(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004740
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】積層構造編物
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B32B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106627
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊浩
(72)【発明者】
【氏名】森谷 義貴
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ04A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG13A
4F100DG13B
4F100DG13C
4F100EC08
4F100GB71
4F100JC00A
4F100JD15
4F100JK11
(57)【要約】
【課題】良好な肌触りやクッション性を維持しつつ、編物内部を含む編物自体の雑菌等の繁殖も防ぐことのできる積層構造編物を提供する。
【解決手段】少なくとも表側層12と裏側層14、及び中間層16とを有する積層構造編物10において、表側層12、裏側層14、中間層16のうちの少なくとも1つに、除菌作用を有する素材を用いたことを特徴とする。また、除菌作用を有する素材は、綿を主体成分として構成され、除菌作用を有する素材以外の素材は、ポリエステル系素材により構成されているようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表側層と裏側層とを有する積層構造編物において、
前記表側層、前記裏側層のうちの少なくとも一方に、除菌作用を有する素材を用いたことを特徴とする積層構造編物。
【請求項2】
前記表側層と前記裏側層との間に、1乃至複数の中間層を有し、前記除菌作用を有する素材は、前記表側層、前記裏側層、及び前記中間層のうちの少なくとも1つに用い、
前記除菌作用を有する素材を前記中間層に用いる場合には、1乃至複数の前記中間層のうちの少なくとも1つに用いることを特徴とする請求項1に記載の積層構造編物。
【請求項3】
前記除菌作用を有する素材は、綿を主体成分として構成され、前記除菌作用を有する素材以外の素材は、ポリエステル系素材により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造編物
【請求項4】
前記表側層として前記除菌作用を有する素材を適用し、前記中間層、及び前記裏側層に前記ポリエステル系素材を適用し、三層接結構造により編み立てたことを特徴とする請求項2を引用する請求項3に記載の積層構造編物。
【請求項5】
前記除菌作用を有する素材は、アグリーザ(登録商標)繊維が混入されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層構造編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編物に係り、特に、複数の素材を組み合わせた積層構造を有する編物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層構造を有する織編物は種々提案されており、構成される織編物に求められる機能や性質に応じて、積層される生地の種類は多岐に亙る。例えば特許文献1に開示されている織物は、従来に比べて厚みを持たせ、クッション性を向上させると共に、肌ざわりや通気性の良さを付与するといった目的のため、ワッフル素材の織物を2つ、積層構造の中に含め、その他の層にガーゼ組織を配するという構造としている。
【0003】
このような構造の織物では、濡れた場合の乾燥も早いと記載されているが、これは、通気性を向上させることで、厚みがある割には乾きが早いというものであり、薄手の生地に比べたら乾きが遅いのは明白である。このため、濡れや汚れが生じた場合、内部で雑菌等が繁殖しやすくなり、清潔性を維持するのが難しくなる虞がある。
【0004】
一方、特許文献2に開示されている織編物は、全芳香ポリアミド繊維を表裏の生地に使用し、内部に保温性の優れた繊維を配することで、難燃性と保温性に優れ、抗菌性や消臭性を付与する事もできる旨記載されている。しかしながら、このような構造の織物は、表裏の生地に難燃性に優れた素材を用いるため、織編物全体が硬く、肌触りが悪くなってしまう傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3162762号公報
【特許文献2】特許第6873683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、良好な肌触りやクッション性を維持しつつ、編物内部を含む編物自体の雑菌等の繁殖も防ぐことのできる積層構造編物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る積層構造編物は、少なくとも表側層と裏側層とを有する積層構造編物において、前記表側層、前記裏側層のうちの少なくとも一方に、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を用いたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する積層構造編物では、前記表側層と前記裏側層との間に、1乃至複数の中間層を有し、前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材は、前記表側層、前記裏側層、及び前記中間層のうちの少なくとも1つに用い、前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を前記中間層に用いる場合には、1乃至複数の前記中間層のうちの少なくとも1つに用いるようにすると良い。このような特徴を有する事によっても、編物内部を含む編物自体の雑菌の繁殖防止を図る事ができる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する積層構造編物において前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材は、綿を主体成分として構成され、前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材以外の素材は、ポリエステル系素材により構成されているようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、編物内部を含む編物自体の雑菌等の繁殖防止の他、編物全体の縮み防止を図る事ができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する積層構造編物では、前記表側層として前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を適用し、前記中間層、及び前記裏側層に前記ポリエステル系素材を適用し、三層接結構造により編み立てるようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、裏側層の特性により編物全体の縮み防止を図る事ができると共に、中間層にズレが生じる事も無い。
【0011】
さらに、上記のような特徴を有する積層構造編物において前記除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材は、アグリーザ(登録商標)繊維が混入されて成るようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する積層構造編物によれば、良好な肌触りやクッション性を維持しつつ、編物内部を含む編物自体の雑菌等の繁殖も防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る積層構造編物の一例を示す斜視図である。
【
図2】三層接結構造により構成した積層構造編物の断面構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の積層構造編物に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、その構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0015】
[構成]
本実施形態に係る積層構造編物10は、表側層12と裏側層14、及び中間層16の三層を基本として構成されている。また、本実施形態では、表側層12に、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を用いている。ここで、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材とは、例えばアグリーザ(登録商標)繊維を混入して形成されている生地であれば良い。本実施形態では、綿を主体とし、アグリーザ(登録商標)繊維を混紡することで形成している。
【0016】
また、本実施形態では、裏側層14と、中間層16については、ポリエステル系素材の糸、あるいは繊維集合体により構成する。そして、
図1、
図2に示すように、表側層12にワッフル状の凹凸を形成するように仕切りを設けると共に、表側層12と中間層16、及び裏側層14が三層接結構造となるように、接結糸18により接合している。
【0017】
[作用・効果]
このような構成の積層構造編物10によれば、表側層12は、綿を主体とした上で除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を混入させて構成していることから、肌ざわりや吸水性、吸湿性が良く、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用も有するものとなる。一方、中間層16は、表側層12と裏側層14との間に配されることで、例えばワッフル状の凹凸における凸部の形成に寄与する膨縮性に富んだ繊維集合体(撚りが緩い糸状のものを含む)であり、積層構造編物10にクッション性を持たせることができる。また、裏側層14は、洗濯などを行った場合であっても、生地自体に縮みが生じ難いといった作用を有する。
【0018】
そして、三層接結構造では、
図2に示すように、表側層12と裏側層14との間に中間層16を挟んでこれらを接結する接結糸18が、両者の間に一定間隔で配置されることで仕切部を形成している。このため、一般的に洗濯後などに縮みが生じ易いといわれている綿を主体とした表側層12が、縮みの少ない裏側層14の特性に依存することとなり、積層構造編物10自体の縮みを抑えることが可能となる。
【0019】
このような構成の積層構造編物10によれば、表側層12や裏側層14、及び中間層16が濡れた場合であっても、積層構造編物10の内部を含む編物自体で雑菌等が繁殖し難くなる。また、表面は、良好な肌触りを維持することができ、中間層16の作用により厚みを得る事ができるため、クッション性も確保することができる。
【0020】
また、上述したように、本実施形態に係る積層構造編物10は、洗濯後における縮みが小さい。このため、成形品に対するカバーとして使用した場合であっても、洗濯後に成形品に対する装着性が悪化するといった事態が生じ難い。
【0021】
また、綿とポリエステルでは、ポリエステルの方が染色温度が高く、アグリーザ(登録商標)繊維は、ポリエステルの染色温度程度まで加熱されると、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用が低下してしまうと言われている。このため、表側層12と裏側層14とそれぞれ異なる素材(表側層12には、綿を主体としてアグリーザ(登録商標)繊維を混入して形成された生地、裏側層14にはポリエステル系素材)としたことで、ポリエステルを染色せず、綿のみを染色することで、染色温度の違いに関わらず、積層構造編物10として好みの配色を得ることができ、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を低下させる恐れもない。
【0022】
[変形例]
上記実施形態では、表側層12に除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を用い、中間層16と裏側層14にはポリエステル系素材を用いる旨記載した。しかしながら、本発明に係る積層構造編物10は、積層される素材のうちの少なくとも1つに除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材が用いられていれば良い。よって、中間層16や裏側層14に除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を混入させるようにしても良い。
【0023】
ここで、上記実施形態では、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を表側層12に使用する事を前提としため、その肌ざわりや吸水性、吸湿性を向上させるための一例として、綿を主体としてアグリーザ(登録商標)繊維を混紡する旨記載した。しかしながら、同等の作用を奏する素材であれば、綿以外を主体として除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を構成するようにしても良い。
【0024】
また、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材を表側層12以外に使用する場合には、主体とする素材に肌ざわりや吸水性、吸湿性等を考慮する必要は無く、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材以外の素材であって、表側層12に用いる素材に、肌ざわりや吸水性、吸湿性を持たせるようにすると良い。よって、除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材以外の素材についても、ポリエステル系素材以外の素材により構成しても良いということができる。
【0025】
また、上記実施形態では、積層構造編物10は、表側層12、中間層16、裏側層14の3層で構成するように記載している。しかしながら、本発明に係る積層構造編物10は、積層される素材のうちの少なくとも1つに除菌(抗菌防臭、制菌を含む)作用を有する素材が用いられていれば、素材の積層数を限定する必要は無い。よって、例えば中間層を含まない2層構造であっても良いし、中間層を2層以上備え、編物全体として4層以上となる構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
このような効果を得る事ができるため、本実施形態に係る積層構造編物10は、良好な肌触りやクッション性、及び吸水性、吸湿性を備えつつ、清潔性が必要とされるベビー用品などへの適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10………積層構造編物、12………表側層、14………裏側層、16………中間層、18………接結糸。