(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047416
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】囲繞テープ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/85 20170101AFI20230330BHJP
【FI】
A61C5/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156314
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】521421333
【氏名又は名称】今西 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100210789
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】今西 直人
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159DD10
(57)【要約】
【課題】窩洞に充填されたコンポジットレジンが、窩洞の周囲に拡がりにくい囲繞テープを提供する。
【解決手段】窩洞Pを囲繞する囲繞テープ1であって、テープ本体2に、該窩洞PにコンポジットレジンRを充填するための注入口3が少なくとも1箇所設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窩洞を囲繞する囲繞テープであって、テープ本体に、該窩洞にコンポジットレジンを充填するための注入口が少なくとも1箇所設けられていることを特徴とする囲繞テープ。
【請求項2】
前記注入口の長手方向両側に、押え部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の囲繞テープ。
【請求項3】
前記注入口は、前記テープ本体の長手方向の中央から一方の端部方向に偏って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の囲繞テープ。
【請求項4】
前記テープ本体1単位が、複数連続しロール状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の囲繞テープ。
【請求項5】
前記注入口の周辺に、前記窩洞に対向する隣接歯にコンポジットレジンが付着することを防止するための隔壁がさらに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の囲繞テープ。
【請求項6】
前記隔壁は、前記テープ本体に設けられた切り抜きのフラップ部であり、前記注入口は、該フラップ部を切り起こすことにより形成されることを特徴とする請求項5に記載の囲繞テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の齲蝕部分を除去し窩洞を形成した後、コンポジットレジンを充填する際に枠体として使用される囲繞テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯の隣接面に発症した齲蝕部分の修復はコンポジットレジンを充填することにより行われており、その際、歯科用マトリックス(囲繞テープ)が使用されている。その一例として、例えば、長手方向の少なくとも一方の端部に突起を有する歯科用マトリックスが開発されている。該歯科用マトリックスを使用したコンポジットレジンによる修復は、まず、歯の隣接面に発症した齲蝕部分の軟化象牙質を除去し窩洞を形成し、窩洞の消毒、コンポジットレジン充填のための前処理を行う。次に、マトリックス本体を、窩洞が形成された歯と窩洞に対向する隣接歯との隙間及び窩洞が形成された歯と窩洞に対向しない隣接歯との隙間に挿通させて、窩洞が形成された歯の舌側面に巻きつける。ここで、マトリックス本体に形成された突起が、窩洞が形成された歯と窩洞に対向しない隣接歯との間で係止され、マトリックス本体は固定される。そして、マトリックス本体を開いた状態で歯の唇側面から窩洞にコンポジットレジンが充填される。充填完了後は、マトリックス本体で填塞部分を被包した状態で歯の唇側面に巻きつけ、UV光線を照射してコンポジットレジンを硬化させた後、填塞部分の研磨及び成形を行うことにより、修復は完了する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-108046号公報(第2頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の歯科用マトリックスにあっては、歯への装着が容易であると共に、安定した装着状態が得られるものとして有効である。しかしながら、窩洞へコンポジットレジンを充填した後マトリックス本体を歯に巻きつける際、余分のコンポジットレジンが歯の隣接面とマトリックス本体との間に拡がるため、隣接面に付着した硬化後のコンポジットレジンの研磨及び成形が煩雑であり、迅速な修復作業ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、窩洞に充填されたコンポジットレジンが、窩洞の周囲に拡がりにくい囲繞テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の囲繞テープは、
窩洞を囲繞する囲繞テープであって、テープ本体に、該窩洞にコンポジットレジンを充填するための注入口が少なくとも1箇所設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、歯にテープ本体を巻きつけている状態で注入口から窩洞内にコンポジットレジンを充填することができるため、余分のコンポジットレジンが窩洞の周囲に拡がることを防ぐことができる。
【0007】
前記注入口の長手方向両側に、押え部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、囲繞テープに、指で挟持するための押え部が十分に確保されているため、歯に安定してテープ本体を巻きつけることができる。
【0008】
前記注入口は、前記テープ本体の長手方向の中央から一方の端部方向に偏って設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、歯にテープ本体を巻きつける際、テープ本体の長手方向の中央を歯の隣接面に位置させることにより、注入口を歯の唇側面又は舌側面の窩洞上に位置させることができる。
【0009】
前記テープ本体1単位が、複数連続しロール状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ロール状の囲繞テープから、テープ本体を1単位ずつ切り落として使用することができる。
【0010】
前記注入口の周辺に、前記窩洞に対向する隣接歯にコンポジットレジンが付着することを防止するための隔壁がさらに設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、コンポジットレジンを窩洞に充填する際、窩洞に対向する隣接歯にコンポジットレジンが誤って付着することを防止することができる。
【0011】
前記隔壁は、前記テープ本体に設けられた切り抜きのフラップ部であり、前記注入口は、該フラップ部を切り起こすことにより形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、テープ本体を打ち抜くことにより、注入口と、隔壁であるフラップ部と、が一体に形成されるため、容易に囲繞テープの製造をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は実施例1における囲繞テープを示す正面図、(b)は囲繞テープを示す斜視図である。
【
図2】(a),(b)は実施例1における囲繞テープを用いたコンポジットレジンによる修復の手順を示す概略図である。
【
図3】(a)~(e)は実施例1における囲繞テープを用いてコンポジットレジンを注入する作業の手順を示す概略図である。
【
図4】(a)~(d)はコンポジットレジンを注入後の研磨及び成形作業の手順を示す概略図である。
【
図5】(a)は実施例2における囲繞テープを示す正面図、(b)はテープ本体を巻きつけられた修復対象歯を示す正面図である。
【
図6】(a)は実施例3における囲繞テープを示す正面図、(b)はフラップ部が切り起こされた状態の囲繞テープを示す断面図、(c)はテープ本体を巻きつけられた修復対象歯を示す正面図、(d)は同じくテープ本体を巻きつけられた修復対象歯を示す断面図である。
【
図7】(a)は実施例4における囲繞テープを示す斜視図、(b)はテープ本体を巻きつけられた修復対象歯を示す正面図、(c)は同じくテープ本体を巻きつけられた修復対象歯を示す断面図である。
【
図8】実施例5における囲繞テープを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る囲繞テープを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0014】
実施例1に係る囲繞テープにつき、
図1から
図4を参照して説明する。以下、
図1(a)の正面から見て左右を囲繞テープの左右として説明する。
【0015】
本実施例の囲繞テープは、歯の隣接面に発症した齲蝕部分を除去した後に形成された窩洞に、コンポジットレジンを充填する際の枠体として用いられるものである。
【0016】
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、囲繞テープ1は、透明な長方形のテープ状のテープ本体2と、歯に形成された窩洞P(
図2参照)にコンポジットレジンR(
図3(b)及び
図3(c)参照)を注入するための注入口3と、押え部5a,5bと、から主に構成されている。
【0017】
本実施例において、テープ本体2はセルロイド製であるが、これに限定されるものではなく、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン等、その他の樹脂製であってもよい。
【0018】
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、注入口3の形状は略円形である。注入口3の直径は、コンポジットレジン充填器のノズルN(
図3(b)及び
図3(c)参照)の先端部の直径より大きく形成されている。また、注入口3は、テープ本体2の長手方向の中央Cから左側の端部方向に偏って位置していると共に、短手方向の中央に位置している。
【0019】
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、テープ本体2における注入口3よりも長手方向左側の領域には押え部5aが、注入口3よりも長手方向右側の領域には押え部5bが、夫々形成されている。
【0020】
次に、本実施例の囲繞テープ1の使用方法について説明する。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、修復対象歯T1は、コンポジットレジンRによる修復が行われる歯である。修復対象歯T1の右側に存在する隣接歯T2及び修復対象歯T1の左側に存在する隣接歯T3は、どちらも健康な歯である。修復対象歯T1には、右側の隣接歯T2との隣接面Saに発症した齲蝕部分が予め除去され、唇側面Slから隣接面Saにかけて窩洞Pが形成されている。尚、隣接面Saの齲蝕部分の位置によっては、舌側面Stから隣接面Saにかけて窩洞Pが形成される場合もあるが、本実施例及びこの後の実施例においては、唇側面Slから隣接面Saにかけて窩洞Pが形成されている場合について説明する。また、窩洞Pには、消毒、エッチング、ボンディング等のコンポジットレジンRを充填するための前処理が行われる。
【0021】
次に、
図3(a)に示されるように、囲繞テープ1を修復対象歯T1と右側の隣接歯T2との歯間に挿通し、テープ本体2の長手方向の中央部分を修復対象歯T1の隣接面Saに当接させ、隣接面Saを支点として、修復対象歯T1の唇側面Sl及び舌側面Stを夫々覆うように巻きつける。この時、唇側面Slに形成された窩洞P上に注入口3が位置するように位置合わせを行う。そして、
図3(b)及び
図3(c)に示されるように、両方の押え部5a,5bを左側の隣接歯T3と共に唇側及び舌側から指で挟持しテープ本体2を修復対象歯T1に圧接する。この時、テープ本体2が修復対象歯T1に圧接した状態が安定して保持されるように、修復対象歯T1と右側の隣接歯T2との歯間にウェッジを挿入してもよい(図示略)。
【0022】
次に、
図3(b)及び
図3(c)に示されるように、コンポジットレジン充填器のノズルNを注入口3から窩洞Pに挿入しコンポジットレジンRを充填することにより、窩洞Pに填塞部F(
図3(d)及び
図3(e))が形成される。この時、修復対象歯T1の隣接面Sa及び唇側面Slにはテープ本体2が圧接されているため、コンポジットレジンRは、窩洞Pの周囲の隣接面Sa上に拡がりにくい。
【0023】
また、
図3(d)及び
図3(e)に示されるように、コンポジットレジンRが窩洞Pに充填された後は、注入口3から余分のコンポジットレジンRが溢れることにより、填塞突起Fpが形成される。これにより、コンポジットレジンRが窩洞Pに十分に充填されたことを目視により判断することができるため、適切な時期にコンポジットレジンRの充填を終えることができるとともに、コンポジットレジンRの無駄を少なくすることができる。
【0024】
次に、囲繞テープ1を透して修復対象歯T1の填塞部FにUV光線を照射してコンポジットレジンRを硬化させる(図示略)。コンポジットレジンRが硬化した後は、囲繞テープ1を除去する。歯間にウェッジを用いている場合には、ウェッジも共に除去する。
【0025】
次に、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、修復対象歯T1の表面には、硬化した填塞部Fの填塞突起Fp、填塞部唇側面Fl、填塞部隣接面Faが夫々形成されている。填塞突起Fpは、填塞部唇側面Fl上に形成されているため、研磨及び成形作業により容易に除去される。また、填塞部唇側面Fl及び填塞部隣接面Faは、囲繞テープ1の枠体としての機能により、既に成形された面であるため、研磨及び成形作業を行う必要はない。また、窩洞Pの周囲の隣接面Sa上には硬化したコンポジットレジンRが拡がっていないため、隣接面Saの研磨及び成形作業を行う必要はない。これらのことにより、修復対象歯T1全体の研磨及び成形の作業時間を大幅に短縮させることができる。