(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047575
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ホースカー昇降装置
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20230330BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20230330BHJP
B60P 3/07 20060101ALI20230330BHJP
B60P 3/071 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A62C27/00 508
A62C33/00 B
B60P3/07 Z
B60P3/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156553
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】川口 直人
(72)【発明者】
【氏名】石田 朗
(72)【発明者】
【氏名】中谷 将
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AB05
2E189AE01
(57)【要約】
【課題】消防車の車体を特別仕様にする必要がなく、また、車体を大きく改造する必要がなく、車体に簡単に取り付けることができ、しかも、車体への取り付け位置の選択自由度があるホースカー昇降装置を提供する。
【解決手段】ホースカー昇降装置1は、車体の後部デッキに取り付けられるベース部材1aと、ベース部材1aの左右の両側部にそれぞれ回動可能に取り付けられ、前後方向に回動可能な左右一対のアーム部材1bと、ベース部材1aに取り付けられ、その作動時に一対のアーム部材1bを駆動して前後方向に回動させる電動油圧シリンダ1cと、電動油圧シリンダ1cの駆動力をアーム部材1bに伝達するリンク機構1eと、デッキ部1fとを主要な要素として構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防用ホースを積載する本体と、前記本体の底面部の側に設けられた車輪とを有するホースカーを、消防車に対して積み降ろしするためのホースカー昇降装置において、
消防車の車体における前記ホースカーの積み込み位置に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材に回動可能に取り付けられ、前記車体に対して接近及び離反する方向に回動可能であると共に、前記ホースカーの本体に設けられた係合部と係合可能な係合部を有するアーム部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、その作動時に前記アーム部材を駆動して前記方向に回動させるアクチュエータと、を備え、
前記アーム部材の係合部が前記ホースカーの本体の係合部に係合した状態で、前記アクチュエータの作動により前記アーム部材が回動し、前記ホースカーを、前記ホースカーの前記車輪が前記車体の周囲の地面に接地可能な降ろし位置と、前記ホースカーの本体の一側面部が前記ベース部材の上方に位置する積み込み位置との間で移動させることを特徴とするホースカー昇降装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、基体と、該基体に対して伸縮移動可能なロッドとを含むシリンダである請求項1に記載のホースカー昇降装置。
【請求項3】
前記シリンダのロッドの伸縮移動による駆動力がリンク機構を介して前記アーム部材に伝達される請求項2に記載のホースカー昇降装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記ベース部材に回動可能に連結されたメインリンクと、前記メインリンクと前記アーム部材に回動可能に連結されたリンクアームとを含む請求項3に記載のホースカー昇降装置。
【請求項5】
前記アーム部材は、前記ベース部材の両側部にそれぞれ回動可能に取り付けられた一対のアーム部材からなり、該一対のアーム部材に対応して、一対の前記リンク機構が前記ベース部材の両側部にそれぞれ設けられ、前記一対のリンク機構のメインリンクが連結軸で相互に連結されると共に、前記シリンダのロッドが前記連結軸に回動可能に取り付けられている請求項4に記載のホースカー昇降装置。
【請求項6】
前記シリンダは、前記ロッドが最大限収縮した状態で、その全長が、前記ベース部材の最大奥行寸法の範囲に収まる請求項2から5の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【請求項7】
前記シリンダは、前記ロッドが最大限伸長した状態で、その全長が、前記ベース部材の最大奥行寸法の範囲に収まる請求項2から5の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【請求項8】
前記シリンダは、電動シリンダ又は電動油圧シリンダである請求項2から7の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【請求項9】
前記アクチュエータの制御装置が前記ベース部材に搭載されている請求項1から8の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【請求項10】
デッキ部を更に備え、該デッキ部は、前記シリンダを含む部位を上方から覆うように配置され、前記連結軸に回動可能に取り付けられたデッキ板と、該デッキ板と前記ベース部材にそれぞれ回動可能に連結された平行リンクとを含む請求項5から9の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【請求項11】
前記一対のアーム部材に横架されたステップ部材を更に備え、該ステップ部材は、前記一対のアーム部材が前記降ろし位置まで回動した状態で、前記デッキ板よりも低位の位置に位置し、前記デッキ板に搭乗するためのステップとなる請求項10に記載のホースカー昇降装置。
【請求項12】
前記一対のアーム部材は平面部を有し、前記一対のアーム部材が前記積み込み位置まで回動した状態で、前記平面部は前記デッキ板と面一になる請求項10又は11に記載のホースカー昇降装置。
【請求項13】
前記ホースカーの係合部は、前記本体の側面部の上部に設けられたフックを含み、前記アーム部材の係合部は、該アーム部材の先端部に設けられた係合ピンを含み、前記フックは、前記係合ピンに下方側から係合可能な形状を有する請求項1から12の何れか1項に記載のホースカー昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用ホースを積載したホースカーを消防車に対して積み降ろしするホースカー昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ホースカーは、消防用ホースを積載するボックス状の本体と、本体の底面部の側に設けられた左右一対の車輪と、本体の前方又は後方の側面部の側に回動可能に取り付けられた引き手とを主要な要素として構成され、消防用ホースを積載した状態で消防車に搭載される。消防車が火災現場に到着すると、ホースカーは消防車から降ろされ、降ろされた後は、消火作業者が引き手を操作し、ホースカーを車輪で走行させながら消火作業位置まで移動させて消火作業を行う。そして、消火作業が終わると、ホースカーは消防用ホースを積載した状態で消防車に積み込まれる。このような消防車に対するホースカーの積み降ろし作業を、人力に頼らず、効率的かつ安全に行うために、下記の特許文献1に記載されているようなホースカー昇降装置が提案されている。
【0003】
特許文献1のホースカー昇降装置は、ホースカーの積み降ろし動作を行う昇降機構(座面部材11、第1のシャフト部材12、アーム部材13、第2のシャフト部材14、支持部材15等で構成)と、昇降機構を駆動する駆動手段(油圧リンダ18A及びその油圧系統)とで構成され、昇降機構は車体後部のステップ台102に取り付けられ(
図2、
図3を参照)、駆動手段は昇降機構とは別に車体側に設置されている(
図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のホースカー昇降装置は、昇降機構を駆動する駆動手段を、昇降機構とは別に車体側に設置するため、車体は、駆動手段を設置できるように特別仕様にするか、あるいは、ホースカー昇降装置を搭載しない消防車の車体を利用する場合は、駆動手段を設置できるように車体を大きく改造する必要がある。また、駆動手段の車体への設置作業、昇降機構の車体への取り付け作業、駆動手段と昇降機構との連結作業を別々に行う必要があり、作業が煩雑である。さらに、昇降機構の取り付け位置は、駆動手段の設置レイアウトとの関係上、車体後部に限定される。
【0006】
本発明の課題は、消防車の車体を特別仕様にする必要がなく、また、車体を大きく改造する必要がなく、車体に簡単に取り付けることができ、しかも、車体への取り付け位置の選択自由度があるホースカー昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、消防用ホースを積載する本体と、前記本体の底面部の側に設けられた車輪とを有するホースカーを、消防車に対して積み降ろしするためのホースカー昇降装置において、消防車の車体における前記ホースカーの積み込み位置に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に回動可能に取り付けられ、前記車体に対して接近及び離反する方向に回動可能であると共に、前記ホースカーの本体に設けられた係合部と係合可能な係合部を有するアーム部材と、前記ベース部材に取り付けられ、その作動時に前記アーム部材を駆動して前記方向に回動させるアクチュエータとを備え、前記アーム部材の係合部が前記ホースカーの本体の係合部に係合した状態で、前記アクチュエータの作動により前記アーム部材が回動し、前記ホースカーを、前記ホースカーの前記車輪が前記車体の周囲の地面に接地可能な降ろし位置と、前記ホースカーの本体の一側面部が前記ベース部材の上方に位置する積み込み位置との間で移動させることを特徴とするホースカー昇降装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消防車の車体を特別仕様にする必要がなく、また、車体を大きく改造する必要がなく、車体に簡単に取り付けることができ、しかも、車体への取り付け位置の選択自由度があるホースカー昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】降ろし位置に在るホースカー昇降装置とホースカーを斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】積み込み位置に在るホースカー昇降装置とホースカーを斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】降ろし位置に在るホースカー昇降装置とホースカーを斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】降ろし位置におけるホースカー昇降装置を斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】降ろし位置におけるホースカー昇降装置を上方から見た平面図(一部透視)である。
【
図6】積み込み位置におけるホースカー昇降装置を上方から見た平面図である。
【
図10】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である(降ろし位置)。
【
図11】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である。
【
図12】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である。
【
図13】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である。
【
図14】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である。
【
図15】ホースカー昇降装置によるホースカーの積み降ろし動作を示す側面図(一部断面)である(積み込み位置)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、この実施形態のホースカー昇降装置1は、ポンプ車等の消防車の車体3におけるホースカー2の積み込み位置、例えば車体3の後部デッキ(後部ステップ)3aの所定位置に取り付けられ、ホースカー2を、
図1に示す降ろし位置P1と
図2に示す積み込み位置P2との間で移動させることができる。以下、車体3に接近する方向を前方、車体3から離反する方向を後方、前後方向と直交する方向を左右方向として説明を進める。
【0012】
図3は、降ろし位置P1に在るホースカー昇降装置1とホースカー2を斜め前方から見た状態を示している。ホースカー2は、周知のように、消防用ホース(図示省略)を積載するボックス状の本体2aと、本体2aの底面部2a1の側に設けられた左右一対の車輪2bと、本体2aの後方側面部2a2の上部にヒンジ2c1を介して回動可能に取り付けられた引き手2cとを主要な要素として構成される。同図に示す状態では、引き手2cはヒンジ2c1を支点として前方に回動して、本体2aの上面部2a3に重なるように畳まれている。ホースカー2を移動させるときは、ヒンジ2c1を支点として引き手2cを後方側に回動させて、本体2aの後方に伸ばし、取手2c2を掴んで引き手2cを操作する。また、車輪2bは、ヒンジ2b1を支点として回動させることにより、底面部2a1の側に畳むことができる(
図2を参照)。
【0013】
本体2aの前方側面部2a4の両側部には、それぞれ、第1フック2a5と第2フック2a6が設けられている。第1フック2a5は、前方側面部2a4の側部の上部に設けられ、後述するアーム部材1bの先端部に設けられた第1係合ピン1b2と係合可能である。
図3の2点鎖線円内(C部の拡大側面)に示すように、第1フック2a5は、上方に開いた形状を有し、アーム部材1bの第1係合ピン1b2に下方側から係合可能である。第2フック2a6は、前方側面部2a4の側部の下部に設けられ、アーム部材1bの基端部に設けられた第2係合ピン1b3と係合可能である。第1フック2a6は、前方に開いた形状を有し、アーム部材1bの第2係合ピン1b3に後方側から係合可能である。
【0014】
図4と
図5は、降ろし位置P1におけるホースカー昇降装置1の状態を示しており、
図4は、ホースカー昇降装置1を斜め前方から見た斜視図、
図5は、ホースカー昇降装置1を、上方から見た平面図(一部透視:デッキ板1f1を透視)である。また、
図6と
図7は、積み込み位置P2におけるホースカー昇降装置1の状態を示しており、
図6は、ホースカー昇降装置1を上方から見た平面図、
図7は、その一部透視図(デッキ板1f1を透視)である。
図8は、
図5~
図7の(A-A)線に沿った断面図、
図9は、
図5~
図7の(B-B)線に沿った断面図である。
【0015】
この実施形態において、ホースカー昇降装置1は、車体3の後部デッキ3aに取り付けられるベース部材1aと、ベース部材1aの左右の両側部にそれぞれ回動可能に取り付けられ、前後方向に回動可能な左右一対のアーム部材1bと、ベース部材1aに取り付けられ、その作動時に一対のアーム部材1bを駆動して前後方向に回動させるアクチュエータ、例えば電動油圧シリンダ1cと、電動油圧シリンダ1cの駆動力をアーム部材1bに伝達するリンク機構1eと、デッキ部1fとを主要な要素として構成される。
【0016】
ベース部材1aは、平面視で矩形状を呈する板状の主部1a5と、主部1a5の両側部に固定されたリブ状の取付け部1a6とを主要な要素として構成される。主部1a5は、車体3の後部デッキ3aの所定位置(ホースカー2の積み込み位置)にボルト・ナットや溶接等の適宜の固定手段で取り付けられ、取付け部1a6には、後述するアーム部材1b等が取付けられる。主部1a5の前後方向の寸法{奥行寸法:
図9(b)にL1で示す寸法}は、ホースカー2の本体2aの高さ寸法以下に設定され、主部1a5の左右方向の寸法{幅寸法:
図6にWで示す寸法}は、ホースカー2の本体2aの左右方向の寸法(幅寸法)以下に設定されている。そのため、この実施形態のホースカー昇降装置1は、取り付けに必要なスペースが少なくて済み、ホースカー2を積み込むスペースが確保できれば、車体3に搭載可能である。
【0017】
各アーム部材1bは、その基端部がベース部材1aの取り付け部1a6の後端部に回動ピン1b1で回動可能に取り付けられ、回動ピン1b1を支点として前後方向に回動可能である。各アーム部材1bの先端部と基端部には、上述した第1係合ピン1b2と第2係合ピン1b3が設けられている。また、各アーム部材1bの後部には、片状の平面板1b4が取付けられている。さらに、一対のアーム部材1bにステップ部材1b5が横架されている。
【0018】
この実施形態の電動油圧シリンダ1cは、DCモータ等の駆動用モータ、油圧ポンプ及びオイルタンクを含むポンプユニット1c1と、油圧シリンダ1c2とが一体化された電動油圧機器である。
図5及び
図7に示すように、電動油圧シリンダ1cの油圧シリンダ1c2は、その基体(シリンダチューブ)1c21を前方、ロッド1c22を後方に向けた状態で、ベース部材1aの主部1a5の左右方向のほぼ中央部に配置される。油圧シリンダ1c2の一方の側方には、ポンプユニット1c1が位置し、油圧シリンダ1c2の他方の側方には、電動油圧シリンダ1cを制御する制御装置1c3が配置され、主部1a5に取り付けられている。油圧シリンダ1c2の基体1c21の基端部は、主部1a5の前端部に設けられたブラケット1a1に前後方向に回動可能にピン接合され、ロッド1c22の先端部は、後述する連結軸1e3に設けられたブラケット1e31に前後方向に回動可能にピン接合される。
図9(b)に示すように、油圧シリンダ1c2のロッド1c22が最大限伸長した状態で、電動油圧シリンダ1cの全長は、ベース部材1aの前後方向の最大寸法(最大奥行寸法:
図9(b)にL2で示す寸法)の範囲に収まる。電動油圧シリンダ1c及び制御装置1c3の作動電源(直流電源等)は、消防車の電気系統から取るか、別置きの電源(蓄電池等)から取る。
【0019】
図9に示すように、この実施形態において、リンク機構1eは、ベース部材1aの取り付け部1a6の後端部にリンクピン1e11で前後方向に回動可能に連結されたメインリンク1e1と、一端部がメインリンク1e1にリンクピン1e21で前後方向に回動可能に連結され、他端部がアーム部材1bの基端部にリンクピン1e22で前後方向に回動可能に連結されたリンクアーム1e2とを備えている。このようなリンク機構1eは、一対のアーム部材1bに対応して、ベース部材1aの両側部の取り付け部1a6の後端部にそれぞれ設けられ、左右一対のメインリンク1e1が連結軸1e3で相互に連結される。
【0020】
電動油圧シリンダ1cの作動により、油圧シリンダ1c2のロッド1c22が伸縮移動すると、ロッド1c22の伸縮移動による駆動力が、ロッド1c22の先端部がピン接合された連結軸1e3を介してメインリンク1e1に伝達され、メインリンク1e1がリンクピン1e11を支点として前後方向に回動する。そして、このメインリンク1e1の回動力がリンクアーム1e2を介してアーム部材1bに伝達され、アーム部材1bが回動ピン1b1を支点として前後方向に回動する。
【0021】
電動油圧シリンダ1cの駆動力を、上記のリンク機構1eを介して、アーム部材1bに伝達する構成とすることにより、ホースカー2を降ろし位置P1と積み込み位置P2との間で移動させるために要するアーム部材1bの回動動作を、ストロークの比較的短い油圧シリンダ1c2で行わせることができる。そのため、全長の比較的短い電動油圧シリンダ1cを用いることが可能となり、これにより、油圧シリンダ1c2のロッド1c22が最大限伸長した状態でも、電動油圧シリンダ1cの全長がベース部材1aの前後方向の最大奥行寸法L2の範囲に収まるようにして、ホースカー昇降装置1の奥行寸法のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
上記のリンク機構1eにおいて、アーム部材1bのベース部材1aに対する回動支点となる回動ピン1b1の中心と、リンクアーム1e2の中心線(リンクピン1e21の中心とリンクピン1e22の中心を通る線)との間の距離X1{
図9(a)}及び距離X2{
図9(b)}と、メインリンク1e1のベース部材1aに対する回動支点となるリンクピン1e11の中心と、リンクアーム1e2の中心線との間の距離Y1{
図9(a)}及び距離Y2{
図9(b)}は、ホースカー2を降ろし位置P1と積み込み位置P2との間で移動させるために要するアーム部材1bの回動動作を、ストロークの比較的短い油圧シリンダ1c2で行わせることを可能にし、かつ、リンク機構1eに加わる負荷を可及的に軽減するという観点から、さらには、後述する電動油圧シリンダ1cのハンチングを可及的に抑制するという観点から、最適値に設定する。
【0023】
図8に示すように、この実施形態において、デッキ部1fは、ベース部材1aの主部1a5に搭載された電動油圧シリンダ1c及びその制御装置1c3を含む部位を上方から覆うように配置されたデッキ板1f1と、平行リンク1f2とを備えている。デッキ板1f1の後端部は、リンク機構1eの連結軸1e3に設けられたブラケット1e32にリンクピン1e33で前後方向に回動可能に連結され、デッキ板1f1の前端部は、平行リンク1f2の一端部にリンクピン1f21で前後方向に回動可能に連結される。平行リンク1f2の他端部は、ベース部材1aの主部1a5の前端部に設けられたブラケット1a2にリンクピン1f22で前後方向に回動可能に連結される。このようなデッキ板1f1、リンクピン1e33、平行リンク1f2、リンクピン1f21、リンクピン1f22を含む平行リンク機構は、デッキ板1f1の左右の両側部にそれぞれ設けられる。
【0024】
電動油圧シリンダ1cの作動により、油圧シリンダ1c2のロッド1c22が伸縮移動すると、ロッド1c22の伸縮移動による駆動力が、ロッド1c22の先端部がピン接合された連結軸1e3を介して上記の平行リンク機構に伝達される。これにより、アーム部材1bの回動時に、デッキ板1f1が、ベース部材1bの主部1a5に対する平行状態を保ちながら、
図8(b)に示す降ろし位置P1での位置と
図8(a)に示す積み込み位置P2での位置との間で変位する。
【0025】
デッキ板1f1は、ベース部材1aに搭載された電動油圧シリンダ1c及びその制御装置1c3を含む部位を、作業者による踏み付けや器物の落下又は干渉等から保護する役割を果たすと共に、作業者が搭乗できるデッキとしての機能も有している。
図8(b)に示す降ろし位置P1での状態において、一対のアーム部材1bに横架されたステップ部材1b5は、デッキ板1f1よりも低位の位置、この実施形態では、ベース部材1aの主部1a5が取付けられる車体3の後部デッキ3aと同レベルかそれよりも低位の位置に在り、ホースカー2を降ろし位置P1から外した状態で、作業者がデッキ板1f1に搭乗するためのステップとして機能する。また、
図8(a)に示す積み込み位置P2での状態において、デッキ板1f1は、ベース部材1aの主部1a5の真上の位置まで降下する。このとき、アーム部材1bは前方側に最大限回動し、
図6に示すように、アーム部材1bの平面板1b4がデッキ板1f1と面一になる。
【0026】
さらに、この実施形態では、
図8に示すように、ハンチング(機械的なショックや振動)防止用のダンパー、特に油圧ダンパー1gを設けている。油圧ダンパー1gは、その基体(圧力チューブ)1g1を前方、ロッド1g2を後方に向けた状態で、ベース部材1aの両側部にそれぞれ配置される。各油圧ダンパー1gにおいて、基体1g1の基端部は、ベース部材1aの取り付け部1a6の前端部に設けられたブラケット1a3に前後方向に回動可能にピン接合され、ロッド1g2の先端部は、リンク機構1eのメインリンク1e1に設けられたブラケット1e12に前後方向に回動可能にピン接合される。
【0027】
次に、この実施形態のホースカー昇降装置1を用いてホースカー2を積み降ろしする際の動作を、
図10~
図15を参照しながら説明する。尚、
図10~
図15は、ホースカー昇降装置1及びホースカー2を左右方向の一方の側から見た状態を示しているが、左右方向の他方の側から見た状態も同じである。また、デッキ部材1f1等は図示を省略している。
【0028】
図10はホースカー2の降ろし位置P1を示し、
図15はホースカー2の積み込み位置P2を示している。上述したように、この実施形態のホースカー昇降装置1は、ホースカー2を、降ろし位置P1と積み込み位置Pとの間で移動させることができる。
【0029】
図10に示す降ろし位置P1において、電動油圧シリンダ1cの油圧シリンダ1c2のロッド1c22は最大限伸長し、アーム部材1bは後方側に最大限回動する。ホースカー2は、ホースカー昇降装置1の後方側に位置し、車輪2bが地面Gに接地し、本体2aの前方側面部2a4の側部上部に在る第1フック2a5が、アーム部材1bの先端部の第1係合ピン1b2と係合する。本体2aの前方側面部2a4の側部下部に在る第2フック2a6は、アーム部材1bの基端部の第1係合ピン1b3とは未だ係合しない。引き手2cは、本体2aの上面部2a3に畳まれている。
【0030】
ホースカー2を降ろし位置P1に設定し、また、ホースカー2を降ろし位置P1から外す際には、引き手2cを操作し、本体2aの前後方向の傾きを調整しながら、第1フック2a5を下方側から第1係合ピン1b2に係合させ、また、第1フック2a5を下方側に移動させて第1係合ピン1b2との係合を外す。従来のホースカー昇降装置では、例えば特許文献1のように、ホースカー本体の前方側面部の両側部の上部に設けたフックリングを、アーム部材の先端部に設けたフックに上方側から係合させる構造を採用していた(特許文献1の
図3、
図4、
図6のフックリング55と連結用フック131を参照)。そのため、フックリングをフックに係合させる際、また、フックリングをフックから外す際、引き手2cを下方に大きく押し下げて、ホースカー本体の前方側面部が上方に大きく持ち上がるように、ホースカー本体を傾ける必要があった。これに対して、この実施形態のホースカー昇降装置1は、ホースカー2の本体2aの第1フック2a5をアーム部材1bの第1係合ピン1b2に下方側から係合させる構造を採用しているので、第1フック2a5を第1係合ピン1b2に係合させる際、また、第1フック2a5を第1係合ピン1b2から外す際、ホースカー2の本体2aを大きく傾ける必要がない。そのため、ホースカー2を降ろし位置P1に設定し、また、ホースカー2を降ろし位置P1から外す作業が容易になる。
【0031】
図10に示す降ろし位置P1から、電動油圧シリンダ1cを作動させて、油圧シリンダ1c2のロッド1c22を収縮させると、アーム部材1bが前方側に回動する。第1フック2a5と第1係合ピン1b2とが係合しているので、ホースカー2は、アーム部材1bの回動に伴い、本体2aの前方側面部2a4がアーム部材1bの後部(平面板1b4の部位)に近づくようにして、前方側に移動してゆく(
図11~
図12)。そして、アーム部材1bが所定位置まで回動した時点で、本体2aの前方側面部2a4の側部下部に在る第1フック2a6も、アーム部材1bの基端部の第2係合ピン1b3と係合する(
図13)。
【0032】
図13に示す状態から、アーム部材1bが更に前方側に回動すると、ホースカー2は、本体2aの前方側面部2a4の側部がアーム部材1bの後部(平面板1b4の部位)に乗り掛かった状態で、アーム部材1bと伴に前方側に回動してゆく(
図14)。そして、電動油圧シリンダ1cの油圧シリンダ1c2のロッド1c22が最大限収縮して、アーム部材1bが前方側に最大限回動すると、ホースカー2は積み込み位置P2に達する(
図15)。
【0033】
アーム部材1bが降ろし位置P1から積み込み位置P2まで回動する間、デッキ部1fのデッキ板1f1は、ベース部材1bの主部1a5に対する平行状態を保ちながら、
図8(b)に示す位置から
図8(a)に示す位置に変位する。上述のように、積み込み位置P2において、デッキ板1f1はベース部材1aの主部1a5の真上の位置まで降下し{
図8(a)}、アーム部材1bの平面板1b4はデッキ板1f1と面一になる(
図6)。ホースカー2は、本体2aの前方側面部2a4がベース部材1aの主部1a5の真上に位置し、前方側面部2a4がデッキ板1f1とアーム部材1bの平面板1b4に乗った状態で、車体3の後部デッキ3aの所定位置に積み込まれる。
【0034】
図15に示す積み込み位置P2から、電動油圧シリンダ1cを作動させて、油圧シリンダ1c2のロッド1c22を伸長させ、アーム部材1bを後方側に回動させると、ホースカー2を、上記と逆の動作で、降ろし位置P1まで移動させることができる。
【0035】
ホースカー2を降ろし位置P1と積み込み位置Pとの間で移動させる際に発生するモーメント荷重は、アーム部材1bが特定の位置まで回動した状態を境界位置として、境界位置から降ろし位置P1側の回動領域では、油圧シリンダ1c2のロッド1c22を伸長させる方向に働き、境界位置から積み込み位置P2側の回動領域では、油圧シリンダ1c2のロッド1c22を収縮させる方向に働く。このように、ホースカー2を降ろし位置P1と積み込み位置Pとの間で移動させる際、油圧シリンダ1c2に対して作用するモーメント荷重の向きが上記の境界位置で反転するため、電動油圧シリンダ1cにハンチングが発生し、そのハンチングがリンク機構1eを介してアーム部材1bに伝わり、ホースカー2の移動動作が不安定になる可能性がある。そこで、この実施形態では、
図8に示すようなハンチング防止用の油圧ダンパー1gを設け、電動油圧シリンダ1cにハンチングが発生した場合、電動油圧シリンダ1cからリンク機構1eに伝わるハンチングを油圧ダンパー1gで吸収することにより、ホースカー2の安定した移動動作が行われるようにしている。
【0036】
この実施形態のホースカー昇降装置1は、車体3の後部デッキ3aに取り付けられるベース部材1aに、ホースカー2の積み降ろし動作を行うアーム部材1b、および、アーム部材1bを駆動する電動油圧シリンダ1cを主たる要素とする構成部品を取り付けてユニット化しているので、ホースカー昇降装置を搭載するために、消防車の車体を特別仕様にする必要がなく、また、ホースカー昇降装置を搭載しない既存の消防車の車体を利用する場合でも、車体を大きく改造する必要がなく、例えば車体にボルト止めする等、簡易な取り付け工事で車体に取り付けることができる。しかも、車体への取り付けは、後部デッキに限らず、側部デッキ等、ホースカーの積み込みスペースを確保できる箇所であれば取り付け可能なので、取り付け位置の選択自由度が高まる。
【0037】
尚、上記の実施形態では、アーム部材1bを駆動するアクチュエータとして、電動油圧シリンダ1cを用いているが、電動シリンダ(モータの回転運動をボールねじ等の運動変換機構により線形運動に変換してロッドを伸縮移動させるシリンダ)を用いてもよい。また、これらのシリンダ式の電動アクチュエータに代えて、ロータリー式の電動アクチュエータを用いるようにしてもよい。この場合、電動アクチュエータの駆動力をアーム部材に伝達する機構として、歯車機構等を採用することができる。さらに、油圧系統や空気圧系統を簡単に確保できる場合は、上記のアクチュエータとして、油圧シリンダや空気圧シリンダ等を用いることも可能である。
【0038】
また、上記の実施形態では、ホースカー2を降ろし位置P1と積み込み位置P2との間で移動させる部材として、一対のアーム部材1bを用いているが、デッキ部1fの設置を省略する場合は、アーム部材の形態や、アーム部材のベース部材への取り付け位置を適宜変更することにより、単一のアーム部材でホースカーを移動させる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ホースカー昇降装置
1a ベース部材
1b アーム部材
1b2 第1係合ピン
1b3 第2係合ピン
1b4 平面板
1b5 ステップ部材
1c 電動油圧シリンダ
1c2 油圧シリンダ
1c21 基体
1c22 ロッド
1c3 制御装置
1e リンク機構
1e1 メインリンク
1e2 リンクアーム
1e3 連結軸
1f デッキ部
1f1 デッキ板
1f2 平行リンク
2 ホースカー
2a 本体
2a1 底面部
2a4 前方側面部
2a5 第1フック
2a6 第2フック
2b 車輪
P1 降ろし位置
P2 積み込み位置
L2 最大奥行寸法