(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047568
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】トレー容器
(51)【国際特許分類】
B65D 5/24 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
B65D5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156544
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】猪又 暢之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA07
3E060AB16
3E060BC01
3E060BC04
3E060CG10
3E060CG12
3E060CG22
3E060CG24
3E060DA13
3E060DA18
(57)【要約】
【課題】底面角部に開孔しているように見えず、かつ、紙残りが発生しないトレー容器を得る。
【解決手段】少なくとも内側に熱可塑性樹脂層を有し紙を基材とする積層シートから形成され、多角形形状の底面板(3)と、底面板周縁の各辺を下辺として谷折れ罫線を介して繋止した側面板(4)と、側面板の下辺に対向した上辺に山折り罫線を介して繋止するフランジ(5)と、前記側面板の間に傾斜側面板(43)を有しており、前記側面板と前記傾斜側面板との間にウェブコーナー片(6)を有しており、前記ウェブコーナー片の先端が前記底面板に接していないことを特徴とするトレー容器(1)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内側に熱可塑性樹脂層を有し紙を基材とする積層シートから形成され、
多角形形状の底面板と、
底面板周縁の各辺を下辺として谷折れ罫線を介して繋止した側面板と、
側面板の下辺に対向した上辺に山折り罫線を介して繋止するフランジと、
前記側面板の間に傾斜側面板を有しており、
前記側面板と前記傾斜側面板との間にウェブコーナー片を有しており、
前記ウェブコーナー片の先端が前記底面板に接していないことを特徴とするトレー容器。
【請求項2】
上記ウェブコーナー片の先端がR形状を有しており、R1.5mm以上の曲線で切り欠いた形状としたことを特徴とする請求項1に記載のトレー容器。
【請求項3】
前記ウェブコーナー片と前記傾斜側面板の境界に沿って、前記ウェブコーナー片の先端近傍から前記底面板に向けて罫線が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のトレー容器。
【請求項4】
前記ウェブコーナー片と前記側面板の境界に沿って、前記ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けても罫線が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のトレー容器。
【請求項5】
底面板が八角形としたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のトレー容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を基材としたシートから製造されたトレー容器であって、特に融着面の角部などにおいても、液漏れ等が発生しにくいトレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙を基材としたシートから製造されたトレー容器として、表裏を融着性の高いポリエチレン等で被覆したシートを用いて製造されてきた。
紙を基材としたシートから製造したトレー容器は、耐熱性があって、かつ、断熱性があり、電子レンジ等で加熱しても、持って移動させやすいなど、使いやすい容器である。
【0003】
例えば、特許文献1では、方形の底面板の相対向する二辺に、それぞれ山折り線を介して側面板が連設され、側面板の外周に、谷折り線を介して縁片が連設され、縁片の左右端に、それぞれ横方向に延びる舌片が設けられ、前記側面板の左右端に、それぞれ山折り線を介して逆三角形状の折り込み接合板が連設され、折り込み接合板の外周には、谷折り線を介して接合縁片が連設され、底面板の他の相対向する二辺に、それぞれ山折り線を介して第2側面板が連設され、第2側面板の外周に、谷折り線を介して第2縁片が連設され、第2縁片の左右端に、それぞれ横方向に延びる第2舌片が設けられ、前記第2側面板の左右端に、それぞれ谷折り線を介して逆三角形状の第2折り込み接合板が連設され、前記折り込み接合板の側面板と連設していない方の端縁と、第2折り込み接合板の第2側面板と連設していない方の端縁とは、山折り線を介して連設されると共に、各側面板を折り曲げてトレー状に組立てた際、縁片、第2縁片、接合縁片がそれぞれ同一平面を形成するように設定されているトレー容器用ブランクであって、各隅角の第2舌片と第2折り込み接合板が接する近傍の第2舌片の端縁に、第2折り込み接合板側に突出する小突起が設けられていることを特徴とするトレー容器用ブランクを提案している。
【0004】
このようなトレー容器用ブランクで製造したトレー容器では、縁片の舌辺が重なる所では二重となって、段差が生じ、段差が生じる。特にこの段差は基材が熱で大きく変化しにくいので、均等に蓋材を融着できず、完全に密封しにくい問題があった。
そこで、基材の紙の折り込み接合板部分を抜いておき、その状態で表裏にシーラント層等を積層することによって、融着時に段差や隙間を生じにくいトレー容器が考えられた。
しかし、このように折り畳まれる接合縁片部分を予め抜いてから製造すると、底面の角部に隣接する部分が、細い角になって、紙片が残りやすい。この紙片が残る問題に対して、底面の角部に隣接する部分を大きめのRを付けた曲面で大きめに基材を抜く方法が考えられた。しかし、その場合、底の角部近傍の側面板で、樹脂層だけで形成された角が形成され、いかにも穴が開いてしまったように見え、漏れてしまわないか、消費者に不安を持たせてしまう、外観上の新たな問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、底面角部に開孔しているように見えないトレー容器を得ることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトレー容器は、
少なくとも内側に熱可塑性樹脂層を有し紙を基材とする積層シートから形成され、
多角形形状の底面板と、
底面板の周縁の各底辺で谷折れ罫線を介して繋止した側面板と、
側面板の底辺に対向した上辺で山折り罫線を介して繋止するフランジと、
隣り合う側面板や隣り合うフランジの間にあって、該側面板やフランジの端辺同士を当接させるウェブコーナー片と、からなり、
該ウェブコーナー片が、底面板の各角部近傍から周縁に伸びる中央のウェブ中央罫線により折り込まれ、左右いずれかの側面板やフランジの面に融着して形成されるトレー容器において、
該ウェブコーナー片が、隣り合う側面板端辺によって形成される角部先端をR形状で丸めた基材の無い樹脂部を有することを特徴とするトレー容器である。
【0008】
本発明のトレー容器は、紙基材のウェブコーナー部を抜く工程で、隣り合う側面板の端辺によって形成される角部先端はR形状で丸め、基材の無い樹脂部は、鋭角になる底面角部近傍から外して加工される。
この為、容器の底面角部は基材のある角部側ウェブコーナーによって形成されるので、穴が開いたように見えないトレー容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のトレー容器に用いられるブランクの形状を示す第一実施形態例の図と、その部分拡大図である。
【
図2】本発明のトレー容器に用いられるブランクを構成する紙基材において、表や裏に熱可塑性樹脂層で積層する前に、予めウェブコーナー部分を抜き加工する形態を示す図と、その部分拡大図である。
【
図3】本発明のトレー容器における第一実施形態例で、成形したトレー容器の平面図と、その角部近傍のウェブコーナー部の状態を示すフランジ近傍の横断面図と底面近傍の横断面図、及びトレー容器の側面図である。
【
図4】本発明のトレー容器に用いられるブランクの形状を示す第二実施形態例の図と、その部分拡大図である。
【
図5】本発明のトレー容器に用いられる積層シートの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のトレー容器について、図を用いて詳細に説明する。
図1-1は本発明のトレー容器の第一実施形態例に用いられるブランク2の形状を示す図である。
本発明のトレー容器は、多角形形状の底面板を有するが、この第一実施形態例は、長方形の四隅を面取りした八角形の底面板3を有するトレー容器である。
底面板3周縁には、前記底面版3の各底周辺31を谷折り罫線とし、該谷折り罫線を介して繋止する側面板4を有している。該側面板4は、底面板3の各底周辺31を底辺とし、その向かい合う辺を上辺とした台形形状から出来ている。
又、上記側面板4の上辺に、山折り罫線を介して繋止したフランジ5を有している。
【0011】
さらに、ブランク2は、隣り合う側面板4や隣り合うフランジ5の間に、ウェブコーナー片6を有している。
樹脂ウェブコーナー片6は基材層が無いので、積層シート状だけでも薄いが、融着時により薄く圧着することができる。
【0012】
図5に、本発明のトレー容器に用いられる積層シート20の構成の一例を示した。
積層シートは、少なくとも、最外面の外側熱可塑性樹脂層14と、紙からなる基材層11
と、最内面の内側熱可塑性樹脂層12とから構成される。
さらに、基材層11と内側熱可塑性樹脂層12との間に、接着層15を介してバリア層13を含んだ構成であってもかまわない。
積層シート20のウェブコーナー片6では、紙基材層を抜いた状態とするので、ウェブコーナー片6部分だけは薄くなっている。
【0013】
図1-2に、ウェブコーナー片6の底面板3と接する部分を拡大図で示した。
ウェブコーナー片6は、傾斜側面板43と左右二枚の側面板4端辺とで囲まれた領域である。
そして、上記ウェブコーナー片6は、底部側の先端を丸めた形状としている。
ここで、
図1のブランク2は、第一実施形態例で、ウェブコーナー片6と傾斜側面板43の境界に沿って、ウェブコーナー片6の先端近傍から側面板に向けて罫線が設けられている。
【0014】
図2は、本発明のトレー容器の第一実施形態例に用いられるブランクを構成する紙基材において、熱可塑性樹脂層で積層する前に、抜き加工した状態を示す図である。
ここに示すように、基材を予め抜き加工し、この基材に熱可塑性樹脂層を積層する。
ウェブコーナー片6部分を抜き落す時は、底面側端部の抜き刃の内部に抜きカスをゴムなどの力で強制的に抜き型から外す型にしておくと良い。この時、その先端がR形状になっているので、その外側の広幅部分から切れたりして、抜きカスが発生したりしにくい。
さらに、ウェブコーナー片6の製品にはならない外側部分に、数mm飛び出した抜きシロ66を設けておくと、外形を抜く時に、抜きズレが発生しても、それをカバーすることができる。
【0015】
図3は、本発明における第一実施形態例のトレー容器1で、
図1のブランクを使用し、成形したトレー容器である。
図3-1が平面図で、
図3-2は側面図である。
フランジ近傍におけるウェブコーナー片6の重なり状態をA-A断面図として拡大横断面図を加えた。
また、底面板角部近傍のウェブコーナー部の拡大断面図をB-B断面図に示した。
【0016】
平面図に示すように、ウェブコーナー片6は隣り合う側面板や隣り合うフランジの隙間から内側に押し出され、傾斜側面板43の内面やフランジ5の上面に融着されている。
【0017】
ウェブコーナー片6の先端は底面板3に到達しておらず、間隔が空いている。この形状で成型することによって、成型後に底部付近にフィルムがあらわれ、穴が開いたような外観にはならない。
【0018】
図4は、本発明における第二実施形態例のトレー容器1用のブランク図である。このトレー容器に用いられる積層シートは、熱可塑性樹脂層を有し、紙を基材とした積層シートで、
図5に示す構成で製造される。
第二実施形態例では、ブランクは、積層シートを
図4の形状にビク刃で外形を抜き、ウェブコーナー片6と側面板4の境界に沿って、ウェブコーナー片6の先端近傍から底面板3に向かって罫線が形成されている。
【0019】
本発明のトレー容器は以上のようなものであるが、使用する基材層としては、坪量150g/m
2以上600g/m
2以下の紙を用いる。150g/m
2未満の場合、腰が無いので内容物を入れた時に形状を維持できにくい問題が発生する。また、坪量600g/m
2以上の紙を用いる場合、罫線等の加工に過大な力を必要とし、折り部分がずれやすい問題が発生するので、坪量150g/m
2以上600g/m
2以下の紙を用いることが好ましい。
さらに、基材に積層する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂など、互いに融着性の高い樹脂が使用できる。
さらに、
図5に示すように、基材層11と内側熱可塑性樹脂層12との間に、接着層15を介してバリア層13を含んだ構成であってもかまわない。
バリア層13としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド樹脂、などが使用できる。また、アルミニウムなどの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムに酸化珪素などの酸化金属やアルミニウムなどの金属を蒸着したものであってもかまわない。
これらは、タンデムエクストルーダーラミネート機を使用したり、ドライラミネーション機を使用して貼り合せたりして製造することができる。
【実施例0020】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
【0021】
<実施例1>
紙基材2として、カップ用原紙(坪量260g/m
2)を用意し、予め、
図2に示す第一実施形態例の形状に、抜いておいた。
この時、ウェブコーナー片6先端に設けたR形状はR1.5mmとした。
上記ウェブコーナーを抜いた原紙に対し、エクストルーダーラミネーション機を用い、内面側にポリプロピレン樹脂を60μmで押し出して積層し、積層シートを作成した。
ここで、ブランクは、積層シートを
図1の形状にビク刃で外形を抜き、ウェブコーナー片と傾斜側面板の境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けて罫線を設けた。
上記ブランクを用い、ウェブコーナー片を傾斜側面板の内面に融着して、トレー容器を得た。
【0022】
<実施例2>
ウェブコーナー片の先端の形状を2.0mmとした以外は実施例1の構成と同じとした。
【0023】
<実施例3>
ウェブコーナー片と側面板との境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板
に向けて罫線を設け、ウェブコーナー片と傾斜側面板の境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けて罫線を設けなかった以外は、実施例1と同じ構成とした。
【0024】
<実施例4>
ウェブコーナー片の先端のR形状を2.0mmとした以外は実施例3の構成と同じとした。
【0025】
<実施例5>
ウェブコーナー片の先端のR形状を1.0mmとした以外は実施例1の構成と同じとした。
【0026】
<実施例6>
ウェブコーナー片の先端のR形状を1.2mmとした以外は実施例1の構成と同じとした。
【0027】
<実施例7>
ウェブコーナー片と傾斜側面板との境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けて罫線を設け、ウェブコーナー片と側面板の境界に沿って、ウェブコーナー片の
先端近傍から底面板に向けて罫線を設けた以外は、実施例1と同じ構成とした。
【0028】
<実施例8>
ウェブコーナー片と傾斜側面板との境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けて罫線を設けず、ウェブコーナー片と側面板との境界に沿って、ウェブコーナー片の先端近傍から底面板に向けても罫線を設けなかった以外は、実施例1と同じ構成とした。
【0029】
<比較例1>
ウェブコーナー片を底面板との境界まで形成した以外は、実施例1と同じ構成とした。
【0030】
<評価方法>
各実施例、比較例を10個ずつ作成し、下記評価した。
製函後にトレー容器の外観を観察し、底面部付近にフィルムがあらわれず、穴が開いているように見えなかったものを「〇」、穴が開いているように見えてしまったものを「×」とした。
ウェブコーナー抜き片の混入の有無を、拡大鏡を使用した目視で観察した。抜き片の混入があったものを「有」、抜き片の混入がなかったものを「無」とした。
また、外観観察時にシワの発生の有無、割れの発生の有無も確認した。
【0031】
<評価結果>
ウェブコーナー抜き片の混入は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4,実施例7、実施例8,比較例1にはなかったが、実施例5、実施例6に抜き片の混入が確認された。この為、ウェブコーナー先端のR形状は1.5以上が好ましい。
製函時にシワ発生の有無、割れ発生の有無は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4,実施例7、比較例1では発生を確認できなかった。
しかし、実施例7の底面板角部近傍のウェブコーナー部4か所に割れの発生が確認でき、実施例8では、底面板角部近傍のウェブコーナー部4か所にシワ発生が確認した。
この為、ウェブコーナー先端Rから底面板角部への罫線は、側面板端辺に沿った罫線か、傾斜側面板端辺に沿った罫線のいずれか一方にのみ罫線を設ける事が好ましい。
また、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4,実施例5、実施例6,実施例7、実施例8においては、底面板角部近傍に穴が開いているように見えることはなかった。
しかし、比較例1では、穴が開いているように見えることが確認された。
この為、ウェブコーナー先端Rが底面板角部から離れた位置に離すことが好ましい。
上記結果を表1に示した。
【0032】
【0033】
本発明のトレー容器は、ウェブコーナーを、底面板角部近傍を除いて、基材を抜いた積層シートを使用し、隣り合う側面板端辺の一方だけに罫線を加工する。この時、ウェブコーナー先端をR形状とし、底面板角部から離した位置とすることによって、底に穴が開いているように見えなくなり、安心して使用されやすいトレー容器となる。
ウェブコーナーの形状を変えるだけで、トレー容器の外観上も良く、かつ、シワや割れの発生を防止でき、しかもそれが、ビク刃やプレスの型の変更だけで対応できるので、生産性も高く、製品価格も抑えた状態で対応できるなど、本発明のメリットは高い。