(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004742
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】コンタクタの溶着診断装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230110BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230110BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20230110BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106630
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西 皓平
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125CD04
5H125DD10
5H125EE08
5H125EE13
5H125EE16
5H125EE26
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】コンタクタの溶着の診断中にモータが回転した場合でも、コンタクタの溶着の誤判定を抑えることができるコンタクタの溶着診断装置を提供すること。
【解決手段】主電源である高電圧バッテリ4と、高電圧バッテリ4から電力を供給され、モータ2を駆動させるインバータ3と、高電圧バッテリ4とインバータ3との間の電気的接続を断接する負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42と、車両1の起動時に、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42の断接を切り替え、そのときのインバータ3に印加される電圧の変化に基づいて負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42の溶着を診断し、モータ2の回転速度が第1の回転速度以上の場合には、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42を切断させるコンタクタ溶着診断部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源である高電圧バッテリと、
前記高電圧バッテリから電力を供給され、モータを駆動させるインバータと、
前記高電圧バッテリと前記インバータとの間の電気的接続を断接するコンタクタと、を備える車両のコンタクタの溶着診断装置であって、
前記車両の起動時に、前記コンタクタの断接を切り替え、そのときの前記インバータに印加される電圧の変化に基づいて前記コンタクタの溶着を診断するコンタクタ溶着診断を行なうコンタクタ溶着診断部を備え、
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断の実施中に、前記モータの回転速度が第1の回転速度以上の場合には、前記コンタクタを切断させるコンタクタの溶着診断装置。
【請求項2】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断において前記インバータに印加される電圧が溶着判定電圧値以上になると前記コンタクタが溶着していると判定し、前記溶着判定電圧値を前記モータの回転速度に応じて設定する請求項1に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項3】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記溶着判定電圧値を前記モータの回転速度が高いほど低い値に設定する請求項2に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項4】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断の実施中に、前記モータの回転速度が前記第1の回転速度より高い第2の回転速度以上の場合には、前記コンタクタを切断させる請求項2または請求項3に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項5】
前記モータは、前記車両を駆動する駆動輪と直結されており、
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断の実施中に、前記車両の速度が第1の車速以上の場合には、前記コンタクタを切断させる請求項1に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項6】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断において前記インバータに印加される電圧が溶着判定電圧値以上になると前記コンタクタが溶着していると判定し、前記溶着判定電圧値を前記車両の速度に応じて設定する請求項5に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項7】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記溶着判定電圧値を前記車両の速度が高いほど低い値に設定する請求項6に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【請求項8】
前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断の実施中に、前記車両の速度が前記第1の車速より高い第2の車速以上の場合には、前記コンタクタを切断させる請求項6または請求項7に記載のコンタクタの溶着診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクタの溶着診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両起動のための起動時指令を出力するタイミングで、正極コンタクタとプリチャージコンタクタを含む正極側コンタクタおよび負極コンタクタのいずれか一方の溶着異常を診断し、車両停止のための停止時指令を出力するタイミングで、正極側コンタクタおよび負極コンタクタのいずれか他方の溶着異常を診断する手法が記載されている。
【0003】
コンタクタの溶着異常の診断では、少なくとも正極側と負極側に一つずつのコンタクタを有し、一方または両方をオンオフする際の電圧変動から溶着の有無を診断する手法がある。
【0004】
例えば、車両起動時に、正極側コンタクタをオフし、負極側コンタクタをオンした際、インバータの正極と負極の間の端子間電圧が上昇すると、正極側コンタクタが溶着していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような溶着異常の診断手法では、コンタクタ溶着の診断中にモータが回転した場合、モータの逆起電力により高電圧バッテリから印加される電圧とは逆向きの電圧が印加されるため、例えば、負極側コンタクタが溶着しているにも関わらず、インバータの正極と負極の間の端子間電圧が溶着判定のための電圧まで上昇せず、コンタクタが正常であると誤判定されるおそれがある。
【0007】
例えば、坂路における車両起動時に、車両がずり下がる等で駆動輪に引き摺られる形でモータが回転すると、このような現象が発生する。また、パーキングロック機能を持たず、サイドブレーキのみで駆動輪を制動している車両では、このような事象が発生しやすい。
【0008】
そこで、本発明は、コンタクタの溶着の診断中にモータが回転した場合でも、コンタクタの溶着の誤判定を抑えることができるコンタクタの溶着診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、主電源である高電圧バッテリと、前記高電圧バッテリから電力を供給され、モータを駆動させるインバータと、前記高電圧バッテリと前記インバータとの間の電気的接続を断接するコンタクタと、を備える車両のコンタクタの溶着診断装置であって、前記車両の起動時に、前記コンタクタの断接を切り替え、そのときの前記インバータに印加される電圧の変化に基づいて前記コンタクタの溶着を診断するコンタクタ溶着診断を行なうコンタクタ溶着診断部を備え、前記コンタクタ溶着診断部は、前記コンタクタ溶着診断の実施中に、前記モータの回転速度が第1の回転速度以上の場合には、前記コンタクタを切断させるものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、コンタクタの溶着の診断中にモータが回転した場合でも、コンタクタの溶着の誤判定を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るコンタクタの溶着診断装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例の他の態様に係るコンタクタの溶着診断装置の溶着診断判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例の他の態様に係るコンタクタの溶着診断装置の負極側コンタクタが溶着している状態でモータの逆起電圧が無い場合の溶着診断判定処理による正極―負極間電圧と溶着判定電圧値の関係を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例の他の態様に係るコンタクタの溶着診断装置の負極側コンタクタが溶着している状態でモータの逆起電圧が有る場合の溶着診断判定処理による正極―負極間電圧と溶着判定電圧値の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るコンタクタの溶着診断装置は、主電源である高電圧バッテリと、高電圧バッテリから電力を供給され、モータを駆動させるインバータと、高電圧バッテリとインバータとの間の電気的接続を断接するコンタクタと、を備える車両のコンタクタの溶着診断装置であって、車両の起動時に、コンタクタの断接を切り替え、そのときのインバータに印加される電圧の変化に基づいてコンタクタの溶着を診断するコンタクタ溶着診断を行なうコンタクタ溶着診断部を備え、コンタクタ溶着診断部は、コンタクタ溶着診断の実施中に、モータの回転速度が第1の回転速度以上の場合には、コンタクタを切断させるよう構成されている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るコンタクタの溶着診断装置は、コンタクタの溶着の診断中にモータが回転した場合でも、コンタクタの溶着の誤判定を抑えることができる。
【実施例0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るコンタクタの溶着診断装置について詳細に説明する。
【0015】
図1において、本発明の一実施例に係るコンタクタの溶着診断装置を搭載した車両1は、モータ2と、インバータ3と、高電圧バッテリ4と、コンタクタ溶着診断部5とを含んで構成される。
【0016】
モータ2は、例えば、複数の永久磁石が埋め込まれたロータと、ステータコイルが巻きつけられたステータと、を備えた同期型モータで構成される。モータ2は、ステータコイルに三相交流電力が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によりロータが回転して駆動力を生成する。
【0017】
また、モータ2は、発電時における回転抵抗を車両1の制動に利用するように駆動される。これにより、モータ2は、回生によって発電できる機能を有する。このように、モータ2は、発電機としても機能し、高電圧バッテリ4を充電するための電力を生成できるようになっている。
【0018】
モータ2の回転軸は、図示しない減速機、駆動軸等を介して駆動輪6に連結されている。モータ2は、減速機、駆動軸等を介して駆動輪6を駆動する。
【0019】
モータ2には、モータ2の回転速度を検出する回転速度センサ21が設けられている。回転速度センサ21は、車両1が前進する場合の回転方向の回転を正の回転速度として出力する。
【0020】
インバータ3は、三相交流電力をモータ2に供給する。また、インバータ3は、モータ2が発電した三相交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ4を充電する。
【0021】
インバータ3と高電圧バッテリ4を接続する入力端子の正極と負極の間には、平滑コンデンサ31が接続されている。平滑コンデンサ31は、正極と負極との間に生じた直流電力の電圧を平滑化する。
【0022】
高電圧バッテリ4は、例えば、ニッケル蓄電池やリチウム蓄電池等からなり、複数のセルを直列に接続して構成されている。高電圧バッテリ4は、インバータ3を介してモータ2に電力を供給する。
【0023】
インバータ3と高電圧バッテリ4の間の負極側にはコンタクタとしての負極側コンタクタ41が設けられている。インバータ3と高電圧バッテリ4の間の正極側にはコンタクタとしての正極側コンタクタ42が設けられている。正極側コンタクタ42には、正極側コンタクタ42と並列に、プリチャージコンタクタ43とプリチャージ抵抗44が直列に接続された回路が接続されている。
【0024】
負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42は、コンタクタ溶着診断部5の制御に応じて、インバータ3と高電圧バッテリ4とを電気的に接続するオン状態と、インバータ3と高電圧バッテリ4とを電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0025】
プリチャージコンタクタ43は、コンタクタ溶着診断部5の制御に応じて、プリチャージ抵抗44を正極側コンタクタ42に並列に接続するオン状態と、プリチャージ抵抗44を正極側コンタクタ42から電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0026】
例えば、プリチャージコンタクタ43は、モータ2が作動する前にオン状態をとり、正極側コンタクタ42がオン状態をとったあとにオフ状態をとるように制御される。
【0027】
コンタクタ溶着診断部5は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0028】
コンタクタ溶着診断部5のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをコンタクタ溶着診断部5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、コンタクタ溶着診断部5として機能する。
【0029】
コンタクタ溶着診断部5の入力ポートには、前述のインバータ3と、回転速度センサ21に加え、車速センサ51を含む各種センサ類が接続されている。車速センサ51は、車両1の速度を検出する。
【0030】
一方、コンタクタ溶着診断部5の出力ポートには、前述の負極側コンタクタ41、正極側コンタクタ42、プリチャージコンタクタ43を含む各種制御対象類が接続されている。
【0031】
本実施例において、コンタクタ溶着診断部5は、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42が溶着しているか否かを診断するコンタクタ溶着診断を行なう。
【0032】
コンタクタ溶着診断部5は、例えば、車両1の起動時に負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42のコンタクタ溶着診断を行なう。
【0033】
コンタクタ溶着診断部5は、例えば、負極側コンタクタ41と正極側コンタクタ42のいずれか一方をオン状態としたときのインバータ3の入力端子の正極側と負極側との間の電圧が所定の溶着判定電圧値を上回ると、オン状態としたのとは違うコンタクタが溶着していると判定する。
【0034】
コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、モータ回転速度が所定の第1の回転速度以上となった場合、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。第1の回転速度は、コンタクタ溶着診断に影響のあるモータ2からの逆起電圧が発生するモータ回転速度の下限値であり、例えば100rpmである。
【0035】
コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が所定の第1の車速以上となった場合、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。第1の車速は、コンタクタ溶着診断に影響のあるモータ2からの逆起電圧が発生する車速の下限値であり、例えば1km/hである。
【0036】
このように、本実施例では、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、モータ回転速度が所定の第1の回転速度以上となった場合、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。
【0037】
モータ2が回転することで発生する逆起電圧により、コンタクタ溶着診断が正常に実施できないおそれがある場合は、コンタクタをオフ状態とし、車両1の起動を停止させる。
【0038】
これにより、コンタクタの溶着を誤判定し、コンタクタが溶着したまま車両1が起動してしまうことを抑えることができる。
【0039】
また、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が所定の第1の車速以上となった場合、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。
【0040】
駆動輪6とモータ2が直結されているため、車速が有る(ゼロより高い)ということはモータ2の回転が発生することとなり、モータ2が回転することで逆起電圧が発生する。それにより、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオン状態とした時にインバータ3側から高電圧バッテリ4側へ流れる電流が発生してしまい、インバータ3の入力端子の正極側と負極側との間の電圧の変化の仕方が通常時と異なってしまう。このため、コンタクタの溶着を検出できず、コンタクタが溶着したまま車両1が起動してしまうおそれがある。よって、コンタクタに対し、逆起電圧が発生している場合は、コンタクタをオフ状態とすることで、コンタクタの溶着の誤判定を抑えることができる。
【0041】
本実施例の他の態様としては、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が第1の車速以上である、または、モータ回転速度が第1の回転速度以上である、モータ2の逆起電圧が発生するような場合、車両1の速度またはモータ回転速度に応じて溶着判定電圧値を設定する。
【0042】
なお、溶着判定電圧値は、車両1の速度が高いほど低い値に設定され、モータ回転速度が高いほど低い値に設定される。
【0043】
コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が第1の車速より高い第2の車速以上となった場合、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。
【0044】
コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、モータ回転速度が第1の回転速度より高い第2の回転速度以上となった場合、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。
【0045】
以上のように構成された本実施例の他の態様に係るコンタクタの溶着診断装置による溶着診断判定処理について、
図2を参照して説明する。なお、以下に説明する溶着診断判定処理は、コンタクタ溶着診断が開始されると開始され、予め設定された時間間隔で実行され、コンタクタ溶着診断が終了すると実行が停止される。
【0046】
ステップS101において、コンタクタ溶着診断部5は、車両1の速度が第1の車速以上である、または、モータ回転速度が第1の回転速度以上である、か否かを判定する。
【0047】
車両1の速度が第1の車速以上である、または、モータ回転速度が第1の回転速度以上である、と判定した場合には、コンタクタ溶着診断部5は、ステップS102の処理を実行する。車両1の速度が第1の車速以上でない、かつ、モータ回転速度が第1の回転速度以上でない、と判定した場合には、コンタクタ溶着診断部5は、溶着診断判定処理を終了する。
【0048】
ステップS102において、コンタクタ溶着診断部5は、車両1の速度が第2の車速以上である、または、モータ回転速度が第2の回転速度以上である、か否かを判定する。
【0049】
車両1の速度が第2の車速以上である、または、モータ回転速度が第2の回転速度以上である、と判定した場合には、コンタクタ溶着診断部5は、ステップS103の処理を実行する。車両1の速度が第2の車速以上でない、かつ、モータ回転速度が第2の回転速度以上でない、と判定した場合には、コンタクタ溶着診断部5は、ステップS104の処理を実行する。
【0050】
ステップS103において、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。ステップS103の処理を実行した後、コンタクタ溶着診断部5は、溶着診断判定処理を終了する。
【0051】
ステップS104において、コンタクタ溶着診断部5は、溶着判定電圧値を車速またはモータ回転速度に応じて設定する。ステップS104の処理を実行した後、コンタクタ溶着診断部5は、溶着診断判定処理を終了する。
【0052】
このような溶着診断判定処理による動作について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、モータ2の逆起電圧が無い場合のインバータ3の入力端子の正極側と負極側との間の電圧の変化を示すタイムチャートである。ここでは、負極側コンタクタ41が溶着している場合を示す。
【0053】
図中、正極側コンタクタと負極側コンタクタの実線は制御上の状態、点線は実際の状態を示す。すなわち、負極側コンタクタ41の状態は、制御上はオフ状態だが、実際には溶着しているためオン状態となっている。
【0054】
時刻t1において、コンタクタ溶着診断のため正極側コンタクタ42がオン状態とされると、負極側コンタクタ41が溶着しているため、正極―負極間の電圧値が上昇し、時刻t2において、溶着判定電圧値を上回ることで負極側コンタクタ41が溶着していると判定される。
【0055】
図4は、モータ2の逆起電圧が有る場合のインバータ3の入力端子の正極側と負極側との間の電圧の変化を示すタイムチャートである。ここでは、負極側コンタクタ41が溶着している場合を示す。
【0056】
図3と同様に、図中、正極側コンタクタと負極側コンタクタの実線は制御上の状態、点線は実際の状態を示す。すなわち、負極側コンタクタ41の状態は、制御上はオフ状態だが、実際には溶着しているためオン状態となっている。
【0057】
時刻t10から、モータ回転速度または車速が上昇して、モータ2が回転することによりモータ2に逆起電圧が発生し、時刻t11までモータ2の回転が上昇し続けることでモータ2の逆起電圧も上昇する。これに伴い、溶着判定電圧値もモータ回転速度または車速に応じて減少する。
【0058】
時刻t12において、コンタクタ溶着診断のため正極側コンタクタ42がオン状態とされると、負極側コンタクタ41が溶着しているため、正極―負極間の電圧値が上昇し、時刻t13において、溶着判定電圧値を上回ることで負極側コンタクタ41が溶着していると判定される。
【0059】
このように、モータ2の逆起電圧が発生していても、コンタクタ溶着診断を正常に実施することができる。
【0060】
このように、本実施例の他の態様では、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が第1の車速以上である、または、モータ回転速度が第1の回転速度以上である、場合に、車両1の速度またはモータ回転速度に応じて溶着判定電圧値を設定する。
【0061】
これにより、溶着判定電圧値が車両1の速度またはモータ回転速度に応じた値に設定され、モータ2の逆起電圧が発生していても、コンタクタ溶着診断を正常に実施することができる。
【0062】
また、溶着判定電圧値は、車両1の速度が高いほど低い値に設定され、モータ回転速度が高いほど低い値に設定される。
【0063】
これにより、モータ2の逆起電圧に応じた適切な溶着判定電圧値を設定することができ、モータ2の逆起電圧が発生していても、コンタクタ溶着診断を正常に実施することができる。
【0064】
また、コンタクタ溶着診断部5は、コンタクタ溶着診断の実施中に、車両1の速度が第2の車速以上となった場合、または、モータ回転速度が第2の回転速度以上となった場合、コンタクタ溶着診断を停止し、負極側コンタクタ41及び正極側コンタクタ42をオフ状態とする。
【0065】
モータ2の逆起電圧が高すぎるときは、インバータ3の入力端子の正極側と負極側との間の電圧が低くなりすぎて、コンタクタ溶着診断を実行するのが困難となるため、コンタクタをオフ状態とする。これにより、コンタクタが溶着したまま車両1が走行してしまうことを抑制することができる。
【0066】
本実施例では、各種センサ情報に基づきコンタクタ溶着診断部5が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0067】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。