(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047377
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】熱交換形換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/08 20060101AFI20230330BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230330BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20230330BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20230330BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20230330BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20230330BHJP
F24F 110/40 20180101ALN20230330BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20230330BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/007 B
F24F3/044
F24F11/77
F24F11/64
F24F11/46
F24F110:40
F24F110:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156250
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真璃子
(72)【発明者】
【氏名】橋野 大輔
【テーマコード(参考)】
3L053
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BB06
3L056BD04
3L056BE01
3L056BF06
3L260AB17
3L260BA07
3L260BA24
3L260BA41
3L260CA14
3L260CA37
3L260CB52
3L260CB53
3L260CB57
3L260EA08
3L260EA19
3L260FA07
3L260FC02
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】給気効率を落とすことなく、屋内が正圧か否かを把握可能な熱交換形換気装置を提供する。
【解決手段】屋外から屋外側給気口を通して吸い込まれた空気を、屋内側給気口を通して屋内へ搬送するための給気風路と、屋外の空気を給気風路を介して屋内へ搬送する給気用送風機と、屋内から屋内側排気口を通して吸い込まれた空気を、屋外側排気口を通して屋外へ搬送するための排気風路と、屋内の空気を排気風路を介して屋外へ搬送する排気用送風機と、熱交換素子と、空気の圧力差を検出する差圧検出部と、判定部と、を備える。給気用送風機は、給気風路における熱交換素子の下流に設けられ、排気用送風機は、排気風路における熱交換素子の下流に設けられる。判定部は、屋外側排気口から排気される風量と差圧検出部が検出する圧力差とに基づいて屋内が正圧か否かを判定する。これにより上記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外から屋外側給気口を通して吸い込まれた空気を、屋内側給気口を通して屋内へ搬送するための給気風路と、
前記屋外の空気を前記給気風路を介して給気流として前記屋内へ搬送する給気用送風機と、
前記屋内から屋内側排気口を通して吸い込まれた空気を、屋外側排気口を通して前記屋外へ搬送するための排気風路と、
前記屋内の空気を前記排気風路を介して排気流として前記屋外へ搬送する排気用送風機と、
前記給気流と前記排気流との間で熱交換を行う熱交換素子と、
前記屋外側給気口近傍の空気の圧力と前記屋外側排気口近傍の空気の圧力との圧力差を検出する差圧検出部と、
前記屋内が正圧か否かを判定する判定部と、を備え、
前記給気用送風機は、
前記給気風路における前記熱交換素子の下流に設けられ、
前記排気用送風機は、
前記排気風路における前記熱交換素子の下流に設けられ、
前記判定部は、
前記排気用送風機により前記屋外側排気口から排気される風量と前記差圧検出部が検出する圧力差とに基づいて前記屋内が正圧か否かを判定する熱交換形換気装置。
【請求項2】
前記屋外側排気口における前記排気流の排気風量と、前記屋外側給気口近傍の空気の圧力と前記屋外側排気口近傍の空気の圧力との圧力差と、前記屋外側給気口における前記給気流の給気風量と、を関連付けた風量テーブルを記憶する記憶部と、
前記排気用送風機により前記屋外側排気口から排気される風量と前記差圧検出部が検出する圧力差と前記風量テーブルに基づいて、前記屋外側給気口における前記給気流の給気風量を取得する給気風量取得部と、をさらに備え、
前記判定部は、
前記給気風量取得部が取得した前記屋外側給気口における前記給気流の給気風量と、前記排気用送風機により前記屋外側排気口から排気される風量とに基づいて、前記屋内が正圧か否かを判定する請求項1記載の熱交換形換気装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記給気風量取得部が取得した前記屋外側給気口における前記給気流の給気風量が前記排気用送風機により前記屋外側排気口から排気される風量よりも大きければ正圧であると判定し、
前記給気風量取得部が取得した前記屋外側給気口における前記給気流の給気風量が前記排気用送風機により前記屋外側排気口から排気される風量以下であれば正圧ではないと判定する請求項2記載の熱交換形換気装置。
【請求項4】
前記判定部により正圧ではないと判定されると、前記給気用送風機の風量を上昇する給気用送風機制御部をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の熱交換形換気装置。
【請求項5】
前記給気用送風機制御部は、
前記判定部により正圧であると判定されるまで、前記給気用送風機の風量を上昇する請求項4記載の熱交換形換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換形換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、換気の際に給気される空気と排気される空気との間で熱交換を行う熱交換形換気装置が知られている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換形換気装置には、屋外に排気される空気の風量(排気風量)と屋内に給気される空気の風量(給気風量)とが同風量になるように制御されるものが有る。しかし、熱交換形換気装置内の送風経路の隙間からの空気漏れにより、排気用送風機と給気用送風機の風量を同じにしても、排気風量と給気風量とは同じにならず、排気風量が給気風量を上回ってしまう可能性がある。排気風量が給気風量を上回ると、屋内が屋外に対して負圧になる。屋内が負圧になることにより、例えば日本の夏季において、屋外の温湿度が高い空気が建物の隙間等から屋根裏等に流入してしまう。流入した温湿度が高い空気は、室内と熱交換形換気装置間のダクトの外側に存在する。また、室内空調機により冷やされた温度が低い室内空気が熱交換形換気装置の排気用送風機により、室内と熱交換形換気装置間のダクトに搬送される。よって、ダクトの内側には温度が低い空気が存在する。ダクトの内側に存在する温度が低い空気が熱伝導によりダクトを冷やす。そして、ダクトの表面とダクトの外側に存在する温湿度が高い空気との温度差により、ダクト表面には結露が生じることがある。ダクト表面に結露が生じることでカビやダニが発生するおそれがあるため、屋内が屋外に対して負圧になることを抑制する必要がある。
【0005】
例えば、給気用送風機が給気風路における熱交換素子の上流に配置され、排気用送風機が排気風路における熱交換素子の下流に配置されたとする。この場合、給気用送風機の送風量を排気用送風機の送風量よりも大きくすることで屋内を正圧とすることができる。即ち、給気用送風機の送風量と排気用送風機の送風量とを比較することで屋内が正圧か否かを把握することができる。
【0006】
しかし、給気用送風機は、給気風路における熱交換素子の下流に設けられることが望ましい。給気用送風機が給気風路における熱交換素子の上流ではなく熱交換素子の下流に設けられることが望ましい理由は、空気を吸う位置に設けられるよりも空気を吐き出す位置に設けられる方が、給気用送風機の消費電力に対する給気性能(給気効率)が良いことが実験によりわかったためである。しかし、給気用送風機を給気風路における熱交換素子の下流に設けると、先述したように熱交換形換気装置内の送風経路の隙間からの空気漏れにより、排気用送風機と給気用送風機との風量を同じにしても、排気風量と給気風量とは同じにならず、排気風量が給気風量を上回ってしまう可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、給気効率を落とすことなく、屋内が正圧か否かを把握可能な熱交換形換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る熱交換形換気装置は、屋外から屋外側給気口を通して吸い込まれた空気を、屋内側給気口を通して屋内へ搬送するための給気風路と、屋外の空気を給気風路を介して給気流として屋内へ搬送する給気用送風機と、屋内から屋内側排気口を通して吸い込まれた空気を、屋外側排気口を通して屋外へ搬送するための排気風路と、屋内の空気を前記排気風路を介して排気流として前記屋外へ搬送する排気用送風機と、給気流と排気流との間で熱交換を行う熱交換素子と、屋外側給気口近傍の空気の圧力と屋外側排気口近傍の空気の圧力との圧力差を検出する差圧検出部と、屋内が正圧か否かを判定する判定部と、を備え、給気用送風機は、給気風路における熱交換素子の下流に設けられ、排気用送風機は、排気風路における熱交換素子の下流に設けられ、判定部は、排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量と差圧検出部が検出する圧力差とに基づいて屋内が正圧か否かを判定し、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給気効率を落とすことなく、屋内が正圧か否かを把握可能な熱交換形換気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る熱交換形換気装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る熱交換形換気装置の概略機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る記憶部に記憶されている風量テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る熱交換形換気装置における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するために例示するものであって、本発明は以下のものに特定しない。特に実施の形態に記載されている数値、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる実施例に過ぎない。
【0012】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態である熱交換形換気装置1について説明する。
図1は、熱交換形換気装置1の概略図である。熱交換形換気装置1は、建物内の天井裏または、側面壁内もしくは床下などに設置可能な屋内空間の給排気を行う換気装置であり、給排気の際に熱交換ができる機能を有する換気装置である。
【0013】
熱交換形換気装置1は、屋内から屋外に排気される空気(後述する排気流12)と屋外から屋内に給気される空気(後述する給気流11)とを熱交換しながら換気を行う。例えば、熱交換形換気装置1は、換気を行うとともに、この換気時に、給気流11の熱を排気流12へと伝達し、熱の不要な流入を抑制している。
【0014】
ここで、排気流12は、屋内から屋外に排出する空気の流れである。排気流12は、屋内から熱交換形換気装置1へと搬送される。熱交換形換気装置1により給気流11と熱交換された排気流12は、熱交換形換気装置1から屋外へと排出される。
【0015】
給気流11は、屋外から屋内に給気する空気の流れである。給気流11は、屋外から熱交換形換気装置1へと搬送される。熱交換形換気装置1により排気流12と熱交換された給気流11は、屋内へと給気される。
【0016】
熱交換形換気装置1は、屋内の空気RA(排気流12)と屋外の空気OA(給気流11)との間で熱交換しながら換気する装置である。
【0017】
熱交換形換気装置1は、内気口4と、排気口5と、外気口7と、給気口8と、熱交換素子2と、排気用送風機3と、給気用送風機6と、差圧検出部13と、制御部14と、を備える。
【0018】
内気口4は、屋内の空気RA(排気流12)を熱交換形換気装置1へ取り入れるための取入口である。内気口4は、図示しないダクトと接続することで屋内の室内等と連通する。内気口4は排気風路9の一部を構成する。内気口4は屋内側排気口ともいえる。
【0019】
排気口5は、排気流12を排気EAとして熱交換形換気装置1から屋外へ吐き出すための吐出口である。排気口5は、図示しないダクトと接続することで屋外と連通していてもよい。排気口5は、排気風路9の一部を構成する。排気口5は屋外側排気口ともいえる。
【0020】
外気口7は、屋外の空気OA(給気流11)を熱交換形換気装置1へ取り入れるための取入口である。外気口7は、図示しないダクトと接続することで屋外と連通していてもよい。外気口7は給気風路10の一部を構成する。外気口7は屋外側給気口ともいえる。
【0021】
給気口8は、給気流11を給気SAとして熱交換形換気装置1から屋内へ吐き出すための吐出口である。給気口8は、図示しないダクトと接続することで屋内の室内等と連通する。給気口8は、給気風路10の一部を構成する。給気口8は屋内側給気口ともいえる。
【0022】
熱交換素子2は、排気流12と給気流11との間で熱交換を行うための部材である。なお熱交換には、排気流12と給気流11との間で温度を交換する顕熱交換、または、顕熱交換および排気流12と給気流11との間で湿度を交換する潜熱交換の両方を行う全熱交換が該当する。
【0023】
熱交換素子2は、セルロース繊維をベースとした伝熱紙(伝熱板)によって形成された全熱交換素子である。ただし、材質はこれに限定されるものではない。熱交換素子2を構成する伝熱板としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートをベースとした透湿樹脂膜、あるいは、セルロース繊維、セラミック繊維、ガラス繊維をベースとした紙材料等を用いることができる。また、熱交換素子2を構成する伝熱板は、伝熱性を備えた薄いシートであって、気体が透過しない性質のものを用いることができる。この場合、熱交換素子2は、顕熱交換素子となる。
【0024】
排気用送風機3は、排気流12を内気口4から取り入れ、排気口5から吐き出すための送風機である。排気用送風機3は、図示しない排気用ファンと、排気用モータと、を有する。排気用ファンはシロッコファンなどの遠心羽根車である。排気用モータは、排気用ファンを回動可能に軸支する。排気用モータは例えば交流モータ(ACモータ:Alternating Current Motor)、または直流モータ(DCモータ:Direct Current Motor)である。排気用送風機3は、屋内の空気を排気風路9を介して排気流12として屋外へ搬送する。
【0025】
給気用送風機6は、給気流11を外気口7から取り入れ、給気口8から吐き出すための送風機である。給気用送風機は、図示しない給気用ファンと、給気用モータと、を有する。給気用ファンは給気用シロッコファンなどの遠心羽根車である。給気用モータは、給気用ファンを回動可能に軸支する。給気用モータは例えば交流モータ(ACモータ:Alternating Current Motor)、または直流モータ(DCモータ:Direct Current Motor)である。給気用送風機6は、屋外の空気を給気風路10を介して給気流11として屋内へ搬送する。
【0026】
また、熱交換形換気装置1の内部には、内気口4と排気口5とを連通する排気風路9と、外気口7と給気口8とを連通する給気風路10が形成されている。排気用送風機3により吸い込まれた排気流12は、排気風路9内の熱交換素子2、排気用送風機3を経由し、排気口5から屋外へと排出される。また、給気用送風機6により吸い込まれた給気流11は、給気風路10内の熱交換素子2、給気用送風機6を経由し、給気口8から屋内へと供給される。つまり、熱交換形換気装置1は、屋外から外気口7を通して吸い込まれた空気を、給気口8を通して屋内へ搬送するための給気風路10を備える。また、熱交換形換気装置1は、屋内から内気口4を通して吸い込まれた空気を、排気口5を通して屋外へ搬送するための排気風路9を備える。
【0027】
そして、熱交換形換気装置1は、熱交換換気を行う場合には、排気用送風機3及び給気用送風機6を動作させ、熱交換素子2において排気風路9を流通する排気流12と、給気風路10を流通する給気流11との間で熱交換を行う。これにより、熱交換形換気装置1は、換気を行う際に、屋内に取り入れる給気流11の熱を屋外に放出する排気流12へと伝達し、不要な熱の流入を抑制する。この結果、日本の夏季においては、換気を行う際に、屋外の温度が高い空気によって屋内の温度上昇を抑制することができる。また、熱交換形換気装置1は、換気を行う際に、屋外に放出する排気流12の熱を屋内に取り入れる給気流11へと伝達し、不要な熱の放出を抑制し、屋内に熱を回収する。この結果、日本の冬季においては、換気を行う際に、屋外の温度が低い空気による屋内の温度低下を抑制することができる。
【0028】
ここで、給気用送風機6は、給気風路10における熱交換素子2の下流に設けられる。具体的には、給気用送風機6は、給気風路10における熱交換素子2の下流であり給気口8の上流に設けられる。給気用送風機6が給気風路10における熱交換素子2の上流ではなく熱交換素子2の下流に設けられる理由は、空気を吸う位置に設けられるよりも空気を吐き出す位置に設けられる方が、給気用送風機6の消費電力に対する給気性能(給気効率)が良いことが実験によりわかったためである。即ち、給気効率を良くするために、給気用送風機6は、給気風路10における熱交換素子2の下流に設けられる。
【0029】
また、排気用送風機3は、排気風路9における熱交換素子2の下流に設けられる。具体的には、排気用送風機3は、排気風路9における熱交換素子2の下流であり排気口5の上流に設けられる。排気用送風機3が排気風路9における熱交換素子2の上流ではなく熱交換素子2の下流に設けられる理由は、空気を吸う位置に設けられるよりも空気を吐き出す位置に設けられる方が、排気用送風機3の消費電力に対する排気性能(排気効率)が良いことが実験によりわかったためである。即ち、排気効率を良くするために、排気用送風機3は、排気風路9における熱交換素子2の下流に設けられる。
【0030】
差圧検出部13は、外気口7近傍の空気の圧力である第一圧力P1と排気口5近傍の空気の圧力である第二圧力P2との圧力差を検出する。外気口7近傍とは、具体的には給気風路10における外気口7の下流であり熱交換素子2の上流である。排気口5近傍とは、具体的には排気風路9における排気用送風機3の下流であり排気口5の上流である。差圧検出部13は、例えば微差圧センサである。
【0031】
制御部14は、排気用送風機3、給気用送風機6、および差圧検出部13と電気的に通信可能に接続され、熱交換形換気装置1の制御を行う。制御部14の制御内容については後述する。
【0032】
次いで、
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る制御部14の各機能について説明する。
図2は制御部14及び周辺部の概略機能ブロック図である。
【0033】
制御部14は、風量取得部16と、排気用送風機制御部21と、給気用送風機制御部19と、記憶部17と、給気風量取得部18と、判定部20と、を備える。
【0034】
風量取得部16は、風量入力部15に入力される設定風量情報を取得する。設定風量はユーザが要望する換気風量である。ユーザが要望する換気風量とは、具体的にはユーザが要望する外気口7における給気流11の給気風量とユーザが要望する排気口5における排気流12の排気風量とのことである。ユーザが要望する外気口7における給気流11の給気風量とユーザが要望する排気口5における排気流12の排気風量とはどちらも同じ設定風量が設定される。
【0035】
風量入力部15は、ユーザによって設定風量情報が入力可能な端末に備えられる。設定風量情報を入力可能な端末とは、例えばスマートフォンや屋内の壁面などに設置されるリモートコントローラであり、無線通信または有線通信により制御部14と通信可能である。
【0036】
排気用送風機制御部21は、風量取得部16によって取得された設定風量が排気用送風機3から送風されるように、排気用送風機3の送風量制御を行う。また、給気用送風機制御部19は、風量取得部16によって取得された設定風量が給気用送風機6から送風されるように、給気用送風機6の送風量制御を行う。
【0037】
記憶部17は、排気口5における排気流12の排気風量と、第一圧力P1と第二圧力P2との圧力差と、外気口7における給気流11の給気風量と、を関連付けた風量テーブルを記憶する、いわゆるメモリである。
【0038】
風量テーブルについて
図3を参照して説明する。
図3は、記憶部17に記憶されている風量テーブルのデータ構造を示す図であり、風量テーブルの一例である。予め風量測定機と差圧検出部13を用いて、所定の排気風量と所定の給気風量の場合の圧力差を実験により測定し、測定結果として所定の排気風量と所定の給気風量とに対応する圧力差が風量テーブルに格納されている。風量測定機は、風量を測定可能な機器である。本実施の形態では一例として、排気風量が250[立方メートル/h]で給気風量が100[立方メートル/h]であれば圧力差はA[Pa]となる。また、排気風量が250[立方メートル/h]で給気風量が150[立方メートル/h]であれば圧力差はB[Pa]となる。また、排気風量が250[立方メートル/h]で給気風量が200[立方メートル/h]であれば圧力差はC[Pa]となる。また、排気風量が250[立方メートル/h]で給気風量が250[立方メートル/h]であれば圧力差はD[Pa]となる。また、排気風量が250[立方メートル/h]で給気風量が300[立方メートル/h]であれば圧力差はE[Pa]となる。圧力差は、A、B、C、D、Eの順に大きい。つまり、記憶部17は、排気風量が250[立方メートル/h]の場合の各給気風量に対応する圧力差を風量テーブルに記憶する。風量テーブル内の圧力差の値は、熱交換形換気装置1の大きさや、内気口4、排気口5、外気口7および給気口8の大きさや、熱交換素子2の材質等により異なる。
【0039】
同様に記憶部17は、排気風量が200[立方メートル/h]の場合の各給気風量に対応する圧力差を風量テーブルに記憶する。排気風量が200[立方メートル/h]で給気風量が100[立方メートル/h]であれば圧力差はF[Pa]となる。また、排気風量が200[立方メートル/h]で給気風量が150[立方メートル/h]であれば圧力差はG[Pa]となる。また、排気風量が200[立方メートル/h]で給気風量が200[立方メートル/h]であれば圧力差はH[Pa]となる。また、排気風量が200[立方メートル/h]で給気風量が250[立方メートル/h]であれば圧力差はI[Pa]となる。また、排気風量が200[立方メートル/h]で給気風量が300[立方メートル/h]であれば圧力差はJ[Pa]となる。圧力差は、F、G、H、I、Jの順に大きい。
【0040】
同様に記憶部17は、風量入力部15に入力可能な設定風量すべてを排気風量として、入力可能な排気風量毎に各給気風量に対応する圧力差を風量テーブルに記憶する。つまり、記憶部17は複数の風量テーブルを記憶する。また、本実施の形態の風量テーブルにおいて給気風量が50[立方メートル/h]毎に対応する圧力差を格納しているが、これに限らず10[立方メートル/h]毎に対応する圧力差を格納しても良い。より小さい給気風量単位である方が、後述する判定部20の判定をより正確にすることができる。ただし、より小さい給気風量単位である方が必要となるメモリの容量は大きくなる。
【0041】
給気風量取得部18は、排気用送風機3により排気口5から排気される風量と差圧検出部13が検出する圧力差と風量テーブルに基づいて、外気口7における給気流11の給気風量を取得する。排気用送風機3により排気口5から排気される風量とは、排気用送風機3の送風量である。排気用送風機3の送風量は、風量取得部16が取得した設定風量である。つまり、給気風量取得部18は、風量取得部16が取得した設定風量と、差圧検出部13が検出する圧力差をもとに、記憶部17が記憶する風量テーブルから外気口7における給気流11の給気風量を取得する。具体的に説明すると、風量取得部16が取得した設定風量が250[立方メートル/h]であり、圧力差がA[Pa]である場合、風量テーブルから外気口7における給気流11の給気風量として100[立方メートル/h]を取得する。
【0042】
判定部20は、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量と、排気用送風機3により排気口5から排気される風量とに基づいて、屋内が正圧か否かを判定する。具体的には、判定部20は、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量よりも大きければ屋内が屋外に対して正圧であると判定する。この場合、屋内へ給気される空気量が屋内から排気される空気量よりも多い状態である。また、判定部20は、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量以下であれば屋内が屋外に対して正圧ではないと判定する。屋内が屋外に対して正圧ではないということは、屋内が屋外に対して負圧か同じ圧力であるということである。負圧であるということは、屋内から排気される空気量の方が屋内へ給気される空気量よりも多い状態である。また、同じ圧力であるということは、屋内から排気される空気量と屋内へ給気される空気量とが同じ状態である。これにより屋内が正圧か否かを把握することができる。
【0043】
先述したように、屋内が負圧になることにより、日本の夏季においてダクトの表面に結露が生じることでカビやダニが発生するおそれがあるため、屋内は屋外に対して正圧であることが望まれる。
【0044】
給気用送風機制御部19は、判定部20により正圧ではないと判定されると、給気用送風機6の風量を上昇する。これにより屋内を正圧に近づけることができる。また、給気用送風機制御部19は、判定部20により正圧であると判定されるまで、給気用送風機6の風量を上昇する。これにより屋内を確実に正圧にすることができる。
【0045】
もし、熱交換形換気装置1において給気用送風機6が給気風路10における外気口7の下流かつ熱交換素子2の上流に配置されたとする。この場合、給気用送風機6の送風量を排気用送風機3の送風量よりも大きくすることで屋内を正圧とすることができる。即ち、給気用送風機6の送風量と排気用送風機3の送風量とを比較することで屋内が正圧か否か判定することができる。しかし、先述したように給気用送風機6は、給気風路10における熱交換素子2の下流に設けられることが望ましい。つまり本発明は、給気効率を落とすことなく、屋内が正圧か否かを判定することが可能な熱交換形換気装置を提供することができる。
【0046】
制御部14の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU(CentralProcessing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0047】
上記構成による熱交換形換気装置1の動作を説明する。
図4は、本実施の形態に係る制御部14の制御を示すフローチャートである。ここで、フローチャートではSを頭文字にして番号を割り振った。例えばS01などは処理ステップを指す。但し、処理ステップを示す数値の大小と処理順序は関係しない。
【0048】
風量取得部16は、設定風量情報を取得する。排気用送風機制御部21は、設定風量で排気用送風機3を運転させる。また、給気用送風機制御部19は、設定風量で給気用送風機6を運転させる(S01)。これにより、排気口5における排気流12の風量は設定風量となる。また、給気口8における給気流11の風量も設定風量となる。
【0049】
給気風量取得部18は、差圧検出部13が検出する圧力差を取得する(S02)。給気風量取得部18は、排気用送風機3により排気口5から排気される風量と圧力差と風量テーブルに基づいて、外気口7における給気流11の給気風量を取得する(S03)。
【0050】
判定部20は、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量よりも大きければ屋内が屋外に対して正圧であると判定する(S04のYes→S05)。
【0051】
また、判定部20は、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量以下であれば屋内が屋外に対して正圧ではないと判定する(S04のNo→S06)。この場合、給気用送風機制御部19は、給気用送風機6の風量を上昇する(S07)。そして、一定時間が経過して給気用送風機6の風量が安定した際に、再度、給気風量取得部18は、差圧検出部13が検出する圧力差を取得する(S02)。判定部20により屋内が正圧ではないと判定された場合、判定部20により屋内が正圧であると判定されるまで、給気用送風機6の送風量を段階的に増加させる。これにより、給気用送風機6の無駄な送風量の増加を抑制しつつ屋内を正圧にすることができる。
【0052】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
例えば、給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量より小さければ、給気用送風機6の風量を上昇するとしてもよい。給気風量取得部18が取得した外気口7における給気流11の給気風量が排気用送風機3により排気口5から排気される風量と同じであれば、屋内は正圧ではないが屋外に対して同じ圧力であるということである。屋内が屋外に対して同じ圧力であるということは、屋外の空気が建物の隙間等から屋根裏等に流入しないため、上記制御を行っても良い。これにより、制御内容の自由度が向上できる。
【0054】
また、制御部14は、本実施の形態において、熱交換形換気装置1の本体に配置されているが、これに限定されない。例えば、設定風量情報を入力可能な端末に備えられても良い。設定風量情報を入力可能な端末と熱交換形換気装置1は、無線通信もしくは有線通信により通信可能とされる。これにより、構成の自由度が向上できる。
【0055】
また、制御部14は記憶部17を有してなくても良い。この場合、判定部20は、排気用送風機3により排気口5から排気される風量と差圧検出部13が検出する圧力差とに基づいて屋内が正圧か否かを判定する。具体的には、判定部20は、排気口5から排気される排気用送風機3の送風量と差圧検出部13が検出する圧力差から、予め決められた演算式により外気口7における給気流11の給気風量を算出し、屋内が正圧か否かを判定する。演算式は例えば一次関数の演算式である。演算式は、予め風量測定機と差圧検出部13を用いて、所定の排気風量と所定の給気風量の場合の圧力差を実験により測定し、測定結果より排気風量と圧力差から給気風量を算出可能な演算式が導かれる。これにより、記憶部17を有することなく正圧か否かを判定することができる。ただし、演算式は近似式となるため、記憶部17に記憶された風量テーブルを用いる方がより正確に、屋内が正圧か否かを判定することができる。
【0056】
(発明の概要)
本発明に係る熱交換形換気装置は、屋外から屋外側給気口を通して吸い込まれた空気を、屋内側給気口を通して屋内へ搬送するための給気風路と、屋外の空気を給気風路を介して給気流として屋内へ搬送する給気用送風機と、屋内から屋内側排気口を通して吸い込まれた空気を、屋外側排気口を通して屋外へ搬送するための排気風路と、屋内の空気を排気風路を介して排気流として屋外へ搬送する排気用送風機と、給気流と排気流との間で熱交換を行う熱交換素子と、屋外側給気口近傍の空気の圧力と屋外側排気口近傍の空気の圧力との圧力差を検出する差圧検出部と、屋内が正圧か否かを判定する判定部と、を備え、給気用送風機は、給気風路における熱交換素子の下流に設けられ、排気用送風機は、排気風路における熱交換素子の下流に設けられ、判定部は、排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量と差圧検出部が検出する圧力差とに基づいて屋内が正圧か否かを判定するという構成を有する。これにより、給気効率を落とすことなく、屋内が正圧か否かを把握することができるという効果を奏する。
【0057】
また、屋外側排気口における排気流の排気風量と、屋外側給気口近傍の空気の圧力と屋外側排気口近傍の空気の圧力との圧力差と、屋外側給気口における給気流の給気風量と、を関連付けた風量テーブルを記憶する記憶部と、排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量と差圧検出部が検出する圧力差と風量テーブルに基づいて、屋外側給気口における給気流の給気風量を取得する給気風量取得部と、をさらに備え、判定部は、給気風量取得部が取得した屋外側給気口における給気流の給気風量と、排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量とに基づいて、屋内が正圧か否かを判定するという構成にしてもよい。これにより、風量テーブルを用いて給気風量を取得し、給気風量をより正確に把握することができるので、屋内が正圧か否かの判定精度を向上することができるという効果を奏する。
【0058】
また、判定部は、給気風量取得部が取得した屋外側給気口における給気流の給気風量が排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量よりも大きければ正圧であると判定し、給気風量取得部が取得した屋外側給気口における給気流の給気風量が排気用送風機により屋外側排気口から排気される風量以下であれば正圧ではないと判定するという構成にしてもよい。これにより、屋内が正圧か否かを把握することができるという効果を奏する。
【0059】
また、判定部により正圧ではないと判定されると、給気用送風機の風量を上昇する給気用送風機制御部をさらに備えるという構成にしてもよい。これにより、屋内が正圧ではないと判定された場合に、給気用送風機の送風量を上昇させることができるので、屋内を正圧に近づけることができるという効果を奏する。
【0060】
また、給気用送風機制御部は、判定部により正圧であると判定されるまで、給気用送風機の風量を上昇するという構成にしてもよい。これにより、屋内が正圧ではないと判定された場合に、屋内が正圧になるまで給気用送風機の送風量を上昇させ続けることができるので、屋内を確実に正圧にできるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、建物の換気に使用される熱交換形換気装置として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 熱交換形換気装置
2 熱交換素子
3 排気用送風機
4 内気口
5 排気口
6 給気用送風機
7 外気口
8 給気口
9 排気風路
10 給気風路
11 給気流
12 排気流
13 差圧検出部
14 制御部
15 風量入力部
16 風量取得部
17 記憶部
18 給気風量取得部
19 給気用送風機制御部
20 判定部
21 排気用送風機制御部