(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047439
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ソフト削り節製造装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
B26D3/28 630F
B26D3/28 630G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156349
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】517429112
【氏名又は名称】株式会社千客万来
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】波田野 勇治
(57)【要約】
【課題】大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適したコンパクトな構成であって、店頭において客の面前に晒されても違和感のない外観のソフト削り節製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】スタンド1とスタンド1に支持される本体部とから成り、本体部は削り出し機構と魚節供給機構とを含み、削り出し機構は、基板5の一面側に設置されるモータ6と基板5の他面側に設置されて、モータ6により回転駆動される回転鉋盤8とから成り、魚節供給機構は、基板5に形成された開口5aから前記一面側に伸びるように設置される樋部材11と、樋部材11内に配備されて樋部材11内に供給される魚節を押圧し、開口5aから露出させて回転鉋盤8に圧接させるガススプリング21とから成る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削り出し機構と魚節供給機構とを含み、
前記削り出し機構は、スタンドに支持される基板の一面側に設置されるモータと、前記基板の他面側に設置されて前記モータにより回転駆動される回転鉋盤とから成り、
前記魚節供給機構は、前記基板に形成された開口から前記一面側に伸びるように設置される樋部材と、前記樋部材内に配備されて前記樋部材内に供給される魚節を押圧して前記開口から露出させ、前記回転鉋盤に圧接させるガススプリングとから成ることを特徴とするソフト削り節製造装置。
【請求項2】
前記前記削り出し機構の基板は垂直に設置され、前記樋部材は前記基板の開口から水平方向に伸びるように設置される、請求項1に記載のソフト削り節製造装置。
【請求項3】
前記前記削り出し機構の基板は水平に設置され、前記樋部材は前記基板の開口から上方向に伸びるように設置される、請求項1に記載のソフト削り節製造装置。
【請求項4】
前記ガススプリングを収納する前記樋部材は、断面倒コの字型の樋状受け材で、その先端部が前記基板の前記開口に挿入されて取り付けられ、前記樋部材の中央部に、前記ガススプリングを確固と支持する仕切り板が設置され、前記ガススプリングのシリンダーロッドの先端部に、前記樋部材内を摺動して魚節を押圧する押圧板が設置される、請求項2又は3に記載のソフト削り節製造装置。
【請求項5】
前記シリンダーロッドの先端部に、引き戻しワイヤーの一端が連結され、前記引き戻しワイヤーの他端は、前記樋部材の中間部に設置される巻上げ杆に固定され、前記巻上げ杆の一端が前記樋部材の側板から外側に出され、そこにラチェット機構を介して巻上げハンドルが設置される、請求項4に記載のソフト削り節製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフト削り節製造装置に関するものであり、より詳細には、かつお節に代表される魚節をソフト削りしてソフト削り節を製造するための、コンパクトな構成のソフト削り節製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
うどん店やそば店においては、かつおの削り節が大量に用いられる。言うまでもなく、削り節は削りたてが一番香り豊かでおいしいため、削りたてのものを客に提供する店が少なくない。かつお節の削り出しは一般に、鉋形状のかつお節削り器を用いて手作業により行われるが、上記のように大量の削り節を用い、しかも、削りたてのものを提供しようとする店においては、その都度手作業で削り出すことは非効率的で実際的ではない。そこで、自動的に削り節を削成する電動の削り節製造装置が求められていた。
【0003】
上記要望に応えるために、種々の電動削り節製造装置が提案されているが、その多くは削り節製造会社に設置されるような、大型且つ複雑な構成で高価なものであり(例えば、特開平10-215825号公報、特公平2-1638号公報、実開平5-39291号公報等)、うどん店やそば店等のようにスペース的に余裕のない店舗に設置するのには適さず、また、客の目に晒されるような態様での使用には不向きである。
【0004】
そこで、コンパクトな構成であって、大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適し、店頭において客の面前に晒されても何の違和感もない外観の削り節製造装置が提唱され、実用化されている(特許第5913152号公報、特開2019-98497号公報等)。
【0005】
ところで、削り節といっても、魚節の種類やサイズの違い、削り出し厚さの違い、削り方の違い等から、多種多様のものが存在する。一般的な削り方は、魚節の長さ方向にその側面を削っていく方法であるが、魚節を輪切り方向に帯状に削る、ソフト削りと呼ばれる方法もある。このソフト削りにより削成されるソフト削り節は、一般的な削り方による花かつおと比べて、花のサイズが小さめで食感がやわらかく、調味料がかかっても花が絡み合わない、使い勝手と風味のよい削り節であるが、従来、このソフト削りに特化したコンパクトな構成のソフト削り節製造装置は提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-215825号公報
【特許文献2】特公平2-1638号公報
【特許文献3】実開平5-39291号公報
【特許文献4】特許第5913152号公報
【特許文献5】特開2019-98497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来、ソフト削りに特化したコンパクトな構成のソフト削り節製造装置は提唱されていない。そこで本発明は、大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適したシンプルでコンパクトな構成であって、店頭において客の面前に晒されても何の違和感もない外観のソフト削り節製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、削り出し機構と魚節供給機構とを含み、
前記削り出し機構は、スタンドに支持される基板の一面側に設置されるモータと、前記基板の他面側に設置されて前記モータにより回転駆動される回転鉋盤とから成り、
前記魚節供給機構は、前記基板に形成された開口から前記一面側に伸びるように設置される樋部材と、前記樋部材内に配備されて前記樋部材内に供給される魚節を押圧して前記開口から露出させ、前記回転鉋盤に圧接させるガススプリングとから成ることを特徴とするソフト削り節製造装置である。
【0009】
一実施形態においては、前記前記削り出し機構の基板は垂直に設置され、前記樋部材は前記基板の開口から水平方向に伸びるように設置され、他の実施形態においては、前記前記削り出し機構の基板は水平に設置され、前記樋部材は前記基板の開口から上方向に伸びるように設置される。
【0010】
一実施形態においては、前記ガススプリングを収納する前記樋部材は、断面倒コの字型の樋状受け材で、その先端部が前記基板の前記開口に挿入されて取り付けられ、前記樋部材の中央部に、前記ガススプリングを確固と支持する仕切り板が設置され、前記ガススプリングのシリンダーロッドの先端部に、前記樋部材内を摺動して魚節を押圧する押圧板が設置される。
【0011】
一実施形態においては、前記シリンダーロッドの先端部に、引き戻しワイヤーの一端が連結され、前記引き戻しワイヤーの他端は、前記樋部材の中間部に設置される巻上げ杆に固定され、前記巻上げ杆の一端が前記樋部材の側板から外側に出され、そこにラチェット機構を介して巻上げハンドルが設置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るソフト削り節製造装置は上記のとおりであって、魚節の押圧に、小型で電源やエアコンプレッサー等を必要とせず、また、メンテナンスも必要ないガススプリングを用いるために、シンプル且つコンパクトな構成とすることができるので、大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適し、花のサイズが小さめで食感がやわらかく、調味料がかかっても花が絡み合わない、使い勝手と風味がよいソフト削り節を効率よく、低コストにて製造し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るソフト削り節製造装置の第1の実施形態の斜視図(組立図)である。
【
図2】本発明に係るソフト削り節製造装置の第1の実施形態の斜視図(分解図)である。
【
図3】本発明に係るソフト削り節製造装置の第1の実施形態における魚節供給機構の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係るソフト削り節製造装置の第1の実施形態における魚節供給機構の要部の構成を示す側面図である。
【
図5】本発明に係るソフト削り節製造装置の第1の実施形態における魚節供給機構のガススプリング支持部の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るソフト削り節製造装置の第2の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。先ず、
図1~5に示される第1の実施形態について説明する。第1の実施形態に係る削り節製造装置は、削り出し機構と魚節供給機構を横向きに配置したもので、
図1,2に示されるように、一対の側板2,3で形成されるベースフレーム1と、ベースフレーム1にアングル材4を介して垂直に設置される基板5と、基板5の背面側に設置される減速機付きモータ6及び魚節供給機構7と、基板5の正面側に設置されて、モータ6により回転駆動される回転鉋盤8とを含んで構成される。
【0015】
モータ6の出力軸6aは、基板5を貫いて正面側に出され、そこに回転鉋盤8が取り付けられる。回転鉋盤8としては、複数の刃体8aを放射状に配設した公知のもの(特許文献1,2等参照)を用いることができる。回転鉋盤8には、正面に透視可能な透視窓9aを備えた本体カバー9が被せられる。本体カバー9の下面は開口され、その下に回収ボックス41が配置される。
【0016】
魚節供給機構7は、基板5に形成された開口5aから背面側に伸びるように設置される樋部材11と、樋部材11内に収納されるガススプリング21により構成される。ガススプリング21は、樋部材11の前方部分に縦向きに寝かせて供給される魚節40を、樋部材11から基板5の前面側に押圧し、回転鉋盤8の背面に圧接状態となるように作用する。ガススプリング21は、高圧ガス(不燃性窒素ガス)が充填されたシリンダー内をピストンで圧縮することによるガスの反力をバネとして利用するもので、小型で電源やエアコンプレッサー等を必要とせず、特にメンテナンスも必要ないので、ここで魚節40の押送・押圧に用いる機器として最適である。
【0017】
ガススプリング21を装填する樋部材11は、上面が開放された断面倒コの字型の樋状受け材で、その先端部が基板5に形成された開口5aに挿入された状態で取り付け固定される。ガススプリング21が長尺であって、それを支持する樋部材11も長尺になる場合は、その後端部が支柱15等によって支持される(
図1参照)。
【0018】
樋部材11の中央部に、ガススプリング21を確固と支持する仕切り板12が設置される。仕切り板12には円孔13が形成され、円孔13から上方に抜ける落とし溝13aが連設される(
図5参照)。ガススプリング21のロッド側端部には縮径部22aが形成されていて、シリンダーロッド23を落とし溝13aから円孔13内に落とし込んだ後、その縮径部22aを円孔13内に嵌合することにより、ガススプリング21は樋部材11内において、確固と安定状態に支持される。
【0019】
シリンダーロッド23の先端部には、樋部材11の底面及び両側面に沿って摺動する押圧板24が固定される(
図3参照)。押圧板24は、その前側に縦向きに寝かせた状態で供給される魚節40を押圧し、その先端部を回転鉋盤8の背面に圧接させる。
【0020】
また、シリンダーロッド23の先端部に、引き戻しワイヤー14の一端が連結される(
図3参照)。引き戻しワイヤー14の他端は、樋部材11の中間部に設置されて引き戻し部を構成する巻上げ杆16に固定される。巻上げ杆16は、樋部材11の中間部上部間に渡されて軸支される。巻上げ杆16の一端は樋部材11の側板から外側に出され、そこにラチェット機構を介して巻上げハンドル17が取り付けられる。ラチェット機構は、巻上げ杆16の巻上げ方向の回転のみ許容するもので、巻上げ杆16に固定されるラチェット歯車18と、樋部材11の側板に固定設置されていてラチェット歯車18に噛合するツメ19とから成る(
図3,4参照)。
【0021】
魚節40が投入される樋部材11の端部には、安全カバー26が設置される(
図3,4参照)。安全カバー26は樋部材11の端部に軸支されて上下方向に揺動可能にされ、魚節40の投入時に上方に揺動させて開口し、投入後閉じるが、閉じた際の受けとして、樋部材11の側板に受けボルト27がねじ込まれる。受けボルト27は、その先端部が樋部材11の側板の内側に突出するようにねじ込まれ、その突出部が安全カバー26の底面に形成された受け入れ溝26a内に係合することで、安全カバー26を受け止める(
図4参照)。この安全カバ―26は、魚節40の飛び出しを防止すると共に、指先の回転鉋盤8方向への挿入を阻止することで、指先の裂傷を防止する。
【0022】
上記構成において、シリンダーロッド23及び引き戻しワイヤー14が伸びた状態から巻上げハンドル17を、
図3,4において反時計回りに手回しすると、引き戻しワイヤー14は巻上げ杆16に巻上げられ、それにつれてシリンダーロッド23がガス圧に抗して縮動作する。この反時計回りへの回転駆動の場合、ツメ19はラチェット歯車18に係合しないため、巻上げ杆16の巻上げ方向への回転は可能である。ここでハンドル17から手を離すと、シリンダーロッド23がガス圧によって伸動作して、巻上げ杆16を逆方向、即ち、巻き戻し方向に回転させようとするが、その場合は、ツメ19がラチェット歯車18に係合し、その逆方向への回転が阻止される。
【0023】
上記巻上げ操作に伴ってシリンダーロッド23が縮動作すると、樋部材11の押圧板24の前方部分に、魚節40の投入空間が生成されるので、安全カバー26を開けてその空間部に魚節40を縦向きに寝かせて供給する。魚節40を供給して安全カバー26を閉じた後、ツメ19をラチェット歯車18から外すと(
図4の仮想線参照)、シリンダーロッド23は引き戻しワイヤー14による引き戻し力から解放されて伸動作可能となる結果、魚節40は寝た状態のまま押圧板24によって押圧され、その先端部が回転鉋盤8の背面に圧接する状態となる。
【0024】
このようにして回転鉋盤8の背面に押し付けられた魚節40は、次々と到来する刃体8aによってソフト削りされていく。削り出されたソフト削り節は、本体カバー9の下面開口から、その下に配置される回収ボックス41内に落ちて回収される。
【0025】
次いで、
図6に示される第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、上記第1の実施形態において横向きに配置されている削り出し機構と魚節供給機構を、縦向きに配置したものである。これは、第1の実施形態の場合は、ガススプリング21及びこれを受ける樋部材7が後方に飛び出るため、設置場所にそのための十分なスペースがないと設置できないことに鑑みて創案された構成である。
【0026】
この第2の実施形態の構成及び作用効果は、縦向きに構成すること以外、第1の実施形態の場合と基本的に変わりがない。即ち、削り出し機構の基板5は水平に設置され、樋部材は基板5の開口5aから上方向に伸びるように配置される。そして、モータ6が基板5の上面側に配備され、モータ6により回転駆動される回転鉋盤8が、基板5の裏面に配備される。
【0027】
この構成の場合も、シリンダーロッド23及び引き戻しワイヤー14が伸びた状態から巻上げハンドル17を手回しして、引き戻しワイヤー14を巻上げ杆16に巻上げ、シリンダーロッド23に縮動作させる。この動作の場合、ツメ19はラチェット歯車18に係合しないため、巻上げ杆16の巻上げ方向への回転は可能である。ここでハンドル17から手を離すと、シリンダーロッド23がガス圧によって伸動作して、巻上げ杆16を逆方向、即ち、巻き戻し方向に回転させようとするが、その場合は、ツメ19がラチェット歯車18に係合し、その逆方向への回転が阻止される。
【0028】
上記巻上げ操作によってシリンダーロッド23に縮動作させると、樋部材11の押圧板24の下方部分に、魚節40の投入空間が生成されるので、安全カバー26がある場合はそれを開けて、その空間部に魚節40を縦向きにして投入する。魚節40の投入後、ツメ19をラチェット歯車18から外すと、シリンダーロッド23は引き戻しワイヤー14による引き戻し力から解放されて伸動作する結果、魚節40は縦向きのまま押圧板24によって下方に押圧され、その先端部が回転鉋盤8の背面に圧接する状態が持続する。
【0029】
このようにして回転鉋盤8の背面に押し付けられた魚節40は、次々と到来する刃体8aによってソフト削りされていく。削り出されたソフト削り節は、本体カバー9の下面開口から、その下に配置される回収ボックス41内に落ちて回収される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るソフト削り節製造装置は上記のとおりであって、魚節の押圧に、小型で電源やエアコンプレッサー等を必要とせず、また、メンテナンスも必要ないガススプリングを用いるために、シンプル且つコンパクトな構成とすることができるので、大型機器の設置スペースのない店舗に設置するのに適し、花のサイズが小さめで食感がやわらかく、調味料がかかっても花が絡み合わない、使い勝手と風味がよいソフト削り節を効率よく低コストにて製造し得る効果があり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0031】
1 ベースフレーム
2,3 側板
4 アングル材
5 基板
6 モータ
7 魚節供給機構
8 回転鉋盤
9 本体カバー
11 樋部材
12 仕切り板
13 円孔
14 引き戻しワイヤー
15 支柱
16 巻上げ杆
17 ハンドル
18 ラチェット歯車
19 ツメ
21 ガススプリング
22 シリンダー部
23 シリンダーロッド
24 押圧板
26 安全カバー
27 受けボルト