(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004757
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】接触式温度計
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20230110BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20230110BHJP
【FI】
G01K1/143
G01K7/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106648
(22)【出願日】2021-06-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000117814
【氏名又は名称】安立計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 生至郎
(72)【発明者】
【氏名】水門 裕介
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CA01
2F056CA15
(57)【要約】
【課題】接圧を低くしつつ、接触板の耐久性を向上する接触式温度計を提供する。
【解決手段】頭体10、接触板20、付勢部材30、および、温度検出素子40を備えた接触式温度計1において、頭体10はX方向に互いに離間してY方向に延びる第一支持ピン11および第二支持ピン12を有し、第一支持ピン11が第二支持ピン12よりも頭体10の先端側に配置されて第二支持ピン12よりも接触板20の測定対象物に接する面の反対側の面に近接し、接触板20は、X方向の一端部に形成されて、第一支持ピン11が遊びをもたない状態で挿入される第一支持用穴21と、他端部に形成されて、第一支持用穴21に比して少なくともZ方向の長さが長く、第二支持ピン12が遊びをもった状態で挿入される第二支持用穴22と、を有し、一端部が回転端となるとともに他端部が自由端となる支持構造により一端部を軸にしてZ方向に揺動可能に頭体10に支持される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭体の先端から突出して測定対象物に直に面接触する接触板と、この接触板を測定対象物の側に弾性的に付勢する付勢部材と、前記接触板の測定対象物に接触する面の反対側に配置されて、測定対象物の温度を電気信号に変換する温度検出素子とを備えた接触式温度計において、
前記頭体は前記接触板の長手方向に互いに離間して前記接触板の幅方向に延びる第一支持ピンおよび第二支持ピンを有し、前記第一支持ピンが前記第二支持ピンよりも前記頭体の先端側に配置されて前記第二支持ピンよりも前記接する面の反対側の面に近接する構成であり、
前記接触板は、その長手方向の一端部に形成されて、前記第一支持ピンが遊びをもたない状態で挿入される第一支持用穴と、他端部に形成されて、前記第一支持用穴に比して少なくとも前記接触板の板厚方向の長さが長く、前記第二支持ピンが遊びをもった状態で挿入される第二支持用穴と、を有し、前記一端部が回転端となるとともに前記他端部が自由端となる支持構造により前記一端部を軸にして前記前記接触板の板厚方向に揺動可能に前記頭体に支持されることを特徴とする接触式温度計。
【請求項2】
前記接触板が測定対象物に接しない状態で、前記第一支持ピンは前記反対側の面に接し、前記第二支持ピンは前記第二支持用穴の前記板厚方向の端部のうちの前記接触板から遠い方の端部に接する請求項1に記載の接触式温度計。
【請求項3】
前記付勢部材は前記接触する面の反対側の面に面接触する構成であり、
前記長手方向における前記付勢部材の面接触する部位の中心は前記第一支持ピンおよび前記第二支持ピンの中間地点よりも前記第二支持ピンの側に配置され、前記温度検出素子の感温部は前記中心よりも前記第二支持ピンの側に配置される請求項1または2に記載の接触式温度計。
【請求項4】
前記第一支持用穴は前記接触板の長手方向の一端部が折り返されて前記反対側の面に接合されて成る請求項1~3のいずれか1項に記載の接触式温度計。
【請求項5】
前記頭体の末端部に形成された支持体用挿入穴に先端部が挿入される支持体と、前記頭体の末端部および前記支持体の先端部のそれぞれに形成されて、前記支持体用挿入穴に前記支持体の先端部が挿入された状態で互いに前記接触板の幅方向に連通する複数の連結用穴と、それらの連結用穴に挿入される連結棒と、を備え、前記頭体は前記連結棒を軸にして前記接触板の長手方向に揺動可能に前記支持体に支持される請求項1~4のいずれか1項に記載の接触式温度計。
【請求項6】
前記接触板の幅方向において、前記支持体用挿入穴の幅は前記支持体の先端部の幅よりも広く、
前記支持体に形成された前記連結用穴の穴径は前記連結棒の直径よりも長く、前記連結棒は前記頭体に形成された前記連結用穴に遊びをもたない状態で挿入され、前記支持体に形成された前記連結用穴に遊びをもった状態で挿入され、前記頭体は前記支持体に形成された前記連結用穴と前記連結棒との間の遊びの分、前記接触板の幅方向に揺動可能に前記支持体に支持される請求項5に記載の接触式温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式温度計に関し、より詳細には、移動する測定対象物に直に接触してその測定対象物の温度を測定する接触式温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のシート状物の製造工程において移動する材料や製品に直に接触して温度を測定する接触式温度計が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】安立計器株式会社、S形シリーズ 高性能表面温度センサ、温度計測器総合カタログ、2020年2月発行、81頁~87頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動する測定対象物に直に接触する接触式温度計は、測定対象物に対する接圧が高くなると接触式温度計の接触板と測定対象物との間の摩擦力が高まり、摩擦熱が生じる。摩擦熱は測定対象物の温度の測定誤差の要因となっている。
【0005】
図7例示するように、非特許文献1に記載の接触式温度計100は、頭体101、接触板102、付勢部材103、および、温度検出素子104を備えて構成される。接触式温度計100は、第一支持ピン105および第二支持ピン106に対して第一支持用穴107および第二支持用穴108のそれぞれが遊びをもっており、接触板102が測定対象物に面接触するとZ方向に平行移動する構造である。
【0006】
接触式温度計100は、測定対象物に接触板102を接触させたときに接触板102がZ方向に平行移動することで、測定対象物に対する接圧が低くなる。これにより、接触板102および測定対象物の間の摩擦力を小さくするには有利になり、摩擦熱の発生を抑制することが可能となる。
【0007】
しかし、接触式温度計100は接触板102の接圧を低くするために接触板102をZ方向に平行移動させる構造であり、接触板102と第一支持ピン105および第二支持ピン106の間の離間距離が長くなっている。それ故、図中の点線で示すように、接触板102にX方向から予期せぬ力が掛かると接触板102が支持ピンを支点として変形するおそれがあった。
【0008】
本発明の課題は、接圧を低くしつつ、接触板の耐久性を向上する接触式温度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の接触式温度計は、頭体の先端から突出して測定対象物に直に面接触する接触板と、この接触板を測定対象物の側に弾性的に付勢する付勢部材と、前記接触板の測定対象物に接触する面の反対側に配置されて、測定対象物の温度を電気信号に変換する温度検出素子とを備えた接触式温度計において、前記頭体は前記接触板の長手方向に互いに離間して前記接触板の幅方向に延びる第一支持ピンおよび第二支持ピンを有し、前記第一支持ピンが前記第二支持ピンよりも前記頭体の先端側に配置されて前記第二支持ピンよりも前記接する面の反対側の面に近接する構成であり、前記接触板は、その長手方向の一端部に形成されて、前記第一支持ピンが遊びをもたない状態で挿入される第一支持用穴と、他端部に形成されて、前記第一支持用穴に比して少なくとも前記接触板の板厚方向の長さが長く、前記第二支持ピンが遊びをもった状態で挿入される第二支持用穴と、を有し、前記一端部が回転端となるとともに前記他端部が自由端となる支持構造により前記一端部を軸にして前記前記接触板の板厚方向に揺動可能に前記頭体に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、接触板の支持構造を一端部が回転端となり、他端部が自由端となる構造として、接触板が一端部を軸にして揺動可能になったことで、接触板を測定対象物に接触させる際の接圧を低くすることができる。また、本発明は、第一支持ピンと接触板との距離を近接させたことで、第一支持ピンを支点として接触板に作用する力のモーメントを抑えることができる。それ故、本発明によれば、接触板と測定対象物との間の摩擦力を低く抑えて、摩擦熱の発生を抑制しつつ、接触板を測定対象物に接触させたときに予期せぬ力が掛かっても、一端部における接触板の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の接触式温度計の実施形態を例示する斜視図である。
【
図2】
図1の接触式温度計の一つの先端側方ブロックを取り外し、接触板が測定対象物に接しない状態を例示する側面図である。
【
図3】
図1の接触板の支持用部材を例示する斜視図である。
【
図4】
図1の接触式温度計の一つの先端側方ブロックを取り外し、接触板が測定対象物に接した状態を例示する側面図である。
【
図5】
図1の末端ブロック、支持体、および、連結棒を分解した状態で例示する斜視図である。
【
図6】
図1の接触式温度計の一つの先端側方ブロックを取り外し、接触板が測定対象物に接した状態を例示する側面図である。
【
図7】周知技術の接触式温度計を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の接触式温度計の実施形態について説明する。図中において、X方向は接触式温度計1の接触板20の長手方向を、Y方向は接触板20の幅方向を、Z方向は接触板20の板厚方向を示す。なお、接触板20の板厚方向は接触板20と付勢部材30との接触部分における方向とする。また、
図1において、接触式温度計1の各部材における先端は図中の上方側であり、末端は図中の下方側であり、
図2において、接触式温度計1の各部材における先端は図中の下方側であり、末端は図中の上方側である。図中では、構成が分かり易いように寸法を変化させており、必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0013】
図1に例示するように、実施形態の接触式温度計1は頭体10の先端から突出した接触板20が付勢部材30により弾性的に付勢されて測定対象物に直に面接触し、温度検出素子40が接触板20および付勢部材30を介して伝達された熱を測定対象物の温度として電気信号に変換する。接触式温度計1は変換した電気信号が支持体50の末端から導出された図示しない信号線を介して測定装置に送られて、測定装置がその電気信号に基づいて測定対象物の温度を表示する。接触式温度計1と測定装置とは信号線を介して直に接続される構成に限定されず、接触式温度計1と測定装置とが無線信号でデータの授受が可能な構成でもよく、信号線を介さずに支持体50の末端に直に測定装置が接続されて一体化された構成でもよい。
【0014】
接触式温度計1は、頭体10、接触板20、付勢部材30、温度検出素子40、支持体50、および、連結棒60を備えて構成される。接触式温度計1は頭体10の先端側に接触板20および付勢部材30が配置され、頭体10の末端側に支持体50が配置される。接触式温度計1は先端側に接触板20のX方向の一端部を軸として接触板20をZ方向に揺動可能に頭体10に支持する支持構造と末端側に連結棒60を軸として頭体10をX方向に揺動可能に支持体50に支持する支持構造との二つの支持構造から成る。
【0015】
頭体10は、先端部にX方向に延在して先端側から末端側に向かって窪んだ溝が形成された直方体で構成され、直方体の先端部のX方向両端が面取りされる。頭体10は、先端中央ブロック10a、二つの先端側方ブロック10b、および、末端ブロック10cから成る。先端中央ブロック10aは、第一支持ピン11、第二支持ピン12、突出部13、収納部14、付勢用支持部15、および、
図1に図示しない素子用支持部16を有する。頭体10は先端中央ブロック10aのY方向両側方に先端側方ブロック10bのそれぞれが配置され、先端側方ブロック10bどうしの間に溝が形成される。頭体10は先端中央ブロック10aおよび二つの先端側方ブロック10bのそれぞれが末端ブロック10cにねじ固定されて成る。
【0016】
接触板20は頭体10の先端から突出するように頭体10に支持される。接触板20はX方向の一端部に第一支持ピン11が挿入される第一支持用穴21が形成され、他端部に第二支持ピン12が挿入される第二支持用穴22が形成される。接触板20は接触板本体23と支持用部材24とから成る。接触板本体23はY方向視で略L字形状を成し、一端部に第一支持用穴21が形成され、他端部に曲げ部25が形成される。支持用部材24はX方向視でコの字形状を成し、接触板本体23の測定対象物に接する面の反対側の面に接合され、互いにY方向に対向する片のそれぞれに第二支持用穴22が形成される。
【0017】
付勢部材30は接触板20よりも弾性に富む材料で構成され、接触板20の測定対象物に接する面の反対側の面に面接触し、Y方向視でΩ字形状のC環状部分が角丸長方形の形状を成す。付勢部材30は頭体10の収納部14に配置され、四つの支持ピンから成る付勢用支持部15に支持される。付勢部材30は接触板20が測定対象物に接したときに接触板20を測定対象物の側に弾性的に付勢する。
【0018】
温度検出素子40は先端側が付勢部材30の内周面に沿って配置され、末端側が頭体10および支持体50の内部を通過して、信号線となる。温度検出素子40としては、+極にクロメル、-極にアルメルを用いたタイプK、+極にクロメル、-極にコンスタンタンを用いたタイプE、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、-極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類がある熱電対が例示される。温度検出素子40は、
図1には図示しない異種金属からなる各々の素線41、42を接合して形成された感温部43が付勢部材30の接触板20に接する面の反対側の面に接合される。
【0019】
支持体50はZ方向に軸方向が向いた棒形状を成し、内部に温度検出素子40が配置される。支持体50は先端部が連結棒60により頭体10に連結される。連結棒60はY方向に軸方向が向いた円柱形状を成す。
【0020】
図2に例示するように、先端側の接触板20の支持構造は接触板20のX方向の一端部を回転端とするとともに他端部を自由端として、接触板20をZ方向に揺動可能に頭体10に支持する構造である。
【0021】
先端中央ブロック10aはX方向の一端部の突出部13の先端側に形成されたピン用挿入穴に第一支持ピン11が挿入され、X方向の他端部に形成されたピン用挿入穴に第二支持ピン12が挿入される。先端中央ブロック10aはX方向の中央部に配置された収納部14に付勢用支持部15と素子用支持部16が配置される。
【0022】
第一支持ピン11はY方向に延在する円柱を成す。第一支持ピン11は、接触式温度計1が組み立てられた状態で、頭体10の突出部13のピン用挿入穴と接触板20の第一支持用穴21との両方に遊びをもたない状態で挿入される。第一支持ピン11はZ方向において第二支持ピン12よりも先端側に配置される。第一支持ピン11は接触板20の測定対象物に接触する面20cの反対側の面に常時、接する。
【0023】
第二支持ピン12はY方向に延在する円柱を成す。第二支持ピン12は、接触式温度計1が組み立てられた状態で、頭体10のX方向の他端部に形成されたピン用挿入穴に遊びをもたない状態で挿入され、接触板20の第二支持用穴22に遊びをもった状態で挿入される。第二支持ピン12はZ方向において第一支持ピン11よりも末端側に配置され、接触板20が測定対象物に接しない状態で、後述する第二支持用穴22のZ方向の端部のうちの接触板20から遠い方の端部に接する。
【0024】
本開示において、遊びをもたない状態とはピンと穴との間に隙間や緩みがなく、穴に挿入されたピンが、あるいは、ピンが挿入された穴が、ピンの軸方向に直交する平面上で動かない状態を示す。この遊びをもたない状態は、構造的にピンと穴との間に完全に隙間や緩みをもたない状態を含むが、ピンが穴に挿入された状態で、誤差の範囲内において多少の隙間や緩みをもった状態も含むものとする。遊びをもった状態とはピンと穴との間に隙間や緩みがあり、穴に挿入されたピンが、あるいは、ピンが挿入された穴が、ピンの軸方向に直交する平面上でピンと穴とが接触しない範囲で動くことが可能な状態を示す。
【0025】
突出部13は先端中央ブロック10aのX方向の一端部に形成され、末端から先端に向かって先端中央ブロック10aの他の部位よりも突出して成る。突出部13は、その先端側であって、第二支持ピン12よりもZ方向先端側に第一支持ピン11が挿入されるピン用挿入穴が形成される。
【0026】
収納部14は先端中央ブロック10aのX方向の中央部に形成され、先端から末端に向かって貫通した穴で形成される。収納部14は付勢用支持部15と素子用支持部16とが配置される。収納部14は先端側の開口から付勢用支持部15に支持された付勢部材30と温度検出素子40の感温部43を含む部位が突出し、末端側の開口から素子用支持部16に支持された温度検出素子40の素線41、42が導出される。
【0027】
付勢用支持部15はY方向に延在する四つの支持ピンから成る。付勢用支持部15の各々の支持ピンは、付勢部材30の角丸長方形の末端側の内側角のそれぞれに二つ配置され、Ω字形状の内側に凸の屈曲部の外側角のそれぞれに二つ配置される。付勢用支持部15は四つの支持ピンにより、付勢部材30の両端部を自由な状態で、付勢部材30を頭体10に非固定支持する。
【0028】
素子用支持部16はY方向に延在する複数の支持ピンおよび温度検出素子40の短絡を防止する短絡防止部材から成る。素子用支持部16は温度検出素子40を支持体50に導くとともに温度検出素子40の素線41、42どうしの短絡を防止する構成であればよく、本実施形態の構成に限定されない。
【0029】
先端側方ブロック10bは先端中央ブロック10aのY方向側方に配置され、先端中央ブロック10aのそれぞれのピン用挿入穴に挿入された第一支持ピン11および第二支持ピン12の抜け止めとして機能する。先端側方ブロック10bは接触板20が測定対象物に押し付けられて大きくZ方向に傾いた場合にその先端面が測定対象物に面接触して、接触板20、付勢部材30、および、温度検出素子40を保護するように機能する。先端側方ブロック10bの先端は先端中央ブロック10aの突出部13以外の部位よりも先端側に位置し、接触式温度計1が組み立てられた状態で、二つの先端側方ブロック10bの間に溝が形成される。先端側方ブロック10bの先端面は突出部13の先端よりも先端側に配置されてもよい。
【0030】
接触板20の第一支持用穴21はY方向視で略円形状を成し、第一支持ピン11が遊びをもたない状態で挿入される。第一支持用穴21は接触板本体23のX方向の一端部が末端側に折り返されて、接触板本体23の測定対象物に接する面の反対側の面に接合されて成る。第一支持用穴21は常時、接触板20の測定対象物に接する面の反対側の面に接する。折り返された接触板本体23の一端部は第一支持用穴21から離間した位置で反対側の面に接合される。
【0031】
第二支持用穴22は第二支持ピン12よりも大きく、Z方向の長さが第一支持ピン11と第二支持ピン12とのZ方向の離間距離以上の長さであり、X方向の幅が第二支持ピン12の直径よりも広い。第二支持用穴22は接触板20が測定対象物に接しない状態で第二支持ピン12が第二支持用穴22のZ方向の端部のうちの接触板20から遠い方の端部に接することが望ましい。第二支持用穴22はZ方向末端側から先端側に向かってX方向の幅が徐々に狭くなる形状が望ましい。第二支持用穴22は支持用部材24に形成される。
【0032】
図3に例示するように、支持用部材24はX方向視でコの字形状を成し、互いにY方向に対向する一対の支持片26とそれらの支持片26どうしを連結する連結片27とから成る。一対の支持片26のそれぞれには第二支持用穴22が形成される。支持用部材24は連結片27が接触板本体23の測定対象物に接する面の反対側の面に接合される。
【0033】
図2に例示するように、組み立てられた接触式温度計1において、付勢部材30の接触板20に面接触する部位の中心地点P1は頭体10が支持体50に対して傾いていない状態で、連結棒60の中心を通るZ方向の軸線上に配置される。付勢部材30のY方向視の形状はZ方向の軸線を対称の軸として線対称である。温度検出素子40の付勢部材30の沿った部分の形状は、Z方向の軸線を対称の軸として線対称である。温度検出素子40の感温部43は中心地点P1から第二支持ピン12の側に配置される。X方向において第一支持ピン11と中心地点P1との間の距離は第二支持ピン12と中心地点P1との間の距離よりも長く、第一支持ピン11および第二支持ピン12の中間地点P2は中心地点P1よりも第一支持ピン11の側に配置される。接触式温度計1は、X方向において、一端部から他端部に向かって順に中間地点P2、中心地点P1、および、感温部43が配置される。
【0034】
接触板20は、接触板20が測定対象物に接せずに第二支持ピン12が第二支持用穴22のZ方向末端側の端部に接した状態で、先端側方ブロック10bの先端から突出する。接触板20は、前述の状態で付勢部材30によりZ方向末端側から先端側に向かって付勢されており、測定対象物に接する面がZ方向先端側に向かって凸の曲面を成す。
【0035】
図4に例示するように、X方向に移動する測定対象物2の温度を接触式温度計1により測定する場合に、測定者は支持体50の把手を持ち、測定対象物2に接触板20を押し当てる。なお、測定対象物2は図中のX方向右側から左側に移動するシート状物である。また、接触式温度計1は図中のX方向右側に第一支持ピン11が配置され、X方向左側に第二支持ピン12が配置されるように使用される。
【0036】
接触式温度計1は頭体10に揺動可能に支持された接触板20が測定対象物2に押し当てられると、その接触板20がそのX方向の一端部を軸として他端部がZ方向末端側に移動する。加えて、接触板20が付勢部材30によりZ方向先端側に付勢される。それ故、接触式温度計1は接触板20が長さL1の部位が測定対象物2に面接触し、その面接触する部位の中心に温度検出素子40の感温部43が位置する。なお、長さL1は温度検出素子40のZ方向の厚さの20倍以上であることが望ましい。このように、接触式温度計1によれば、測定対象物2の温度を測定する際に測定対象物2から接触板20を介して温度検出素子40に熱が十分に伝わって温度検出素子40が十分に均熱される。これにより、測定対象物2の温度を高精度に測定できる。
【0037】
頭体10に組み付けられる前の接触板20は接触板本体23が長さL1の部位が平坦となる形状を成す。接触板20は、頭体10に組み付けられると
図2に例示するように付勢部材30による測定対象物に接する面がZ方向先端側に向かって凸の曲面を成し、測定対象物2に押し当てられることで長さL1の部位が平坦を成し、本来の形状に戻る構造である。
【0038】
接触式温度計1は接触板20の支持構造を一端部が回転端となり、他端部が自由端となる構造として、接触板20が一端部を軸にして揺動可能になったことで、接触板20を測定対象物2に接触させる際の接圧を低くすることができる。それ故、接触式温度計1によれば、測定対象物2に接触板20を押し当てても、接触板20と測定対象物2との間に生じる摩擦力を低く押させることができる。これにより、摩擦熱の発生を抑制するには有利になり、測定対象物2の温度を高精度に測定できる。
【0039】
接触式温度計1は第一支持ピン11と接触板20との距離を近接させたことで、測定対象物2の温度を測定する際に、第一支持ピン11を支点として接触板20に作用する力のモーメントを抑えることができる。それ故、接触式温度計1によれば、接触板20を測定対象物2に接触させたときに予期せぬ力が掛かっても、接触板20の一端部における変形を抑制することができる。これにより、接触式温度計1の耐久性を向上するには有利になり、接触式温度計1の交換頻度を少なくできる。
【0040】
接触式温度計1は第一支持ピン11と第二支持ピン12のそれぞれのZ方向の位置が同位置でもよい。その場合に、第一支持ピン11と接触板20との間の距離が離れることで、第一支持ピン11を支点として接触板20に作用するモーメントが大きくなる可能性がある。また、第二支持用穴22がZ方向末端側に長くなり、接触板20が測定対象物2に接しない状態で、接触板20の第一支持用穴21および第二支持用穴22の間の部位が実施形態に比してより斜めの状態となる。それ故、付勢部材30のY方向視の形状がZ方向の軸線を対称の軸として非線対称となり、第一支持ピン11と第二支持ピン12のそれぞれのZ方向の位置が同位置の構成で接触板20を測定対象物2に押し当てると、付勢部材30から接触板20に作用する付勢力が不均一になる可能性がある。そこで、接触式温度計1は、接触板20が測定対象物2に接しない状態で、第一支持ピン11が接触板20の測定対象物2に接する面の反対側の面に接し、第二支持ピン12が第二支持用穴22のZ方向の端部のうちの接触板20から遠い方の端部に接することが望ましい。これにより、第一支持ピン11と接触板20との間の距離を極力近接させ、第一支持ピン11を支点として接触板20に作用するモーメントの抑制には有利になる。また、付勢部材30のY方向視の形状が線対称となり、接触板20に作用する付勢力が均一になる。
【0041】
接触式温度計1は温度検出素子40の感温部43が付勢部材30の中心地点P1に配置されてもよく、第一支持ピン11および第二支持ピン12のX方向の中間地点P2が付勢部材30の中心地点P1に配置されてもよい。この場合に、接触板20の測定対象物2に面接触する部位の中心から外れた箇所に感温部43が配置されることになり、測定精度が低くなる可能性がある。また、接触板20の測定対象物2に面接触するX方向の長さが短くなり、接圧が高くなる可能性がある。そこで、接触式温度計1はX方向における付勢部材30の面接触する部位の中心地点P1は第一支持ピン11および第二支持ピン12の中間地点P2よりも第二支持ピン12の側に配置され、温度検出素子40の感温部43は中心地点P1よりも第二支持ピン12の側に配置されることが望ましい。これにより、接触板20の測定対象物2に接する面の長さを確保することができ、接圧を低く抑えるには有利になる。また、接触板20が測定対象物2に面接触する部位の中心に感温部43が配置されることで、測定精度の向上には有利になる。
【0042】
接触式温度計1は接触板20の第一支持用穴21が第二支持用穴22のように接触板本体23と別体の部材に形成されてもよい。この場合に、接触板20に測定対象物2からX方向の力が作用した接触板本体23と第一支持ピン11により支持される別体の部材との接合が解除される可能性がある。そこで、接触式温度計1は接触板20の第一支持用穴21が接触板本体23のX方向の一端部が折り返されて接触板本体23の測定対象物2に接する面の反対側の面に接合されて成ることが望ましい。これにより、接触板20に測定対象物2からX方向の力が作用しても、接触板本体23の折り返された部分が引っ張られるだけになり、耐久性の向上には有利になる。
【0043】
接触式温度計1は折り返された接触板本体23の一端部の接合部分が第一支持用穴21からの離間距離が長いほど好ましい。接触板20に対してX方向右側から左側への力が作用したときにその離間距離が長くなるほど折り返された接触板本体23の一端部のZ方向に掛かる力の作用が小さくなり、X方向に掛かる力の作用が大きくなる。それ故、接合が解除され難くなり、耐久性の向上に有利になる。
【0044】
接触式温度計1は付勢部材30が付勢用支持部15により両端部を自由な状態で頭体10に非固定支持されることが好ましい。このように構成することで、接触板20を測定対象物に押圧したときに、付勢部材30が非固定で支持されている状態のために接触板20が傾斜面になってもストレスが掛からずに弾性変形可能となる。その結果、その弾性力で接触板20を測定対象物の側に付勢して接触板20と測定対象物との面接触を維持でき、耐久性と測定精度の向上に有利になる。
【0045】
図2に例示するように、末端側の頭体10の支持構造は連結棒60を軸にして頭体10をX方向に揺動可能に支持体50に支持する構造である。また、頭体10の支持構造は支持体50の支持体用連結穴55と連結棒60との間の遊びの分、頭体10をY方向に揺動可能に支持体50に支持する構造である。
【0046】
図5に例示するように、末端ブロック10cは、支持体用挿入穴17、連通穴18、および、二つの頭体用連結穴19を有する。末端ブロック10cは図示しないネジ穴を有する。
【0047】
支持体用挿入穴17は末端ブロック10cの末端の中央部に配置され、末端から先端に向かって連通穴18まで刳り貫かれた穴で構成される。支持体用挿入穴17はZ方向視でX方向に長手方向が向いた長穴である。支持体用挿入穴17のX方向の長さは、支持体50の連結体51のX方向の長さよりも長い。支持体用挿入穴17のX方向の長さは頭体10が支持体50の軸方向であるZ方向からX方向に向かって4°~20°の範囲で傾くことが可能な長さであることが望ましい。支持体用挿入穴17のY方向の幅は支持体50の連結体51のY方向の幅よりも広い長い。支持体用挿入穴17のYの幅は頭体10が支持体50の軸方向であるZ方向からY方向に向かって2°~10°の範囲で傾くことが可能な幅であることが望ましい。
【0048】
連通穴18はZ方向に延在して収納部14と支持体用挿入穴17とを連通する。連通穴18は温度検出素子40の素線41、42が通ればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、連通穴18を二つ配置して、それぞれに素線41、42を通す構成でもよい。
【0049】
二つの頭体用連結穴19のそれぞれはY方向に延在して末端ブロック10cを貫通し、Y方向視で円形状を成す。二つの頭体用連結穴19のそれぞれは支持体用挿入穴17を介して互いにY方向に対向して配置される。二つの頭体用連結穴19の直径は連結棒60の直径と略同一であり、二つの頭体用連結穴19は連結棒60が遊びをもたない状態で挿入される。
【0050】
支持体50は、連結体51、支持体本体52、および、図示しない把手から成り、支持体本体52の先端部に連結体51が固定され、支持体本体52の末端部に測定者が把持する把手が固定される。支持体50の末端から図示しない信号線が導出される。
【0051】
連結体51は挿入部53、本体用挿入穴54、支持体用連結穴55、素線用挿入穴56、および、制限部57を有する。連結体51は円柱を切削して先端側に挿入部53が形成され、末端に本体用挿入穴54が形成される。
【0052】
挿入部53は先端側の角が面取りされ、Y方向視で矩形の先端側の角が面取りされた六角形状を成す。挿入部53は先端側の角が面取りされることで、頭体10が連結棒60を軸に揺動したときに、支持体用挿入穴17の底との衝突が回避され、揺動角が大きくなる。本体用挿入穴54は連結体51の末端から先端に向かって窪んで成り、支持体本体52の先端部が挿入され、ネジ止めにより支持体本体52と連結固定される。
【0053】
支持体用連結穴55は挿入部53をY方向に貫通し、挿入部53が支持体用挿入穴17に挿入されたときに二つの頭体用連結穴19と連通する。支持体用連結穴55は、その穴径が連結棒60の直径よりも長く、連結棒60が遊びをもった状態で挿入される。支持体用連結穴55の穴径は頭体10が支持体50の軸方向であるZ方向からY方向に向かって2°~10°の範囲で傾くことが可能な穴径であることが望ましい。
【0054】
素線用挿入穴56は挿入部53をZ方向に貫通し、本体用挿入穴54に連通する。素線用挿入穴56は素線41、42ごとに形成され、素線用挿入穴56どうしの間に支持体用連結穴55が形成される。制限部57はZ方向視でその外周が円形状を成す。制限部57は、頭体10がX方向またはY方向に揺動したときに、先端面が末端ブロック10cの末端面と接触する。制限部57の先端面が末端ブロック10cの末端面と接触することで、頭体10の揺動が制限される。
【0055】
支持体本体52は円筒を成す。支持体本体52はその内部に温度検出素子40の素線41、42が被覆材で被覆された信号線が配置される。
【0056】
図6に例示するように、X方向に移動する測定対象物2の温度を接触式温度計1により測定する場合に、測定者は支持体50の把手を持ち、測定対象物2に接触板20を押し当てる。
【0057】
接触式温度計1は頭体10が支持体50に対してX方向およびY方向に揺動可能に支持されることで、支持体50がZ方向に対して傾いた状態になっていても、頭体10は自重により支持体50に対して傾き、測定対象物2に対して接触板20が面接触する。これにより、接触板20と測定対象物2との片当たりを回避するには有利になり、接触板20が測定対象物2と十分に面接触できる。その結果、測定精度の低下を回避することができる。
【0058】
図4に例示した状態でX方向の力やY方向の力が接触板20に作用した場合に、接触板20はそれらの力を受け流すことができない。それ故、接触板20と測定対象物2の接触部分に強い力が掛かることになり、接触板20がその力を逃そうとしてZ方向先端側から末端側に向かって凸の弧状に歪む可能性がある。なお、本開示において接触板20に作用するX方向の力やY方向の力は測定者の接触式温度計1を測定対象物2に押圧する力と測定対象物2の移動する力のいずれかが例示される。
【0059】
図6に例示するように、接触式温度計1は接触板20にX方向の力が作用した場合に、頭体10が連結棒60を軸にして支持体50に対して傾くように動く。それ故、接触板20に作用する力を受け流すことができる。これにより、接触板20の一端部と測定対象物2の接触部分に強い力が掛かり、接触板20の歪みによる測定精度の低下を回避することができる。
【0060】
図6では、X方向の左側から右側に向かって接触板20に力が作用した場合を例示する。この場合に、頭体10は接触板20に作用する力を受け流すように支持体50に対してX方向右側に傾く。図示しないが、X方向の右側から左側に向かって接触板20に力が作用した場合に、頭体10はその力を受け流すように支持体50に対してX方向左側に傾く。同様に、Y方向に接触板20に力が作用した場合に、頭体10はその力を受け流すように支持体50に対してY方向に傾く。
【0061】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の接触式温度計1は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0062】
接触式温度計1は先端側の接触板20を頭体10に支持する構造と末端側の頭体10を支持体50に支持する構造との二つの支持構造を有するものに限定されない。接触式温度計1は二つの支持構造のうちの先端側の接触板20を頭体10に支持する構造のみを備えた構成としてもよい。
【0063】
頭体10は四つのブロックのうちのいくつかが一体的に構成されていてもよい。例えば、二つの先端側方ブロック10bと末端ブロック10cが一体化した一つのブロックで構成されてもよい。また、頭体10は四つのブロックに限定されず、第一支持ピン11および第二支持ピン12が先端中央ブロック10aのピン用挿入穴から抜けない構造であれば先端側方ブロック10bがなく、先端中央ブロック10aおよび末端ブロック10cのみで構成されてもよい。なお、第一支持ピン11および第二支持ピン12が先端中央ブロック10aのピン用挿入穴から抜けない構造であっても、先端側方ブロック10bを接触板20、付勢部材30、および、温度検出素子40の保護機能を目的として備えてもよい。
【0064】
接触板20はY方向視でL字形状に限定されず、X方向の他端部に曲げ部25が形成されていなくてもよい。接触板20の他端部に曲げ部25が形成されることで、接触板20を測定対象物2に押し当てたときに、
図4において接触板20の他端部が図中の右側に配置され、一端部が図中の左側に配置された場合に、曲げ部25により測定対象物2との引っ掛かりが回避される。また、曲げ部25が形成されることで、接触式温度計1を使用する向きを確認でき、誤った向きで接触式温度計1が使用されることを回避するにも有利になる。
【0065】
付勢部材30は接触板20を先端側に弾性的に付勢する構成であればよく、実施形態の構成に限定されない。例えば、付勢部材30は複数のスプリングばねで構成されてもよい。温度検出素子40は熱電対の代わりに測温抵抗体を用いてもよい。また、温度検出素子40は付勢部材30の接触板20に面接触する面や接触板20の測定対象物2に接する面の反対側の面に配置されてもよい。
【0066】
連結棒60は支持体50の支持体用連結穴55に遊びをもった状態で挿入されてもよい。これにより、頭体10は支持体50に対してY方向にも揺動可能となり、接触板20の片当たりを回避するには有利になる。この場合に、末端ブロック10cの支持体用挿入穴17のY方向の幅は支持体50の挿入部53のY方向の幅よりも大きくする必要がある。
【符号の説明】
【0067】
1 接触式温度計
10 頭体
11 第一支持ピン
12 第二支持ピン
20 接触板
21 第一支持用穴
22 第二支持用穴
30 付勢部材
40 温度検出素子
50 支持体
60 連結棒