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  • 特開-魚醤及び魚醤の製造方法 図1
  • 特開-魚醤及び魚醤の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047380
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】魚醤及び魚醤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20230330BHJP
【FI】
A23L27/50 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156254
(22)【出願日】2021-09-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 五島の椿株式会社及び金澤 竜司が、https://shop.gotonotsubaki.co.jp https://shop.gotonotsubaki.co.jp/collections/goto-hishioで公開されている五島の椿株式会社のウェブサイトにて、谷川 富隆及び金澤 竜司が発明した魚醤について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】521420738
【氏名又は名称】五島の椿株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521421322
【氏名又は名称】金澤 竜司
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 富隆
(72)【発明者】
【氏名】金澤 竜司
【テーマコード(参考)】
4B039
【Fターム(参考)】
4B039LB12
4B039LC01
4B039LG14
4B039LG20
4B039LQ02
4B039LQ03
4B039LQ11
4B039LR01
4B039LR22
(57)【要約】
【課題】従来よりも短期間で製造可能な魚醤を提供する。
【解決手段】生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵及び熟成して得られる魚醤である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵及び熟成して得られる魚醤。
【請求項2】
前記酵母が、受託番号:NITE BP-01921の酵母である、請求項1に記載の魚醤。
【請求項3】
塩分濃度が8質量%~12質量%である請求項1又は請求項2に記載の魚醤。
【請求項4】
生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵する工程を備えた魚醤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、魚醤及び魚醤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚醤は、魚類を主な原料にした液体状の調味料である(例えば非特許文献1参照)。従来、魚醤の製造には、例えば1~3年という長期間熟成を要していた。
また、魚醤は、においが生臭いという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bull. Soc. Sea Water Sci., Jpn., 70, 283 - 288(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、従来よりも短期間で製造可能な魚醤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意研究を重ねた結果、魚醤を開発した。この成果に基づいて、次の魚醤を提供する。
【0006】
生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵及び熟成して得られる魚醤。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】魚醤の製造方法の一例を示す説明図である。
図2】魚醤の製造方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0009】
1.魚醤
魚醤は、生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵及び熟成して得られる。
(1)生魚
生魚は、特に限定されない。生魚は、魚醤(ナンプラー)独特の生臭さがなくなり、だし醤油のような香り豊かで、味も美味しくなるという観点から、生魚の種類毎に魚醤を作ってブレンドして使うことが好ましい。このようにブレンドすると、ブレンドした魚醤の味の安定性が高くなる。また、ブレンドすることで、魚醤の味をコントロールできる。
ブレンドの割合は特に限定されない。例えば、生魚として、アジを原料に用いた魚醤を、魚醤全量を100質量%とした場合に、60質量%~75質量%含有することが好ましい。この割合のブレンドでは、大豆麹を用いた場合には、酸臭が少なく、生臭が少なく、香りが良く、旨味が強い魚醤となる。また、この割合のブレンドでは、米麹を用いた場合には、酸臭が少なく、生臭が少なく、香りが良く、旨味が強い魚醤となる。
なお、アジ以外の生魚としては、魚醤の旨味を保持しながら、水産資源の有効利用の観点から、例えば、イスズミ、タイ、トビウオ、キビナゴ等が好適に用いられる。
【0010】
(2)麹
麹は、澱粉を含む製麹原料に種麹を蒔くとともに種麹を構成する麹菌を増殖させて形成される。具体的には、麹として生麹が好適に用いられる。種麹は、特に限定されず、例えば、白麹、黄麹、黒麹など適宜採用可能である。製麹原料には、でんぷん質物が好適に用いられる。また、麹は、特に限定されず、米麹、大豆麹、麦麹等の穀物に由来する麹が好適に用いられる。
麹は、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0011】
(3)酵母
酵母は、特に限定されない。生臭さが抑制された魚醤を短期間で製造する観点から、例えば、五島つばき酵母2号と称される酵母が好適に用いられる。
この酵母(五島つばき酵母2号)は、2014年8月28日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE P-01921として国内寄託され、その後にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管されて、2019年9月30日にNITE BP-01921として国際寄託の受託番号が付与されている。
【0012】
(4)原料の混合割合
製造された魚醤が、魚醤(ナンプラー)独特の生臭さがなくなり、だし醤油のような香り豊かに仕上がり、かつ味も美味しくなるとの観点からの好ましい各原料の混合割合は次の通りである。
生魚の混合割合は、酵母以外の原料全量(生魚、麹、食塩、及び水の合計量)を100質量部とした場合に、12質量部以上22質量部以下が好ましく、14質量部以上20質量部以下がより好ましく、15質量部以上19質量部以下が更に好ましい。
麹の混合割合は、酵母以外の原料全量(生魚、麹、食塩、及び水の合計量)を100質量部とした場合に、12質量部以上22質量部以下が好ましく、14質量部以上20質量部以下がより好ましく、15質量部以上19質量部以下が更に好ましい。
食塩の混合割合は、酵母以外の原料全量(生魚、麹、食塩、及び水の合計量)を100質量部とした場合に、5質量部以上15質量部以下が好ましく、7質量部以上13質量部以下がより好ましく、8質量部以上12質量部以下が更に好ましい。本開示では、塩分濃度が低くても、麹及び酵母の組合せ早く発酵できるので雑菌がわきにくい。よって、製造される魚醤の塩分濃度が抑えられるから健康によい。
水の混合割合は、酵母以外の原料全量(生魚、麹、食塩、及び水の合計量)を100質量部とした場合に、46質量部以上66質量部以下が好ましく、51質量部以上61質量部以下がより好ましく、53質量部以上59質量部以下が更に好ましい。
酵母の混合割合は、酵母以外の原料全量(生魚、麹、食塩、及び水の合計量)を100質量部とした場合に、0.05質量部以上0.15質量部以下が好ましく、0.07質量部以上0.13質量部以下がより好ましく、0.09質量部以上0.11質量部以下が更に好ましい。
【0013】
2.魚醤の製造方法
魚醤の製造方法は、生魚、麹、酵母、食塩、及び水を含んだ原料を、発酵する工程を備える。
魚醤の製造方法の好ましい一例を以下に説明する。
水としては、好ましくは45℃以上55℃以下の水、より好ましくは47℃以上52℃以下の水を用いる。
水に、食塩、麹、生魚、及び酵母を入れて攪拌する。食塩、麹、生魚、及び酵母を入れる順序は問わない。食塩、麹、生魚、及び酵母は、別々に入れても一度に入れてもよい。
なお、生魚は、水に入れる前に裁断することが望ましい。
【0014】
攪拌して得られた混合物(諸味)を発酵する。発酵において熟成も進行する。
発酵期間は、特に限定されない。発酵期間は、生産性を高める観点から、従来よりも短期間である20日以上40日以下が好ましい。
【0015】
発酵後に圧搾して魚醤が得られる。魚醤は、既述のようにブレンドして用いることが好ましい。
その後、容器に充填され、火入れ、密栓、放熱等を行って完成する。完成品は、包装、品質検査、保管等が必要に応じて行われる。
【実施例0016】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
1.魚醤
(1)実施例1
図1の工程に沿って、生魚毎に魚醤を製造した。なお、麹には、大豆麹を用いた。酵母には、上述の「五島つばき酵母2号」を用いた。
次に、図2に沿って、製品を完成させた。この際、アジを原料に用いた魚醤72質量%と、その他の魚を原料に用いた魚醤28質量%をブレンドした。
(2)実施例2
麹に米麹を用いた以外は、実施例1と同様に製品を完成させた。
(3)比較例1
市販のナンプラーを用いた。
(4)比較例2
市販のいしる(いしり)を用いた。
【0017】
2.官能評価
5人のモニターによって官能評価した。
【0018】
3.結果
(1)実施例1
表1に実施例1の結果を示す。表1において、5段階評価を採用しており、数字か高いほど強く、数字が低いほど弱いことを示す。また、表2において各モニターの感想を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
(2)実施例2
表3に実施例2の結果を示す。表3においても、5段階評価を採用しており、数字か高いほど強く、数字が低いほど弱いことを示す。また、表4において各モニターの感想を示す。
【0022】
【表3】

【表4】
【0023】
(3)比較例1
表5に比較例1の結果を示す。表5においても、5段階評価を採用しており、数字か高いほど強く、数字が低いほど弱いことを示す。また、表6において各モニターの感想を示す。
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
(4)比較例2
表7に比較例2の結果を示す。表7においても、5段階評価を採用しており、数字か高いほど強く、数字が低いほど弱いことを示す。また、表8において各モニターの感想を示す。
【0027】
【表7】
【0028】
【表8】
【0029】
(まとめ)
実施例1,2は、比較例1,2に比べて、酸臭が少なく、生臭が少なく、香りが良く、旨味が強かった。
【0030】
上記で詳述した実施形態、実施例に限定されず、様々な変形および変更が可能である。
図1
図2