(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047558
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230330BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20230330BHJP
B24B 37/22 20120101ALI20230330BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B24B37/24 B
B24B37/26
B24B37/22
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156530
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB06
3C158DA12
3C158DA17
3C158EB05
3C158EB14
3C158EB16
3C158EB22
3C158EB28
3C158EB29
3C158ED00
5F057AA24
5F057BA15
5F057BA21
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB08
5F057EB12
(57)【要約】
【課題】金型の上から吊り下げて固定した終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化した際において、気泡が生じにくい研磨パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】終点検出窓付き研磨層を備える研磨パッドの製造方法であって、金型内に終点検出窓用部材を固定し、該終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂硬化して、前記終点検出窓用部材が組み込まれた樹脂シートを形成する硬化工程と、前記樹脂シートをスライスして研磨層を形成するスライス工程と、を有し、前記硬化工程において、前記終点検出窓用部材が、前記金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げられて固定されるものであり、吊り下げられて固定された際の前記終点検出窓用部材の下端が、凸面形状を有する、研磨パッドの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
終点検出窓付き研磨層を備える研磨パッドの製造方法であって、
金型内に終点検出窓用部材を固定し、該終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化して、前記終点検出窓用部材が組み込まれた樹脂シートを形成する硬化工程と、
前記樹脂シートをスライスして研磨層を形成するスライス工程と、を有し、
前記硬化工程において、前記終点検出窓用部材が、前記金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げられて固定されるものであり、
吊り下げられて固定された際の前記終点検出窓用部材の下端が、凸面形状を有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程において、前記金型内に硬化性樹脂を充填してから、前記終点検出窓用部材を前記硬化性樹脂に接触させて、前記硬化性樹脂を硬化する、
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記硬化工程において、前記金型内に前記終点検出窓用部材を固定してから、硬化性樹脂を充填して硬化する、
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
少なくとも一端が前記凸面形状である前記終点検出窓用部材を形成する窓用部材形成工程をさらに有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLが、3.0~20mmである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLと、前記終点検出窓用部材の水平方向の断面積Sとの比(L/S)が、0.002~0.4である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLが、前記終点検出窓用部材の全長Lwに対して、0.03~0.30Lwである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項8】
前記位置固定治具が、前記金型上部と嵌合する第1嵌合部を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項9】
前記金型が、前記位置固定治具と嵌合する第2嵌合部を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項10】
前記位置固定治具が、前記終点検出窓用部材を位置決めして固定する位置決め部を有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項11】
前記研磨層の研磨面に溝加工を施す溝形成工程を有し、
前記溝形成工程の前に前記終点検出窓用部材の露出している部分には、溝加工を行わない、
請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項12】
前記研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られており、光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。
【0005】
このような光学式終点検出方式を用いる研磨パッドの製造方法として、例えば、特許文献1には、金型の底面にライナーを設けて窓用ブロックを固定して、その後硬化性材料を金型に充填して、硬化させる研磨パッドの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように金型の底面で窓用ブロックを固定する方法では、硬化の際の熱によってライナーが変形すると、金型に窓用ブロックを垂直に固定できないという問題が生じる。また、ライナーには窓用ブロックが直接固定されているため、再使用することが難しく、製造コストに問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、金型の底面に終点検出窓用部材を固定する方法に代えて、金型の上から終点検出窓用部材を吊り下げて固定した状態で、金型内で樹脂を硬化することについて検討したところ、吊り下げて固定した場合には終点検出窓用部材の周辺に気泡が生じやすいことが分かってきた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、金型の上から吊り下げて固定した終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化した際において、気泡が生じにくい研磨パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
終点検出窓付き研磨層を備える研磨パッドの製造方法であって、
金型内に終点検出窓用部材を固定し、該終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化して、前記終点検出窓用部材が組み込まれた樹脂シートを形成する硬化工程と、
前記樹脂シートをスライスして研磨層を形成するスライス工程と、を有し、
前記硬化工程において、前記終点検出窓用部材が、前記金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げられて固定されるものであり、
吊り下げられて固定された際の前記終点検出窓用部材の下端が、凸面形状を有する、
研磨パッドの製造方法。
〔2〕
前記硬化工程において、前記金型内に硬化性樹脂を充填してから、前記終点検出窓用部材を前記硬化性樹脂に接触させて、前記硬化性樹脂を硬化する、
〔1〕に記載の研磨パッドの製造方法。
〔3〕
前記硬化工程において、前記金型内に前記終点検出窓用部材を固定してから、硬化性樹脂を充填して硬化する、
〔1〕に記載の研磨パッドの製造方法。
〔4〕
少なくとも一端が前記凸面形状である前記終点検出窓用部材を形成する窓用部材形成工程をさらに有する、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔5〕
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLが、3.0~20mmである、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔6〕
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLと、前記終点検出窓用部材の水平方向の断面積Sとの比(L/S)が、0.002~0.4である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔7〕
前記終点検出窓用部材の前記凸面形状を有する部分の長さLが、前記終点検出窓用部材の全長Lwに対して、0.03~0.30Lwである、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔8〕
前記位置固定治具が、前記金型上部と嵌合する第1嵌合部を有する、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔9〕
前記金型が、前記位置固定治具と嵌合する第2嵌合部を有する、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔10〕
前記位置固定治具が、前記終点検出窓用部材を位置決めして固定する位置決め部を有する、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔11〕
前記研磨層の研磨面に溝加工を施す溝形成工程を有し、
前記溝形成工程の前に前記終点検出窓用部材の露出している部分には、溝加工を行わない、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
〔12〕
前記研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有する、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金型の上から吊り下げて固定した終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化した際において、気泡が生じにくい研磨パッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の終点検出窓用部材の一態様を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の終点検出窓用部材の別態様を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の終点検出窓用部材が挟持部に挟持された一態様を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の終点検出窓用部材が挟持部に挟持された別態様を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態において用いる樹脂シートを作製するための金型と位置固定治具が組み合わされた一態様を示す上面図である。
【
図6】本実施形態において用いる樹脂シートを作製するための金型と位置固定治具が組み合わされた別態様を示す上面図である。
【
図7】
図5に記載の金型の硬化性樹脂を注入する前のA-A’断面を示す断面図である。
【
図8】
図5に記載の金型の硬化性樹脂を注入した後のA-A’断面を示す断面図である。
【
図9】硬化工程後により得られた樹脂シートを示す上面図である。
【
図10】硬化工程後により得られた樹脂シートの終点検出窓付近の断面図である。
【
図11】本実施形態の研磨パッドの概略斜視図である。
【
図12】本実施形態の研磨パッドの終点検出窓部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。又上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
1.研磨パッドの製造方法
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、金型内に終点検出窓用部材を固定し、該終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化して、終点検出窓用部材が組み込まれた樹脂シートを形成する硬化工程と、樹脂シートをスライスして研磨層を形成するスライス工程と、を有し、硬化工程において、終点検出窓用部材が、金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げられて固定されるものであり、吊り下げられて固定された際の終点検出窓用部材の下端が凸面形状を有するように構成することで、終点検出窓付き研磨層を備える研磨パッドを製造する方法である。
【0015】
このように、終点検出窓用部材を金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げて固定することで、終点検出窓用部材の固定に関して金型自体は加工する必要がなく、従来のものをそのまま使用することができる。さらに、位置固定治具も何度でも使用可能であるため、ライナーのように使い捨てにする必要はない。その上、終点検出窓用部材を金型上部に設置した位置固定治具により吊り下げて固定することで、硬化性樹脂が硬化するまでは、終点検出窓用部材の埋設位置を微調整することができるため、そのような微調整により製品歩留まりを向上することもできる。
【0016】
しかしながら、このように吊り下げられて固定された終点検出窓用部材として、下端が平面であるものなどを用いると、硬化性樹脂を金型に注型した際に空気が溜まってしまうことがあり、逃げ場のない空気はそのまま硬化性樹脂の硬化時も終点検出窓付近に留まり続け、スライスしたときに空気の部分がボイド(穴)として顕出する。研磨パッド内に生じたこのようなボイドは研磨性能の低下を招く恐れがある。
【0017】
これに対して、本実施形態においては、吊り下げられて固定された際の終点検出窓用部材の下端が凸面形状を有するように構成する。このように金型の底面に向かって突出した終点検出窓用部材の面が凸面形状であることにより、終点検出窓用部材の下端と金型の底面の間に存在する空気が抜けやすくなり、得られた研磨パッドの窓周辺に生じる気泡を低減することができ、安定した研磨性能を有する研磨パッドを提供することができる。
【0018】
1.1.窓用部材形成工程
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、硬化工程の前に、少なくとも一端が凸面形状である終点検出窓用部材を形成する窓用部材形成工程をさらに有していてもよい。終点検出窓用部材10の形成方法は、特に限定されないが、例えば、凸面形状に対応する形状を備えた金型(不図示)に樹脂を注入して硬化したり、任意の形状の硬化物を切削することで硬化後に凸面形状を成形したりすることで作製することができる。
【0019】
1.1.1.終点検出窓用部材
終点検出窓用部材10は、下端10aが凸面形状を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、
図1に示すような直方体状のものや、
図2に示すような円柱状のものが挙げられる。
【0020】
図1に示すように、直方体状の終点検出窓用部材10は、柱状部11の吊り下げ方向の下端10aが凸面形状を有する。このような凸面を有することにより、終点検出窓用部材10の下端10aと金型20の底面21との間に硬化性樹脂が流入しやすくなり、硬化性樹脂が気泡を巻き込むことが抑制されやすく、また巻き込まれた気泡を逃がしやすくすることができる。
【0021】
また、
図2に示すように、円柱状の終点検出窓用部材10は、例えば、柱状部11の吊り下げ方向の下端10aが凸面形状を有し、柱状部11の下端10aの反対側に台座部12をさらに有してもよい。柱状部11の断面形状は特に制限されず、円形であっても多角形であってもよい。
【0022】
ここで、柱状部11は硬化工程後において、樹脂シート50に埋設されて終点検出窓51となる部分である。また、台座部12は、円柱状の終点検出窓用部材10を位置固定治具30に固定するための部分であり、例えば、接着剤で位置固定治具30と終点検出窓用部材10を固定する場合には、台座部12によって密着面積を広くすることができる。さらに、挟持部31で位置固定治具30と終点検出窓用部材10を固定する場合には、位置固定治具30の挟持部31に上方から終点検出窓用部材10を挿通したときに、台座部12で係止され、円柱状の終点検出窓用部材10が脱落せずに固定される。
【0023】
このように、円柱状の終点検出窓用部材10は、柱状部11と台座部12とを有する形状とすることで、柱状部11は終点検出窓として必要な範囲で比較的小さくしつつ、台座部12により脱落をより抑制することができる。これにより、硬化工程において注入された樹脂や硬化中の樹脂によって、終点検出窓用部材10の位置がずれたり、終点検出窓用部材10が斜めになったりすることが抑制される傾向にある。また、柱状部11を終点検出窓として必要な範囲で比較的小さく構成できるため、終点検出窓を埋設したことによる研磨パッドの研磨特性への影響をより小さくすることができる。なお、終点検出窓用部材10の形状は
図2に限定されず、円柱状の終点検出窓用部材10は、台座部12がなく、柱状部11のみを有するものであってもよい。
【0024】
本実施形態において「凸面形状」とは、端部から任意の部分に向かって高くなっている面を意味し、例えば、
図1においては、直方体状の終点検出窓用部材10は、底面のうち長軸方向の両端が低く、長軸方向の中央部に向かって徐々に盛り上がっている面を凸面形状として有する。凸面形状は凸状であれば曲線でなくともよく、中央に向かって凸な任意の形状を選択でき、曲面や、あるいは三角錐のようにとがったものでもよい。
【0025】
本実施形態における「凸面形状」では、もっとも高くなっている部分が平坦であってもよいが、その最も高くなっている部分の面積S1は、終点検出窓用部材10の断面積Sに対して、好ましくは0~50面積%であり、より好ましくは0~40面積%であり、さらに好ましくは0~30面積%であり、よりさらに好ましくは0~20面積%であり、さらにより好ましくは0~10面積%である。断面積Sに対する面積S1の割合が50面積%以下ということにより、終点検出窓用部材10の下面と金型20の底面21との間に硬化性樹脂が流入しやすくなり、硬化性樹脂が気泡を巻き込むことが抑制されやすく、また巻き込まれた気泡を逃がしやすくすることができる。
【0026】
なお、断面積Sに対する面積S1の割合が50面積%以下であることは、本実施形態における「凸面形状」は、終点検出窓用部材の下端が単に面取り加工がされた場合を含まないことを意味するものでもある。
【0027】
また、終点検出窓用部材10の凸面形状を有する部分の長さLは、好ましくは3.0~20mmであり、より好ましくは3.0~15mmであり、さらに好ましくは3.0~10mmである。長さLが長いほど、凸面形状の一番低い部分と高い部分との差が大きくなり、硬化性樹脂が気泡を巻き込むことが抑制されやすく、また巻き込まれた気泡を逃がしやすくなる傾向にある。一方で、長さLが短いほど、研磨パッドとして使用できず破棄する部分が短くなる傾向にある。
【0028】
終点検出窓用部材10の凸面形状を有する部分の長さLと、終点検出窓用部材10の水平方向の断面積Sとの比(L/S)は、好ましくは0.002~0.4であり、より好ましくは0.005~0.35であり、さらに好ましくは0.010~0.30である。比(L/S)が大きいほど、凸面形状の一番低い部分と高い部分との差が大きくなり、硬化性樹脂が気泡を巻き込むことが抑制されやすく、また巻き込まれた気泡を逃がしやすくなる傾向にある。一方で、比(L/S)が小さいほど、研磨パッドとして使用できず破棄する部分が短くなる傾向にある。
【0029】
終点検出窓用部材10の凸面形状を有する部分の長さLは、終点検出窓用部材10の全長Lwに対して、好ましくは0.03~0.30Lwであり、より好ましくは0.03~0.25Lwであり、さらに好ましくは0.03~0.20Lwである。長さLが大きいほど、凸面形状の一番低い部分と高い部分との差が大きくなり、硬化性樹脂が気泡を巻き込むことが抑制されやすく、また巻き込まれた気泡を逃がしやすくなる傾向にある。一方で、長さLが小さいほど、研磨パッドとして使用できず破棄する部分が短くなる傾向にある。
【0030】
なお、金型から取り出した終点検出窓用部材10は、柱状部11の側面を、サンドペーパーで処理したり溶剤で処理したりすることが好ましい。これにより、終点検出窓用部材10に離型剤が付着している場合には離型剤を除去することができ、また、サンドペーパーで側面が粗面化されることによって、樹脂シート50に終点検出窓用部材10を埋設したときに、樹脂シート50と終点検出窓用部材10(終点検出窓51)との密着性がより向上する傾向にある。
【0031】
1.2.硬化工程
硬化工程は、金型内に終点検出窓用部材を固定し、該終点検出窓用部材と接触した状態で硬化性樹脂を硬化して、終点検出窓用部材が組み込まれた樹脂シートを形成する工程である。
【0032】
1.2.1.位置固定治具
硬化工程において、終点検出窓用部材10は、金型20上部に設置した位置固定治具30により吊り下げられて固定される。固定化方法は、位置固定治具30に対する終点検出窓用部材10の固定化方法は特に限定されないが、例えば、終点検出窓用部材10の凸面形状とは反対側の端部の面と位置固定治具30とが接着剤や両面テープにより接着されて吊り下げられて固定されていてもよいし、終点検出窓用部材10が位置固定治具30の有する挟持部31により挟持されることで吊り下げられて固定されていてもよい。
【0033】
例えば、金型20の底面に終点検出窓用部材10を固定する場合には、硬化性樹脂を金型に充填した後に、終点検出窓用部材10の個数や位置を変更することは困難である。一方で、本実施形態のように終点検出窓用部材10を吊り下げて固定する場合には、硬化性樹脂を金型20に充填した後であっても硬化前であれば、終点検出窓用部材10の位置を変更したり、終点検出窓用部材10の個数を変更したりすることが容易となる。
【0034】
また、その他、金型20の底など金型自体に終点検出窓用部材10を固定するための変更を施す必要がなく、金型20としては終点検出窓を有しない研磨パッドの製造に用いるのと同様のものをそのまま用いることもできる。
【0035】
挟持部31は、上記のように終点検出窓用部材10を挟持して固定するものであれば特に制限されず、終点検出窓用部材10を挟み込む一又は複数の部材を有してもよいし、さらに挟持する力を調整するための調整部32を有してもよい。
【0036】
このような調整部32としては、例えば、
図3や
図4のように終点検出窓用部材10を挟み込む複数の部材(挟持部31)を締め付けるネジやバネなどであってもよい。
図3では、調整部32(ネジ)を介して2つの部材からなる挟持部31が接続されており、調整部32によって、2つの部材からなる挟持部31の間の距離が調整可能とされている。これにより調整部32によって挟持部31の間の距離が短くなるように締め付けることで、終点検出窓用部材10の側面が押さえつけられ、挟持する力が調整される。また、
図4では、挟持部31が調整部32(ネジ)を有し、調整部32(ネジ)が終点検出窓用部材10を直接挟持して固定できる。
【0037】
図5及び
図6に、樹脂シートを作製するための金型20の上面図を示し、
図7に、金型20に硬化性樹脂を注入する前の
図5におけるA-A’の断面図を示す。
図5~7において示す金型20は、
図2で示す態様の終点検出窓用部材10を
図4で示す態様の調整部32により固定する位置固定治具30を備える。
図5及び
図7に示すように、位置固定治具30は金型20の上部に設置されており、終点検出窓用部材10は位置固定治具30の挟持部31により挟持されることで、鉛直下向きに吊り下げられて固定されている。
【0038】
また、金型20の形状は、特に限定されないが、例えば、樹脂シートを形成するための扁平な金型とすることができ、樹脂シートを切り出すための樹脂ブロックを形成するような直方体状の金型であってもよい。位置固定治具30は、その金型20の上部を覆うように側壁22に接して固定されている。
【0039】
位置固定治具30の金型20と接触する場所は、金型20の上部と嵌合可能な凹凸形状(第1嵌合部)を有していてもよい。また、金型20の位置固定治具30と接触する場所も、位置固定治具30と嵌合可能な凹凸形状(第2嵌合部)を有していてもよい。これにより、金型20に位置固定治具30を設置する際において、位置固定治具30の位置決めが容易になり、硬化工程ごとに終点検出窓用部材10の埋設位置がずれたりすることを抑制できる傾向にある。
【0040】
さらに、位置固定治具30は、終点検出窓用部材10を位置決めして固定する位置決め部を有していてもよい。ここで、位置決め部は、位置固定治具30と台座部12とが接触する場所に形成された、位置固定治具30と台座部12とが嵌合可能な凹凸形状とすることができる。これにより、硬化工程ごとに終点検出窓用部材10の埋設位置がずれたりすることを抑制できる傾向にある。
【0041】
位置固定治具30の素材は、特に限定されないが、例えば、硬化工程の熱でも変形しない程度の耐熱性の素材であればよく、例えば、アルミ合金やステンレス鋼が挙げられる。
【0042】
1.2.2.硬化性樹脂
硬化工程では、上記のように金型20内に終点検出窓用部材10を固定し、該終点検出窓用部材10と接触した状態で硬化性樹脂40を硬化して、終点検出窓用部材10(終点検出窓51)が組み込まれた樹脂シート50を形成する。
図8に、金型20に硬化性樹脂を注入した後の
図5におけるA-A’の断面図を示す。
【0043】
本実施形態においては、終点検出窓用部材10と接触した状態で硬化性樹脂40を硬化する態様であれば特に限定されず、
図5のように金型20内に終点検出窓用部材10を固定してから、金型20に硬化性樹脂40を充填して硬化性樹脂40を硬化させてもよいし、金型20内に硬化性樹脂40を充填してから、終点検出窓用部材10を硬化性樹脂に接触させて、その後に硬化性樹脂40を硬化させてもよい。
【0044】
硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができる。
【0045】
1.3.スライス工程
スライス工程は、樹脂シートをスライスして研磨層を形成する工程である。
図9~10に、硬化工程後に、金型20から外して、台座部12を除去して得られた樹脂シート50の上面図と断面図を示す。
図9~10に示されるように、樹脂シートは終点検出窓用部材が埋設されたものである。
【0046】
スライス方法は、特に限定されないが、例えば、
図9~10に示すような樹脂シートを、面方向に切断し、任意の厚さの研磨パッドとする方法が挙げられる。また、
図11に示すように四角形上の研磨パッドは、円形状に切り出してもよい。
【0047】
1.4.溝形成工程
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、研磨層の研磨面に溝加工を施す溝形成工程を有していてもよい(
図12参照)。なお、光学終点検出に支障があるため、溝加工は、終点検出窓用部材の露出している部分には行わないことが好ましい。
【0048】
1.5.その他の工程
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、研磨層の研磨面と反対側の面に、基材層及び/又はクッション層を積層する積層工程を有していてもよい。
【0049】
2.研磨パッド
図11に、本実施形態の研磨パッドの概略斜視図を示し、
図12に、
図11における終点検出窓51の周辺の断面図を示す。
図12に示すように、本実施形態の研磨パッドは、樹脂シート50(研磨層)と、終点検出窓51と、を有し、必要に応じて、研磨面50aとは反対側に、クッション層52を有していてもよい。
【0050】
図12に示すように、樹脂シート50(研磨層)とクッション層52の間には、接着層53が設けられていてもよく、また、クッション層52の表面には、接着層54が設けられていてもよい。本実施形態の研磨パッドの研磨面50aは、平坦の場合の他、
図12に示すように、溝55が形成された凹凸状であってもよい。溝55は複数の同心円状、格子状、放射状等の様々な形状の溝を単独又は併用して形成してもよい。
【0051】
終点検出用窓51は樹脂シート50(研磨層)の開口に設けられた透明な部材であり、光学式の終点検出において、膜厚検出センサからの光の透過路となるものである。本実施形態において、終点検出用窓は円形であるが、必要に応じて、正方形、長方形、多角形、楕円形等の形状としてもよい。
【0052】
樹脂シート50(研磨層)としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタンシートを用いることができる。このポリウレタンシートは終点検出用窓が埋設される開口を有する。開口の位置は特に制限されないが、研磨装置のテーブルに設置された膜厚検出センサに対応する半径方向の位置に設けることが好ましい。また、開口の数は特に制限されないが、テーブルに貼られた研磨パッドが一回転する際に、窓が膜厚検出センサ上を複数回通過するように、同様の半径方向の位置に複数個有することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の研磨パッドの製造方法は、光学式の終点検出法に適した研磨パッドの効率的な製造方法として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
10…終点検出窓用部材、11…柱状部、12…台座部、20…金型、21…底面、22…側壁、30…位置固定治具、31…挟持部、32…調整部、40…硬化性樹脂、50…樹脂シート、50a…研磨面、51…終点検出窓、52…クッション層、53…接着層、54…接着層、55…溝