(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047519
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/26 20120101AFI20230330BHJP
B24B 37/22 20120101ALI20230330BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20230330BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B24B37/26
B24B37/22
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156483
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB06
3C158DA12
3C158EB05
3C158EB14
3C158EB22
3C158ED00
5F057AA24
5F057BA15
5F057BA21
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB08
5F057EB12
(57)【要約】
【課題】より短時間で効率的に気泡を取り除くことのできる研磨パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】終点検出用窓を有する研磨パッドの製造方法であって、調合した原料を入れた容器を100~800rpmで自転させながら、所定の円周上を200~1600rpmで公転させる回転運動工程と、該回転運動後の原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る硬化工程と、を有する、研磨パッドの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
終点検出用窓を有する研磨パッドの製造方法であって、
調合した原料を入れた容器を100~800rpmで自転させながら、所定の円周上を200~1600rpmで公転させる回転運動工程と、
該回転運動後の原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る硬化工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記回転運動工程を、減圧下で行う、
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記回転運動工程の処理時間が1~10分である、
請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記回転運動工程の温度が50~130℃である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
前記回転運動工程における自転軸と公転軸の傾きが、20~70°である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
前記原料が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び硬化剤を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
前記終点検出用窓部材を備える研磨層の研磨面に、溝加工を施す溝形成工程を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項8】
前記終点検出用窓部材を備える研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られており、光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。
【0005】
このような光学式終点検出方式を用いる研磨パッドとしては、例えば、特許文献1には、窓部材の溝内にスラリーが溜まるのを抑えて、研磨レートの検出精度を上げることができる研磨パッドを提供することを目的として、窓部材の材質を、パッド本体の材質に比べて研削性の高いものとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような窓部材に原料の混合などに由来して生じた気泡等がある場合には、光の散乱により反射光の減衰が大きくなり研磨終点検出精度や膜厚測定精度が低下する傾向にある。したがって、窓部材はこのような気泡を除去して無発泡体にすることが重要となる。
【0008】
そのような手段としては、原料を混合する前にそれぞれの原料を10Torr以下に減圧して脱気することにより材料中に含まれる気体を除去したり、混合後の撹拌工程においては気泡が混入しないように回転数を低下させたり、混合物を静置して脱気したりすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、原料を脱気したとしても混合によって気泡が生じることは防ぐことができず、また、混合物を静置して脱気したり、回転数を低くして攪拌したりすることでは、脱泡した樹脂混合物の作製に時間を要する。そうすると、硬化速度の速い材料は使用できなくなり、材料選択の幅が狭くなる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、より短時間で効率的に気泡を取り除くことのできる研磨パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
終点検出用窓を有する研磨パッドの製造方法であって、
調合した原料を入れた容器を100~800rpmで自転させながら、所定の円周上を200~1600rpmで公転させる回転運動工程と、
該回転運動後の原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る硬化工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
〔2〕
前記回転運動工程を、減圧下で行う、
〔1〕に記載の研磨パッドの製造方法。
〔3〕
前記回転運動工程の処理時間が1~10分である、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッドの製造方法。
〔4〕
前記回転運動工程の温度が50~130℃である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔5〕
前記回転運動工程における自転軸と公転軸の傾きが、20~70°である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔6〕
前記原料が、ポリイソシアネート、ポリオール、及び硬化剤を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔7〕
前記終点検出用窓部材を備える研磨層の研磨面に、溝加工を施す溝形成工程を有する、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔8〕
前記終点検出用窓部材を備える研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有する、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より短時間で効率的に気泡を取り除くことのできる研磨パッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の研磨パッドの概略斜視図である。
【
図2】本実施形態の研磨パッドの終点検出用窓部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。又上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
1.研磨パッドの製造方法
本実施形態の終点検出用窓を有する研磨パッドの製造方法は、調合した原料を入れた容器を100~800rpmで自転させながら、所定の円周上を200~1600rpmで公転させる回転運動工程と、該回転運動後の原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る硬化工程と、を有する。
【0016】
終点検出用窓には光透過性に悪影響を及ぼさないように、無発泡かつ均一に混合されることが望まれる。これは、発泡があると、光の散乱により反射光の減衰が大きくなり研磨終点検出精度や膜厚測定精度が低下するからであり、また、混合が不均一であると、部分的に反応が進む部分が生じ、架橋密度が不均一な終点検出用窓が形成されてしまうためである。
【0017】
これに対して、本実施形態においては、上記のような回転運動工程を経ることにより、気泡を含まず、かつ、均一に混合された原料を得ることができる。これにより、研磨終点検出精度や膜厚測定精度に優れた終点検出用窓を製造することができる。
【0018】
また、上記回転運動工程を経ることにより、より短時間で、無発泡かつ均一な混合を達成することができる。これによって、これまでは脱泡等にかかる時間を考慮すると使用できなかったような反応性の速い原料についても、終点検出用窓の原料として使用することが可能となる。また、これまでは、反応性が異なるために、反応が遅い成分だけを先に混合させておき、その後反応性の高いものを加える等をすることで、混合を多段階で行っていたような原料についても、原料を同時に調合し、攪拌、脱泡を行うことが可能となる。
【0019】
1.1.予熱工程
研磨パッドの製造方法は、予め原料に含まれる各成分をそれぞれ個別に加熱する予熱工程を有していてもよい。混合を開始すると原料に含まれる各成分が反応し、発熱することがある。そのため、予め原料に含まれる各成分をそれぞれ個別に予熱してから、原料として混合することで回転運動工程において処理温度が安定する傾向にある。これにより脱気がより促進され、混合の均一性がより向上する傾向にある。
【0020】
予熱温度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは50~130℃であり、より好ましくは60~125℃であり、さらに好ましくは70~120℃である。予熱温度が上記範囲内であることにより、これにより脱気がより促進され、混合の均一性がより向上する傾向にある。
【0021】
1.2.回転運動工程
回転運動工程は、調合した原料を入れた容器を100~800rpmで自転させながら、所定の円周上を200~1600rpmで公転させる工程である。この回転運動工程を経ることで、攪拌翼での攪拌の必要がなく、攪拌と脱泡を同一行程で行うことができる。これにより、攪拌翼を用いないために余計な気泡が発生しにくく、また、工程の簡略化が行える。
【0022】
自転速度は、100~800rpmであり、好ましくは200~700rpmであり、より好ましくは300~600rpmである。自転速度が上記範囲内であることにより、混合の均一性がより向上する傾向にある。
【0023】
公転速度は、200~1600rpmであり、好ましくは400~1400rpmであり、より好ましくは600~1200rpmである。公転速度が上記範囲内であることにより、脱気がより促進される傾向にある。
【0024】
回転運動工程における自転軸と公転軸の傾きは、好ましくは20~70°であり、より好ましくは30~60°であり、さらに好ましくは35~55°である。傾きが上記範囲内であることにより、容器内の原料に三次元渦流れが生じ、これにより脱気がより促進され、混合の均一性がより向上する傾向にある。
【0025】
回転運動工程は減圧下で行うことが好ましく、より好ましくは0.1~0.9atm以下であり、さらに好ましくは0.2~0.8atm以下である。回転運動工程を減圧下で行うことにより、脱気がより促進される傾向にある。また、回転運動工程を0.1atm以上で行うことにより、成分の意図しない揮発を抑制できる傾向にある。
【0026】
回転運動工程の処理時間は、好ましくは1~10分であり、より好ましくは2~8分であり、さらに好ましくは3~6分である。処理時間が上記範囲より短い場合には、混合が不十分となり均一な原料が得られず、処理時間が上記範囲より長い場合には、混合の均一性は上がるものの、混合された原料の反応が進んで粘度が上がり、容器より原料が取り出し難くなる傾向にある。終点検出用窓の表面が研磨面と同一面となる場合、終点検出用窓の材料として、硬化時間の短い(反応性の高い)原料でなければ研磨に悪影響を与えてしまう傾向にある。硬化時間の長い原料は摩耗しにくく、作製した終点検出用窓を備えた研磨パッドは、研磨中に窓部分が突出してきてしまい、スクラッチ等研磨に悪影響を及ぼす可能性がある。一方、硬化時間の短い原料は適度な硬脆さがあり、研磨層の摩耗と共に終点検出用窓も摩耗していくので、終点検出用窓のみが突出することを防ぐ。そのため、処理時間が上記範囲内であることが好ましい。
【0027】
回転運動工程の温度は、好ましくは50~130℃であり、より好ましくは60~125℃であり、さらに好ましくは70~120℃である。温度が50℃以上であることにより、比較的に粘度が低下して、脱気がより促進される傾向にある。温度が130℃以下であることにより、原料の反応速度が高くなりすぎず、混合の均一性がより向上する傾向にある。
【0028】
1.3.硬化工程
硬化工程は、回転運動後の原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る工程である。この硬化工程には、特に限定されないが、例えば、研磨層のくりぬいた部分に回転運動後の原料を流しいれそのくりぬいた部分の中で、硬化反応を進行させて終点検出用窓部材を備える研磨層を得る態様;金型内で原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る態様が挙げられる。
【0029】
また、金型内で原料を硬化させて終点検出用窓部材を得る態様には、その後、得られた終点検出用窓部材の周りに研磨層を構成する原料を注型して、研磨層を構成する原料を硬化させることで終点検出用窓部材を備える研磨層を得る態様;得られた終点検出用窓部材を必要に応じてスライスして、開口を設けた研磨層にはめ込むことで終点検出用窓部材を備える研磨層を得る態様が含まれていてもよい。
【0030】
1.4.その他の工程
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、研磨層の研磨面に溝加工を施す溝形成工程を有していてもよい。なお、光学終点検出に支障があるため、溝加工は、終点検出用窓部材の露出している部分には行わないことが好ましい。
【0031】
また、本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有していてもよい。
【0032】
図1に、本実施形態の研磨パッドの概略斜視図を示し、
図2に、
図1における終点検出用窓12の周辺の断面図を示す。
図2に示すように、本実施形態の研磨パッドは、樹脂シート(研磨層11)と、終点検出用窓12と、を有し、必要に応じて、研磨面11aとは反対側に、クッション層13を有していてもよい。
【0033】
図2に示すように、樹脂シート(研磨層11)とクッション層13の間には、接着層14が設けられていてもよく、また、クッション層13の表面には、接着層15が設けられていてもよい。本実施形態の研磨パッドの研磨面11aは、平坦の場合の他、
図2に示すように、溝16が形成された凹凸状であってもよい。
【0034】
1.5.原料
終点検出用窓部材を得るための原料は、硬化したときに窓として機能し得る透明な部材であれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0035】
原料は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び硬化剤を含むものが好ましい。このような原料によりポリウレタン樹脂を合成することができる。
【0036】
1.5.1.ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートが挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂は、脂環族イソシアネート及び/又は脂肪族イソシアネートを含むことが好ましい。これにより、透明性がより向上する傾向にある。
【0037】
脂環族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0038】
脂肪族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0039】
芳香族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)が挙げられる。
【0040】
1.5.2.ポリオール
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、分子量300以上の高分子ポリオールが挙げられる。高分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。高分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
このなかでも、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。このような高分子ポリオールを用いることにより、透明性がより向上する傾向にある。
【0042】
原料中のポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオールの総量に対して、好ましくは10~60mol%であり、より好ましくは20~50mol%である。ポリエーテルポリオールの含有量が上記範囲内であることにより、透明性がより向上する傾向にある。
【0043】
1.5.3.硬化剤
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、分子量300未満の低分子ポリオールやポリアミンが挙げられる。
【0044】
低分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の水酸基を2つ有する低分子ポリオール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸、エリスリトール等の水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが挙げられる。低分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
このなかでも、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが好ましく、グリセリンがより好ましい。このような低分子ポリオールを用いることにより、透明性がより向上する傾向にある。
【0046】
また、ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂環族ポリアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0047】
このなかでも、芳香族ポリアミンが好ましく、3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を用いることがより好ましい。
【0048】
原料中の硬化剤の含有量は、ポリオール及び硬化剤の総量に対して、好ましくは40~90mol%であり、より好ましくは50~80mol%であり、さらに好ましくは60~70mol%である。硬化剤の含有量が上記範囲内であることにより、終点検出用窓に適した硬度、又は耐久性が得られる傾向にある。
【0049】
2.研磨パッド
図1に、本実施形態の研磨パッドの概略斜視図を示す。
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、ポリウレタンシートである研磨層11と、終点検出用窓12と、を有し、必要に応じて、研磨面11aとは反対側に、クッション層13を有していてもよい。
【0050】
図2に、
図1における終点検出用窓12の周辺の断面図を示す。
図2に示すように、研磨層11とクッション層13の間には、接着層14が設けられていてもよく、また、クッション層13の表面には、研磨装置のテーブルと貼り合わせるための接着層15が設けられていてもよい。本実施形態の研磨パッドの研磨面11aは、平坦の場合の他、
図2に示すように、溝16が形成された凹凸状であってもよい。溝16は複数の同心円状、格子状、放射状等の様々な形状の溝を単独又は併用して形成してもよい。
【0051】
2.1.終点検出用窓
終点検出用窓はポリウレタンシートの開口に設けられた透明な部材であり、光学式の終点検出において、膜厚検出センサからの光の透過路となるものである。本実施形態において、終点検出用窓は円形であるが、必要に応じて、正方形、長方形、多角形、楕円形等の形状としてもよい。
【0052】
2.2.研磨層
本実施形態の研磨層としてはポリウレタンシートを用いる。このポリウレタンシートは終点検出用窓が埋設される開口を有する。開口の位置は特に制限されないが、研磨装置のテーブルに設置された膜厚検出センサに対応する半径方向の位置に設けることが好ましい。また、開口の数は特に制限されないが、テーブルに貼られた研磨パッド10が一回転する際に、窓が膜厚検出センサ上を複数回通過するように、同様の半径方向の位置に複数個有することが好ましい。
【0053】
ポリウレタンシートの態様としては、特に制限されないが、例えば、発泡ポリウレタンシート、樹脂の無発泡ポリウレタンシート、繊維基材にポリウレタンを含浸したシートなどが挙げられる。
【0054】
ここで、樹脂の発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は、特に制限されないが、例えば、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡、あるいは、各気泡が部分的に連結した連続気泡などが挙げられる。
【0055】
また、樹脂の無発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される無発泡体をいう。無発泡体とは、上記のような気泡を有しないものをいう。第1実施形態においては、フィルムなどの基材の上に、硬化性組成物を付着させて硬化させたようなものも樹脂の無発泡成形体に含まれる。より具体的には、ラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等により形成された樹脂硬化物も樹脂の無発泡成形体に含まれる。
【0056】
さらに、樹脂含侵基材とは、繊維基材に樹脂を含浸させて得られるものをいう。ここで、繊維基材としては、特に制限されないが、例えば、織布、不織布、編地などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の研磨パッドは、半導体ウエハなどを研磨するのに好適に用いられるパッドとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0058】
10…研磨パッド、11…研磨層、11a…研磨面、12…終点検出用窓、13…クッション層、14,15…接着層、16…溝