前記コーティング層は、擬ベーマイト粒子と粒子が互いに隣接して積層されて、粒子と粒子との間の空間が形成される粒子層を意味し得る。
【0099】
前記コーティング層に前記板状の擬ベーマイトを含むことで、前記多孔性セパレータとコーティング層との接着力に優れた複合セパレータが製造されることができるため、前記複合セパレータは、熱安定性が向上した二次電池を製造するために使用されることができる。
【0100】
前記板状の擬ベーマイトは、上述のことを適用することができ、前記多孔性セパレータは、二次電池のセパレータとして通常使用されるものであれば、制限されない。
【0101】
一例としては、織布、不織布および多孔性フィルムなどであることができる。前記多孔性セパレータの素材は、制限されないが、一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンおよびこれらの共重合体などからなる群から選択されるいずれか一つまたは2種以上の混合物で形成されることができる。
【0102】
前記多孔性セパレータの厚さは、制限されず、通常、当業界において使用される範囲である1μm~100μm、具体的には5μm~50μm、さらに具体的には6μm~30μmであることができる。
【0103】
前記コーティング方法は、制限されるものではなく、具体的には、例えば、バーコーティング、ディップコーティング、フローコーティング(flow coating)、ナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの通常のコーティング方法であることができる。
【0104】
本開示のさらに他の一例は、前記複合セパレータを含む二次電池を提供することができる。前記二次電池は、例えば、リチウム二次電池、ナトリウム二次電池またはマグネシウム二次電池であることができる。リチウム二次電池は、その形態が特別に制限されず、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウム硫黄電池などであることができる。
【0105】
前記複合セパレータを含む二次電池は、上述の板状の擬ベーマイトを使用したコーティング層を有することで、前記多孔性セパレータとコーティング層との接着力を向上させて、熱安定性に優れるという利点を有する。
【0106】
以下、本開示の実施例および比較例を下記に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および比較例は、本開示の一部を例示するものであって、本開示がこれに限定されるものではない。
【0107】
以下で測定される長径、短径および厚さは、5個の透過電子顕微鏡(TEM、JEOL Ltd、JEM-2100F)イメージからそれぞれ20個の粒子を任意に選択して測定した値の平均から求めた。
【0108】
<実施例1>
アルミニウムイソプロポキシド(Aluminiumisopropoxide)306gを水1600gに溶解してアルミニウム前駆体溶液を製造する。前記アルミニウム前駆体溶液を95℃で加熱し、500mBarに減圧して、溶液内の凝縮反応の副生成物であるイソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)を除去する。イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液に乳酸(Lactic acid)10gを入れ、pHを4.5に調整する。pH4.5のアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器で1分当たり5℃で昇温させて反応温度を170℃に設定した後、24時間撹拌しながら反応させる。反応が終了した溶液を自然冷却する。
【0109】
前記で製造した擬ベーマイトに対して、TEM、X線回折法および核磁気共鳴法を用いて、形態および純度を分析した。
【0110】
先ず、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)で分析した結果を
図1に図示した。結果、長径および短径の長さは、5個の透過電子顕微鏡イメージからそれぞれ20個の粒子を任意に選択して測定した値の平均から求めた。長径および短径は、それぞれ20nmおよび10nmであり、長方形の板状(Sheet)の形態であることを確認し、板状の厚さは2nm以下を示す。
【0111】
次に、前記製造した擬ベーマイトをX-線回折法で分析し、
図8に図示した。Cu Kα波長を使用し、40kV、30mAの分析条件で、ステップサイズを0.02626゜として、10゜~80゜まで連続スキャンで測定した。X-線回折スペクトルの2θ=10゜~80゜の範囲の(020)、(200)、(002)面のピーク半値幅(FWHM:Full Width Half Maximum)をシェラーの式(Scherrer equation)に代入して結晶サイズを計算し、その結果を表1に示した。表1の結果から分かるように、実施例1で製造された擬ベーマイトは、板状構造であることを確認することができる。
【0112】
シェラーの式および各項目は、以下のとおりである。
【0113】
L=0.9*λ/(β*cosθ)
L=結晶サイズ
λ=Cu Kα波長
β=半値幅(Full Width at Half Maximum)
θ=半値幅の中心回折角度(bragg angle)
【0114】
【0115】
最後に、前記製造された擬ベーマイトの固体アルミニウム核磁気共鳴分析を行い、分析スペクトルを
図9に図示した。測定試料に対して、600MHzで4mm回転子(rotor)を使用し、12KHzスピニング(spinning)条件でパルス(Pulse)は0.5μsを、遅延時間(delay time)は5秒に設定した。化学的移動値5ppm~25ppmに該当するピークは、擬ベーマイト構造のアルミニウム八面体(Oh、Octahedral)によるものであり、化学的移動値60ppm~75ppmに該当するピークは、不純物であるアルミニウム四面体(Td、Tetrahedral)によるものであり、実施例1で製造された擬ベーマイトは、アルミニウム八面体に該当するピークのみ検出されて高い純度で製造されたことを確認することができた。
【0116】
<実施例2>
前記実施例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記pH4.5のアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器でN2で5Barを満たした後、1分当たり5℃で昇温させて反応温度を180℃に設定した後、6時間撹拌しながら反応させた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0117】
実施例1のような方式で長径と短径を測定した時に、長径および短径は、それぞれ20nmおよび10nmであり、長方形の板(Sheet)状であることを確認し、板状の厚さは2nm以下を示す。
【0118】
<実施例3>
前記実施例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記pH4.5のアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器でN2で10barを満たした後、1分当たり5℃で昇温させて反応温度を170℃に設定した後、6時間撹拌しながら反応させた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0119】
実施例1のような方式で長径と短径を測定した時に、長径および短径は、それぞれ20nmおよび10nmであり、長方形の板(Sheet)状であることを確認し、板状の厚さは2nm以下を示す。
【0120】
<実施例4>
前記実施例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、反応温度を200℃に設定した後、6時間撹拌しながら反応させた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0121】
実施例1のような方式で長径と短径を測定した時に、長径および短径は、それぞれ30nmおよび20nmであり、長方形の板(Sheet)状であることを確認し、板状の厚さは2nm以下を示す。
【0122】
<実施例5>
前記実施例3のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、乳酸の代わりに酢酸(Acetic Acid)28gを入れ、pHを3.4に調整する以外は、実施例3と同様に製造した。
【0123】
実施例1のような方式で長径と短径を測定し、
図2に図示した。長径および短径は、それぞれ60nmおよび20nmであり、長方形の板(Sheet)状であることを確認し、板状の厚さは4nm以下を示す。
【0124】
<比較例1>
前記実施例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液に酢酸(Acetic acid)28gを入れ、pHを3.3に調整し、且つpH3.3のアルミニウム前駆体溶液を1分当たり5℃で昇温させて反応温度を150℃に設定した後、6時間撹拌しながら反応させた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0125】
比較例1で製造された生成物は、長径および短径がそれぞれ50nm~70nmおよび6nm~10nmであるロッド(rod)状であることを確認し、
図3からこれを確認することができる。
【0126】
<比較例2>
前記実施例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記pH4.5のアルミニウム前駆体溶液を1分当たり5℃で昇温させて反応温度を150℃に設定した後、6時間撹拌しながら反応した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0127】
比較例2で製造された生成物は長径および短径がそれぞれ30nm~50nmおよび5nm以下である、針(Needle)が集まっているバンドル(Bundle)状であることを確認し、
図4からこれを確認することができる。
【0128】
<比較例3>
前記比較例2のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液にクエン酸(Citric acid)0.9gを入れ、pHを4.5に調整した以外は、比較例2と同様に製造した。
【0129】
比較例3で製造された生成物は、長径および短径は、それぞれ30nm~50nmおよび5nm以下である、ニードル(Needle)であることを確認し、
図5からこれを確認することができる。
【0130】
<比較例4>
前記比較例2のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液にシユウ酸(Oxalic acid)2.3gを入れ、pHを2.9に調整した以外は、比較例2と同様に製造した。
【0131】
比較例4で製造された生成物は、長径および短径は、それぞれ30nm~50nmおよび5nm以下である、ニードル(Needle)であることを確認し、
図6からこれを確認することができる。
【0132】
<比較例5>
アルミニウムナイトレート(Aluminium nitrate)35.45gを水141gに溶解してアルミニウム前駆体溶液を製造する。アルミニウム前駆体溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)を投入しながらpHを12に調整する。pH12のアルミニウム前駆体溶液を室温で1時間撹拌する。初期のゲル(Gel)状態から白色の濁った溶液になると、反応器に移す。反応器で1分当たり5℃で昇温させて反応温度を170℃に設定した後、48時間撹拌して反応させる。反応が終了した溶液を自然冷却する。
【0133】
実施例1のような方式で長径と短径を測定した時に、長径および短径は、それぞれ50nmおよび30nmであり、厚みのある板(Sheet)状であることを確認し、板状の厚さは10nm以上を示し、これは
図7に図示した。
【0134】
<比較例6>
酢酸(Acetic acid)28gおよび水1600gを75℃で撹拌した。前記溶液にアルミニウムイソプロポキシド(Aluminium isopropoxide)306gを溶解してアルミニウム前駆体溶液を製造する。前記酢酸が含まれたアルミニウム前駆体溶液を95℃で加熱して500mBarに減圧して、溶液内の凝縮反応の副生成物であるイソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)を除去する。前記アルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器で1分当たり5℃で昇温させて反応温度を180℃に設定した後、7時間撹拌して反応させる。反応が終了した溶液を自然冷却する。
【0135】
比較例6で製造された生成物は、長径および短径がそれぞれ50nm~70nmおよび6nm~10nmである、ロッド(rod)状であることを確認した。
【0136】
<比較例7>
前記比較例1のような方法で擬ベーマイトを製造し、この際、前記pH3.3のアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器で1分当たり5℃で昇温させて反応温度を180℃に設定した後、5時間撹拌して反応させた以外は、比較例1と同様に製造した。
【0137】
比較例7で製造された生成物は、長径および短径がそれぞれ50nm~70nmおよび6nm~10nmである、ロッド(rod)状であることを確認した。
【0138】
実施例1~実施例4において、有機酸として乳酸を使用して170℃~200℃で結晶化して板状の擬ベーマイトが製造されているが、比較例2では、乳酸を使用しているものの、150℃で結晶化して針状の形態の擬ベーマイトが製造された。
【0139】
また、実施例5において、有機酸として酢酸を使用し、170℃で結晶化して板状の擬ベーマイトが製造されているが、比較例1では、酢酸を使用しているものの、150℃で結晶化してロッド状の形態の擬ベーマイトが製造された。
【0140】
さらに、実施例により製造された擬ベーマイトは、その厚さが4nm以下または2nm以下であり、一実施形態による板状の擬ベーマイトの製造方法によると、著しく厚さが薄い擬ベーマイトが製造されることができることを確認した。
【0141】
また、比較例6では、有機酸を入れ、アルミニウム前駆体溶液を加水分解して副生成物を除去する工程を有する場合、180℃で7時間反応させたにもかかわらず、ロッド状のものが得られることが分かり、有機酸を投入した状態で副生成物を除去する工程では、本開示の目的を達成することができないことが分かる。
【0142】
このような実験結果により、有機酸がない状態でアルミニウム前駆体を加水分解し、副生成物を除去するステップおよび以降、有機酸を投入してpHを調整し、加温加圧および反応時間を充分に付与することが、従来、針状またはロッド状にのみ生成される酸性水溶液を使用するにもかかわらず、板状として得られることが分かる。