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特開2023-47424ステンレス鋼材及びステンレス鋼材製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047424
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ステンレス鋼材及びステンレス鋼材製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/24 20060101AFI20230330BHJP
   C23C 22/07 20060101ALI20230330BHJP
   C23C 22/50 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C23C22/24
C23C22/07
C23C22/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156324
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】竪谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA04
4K026BA08
4K026BA13
4K026BB01
4K026CA13
4K026CA22
4K026CA23
4K026CA33
4K026DA03
4K026DA04
(57)【要約】
【課題】単一のステンレス鋼材にて複数の色調を発現可能とする。
【解決手段】表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材100であって、ステンレス鋼からなる基材110と、基材110の表面の一部位に設けられると共に干渉色を発現する酸化被膜層である第1酸化被膜層120と、基材110の表面の第1酸化被膜層120が設けられていない部位に設けられると共に第1酸化被膜層120と異なる色調の干渉色を発現する酸化被膜層である第2酸化被膜層130とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材であって、
ステンレス鋼からなる基材と、
前記基材の表面の一部位に設けられると共に前記干渉色を発現する前記酸化被膜層である第1酸化被膜層と、
前記基材の表面の前記第1酸化被膜層が設けられていない部位に設けられると共に前記第1酸化被膜層と異なる色調の前記干渉色を発現する前記酸化被膜層である第2酸化被膜層と
を備えることを特徴とするステンレス鋼材。
【請求項2】
前記基材が板状に形成されており、
前記基材の一方側の表面に前記第1酸化被膜層が設けられ、
前記基材の他方側の表面に前記第2酸化被膜層が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼材。
【請求項3】
前記基材が板状に形成されており、
前記基材の一方側の表面に前記第1酸化被膜層及び前記第2酸化被膜層が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼材。
【請求項4】
ステンレス鋼からなる基材を発色液に浸漬することによって、表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材を製造するステンレス鋼材製造方法であって、
前記基材の表面の一部位に当たる前記発色液の流速と、前記基材の表面の他部位に当たる前記発色液の流速とに差を設けることにより、前記一部位に設けられると共に前記干渉色を発現する前記酸化被膜層である第1酸化被膜層と、前記他部位に設けられると共に前記第1酸化被膜層と異なる色調の前記干渉色を発現する前記酸化被膜層である第2酸化被膜層とを形成することを特徴とするステンレス鋼材製造方法。
【請求項5】
前記発色液の一部を強制流動させることで、前記他部位に当たる前記発色液の流速を、前記一部位に当たる前記発色液の流速に対して速くすることを特徴とする請求項4記載のステンレス鋼材製造方法。
【請求項6】
前記基材が板状に形成されており、
前記一部位が前記基材の一方側の表面であり、前記他部位が他方側の表面である
ことを特徴とする請求項5記載のステンレス鋼材製造方法。
【請求項7】
前記発色液の流れの一部を遮ることによって、前記一部位に当たる前記発色液の流速を、前記他部位に当たる発色液の流速に対して遅くすることを特徴とする請求項4記載のステンレス鋼材製造方法。
【請求項8】
前記基材が板状に形成されており、
前記基材の一方側の表面に前記一部位と前記他部位とが設けられている
ことを特徴とする請求項7記載のステンレス鋼材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼材及びステンレス鋼材製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車両のドア枠には、金属製のサッシュモールが設けられる場合がある。このようなサッシュモールは、例えばステンレス鋼材によって形成されている。また、特許文献2に開示されているように、車両のドアパネルには、金属製の芯材が露出されたアウトサイドモールが設けられる場合がある。このようなアウトサイドモールの芯材も、例えばステンレス鋼材によって形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-72383号公報
【特許文献2】実開平7-5847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ステンレス鋼材の表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現させる酸化被膜層を形成することで、ステンレス鋼に干渉色を付与することができる。上述のようにサッシュモールやアウトサイドモール等の車両用外装部品にはステンレス鋼材によって形成された部品が多く用いられている。干渉色が付与されたステンレス鋼材を用いることで優れた意匠性が得られる。しかしながら、ステンレス鋼材の表面の全体には一様に同一の色調を発現する酸化被膜が形成される。このため、複数の色調を発現可能なステンレス鋼材の提供が望まれている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、単一のステンレス鋼材にて複数の色調を発現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材であって、ステンレス鋼からなる基材と、上記基材の表面の一部位に設けられると共に上記干渉色を発現する上記酸化被膜層である第1酸化被膜層と、上記基材の表面の上記第1酸化被膜層が設けられていない部位に設けられると共に上記第1酸化被膜層と異なる色調の上記干渉色を発現する上記酸化被膜層である第2酸化被膜層とを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記基材が板状に形成されており、上記基材の一方側の表面に上記第1酸化被膜層が設けられ、上記基材の他方側の表面に上記第2酸化被膜層が設けられているという構成を採用する。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様において、上記基材が板状に形成されており、上記基材の一方側の表面に上記第1酸化被膜層及び上記第2酸化被膜層が設けられているという構成を採用する。
【0010】
本発明の第4の態様は、ステンレス鋼からなる基材を発色液に浸漬することによって、表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材を製造するステンレス鋼材製造方法であって、上記基材の表面の一部位に当たる上記発色液の流速と、上記基材の表面の他部位に当たる上記発色液の流速とに差を設けることにより、上記一部位に設けられると共に上記干渉色を発現する上記酸化被膜層である第1酸化被膜層と、上記他部位に設けられると共に上記第1酸化被膜層と異なる色調の上記干渉色を発現する上記酸化被膜層である第2酸化被膜層とを形成するという構成を採用する。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記第4の態様において、上記発色液の一部を強制流動させることで、上記他部位に当たる上記発色液の流速を、上記一部位に当たる上記発色液の流速に対して速くするという構成を採用する。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様において、上記基材が板状に形成されており、上記一部位が上記基材の一方側の表面であり、上記他部位が他方側の表面であるという構成を採用する。
【0013】
本発明の第7の態様は、上記第4の態様において、上記発色液の流れの一部を遮ることによって、上記一部位に当たる上記発色液の流速を、上記他部位に当たる発色液の流速に対して遅くするという構成を採用する。
【0014】
本発明の第8の態様は、上記第7の態様において、上記基材が板状に形成されており、
上記基材の一方側の表面に上記一部位と上記他部位とが設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステンレス鋼からなる基材の表面に対して、異なる干渉色を発現する第1酸化被膜層と第2酸化被膜層とが設けられる。このため、本発明によれば、単一のステンレス鋼材にて複数の色調を発現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態のステンレス鋼材の概略構成を示す模式図であり、(a)が平面図であり、(b)がステンレス鋼材の第1面側の表層の模式的な断面図であり、(c)がステンレス鋼材の第2面側の表層の模式的な断面図である。
図2】本発明の第1実施形態のステンレス鋼の製造を行う製造装置の模式図である。
図3】基材の表面に対して当たる発色液の流速を変化させた場合におけるステンレス鋼材の表面の色調の変化を示す表である。
図4】ステンレス鋼材を用いたサッシュモール及びアウトサイドモールを備える本発明の第2実施形態の車両の側面図である。
図5】アウトサイドモールの断面図である。
図6】アウトサイドモールの製造工程を示すフローチャートである。
図7】サッシュモールの断面図である。
図8】サッシュモールの製造工程を示すフローチャートである。
図9】本発明の第3実施形態のステンレス鋼の製造を行う製造装置の模式図である。
図10】本発明の第4実施形態のステンレス鋼の製造を行う製造装置の模式図である。
図11】本発明の第5実施形態のステンレス鋼の製造を行う製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るステンレス鋼材及びステンレス鋼材製造方法の一実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のステンレス鋼材100の概略構成を示す模式図であり、(a)が平面図であり、(b)がステンレス鋼材100の第1面101側の表層の模式的な断面図であり、(c)がステンレス鋼材100の第2面102側の表層の模式的な断面図である。本実施形態のステンレス鋼材100は、例えば車両用の部品として用いられる。ただし、本実施形態のステンレス鋼材100は、車両以外に設けられる部品に用いることも可能である。
【0019】
本実施形態のステンレス鋼材100は、板状の部材であり、第1面101(表面)と第2面102(表面)とを有している。第1面101は例えば意匠面である。第2面102は、第1面101の裏側の面である。これらの第1面101及び第2面102は、いずれもステンレス鋼材100の表層の露出面すなわち表面である。
【0020】
図1(b)及び図1(c)に示すように、本実施形態のステンレス鋼材100は、基材110と、第1酸化被膜層120と、第2酸化被膜層130とを有している。基材110は、ステンレス鋼によって形成されている。また、第1酸化被膜層120及び第2酸化被膜層130は、ステンレス鋼が酸化によって形成されている。つまり、ステンレス鋼材100は、酸化されていないステンレス鋼からなる基材110と、酸化されたステンレス鋼からなる第1酸化被膜層120及び第2酸化被膜層130とを備えている。
【0021】
第1酸化被膜層120は、基材110の一方側の表面111(第1面101側の表面)に設けられている。本実施形態においては、基材110の一方側の表面111の全体に第1酸化被膜層120が設けられている。
【0022】
第1酸化被膜層120は、光の干渉作用に基づく干渉色を発現するための層であり、表面に開口された多数の凹部を有している。なお、光の干渉作用に基づく干渉色を発現するとは、外部から視認する者に対して、干渉現象により強められた波長に基づく色調を感じさせることを意味する。つまり、干渉色を発現する第1酸化被膜層120が設けられることにより、外部の者は、ステンレス鋼材100の第1酸化被膜層120を特定の色調にて視認する。なお、第1酸化被膜層120の膜厚寸法によって、第1酸化被膜層120が発現する干渉色の色調が変化する。このため、第1酸化被膜層120の膜厚寸法を変更することで、外部の者が視認する第1酸化被膜層120の色調を変化させることができる。このような第1酸化被膜層120は、例えば黒、赤、緑、青等の任意の色調の干渉色を膜厚寸法に応じて発現可能である。
【0023】
このような第1酸化被膜層120は、上述のように、例えば意匠面とされるステンレス鋼材100の第1面101の表層に設けられている。このため、第1面101が意匠面である場合には、外部の者は、ステンレス鋼材100の意匠面を第1酸化被膜層120により発現される色調に視認する。
【0024】
第2酸化被膜層130は、第1酸化被膜層120と同様に、光の干渉作用に基づく干渉色を発現するための層である。本実施形態において、第2酸化被膜層130は、図1(a)と図1(b)とを比較して分かるように、第1酸化被膜層120よりも膜厚寸法が大きい。上述のように、酸化被膜層は、膜厚寸法に応じた色調の干渉色を発現する。つまり、第1酸化被膜層120よりも膜厚寸法が大きい第2酸化被膜層130は、第1酸化被膜層120と異なる色調の干渉色を発現する。
【0025】
このような第2酸化被膜層130は、上述のように、ステンレス鋼材100の第2面102の表層に設けられている。このため、外部の者は、第2面102を第1面101と異なる色調に視認する。したがって、外部の者は、ステンレス鋼材100の第1面101と第2面102とを視認するのみで識別することが可能となる。
【0026】
続いて、図2を参照して、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法(ステンレス鋼材製造方法)について説明する。
【0027】
図2は、ステンレス鋼材100の製造を行う製造装置200の模式図である。本実施形態における製造装置200は、ステンレス鋼材100をバッチ処理によって製造する装置である。ただし、ステンレス鋼材100は、連続処理によって製造することも可能である。
【0028】
製造装置200は、第1酸化被膜層120及び第2酸化被膜層130が設けられていない基材110の表面に、第1酸化被膜層120及び第2酸化被膜層130を同時に形成することによって、ステンレス鋼材100を製造する。なお、製造装置200での処理よりも前に、基材110の表面に形成された自然酸化被膜の除去等の前処理は完了しているものとする。
【0029】
図2に示すように、製造装置200は、液槽201と、支持部202と、ポンプ203と、攪拌部204とを備えている。液槽201は、発色液Lを貯留する容器である。なお、液槽201に貯留される発色液Lとしては、例えば、クロム酸、硫酸、リン酸を含んだ処理液を用いる。
【0030】
支持部202は、基材110を液槽201内にて保持する部材である。本実施形態において支持部202は、基材110を液槽201内にて吊下げ支持している。支持部202によって保持された基材110は、液槽201の壁面に当接することなく支持された状態で発色液Lに浸漬される。
【0031】
図2に示すように、本実施形態においては、支持部202によって保持された基材110が液槽201の中央部に配置されている。以下の説明では、基材110の一方側の領域を液槽201の左側領域Raと称し、基材110の他方側の領域を液槽201の右側領域Rbと称する。
【0032】
ポンプ203は、液槽201の右側領域Rbにて発色液Lを強制流動させる。このポンプ203によって強制流動させた発色液Lは、基材110他方側の表面112に当てられる。つまり、ポンプ203は、液槽201に貯留された発色液Lの一部を強制流動させることで、基材110の他方側の表面112(他部位)にあたる発色液Lの流速を、基材110の一方側の表面112(一部位)に当たる発色液Lの流速に対して速くする。
【0033】
攪拌部204は、液槽201の左側領域Raにて発色液Lを攪拌する。この攪拌部204としては、例えば攪拌翼や、マグネチックスターラを用いることが可能である。この攪拌部204は、液槽201の左側領域Raにおける発色液Lの流速及び成分濃度を均一化するためのものであり、ポンプ203によって作り出すような発色液Lの速い流れを形成するものではない。
【0034】
このような製造装置200では、液槽201に貯留された発色液Lを不図示のヒータ等で加熱し、この状態で支持部202によって基材110を発色液Lに浸漬するように支持する。さらに、本実施形態の製造装置200では、ポンプ203によって液槽201の右側領域Rbの発色液Lを強制的に循環流動させることによって、基材110の他方側の表面112に当たる発色液Lの流速を速くする。なお、液槽201の左側領域Raでは、攪拌部204によって発色液Lを攪拌する。
【0035】
このような状態で一定時間処理を行うことで、基材110の一方側の表面111と他方側の表面112とに酸化被膜が形成される。基材110の他方側の表面112には、相対的に流速が速い発色液Lが当たるため、基材110の一方側の表面111よりも膜厚寸法が大きな酸化被膜が形成される。この結果、基材110の一方側の表面111に相対的に膜厚が小さな酸化被膜(すなわち第1酸化被膜層120)が形成され、基材110の他方側の表面12に相対的に膜厚が大きな酸化被膜(すなわち第2酸化被膜層130)が形成される。
【0036】
図3は、基材110の表面に対して当たる発色液Lの流速を変化させた場合におけるステンレス鋼材100の表面の色調の変化を示す表である。なお、図3において、基材110の表面に対して当たる発色液Lの流速が相対的に遅い場合の結果を「A」で示し、基材110の表面に対して当たる発色液Lの流速が相対的に速い場合の結果を「B」で示す。また、図3においては、色調をLab空間によって示している。この結果が示す彩度の変化から、基材110の表面に対して当たる発色液Lの流速が相対的に速い場合には、基材110の表面に対して当たる発色液Lの流速が相対的に遅い場合よりも、ステンレス鋼材100の表面の色調が黄色の強い色調に変化したことが分かる。
【0037】
以上のような本実施形態のステンレス鋼材100は、表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられている。また、本実施形態のステンレス鋼材100は、基材110と、第1酸化被膜層120と、第2酸化被膜層130とを備えている。基材110は、ステンレス鋼からなる。第1酸化被膜層120は、基材110の表面の一部位に設けられると共に干渉色を発現する酸化被膜層である。第2酸化被膜層130は、基材110の表面の第1酸化被膜層120が設けられていない部位に設けられる。また、第2酸化被膜層130は、第1酸化被膜層120と異なる色調の干渉色を発現する。
【0038】
本実施形態のステンレス鋼材100によれば、ステンレス鋼からなる基材110の表面に対して、異なる干渉色を発現する第1酸化被膜層120と第2酸化被膜層130とが設けられる。このため、本実施形態のステンレス鋼材100によれば、単一のステンレス鋼材100にて複数の色調を発現することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態のステンレス鋼材100においては、基材110が板状に形成されている。また、基材110の一方側の表面に第1酸化被膜層120が設けられ、基材110の他方側の表面に第2酸化被膜層130が設けられている。このような本実施形態のステンレス鋼材100によれば、ステンレス鋼材100の一方側の面と他方側の面との色調を異ならせることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法は、ステンレス鋼からなる基材110を発色液Lに浸漬することによって、表面に光の干渉作用に基づく干渉色を発現する酸化被膜層が設けられたステンレス鋼材100を製造する。本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法では、基材110の表面の一部位に当たる発色液の流速と、基材110の表面の他部位に当たる発色液の流速とに差を設ける。これによって、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法では、基材110の表面の一部位に設けられると共に干渉色を発現する酸化被膜層である第1酸化被膜層120と、基材110の表面の他部位に設けられると共に第1酸化被膜層120と異なる色調の干渉色を発現する酸化被膜層である第2酸化被膜層130とを形成する。
【0041】
このような本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法によれば、異なる干渉色を発現する第1酸化被膜層120と第2酸化被膜層130とが設けられたステンレス鋼材100を製造することができる。したがって、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法によれば、複数の色調を発現することが可能な単一のステンレス鋼材100を製造することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法においては、発色液Lの一部を強制流動させることで、基材110の表面の他部位に当たる発色液の流速を、基材110の表面の一部位に当たる発色液Lの流速に対して速くしている。このような本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法によれば、強制流動させる流速を調整することによって、容易に第2酸化被膜層130の膜厚を調整することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法においては、基材110が板状に形成されている。また、基材110の表面の一部位が基材110の一方側の表面であり、基材110の表面の他部位が基材110の他方側の表面である。このため、一方側の面と他方側の面との色調を異ならせたステンレス鋼材100を製造することが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0045】
図4は、車両30の側面図である。車両30には、フロントドア31、リアドア32及びリアサイドガラス33が設けられている。また、車両30には、アウトサイドモール10(車両用外装部品)やサッシュモール20(車両用外装部品)が設けられている。
【0046】
アウトサイドモール10は、フロントドア31とリアドア32との各々に設けられており、昇降式ウィンドウの下端部に配置されている。このアウトサイドモール10には、外部に露出した芯材2(図5参照)を有している。本実施形態においては、このようなアウトサイドモール10の芯材2に、上記第1実施形態のステンレス鋼材100が用いられている。
【0047】
図5は、アウトサイドモール10の断面図である。図5に示すように、本実施形態のアウトサイドモール10が取り付けられるドアパネルPは、上端部が車両の外側から内側に向けて折り返されている。このようにドアパネルPの折り返された部位を、以下、折り返し部Paと称する。ドアパネルPは、上述の折り返し部Paが車両の前後方向における一端から他端まで設けられた形状を有している。
【0048】
本実施形態のアウトサイドモール10は、図5に示すように、芯材2(ステンレス鋼材100)と、樹脂部3と、接着層4と、低摩擦層5とを備えている。芯材2は、本実施形態のアウトサイドモール10の剛性を確保するための強度部材であり、ロール成形により形成されたステンレス鋼材100からなる部品である。この芯材2は、アウトサイドモール10の延在方向に沿って配設されており、一部が露出状態にて樹脂部3に保持されている。図5に示すように、芯材2は、樹脂部3に埋設された埋設領域2aと、外部に向けて片面が露出された露出領域2bと、露出領域2bの下端部に接続された先端領域2cとを有している。
【0049】
埋設領域2aと先端領域2cとは、ドアパネルPの折り返し部Paを挟むように対向配置されており、埋設領域2aが車内側に配置され、先端領域2cが車外側に配置されている。また、露出領域2bは、埋設領域2aと先端領域2cとを繋ぐように湾曲されている。この露出領域2bは、本実施形態のアウトサイドモール10が車両に装着された状態では、外面が車両外側に向けて露出される領域である。なお、埋設領域2aと先端領域2cとは、本実施形態のアウトサイドモール10が車両に装着された状態では、表面を外部から視認することはできない。
【0050】
樹脂部3は、芯材2を保持しておりかつ芯材2によって支持されており、例えば塩化ビニルによって形成された樹脂製の部材である。この樹脂部3は、芯材2の埋設領域2aが内部に配設された基部3aと、芯材2の傾倒を防止する傾倒防止部3bと、車内側に突出する2つのリップ3cと、上方に突出する装飾リップ3dと、緩衝リップ3eとを有している。
【0051】
基部3aは、芯材2の埋設領域2aを表裏面両側から覆うように設けられている。この基部3aのドアパネルP側に突出して設けられた内側パネル当接部3a1を有している。内側パネル当接部3a1は、傾倒防止部3bに対向配置されており、傾倒防止部3bと共にドアパネルPを挟持する。これらの内側パネル当接部3a1と傾倒防止部3bとの隙間にドアパネルPが差し込まれると、傾倒防止部3bの後述する内部リップ3b1が弾性変形し、内部リップ3b1の復元力によりドアパネルPが保持される。つまり、内側パネル当接部3a1と傾倒防止部3bとがドアパネルPを挟持することによって、アウトサイドモール10がドアパネルPに対して固定されている。
【0052】
また、基部3aは、抜け止め部3a2を備えている。抜け止め部3a2は、基部3aの下部に車外側に突出するように設けられており、折り返し部Paを形成するために下方に向けられたドアパネルPの端部Pbに下方から当接する。これによって、アウトサイドモール10がドアパネルPに対して上方に抜けることが防止される。
【0053】
傾倒防止部3bは、ドアパネルPを挟み込むようにして基部3aに対向配置されている。この傾倒防止部3bは、接着層4を介して芯材2の露出領域2bの内壁面に接着されており、芯材2を内側から支持することによって芯材2が傾倒することを防止している。
【0054】
この傾倒防止部3bは、ドアパネルP側に突出して設けられた内部リップ3b1を有している。この内部リップ3b1は、基部3aと傾倒防止部3bとの間に挿入されたドアパネルPに押圧されることによって弾性変形されるリップであり、復元力によってドアパネルPを基部3aと傾倒防止部3bとの間で保持する。
【0055】
リップ3cは、低摩擦層5を介して窓板に当接しており、窓板と本実施形態のアウトサイドモール10との間に雨水等が入り込むことを防止する。また、リップ3cは、窓板の昇降を阻害しない程度の可撓性を有している。
【0056】
装飾リップ3dは、基部3aの上端部に設けられており、基部3aから窓板の方向に突出している部位である。緩衝リップ3eは、芯材2の先端領域に設けられており、ドアパネルPと当接して弾性変形する部位である。この緩衝リップ3eは、ドアパネルPと本実施形態のアウトサイドモール10との間に雨水等が入り込むことを防止すると共に取付時のばらつきを吸収している。また、緩衝リップ3eは、接着層4を介して芯材2の表面に接着されている。
【0057】
接着層4は、芯材2と樹脂部3との間に介挿されており、芯材2と樹脂部3とを接着している。より詳細には、接着層4は、芯材2と樹脂部3の基部3aとの間、芯材2と樹脂部3の傾倒防止部3bとの間、及び、芯材2と樹脂部3の緩衝リップ3eとの間に介挿されている。この接着層4は、例えば熱硬化性の接着剤が加熱されて硬化することによって形成された層である。
【0058】
低摩擦層5は、リップ3cよりも低摩擦なナイロンパイル等を植毛した層であり、リップ3cの表面に形成され、窓板に対して直接当接される。このような低摩擦層5によって、窓板の表面の傷つき等を防止した状態で、本実施形態のアウトサイドモール10を窓板に摺動可能に当接させることができる。
【0059】
図6は、本実施形態のアウトサイドモール10の製造工程(車両用外装部品の製造方法)を示すフローチャートである。この図に示すように、アウトサイドモール10を製造する場合には、まずステンレス鋼材形成工程を行う(ステップS11)。このステンレス鋼材形成工程S11では、上記第1実施形態のステンレス鋼材100を製造する。
【0060】
続いて、接着層形成材料塗布工程を行う(ステップS12)。この接着層形成材料塗布工程S12では、ステンレス鋼材100に対して接着層4の形成材料を塗布する。その後、加熱工程を行う(ステップS13)。ここでは、高周波加熱器等によって接着層4の形成材料及びステンレス鋼材100を加熱する。
【0061】
続いて、成形工程を行う(ステップS14)。成形工程S14では、ステンレス鋼材100を芯材2の形状に成形する。ここでは、例えばロール成形機を用いて、加熱されたステンレス鋼材100の形状を芯材2の形状に徐々に成形する。
【0062】
続いて、押出成形工程を行う(ステップS15)。押出成形工程S15では、接着層4の形成材料を塗布したステンレス鋼材100の表面に対して押出成形により樹脂部3を形成する。このとき、溶融した樹脂により加熱、圧着されることで接着層4の形成材料が樹脂部3に対して固着し、芯材2と樹脂部3とを接着する。
【0063】
続いて、冷却工程を行う(ステップS16)。冷却工程S16では、ステンレス鋼材100、樹脂部3及び接着層4を、冷却液に浸漬することで冷却する。続いて、切断工程が行われる(ステップS17)。この切断工程S17では、芯材2及び樹脂部3をアウトサイドモール10の長さ寸法に合わせて切断する。続いて、植毛工程が行われる(ステップS18)。この植毛工程S18では、リップ3cに対して低摩擦なナイロンパイル等を植毛することで低摩擦層5が形成される。
【0064】
以上のような本実施形態のアウトサイドモール10は、ステンレス鋼材100を含む車両用外装部品である。このようなアウトサイドモール10によれば、ステンレス鋼材100の一方側の面と他方側の面とが異なる色調に形成されている。このため、ステンレス鋼材100の表裏を誤ることなくアウトサイドモール10を製造することが可能となる。
【0065】
図4に戻り、サッシュモール20は、フロントドア31の上縁部及びリアドア32の上縁部に設けられた長尺状の部材である。本実施形態においては、このようなサッシュモール20に、上記第1実施形態のステンレス鋼材100が用いられている。
【0066】
図7は、サッシュモール20の断面図である。なお、図7に示すサッシュモール20の断面形状は一例であって、本発明の車両用外装部品の断面形状は、図7に示す形状に限定されるものではない。
【0067】
図7を参照して、本実施形態においてのサッシュモール20の具体的な形状について説明する。なお、サッシュモール20の取付け姿勢に関わらず、以下の説明においては、図7における下側の下方とし、図7における上側の上方とする。また、後述する意匠部位1aの意匠面1a1が向けられた方向を外側と称し、外側と反対側の方向を内側と称する。
【0068】
図7に示すように、サッシュモール20は、外部から視認可能な意匠面1a1を有する平板状の意匠部位1aを有している。また、サッシュモール20は、意匠部位1aの下端から内側に曲げられた下部湾曲部位1bを有している。この下部湾曲部位1bは、一方側の端部と他方側の端部とのいずれもが上方に向けられるように約180°の範囲で湾曲された部位である。この下部湾曲部位1bの外側に位置する端部は意匠部位1aの下端と接続されている。
【0069】
また、サッシュモール20は、下部湾曲部位1bの他端から上方に直線状に延出する下部端末部位1cを有している。この下部端末部位1cは、図7に示す断面におけるサッシュモール20の一端部からなる部位であり、意匠部位1aの内壁面に対向配置されている。また、サッシュモール20は、意匠部位1aの上端から内側に曲げられた上部湾曲部位1dを有している。この上部湾曲部位1dは、一方側の端部が意匠部位1aの上端と接続され、他方側の端部が内側かつ水平方向に向けられるように約90°の範囲で湾曲された部位である。
【0070】
また、サッシュモール20は、上部湾曲部位1dの他方側の端部から内側に向けて水平に延出する平板状の上壁部位1eを有している。また、サッシュモール20は、上壁部位1eの内側に向けられた先端から下方に向けて曲げられた上部内側湾曲部位1fを有している。この上部内側湾曲部位1fは、一方の端部が上壁部位1eの先端に接続され、他方の端部が意匠部位1aに向かうように約180°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール20は、上部内側湾曲部位1fの他方の端部から意匠部位1aに向けて水平方向に延出する上壁対向部位1gを有している。この上壁対向部位1gは、先端が意匠部位1aに向けられた平板状の部位であり、上壁部位1eの下方にて上壁部位1eに対向配置されている。
【0071】
また、サッシュモール20は、上壁対向部位1gの先端から下方に向けて曲げられた内側湾曲部位1hを有している。この内側湾曲部位1hは、一端が上壁対向部位1gの先端と接続され、他端が内側に向くように斜め下方に向けられるように約120°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール20は、内側湾曲部位1hの先端から斜め下方に先端を向けて延出する平板状の斜壁部位1jを有している。また、サッシュモール20は、斜壁部位1jの先端から内側に曲げられた中央湾曲部位1kを有している。この中央湾曲部位1kは、一端が斜壁部位1jの先端と接続され、他端が水平に内側に向けられるように約60°の範囲で湾曲された部位である。
【0072】
また、サッシュモール20は、中央湾曲部位1kの他端から先端が内側に向けて水平に延出された平板状の水平壁部位1mを有している。また、サッシュモール20は、水平壁部位1mの先端から上方に曲げられた水平壁湾曲部位1nを有している。水平壁湾曲部位1nは、一端が水平壁湾曲部位1nの先端に接続され、他端が上方に向けられるように約90°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール20は、水平壁湾曲部位1nの他端から先端が上方に向けて延出された平板状の立壁部位1pを有している。
【0073】
このように、サッシュモール20は、複数の平板状の部位(意匠部位1a 下部端末部位1c、上壁部位1e、上壁対向部位1g、斜壁部位1j、水平壁部位1m 、及び立壁部位1p)と、複数の湾曲された部位(下部湾曲部位1b、上部湾曲部位1d、上部内側湾曲部位1f、内側湾曲部位1h、中央湾曲部位1k、及び水平壁湾曲部位1n)とを有する断面形状に形成されている。
【0074】
図8は、本実施形態のサッシュモール20の製造工程(車両用外装部品の製造方法)を示すフローチャートである。この図に示すように、サッシュモール20を製造する場合には、まずステンレス鋼材形成工程を行う(ステップS21)。このステンレス鋼材形成工程S21では、上記第1実施形態のステンレス鋼材100を製造する。
【0075】
続いて、加熱工程を行う(ステップS22)。ここでは、高周波加熱器等によってステンレス鋼材100を加熱する。続いて、成形工程を行う(ステップS23)。成形工程S23では、ステンレス鋼材100をサッシュモール20の形状に成形する。ここでは、例えばロール成形機やプレス機を用いて、加熱されたステンレス鋼材100の形状をサッシュモール20の形状に成形する。
【0076】
続いて、冷却工程を行う(ステップS24)。冷却工程S24では、ステンレス鋼材100を、冷却液に浸漬することで冷却する。続いて、切断工程が行われる(ステップS25)。この切断工程S25では、サッシュモール20の長さ寸法に合わせてステンレス鋼材100を切断する。なお、予めステンレス鋼材100がサッシュモール20の長さ寸法に合わせて形成されている場合には、切断工程S25は省略される。
【0077】
このようなサッシュモール20の製造方法では、ステンレス鋼材100の一方側の面と他方側の面とが異なる色調に形成されている。このため、ステンレス鋼材100の表裏を誤ることなくサッシュモール20を製造することが可能となる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0079】
図9は、本実施形態のステンレス鋼材100の製造を行う製造装置200の模式図である。本実施形態における製造装置200は、図9に示すように、マスク205を備えている。マスク205は、ポンプ203の吐出口と基材110との間に配置されており、発色液Lを通過可能な貫通孔206が複数設けられている。
【0080】
このようなマスク205は、貫通孔206が設けられる部位を除いて、ポンプ203によって形成された流れが基材110の他方側の表面112に到達することを防止する。つまり、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法によれば、発色液Lの流れの一部を遮ることによって、基材110の表面の一部位に当たる発色液Lの流速を、基材110の表面の他部位に当たる発色液Lの流速に対して遅くすることができる。
【0081】
このため、本実施形態のステンレス鋼材100によれば、基材110の他方側の表面に対して、膜厚寸法が異なる酸化被膜を形成することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、基材110の他方側の表面に対して、第1酸化被膜層120と第2酸化被膜層130との両方を設けることが可能となる。このため、例えば、ステンレス鋼材100の一方側の表面に対して、複数の色調を付与することができる。このため、本実施形態によれば、ステンレス鋼材100の一方側の面に対して、模様を形成したり、マークを形成したりすることが可能となる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図10を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0083】
図10は、本実施形態のステンレス鋼材100の製造を行う製造装置200の模式図である。本実施形態における製造装置200は、図10に示すように、液槽201に対して、遮蔽壁207が設けられている。遮蔽壁207は、ポンプ203の吐出口と基材110との間に配置されており、液槽201の底部から上方に向けて突出して設けられている。
【0084】
このような遮蔽壁207は、ポンプ203によって形成された流れの一部が基材110の他方側の表面112に到達することを防止する。つまり、本実施形態のステンレス鋼材100の製造方法によれば、発色液Lの流れの一部を遮ることによって、基材110の表面の一部位に当たる発色液Lの流速を、基材110の表面の他部位に当たる発色液Lの流速に対して遅くすることができる。
【0085】
このため、本実施形態のステンレス鋼材100によれば、基材110の他方側の表面に対して、膜厚寸法が異なる酸化被膜を形成することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、基材110の他方側の表面に対して、第1酸化被膜層120と第2酸化被膜層130との両方を設けることが可能となる。このため、例えば、ステンレス鋼材100の一方側の表面に対して、複数の色調を付与することができる。このため、本実施形態によれば、ステンレス鋼材100の一方側の面に対して、模様を形成したり、マークを形成したりすることが可能となる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図11を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0087】
図11は、本実施形態のステンレス鋼材100の製造を行う製造装置200の模式図である。この図に示すように、本実施形態における製造装置200に浸漬される基材110には、貫通孔113が複数設けられている。
【0088】
このような貫通孔113が設けられることによって、貫通孔113を通過する発色液Lの流速が速くなる。このため、ポンプ203から基材110に向かう発色液Lの流れの一部が局所的に速くなる。このため、貫通孔113に周囲に対して第2酸化被膜層130を形成し、貫通孔113から遠い部位に第1酸化被膜層120を形成することができる。
【0089】
このため、本実施形態のステンレス鋼材100によれば、基材110の他方側の表面に対して、膜厚寸法が異なる酸化被膜を形成することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、基材110の他方側の表面に対して、第1酸化被膜層120と第2酸化被膜層130との両方を設けることが可能となる。このため、例えば、ステンレス鋼材100の一方側の表面に対して、複数の色調を付与することができる。このため、本実施形態によれば、ステンレス鋼材100の一方側の面に対して、模様を形成したり、マークを形成したりすることが可能となる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0091】
例えば、上記実施形態においては、バッチ処理によってステンレス鋼材100を製造する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、連続処理によってステンレス鋼材100を製造することも可能である。このような場合には、例えば、フープ材から基材110を引き出し、引き出された部位を発色液Lに浸漬して第1酸化被膜層120及び第2酸化被膜層130を形成し、ステンレス鋼材100となった部位を乾燥後に再び巻き取るようにステンレス鋼材100を製造することが可能である。
【0092】
また、上記第2実施形態においては、車両用外装部品にステンレス鋼材100を用いる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のステンレス鋼材は、ステンレス鋼を用いて形成可能な部材に対して、広く用いることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10……アウトサイドモール、2……芯材(ステンレス鋼材)、20……サッシュモール(ステンレス鋼材)、100……ステンレス鋼材、101……第1面、102……第2面、110……基材、111……表面、112……表面、113……貫通孔、120……第1酸化被膜層、130……第2酸化被膜層、200……製造装置、201……液槽、202……支持部、203……ポンプ、204……攪拌部、205……マスク、206……貫通孔、207……遮蔽壁、L……発色液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11