(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047448
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】塵芥収集車およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20230330BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B65F3/00 Z
A61L2/10
B65F3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156364
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広行
(72)【発明者】
【氏名】三橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信二
【テーマコード(参考)】
3E024
4C058
【Fターム(参考)】
3E024AA04
3E024BA01
3E024CA04
3E024DA01
3E024DC01
3E024DC10
4C058AA27
4C058BB06
4C058CC05
4C058DD12
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塵芥投入口に投入された塵芥から放出される汚染空気に含まれ得る有害な微生物やウイルスの人への感染を抑制することができる塵芥収集車およびその制御方法を提供する。
【解決手段】塵芥収集車20は、塵芥を収容する収容箱1と、収容箱1に収容するために塵芥が投入される投入口2aと、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射装置10と、を備える。紫外線照射装置10は、投入口2aの上方に設けられ、収容箱1に塵芥が収容される際に紫外線を照射するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥を収容する収容箱と、
前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口と、
微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射器と、を備え、
前記紫外線照射器は、
前記投入口の上方に設けられ、前記収容箱に前記塵芥が収容される際に前記紫外線を照射するように構成されていることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記紫外線照射器は、前記収容箱に前記塵芥が収容される際に、波長190nm~240nmの波長域の前記紫外線を放射することを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記投入口を開閉する扉を備え、
前記紫外線照射器は、前記扉が開いている間に前記紫外線を放射することを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部と、
前記投入部に投入された前記塵芥を圧縮して前記収容箱に積み込む積込装置と、をさらに備え、
前記紫外線照射器は、前記扉が開いていて前記積込装置が停止しているとき、前記扉が開いていて前記積込装置が稼働しているときと比較して、紫外線量を低減させて前記紫外線を放射することを特徴とする請求項3に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部と、
前記投入部に設けられ、前記投入部に投入された前記塵芥を圧縮して前記収容箱に積み込む積込装置と、をさらに備え、
前記紫外線照射器は、前記積込装置が稼働している間に前記紫外線を放射することを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項6】
前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部を備え、
前記紫外線照射器は、前記投入部の内部および外部に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項7】
前記投入口を開閉する扉を備え、
前記紫外線照射器は、前記扉に設けられており、
前記扉が開いているときに、前記収容箱の内部に向けて前記紫外線を照射可能な位置に配置され、
前記扉が閉じているときに、前記収容箱の外部であって、前記投入口から退避する位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項8】
前記投入口を開閉する扉をさらに備え、
前記紫外線照射器は、前記扉が閉じている間に、前記収容箱の内部に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1または2に記載の塵芥収集車。
【請求項9】
前記紫外線照射器は、前記扉が閉じている間に、前記収容箱の内部に波長240nm以上の波長域の紫外線を放射することを特徴とする請求項8に記載の塵芥収集車。
【請求項10】
塵芥を収容する収容箱と、前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口と、を備える塵芥収集車の制御方法であって、
前記収容箱に前記塵芥が収容されることを示す信号を受信するステップと、
前記信号を受信したタイミングに連動して、前記投入口の上方に設けられ、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射器を制御して、前記紫外線を照射するステップと、を含むことを特徴とする塵芥収集車の制御方法。
【請求項11】
微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を含む光を放射する紫外線光源を有する光源部と、
塵芥を収容する収容箱および前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口を備える塵芥収集車の前記投入口の上方において前記光源部を支持する支持体と、
前記収容箱に前記塵芥が収容される際に前記紫外線を照射するように前記紫外線光源を制御する制御部と、を備えることを特徴とする紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車および塵芥収集車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染力の高いウイルスの世界的な蔓延が問題となっている。このような有害で感染性の高い微生物やウイルスが原因となる感染症は、空気感染や飛沫感染の感染経路によって広がることが知られており、感染予防のためにマスク利用が通常化している。そのため、近年、極めて大量のマスクが廃棄されることとなっている。
【0003】
通常、マスクは、家庭のゴミとして、ゴミ袋に入れられて廃棄される。このような家庭から出るゴミは、塵芥収集車によって回収され、塵芥焼却場に輸送される。
塵芥収集車は、例えば、多数のゴミ袋を収容するための収容箱と、この収容箱に連設され、ゴミ袋を投入するための投入口を有する投入箱とを備え、投入箱内に、ゴミ袋を圧縮して収容箱に積み込む積込装置が配置された構造を有する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴミ袋は、作業者によって塵芥収集車の投入口から投入箱に投入され、積込装置により圧縮されるが、投入箱に投入された際の衝撃や積込装置による圧縮などによりゴミ袋が破裂し、当該ゴミ袋の中の汚染空気が外部に噴出し得る。使用済のマスクが入ったゴミ袋が破裂した場合、ゴミ袋の中のウイルスを含む飛沫が作業者に向けて飛ぶおそれがあり、作業者の感染リスクが高い。
【0006】
そこで、本発明は、塵芥投入口に投入された塵芥から放出される汚染空気に含まれ得る有害な微生物やウイルスの人への感染を抑制することができる塵芥収集車およびその制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る塵芥収集車の一態様は、塵芥を収容する収容箱と、前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口と、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射器と、を備え、前記紫外線照射器は、前記投入口の上方に設けられ、前記収容箱に前記塵芥が収容される際に前記紫外線を照射するように構成されている。
【0008】
これにより、塵芥が投入される投入口および投入口周辺に対して紫外線を照射することができる。収容箱に塵芥が収容される際に紫外線を照射するので、例えば投入口から投入された際の衝撃や収容箱に押し込まれる際の力などによって、投入されたゴミ袋が破裂した場合であっても、当該ゴミ袋から噴出した汚染空気に対して適切に紫外線を照射することができる。したがって、ゴミ袋から噴出した汚染空気に有害な微生物やウイルスが含まれる場合には、これを適切に不活化することができる。その結果、塵芥収集車の投入口近傍にいる人(塵芥収集車の作業者や通行人など)への感染を抑制することができる。
【0009】
また、上記の塵芥収集車において、前記紫外線照射器は、前記収容箱に前記塵芥が収容される際に、波長190nm~240nmの波長域の前記紫外線を放射してもよい。
この場合、人や動物の細胞に悪影響の少ない紫外線を照射することができるので、投入口近傍にいる人の安全性を確保しつつ、微生物やウイルスの効果的な不活化を実現することができる。
【0010】
さらに、上記の塵芥収集車は、前記投入口を開閉する扉を備え、前記紫外線照射器は、前記扉が開いている間に前記紫外線を放射してもよい。
この場合、投入口から汚染空気が流れ出す可能性のある状況において、適切に紫外線照射を行うことができる。
【0011】
また、上記の塵芥収集車は、前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部と、前記投入部に投入された前記塵芥を圧縮して前記収容箱に積み込む積込装置と、をさらに備え、前記紫外線照射器は、前記扉が開いていて前記積込装置が停止しているとき、前記扉が開いていて前記積込装置が稼働しているときと比較して、紫外線量を低減させて前記紫外線を放射してもよい。
積込装置が稼働していない場合は、投入部に投入されたゴミ袋の圧縮動作が行われないため、積込装置が稼働している場合と比較してゴミ袋が破裂する可能性が低い。そのため、このような状況では紫外線量を低減させてよい。この場合、投入口近傍にいる人に対する安全性をより高めることができる。
【0012】
さらに、上記の塵芥収集車は、前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部と、前記投入部に設けられ、前記投入部に投入された前記塵芥を圧縮して前記収容箱に積み込む積込装置と、をさらに備え、前記紫外線照射器は、前記積込装置が稼働している間に前記紫外線を放射してもよい。
この場合、投入部に投入されたゴミ袋が圧縮されて破裂する可能性のある状況において、適切に紫外線照射を行うことができる。
【0013】
また、上記の塵芥収集車は、前記収容箱に連設され前記投入口を有する投入部を備え、
前記紫外線照射器は、前記投入部の内部および外部に前記紫外線を照射してもよい。
この場合、投入部の投入口から外部に流れ出ようとする空気に対して、外部に流れ出る前に紫外線を照射して不活化することができる。また、投入部の投入口から外部に流れ出てしまった空気に対しても、適切に紫外線を照射して不活化することができる。
【0014】
さらにまた、上記の塵芥収集車は、前記投入口を開閉する扉を備え、前記紫外線照射器は、前記扉に設けられており、前記扉が開いているときに、前記収容箱の内部に向けて前記紫外線を照射可能な位置に配置され、前記扉が閉じているときに、前記収容箱の外部であって、前記投入口から退避する位置に配置されていてもよい。
この場合、投入口の扉を閉めると紫外線照射器が収容箱の外部に配置されて汚れない構造とすることができる。これにより、紫外線照射器の光放射面の紫外線透過率が汚れによって低下してしまうことを抑制することができる。
【0015】
また、上記の塵芥収集車は、前記投入口を開閉する扉をさらに備え、前記紫外線照射器は、前記扉が閉じている間に、前記収容箱の内部に前記紫外線を照射してもよい。
例えば、投入口の扉が閉まっている場合であっても、塵芥収集車の走行中における振動などによりゴミ袋が破裂する場合がある。この場合、収容箱内に汚染空気が充満し、次に扉を開けたときにその汚染空気が外部に流れ出てしまう。扉が閉じている間に紫外線照射を行うことで、次に扉が開かれるまでの間に収容箱の内部を適切に不活化することができる。
【0016】
さらに、上記の塵芥収集車において、前記紫外線照射器は、前記扉が閉じている間に、前記収容箱の内部に波長240nm以上の波長域の紫外線を放射してもよい。
投入口の扉が閉まっている場合、収容箱の内部で放射した紫外線は外部に照射されない。そのため、投入口近傍にいる人への安全性を考慮する必要はなく、波長240nm以上の波長域の紫外線、例えば波長254nmの紫外線を用いて不活化処理を行ってもよい。
【0017】
また、本発明に係る塵芥収集車の制御方法の一態様は、塵芥を収容する収容箱と、前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口と、を備える塵芥収集車の制御方法であって、前記収容箱に前記塵芥が収容されることを示す信号を受信するステップと、前記信号を受信したタイミングに連動して、前記投入口の上方に設けられ、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射器を制御して、前記紫外線を照射するステップと、を含む。
これにより、塵芥が投入される投入口および投入口周辺に対して紫外線を照射することができ、投入口近傍にいる人(塵芥収集車の作業者や通行人など)への感染を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る紫外線照射装置の一態様は、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を含む光を放射する紫外線光源を有する光源部と、塵芥を収容する収容箱および前記収容箱に収容するために前記塵芥が投入される投入口を備える塵芥収集車の前記投入口の上方において前記光源部を支持する支持体と、前記収容箱に前記塵芥が収容される際に前記紫外線を照射するように前記紫外線光源を制御する制御部と、を備える。
これにより、塵芥が投入される投入口および投入口周辺に対して紫外線を照射することができ、投入口近傍にいる人(塵芥収集車の作業者や通行人など)への感染を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一つの態様によれば、塵芥投入口の近傍の空間を紫外線によって殺菌不活化することができるので、塵芥投入口に投入された塵芥から放出される汚染空気に含まれ得る有害な微生物やウイルスの人への感染を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の塵芥収集車の概略構成を示す側面図である。
【
図3】紫外線照射装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における紫外線照射装置(紫外線照射器)10が配置された塵芥収集車20の概略構成を示す側面図である。なお、
図1においては、塵芥収集車20の運転席を除いた部分を示している。
紫外線照射装置10は、微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を照射することにより、空間や当該空間内の物体表面に存在する有害な微生物やウイルスを不活化する装置である。ここで、上記物体は、人体、動物、物を含む。本実施形態では、紫外線照射装置10は、光放射面から、人や動物の細胞への悪影響が少ない波長域190nm~240nmの紫外線(より好ましくは、波長域200nm~230nmの紫外線)を、対象空間に対して照射する。
なお、ここでいう「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。
【0022】
紫外線は、波長によって細胞の貫通力が異なり、短波長ほど当該貫通力が小さい。例えば、約200nmといった短波長の紫外線は、非常に効率良く水を通過するものの、ヒト細胞の外側部分(細胞質)による吸収が大きく、紫外線に敏感なDNAを含む細胞核に到達するのに十分なエネルギーを有さない場合がある。そのため、上記の短波長の紫外線は、ヒト細胞に対する悪影響が少ない。一方で、波長240nmを超える紫外線は、ヒトの細胞核中のDNAにダメージを与えうる。また、波長190nm未満の紫外光が存在すると、大気中に存在する酸素分子が光分解されて酸素原子を多く生成し、酸素分子と酸素原子との結合反応によってオゾンを多く生成させてしまう。そのため、波長190nm未満の紫外光を大気中に照射させることは望ましくない。したがって、波長190nm~240nmの波長範囲は、人や動物に安全な波長範囲であるといえる。
【0023】
本実施形態では、紫外線照射装置10が備える紫外線光源として、人体への悪影響が少なく、不活化効果が得られる波長域190nm~240nmにピーク波長を有する紫外線を放射する紫外線光源を用いる。なお、大気中のオゾン発生をより効果的に抑制するため200nm以上にピーク波長を有する紫外線を利用することが望ましく、さらに安全性の高い波長帯域としてより短波長帯域の紫外線が望ましく、例えば、波長域200nm~230nmにピーク波長を有する紫外線光源を用いてもよい。
【0024】
塵芥収集車20は、車枠上に配置されて塵芥(ゴミ)を収容する収容箱1を備える。収容箱1の後方開口部には、前面を開放した投入箱(投入部)2が枢軸3を以て傾動自在に連設されている。投入箱2は、後方に投入口2aを備える。投入口2aには当該投入口2aを開閉可能な不図示の扉(テールゲート)が設けられており、扉を開けた状態で、投入口2aから投入箱2内にゴミ袋を投入することができるようになっている。
【0025】
また、塵芥収集車20は、投入箱2内に設置された積込装置4を備える。積込装置4は、投入箱2の底部において図示しない駆動装置により基端5aを中心にして回転自在に設けられた回転板5と、該回転板5の上方において揺動シリンダ6aにより揺動自在に設けられた押込板6と、を備える。
回転板5の回転動作と押込板6の揺動動作とによって、投入箱2の投入口2aから投入箱2内に投入されたゴミ袋を回転板5で押し潰して圧縮し、圧縮したゴミ袋を押込板6によって収容箱1に積み込むことができる。
【0026】
紫外線照射装置10は、投入箱2内における投入口2aの上方に配置され、下方もしくは斜め下方に紫外線(UV)を放射する。本実施形態では、紫外線照射装置10は、投入箱2の内部における投入口2aの上方に配置され、投入箱2の外部に向けて、斜め下方に紫外線を放射する。
例えば紫外線照射装置10は、
図2に示すように、投入箱2内部の投入口2aの上方に設置されたポール10aに取り付けることができる。紫外線照射装置10は、この
図2に示すように、複数台配置されていてもよい。
【0027】
紫外線照射装置10から放射された紫外線は、投入口2a近傍における投入箱2の内部および外部の空間や物体表面に照射される。
ここで、上記物体表面は、投入箱2内部のゴミ袋40の表面や、積込装置4等の構造物の表面を含む。また、上記物体表面は、投入口2a近傍に人30が存在する場合、当該人30の表面を含む。ここで、人30は、塵芥収集車20の作業者や通行人等を含む。
【0028】
このように、紫外線照射装置10を投入口2aの上方に配置して紫外線を照射することで、投入口2aの近傍に人30が存在する場合には、投入口2aと人30との間に紫外線を照射することができる。
これにより、投入口2aと人30との間の空間や物体表面に存在する有害な微生物やウイルスを適切に不活化することができる。そのため、収容箱1に収容された塵芥や投入箱2に投入された塵芥から放出される汚染空気にウイルス等が含まれる場合であっても、人30への感染を適切に抑制することができる。
【0029】
図3は、紫外線照射装置10の構成例を示す模式図である。
図3に示すように、紫外線照射装置10は、例えば導電性の金属からなる筐体11と、筐体11内部に収容された紫外線光源12と、を備える。
紫外線光源12は、例えば、中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源12は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、190nm~240nmの波長範囲にある紫外線を含む光を放射する光源であればよい。なお、筐体11と紫外線光源(エキシマランプ)12とで光源部を構成している。
【0030】
支持体10bは、エキシマランプ12から放射される紫外線を、投入口2a近傍の所定の照射領域(固定領域)に向けて照射させるべく、投入口2aの上方において光源部を支持する。
支持体10bは、例えば
図2に示すポール10aであってもよいし、当該ポール10aに光源部を固定するための固定具であってもよい。また、紫外線照射装置10は、
図2に示すようにポール10aに取り付けられる場合に限定されるものではなく、支持体10bは、光源部を投入口2aの上方において支持するための任意の部材であってよい。
【0031】
また、紫外線照射装置10は、エキシマランプ12に給電する給電部16と、エキシマランプ12の照射および非照射や、エキシマランプ12から放出される紫外線の光量等を制御する制御部17と、を備える。エキシマランプ12は、筐体11内において、支持部18によって支持されている。
ここで、支持部18は、例えば除振部材であってもよい。エキシマランプ12を除振部材18によって支持することで、エキシマランプ12が振動の影響を受けることを抑制し、安定して紫外線を照射することができる。本実施形態では紫外線照射装置10が塵芥収集車20に設置されているため、エキシマランプ12は塵芥収集車20の移動中に振動を受ける。このように紫外線照射装置10(エキシマランプ12)に振動が加わった場合であっても、エキシマランプ12から安定して紫外線を放出することができる。
【0032】
筐体11には開口部11aが形成されており、開口部11aには、紫外線を放射する光放射面11bが設けられている。光放射面11bは、例えば石英ガラスからなる紫外線透過部材や、不要な光を遮断する光学フィルタ等を含むことができる。
なお、筐体11内には、複数本のエキシマランプ12を配置することもできる。エキシマランプ12の数は特に限定されない。また、エキシマランプ12の構成も特に限定されない。
【0033】
上記光学フィルタとしては、例えば、波長域200nm~230nmの光を透過し、それ以外のUV-C波長域の光(231nm~280nmの光)をカットする波長選択フィルタを用いることができる。
ここで、波長選択フィルタとしては、例えば、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜フィルタを用いることができる。
なお、波長選択フィルタとしては、SiO2層およびAl2O3層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。
このように、光放射面11bに光学フィルタを設けることで、エキシマランプ12から人に有害な光が放射されている場合であっても、当該光が筐体11の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0034】
また、エキシマランプは、高周波電力が印加されて高周波点灯を行うので、高周波ノイズが発生する。しかしながら、上記のようにエキシマランプを収容する筐体11を導電性の金属によって構成することで、エキシマランプからの高周波ノイズが筐体11外部へ発信されることを抑制することができる。これにより、紫外線照射装置10近傍に設置された他の制御システムへの制御指令が、この高周波ノイズによる外乱を受けることを抑制することができ、当該制御指令に不具合が生じないようにすることができる。
【0035】
また、紫外線照射装置10は、投入口2aから一定距離の範囲内に存在する人30を検知する検知部(人感センサ)を備えてもよい。検知部は、例えば、筐体11における光放射面11bの近傍に配置することができる。ここで、人感センサは、例えば、人体などから発する熱(赤外線)の変化を検知する焦電型赤外線センサとすることができる。検知部は、人の所在を検知している場合、検知信号を制御部17に発信する。
この場合、制御部17は、検知部からの信号に基づき、エキシマランプ12の点灯制御を行ってもよい。例えば、制御部17は、検知部から人30の所在を検知していることを示す検知信号を受信した場合に、エキシマランプ12から紫外線を放射するように制御してもよい。これにより、検知部により検知された人30と投入口2aとの間に紫外線を照射することができる。
【0036】
本実施形態では、紫外線照射装置10は、収容箱1に塵芥が収容される際に紫外線を照射する。
なお、収容箱1に塵芥が収容される際とは、実際に塵芥が収容箱1に収容される動作が行われているときに限定されず、例えば塵芥を投入口2aから投入可能な状態であるときを含む。つまり、収容箱1に塵芥が収容される際とは、例えば投入口2aの扉が開いているときや、投入口2aの扉が開いていて積込装置4が稼働しているときなどを含む。
【0037】
塵芥収集車20において、作業者によって投入箱2に投入されたゴミ袋40は、回転板5により圧縮され、押込板6により収容箱1に押し込まれる。このとき、投入箱2に投入された際の衝撃や回転板5による圧縮などによりゴミ袋40が破裂し、ゴミ袋40の中の汚染空気が外部に噴出し得る。このゴミ袋40の中に有害な微生物やウイルスが付着した物体(例えば、ウイルス等を含む飛沫が付着したマスク等)が入っていると、ゴミ袋40が破裂した際に上記微生物やウイルスが拡散され、作業者や通行人等の感染リスクが高まる。
【0038】
本実施形態における紫外線照射装置10は、投入口2aの上方に配置され、収容箱1に塵芥が収容される際に紫外線を照射する。そのため、投入箱2に投入されたゴミ袋40が破裂した場合であっても、ゴミ袋40から放出された飛沫等に含まれる微生物やウイルスを、広範囲に拡散される前に適切に不活化することができる。したがって、投入口2a近傍にいる人30への安全を確保することができ、例えば塵芥収集車20の作業者は、安心して作業を行うことができる。
【0039】
紫外線照射を開始するタイミングは、投入口2aを開閉する扉を開けたタイミングや、積込装置4(回転板5および押込板6の少なくとも一方)が稼働を開始したタイミングとすることができる。
塵芥収集車20は、
図2に示すように、スイッチ7を備える。スイッチ7は、上記扉の開閉スイッチや積込装置4の稼働スイッチ、停止スイッチ等を含む。紫外線照射装置10は、作業者が手動で操作した開閉スイッチや稼働スイッチの信号を、収容箱1に塵芥が収容されることを示す信号として受信し、当該信号を受信したタイミングに連動して、紫外線を放射することができる。
【0040】
なお、収容箱1に塵芥が収容されることを示す信号は、上記のスイッチ7の信号に限定されるものではなく、投入口2aの扉の開閉や積込装置4の稼働および停止を判定可能な信号であればよい。
また、紫外線照射を開始するタイミングは、投入口2aを開閉する扉を開けたタイミングや積込装置4が稼働を開始したタイミングと同期している必要はなく、所定の時間差が設けられていてもよい。
【0041】
また、紫外線照射を停止するタイミングは、例えば、投入口2aの扉を閉めたタイミングとすることができる。つまり、積込装置4が稼働していなくても(回転板5、押込板6が停止していても)、投入口2aの扉が開いている状態では、紫外線照射を継続してよい。
さらに、この場合、投入口2aの扉が開いていて積込装置4が稼働しているときと、投入口2aの扉が開いていて積込装置4が稼働していないときとで、紫外線照射装置10から放射する紫外線量(照度)の強弱を切り替えてもよい。積込装置4が稼働していないときはゴミ袋40が破裂する可能性が低くなるため、積込装置4が停止しているときは、積込装置4が稼働しているときと比較して、紫外線量を低減させて紫外線を放射するようにしてもよい。
【0042】
また、紫外線照射を停止するタイミングは、投入口2aの扉の開閉に拘らず、積込装置4が停止されたタイミングであってもよい。
このように、紫外線照射装置10は、投入口2aの扉が開いている間や積込装置4が稼働している間に紫外線照射を行い、投入口2aの扉が閉まっており投入口2aから外部に汚染空気が流れださない状況や、積込装置4が停止しておりゴミ袋40が破裂しない状況(ゴミ袋40から汚染空気が噴出しない状況)である場合には、紫外線照射を停止してよい。この場合、投入口2aから外部に放出されるウイルス等を適切に不活化することができるとともに、光源のエネルギーの無駄をなくし、光源の使用寿命を延ばすことができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態における塵芥収集車20は、塵芥を収容する収容箱1と、収容箱1に収容するために塵芥が投入される投入口2aと、投入口2aの上方に設けられ、収容箱1に塵芥が収容される際に微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を放射する紫外線照射装置(紫外線照射器)10と、を備える。紫外線照射装置10は、例えば、投入口2aを開閉する扉が開いている間や、積込装置4が稼働している間に紫外線を放射することができる。
【0044】
これにより、例えば投入口2aから投入された際の衝撃や収容箱1に押し込まれる際の力などによって、投入されたゴミ袋40が破裂した場合であっても、ゴミ袋40から噴出した汚染空気に対して適切に紫外線を照射することができる。したがって、ゴミ袋40から噴出した汚染空気に含まれる有害な微生物やウイルスを適切に不活化することができ、投入口2a近傍にいる人30への感染を抑制することができる。
【0045】
ここで、紫外線照射装置10は、収容箱1に塵芥が収容される際、人や動物への悪影響の少ない波長190nm~240nmの波長域の紫外線を放射してもよい。この場合、紫外線照射装置10が設置された投入口2a近傍に人がいる状況であっても、当該人に殆どダメージを与えることなく紫外線照射による不活化処理を行うことができる。
【0046】
また、紫外線照射装置10は、投入箱2の内部における投入口2aの上方に配置され、投入箱2の外部に向けて紫外線を放射することができる。これにより、投入箱2の内部および外部に紫外線を照射することができる。この場合、投入箱2の内部および外部にて不活化処理を行うことができる。つまり、投入口2aから外部に流れ出ようとする空気と、外部に流れ出てしまった空気とに対して紫外線を照射し、当該空気に含まれるウイルス等を不活化することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態における塵芥収集車20は、塵芥投入口の近傍の空間および物体表面を紫外線によって殺菌不活化することができるので、塵芥投入口に投入された塵芥から放出される汚染空気に含まれ得る有害な微生物やウイルスの人への感染を抑制することができる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態においては、紫外線照射装置10は、投入箱2の内部における投入口2aの上方に配置され、投入箱2の外部に向けて、斜め下方に紫外線を放射する場合について説明した。しかしながら、例えば
図4に示すように、紫外線照射装置10は、投入箱2の内部における投入口2aの上方に配置され、投入箱2の内部に向けて、斜め下方に紫外線を放射してもよい。この場合にも、投入口2aを含む投入箱2の内部の空間や物体表面に紫外線を照射することができる。
なお、紫外線照射装置10は、投入箱2の外部に紫外線が照射されないように、設置角度や紫外線の配光角が調整されていてもよい。
【0049】
このように、紫外線照射装置10から投入箱2の内部に向けて紫外線を放射するように構成することで、投入箱2に投入されたゴミ袋40から放出される空気に対して、投入口2aから外部に流れ出る前に適切に紫外線を照射し、速やかに不活化することができる。
また、ゴミ袋40と接触する回転板5や押込板6に向けて紫外線を照射することができる。そのため、回転板5や押込板6の表面に付着したウイルス等を適切に不活化することができる。また、ゴミ袋40の破裂が発生する可能性が高い箇所に対して紫外線を照射することができるので、ゴミ袋40が破裂して飛沫等が噴出した瞬間に、噴出した飛沫等に含まれるウイルス等をより適切に不活化することができる。
【0050】
また、紫外線照射装置10は、投入箱2の内部に配置される場合に限定されるものではなく、投入箱2の外部に設けられていてもよい。これにより、紫外線照射装置10の光放射面の汚染を抑制することができ、光放射面の紫外線透過率の低下を抑制することができる。
例えば
図5に示すように、紫外線照射装置10を、上下にスライドすることで投入口2aを開閉する扉8の下端部に設けてもよい。この場合、紫外線照射装置10は、扉8が開いているときには、
図5の破線で示すように、投入口2aから収容箱1(投入箱2)の内部に向けて紫外線を照射可能な位置に配置され、扉8が閉じているときには、
図5の実線で示すように、収容箱1(投入箱2)の外部であって、投入口2aから退避する位置に配置される。
【0051】
このような構成により、扉8を閉じて紫外線照射を停止している間は、紫外線照射装置10の光放射面が汚れないようにすることができる。
なお、投入口2aを開閉する扉の構造は、
図5に示す扉8の構造に限定されるものではない。また、紫外線照射装置10を投入箱2の外部に配置する場合、投入口2aを開閉する扉に配置する場合に限定されるものでもない。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、紫外線照射装置10は、投入口2aの扉が閉じている間にも、収容箱1や投入箱2の内部に、有害な微生物および/またはウイルスを不活化する波長の紫外線を照射してもよい。
収容箱1に塵芥を積み込みする作業をしていないときであっても、例えば、塵芥収集車20が投入口2aの扉を閉めて走行している場合、走行中の振動により収容箱1に既に収容されているゴミ袋40が破裂するなどして、収容箱1内に汚染空気が充満する場合がある。この場合、次に扉を開けた際に、収容箱1内部の汚染空気が投入口2aから流れ出すおそれがある。扉を閉じている間に紫外線を照射すれば、次に扉が開かれる前に収容箱1内部の不活化が可能となる。
【0053】
投入口2aの扉が閉じている間は、投入口2a近傍にいる作業者等の人30には紫外線が照射されないため、当該人30への安全性を考慮する必要はない。そのため、このとき照射する紫外線の照度は、扉が開いているときに照射する紫外線の照度よりも高くてもよい。
【0054】
また、投入口2aの扉が閉じている間に照射する紫外線の波長は、人や動物への悪影響の少ない波長190nm~240nmの波長域(第1の波長域)の紫外線に限定されるものではなく、波長240nm以上の波長域(第2の波長域)の紫外線、例えば波長254nmの紫外線であってもよい。
この場合、紫外線照射装置10は、第1の波長域の紫外線を放射する第1の紫外線光源と、第2の波長域の紫外線を放射する第2の紫外線光源と、を備える。そして、扉が開いている間は、第1の紫外線光源から紫外線を放射し、扉が閉じている間は、第1の紫外線光源および/または第2の紫外線光源から紫外線を放射すればよい。
なお、第1の紫外線光源と第2の紫外線光源とは、1つの紫外線照射装置に搭載されていてもよいし、別々の紫外線照射装置にそれぞれ搭載され、別々の位置に配置されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態における塵芥収集車20は、塵芥を収容する収容箱1と、収容箱1に連設され投入口2aを有する投入箱2と、投入箱2内に配置された積込装置4と、を備える構成である場合について説明した。しかしながら、塵芥収集車の構成は上記に限定されない。例えば、投入箱2や積込装置4を備えず、収容箱1に投入口2aが設けられた塵芥収集車にも本発明を適用可能である。
さらに、上記実施形態においては、投入口2aが塵芥収集車20の後方側面に設けられている場合について説明したが、投入口は塵芥収集車の上面や左右側面に設けられていてもよい。
また、上記実施形態における塵芥収集車20は、作業者が手作業でゴミ袋を投入口2aから投入するタイプであるが、例えば、機械式のアームを用いて専用の塵芥容器(例えばウィリービン等)に収容された塵芥を回収するタイプなど、さまざまなタイプの塵芥収集車に本発明を適用可能である。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、紫外線光源としてエキシマランプを用いる場合について説明したが、紫外線光源としてLEDを用いることもできる。
LEDとしては、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LED、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LED等を採用することができる。
ここで、AlGaN系LEDとしては、中心波長が190nm~240nmの範囲内となるようにAlの組成を調整することが好ましい。AlN系LEDは、ピーク波長210nmの紫外線を放出する。また、MgZnO系LEDは、Mgの組成を調整することで、中心波長が222nmである紫外線を放出することができる。
【0057】
本発明によれば、紫外線照射により、塵芥投入口の近傍の空間および物体表面に存在する微生物やウイルスを不活化することができる。
特に、波長190nm~240nmの紫外線を用いることにより、紫外線照射による人体への悪影響を及ぼすことなく、紫外線本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外線光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を生かし、例えば塵芥収集の作業中においても紫外線を照射することができ、効果的な不活化処理を行うことができる。このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0058】
1…収容箱、2…投入箱、2a…投入口、4…積込装置、5…回転板、6…押込板、8…扉、10…紫外線照射装置、10a…ポール、10b…支持体、11…筐体、11b…光放射面、12…紫外線光源、16…給電部、17…制御部、20…塵芥収集車