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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047540
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置および刺繍システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230330BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20230330BHJP
   D05C 11/24 20060101ALI20230330BHJP
   D05B 67/00 20060101ALI20230330BHJP
   D06B 1/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J3/407
D05C11/24
D05B67/00
D06B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156507
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大村 泰斗
【テーマコード(参考)】
2C056
3B150
3B154
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB35
2C056EB37
2C056EC13
2C056EC34
2C056EC67
3B150CB04
3B150CD01
3B150CE24
3B150FC01
3B150FC04
3B150FD07
3B150QA06
3B150QA07
3B154AB01
3B154BA09
3B154BB33
3B154BB47
3B154BC22
3B154CA08
3B154CA11
3B154CA32
3B154DA13
(57)【要約】
【課題】画像品質を安定させること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、搬送される線状媒体に、画像データに基づいて液体を吐出するヘッドと、前記線状媒体の搬送方向における前記ヘッドよりも下流側に設けられ、前記線状媒体の搬送速度を調整する調整手段と、を有し、前記調整手段は、前記搬送速度が所定値を下回る場合に、前記線状媒体の搬送距離を増加させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される線状媒体に、画像データに基づいて液体を吐出するヘッドと、
前記線状媒体の搬送方向における前記ヘッドよりも下流側に設けられ、前記線状媒体の搬送速度を調整する調整手段と、を有し、
前記調整手段は、前記搬送速度が所定値を下回る場合に、前記線状媒体の搬送距離を増加させる液体吐出装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記搬送方向における前記調整手段の下流側での前記搬送速度が前記所定値を下回る場合に、前記線状媒体の前記搬送距離を増加させることにより、前記搬送方向における前記調整手段の上流側での前記搬送速度が前記所定値を下回らないように調整する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記搬送速度が吐出周波数に換算された値が10Hzを下回る場合に、前記搬送距離を増加させる請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ヘッドは、前記調整手段により前記搬送速度を調整できない場合には、前記液体の吐出を停止する請求項1から3の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記搬送方向における前記調整手段の下流側に設けられ、前記線状媒体の検出信号を出力する検出手段を有し、
前記調整手段は、前記検出手段による前記検出信号に基づき、前記搬送速度の情報を取得する請求項1から4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記線状媒体に接する回転体に設けられ、前記回転体が単位時間当たりに回転した回転角度の検出信号を出力する請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記ヘッドから吐出された前記液体により前記線状媒体に形成された画像の検出信号を出力する請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の液体吐出装置と、
前記液体吐出装置により前記液体を付与された前記線状媒体を用いて刺繍を行う刺繍装置と、を有する刺繍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および刺繍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸等の線状媒体に液体を吐出する液体吐出装置が知られている。
【0003】
液体吐出装置として、張力センサにより糸の張力を一定に維持する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出装置では、画像品質を安定させることが求められる。
【0005】
本発明は、画像品質を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、搬送される線状媒体に、画像データに基づいて液体を吐出するヘッドと、前記線状媒体の搬送方向における前記ヘッドよりも下流側に設けられ、前記線状媒体の搬送速度を調整する調整手段と、を有し、前記調整手段は、前記搬送速度が所定値を下回る場合に、前記線状媒体の搬送距離を増加させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る刺繍システムの全体構成を例示する図である。
図2図1の刺繍システムにおける制御手段の機能構成を例示する図である。
図3図1の刺繍システムにおける調整手段の動作を例示する図である。
図4図1の刺繍システムの搬送速度調整動作を例示するフロー図である。
図5図1の刺繍システムによる搬送速度調整結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下、液体吐出装置と、刺繍装置と、を備える刺繍システムを一例として実施形態を説明する。
【0011】
[実施形態]
<刺繍システム1の全体構成例>
図1は、刺繍システム1の全体構成を例示する図である。刺繍システム1は、液体吐出装置2と、刺繍装置3と、を備える。液体吐出装置2は、有線又は無線により刺繍装置3と通信可能に接続している。液体吐出装置2は、糸Mに液体を吐出することにより糸Mを染色する。刺繍装置3は、液体吐出装置2により染色された糸Mを用いて刺繍を行う。
【0012】
糸Mは線状媒体の一例である。糸Mは、ガラス繊維糸、ウール糸、綿糸、合成糸、金属糸、ウール、綿、ポリマー、または金属の混合糸、ヤーン、フィラメント、あるいは液体を付与可能な線状部材(連続基材)である。糸Mには、組紐、平紐等も含まれる。
【0013】
液体吐出装置2は、ヘッド21と、調整手段22と、を有する。液体吐出装置2は、糸巻き11から供給され、搬送方向10に沿って搬送される糸Mにヘッド21から液体を吐出して糸Mに付与することにより糸Mを染色する。
【0014】
刺繍装置3は、糸Mに接続する針31を有する。刺繍装置3は、筐体32に設けられた貫通孔33を通して液体吐出装置2から供給されてくる染色された糸Mを用いて針31により布Cに刺繍を行い、布C上に刺繍パターン(刺繍模様)を形成する。糸Mは、刺繍装置3により布Cに糸Mが刺繍されることに応じて、糸巻き11から引き出され、搬送方向10に沿って搬送される。
【0015】
ヘッド21は、液体により糸Mに形成する画像の元となる画像データに基づいて、搬送される糸Mに液体を吐出する。
【0016】
調整手段22は、第1ニップローラ221と、第2ニップローラ222と、ダンサーローラ223と、支持ローラ224と、を有する。調整手段22は、搬送方向10におけるヘッド21の下流側に設けられている。
【0017】
第1ニップローラ221および第2ニップローラ222それぞれは、回転可能な一対のローラを含み、一対のローラの間に糸Mを挟んで搬送する。ダンサーローラ223は、第1ニップローラ221と第2ニップローラ222との間に設けられ、回転しつつ矢印で示した移動方向20に沿って移動可能なローラである。支持ローラ224は、搬送方向10における第2ニップローラ222の下流側に設けられ、糸Mを支持するローラである。
【0018】
調整手段22は、ダンサーローラ223を移動方向20に沿って移動させ、調整手段22において搬送される糸Mの搬送距離を変化させることにより糸Mの搬送速度Vを調整できる。
【0019】
また、液体吐出装置2は、制御手段23と、ロータリーエンコーダ24と、ガイドローラ25と、第1センサ26と、第2センサ27と、を有する。
【0020】
制御手段23は、ヘッド21および調整手段22それぞれの動作を制御する。ロータリーエンコーダ24は、搬送方向10におけるヘッド21の上流側に設けられ、糸Mの搬送状態を検出した信号を制御手段23に出力する。糸Mの搬送状態は、例えば糸巻き11から供給される糸Mの供給速度や、糸Mが張力により張っている状態等である。制御手段23は、画像データに基づき、ロータリーエンコーダ24からの信号に応じてヘッド21に液体を吐出させる。
【0021】
ガイドローラ25は、糸Mを介在するように設けられた一対のローラにより構成され、液体により染色された糸Mを調整手段22に向けて案内する。
【0022】
第1センサ26は、搬送方向10における調整手段22の上流側に設けられ、糸Mの検出信号を制御手段23に出力する。第2センサ27は、搬送方向10における調整手段22の下流側に設けられ、糸Mの検出信号を制御手段23に出力する検出手段の一例である。
【0023】
第2センサ27は、例えば糸Mに接する回転体に設けられ、該回転体が単位時間当たりに回転した回転角度の検出信号を出力するロータリーエンコーダを含む。回転体は、糸Mに接することにより糸Mを支持しつつ回転可能なローラ等である。但し、第2センサ27の構成はこれに限定されるものではない。例えば第2センサ27は、ヘッド21から吐出された液体により糸Mに形成された画像の検出信号を出力するカメラ等を含むこともできる。
【0024】
制御手段23は、第2センサ27からの検出信号に基づき、搬送方向10における調整手段22の下流側での、糸Mの搬送速度Vの情報を演算により取得し、調整手段22に出力する。調整手段22は、制御手段23から糸Mの搬送速度Vの情報を取得できる。
【0025】
<制御手段23の機能構成例>
図2は、制御手段23の機能構成の一例を示すブロック図である。制御手段23は、入出力部231と、決定部232と、搬送速度取得部233と、調整制御部234と、吐出制御部235と、停止制御部236と、を有する。
【0026】
制御手段23は、これらの機能を電気回路により実現する他、これらの機能の一部または全部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することもできる。制御手段23は、複数の回路又は複数のソフトウェアによりこれらの機能を実現してもよい。
【0027】
入出力部231は、制御手段23に対する信号またはデータの入出力を制御する。
【0028】
決定部232は、PC(Personal Computer)等の外部装置から入出力部231を介して入力された画像データImに基づいて、糸Mの搬送速度Vの下限値Ltを決定する。下限値Ltは所定値の一例である。例えば、決定部232は、糸Mの搬送速度Vを吐出周波数に換算した値により下限値Ltを決定する。
【0029】
発明者が鋭意検討した結果、10Hz付近で吐出が不安定になることがわかった。そのため下限値Ltは、10Hzまたは10Hz以上に設定されることが好ましい。
【0030】
搬送速度取得部233は、第1センサ26および第2センサ27それぞれによる検出信号に基づき、糸Mの搬送速度Vの情報を演算により取得する。
【0031】
調整制御部234は、搬送速度取得部233により取得された糸Mの搬送速度Vの情報に基づき、調整手段22により搬送速度Vを調整する。
【0032】
本実施形態では特に、調整制御部234は、糸Mの搬送速度Vが下限値Ltを下回る場合に、調整手段22により糸Mの搬送距離を増加させることにより糸Mの搬送速度Vを調整する。
【0033】
例えば調整制御部234は、搬送方向10における調整手段22の下流側での糸Mの搬送速度Vdが下限値Ltを下回る場合に、調整手段22により糸Mの搬送距離を増加させることにより、搬送方向10における調整手段22の上流側での糸Mの搬送速度Vuが下限値Ltを下回らないように調整する。例えば調整制御部234は、糸Mの搬送速度Vが吐出周波数に換算された値が10Hzを下回る場合に、調整手段22によりダンサーローラ223を移動方向20に沿って移動させることにより糸Mの搬送距離を増加させる。
【0034】
吐出制御部235は、画像データImに基づき、ロータリーエンコーダ24からの信号に応じてヘッド21に液体を吐出させる。
【0035】
停止制御部236は、調整手段22により糸Mの搬送速度Vを調整できない場合には、ヘッド21に液体の吐出を停止させる。例えば停止制御部236は、第1センサ26または第2センサ27の少なくとも一方の検出信号に基づき、調整手段22により糸Mの搬送速度Vを調整できるか否かを判定できる。
【0036】
<刺繍システム1の動作例>
図3は、刺繍システム1における調整手段22の動作を例示する図である。調整手段22は、制御手段23の制御下において、糸Mの搬送速度Vが下限値Ltを下回る場合に、移動方向20の矢印が向く方向にダンサーローラ223を移動させ、糸Mの搬送距離を増加させることにより糸Mの搬送速度Vを調整する。
【0037】
例えば、調整手段22は、搬送方向10における調整手段22の下流側での糸Mの搬送速度Vdが下限値Ltを下回る場合に、糸Mの搬送距離を増加させることにより、搬送方向10における調整手段22の上流側での糸Mの搬送速度Vuが下限値Ltを下回らないように調整する。調整手段22は、決定部232により糸Mの搬送速度Vが吐出周波数に換算された値が10Hzを下回る場合に、糸Mの搬送距離を増加させる。
【0038】
ここで、ヘッド21は、ダンサーローラ223が移動方向20に沿った移動可能範囲を移動しきった場合には、制御手段23の制御下において、液体の吐出を停止してもよい。ヘッド21が吐出を停止した場合には、調整手段22は、移動方向20の矢印が向く方向とは反対側の方向にダンサーローラ223を移動させ、糸Mの搬送距離を減少させる。これによりダンサーローラ223が移動方向20に沿って移動可能になった後に、ヘッド21は液体の吐出を再開する。
【0039】
図4は、刺繍システム1における搬送速度の調整動作を例示するフローチャートである。刺繍システム1は、刺繍システム1のユーザにより刺繍デザインが決定された後、刺繍デザインに応じた画像データImを入力することにより、図4の動作を開始する。
【0040】
まず、ステップS41において、刺繍システム1は、決定部232により、画像データImに基づいて、糸Mの搬送速度Vの下限値Ltを決定する。決定部232は、画像データImに基づいて、糸Mの単位長さ当たりの液体塗布量(階調)を決定することにより、糸Mの搬送速度Vを決定し、その後、搬送速度Vを吐出周波数に換算することにより下限値Ltを決定できる。
【0041】
続いて、ステップS42において、刺繍システム1は、搬送速度取得部233により、第1センサ26および第2センサ27それぞれによる検出信号に基づき、糸Mの搬送速度Vの情報を演算により取得する。
【0042】
続いて、ステップS43において、刺繍システム1は、調整制御部234により、搬送速度Vが下限値Ltを下回るか否かを判定する。
【0043】
ステップS43において、下回らないと判定された場合には(ステップS43、No)、刺繍システム1は動作を終了する。
【0044】
一方、ステップS43において、下回ると判定された場合には(ステップS43、Yes)、刺繍システム1は、調整手段22により、糸Mの搬送速度Vの情報に基づき、糸Mの搬送距離を増加させることにより、搬送速度Vを調整する。
【0045】
このようにして、刺繍システム1は、糸Mの搬送速度Vを調整できる。
【0046】
<搬送速度Vの調整結果例>
図5は、刺繍システム1による搬送速度Vの調整結果を例示する図である。図5の横軸は時間tを示し、縦軸は搬送速度Vを示している。図5において、実線のグラフは、搬送方向10における調整手段22の下流側での糸Mの搬送速度Vdを示している。一点鎖線のグラフは、搬送方向10における調整手段22の上流側での糸Mの搬送速度Vuを示している。
【0047】
図5に示すように、刺繍システム1は、搬送速度Vdが変化すると、決定部232により決定された下限値Ltに合わせて、搬送方向10における調整手段22の上流側での糸Mの搬送速度Vuが下限値Ltを下回らないように、糸Mの搬送速度Vを調整手段22により調整する。
【0048】
図5において斜線ハッチングで示した領域51は、搬送方向10における調整手段22の上流側および下流側それぞれでの搬送速度Vの差分に対応し、調整手段22による搬送速度Vの調整分を表している。
【0049】
<液体吐出装置2の作用効果>
刺繍システム1における液体吐出装置2の作用効果について説明する。
【0050】
従来、液体吐出装置と、刺繍装置と、を有する刺繍システムでは、刺繍開始直前にユーザが手で糸を引くことにより、糸が接続している針の先に、布に形成される刺繍パターンの先頭を合わせる動作が必要となる。この際に糸の搬送速度が急激に変化する場合がある。
【0051】
また、刺繍デザインの関係で縫い方が大きく変化する場合や、縫い位置をジャンプする場合においても、糸の搬送速度が急激に変化する。
【0052】
刺繍システムにおける液体吐出装置は、糸の搬送速度に合わせ、吐出周波数を変化させながら液体を吐出して糸Mを染色する。そのため、糸の搬送速度に合わせて吐出周波数が急激に変化すると、吐出が不安定になったり、糸に付与される液体の位置ずれにより色の変わり目や重ね合わせの位置において画像品質が低下したりする場合がある。
【0053】
また、刺繍システムにおいて搬送される糸は、張力が高くなりすぎると針や刺繍装置自体の負担になる。液体吐出装置を有する刺繍システムでは、糸の張力が高くなる場合があるため、所定の張力に維持可能な構成が求められている。
【0054】
本実施形態に係る液体吐出装置2は、搬送される糸M(線状媒体)に、画像データに基づいて液体を吐出するヘッド21と、糸Mの搬送方向10におけるヘッド21よりも下流側に設けられ、糸Mの搬送速度Vを調整する調整手段22と、を有する。調整手段22は、搬送速度Vが下限値Lt(所定値)を下回る場合に、糸Mの搬送距離を増加させる。この構成により、液体吐出装置2は、糸Mの搬送速度の急激な変化を抑制し、糸Mの搬送速度の合わせた吐出周波数の急激な変化を抑制でき、ヘッド21による液体の吐出が安定する結果、画像品質を安定させることができる。また、液体吐出装置2は、糸Mの搬送速度を調整することにより、搬送される糸Mの張力を所定の張力に維持できるため、針や刺繍装置自体の負担を低減できる。
【0055】
また本実施形態では、調整手段22は、搬送方向10における調整手段22の下流側での搬送速度Vdが下限値Ltを下回る場合に、糸Mの搬送距離を増加させることにより、搬送方向10における調整手段22の上流側での搬送速度Vuが下限値Ltを下回らないように調整する。これにより、液体吐出装置2は、糸Mの搬送速度の急激な変化を抑制し、糸Mの搬送速度の合わせた吐出周波数の急激な変化を抑制でき、ヘッド21による液体の吐出が安定する結果、画像品質を安定させることができる。
【0056】
また発明者が鋭意検討した結果、糸Mの搬送速度Vを吐出周波数に換算した値が10Hz付近になる場合に、ヘッド21による吐出が不安定になることがわかった。そのため、下限値Ltは、10Hz、または10Hz以上に設定されると好適である。例えば調整手段22は、搬送速度Vが吐出周波数に換算された値が10Hzを下回る場合に、搬送距離を増加させることが好ましい。これにより、ヘッド21による吐出を安定させることができ、液体吐出装置2による画像品質を安定させることができる。
【0057】
また本実施形態では、調整手段22は、ダンサーローラ223を移動させることにより糸Mの搬送距離を増加させるが、ダンサーローラ223が限界まで移動すると、搬送速度Vを調整できなくなる。そのためヘッド21は、調整手段22により搬送速度Vを調整できない場合には、停止制御部236の制御下において、液体の吐出を停止することが好ましい。これにより、搬送速度Vを調整できないことによる画像品質の低下を防止できる。液体吐出装置2は、ヘッド21による液体の吐出を停止している間に、ダンサーローラ223の位置を戻すことにより搬送速度Vを再び調整可能にし、調整可能になった後にヘッド21による液体の吐出を再開させることができる。
【0058】
また本実施形態では、液体吐出装置2は、搬送方向10における調整手段22の下流側に設けられ、糸Mの検出信号を出力する第2センサ27(検出手段)を有する。調整手段22は、第2センサ27による検出信号に基づき、搬送速度Vの情報を取得する。例えば、第2センサ27は、糸Mに接する回転体に設けられ、回転体が単位時間当たりに回転した回転角度の検出信号を出力するロータリーエンコーダを含む。液体吐出装置2は、取得された搬送速度Vの情報に基づいて搬送速度Vを調整することにより、搬送速度Vを正確に調整できる。
【0059】
第2センサ27は、ロータリーエンコーダに代えて、ヘッド21から吐出された液体により糸Mに形成された画像の検出信号を出力するカメラを含んでもよい。
【0060】
[その他の好適な実施形態]
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。
【0062】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0063】
また実施形態の用語において、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0064】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0065】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 刺繍システム
11 糸巻き
2 液体吐出装置
21 ヘッド
22 調整手段
221 第1ニップローラ
222 第2ニップローラ
223 ダンサーローラ
224 支持ローラ
23 制御手段
231 入出力部
232 決定部
233 搬送速度取得部
234 調整制御部
235 吐出制御部
236 停止制御部
24 ロータリーエンコーダ
25 ガイドローラ
26 第1センサ
27 第2センサ(検出手段の一例)
3 刺繍装置
10 搬送方向
20 移動方向
31 針
32 筐体
33 貫通孔
C 布
Im 画像データ
Lt 下限値(所定値の一例)
M 糸(線状媒体の一例)
V、Vd、Vu 搬送速度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開平7-000661号公報
図1
図2
図3
図4
図5