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特開2023-47395換気システム、空気調和装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047395
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】換気システム、空気調和装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20230330BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20230330BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230330BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20230330BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20230330BHJP
   F24F 6/04 20060101ALN20230330BHJP
   F24F 110/52 20180101ALN20230330BHJP
   F24F 110/64 20180101ALN20230330BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20230330BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/003
F24F7/007 B
F24F7/08 101N
F24F8/108 110
F24F11/63
F24F6/04
F24F110:52
F24F110:64
F24F110:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156287
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
(72)【発明者】
【氏名】厳 辰旭
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
【テーマコード(参考)】
3L055
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BA02
3L056BD01
3L056BD06
3L260BA09
3L260BA13
3L260CA35
3L260CB55
3L260CB83
3L260DA15
3L260EA07
3L260FC01
(57)【要約】
【課題】 室内に実際に供給される空気質を測定することができ、適切に給排気の制御を行うことが可能な換気システム、空気調和装置および制御方法を提供すること。
【解決手段】 換気システムは、室外の空気を室内に供給する給気ファン21を備える給気風路18と、室内の空気を室外へ排出する排気ファン23を備える排気風路19と、給気風路18および排気風路19の途中に配置され、室内の空気と室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器11と、室内に近隣した位置に設置され、給気ファン21により室内へ供給される熱交換器11を通過した後の室外の空気の空気質を測定するIAQセンサ31と、IAQセンサ31の測定結果に基づき、給気ファン21および排気ファン23による給排気を制御する制御回路30とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給排気を制御する換気システムであって、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
前記室内の空気を前記室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記室内に近隣した位置に設置され、前記給気手段により前記室内へ供給される前記熱交換器を通過した後の前記室外の空気の空気質を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づき、前記給気手段および前記排気手段による給排気を制御する制御手段と
を含む、換気システム。
【請求項2】
前記熱交換器を迂回するバイパス風路と、
前記バイパス風路の入口と、前記熱交換器を通過させるための入口とのいずれか一方を開き、他方を閉じるように換気モードに対応して開閉する開閉手段と
を含み、
前記制御手段は、前記測定結果に基づき、前記換気モードの切り替え制御を行う、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記測定手段は、空気中の二酸化炭素の濃度を測定する、請求項1または2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記給気風路内の前記室外の空気を導入する給気導入口と前記熱交換器との間に、前記室外の空気に含まれる粒子を捕集する捕集手段を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項5】
前記測定手段は、空気中の粒子の濃度を測定する、請求項4に記載の換気システム。
【請求項6】
前記給気風路内の前記室外の空気を前記室内へ吹き出す給気吹出口と前記熱交換器との間の前記給気手段の吐出側に、加湿器、ヒータ、直膨式熱交換器の少なくとも1つを含み、
前記測定手段は、前記加湿器、前記ヒータ、前記直膨式熱交換器の少なくとも1つより室内側に設置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項7】
前記測定手段は、前記室内と前記換気システムの前記室外の空気を吹き出す給気吹出口とを繋ぐ管内の、前記室内に近隣した位置に設置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項8】
前記換気システムの前記室外の空気を吹き出す給気吹出口と、空気調和装置の室内機とが管により接続され、前記測定手段が、前記室内機の空気吹出口に近隣した位置に設置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記測定結果の時間的な変化に基づき、前記熱交換器の保守時期を予測する、請求項1~8のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記熱交換器の保守時期を予測するために、外部システムへ前記測定結果を送信する、請求項1~8のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項11】
室内機と、室外機と、前記室内機と接続される換気システムとを含む空気調和装置であって、
前記換気システムが、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
前記室内の空気を前記室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記室内機の空気吹出口に近隣した位置に設置され、前記給気手段により前記室内へ供給される前記熱交換器を通過した後の前記室外の空気の空気質を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づき、前記給気手段および前記排気手段による給排気を制御する制御手段と
を含む、空気調和装置。
【請求項12】
換気システムにより給排気を制御する方法であって、
前記換気システムは、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
前記室内の空気を前記室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記室内に近隣した位置に設置される測定手段と、
制御手段と
を含み、
前記測定手段が、前記給気手段により前記室内へ供給される前記熱交換器を通過した後の前記室外の空気の空気質を測定するステップと、
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づき、前記給気手段および前記排気手段による給排気を制御するステップと
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給排気を制御する換気システム、空気調和装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビル、病院等の建物は、省エネルギー化や快適性等のために気密性が向上している。建物の気密性が向上すると、室内で発生する水蒸気や二酸化炭素、各種のにおい成分等が汚染物質として蓄積し、室内の空気質(IAQ:Indoor Air Quality)が悪化しやすくなる。このため、これらの汚染物質を室外へ排出し、室外の新鮮な空気を取り入れ、空気質を良好に保つべく、換気システムの必要性が高まっている。
【0003】
換気システムには、室内と室外の給排気のみを行うシステム、給排気において熱を移動させることが可能な顕熱交換エレメントを備えたシステム、給排気において熱と湿度を移動させることが可能な全熱交換エレメントを備えたシステムがある。
【0004】
全熱交換エレメントを備えたシステムとして、導入する外気(OA:Outdoor Air)の空気質や、排気中の空気(RA:Return Air(還気))の空気質に応じて、風量や換気モードを制御するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、排気通路にCOセンサを設置し、排気中の空気のCO濃度を検出し、検出したCO濃度に基づき、給排気の風量制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3480402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の技術では、排気通路にCOセンサが設置されているため、外気の空気質を計測することができない。すると、外気のCO濃度やPM2.5等が増加した場合でも、風量を減少させたり、ファンを停止させたりすることができない。
【0007】
外気導入部にセンサを設置することで、外気の空気質を計測することができるが、全熱交換器を備えたシステムでは、計測された空気質が、室内に供給する空気質を表さないため、給排気制御の精度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、給排気を制御する換気システムであって、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
室内の空気を室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
給気風路および排気風路の途中に配置され、室内の空気と室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
室内に近隣した位置に設置され、給気手段により室内へ供給される熱交換器を通過した後の室外の空気の空気質を測定する測定手段と、
測定手段の測定結果に基づき、給気手段および排気手段による給排気を制御する制御手段と
を含む、換気システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、室内に実際に供給される空気質を測定することができ、給排気制御の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】換気システムの構成例を示した図。
図2】制御回路のハードウェア構成の一例を示した図。
図3】捕集効率について説明する図。
図4】全熱交換と普通換気について説明する図。
図5】回転ロータ式の全熱交換器を備えた換気システムの構成例およびダンパー制御について説明する図。
図6】給排気の制御の一例を示したフローチャート。
図7】換気システムを設置する際の第1の施工例を示した図。
図8】換気システムを設置する際の第2の施工例を示した図。
図9】フィルタの劣化を予測する方法について説明する図。
図10】全熱交換器のエレメントの劣化を予測する方法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る換気システムの構成例を示した図である。換気システムは、建物の室内の空気の空気質を確保するため、室内の空気と室外の空気を入れ替えるシステムである。空気質は、室内の空気中の対象物質の成分量を示し、対象物質は、二酸化炭素、一酸化炭素、PM2.5やPM10等の粉塵、揮発性有機化合物等である。
【0012】
換気システムは、図1(a)に示すように、略直方体の箱体10と、箱体10内に配置される熱交換器11とを備える。箱体10の長手方向の一端には、室外の空気(OA)を導入する給気導入口12と、室内の空気をEA(Exhaust Air)として室外へ排気する排気排出口13とが設けられる。箱体10の長手方向の他端には、給気導入口12から導入された空気をSA(Supply Air)として室内へ供給する給気吹出口14と、室内の空気をRAとして取り込む排気導入口15とが設けられる。箱体10内には、仕切板16、17が設けられ、室外の空気を、箱体10内の略中央位置に配置された熱交換器11を介して給気導入口12と給気吹出口14とを連通させる給気風路18を形成し、室内の空気を、熱交換器11を介して排気排出口13と排気導入口15とを連通させる排気風路19を形成する。給気風路18と排気風路19は、熱交換器11で交差するように形成されている。
【0013】
箱体10内には、給気風路18、排気風路19のほか、熱交換器11を迂回して排気排出口13と排気導入口15とを連通させるバイパス風路20が形成される。図1でのバイパス風路20は、熱交換器11の室外側であって、排気風路19内に設置される排気ファン23の吸い込み側に連通している。排気ファン23は、熱交換器11と排気導入口15との間に設置される場合もあるが、バイパス風路20が熱交換器11を迂回する経路をとることに変わりはない。バイパス風路20は、図1では排気導入口15側に開閉する開閉手段としてのダンパー22が設けられ、ダンパー22を閉じることにより熱交換器11を介して室内の空気を流すことができ、ダンパー22を開くことにより熱交換器11を迂回して室内の空気を流すことができる。なお、ダンパー22およびバイパス風路20は、給気吹出口14と給気導入口12とを連通させる位置に設置してもよい。
【0014】
給気ファン21は、室外の空気(OA)を室内に導入する給気手段として、図1では給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間に設置されている。なお、給気ファン21は、熱交換器11と給気導入口12との間に設置されてもよい。
【0015】
排気風路19内には、室内の空気(RA)を室外へ排気する排気手段としての排気ファン23が設置される。図1に示す排気ファン23は、排気風路19内の熱交換器11と排気排出口13との間に設置されているが、これに限られるものではなく、熱交換器11と排気導入口15との間に設置されてもよい。
【0016】
熱交換器11は、給気風路18を流れる空気と、排気風路19を流れる空気の熱のみを交換する顕熱式の熱交換器であってもよいし、熱だけではなく、湿気(湿度)も交換する全熱交換器であってもよい。以下、熱交換器11を全熱交換器として説明する。
【0017】
全熱交換器は、全熱交換エレメント11aと、エレメントフィルタ11bとから構成される。全熱交換エレメント11aは、各面が矩形のエレメントであり、4つの側面のうち、2つの側面にエレメントフィルタ11bが取り付けられ、箱体10の長手方向に対し、エレメントの隣り合う2つの側面により形成される4つの角部のうちの1つが、箱体10に、別の1つがバイパス風路20に、さらに別の2つが仕切板16、17のそれぞれの一端に隣接するように配置されている。
【0018】
全熱交換エレメント11aは、紙、不織布、樹脂等により作製され、図1(b)に示すように、複数の層を備え、給気風路18の一部を構成する給気通路24と、排気風路19の一部を構成する排気通路25とが90°ほど角度を変えて互い違いに重ね合わせた構造とされている。したがって、全熱交換エレメント11aは、上から順に第1層が0°方向から180°方向へ向かう給気通路24であれば、第2層が90°方向から270°方向へ向かう排気通路25、第3層が再び0°方向から180°方向へ向かう給気通路24、というように給気と排気が流れる通路が交互に形成されたものとなっている。
【0019】
これにより、紙等を介して熱および湿気の透過を可能にしつつ、空気は紙等を透過しないため、給気と排気とは混ざり合わないようになっている。
【0020】
しかしながら、全熱交換器は、運転時に発生する差圧や組立時に隙間が発生することから、排気の一部が給気側に漏れる。このため、室内に在室者がいる場合、室内に実際に供給される空気(SA)のCO濃度は、外気(OA)のCO濃度より高くなる。
【0021】
給気風路18内には、自然蒸発式加湿器26、電気ヒータ27、直膨式熱交換器28等アクチュエータが設置される。これらのアクチュエータは一例であり、これらは設置されていなくてもよいし、これらのうちの1つ、もしくは2つが設置されていてもよいし、これら以外の機器が設置されていてもよい。また、これらの機器とその他1以上の機器が設置されていてもよい。
【0022】
自然蒸発式加湿器26は、フィルタや陶器等の気化部と貯水部とを含む。貯水部は、水を貯水し、気化部は、毛細管現象により貯水部から水を吸い上げ、自然に気化させることにより加湿する。ここでは、自然蒸発式加湿器を例示しているが、これに限られるものではなく、電気ヒータを備え、電気ヒータで水を加熱し、蒸気を発生させて加湿するスチーム式、超音波発生器により水に振動を与え、ミスト状にして噴霧することにより加湿する超音波式、電気ヒータと超音波発生器とを備えたハイブリッド式等の加湿器を使用してもよい。
【0023】
直膨式熱交換器28は、空気調和装置に使用される空気と直接熱交換する熱交換器等であり、空気と熱交換する冷媒が流される伝熱管(コイル)を含む。
【0024】
給気風路18内には、捕集手段としてのフィルタ29が設置してもよい。フィルタ29は、外気に含まれるPM2.5、花粉、黄砂等の微粒子を捕捉する。フィルタ29としては、主に25μm以上の粒子を捕捉する中高性能フィルタや、主に0.3μm以上の粒子を捕捉するHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air filter)を用いることができる。また、フィルタ29としては、これらのフィルタに加え、主に50μm以上の粒子を捕捉するプレフィルタを設置してもよい。
【0025】
図1に示した換気システムは、制御手段としての制御回路30を備え、破線で示すように、給気ファン21、ダンパー22、排気ファン23、後述するIAQセンサと電気的に接続される。制御回路30は、これらの機器との間で電気信号を送受信することで、給排気の風量の制御や、全熱交換モードと普通換気モードの切り替え等を行うことができる。全熱交換モードは、ダンパー22を閉じ、熱交換器11を介して排気する換気モードであり、普通換気モードは、ダンパー22を開き、熱交換器11を迂回し、バイパス風路20を介して排気する換気モードである。
【0026】
制御回路30は、空気調和装置の室外機に搭載される制御回路と同様の構成とされ、図2に示すように、CPU40と、フラッシュメモリ41と、RAM(Random Access Memory)42と、通信I/F43と、制御I/F44とを備える。CPU40等の構成要素は、バス45に接続され、バス45を介して情報等のやりとりを行う。
【0027】
CPU40は、換気システム全体の制御を行う。フラッシュメモリ41は、CPU40による制御に使用されるプログラムや各種のデータ等を記憶する。RAM42は、CPU40に対して作業領域を提供する。通信I/F43は、IAQセンサから空気質の情報を受信する。制御I/F44は、給気ファン21、ダンパー22、排気ファン23と接続し、それぞれのユニットの制御を行う。
【0028】
ここでは、制御回路30は、CPU40がフラッシュメモリ41からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行することにより、風量制御や換気モードの切り替えを実現するが、これに限られるものではなく、回路等の専用のハードウェアを使用し、上記の風量制御等を実現してもよい。
【0029】
給排気の風量制御や換気モード切り替えを実施するためには、制御や切り替えの基準となる情報が必要であり、その情報として空気質が使用される。
【0030】
従来では、換気は、室内空気の空気質としてCO濃度をIAQセンサの1つであるCOセンサにより測定し、その濃度が目標濃度を超えないように風量等を制御することにより実施される。このため、COセンサは、排気風路19内の排気導入口15と熱交換器11との間や室内に設置される。
【0031】
COセンサ等の空気質を測定するIAQセンサを、排気風路19内の排気導入口15と熱交換器11との間に設置する場合、測定される空気質が、室内を通した後の空気の空気質となるため、外気(OA)の空気質を測定することはできない。すると、外気のCO濃度やPM2.5等が増加した場合でも、風量を減少させたり、ファンを停止させたりすることができない。
【0032】
仮に、室外や給気風路18の給気導入口12に近隣してIAQセンサを設置すると、外気(OA)の空気質を測定することはできるが、外気(OA)の空気質では、室内に供給する実際の空気質を表さない。これは、フィルタ29や熱交換器11での漏れ等の影響により、外気(OA)の空気質に対し、室内に供給する空気質が向上、劣化することがあるからである。
【0033】
すると、フィルタ29により室内に供給する空気(SA)の空気質が向上し、風量を維持もしくは減少させても十分に室内の空気質を改善できる場合であっても、外気(OA)の空気質を基に制御を行うため、風量を増加させるような制御を行ってしまうことがある。また、外気(OA)の空気質が著しく低下した場合に、フィルタ29により室内に供給される空気(SA)の空気質は維持されているにも関わらず、風量を低減させる制御を行ってしまうこともある。これでは、適切な風量等で制御を行っているとは言えない。
【0034】
また、IAQセンサを、排気風路19内の排気導入口15と熱交換器11との間に設置して制御を行う場合、キャリブレーションに外気を使用するが、設置位置の関係でIAQセンサを外気と接触させることが難しいため、給気ファン21および排気ファン23を最大風量で運転し、給気吹出口14から室内を介して排気導入口15へ向かう空気流を生成する等の様々な制御が必要となる。
【0035】
そこで、本システムでは、IAQセンサ31を、排気風路19内の排気導入口15と熱交換器11との間ではなく、給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間であって、その間に設置される給気ファン21、自然蒸発式加湿器26、電気ヒータ27、直膨式熱交換器28より室内側に設置する。すなわち、IAQセンサ31を室内に近隣した位置に設置する。
【0036】
これにより、外気(OA)が熱交換器11や各アクチュエータを通過した後の室内に実際に供給される空気(SA)のCO濃度を測定することができる。また、ダンパー22を開き、バイパス風路20を通して外気(OA)を流すことで、IAQセンサ31のキャリブレーションを行うことも可能である。
【0037】
フィルタ29は、外気(OA)に含まれるPM2.5、花粉、黄砂等の微粒子を捕捉するため、熱交換器11と給気導入口12との間に設置される。また、熱交換器11のエレメントフィルタ11bは、給気導入口12側に設けられる。これにより、IAQセンサ31は、フィルタ29およびエレメントフィルタ11bで微粒子を捕捉した後であって、室内に実際に供給される空気中の粒子濃度を測定することができる。
【0038】
このように、室内に実際に供給する空気の空気質を測定することで、給排気を適切に制御し、適切な風量や換気モードで運転することが可能となる。
【0039】
適切な制御を行うためには、フィルタ29で空気中の粒子がどの程度捕集されるか、熱交換器11でどの程度漏れるかが重要となる。どの程度捕集されるかを表す指標として、フィルタ捕集効率を用いることができ、どの程度漏れるかを表す指標として、有効換気量率を用いることができる。
【0040】
図3を参照して、フィルタ捕集効率および有効換気量率と制御との関係について説明する。換気システムには、図3に示すように、給気風路18内にフィルタ29が設置され、給気風路18および排気風路19の途中に両者に跨るように熱交換器11が設置される。熱交換器11には、エレメントフィルタ11bが設けられている。フィルタ29およびエレメントフィルタ11bは、外気(OA)に含まれる微粒子を捕捉する。これにより、微粒子が捕捉されて、室内には、外気(OA)より清浄な空気(SA)が送られる。
【0041】
外気(OA)の気象条件により、PM2.5が日本の環境基準の1日平均値35μg/mを上回る、あるいは黄砂が200μg/mを上回る等の警報が発せられる状況下においては、室内へこのような空気が入らないようにするため、給気ファン21および排気ファン23の風量を減少させたり、停止したほうがよい。
【0042】
給気風路18には、フィルタ29やエレメントフィルタ11bが設置されるため、上記の環境基準を上回る空気を取り入れても、フィルタ29等で粒子が捕集されるため、実際に室内へ供給する空気の粒子濃度は上記環境基準より低くなり、適切なタイミングで風量やファン停止等の制御を実施することはできない。
【0043】
しかしながら、IAQセンサ31を室内に近隣した位置に設置することで、実際に室内へ供給する空気の粒子濃度を測定することができるため、適切なタイミングで風量やファン停止等の制御を実施することが可能となる。
【0044】
外気(OA)に含まれる微粒子の粒子数をNOAとし、バイパス風路20を通してフィルタ29のみを、または熱交換器11を通してフィルタ29およびエレメントフィルタ11bの両方を通過した後の室内に供給される空気(SA)に含まれる微粒子の粒子数をNSAとすると、フィルタの捕集効率ηは、下記式1で表される。
【0045】
【数1】
【0046】
フィルタが正常に機能を発揮している場合、捕集効率は、一定以上の値を示すため、IAQセンサ31の測定値から外気(OA)の粒子濃度を推定することができる。すなわち、外気(OA)の粒子濃度に応じてIAQセンサ31の測定値が変動することになる。このことから、IAQセンサ31の測定値が、例えば第1の値以上になった場合に風量を減少し、第2の値以上になった場合にファンを停止するように制御することができる。なお、この制御は一例であるので、これに限られるものではない。
【0047】
換気システムに使用されるこれらのフィルタは、粒子の捕集効率が仕様として与えられている。このため、与えられた捕集効率と、室外で測定した外気(OA)の粒子濃度とを用い、上記式1からSAの粒子濃度を算出し、IAQセンサ31により測定した粒子濃度と比較して、IAQセンサ31の測定値の妥当性を判断することもできる。
【0048】
熱交換器11は、熱と湿気を透過するが、組立時に発生する隙間や運転時の差圧等により、排気の一部が給気側へ漏れる。この漏れ量は、製品としての換気システムの有効換気量率(%)という指標で表すことができる。
【0049】
外気(OA)のCO濃度をCOAとし、熱交換器11を通過した後の室内に供給される空気(SA)のCO濃度をCSAとし、熱交換器11へ入る前の排気導入口15から導入された空気(RA)のCO濃度をCRAとすると、有効換気量率eは、下記式2で表される。
【0050】
【数2】
【0051】
例えば、COAが400ppm、CSAが500ppm、CRAが1000ppmであった場合、上記式2より、有効換気量率eは約83%となる。
【0052】
室内のCO濃度が増加すると、RAのCO濃度が増加し、外気(OA)のCO濃度がほぼ一定であるとすれば、有効換気量率eは一定であるため、上記式2により、IAQセンサ31により測定されるSAのCO濃度が増加することになる。SAのCO濃度の増加は、熱交換器11において漏れた空気によるものであり、漏れる分だけ、風量を増加するように制御することができる。これにより、室内のCO濃度を低下させ、快適性を確保することが可能となる。
【0053】
換気システムによる給排気の制御は、給気ファン21および排気ファン23による風量制御のほか、換気モードの切り替えもある。図4は、全熱交換と普通換気、すなわちモード切り替えについて説明する図である。換気システムは、ダンパー22を備え、ダンパー22を閉じることにより熱交換器11を介して空気を流し、ダンパー22を開くことにより熱交換器11を迂回して空気を流すことができる。
【0054】
換気モードは、全熱交換を行いたいか、全熱交換を行いたくないかにより切り替えることができる。いずれのモードを選択した場合でも、フィルタ29が給気風路18内の給気導入口12側に設置されているため、外気(OA)中の各種粒子を捕集することができ、各種粒子を捕集した後の室内に供給する空気(SA)の空気質をIAQセンサ31により測定することができる。
【0055】
換気システムは、外気(OA)の温度を検出する室外温度センサ、外気(OA)の相対湿度を検出する室外湿度センサ、室内の温度を検出する室内温度センサ、室内の相対湿度を検出する室内湿度センサを含むことができる。この場合、給気導入口12から導入された外気(OA)の温度および相対湿度、排気導入口15から導入された室内の空気(RA)の温度および相対湿度を測定することができる。
【0056】
制御回路30は、各センサにより測定された外気温度、外気相対湿度、室内温度、室内相対湿度に基づき、室外絶対湿度、室外エンタルピー、室内絶対湿度、室内エンタルピーを演算する。
【0057】
制御回路30は、記憶部を備え、室内目標温度、室内目標相対湿度、室内目標絶対湿度、室内目標エンタルピーの値を記憶する。制御回路30は、室内エンタルピーと、室外エンタルピーと、記憶部に記憶された室内目標エンタルピーとに基づき、換気モードを切り替えることができる。
【0058】
例えば、室内目標エンタルピー<室外エンタルピー<室内エンタルピー、もしくは室外エンタルピー<室内目標エンタルピー<室内エンタルピーの場合、室内空気よりエンタルピーが低い室外空気を熱交換せず、導入すると、室内エンタルピーを低下させ、室内目標エンタルピーに近づけることができるため、普通換気モードとする。
【0059】
室内エンタルピー<室外エンタルピー<室内目標エンタルピーの場合、室内エンタルピー以上の室外エンタルピーを熱交換せず、導入すると、室内エンタルピーを上昇させ、室内目標エンタルピーに近づけることができるため、普通換気モードとする。
【0060】
室外エンタルピー<室内エンタルピー<室内目標エンタルピーの場合、室内空気よりエンタルピーが低い外気を、熱交換を行って導入することで、室内エンタルピーの低下を抑制し、室内目標エンタルピーに近づけることができるため、全熱交換モードとする。
【0061】
室内目標エンタルピー<室内エンタルピー<室外エンタルピー、もしくは室内エンタルピー<室内目標エンタルピー<室外エンタルピーの場合、室内空気以上のエンタルピーをもつ外気を、熱交換を行って導入することで、室内エンタルピーの上昇を抑制し、室内目標エンタルピーに近づけることができるため、全熱交換モードとする。
【0062】
制御回路30は、各エンタルピーを比較し、室内目標エンタルピーに近づけるように換気モードを切り替えることができる。
【0063】
ここでは、換気システムを、ダンパー22が排気導入口15側に設けられ、ダンパー22の開閉により排気導入口15から導入された空気(RA)を、熱交換器11を迂回してバイパス風路20を通して流し、または熱交換器11を介して流す構成として説明したが、これに限られるものではない。したがって、ダンパー22を給気導入口12側に設け、ダンパー22の開閉により外気(OA)を、熱交換器11を迂回してバイパス風路20を通して流し、または熱交換器11を介して流す構成としてもよい。
【0064】
全熱交換器を搭載した換気システムには、図1(b)に示した矩形の全熱交換エレメント11aを使用するもののほか、回転ロータ方式のものがある。図5は、回転ロータ方式の換気システムの構成例を示した図である。図1に示した構成と同様、給気導入口12、排気排出口13、給気吹出口14、排気導入口15を有し、給気風路18、排気風路19が形成され、給気風路18内に給気ファン21が設置され、排気風路19内に排気ファン23が設置される。この例では、給気風路18にダンパー22が設けられ、給気風路18および排気風路19が直線状に延びている。
【0065】
給気風路18および排気風路19の途中に、円形で回転する全熱交換エレメント(ロータ)32が熱交換器11として設置される。ロータ32は、給気側と排気側とが仕切られており、数十rpmの速度で回転する。給気風路18には、ダンパー22を開くことにより熱交換器11を迂回するバイパス風路20が設けられる。
【0066】
回転ロータ方式の換気システムは、図5(a)に示すようにダンパー22を閉じた場合、図5(b)に示すように、室内の空気(RA)を、回転するロータ32の下半分を通過させてEAとして室外に排気し、外気(OA)を、ロータ32の上半分を通過させてSAとして室内に給気する。このとき、暖房時期にはRAがもつ温熱および湿気がロータ32に連続的に回収され、SAに回収された熱および湿気を連続的に与える。また、冷房時期にはOAがもつ温熱および湿気がロータ32に連続的に回収され、SAから不要な熱および湿気を連続的に除去できる。
【0067】
回転ロータ方式の換気システムは、図5(c)に示すようにダンパー22を開いた場合、ロータ32の回転を停止し、バイパス風路20を通して給気し、静止したロータ32の下半分を通して排気する。
【0068】
図6を参照して、換気システムの給排気の制御の一例について説明する。スイッチやリモートコントローラ等を使用し、換気システムの起動を指示し、電源を投入することにより、ステップ100から制御を開始する。ステップ101では、IAQセンサ31によりSAの空気質を測定する。ステップ102では、給気ファン21および排気ファン23の起動が必要かを判断する。
【0069】
給気ファン21および排気ファン23が既に起動している場合は、起動の必要はない。また、IAQセンサ31により測定した空気質が、快適性を確保するために十分な空気質であることを示す目標値以下である場合、起動の必要はない。一例として、RAのCO濃度が1000ppm以上になった場合であって、まだ給気ファン21および排気ファン23を起動していない場合に、これらのファンの起動が必要と判断することができる。RAのCO濃度は、IAQセンサ31により測定したCO濃度と、熱交換器11の有効換気量率eとから推定することができる。
【0070】
ステップ102で起動が必要と判断した場合、ステップ103へ進み、給気ファン21および排気ファン23を起動する。
【0071】
ステップ104では、ステップ101の測定結果に基づき、風量変更が必要か否かを判断する。風量変更が必要か否かは、IAQセンサ31の測定結果で、例えばCO濃度が所定の値以上になったか否かにより、また、粒子濃度が上記の第1の値以上になったか否かにより判断することができる。これらは一例であるので、これに限られるものではない。
【0072】
ステップ104で変更が必要と判断した場合、ステップ105へ進み、風量を変更する。CO濃度が増加した場合、熱交換器11から漏れてくる空気のCO濃度が増加していると考えられるので、CO濃度の低い外気(OA)を多く取り込み、CO濃度が高い室内の空気を排出させるべく、風量を増加させることができる。
【0073】
粒子濃度が増加する場合は、外気(OA)の粒子濃度が増加していると考えられる。このような場合、外気(OA)を室内に取り込む量を減少させるべく、風量を減少させることができる。
【0074】
ステップ106では、ステップ101の測定結果に基づき、給気ファン21および排気ファン23を停止するか否かを判断する。粒子濃度が増加し、上記の第2の値以上となった場合に、停止すると判断することができる。
【0075】
ステップ106で給気ファン21および排気ファンを停止しないと判断した場合、ステップ101へ戻り、これらの制御を繰り返す。一方、ステップ106で給気ファン21および排気ファン23を停止すると判断した場合、ステップ107へ進み、給気ファン21および排気ファン23を停止し、ステップ101へ戻る。
【0076】
図6に示した制御は、換気システムの電源が切断されるか、エラーが発生するまで継続される。電源は、スイッチやリモートコントローラ等を使用し、換気システムの停止を指示することにより切断される。
【0077】
図7および図8を参照して、換気システムを設置する際の施工例について説明する。図7は、第1の施工例を示し、図8は、第2の施工例を示す。図7に示す施工例では、天井裏に、室内へと続くダクト50、51を設け、換気システムの給気吹出口14と排気導入口15にダクト50、51のそれぞれを接続する。
【0078】
換気システムは、外気(OA)を給気ファン21により取り込み、給気吹出口14に接続されるダクト50を通して室内へ給気する。IAQセンサ31は、ダクト50内の室内に近隣した位置に設置される。IAQセンサ31は、換気システムの給気風路18内の給気吹出口14に近隣した位置に設置することもできるが、ダクト50にも漏れが生じる可能性があるため、室内に出来るだけ近い、ダクト50内の室内に近隣した位置に設置することが望ましい。
【0079】
換気システムから離間したダクト50内にIAQセンサ31を設置する場合、IAQセンサ31と換気システムとの間で通信を行うため、ケーブル等で接続し、有線通信を行うようにしてもよいし、無線で接続し、無線通信を行うようにしてもよい。
【0080】
図8に示す施工例では、給気吹出口14が空気調和装置の室内機52にパイプ53により接続され、給気は、室内機52が吹き出す吹出空気と混合される。このような場合、IAQセンサ31は、パイプ53内の室内機52側に設置することができる。IAQセンサ31は、室内機52の吹出空気と給気とが混合された混合空気が吹き出される空気吹出口に設置してもよい。IAQセンサ31が室内機52に近隣した位置や室内機52内に設置される場合、IAQセンサ31を動作させるための電源を室内機52から供給することができる。
【0081】
IAQセンサ31と換気システムとの通信は、図7に示す施工例と同様、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。なお、IAQセンサ31と換気システムとの通信は、IAQセンサ31と換気システムとの間で直接行ってもよいし、室内機52を経由して行ってもよい。
【0082】
このように室内機52内にIAQセンサ31を設置し、冷暖房運転とともに換気を行ってもよいことから、本発明では、換気システムだけではなく、室内機52、室外機、換気システムを含む空気調和装置も提供することができる。
【0083】
図9は、フィルタ29および熱交換器11のエレメントの清掃や交換といった保守(メンテナンス)時期について説明する図である。フィルタ29および熱交換器11のエレメントフィルタ11bは、劣化すると、IAQセンサ31により測定されるSAの空気質の粒子濃度もしくは粒子量が増加する。
【0084】
図9は、横軸を経過時間とし、縦軸をCO濃度および粒子量とした時系列データとしてまとめたグラフである。図9に示すように、CO濃度も、粒子量も、フィルタ29およびエレメントフィルタ11bが劣化していない場合、一定の範囲内で推移する。ところが、劣化してくると、その範囲から外れ、時間の経過とともに増加していく。
【0085】
このことから、粒子量がその範囲から外れ、丸で囲まれた任意に設定した値に達したデータを、異常が発生したときのデータとすることができる。この異常が発生したときのデータが示す時期が、メンテナンスが必要な時期となる。図9に示すグラフから、CO濃度、粒子量が増加し始め、メンテナンスが必要な時期に到達するまで、所定の時間をかけて、ほぼ一定の割合でCO2濃度、粒子量が増加し続けている。
【0086】
メンテナンスが必要な時期は、図10に示すように、学習期間を設け、時系列データからメンテナンスが必要となるときの図9に示したような傾向を調べる。図10では、測定データの値が一定の割合で上昇し続ける傾向を示しているため、メンテナンスの時期が近いことが分かる。
【0087】
時系列データがこのような傾向を示した場合に、測定データの値が上昇し始めてから現在までの値を直線で近似し、外挿して、異常を示す値となったところの時期を、メンテナンスが必要な時期として予測することができる。この予測のための計算は、制御回路30内で行ってもよいし、換気システムを遠隔監視する、外部システムとしての遠隔監視システムやクラウドシステム等へ測定データを送信し、遠隔監視システム等において実施してもよい。
【0088】
なお、フィルタは、急速に劣化することはないため、例えば1日に数点のデータを採取し、それを平均する等して、メモリ容量を小さく抑えることができる。
【0089】
全熱交換エレメント11aは、劣化すると、漏れ量が増加し、IAQセンサ31により測定されるCO濃度が増加する。このため、CO濃度も、一定の範囲から外れ、異常を示す値に達した時点を、全熱交換エレメント11aのメンテナンスが必要な時期とし、IAQセンサ31により測定された時系列データを外挿して予測することができる。
【0090】
なお、RAとOAのCO濃度から有効換気量率eを計算し、その値に変化がないか、すなわち一定の範囲内か否かを確認し、変化があり、異常を示す値に達する時期をメンテナンスが必要な時期として予測してもよい。
【0091】
また、フィルタや全熱交換エレメントのメンテナンスが必要な時期は、運転中に採取したデータから外挿して予測してもよいが、メンテナンスが必要な時期を、訓練データを用いて機械学習させ、学習済みモデルを使用して予測してもよい。なお、学習済みモデルを使用して予測するほうが、より適切にメンテナンスが必要な時期を予測することができる。
【0092】
以上に説明してきたように、本制御によれば、従来のRAの空気質を測定するために排気風路19内の熱交換器11と排気導入口15との間にIAQセンサを設置するのと比較し、室内に実際に供給される空気質を測定することができ、適切な風量制御、換気モードで運転することが可能となる。また、フィルタや全熱交換エレメントの劣化、漏れを検知することができ、適切なメンテナンスの予測も可能となる。
【0093】
これまで本発明の換気システム、空気調和装置および制御方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
10…箱体
11…熱交換器
11a…全熱交換エレメント
11b…エレメントフィルタ
12…給気導入口
13…排気排出口
14…給気吹出口
15…排気導入口
16、17…仕切板
18…給気風路
19…排気風路
20…バイパス風路
21…給気ファン
22…ダンパー
23…排気ファン
24…給気通路
25…排気通路
26…自然蒸発式加湿器
27…電気ヒータ
28…直膨式熱交換器
29…フィルタ
30…制御回路
31…IAQセンサ
32…ロータ
40…CPU
41…フラッシュメモリ
42…RAM
43…通信I/F
44…制御I/F
45…バス
50、51…ダクト
52…室内機
53…パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10