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特開2023-47360Oリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047360
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】Oリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20230330BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F16J15/00 C
B23P19/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156222
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000162087
【氏名又は名称】共栄制御機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】是兼 輝雄
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BB13
3C030BC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Oリングをハウジング溝に装着する際、簡素な構造でありながら容易な作業又は単純な動作により且つ傷を付けることが少ないOリング装着を可能とするOリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法を提供する。
【解決手段】Oリング12を押し込む棒状の押込側棒状部17と、押込側棒状部によって押し込まれるOリングをロッド穴14の内部において受け止めるための、棒状で且つ一端にその端面である受止側端面22の中央に近いほど膨出する受止側膨出部23を有する受止側棒状部21とを備え、受止側棒状部はロッド穴の他方の開口から挿入され、受止側端面が、ハウジング溝の一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するOリング装着装置であって、
前記Oリングを押し込む棒状の押込側棒状部と、
前記ハウジングを保持可能であるハウジング保持部と、
前記押込側棒状部によって押し込まれる前記Oリングを前記ロッド穴の内部において受け止めるための、棒状で且つ一端にその端面である受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有する受止側棒状部とを備え、
前記受止側棒状部は、前記ハウジングが前記ハウジング保持部によって保持される状態において前記ロッド穴の他方の開口から挿入され、前記受止側端面が、前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持されるように構成される
ことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項2】
前記受止側膨出部は凸状且つ部分球面を形成する受止側凸状膨出部を有する
ことを特徴とする請求項1の何れかに記載のOリング装着装置。
【請求項3】
貫通孔が穿設される延長具をさらに備え、
前記延長具を、前記ハウジングが前記ハウジング保持部によって保持される状態において前記貫通孔が前記ロッド穴の前記一方の開口と連通するように支持可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のOリング装着装置。
【請求項4】
前記貫通孔が、その中心線を挟んで対向して配置されるとともに前記中心線から離れる向きに凹設される一対のガイド溝を有し、
前記各ガイド溝は、前記中心線方向の一方側における深さが、前記中心線方向の他方側における深さよりも小さく、
前記延長具は、前記一方側が前記ハウジングと隣り合うように支持される
ことを特徴とする請求項3に記載のOリング装着装置。
【請求項5】
前記受止側膨出部は前記受止側凸状膨出部の周囲に、円環状の凹状且つ部分球面を形成する受止側円環凹状膨出部を有する
ことを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載のOリング装着装置。
【請求項6】
前記受止側棒状部は少なくとも前記受止側端面を含む前記一端部分がポリテトラフルオロエチレンにより形成される
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のOリング装着装置。
【請求項7】
前記押込側棒状部と、前記押込側棒状部を保持するとともに前記ロッド穴の孔方向に往復動可能な押込側棒状部駆動手段とをさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載のOリング装着装置。
【請求項8】
前記押込側棒状部の先端に、その端面である押込側端面の中央近傍が突出する押込側突出部を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のOリング装着装置。
【請求項9】
棒状の押込側棒状部を用いて、Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで、前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するためのOリング装着構造であって、
ハウジング保持部が前記ハウジングを保持し、受止側棒状部が、その一端の端面である受止側端面が前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持され、
前記受止側端面は、前記押込側棒状部によって押し込まれる前記Oリングを前記ロッド穴の内部において受け止めるように構成され、かつ、前記受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有し、
前記Oリングは、前記一方の開口から押し込まれてその進む向きの先端が前記受止側膨出部に当接することにより、前記先端が前記受止側膨出部を避けつつ前記受止側膨出部の周辺を滑って前記Oリング導入路上を移動して前記ハウジング溝に到達する
ことを特徴とするOリング装着構造。
【請求項10】
Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するOリング装着方法であって、
前記Oリングと、前記ハウジングと、ハウジング保持部と、棒状で且つ前記Oリングを前記一方の開口に押し込むように構成される押込側棒状部と、棒状で、一端にその端面である受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有する受止側棒状部とを準備するとともに、前記ハウジング保持部によって前記ハウジングを保持する準備工程と、
前記受止側棒状部を、前記一端側が前記ロッド穴の他方の開口から挿入するとともに、前記受止側端面が前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持する受止側棒状部支持工程と、
前記受止側棒状部が前記支持される状態において、前記押込側棒状部の先端によって前記Oリングを押し込むように、前記先端を前記ロッド穴の内部に進入させる押込側棒状部進入工程とを含む
ことを特徴とするOリング装着方法。
【請求項11】
前記押込側棒状部進入工程の前に、貫通孔が穿設される延長具を、前記貫通孔が前記ロッド穴の前記一方の開口と連通するように支持する延長具支持工程をさらに含み、
前記準備工程は前記延長具をさらに準備する工程を含む
ことを特徴とする請求項10に記載のOリング装着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はOリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法に関し、詳細にはハウジングに挿入される受止側棒状部を有してOリング導入路を形成するOリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを挿入して装着するOリング挿入装置がある(特許文献1)。ここで言うハウジングとは、例えばJIS B2401-2「Oリング-第2部:ハウジングの形状・寸法」に規格されるハウジングであり内部のハウジング溝にOリングを収める。
【0003】
こうした従来のOリング挿入装置は、Oリングをハウジング溝に装着する上で作業者が直接に手指でOリングを把持してロッド穴に挿入するのではなく、上下一対の棒状部を操作するのであって、各棒状部の先端だけがOリングに接触する。そのため、作業者は直接にOリングを触って挿入することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-145379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のOリング挿入装置は、ハウジングを回転させつつ、このハウジングの上下から挿入される2本の棒状部の間にOリングを挟むことによってOリングをハウジング溝にまで導こうとする。
【0006】
ところで、こうしたハウジング溝は、ロッド穴の内周面に一周して形成されるため、溝加工が容易でなく、溝加工を行った後も溝のエッジが鋭利な状態であることが多い。そのため、前記従来のOリング挿入装置のように、Oリングを挟みつつハウジングを回転すれば、ハウジング溝のエッジはOリングを傷付けてしまう。
【0007】
また、Oリングをロッド穴の内部に収まるように弾性変形させて、かつ、その状態からハウジング溝に合うようにOリングの形状を復元する。そして、上記のように弾性変形させた状態のOリングは、ロッド穴を通す間に縦長に変形するのであって、この縦長の姿勢からハウジング溝に合わせて水平の姿勢になるまで向きを変えなければならない。こうした作業を、ロッド穴の上側の開口から挿入する棒状部を介して完了するために作業者に相当な熟練が必要であり、一般には困難である。そして、棒状部によってOリングを突く回数が増えればOリングに多くの傷をつけてしまいかねない。
【0008】
さらに、前記従来のOリング挿入装置に関して、特許文献1に棒状部に対して超音波振動発生装置によって振動を与える方法が開示されているものの、超音波振動発生装置を備えるためにその分のスペースが必要である上に作業環境全体に対して振動、騒音等の悪環境を与えかねない。
【0009】
そこで本発明はこうした課題の下、簡素な構造でありながら容易な作業又は単純な動作により且つ傷を付けることが少ないOリングの装着を可能とするOリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するOリング装着装置であって、前記Oリングを押し込む棒状の押込側棒状部と、前記ハウジングを保持可能であるハウジング保持部と、前記押込側棒状部によって押し込まれる前記Oリングを前記ロッド穴の内部において受け止めるための、棒状で且つ一端にその端面である受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有する受止側棒状部とを備え、前記受止側棒状部は、前記ハウジングが前記ハウジング保持部によって保持される状態において前記ロッド穴の他方の開口から挿入され、前記受止側端面が、前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持されるように構成されることを特徴とするOリング装着装置を提供するものである。
【0011】
すなわち、本発明のOリング装着装置が、ロッド穴の他方の開口から挿入される受止側棒状部を有し、この受止側棒状部の受止側端面が中央の受止側膨出部を有し、かつ、この受止側端面がハウジング溝と連続してOリング導入路を形成するため、同じロッド穴の一方の開口から押込側棒状部によって押し込まれたOリングは、前記受止側膨出部によって受け止められその後に前記ハウジング溝に導かれる。このハウジング溝が設けられるハウジングとは、例えばJIS B2401-2「Oリング-第2部:ハウジングの形状・寸法」に規格されるハウジングを指す。
【0012】
このOリングは、前記ロッド穴に押し込まれる際に弾性変形されて孔方向においてやや縦長の状態で前記ロッド穴に進入する。そして、前記Oリングの進む向きの先端が前記受止側膨出部に当接することにより、前記先端は前記受止側膨出部の頂部を避けつつ前記受止側膨出部の何れかの向きにおいて前記受止側端面の表面上を滑ることができる。
【0013】
ところで、前記受止側端面は前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続している。前記受止側棒状部は前記他方の開口から挿入するのであって、そのため前記受止側端面が前記一方の開口の向きに面している。これらのため、前記Oリングは前記先端が前記受止側端面の表面上を滑ることによって、前記受止側端面と前記内壁とが連続して形成するOリング導入路上を移動しつつ、前記孔方向から孔の径方向へと姿勢を変え、そして前記ハウジング溝に到達することができる。また、その過程で前記Oリングの形状は前記ハウジング溝に沿うことにより前記縦長の状態から円形に戻る。
【0014】
このように、本発明のOリング装着装置においては、前記Oリングが前記Oリング導入路上を移動して前記ハウジング溝に到達することができるため、簡素な構造でありながら容易な作業により前記Oリングを前記ハウジングに装着することができる。また、前記Oリングに加わる摩擦が小さいため傷つけてしまう虞も小さい。さらに、前記Oリングを例えば自動機によって往復動する前記押込側棒状部により前記ロッド穴に押し込んで進入させるときでも、上記のような単純な動作によって前記Oリングを前記ハウジングに装着できる。
【0015】
(2)また、前記受止側膨出部は凸状且つ部分球面を形成する受止側凸状膨出部を有してもよい。
【0016】
すなわち、受止側端面に受止側凸状膨出部が形成されるため、Oリングの進む向きの前記先端は確実に受止側膨出部を避けつつ何れかの向きにおいてその表面上を滑ることができる。特に、前記受止側凸状膨出部が部分球面に形成されるため、前記先端は前記受止側膨出部に引っ掛かることなく滑ることができる。
【0017】
また、前記部分球面が形成されることにより、前記先端は、前記受止側凸状膨出部に当接するときの前記Oリングの姿勢に従って最も滑り易い向きに滑ってゆくことができるため、なおさら前記受止側膨出部に引っ掛かることなく滑ることができる。
【0018】
(3)また、貫通孔が穿設される延長具をさらに備え、前記延長具を、前記ハウジングが前記ハウジング保持部によって保持される状態において前記貫通孔が前記ロッド穴の前記一方の開口と連通するように支持可能であってもよい。
【0019】
すなわち、貫通孔がロッド穴の一方の開口と連通するように延長具を支持することにより、Oリングは、前記延長具の前記貫通孔を通ってからロッド穴の前記一方の開口に到達することができる。そのため、前記Oリングは、前記押込側棒状部に押されて前記貫通孔の内側を通過する間に姿勢が安定し、前記ロッド穴に進入する段階で確実に縦長状の姿勢を取ることができる。これにより、前記Oリングは、その進む向きの先端が受止側膨出部の略中心に当接することができ、失敗なく受止側端面上を滑ることができる。
【0020】
(4)また、前記貫通孔が、その中心線を挟んで対向して配置されるとともに前記中心線から離れる向きに凹設される一対のガイド溝を有し、前記各ガイド溝は、前記中心線方向の一方側における深さが、前記中心線方向の他方側における深さよりも小さく、前記延長具は、前記一方側が前記ハウジングと隣り合うように支持されてもよい。
【0021】
すなわち、貫通孔に設けられる一対のガイド溝が入り口ほど深く設けられるとき、Oリングは、延長具と隣り合うハウジングに近付くほど前記各ガイド溝の底によって押され、より縦長の状態でロッド穴に押し込まれる。これらガイド溝により、前記Oリングは更に安定した姿勢で前記ロッド穴内を進入することができる。
【0022】
(5)また、前記受止側膨出部は前記受止側凸状膨出部の周囲に、円環状の凹状且つ部分球面を形成する受止側円環凹状膨出部を有してもよい。
【0023】
すなわち、凹状の部分球面が形成される受止側円環凹状膨出部を有するため、前記受止側膨出部は、前記受止側円環凹状膨出部において径方向の外側ほど膨出の傾斜が小さく、その斜面の方向が受止側端面の膨出方向に対して直交する方向により近付く方向となるように形成される。そのため、Oリングは、受止側端面上を滑るにつれ前記受止側円環凹状膨出部の前記斜面に導かれ、孔方向から孔の径方向へとシームレスに姿勢を変えることができる。これにより、前記Oリングは、円滑にOリング導入路上を移動してハウジング溝に到達することができる。
【0024】
(6)また、前記受止側棒状部は少なくとも前記受止側端面を含む前記一端部分がポリテトラフルオロエチレンにより形成されてもよい。
【0025】
すなわち、受止側端面を含む前記の一端部分が、摩擦係数が他の材質に比べて低いことが知られているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成されるため、Oリングは前記受止側膨出部の表面上を容易に滑ることができる。また、前記Oリングは、前記受止側膨出部の表面上を滑りつつOリング導入路上を移動する際に前記受止側膨出部との摩擦により傷付く虞が小さい。さらに、前記Oリングをより円滑に移動させるためにグリスなどの潤滑剤を用いるときでも、ポリテトラフルオロエチレンの耐薬品性が高いため、前記受止側棒状部の耐久性は高い。
【0026】
(7)また、前記押込側棒状部と、前記押込側棒状部を保持するとともに前記ロッド穴の孔方向に往復動可能な押込側棒状部駆動手段とをさらに備えてもよい。
【0027】
すなわち、本発明のOリング装着装置は、これまでに述べたようにOリングに傷を付ける虞が少ない上に簡素な構造であり、単純な動きによって前記Oリングをハウジングに装着することができるため、押込側棒状部を往復動可能な押込側棒状部駆動手段を備えることにより、比較的単純な機構を伴うことによって自動化が可能である。そのため、本発明のOリング装着装置が前記押込側棒状部駆動手段を備えることにより、操作者が前記押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて工程の省力化を実現することができる。また、この自動化によって最適な動作を繰り返すことによって、前記操作者が前記押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて前記Oリングに傷を付ける虞がより小さい。
【0028】
(8)また、前記押込側棒状部の先端に、その端面である押込側端面の中央近傍が突出する押込側突出部を有してもよい。
【0029】
すなわち、押込側棒状部がOリングを押してロッド穴の内側に進入させるとき、前記Oリングは、進む向きと反対の向きの後端が押込側突出部を除けることによってその中央近傍に留まることを避ける。これにより、前記Oリングは、押込側棒状部と受止側棒状部との間で加わる力が垂直方向に働く度合が減り、そのために横から視て「く」の字状に折れ曲がってしまうことが起きない。その結果、前記Oリングは「く」の字状に折れ曲がることなく、次第にロッド穴の孔方向から孔の径方向へとスムーズに姿勢を変えることができ、進む向きの先端がハウジング溝に到達することができる。
【0030】
(9)本発明は棒状の押込側棒状部を用いて、Oリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで、前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するためのOリング装着構造であって、ハウジング保持部が前記ハウジングを保持し、受止側棒状部が、その一端の端面である受止側端面が前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持され、前記受止側端面は、前記押込側棒状部によって押し込まれる前記Oリングを前記ロッド穴の内部において受け止めるように構成され、かつ、前記受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有し、前記Oリングは、前記一方の開口から押し込まれてその進む向きの先端が前記受止側膨出部に当接することにより、前記先端が前記受止側膨出部を避けつつ前記受止側膨出部の周辺を滑って前記Oリング導入路上を移動して前記ハウジング溝に到達することを特徴とするOリング装着構造を提供するものである。
【0031】
すなわち、本発明のOリング装着構造においては、OリングがOリング導入路上を移動してハウジング溝に到達することができるため、簡素な構造でありながら容易な作業により前記Oリングをハウジングに装着することができる。しかも、前記Oリングに加わる摩擦が小さいため傷つけてしまう虞も小さい。
【0032】
また、自動機に本発明のOリング装着構造を適用するときは、駆動手段によって往復動する押込側棒状部により前記Oリングをロッド穴に押し込んで進入させることができ、上記のような単純な動作によって前記Oリングを前記ハウジングに装着できる。そして、操作者が前記押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて工程の省力化を実現することができる。さらに、こうした自動化によって最適な動作を繰り返すことによって、前記操作者が前記押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて前記Oリングに傷を付ける虞がより小さい。
【0033】
(10)本発明はOリングを、管状に形成されたハウジングに穿設されたロッド穴の一方の開口に押し込んで前記ロッド穴の内周面に一周して形成されたハウジング溝に前記Oリングを装着するOリング装着方法であって、前記Oリングと、前記ハウジングと、ハウジング保持部と、棒状で且つ前記Oリングを前記一方の開口に押し込むように構成される押込側棒状部と、棒状で、一端にその端面である受止側端面の中央に近いほど膨出する受止側膨出部を有する受止側棒状部とを準備するとともに、前記ハウジング保持部によって前記ハウジングを保持する準備工程と、前記受止側棒状部を、前記一端側が前記ロッド穴の他方の開口から挿入するとともに、前記受止側端面が前記ハウジング溝の前記一方の開口の向きに面する内壁と連続してOリング導入路を形成する位置に支持する受止側棒状部支持工程と、前記受止側棒状部が前記支持される状態において、前記押込側棒状部の先端によって前記Oリングを押し込むように、前記先端を前記ロッド穴の内部に進入させる押込側棒状部進入工程とを含むことを特徴とするOリング装着方法を提供するものである。
【0034】
すなわち、本発明のOリング装着方法により、押込側棒状部進入工程においてはOリングがOリング導入路上を移動してハウジング溝に到達することができるため、簡素な構造でありながら容易な作業により前記Oリングをハウジングに装着することができる。しかも、前記Oリングに加わる摩擦が小さいため傷つけてしまう虞も小さい。
【0035】
また、本発明のOリング装着方法は、Oリング、ハウジング、ハウジング保持部、押込側棒状部及び受止側棒状部を準備するとともに前記ハウジング保持部によって前記ハウジングを保持する準備工程を含むため、この準備工程において装着対象の前記ハウジングと、装着する前記Oリングとを選んで準備することができる。また、準備する前記Oリング及び前記ハウジングに合った寸法、仕様、材質等のハウジング保持部、押込側棒状部及び受止側棒状部を選んで準備するとともに、これらの前記ハウジングと前記ハウジング保持部とを組み立てることができる。
【0036】
さらに、本発明のOリング装着方法は、前記受止側棒状部を支持する受止側棒状部支持工程を含むため、この受止側棒状部支持工程において、準備した前記ハウジングのハウジング溝の位置に合わせて、受止側端面及び内壁によってOリング導入路を形成することができる箇所に前記受止側棒状部を支持することができる。このとき、1個の前記ハウジングにおいて2以上の前記ハウジング溝にそれぞれ前記Oリングを装着する場合は、前記各ハウジング溝の位置に合わせて前記受止側棒状部を挿入する深さを変更して、それぞれの対応する箇所に前記受止側棒状部を支持することができる。これにより、1個の前記ハウジングに対して1本の前記受止側棒状部だけを準備することによって前記各ハウジング溝に対応することができる。また、本発明のOリング装着方法を自動機に適用する場合は、例えば、前記受止側棒状部を前記ハウジングに対して移動するための駆動装置を設けることによって、前記各ハウジング溝に対応して前記受止側棒状部の位置を調整することが可能となる。
【0037】
しかも、本発明のOリング装着方法は、前記押込側棒状部の先端をロッド穴の内部に進入させる押込側棒状部進入工程を含むため、準備した前記ハウジングのハウジング溝の位置と、前記受止側棒状部支持工程によって支持された前記受止側棒状部の位置とに合わせて、前記押込側棒状部の進入する深さを変更して決定することができる。また、本発明のOリング装着方法を自動機に適用する場合は、例えば、前記押込側棒状部を前記ハウジングに対して往復動させるための駆動装置を設けて調整することによって、前記ハウジングに対応して前記押込側棒状部が動作する範囲を変更することが可能となる。
【0038】
(11)また、前記押込側棒状部進入工程の前に、貫通孔が穿設される延長具を、前記貫通孔が前記ロッド穴の前記一方の開口と連通するように支持する延長具支持工程をさらに含み、前記準備工程は前記延長具をさらに準備する工程を含んでもよい。
【0039】
すなわち、貫通孔がロッド穴の一方の開口と連通するように延長具を支持することにより、Oリングは、前記延長具の前記貫通孔を通ってから前記一方の開口に到達することができる。そのため、前記Oリングは、前記押込側棒状部に押されて前記貫通孔の内側を通過する間に姿勢が安定し、前記ロッド穴に進入する段階で確実に縦長状の姿勢を取ることができる。これにより、前記Oリングは、その進む向きの先端が受止側膨出部の略中心に当接することができ、失敗なく受止側端面上を滑ることができる。
【0040】
また、本発明のOリング装着方法は、前記延長具をさらに準備する準備工程を含むため、この準備工程において装着対象のハウジングに合った寸法、仕様、材質等の前記延長具を選んで準備することができる。
【発明の効果】
【0041】
このように本発明では、簡素な構造でありながら容易な作業又は単純な動作により且つ傷を付けることが少ないOリングの装着を可能とするOリング装着装置、Oリング装着構造及びOリング装着方法を提供することができる。
【0042】
また、本発明のOリング装着装置、Oリング装着構造又はOリング装着方法は、単純な動作によって前記Oリングを前記ハウジングに装着できるために容易に自動機に適用することができる。自動機に適用するときは、操作者が押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて工程の省力化を実現することができる。さらに、こうした自動化によって最適な動作を正確に繰り返すことによって、前記操作者が前記押込側棒状部を手動で操作する場合に比べて前記Oリングに傷を付ける虞がより小さい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第1の実施形態に係るOリング装着装置を斜めから視た部分断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るハウジングの斜視図である。
図3図1のOリング装着装置を分解した状態の斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る受止側棒状部の先端を側面から視た部分側面図である。
図5】(a)~(d)本発明の第1の実施形態に係るOリングがロッド穴の内部で押込側棒状部と受止側棒状部との間に挟まれた状態を表わす説明図である。
図6】(a)~(d)図5のOリングが、押し下げられた押込側棒状部によって押さえられている状態を表わす説明図である。
図7図6のOリングが、さらに押し下げられた押込側棒状部によって押さえられている状態を表わす説明図である。
図8図2のハウジングの縦断面図である。
図9】(a)図8の縦断面図が示すハウジングに受止側棒状部が挿入されて固定された状態の説明図である。(b)(a)の状態を斜めから視た説明図である。
図10】(a)図8の縦断面図が示すハウジングに受止側棒状部及び押込側棒状部によってOリングが装着された状態の説明図である。(b)(a)の状態を斜めから視た説明図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る延長具の斜視図である。
図12図11の延長具の正面断面図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係るOリング装着方法のフロー図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係るOリング装着装置にOリングが挿入された状態を斜めから視た部分断面図である。
図15図14の状態から、押込側棒状部によってOリングが押さえられている状態を斜めから視た部分断面図である。
図16図15の状態から、さらに押込側棒状部によってOリングが押さえられている状態を斜めから視た部分断面図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係るOリング装着装置に対するOリングの装着が完了した状態を斜めから視た部分断面図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係るOリング装着方法の変形例を表わすフロー図である。
図19】(a)本発明の第2の実施形態に係る押込側棒状部の先端を側面から視た部分側面図である。(b)Oリングが(a)の押込側棒状部によって押さえられている状態を表わす説明図である。
図20】本発明の第3の実施形態に係るOリング装着装置の正面図である。
図21図20のOリング装着装置の斜視図及びその一部を拡大した部分断面図である。
図22図20のOリング装着装置の左側面図である。
図23図20のOリング装着装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、図1図18を用いて説明する。図1の斜視図において11はOリング装着装置である。図1に、Oリング装着装置11によって装着するOリング12を示す。また、図1及び図2においてOリング12が装着される対象のハウジング13を示す。ハウジング13は管状に形成され、その中心軸を中心線C1とする略円柱状のロッド穴14が穿設される。ロッド穴14の内周面であるハウジング内周面15には、ハウジング内周面15を周方向に一周するハウジング溝16が形成される。図においては、矢印Uの向きがOリング装着装置11の上方を示し、矢印Dの向きが同じく下方を示す。矢印Fの向きが同じく前方を示し、矢印Bの向きが同じく後方を示す。また、矢印Lの向きが同じく左方を示し、矢印Rの向きが同じく右方を示す。
【0045】
Oリング装着装置11は、棒状の押込側棒状部17を用いて、Oリング12を、上下方向に開けられたロッド穴14が上方に開口する第1開口18に押し込んでハウジング溝16に装着する。押込側棒状部17は略円柱状に形成される。このロッド穴14は上下方向に貫通し、第1開口18の反対側に下方に開口する第2開口19を有する。なお、第1開口18を「一方の開口」と呼び、また、第2開口19を「他方の開口」と呼んでもよい。
【0046】
Oリング装着装置11は、押込側棒状部17によって押し込まれるOリング12をロッド穴14の内部において受け止められるための、棒状の受止側棒状部21を備える。受止側棒状部21は上下方向に配置され、上端にその端面である受止側端面22を有する。受止側端面22は平面視において円形に形成され、また、中央に近いほど膨出する受止側膨出部23を有する。
【0047】
また、Oリング装着装置11の本体である装置本体部25は、ハウジング保持部用ブラケット26を介してハウジング保持部27を支持する。ハウジング保持部27は略円筒状に形成され、その中心軸が中心線C1と一致するように配置される。また、ハウジング保持部27を円柱状の保持部穴28が上下方向に貫通し、保持部穴28の中心軸が中心線C1と一致する。受止側棒状部21は、ハウジング13がハウジング保持部27によって保持される状態において、下方から保持部穴28に挿入される。そして、受止側棒状部21はさらに保持部穴28を通過して、ロッド穴14に第2開口19から上向きに挿入される。
【0048】
図3はOリング装着装置11とハウジング13とを分解した分解状態の斜視図を示す。ハウジング保持部27は、ハウジング13を保持する状態において中心軸が中心線C1と一致する円柱状の空洞である嵌入部29を上部に有する。嵌入部29の上下方向における深さはハウジング13の高さよりも小さい。また、嵌入部29の内径がハウジング13の外径と略一致するため、ハウジング13はその下部が嵌入部29においてハウジング保持部27に嵌入する。これにより、ハウジング13は前後左右方向において、装置本体部25に対して所定の位置に正確に保持される。
【0049】
Oリング12は、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム、合成樹脂等の弾性材料を用いて、横断面が円形の円環状に形成される。Oリング12はハウジング13のハウジング溝16に装着され且つ装着後にハウジング13と共にOリング装着装置11から取り外され、例えばピストン棒がOリング12の内径を貫通するとともにそのピストン棒とハウジング溝16との間において圧縮される。これにより、ロッド穴14とピストン棒とはOリング12によってシールされる。
【0050】
受止側棒状部21は略円柱状に形成され、ロッド穴14に挿入された状態で中心軸が中心線C1と一致する。また、受止側棒状部21は、受止側膨出部23の受止側端面22が凸状且つ部分球面を形成する受止側凸状膨出部31を有する。受止側凸状膨出部31は、図4の側面図が示すように受止側端面22の平面視における中央付近を占め、表面が受止側棒状部21の内部且つ中心線C1上に位置する円弧中心O1を中心とする凸状の円弧を描く。
【0051】
受止側膨出部23は、受止側端面22の受止側凸状膨出部31の周囲に、平面視において円環状であり、側面視において凹状であり且つ部分球面に形成される受止側円環凹状膨出部32を有する。受止側円環凹状膨出部32は、図4が示すように、表面が受止側棒状部21よりも上方に位置する円弧中心O2を中心とする凹状の円弧を描く。円弧中心O2は図示されていない。
【0052】
これに対して、Oリング12は、ロッド穴14に押し込まれる際に先ず弾性変形されて上下方向にやや縦長の状態でロッド穴14に進入する。この状態を図5図7に示す。図5図7は、Oリング12がロッド穴14の内部で押込側棒状部17によって押し下げられ且つ受止側棒状部21によって下支えられる状態の推移を順に示す。図5・6は、それぞれの(a)がOリング12をその円環状の中心線と直交する方向から視た模式図を示す。それぞれの(b)は(a)を中心線C1周りに平面視時計回りに90度転回した向きから視た模式図を示す。それぞれの(c)は(b)がハウジング13及び後で述べる延長具によって囲まれる状態を示す。それぞれの(d)は(c)を斜めから視た斜視図を示す。
【0053】
図7は、上で述べた図5(a)及び図6(a)と同じ方向から視る図である。すなわち、Oリング12をその円環状の中心線と直交する方向から視て、Oリング12、押込側棒状部17及び受止側棒状部21がハウジング13及び後で述べる延長具によって囲まれる状態を示す。
【0054】
このように、受止側棒状部21が受止側膨出部23を有するため、Oリング12の進む向きの先端であるOリング先端12aが上向きに膨出する受止側膨出部23に当接することにより、Oリング先端12aは受止側膨出部23の頂部を避けつつ受止側膨出部21周辺の左右前後360°何れかの向きにおいて受止側端面22の表面上を滑ることができる。
【0055】
しかも、受止側膨出部23の中央部分が受止側凸状膨出部31に形成されるため、Oリング先端12aは確実に受止側膨出部21の頂部を避けつつ左右前後360°何れかの向きにおいてその表面上を滑ることができる。特に、受止側凸状膨出部31が部分球面に形成されるため、Oリング先端12aは受止側膨出部21に引っ掛かることなく滑ることができる。この状態を図6(a)~(d)に示す。
【0056】
さらに、この部分球面が形成されることにより、Oリング先端12aは、受止側凸状膨出部31に当接するときのOリング12の姿勢に従って最も滑り易い向きに滑ってゆくことができるため、なおさらに受止側膨出部21に引っ掛かることなく滑ることができる。
【0057】
ところで、受止側棒状部21は、受止側端面22がハウジング溝16の第1開口18の向きである上向きに面する内壁と連続してOリング導入路36を形成する位置に支持されるように構成される。この、第1開口18の向きである上下方向の上向きに面する内壁を底内壁35と呼ぶ。図8はハウジング13の縦断面を示し、このハウジング13のハウジング内周面15に上下3段のハウジング溝16が形成されている状態を表わす。それぞれ上から順に上段ハウジング溝16a、中段ハウジング溝16b及び下段ハウジング溝16cと呼ぶ。そして、各ハウジング溝16a~16cが底内壁35を有し、それぞれの底内壁35を順に上段底内壁35a、中段底内壁35b及び下段底内壁35cと呼ぶ。
【0058】
受止側棒状部21は、図1が示すように装置本体部25によって受止側棒状部昇降手段用ブラケット37を介して支持される受止側棒状部昇降手段38により、上向きに支えられている。この受止側棒状部昇降手段38は受止側棒状部21を上下方向に移動させて固定することができる。そのため、受止側棒状部昇降手段38を上下させることにより図8の縦断面図に示すような3段の各ハウジング溝16a~16cに対応して受止側棒状部21の上下方向の固定位置を変更することができる。図9(a)(b)は受止側棒状部21がハウジング13に対する上下方向の位置が固定された状態の一例を示す。図9(a)はハウジング13の縦断面と受止側棒状部21の側面とを組み合わせた図を示す。図9(b)はこれらを斜めから視た図を示す。例えば図9(a)(b)の状態のように、受止側棒状部21を上段ハウジング溝16aに対応する位置に固定することができ、また、同様に中段ハウジング溝16b及び下段ハウジング溝16cに対応する位置に固定することができる。なお、受止側棒状部昇降手段38は機械式でもよく、また、油圧式もしくは空気圧式又は電動式でもよい。
【0059】
図9が示すように、受止側棒状部21は、受止側端面22の周辺が上段底内壁35aと面一となる位置に固定することができる。また、同様に中段底内壁35b又は下段底内壁35cと面一となる位置に固定することができる。そして、例えば上段底内壁35aと面一となる位置に固定することによって、図の矢印が示すように、受止側端面23の平面視における中央付近から径方向外向きに延び、受止側端面23の周辺から連続して上段ハウジング溝16aに達するまでのOリング導入路36を形成することができる。このOリング導入路36は平面視において受止側端面23の中央付近から左右前後方向360°全ての向きに形成される。
【0060】
このように、Oリング装着装置11が、ロッド穴14の第2開口19から挿入される受止側棒状部21を有し、受止側棒状部21の受止側端面22が中央の受止側膨出部23を有し、かつ、受止側端面22がハウジング溝16と連続してOリング導入路36を形成するため、同じロッド穴14の第1開口18から押込側棒状部17によって押し込まれたOリング12は、受止側膨出部23によって受け止められその後にハウジング溝16に向けて導かれる。
【0061】
しかも、凹状の部分球面が形成される受止側円環凹状膨出部32を有するため、受止側膨出部23は、受止側円環凹状膨出部32において径方向の外側ほど傾斜が小さく水平方向に近付く。そのため、Oリング12は、受止側端面22上を滑るにつれ受止側円環凹状膨出部32に導かれ、鉛直方向から水平方向へとシームレスに姿勢を変えることができる。この状態を図7に示す。
【0062】
そして、Oリング12はOリング先端12aが受止側端面22の表面上を滑ることによって、受止側端面22と底内壁35とが連続して形成するOリング導入路36上を移動しつつ、鉛直方向から水平方向へと姿勢を変え、そしてハウジング溝16に到達することができる。また、その過程でOリング12の形状はハウジング溝16に沿うことにより縦長の状態から円形に戻る。図10(a)(b)は、押込側棒状部17が下がり、Oリング12がハウジング溝16に装着し終えた状態を示す。図10(a)は図9(a)と同様にハウジング13の縦断面と受止側棒状部21の側面とを組み合わせた図を示す。図10(b)はこれらを斜めから視た図を示す。
【0063】
受止側棒状部21はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成されている。また、受止側棒状部21の全体がポリテトラフルオロエチレンにより形成されていなくても、受止側端面22を含む先端部分だけがポリテトラフルオロエチレンにより形成されてもよい。
【0064】
これにより、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の摩擦係数が小さいため、Oリング12は受止側膨出部23の表面上を容易に滑ることができる。また、Oリング12は、受止側膨出部23の表面上を滑りつつOリング導入路36上を移動する際に受止側膨出部23との摩擦により傷付く虞が小さい。さらに、Oリング12をより円滑に移動させるためにグリスなどの潤滑剤を用いるときでも、ポリテトラフルオロエチレンの耐薬品性が高いため、受止側棒状部21の耐久性は高い。
【0065】
Oリング装着装置11は、図1が示すようにハウジング13の上側に配置する延長具41を備える。図11は延長具41の斜視図を表わし、図12は延長具41の正面視における縦断面図を表わす。延長具41は円筒状に形成され、上下方向に貫通する円柱状の貫通孔42が穿設される。貫通孔42の中心線C2は延長具41の中心軸と一致する。貫通孔42は、上方に開口する延長具第1開口43と、下方に開口する延長具第2開口44とを有する。延長具41は下部に円柱状の空洞である挿入部45を有する。挿入部45の内径はハウジング13の外径と略一致する。これにより、延長具41は挿入部45がハウジング13の上部を上方から抱きかかえるようにしてハウジング13の上側に配置される。また、延長具第2開口44はロッド穴14の第1開口18と同径である。
【0066】
延長具41は、図1が示すように延長具ホルダー46により延長具41の右方から支えられている。延長具ホルダー46は、延長具ホルダー昇降手段47を介して装置本体部25により支持される。この延長具ホルダー昇降手段47は延長具ホルダー46を上下方向に移動させて固定することができる。例えば、図3は延長具ホルダー昇降手段47の内部に格納されていた延長具ホルダー46の一対の脚部48,48を上方に伸長させて、延長具ホルダー46と延長具41とを上昇させた状態を示す。このように延長具ホルダー46と延長具41とを上昇させた状態において、ハウジング13は上向きにフリーとなって上方に持ち上げることができる。これにより、下部がハウジング保持部27の嵌入部29に嵌入していたハウジング13を上に持ち上げて取り外すことができる。なお、延長具ホルダー昇降手段47は機械式でもよく、また、油圧式もしくは空気圧式又は電動式でもよい。
【0067】
ハウジング13がハウジング保持部27によって保持され、延長具41が延長具ホルダー46によって保持され、かつ、ハウジング保持部27と延長具ホルダー46とが共に装置本体部25によって支持された状態で、延長具41がハウジング13の上側に配置される。このとき、ロッド穴14の中心線C1と貫通孔42の中心線C2とは一致する。そして、貫通孔42の延長具第2開口44とロッド穴14の第1開口18とが上下方向に重なり合う。これにより、貫通孔42はロッド穴14と段差なく連通する。
【0068】
その結果、貫通孔42がロッド穴14の第1開口18と連通するように延長具41を支持することにより、押込側棒状部17によって上方から挿入されるOリング12は、延長具41の貫通孔42を通って第1開口18に到達することができる。この時、Oリング12は、押込側棒状部17に押されて貫通孔42の内側を通過する間に姿勢が安定し、ロッド穴14に進入する段階で確実に縦長状の姿勢を取ることができる。これにより、Oリング12は、Oリング先端12aが受止側膨出部23の略中心に当接することができ、失敗なく受止側端面22上を滑ることができる。
【0069】
貫通孔42は、中心線C2を挟んで対向して配置され、中心線C2から離れる向きに凹設される一対のガイド溝48,48を有する。各ガイド溝48は、前後方向の幅が装着されるOリング12の太さよりもやや広くなるように設定される。図11及び図12に示すように、各ガイド溝48は左右一対に配置され、それぞれ左向き及び右向きに凹んで設けられる。各ガイド溝48は、下側の深さが上側の深さが小さくなるように、その底が直線状に傾斜して形成される。その結果、一対のガイド溝48,48はそれらの底が上向きに開くハの字状を描くように形成される。そして、図3が示すように、延長具41は下側に位置する延長具第2開口44がハウジング13の第1開口18と連なるようにハウジング13と隣り合う。
【0070】
このように、貫通孔42に設けられる一対のガイド溝48,48が入り口ほど深く設けられるため、Oリング12は、延長具41と隣り合うハウジング13に近付くほど各ガイド溝48の底によって押され、より縦長の状態でロッド穴14に押し込まれる。これにより、Oリング12は更に安定した姿勢でロッド穴14内を進入することができる。
【0071】
図13のフロー図は本実施形態におけるOリング12の装着方法の一例であるOリング装着方法S100を示す。Oリング装着方法S100は、準備工程S110、延長具支持工程S120、受止側棒状部支持工程S130及び押込側棒状部進入工程S140を順に含む。
【0072】
準備工程S110においては、Oリング12、ハウジング13、ハウジング保持部27、受止側棒状部21、延長具41をはじめとするワーク、Oリング装着装置11の構成部品などを準備する。各構成部品は、装着対象のOリング12及びハウジング13に合わせた寸法のものを準備する。これらを、それぞれハウジング保持部用ブラケット26、受止側棒状部昇降手段用ブラケット37、受止側棒状部昇降手段38、延長具ホルダー46、延長具ホルダー昇降手段47等を用いて支持することにより図3が示すように配置する。このとき、ロッド穴14の中心線C1が垂線と一致するようにハウジング13をハウジング保持部27の上側に載せて下方から保持する。また、ハウジング保持部27の上方のスペースを確保するため、ハウジング13をハウジング保持部27に載せる際は、延長具ホルダー46を上昇させる。
【0073】
延長具支持工程S120においては、延長具41を所定の位置において支持する。図3の状態から、ハウジング13をハウジング保持部27によって保持した後、延長具41を支える延長具ホルダー46を下降させる。このとき、延長具46から下方へ延設される一対の脚部48,48を延長具ホルダー昇降手段47内に収めることにより延長具ホルダー46が下降する。この結果、図1が示すように延長具41の挿入部45が、上方からハウジング13に被さり、延長具41がハウジング13の上側に配置される。また、これにより、延長具第2開口44とロッド穴14の第1開口18とが重なり、貫通孔42とロッド穴14とは連通する。延長具41は、図12が示すように各ガイド溝48の凹設方向が左右方向と一致する姿勢で支持される。
【0074】
受止側棒状部支持工程S130においては、受止側棒状部21の上端を下方からハウジング保持部27の保持部穴28に貫通させた上で、ロッド穴14の第2開口19の下方から挿入する。そして、受止側端面22が所定のハウジング溝16の底内壁35と面一となるまで上昇させて、受止側端面22と底内壁35とが連続した状態のOリング導入路36を形成する位置において受止側棒状部21を支持する。図14図17においては、受止側端面22が上段ハウジング溝16aの上段底内壁35aと面一となるように受止側棒状部21が支持されている。この状態は、図9図10の縦断面図にも示されている。この受止側棒状部21を、図1の位置からこれらの位置にまで移動させるため、受止側棒状部21の下端が固定されている受止側棒状部昇降手段38を上昇させる。受止側棒状部21は受止側棒状部昇降手段38によって垂直に持ち上げられ、受止側端面22の高さと底内壁35の高さとが同一となった位置において固定される。
【0075】
押込側棒状部進入工程S140においては、先ず、押込側棒状部17の下端によって下向きに押さえることによって、上方からOリング12が延長具41の貫通孔42に挿入される。Oリング12は、図14が示すように、円環状の中心軸が前後方向となる姿勢で挿入される。このとき、Oリング12は左右のガイド溝48,48に沿って下方に押し込まれる。そして、図15が示すように、Oリング12は押込側棒状部17によって下向きに運ばれ、各ガイド溝48の底によって左右に押され上下方向のやや縦長の形状に弾性変形しつつ下方に進入する。
【0076】
次に、Oリング12は図16が示すように、押込側棒状部17が下向きに進むのにつれてOリング先端12aが受止側端面22に当接し、受止側膨出部23の表面を滑るとともに姿勢が次第に水平方向に傾きはじめる。また、このときOリング12は、押込側棒状部17と受入側棒状部21との間で押され、前やや上向きに曲がるように弾性変形する。そして、Oリング先端12aは前方に向く。この状態は図6・7においても示される。最後に、押込側棒状部17は、図17が示すように押込側棒状部17の下端がハウジング溝16に達することにより下降を止める。この状態では、図10が示すようにロッド穴14を進入したOリング12が、水平の姿勢でハウジング溝16に嵌まり込んで装着が完了する。このとき、Oリング12は変形前に比べて弾性変形によって径が小さい円環状の状態でハウジング溝16に装着されている。
【0077】
図示されていないが、Oリング12が装着されたハウジング13は、先に延長具41が上昇した後に、ハウジング保持部27から上向きに外される。その上でハウジング13はOリング装着装置11から排出される。
【0078】
なお、延長具支持工程S120と受止側棒状部支持工程S130とは、順が逆でもよい。このとき、受止側棒状部21を上昇させてロッド穴14に挿入した上で、延長具41をハウジング13の上側に配置する。あるいは、延長具支持工程S120と受止側棒状部支持工程S130とを同時に進めてもよい。延長具支持工程S120と受止側棒状部支持工程S130とを同時に進める場合の例を、Oリング装着方法S200として図18のフロー図に示す。
【0079】
上記のOリング装着方法S100,S200により、その準備工程S110においてはOリング12とハウジング13とを選んで準備することができる。また、準備するOリング12及びハウジング13に合った寸法、仕様、材質等のハウジング保持部27、押込側棒状部17、受止側棒状部21及び延長具41を選んで準備するとともに、これらのハウジング13とハウジング保持部27とを組み立てることができる。
【0080】
また、Oリング装着方法S100,S200が延長具支持工程S120を含むため、貫通孔41がロッド穴14の第1開口18と連通するように延長具41を支持し、Oリング12は、延長具41の貫通孔42を通ってから第1開口18に到達することができる。そのため、Oリング12は、押込側棒状部17に押されて貫通孔41の内側を通過する間に姿勢が安定し、ロッド穴14に進入する段階で確実に縦長状の姿勢を取ることができる。これにより、Oリング12は、Oリング先端12aが受止側膨出部23の略中心に当接することができ、失敗なく受止側端面22上を滑ることができる。
【0081】
また、Oリング装着方法S100,S200の受止側棒状部支持工程S130においては、ハウジング13のハウジング溝16の位置に合わせて、受止側端面22及び底内壁35によってOリング導入路36を形成することができる箇所に受止側棒状部21を支持することができる。このとき、1個のハウジング13において2以上のハウジング溝16a,16b,16cにそれぞれOリング12を装着する場合は、各ハウジング溝16a,16b,16cの位置に合わせて受止側棒状部21を挿入する深さを変更して、それぞれの対応する箇所に受止側棒状部21を支持することができる。これにより、1個のハウジング13に対して1本の受止側棒状部21だけを準備することによって各ハウジング溝16a,16b,16cに対応することができる。また、Oリング装着方法S100,S200を自動機に適用する場合は、例えば、受止側棒状部21をハウジング13に対して上下方向に移動するための駆動を有する受止側棒状部昇降手段38を設けることによって、この駆動を制御することによって各ハウジング溝16a,16b,16cに対応して受止側棒状部21の位置を調整することが可能となる。
【0082】
また、Oリング装着方法S100,S200が押込側棒状部進入工程140を含むため、ハウジング13のハウジング溝16の位置と、受止側棒状部支持工程S130によって支持された受止側棒状部21の位置とに合わせて、押込側棒状部17の進入する深さを変更して決定することができる。さらに、Oリング装着方法S100,S200を自動機に適用する場合は、例えば、押込側棒状部17をハウジング13に対して上下方向に往復動させるための駆動装置を設けて調整することによって、ハウジング13に対応して押込側棒状部17が動作する範囲を変更することが可能となる。
【0083】
そして、押込側棒状部進入工程140においてはOリング12がOリング導入路36上を移動してハウジング溝16に到達することができるため、簡素な構造でありながら容易な作業や操作によりOリング12をハウジング13に装着することができる。しかも、Oリング12に加わる摩擦が小さいため傷つけてしまう虞も小さい。
【0084】
ここまでの、Oリング装着装置11を用いてOリング12をハウジング13に装着する構造全体をOリング装着構造11Aと呼んでもよい。このOリング装着構造11Aとは、上述のような棒状の押込側棒状部17を用いて、Oリング12を、管状に形成されたハウジング13に穿設されたロッド穴14の第1開口18に押し込んで、ロッド穴14の内周面に一周して形成されたハウジング溝16にOリング23を装着するためのOリング装着構造であって、ハウジング保持部27がハウジング24を保持し、受止側棒状部21が、その一端の端面である受止側端面22がハウジング溝16の第1開口18の向きに面する底内壁35と連続してOリング導入路36を形成する位置に支持され、受止側端面22は、押込側棒状部21によって押し込まれるOリング12をロッド穴14の内部において受け止めるように構成され、かつ、受止側端面22の中央に近いほど膨出する受止側膨出部23を有し、Oリング12は、第1開口18から押し込まれてOリング先端12aが受止側膨出部23に当接することにより、Oリング先端12aが受止側膨出部23を避けつつ受止側膨出部23の周辺を滑ってOリング導入路36上を移動してハウジング溝16に到達することを特徴とするOリング装着構造をいう。
【0085】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、図19(a)(b)を用いて説明する。図19(a)は押込側棒状部17の下端を示す部分側面図を表わす。押込側棒状部17は下端の端面である押込側端面51の中央近傍に下向きに突出する押込側突出部52を有する。押込側突出部52は、中心軸が中心線C1と一致し且つ下方ほど縮径する円錐台状に形成される。押込側端面51は、押込側突出部52の周囲に平面視における円環状の押込側円環状部53を有する。
【0086】
図19(b)は、図7と同様にOリング12が受止側端面22上を滑るにつれ受止側円環凹状膨出部32に導かれ、鉛直方向から水平方向へとシームレスに姿勢を変える状態を表わす。Oリング12は、図16と同様にOリング先端12aが前方を向き、押込側棒状部17によって下向きに押される。そして、Oリング先端12aは、受止側端面22と上段底内壁35aとが連続して形成されるOリング導入路36を経て上段ハウジング溝16aに到達する。これにより、Oリング12全体が上段ハウジング溝16aに装着される。
【0087】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0088】
このような構成により、押込側棒状部17がOリング12を押してロッド穴14の内側に進入させるとき、Oリング12は、その後端であるOリング後端12bが押込側突出部52によって後ろ向きに押さえ付けられる。そのためOリング後端12bは押込側端面51の中央近傍に留まらない。これにより、Oリング12に対して押込側棒状部17と受止側棒状部21との間で加わる力が上下方向に働く度合が減るためOリング12は左右の側面から視て二折り状に折れ曲がらない。その結果、Oリング12は二折り状に折れ曲がることなく、上下方向から前後方向へとスムーズに姿勢を変えることができ、Oリング先端12aが容易にハウジング溝16に到達することができる。
【0089】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、図20図23を用いて説明する。図20の正面図において111はOリング装着装置である。Oリング装着装置111は前後方向の略中央に装置本体部125を有する。装置本体部125は脚部を有し、床に載置されて自立する。また、Oリング装着装置111は、装置本体部125の後側にロボット161を有する。ロボット161は床に直接載置されて自立する。ロボット161は、上部から前向きに伸びる一対のアーム部162を有する。各アーム部162は上下方向の回転軸163を有し、回転軸163に軸着する水平方向のロボットハンド164を有する。アーム部162及びロボットハンド164はロボット161の動作によって自在に上下左右前後方向に移動することができ、それらの移動がロボット161によって制御される。
【0090】
また、Oリング装着装置111は、装置本体部125の前側に一対のOリング搬送部165を有する。各Oリング搬送部165は前後方向のコンベヤーベルトを有する。また、各Oリング搬送部165は脚部を有し、床に載置されて自立する。さらに、Oリング装着装置111は、ロボット161の左右に複数のハウジングトレイ166を有する。各ハウジングトレイ166はそれぞれ左右のテーブル上に設置され、これらのテーブルが床に載置されて自立する。ハウジングトレイ166には複数個のハウジング113が収められている。
【0091】
Oリング装着装置111は、図示しないプログラマブルコントローラシステムを備える。プログラマブルコントローラシステムはJIS B3501『プログラマブルコントローラー 一般情報』に定義されるプログラマブルコントローラー及び関連周辺装置からなるシステムであり、PLCシステム、シーケンサーなどと略称されることがある。このプログラマブルコントローラシステムを以下において「シーケンサー(S)」とよぶ。シーケンサーSはロボット161、下述するそれぞれの駆動装置などと結線される。これらの結線は有線に限らず無線によってもよい。また、シーケンサーSはOリング装着装置111の脇に設置されてもよく、あるいは、別室などのOリング装着装置111から離れた箇所に設置されてもよい。
【0092】
図21は、Oリング装着装置111を左上方やや後ろから視た斜視図を表わす。Oリング装着装置111の装置本体部125において、ハウジング113、押込側棒状部117、受止側棒状部121、ハウジング保持部用ブラケット126、ハウジング保持部127、受止側棒状部昇降手段138、延長具141、延長具ホルダー146、延長具ホルダー昇降手段147などが配置される位置を図の矢印によって示す。右上の拡大図における各構成の配置は図3と共通する。Oリング装着装置111は、本実施形態において左右2セットのこれら押込側棒状部117、受止側棒状部121、ハウジング保持部用ブラケット126、ハウジング保持部127、受止側棒状部昇降手段138、延長具141、延長具ホルダー146、延長具ホルダー昇降手段147などを有する。例えば、一方のセットが比較的大径のハウジング113にOリング112を装着し、他方のセットが比較的小径のハウジング113にOリング112を装着するように構成してもよい。以下の説明においては、主に左側のセットについて説明する。なお、これらのセットは左右何れかの1セットだけが設けられてもよい。
【0093】
図22は、Oリング装着装置111の左側面図を表わす。Oリング装着装置111において押込側棒状部117はその上下方向が鉛直方向と一致するようにアーム部162の直下においてアーム部162により保持されている。アーム部162は、保持する押込側棒状部117の中心線C4と、装置本体部125に配置されたハウジング113のロッド穴114の中心線C1とが一致する位置に移動することができる。また、アーム部162は押込側棒状部117を上下方向に往復動させることができる。なお、このアーム部162を含むロボット161を、本明細書において押込側棒状部駆動手段と呼ぶことがある。
【0094】
図23は、Oリング装着装置111の平面図を表わす。Oリング装着装置111のOリング搬送部165は、そのコンベヤーベルト上に、ハウジング113に装着するためのOリング112を複数個載せて前端から後ろ向きに搬送する。Oリング搬送部165はコンベヤーベルトの駆動装置を有し、その駆動は通信によってロボット161の指示を受けたシーケンサーSによって制御される。この搬送されたOリング112はロボットハンド164の先端に設けられるハンド部168によって摘み上げられる。このとき、アーム部162が移動し、ロボットハンド164が回転軸163周りを回転し、または、アーム部162が移動し且つロボットハンド164が回転することによって、ハンド部168がOリング112を摘み上げることができるようにハンド部168の位置を調整する。また、同様にハンド部168を移動させて、摘み上げたOリング112を延長具141の上側にまで移送することができる。
【0095】
また、ロボットハンド164は同様にハンド部168の位置を調整して、ハンド部168によってハウジングトレイ166に収められたハウジング113のうちの1個を摘み上げることができる。さらに、同様にハンド部168を移動させて、摘み上げたハウジング113をハウジング保持部127の上方にまで移送することができる。また、Oリング112を装着した後のハウジング113をハウジング保持部127から持ち上げ搬出することができる。
【0096】
その他の構成は、第1の実施形態又は第2の実施形態と共通する。
【0097】
以下、本実施形態におけるOリング112の装着方法の一例を、第1の実施形態について例示したOリング装着方法S100又はOリング装着方法S200に沿って説明する。
【0098】
準備工程S110においては、Oリング112、ハウジング113、ハウジング保持部127、押込側棒状部117、受止側棒状部121、延長具141をはじめとするワーク、Oリング装着装置111の構成部品などを準備する。各構成部品は、装着対象のOリング112及びハウジング113に合わせた寸法のものを準備する。ハウジング保持部127は、装置本体部125上に固定されたハウジング保持部用ブラケット126に装着される。押込側棒状部117は上述のようにアーム部162が下向きに保持する。受止側棒状部121は、受止側棒状部昇降手段138が上向きに保持する。延長具141は延長具ホルダー146が右方から支持する。Oリング112は、複数個のOリング112がOリング搬送具165の前端からコンベヤーベルト上に乗せられ、そのコンベヤーベルトによって順に後ろ向きに搬送される。そして、Oリング搬送具165の後端においてハンド部168によって摘み上げられる位置にまで運ばれる。
【0099】
延長具支持工程S120の前に、ハウジング113はハンド部168によってハウジングトレイ166から摘み上げられ、アーム部162及びロボットハンド164の移動によってハウジング保持部127の直上まで運ばれる。そして、アーム部162及びロボットハンド164によって下降して、ハウジング113の下部がハウジング保持部127の嵌入部129に嵌入して固定される。なお、ハウジング113がハウジング保持部127の直上まで運ばれる前の段階で延長具141が降りているときは、先ず延長具ホルダー昇降手段147が延長具ホルダー146を上昇させ、これによって生じたハウジング保持部127と延長具141との間のスペースにハウジング113が入り込むようにロボットハンド164によって運ばれる。こうした延長具ホルダー昇降手段147は延長具ホルダー146の一対の脚部148,148を上下動させる駆動装置を有し、その駆動は通信によってロボット161の指示を受けたシーケンサーSによって制御される。
【0100】
延長具支持工程S120においては、延長具141を支える延長具ホルダー146を下降させる。このとき、一対の脚部148,148を延長具ホルダー昇降手段147内に収めることにより延長具ホルダー146が下降する。この結果、延長具141の挿入部145が上方からハウジング113に被さり、延長具141がハウジング113の上側に配置される。
【0101】
受止側棒状部支持工程S130においては、受止側棒状部121の上端を下方からハウジング保持部127の保持部穴128に貫通させた上で、ロッド穴114の第2開口119の下方から挿入する。受止側棒状部昇降手段138は受止側棒状部121を上下動させる駆動装置を有し、その駆動は通信によってロボット161の指示を受けたシーケンサーSによって制御される。このとき、ハウジング113が複数のハウジング溝116を有する場合、Oリング112がどのハウジング溝16に装着されるかはロボット161において決定されており、そのための受止側棒状部121の上下動距離に合わせて受止側棒状部昇降手段138が作動する。その結果、受止側棒状部121の位置は、受止側端面122が所定のハウジング溝116の底内壁135と面一となるように調整される。
【0102】
押込側棒状部進入工程S140の前に、アーム部162及びロボットハンド164を作動させて、ハンド部168によって摘み上げられたOリング112を延長具141の上側にまで移送させる。この移送後において、Oリング112は円環状の中心軸が前後方向となる姿勢で保持され、左右の両端が延長具141の左右のガイド溝148,148に入り込む。この状態でハンド部168はOリング112を離す。
【0103】
押込側棒状部進入工程S140においては、アーム部162がハウジング113のロッド穴114の中心線C1と押込側棒状部117の中心線C4とが一致する位置にまで移動した後に押込側棒状部117を下降させることにより、押込側棒状部117の下端によってOリング112を下向きに押さえる。これによってOリング112は延長具141の貫通孔142に挿入され、左右のガイド溝148,148に沿って下方に押し込まれる。そして、押込側棒状部117の下降が進むにつれOリング112の姿勢が次第に水平方向に傾きはじめ、その後、水平の姿勢で所定のハウジング溝116に嵌まり込んで装着される。この時点で、押込側棒状部117の下端がハウジング溝116に達して、ロボット161は、アーム部162による押込側棒状部117の下降を止める。
【0104】
このような構成により、本発明のOリング装着装置111はOリング112に傷を付ける虞が少ない上に簡素な構造である。そして、単純な動きによってOリング112をハウジング113に装着することができる。そのため、押込側棒状部117を往復動させることができるロボット161を備えることにより自動化が可能である。これにより、操作者が押込側棒状部117を手動で操作する場合に比べて工程の省力化を実現することができる。また、この自動化によって最適な動作を繰り返すことによって、前記操作者が押込側棒状部117を手動で操作する場合に比べてOリング112に傷を付ける虞がより小さい。
【0105】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
例えば、各図においてハウジングの直径が上下方向の長さよりも大きいものとして表わされているが、これらのハウジングは、直径が上下方向の長さと同じ又は上下方向の長さよりも小さいものであってもよい。
【0107】
また、押込側棒状部進入工程において、押込側棒状部は、Oリングを傷つけてしまうことが無い程度に、Oリングを下向きに1回押さえるだけでなく複数回押さえてもよい。それにより、仮にリング溝へのOリングの装着が不完全な場合でも、複数回押さえることにより、押込側棒状部は2回目又はそれ以降の回数において確実にOリングを装着することができる。なお、Oリング装着装置は、Oリングの装着状態を検知する検知手段を備えることにより、装着の不完全が検知される場合にのみ2回以上押さえるように制御してもよい。
【0108】
さらに、Oリングは、必ずしも弾性変形によって装着前よりも径が小さい円環状の状態でハウジング溝に装着されると限らず、装着前と同じ径のままの状態でハウジング溝に装着されてもよい。準備工程において、ハウジングは、Oリングの用途、役割、サイズ等に従ってハウジング溝に装着される際の好ましい変形状態を実現するような寸法のものが準備される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、Oリングを、そのハウジングのハウジング溝に装着するためのOリング装着装置に利用できる。
【符号の説明】
【0110】
11 Oリング装着装置(以下、上1桁に1が加わる3桁の符号も同様とする)
12 Oリング
13 ハウジング
14 ロッド穴
15 ハウジング内周面
16 ハウジング溝
17 押込側棒状部
18 第1開口(一方の開口)
19 第2開口(他方の開口)
21 受止側棒状部
22 受止側端面
23 受止側膨出部
25 装置本体部
26 ハウジング保持部用ブラケット
27 ハウジング保持部
28 保持部穴
29 嵌入部
31 受止側凸状膨出部
32 受止側円環凹状膨出部
35 底内壁
36 Oリング導入路
37 受止側棒状部昇降手段用ブラケット
38 受止側棒状部昇降手段
41 延長具
42 貫通孔
43 延長具第1開口
44 延長具第2開口
45 挿入部
46 延長具ホルダー
47 延長具ホルダー昇降手段
48 ガイド溝
51 押込側端面
52 押込側突出部
53 押込側円環状部
161 ロボット
162 アーム部
163 回転軸
164 ロボットハンド
165 Oリング搬送部
166 ハウジングトレイ
168 ハンド部
S100,S200 Oリング装着方法
S110 準備工程
S120 延長具支持工程
S130 受止側棒状部支持工程
S140 押込側棒状部進入工程

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23