(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047378
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】イオン発生装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20230330BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20230330BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H01T23/00
A61L9/22
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156252
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】荒川 亮
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB06
4C180BB12
4C180CB01
4C180EA54X
4C180GG09
4C180HH01
4C180HH05
4C180KK03
4C180LL11
(57)【要約】
【課題】実使用環境課において、帯電微粒子水をより広範囲に噴霧可能なイオン発生装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】帯電微粒子水を生成する静電霧化部と、前記静電霧化部が生成した帯電微粒子水を運ぶための気流を生成する送風機と、周囲の温度を検知する温度センサと、周囲の湿度を検知する湿度センサと、前記検知した温度と前記検知した湿度に基づいて前記送風機の風量を制御する制御部とを備えたイオン発生装置において、帯電微粒子水の噴霧時の初速度を最適化するイオン発生装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電微粒子水を生成する静電霧化部と、
前記静電霧化部が生成した帯電微粒子水を運ぶための気流を生成する送風機と、
周囲の温度を検知する温度センサと、
周囲の湿度を検知する湿度センサと、
前記検知した温度と前記検知した湿度とに基づいて前記送風機の風量を制御する制御部と、
を備えたイオン発生装置。
【請求項2】
温度と湿度とから構成される周囲環境を複数に分割して分割領域とし当該分割領域と風量とを対応させて記憶する制御テーブルを備え、
前記制御部は、
前記温度センサが検知した温度と前記湿度センサが検知した湿度と前記制御テーブルとに基づいて前記送風機の風量を決定する請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記制御テーブルは、
前記周囲環境を少なくとも低温高湿度領域と、前記低温高湿度領域よりも高温である高温低湿度領域と、前記低温高湿度領域及び前記高温低湿度領域に属さないその他領域と、に分割して記憶する請求項2記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記制御テーブルは、
前記高温低湿度領域に対応する風量を前記低温高湿度領域に対応する風量よりも小さくした請求項3記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記制御テーブルは、
さらに前記その他領域に対応する風量を、前記高温低湿度領域に対応する風量よりも大きく且つ前記低温高湿度領域に対応する風量よりも小さくした請求項4記載のイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に帯電微粒子水を放出するイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中にイオンを供給し、空気中の菌を抑制したり(除菌)、空気中の臭いを分解して除去する(脱臭)空気浄化を目的としてイオン発生装置が開発され、一般家庭に広く普及している。
【0003】
イオン発生装置として、放電電極に電圧を印加させることで、正及び負、又は正負のいずれか一方のイオンを放出するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、放電電極に水を供給し、当該水に電圧を印加することで、帯電微粒子水を生成するイオン発生装置(あるいは、静電霧化装置)も知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
帯電微粒子水においては、放電電極に電圧を印加させることで発生させたイオンの周囲を水で保護することで、当該イオンが空間中に放出された後、消滅するまでの時間(寿命)が水の保護が無い場合と比較して長いという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-230706号公報
【特許文献2】特開2011―253780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、さらなる広範囲に除菌・脱臭効果を届けるには、帯電微粒子水の長寿化に加えて、さらに遠方にまで帯電微粒子水を到達させることが望まれる。
【0008】
そこで本発明は、帯電微粒子水の到達距離を拡大することにより、除菌・脱臭の効果範囲を拡大したイオン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯電微粒子水を生成する静電霧化部と、前記静電霧化部が生成した帯電微粒子水を運ぶための気流を生成する送風機と、周囲の温度を検知する温度センサと、周囲の湿度を検知する湿度センサと、前記検知した温度と前記検知した湿度とに基づいて前記送風機の風量を制御する制御部とを備えたイオン発生装置を提供し、これにより所期の目的を達成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、除菌・脱臭の効果範囲を拡大したイオン発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明に係るイオン発生装置のシステム構成図
【
図3】本発明に係るイオン発生装置の本体部の組立図
【
図4】本発明に係るイオン発生装置の操作部の組立図
【
図6】本発明に係るイオン発生装置のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明における帯電微粒子水の発生原理を
図1に示す。
【0015】
帯電微粒子水の発生手段としての静電霧化部2は、ペルチェ素子3と、ペルチェ素子を冷却する冷却フィン4と、針状又は球状の放電電極5と、リング状の対向電極6と、で構成されている。
【0016】
放電電極5は、ペルチェ素子3の冷却面と接合されている。
【0017】
ペルチェ素子3は、放電電極5を冷却し、ペルチェ素子3周囲の大気を露点温度以下とすることで、放電電極5の先端(
図1の下方の球体部)に結露水が生成される。また、この時、放電電極5と対向電極6との間に高電圧(絶縁破壊電圧)を印加することで放電電極5と対向電極6との間に電場が形成される。
【0018】
放電電極5の先端に電荷が集中した際、対抗電極6との間でコロナ放電が生じ、コロナ放電によって放電電極5の先端近傍で大気中に存在する水や酸素分子が分解されることでOHラジカルなどの強い酸化分解作用を有するイオンが生成される。
【0019】
また、結露水においては、電極間への高電圧印加によって結露水表面に急激な電荷集中が生じる。この際、結露水は数ナノメートル程度の微小な水滴に分裂することで表面積を急速に拡大し、表面電荷を保持するはたらきをする。結露水が微小な水滴に分裂する際、OHラジカルなどのイオンを被膜することで、微小水滴中にイオンを含んだ帯電微粒子水7が生成される。
【0020】
その後、帯電微粒子水7は電極間の電場方向に沿って加速され、リング状の対抗電極6から射出される。
【0021】
以上が、静電霧化部2による帯電微粒子水の発生原理である。
【0022】
一般的に、OHラジカルなどのイオンは極めて反応性が高く、アンモニアなどの臭気物質や菌と結合し、酸化させることで対象物の分解や除菌を行うことが可能とされている。一方で、その反応性の高さから、空間中に存在できる寿命は極めて短いものであることが知られる。
【0023】
帯電微粒子水7は、OHラジカルなどのイオンを微小な水滴で被膜することで保護しており、従来のイオン単体での空間浮遊時より長い寿命を有するという特徴を有する。
【0024】
ところで、空間中に噴霧された水粒子単体での挙動について考えると、一般的に、空気中に噴霧・拡散される水粒子の水平方向の到達距離は、水粒子に与えられる水平方向の初速度と水粒子が噴霧・拡散される環境の温湿度に依存することが知られている。
【0025】
水粒子と同様に、帯電微粒子水も、環境の温湿度に依存することが予想され、つまり、空間中に噴霧する水粒子の到達距離を最大とする為には、温湿度条件毎に最適な初速度を与えるのが好ましい。
【0026】
本発明においては、OHラジカルなどのイオンを被膜する水滴に対して、使用環境の温湿度を考慮した送風制御を実行することで、空間を浮遊する水滴自体の寿命を最大化し、より広範囲への除菌・脱臭効果を実現するものである。
【0027】
次に、イオン発生装置の全体の構造について
図2、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0028】
図2にはイオン発生装置のシステム構成、
図3にはイオン発生装置の本体部の組立図、
図4にはイオン発生装置1の操作部の組立図をそれぞれ示す。
【0029】
図2に示すように、イオン発生装置1は、本体部8と、操作部9と、を備える。
【0030】
本体部8は、構造の一部が天井に埋め込まれる形で設置される。本体部8は、下面に開口を設けた円筒形状を有し、内部空間に静電霧化部2を備えるが、詳細は後述する。
【0031】
操作部9は、本体部8と同様に、構造の一部が壁面に埋め込まれる形で設置され、本体部8と有線又は無線により通信可能に接続される。操作部9は、例えばOn/Offを切り替えるスイッチを備えており、操作者がボタンを押下することで、操作部9から本体部8に動作命令を送信することができるが詳細は後述する。
【0032】
本体部8と操作部9とは、同一の部屋に対して設置され使用される。
【0033】
図3(a)は、本体部8の内部空間に配置された各部位を示す図であり、
図3(b)は、本体部8を設置状態で下方から見た図である。
【0034】
図3(a)に示すように、本体部8の内部空間には、下方からグリル11、仕切り板12、静電霧化部2、送風機としてのターボファン13及び電動機16、制御ケース17が、この順に配置される。
【0035】
グリル11は、円盤形状を有し、
図3(b)に示すように、平面中央部に吸い込み口14、外周部に吹き出し口15が設けられる。
【0036】
仕切り板12は、吸い込み口14と外周部に吹き出し口15とを分断する。
【0037】
静電霧化部2は、仕切り板12によって分断された空気流路において、外周側、つまり吹出し口15側の空気流路内に配置される。
【0038】
ターボファン13は、電動機16に接続され、回転することにより気流を生成する。
【0039】
制御回路ケース17内には、制御部として、主に電源制御や電動機16の回転制御などを行う制御基板a18と、静電霧化部2を制御する制御基板b19が格納される。
【0040】
上記構成において、ターボファン13が旋回することによって、グリル11の中央部の吸込み口14を通じて部屋の空気を吸込み、仕切り板12の内周を通過してターボファン13に引き寄せられる。ターボファン13に到達した部屋の空気は、ターボファン13による外周方向への遠心力に基づいて、仕切り板12の上部より仕切り板12の外周に放出され、仕切り板12の外周を通過してグリル11の外周部の吹き出し口15から送り出される。
【0041】
上述の吸い込み口14から吹き出し口15の流れの過程において、流路中に設けられた静電霧化部2から放出された帯電微粒子水7が空気に取り込まれ、吹き出し口15からは、除菌・脱臭成分を有する帯電微粒子水7を含んだ空気が放出される。
【0042】
次に、操作部の構成ついて説明する。
図4に示すように、操作部9は、押下することによって接点の入/切が切り替わるスイッチ機構21、スイッチ機構21を操作する為の操作パネル22、取付フレーム23、温度センサ24A、湿度センサ24B、温度センサ24A及び湿度センサ24Bからの信号を処理する制御基板c25を備える。
【0043】
図3の本体部8と
図4の操作部9とは、
図2にて示したように、操作部9のスイッチの信号を伝える導線(例えば、VVFケーブル)及びセンサの信号を伝える信号線によって結線された状態で使用される。
【0044】
また本体部8を構成する制御基板a18はメモリ(記憶部)を有し、制御テーブルを格納する。
【0045】
制御テーブルについて、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明する。なお
図5(a)は、周囲環境に対して温度及び湿度から構成される分割領域のイメージ図であり、
図5(b)は、
図5(a)の分割領域とイオン発生装置1からの送風量を対応させた制御テーブルのイメージ図である。
【0046】
制御テーブルは、温度と(相対)湿度から構成される周囲環境を複数に分割し、分割した各領域、すなわち分割領域と風量とを対応させて記憶する。
図5(a)では、分割領域をLv.1~Lv.3として示している。具体的には、分割領域は周囲環境に基づいて『低温高湿度領域(Lv.3)』・『高温低湿度領域(Lv.1)』・『低温高湿度領域 及び 高温低湿度領域に属さないその他領域(Lv.2)』のように分割される。
【0047】
また、
図5(b)に示すように、分割領域に対応する風量としては、『低温高湿度領域 の風量』>『低温高湿度領域 及び 高温低湿度領域に属さないその他領域』>『高温低湿度領域 の風量』の関係である。なお、
図5に示した制御テーブルは一例であり、例えば温度と湿度とを入力することで一意の風量が得られるように対応付けられておれば良い。
【0048】
例えば操作者により操作部9を介して本体部8の動作が開始されると、本体部8が操作部9を構成する温度センサ24A及び湿度センサ24Bから温度及び湿度を受信する。温度及び湿度を受信すると、制御部は、制御基板a18のメモリに記憶されている制御テーブルを参照することで、温度及び湿度に対応する風量(値)を取得し、風量(値)に基づいて送風機の出力を制御する。
【0049】
ここで、
図5の制御テーブルにおいて特定の温湿度の閾値条件(温度A>20℃、温度B<30℃、湿度a>50%RH、湿度b<60%RH)、また、動作環境の温湿度が温度35℃、湿度40%RHであった場合の動作フローを説明する。
【0050】
図6は、実施形態1に係るイオン発生機の動作時のフローチャートである。
S1からS9までの添え字は各処理のステップを識別する為のものであり、処理ステップの添え字(S1~S9)の数値の大小関係は処理順序とは無関係である。
【0051】
初めに、操作部9に設けられたスイッチがON状態となることで本体部が駆動する(S1)。この際、本体部8において、制御基板a18、制御基板b19が駆動する(S2)。その後、本体部8の制御基板a18において、動作環境の温湿度に依らず
図5記載の温湿度レベルはレベル2の状態として初期風量が設定される(S3)。
【0052】
設定された初期風量は電動機の回転数として反映されることで前述の風量設定が実行される(S4)。
【0053】
風量設定の反映後、所定時間の待機時間が設けられる。この待機時間は例えば10分程度の時間である(S5)。特に、初期起動後は、帯電微粒子水7が空間中に放出されることで周囲環境の温度及び湿度の変化が顕著となる。初期起動後の待機時間については、イオン発生装置1と周囲環境における温度及び湿度の安定化を目的としたものである。
【0054】
初期起動後、操作部9の温度センサ24A,湿度センサ24Bによって動作環境の温湿度が計測される(S6)。操作部で計測された温湿度は本体部の制御基板a18に送信される。ここで、前述の条件においては、温度35℃、湿度40%RHが検出される。
【0055】
制御基板a18は、操作部で計測された温湿度の情報を受信し、同制御基板18のメモリに保存された制御テーブル(
図5)を参照することで、本体の送風レベルXを決定する。ここで、前述の条件においては、送風レベルX=1となる(S7)。
【0056】
また、制御基板a18は、制御基板a18によって駆動されるモータの電流値からファンの回転数を計測し、送風量を監視する。監視された送風量は
図5記載の制御テーブルによってレベル分類され、この時の送風レベルをレベルYとする。前述したように、動作初期状態ではレベルY=2となる。
【0057】
初期状態以降の動作フローにおいては、レベルX、Yのそれぞれの算定後に、レベルX,Yの比較が行われる(S8)。レベルX、Yが異なる値(X≠Y)の時、制御基板a18からレベルXで送風量(送風レベル)を制御するように電動機16に対して制御信号が送信される。レベルX、Yが同じ値(X=Y)の時、送風量の変更の必要は無く、制御基板a18から送信される電動機16の制御信号は送風レベルY(=X)を保持する状態が継続される。前述の条件においては、X=1,Y=2であるから、送風レベル2となるように制御基板a18から電動機16の電流を制御するように信号が送信される(S9)。
【0058】
本発明では、温湿度の計測及び風量制御の切替を所定の時間間隔で繰り返すことで空間の温湿度に応じて最適な風量制御を実行し、実使用環境下において広範囲に除菌/脱臭効果を有するイオン発生装置1を実現する。ここで所定の時間間隔とは、例えば、10分程度の時間間隔である。
【0059】
ここで、最適な風量制御とは、イオン発生装置1が帯電微粒子水7に与える吹出時の初速度の最適化を意味する。本発明においては、送風機としてのターボファン13及び電動機16によって与えられる風量を周囲環境に応じて変化させることで帯電微粒子水7の吹出し時の初速度をコントロールし、所期の目的を達成したものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかるイオン発生装置は、イオンによってもたらすことができる効果や効能を居住空間に供給することに有用である。また、クローゼットやバス、トイレ、あるいは倉庫などの非居住空間においても有用である。
【符号の説明】
【0061】
1. イオン発生装置
2. 静電霧化部
3. ペルチェ素子
4. 冷却フィン
5. 放電電極
6. 対抗電極
7. 帯電微粒子水
8. 本体部
9. 操作部
10. 本体ケース
11. グリル
12. 仕切り板
13. ターボファン
14. 吸い込み口
15. 吹き出し口
16. 電動機
17. 制御回路ケース
18. 制御基板a
19. 制御基板b
20. 制御回路ケースカバー
21. スイッチ機構
22. 操作パネル
23. 取付フレーム
24A. 温度センサ
24B. 湿度センサ
25. 制御基板c