(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047598
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】充填検査装置および充填材注入方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20230330BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20230330BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230330BHJP
B29C 63/34 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/06
F16L1/00 P
B29C63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156588
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】松田 貴弘
【テーマコード(参考)】
2D063
4F211
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA19
2D063BA37
2D063EA06
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA13
4F211SD04
4F211SN18
4F211SP50
(57)【要約】
【課題】施工中に既設管とその内側に設けられる管状体との間の間隙に充填材が適切に充填されたことを確認する。
【解決手段】既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填される充填材の充填状況を検査する充填検査装置100を提供する。充填検査装置100は、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子10と、浮子の移動量を検出する検出器20と、を備え、浮子は、流動物と接触する部分において、少なくとも一部に浮子の下端側に向かって狭められるテーパー形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填される充填材の充填状況を検査する充填検査装置であって、
前記管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子と、
前記浮子の移動量を検出する検出器と、
を備え、
前記浮子は、流動物と接触する部分において、少なくとも一部に前記浮子の下端側に向かって狭められるテーパー形状を有する、
充填検査装置。
【請求項2】
前記浮子は、前記浮子の下端側に向かって広がる形状を有さないことを特徴とする請求項1に記載の充填検査装置。
【請求項3】
前記浮子の側面の外形は円筒形であり、前記浮子の下端は円錐形であることを特徴とする請求項1または2に記載の充填検査装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記浮子の移動量を多段階で検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の充填検査装置。
【請求項5】
既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填材を施すに際し、
前記管状体の底部に複数の検査孔を設ける工程と、
請求項1乃至4のいずれかに記載の充填検査装置を前記検査孔に取り付ける工程と、
前記既設管と前記管状体の間隙に充填材を注入する工程と、
充填材を注入しながら、前記検査孔に取り付けられた前記充填検査装置が流動物の比重を検出する工程と、
前記充填検査装置が所定の比重の流動物を検出した場合、前記所定の比重の流動物を検出した前記充填検査装置が取り付けられた前記検査孔が位置する前記既設管と前記管状体の間隙に充填材が充填されたことを確認する工程と、
を含む充填材注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填検査装置および充填材注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地下に埋設され、長期に亘って使用され老朽化した下水道管や農業用水管を更生するため、老朽化した既設管内をライニングする工法があり、この更生方法の一つとして、既設管内に別途新たな管(以下、ライニング管または管状体と言う)を設ける工法が知られている。この工法では、既設管の内面とその内部に配置したライニング管の外面との間に注入装置を用いてセメント系充填材からなる裏込め材を注入する。既設管とライニング管との間の間隙に裏込め材を注入充填する際には、既設管と既設管内に設けられたライニング管の一端から既設管とライニング管との間の間隙に裏込め材の供給ホースを挿入して裏込め材を注入充填する。この工法は、既設管、充填材およびライニング管からなる三層複合管が形成され、老朽化した既設管の強度を新設管に匹敵する強度に復活させることができる。
【0003】
しかし、既設管とライニング管との間隙に裏込め材を注入充填する更生方法では、裏込め材の充填状況を目視することができないため、ライニング管の周囲に裏込め材が確実に充填されていることを確認することができないという問題がある。ライニング管の周囲に裏込め材が確実に充填されないと、ライニング管の周囲に空隙が生じ、ライニング管が既設管内に強固に支持されないおそれがある。このような強度不足の原因となる空隙の有無を検査する方法として、ライニング管内面から打診を行い、反響音に基づき人により充填状況を判定することが行われている。ただ、これには技量を要し、定量的な判断は困難である。
【0004】
かかる問題を回避するための技術として、たとえば、特許文献1は、施工不良の有無の検査を行うことが出来る更生管用裏込め材の施工検査方法を開示する。この検査方法では、電磁波を送信する電磁波送信手段と、対象物からの反射電磁波を受信する反射電磁波受信手段を有する電磁波送受信装置を用いて、金属補強材を周方向に沿わせて配設することにより補強がなされた更生管の裏込めモルタルの施工不良を検査する。
【0005】
また、施工の際支保工装置を用いる場合の例として、特許文献2は、裏込め材注入ノズルの取付部材の取付け、取り外し作業は不要であり、既設老朽管とライニング管との間の間隙への裏込め材の充填状況を確認しつつ充填することができる既設老朽管更生工法を開示する。この工法は、支保工装置を既設老朽管内に新設されたライニング管内に挿入し、環状枠を支持手段によりライニング管内に支持し、中空杆体をライニング管の長手方向に3個以上配列させ、それらの先端をライニング管の注入孔に挿入させ、中間部の中空杆体の基端の接続口に裏込め材供給ホースを接続し、前後の中空杆体の基端は開放状態となしておき、中間部の中空杆体の先端付近の裏込め材吐出口から裏込め材を吐き出して、前後の中空杆体の基端からの裏込め材の流出状態からその充填状況を確認しつつ、既設老朽管とライニング管との間の間隙に裏込め材を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-137074号公報
【特許文献2】特開2000-213054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そもそも特許文献1の技術は、施工完了後に施工不良を検査するための方法であり、本来、施工最中に既設管とライニング管との間の間隙に裏込め材が十分充填されているのか否かを確認しつつ施工することが好ましい。また、特許文献2のように支保工装置を前提とした更生方法では、その使用場面は限定されてしまう。
【0008】
さらに、既設管を流れる下水等を停止しない状況で施工するため既設管とライニング管との間の底部に滞流水を残し、滞留水を充填材に置換する。そうすると、セメント系充填材からなる裏込め材(以下、充填材とも言う。)が滞留水中に分散して希釈されたり、充填材を施すべき場所に十分行き渡らず空隙が生じたりするために硬化不良や強度不足を生じてしまう場合がある。そのため、適切な比重や粘度を有する充填材が施工全域に行き渡っているか否か、すなわち滞留水が充填材に置換されたことが施工中に確認できることが重要である。
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、施工中に既設管とその内側に設けられる管状体との間の間隙に充填材が適切に充填されたことを確認することができる充填検査装置および充填材注入方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填される充填材の充填状況を検査する充填検査装置であって、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子と、浮子の移動量を検出する検出器とを備え、浮子は、流動物と接触する部分において、少なくとも一部に浮子の下端側に向かって狭められるテーパー形状を有する充填検査装置が提供される。
滞流水(比重:1.0)が充填材(比重:1.2以上)に置換されることを正確に検出するために、浮子は円筒状の部分と先端に向かってテーパーを有する円錐形との部分で構成される。かかる浮子を備える充填検査装置は、検査孔における滞流水と充填材の僅かな比重差を正確に検出することができる。
【0011】
さらに、浮子は、浮子の下端側に向かって広がる形状を有さないことを特徴としてもよい。
これによれば、下端側に向かって広がる形状がないことで、かかる形状部分に充填材が被ってしまい、浮子が正しい浮力で浮上しなくなることを回避できる。
【0012】
さらに、浮子の側面の外形は円筒形であり、浮子の下端は円錐形であることを特徴としてもよい。
これによれば、浮子の下端が円錐形であることで、既設管の内壁と下端面との間に侵入する充填材から上方へ持ち上げるように受ける圧力を最小化することができる。
【0013】
さらに、検出器は、浮子の移動量を多段階で検出することを特徴としてもよい。
これによれば、滞留水から充填材に置換される過程を監視することができる。また、様々な比重の充填材に対して確認することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填材を施すに際し、管状体の底部に複数の検査孔を設ける工程と、上記の充填検査装置を検査孔に取り付ける工程と、既設管と管状体の間隙に充填材を注入する工程と、充填材を注入しながら、検査孔に取り付けられた充填検査装置が流動物の比重を検出する工程と、充填検査装置が所定の比重の流動物を検出した場合、所定の比重の流動物を検出した充填検査装置が取り付けられた検査孔が位置する既設管と管状体の間隙に充填材が充填されたことを確認する工程とを含む充填材注入方法が提供される。
これによれば、充填を確認すべき位置の管状体の底部に複数設けられた検査孔に取り付けられた充填検査装置が流動物の所定の比重を検出することで、施工中に既設管とその内側に設けられる管状体との間の間隙に充填材が適切に充填されたことを施工全域に亘って確認することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、検査孔における流動物の比重を正確に検出する充填検査装置、および、施工中に既設管とその内側に設けられる管状体との間の間隙に充填材が適切に充填されたことを確認する充填材注入方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る第一実施例の充填検査装置の、(A)側面図(浮子が最も下にある状態)、(B)上面図、(C)底面図、(D)側面図(浮子が最も上にある状態)を示す。
【
図2】本発明に係る第一実施例の充填検査装置において、(A)比重が1.0の流動物中にある場合の状態、(B)比重が1.9の流動物中にある場合の状態、(C)比重が2.1の流動物中にある場合の状態を示す。
【
図3】本発明に係る第一実施例の充填検査装置を、既設管と管状体との間に充填材を施す際に用いるための施工概要を示す。
【
図4】充填材の注入状況(十分ではない状況)における、本発明に係る第一実施例の充填検査装置の作用を示す。
【
図5】充填材の注入状況(十分な状況)における、本発明に係る第一実施例の充填検査装置の作用を示す。
【
図6】本発明に係る第二実施例の充填検査装置の、(A)側面図(浮子が最も下にある状態)、(B)上面図、(C)底面図を示す。
【
図7】本発明に係る第三実施例の充填検査装置の、(A)側面図(浮子が最も下にある状態)、(B)上面図、(C)底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る充填検査装置および充填材注入方法は、下水道管等の既設管を更生するために既設管内に別途新たな管状体(以下、ライニング管、プロファイルなどとも言う)を設け、既設管の内面と管状体の外面との間の間隙に注入装置を用いてセメント系の充填材からなる裏込め材(以下、単に充填材、モルタルとも言う)を注入する際に、その充填材が既設管と管状体の間、特に既設管の底部と管状体の底部の間に適切に行き渡っているか否か、充填材の充填状況を施工中に検査、確認するために用いられる。
【0018】
裏込め材として用いられるモルタルは、既設管の内壁と管状体の外壁との間の間隙に注入された際、既設管の内壁と管状体の外壁との間から漏出することがない程度の高い粘度を有する必要がある。高い粘度を有するモルタルは、流動性が低いため既設管と管状体の間の間隙に十分行き渡らない可能性がある。特に管状体の外面には金属の補強材などの存在により、モルタルが注入される方向(管状体の軸方向)に対してほぼ直角方向に凹凸が多いこともあり、その可能性は高まることが懸念される。
【0019】
詳しくは後述するが、本発明に係る充填検査装置は、水やモルタルの流動物の比重に応じて上下する浮子を備える。高い粘度を有するモルタルは、単位量の水に対してセメントや砂を比較的多く含むため、比重は低粘度のモルタルに比し大きくなるが、この浮子は、高い粘度を有するモルタルであっても、正確にその比重を計測できるものである必要がある。
【0020】
ここで、
図8を参照し、粘度が高いモルタルの比重を計測する場合に不向きな浮子の形状の例を説明する。たとえば、本図(A)に示す浮子10Z
1は、流動物の水位の上下に亘り同じ半径の円筒形をなし、その底面は平面になっている。このような形状だと、粘度が高く比重の大きいモルタルが、浮子10Z
1の底面と既設管の間に入り込み、その底面を下から上に押し上げる力(灰色矢印)が働く場合がある。このような場合、浮子10Z
1は、正確なモルタルの比重を計測することはできない。
【0021】
また、本図(B)に示す浮子10Z2は、その底面に平面は有さないため浮子10Z1のような下から上に押し上げる力は緩和されるものの、浮子10Z2の下端側(先端側)に向かって広がる形状を有する。このような形状を有すると、高粘度/高比重のモルタルが注入される際にこの形状部分にモルタルが付着したり覆い被さったりすると、浮子10Z2を上から下に押し下げる力(灰色矢印)が働く場合がある。このような場合、浮子10Z2は、正確なモルタルの比重を計測することはできない。
【0022】
また、本図(C)に示す浮子10Z3は、浮子10Z2と同様下から上に押し上げる力は緩和されるものの、胴部から垂直に(水位と平行に)張り出した形状を有する。このような形状を有すると、高粘度/高比重のモルタルが注入される際にこの形状部分にモルタルが付着したり覆い被さったりすると、浮子10Z3を上から下に押し下げる力(灰色矢印)が働く場合がある。このような場合、浮子10Z3は、正確なモルタルの比重を計測することはできない。
【0023】
したがって、本発明に係る充填検査装置の浮子は、上述したような形状を有することがなく、比重が1.0の滞留水から比較的高比重のモルタルまでの比重を、正確に計測できるものである必要がある。以下に、本発明に係る充填検査装置、および、充填検査装置を用いた充填材注入方法を説明する。
【0024】
<第一実施例>
以下では、
図1乃至
図5を参照しながら、本実施例における充填検査装置100について説明する。充填検査装置100は、既設管と該既設管の内側に設けられる管状体との間に充填される充填材の充填状況を施工中に検査する。充填検査装置100は、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子10と、浮子10の移動量を検出する検出器20と、浮子10の所定の移動量を視覚的に報知する点灯部30とを備える。なお、本明細書で用いられる充填材の比重は、約1.2以上である。
【0025】
浮子10は、
図1に示すように、外形が円筒形の胴部12と、胴部12の下端に側面視でほぼ正三角形の円錐形の先端テーパー形状部11とから構成される。浮子10の長さは、先端テーパー形状部11の先端が既設管の底部表面に当接するため、既設管の底部表面から想定される流動物の水位までの高さ以上の長さがあればよい。浮子10の直径は、細いほど比重の小さい変化を計測できるが、細すぎても粘度の高い充填材に対する強度不足になりうるため、構成する材料を考慮し適宜定められる。
【0026】
たとえば、胴部12が、長さ250mm、外径26mm、厚さ2mmのPVCパイプであり、先端テーパー形状部11が、底部外径26mm、高さ50mmのステンレスである場合、胴部12の中央よりやや上側辺りに比重が1.9~2.1の充填材の水位位置となり、胴部12の上部辺りに比重1.0の滞留水の水位位置となる。ただし、これらの大きさや素材は例示であり、これに限定されない。なお、先端テーパー形状部11が胴部12より重い材料で形成される方が、浮子10が流動物に対して安定することは言うまでもない。
【0027】
先端テーパー形状部11は、胴部12の直径と同じ径から、浮子10の下端側の先端に向かって狭められるテーパー形状をなし、先端が点となる円錐形状である。このように浮子10の先端は、上述したように面を形成していると充填材から上向きの力の受けることがあるため面を形成しないことが好ましく、面を形成する場合にはなるべく小さい方が好ましい。本実施例の充填検査装置100のように、浮子10の下端が円錐形であることで、既設管の内壁とその下端面との間に侵入する充填材から上方へ持ち上げるように受ける圧力を最小化することができる。また、先端テーパー形状部11におけるテーパー角は、小さい方が充填材から上向きの力を受ける割合が減少するため好ましく、90度以下であることが好ましい。
【0028】
胴部12は、外形は円筒形であり、横方向から高い粘度の充填材が当たっても滑らかに受け流すことができると共に、縦方向には凹凸がないため充填材が付着等することがない。胴部12の内部は、中空となっており、検出器20の摺動軸21を上下方向に移動可能に受け入れるようになっている。本図(A)は、浮子10が検出器20に対して最も下に下がった状態を、本図(D)は、浮子10が検出器20に対して最も上に上がった状態を示している。浮子10は、周囲の流動物の比重に応じて、本図(A)に有る状態と本図(D)にある状態の間で上下移動する。なお、胴部12は、検出器20が脱落しないように検出器20を固定する固定部(図示せず)を適宜備える。
【0029】
検出器20は、浮子10の胴部12の内部に上下移動可能に嵌合する摺動軸21と、摺動軸21の周囲を取り囲むように胴部12の頭部に固定されるマグネット部22と、マグネット部22と摺動軸21の位置関係から浮子10の上下移動の移動量を検出する検出制御部23とを備える。摺動軸21は、磁場の近接によりスイッチをオンするリードスイッチ(図示せず)を有している。リードスイッチは、摺動軸21の縦方向の所定の位置に配置され、浮子10に固定されたマグネット部22が下から上へ移動し近接した時にオンされる。
【0030】
本実施例における充填検査装置100は、
図2に示すように、第1リードスイッチ24と第2リードスイッチ25を有し、2つ段階で移動量を検出する。滞留水などの比重が1.0の流動物が図示する水位レベルまである場合(本図(A)の状態)、充填検査装置100は、既設管の底部に先端テーパー形状部11を当接し、浮子10がまったく浮いていない状態であり、マグネット部22は、第1リードスイッチ24より下に位置しているので、第1リードスイッチ24と第2リードスイッチ25はオフのままである。なお、本図における充填材の比重は2.1とし、浮子10は、比重2.1の流動物が周囲に満たされたときに検出器20に対して最も上に上がった状態になるように構成されているものとする。
【0031】
充填材が滞留水で希釈化されたような、たとえば比重が1.9の流動物が図示する水位レベルまである場合(本図(B)の状態)、充填検査装置100は、既設管の底部から離れ、浮子10がわずかに浮いた状態となり、マグネット部22は、第1リードスイッチ24の位置にあるので、第1リードスイッチ24がオンする。さらに、比重が2.1の充填材(流動物)が図示する水位レベルまである場合(本図(C)の状態)、充填検査装置100は、浮子10がさらに上方へ浮いた状態となり、マグネット部22は、第1リードスイッチ24より上方に位置する第2リードスイッチ25の位置にあるので、第1リードスイッチ24がオフになり、第2リードスイッチ25がオンになる。
【0032】
なお、本実施例では2段階で検出するが、1段階であっても、より多くの段階で検出するように構成されてもよく、段階の数に応じた数のリードスイッチを摺動軸21の軸方向に並べて設ければよい。このように、検出器20が浮子10の移動量を多段階で検出することで、滞留水から充填材に置換される過程を監視することができる。また、様々な比重の充填材に対して確認することができる。なお、
図2において胴部12は、内部に嵌合した摺動軸21が見えるように半透明で表示しているが、胴部12は透明であってもよいし、透明でなくてもよい。
【0033】
検出制御部23は、第1リードスイッチ24および第2リードスイッチ25と、側面に設けられた点灯部30の第1点灯部31および第2点灯部32とを電気的に接続し、第1リードスイッチ24がオンになった時には第1点灯部31が点灯し、第2リードスイッチ25がオンになった時には第2点灯部32が点灯するように構成されている。たとえば、第1リードスイッチ24は赤色を、第2リードスイッチ25は緑色を発光し、点灯部30が赤色に点灯したら周囲に所定の比重(本図の例では2.1)に近い流動物が到達しつつあり、緑色に点灯したら浮子10の周囲には所定の比重の充填材が到達した状態になったと確認できる。なお、検出制御部23は、第1リードスイッチ24および第2リードスイッチ25が検出した電気信号を、有線または無線通信を介して外部の装置に送信してもよい。これによれば、点灯部30による視覚的な報知だけでなく、外部装置で複数の充填検査装置100の状態を統括監視できる。
【0034】
上述した充填検査装置100は、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子10と、浮子10の移動量を検出する検出器20と、浮子10の所定の移動量を視覚的に報知する点灯部30とを備え、浮子10は、流動物と接触する部分において、円筒形の胴部12と先端に向かって狭められる円錐形を有する先端テーパー形状部11を、すなわち一部に浮子10の下端側に向かって狭められるテーパー形状を備える。これにより、滞流水(比重:1.0)が充填材(比重:1.2以上)に置換されることを正確に検出するため、充填検査装置100は、検査孔における滞流水と充填材の僅かな比重差を正確に検出することができる。
【0035】
また、浮子10は、浮子10の下端側に向かって広がる形状(逆テーパー形状)や胴部12から垂直に(水位と平行に)張り出した形状などの、充填材が上方から付着したり覆い被さったりする形状を有さないことが好ましい。浮子の流動物と接触する部分においてこのような形状を有すると、充填材注入中に当該形状部分に滞留水に比し比重の大きい充填材が被ることがあり、そうすると浮子が適切な浮力で浮上しないことになる。したがって、このような形状がないことで、かかる形状部分に充填材が被ってしまい、浮子10が正しい浮力で浮上しなくなることを回避できる。
【0036】
図3は、充填検査装置100を用いて既設管と管状体との間に充填材を施す際の施工方法の概要を示す。本図(A)は、既設管とその内部に配置された管状体(プロファイル)を既設管の底部に平行な断面から下方の底部を見た図である。本図(B)は、本図(A)に示すA-A’断面を、本図(C)は、本図(A)に示すB-B’断面を表す図であり、いずれも既設管と管状体の天井部分は省略している。
【0037】
既設管と管状体の間には裏込め材としての充填材を充填するための間隙が設けられる。なお、既設管内部に管状体を設ける方法は、既知の方法が用いられる。管状体の敷設後、管状体の両側側面に内側から充填材注入ホースを差し込むための注入孔が開けられる。なお、注入孔は、管状体の側面に限られず、管状体の底面や上面であってもよい。また、管状体の底面に充填検査装置100を取り付けるための検査孔が開けられる。本図では、検査孔は、管状体の底部の中心線に沿って複数(2つ)設けられている。管状体の底部の中心に設けられるのは、注入孔を両側の側面に設けため充填材が径方向で最後に到達するのが中心線付近であると考えられるからである。したがって、検査孔が設けられる位置は、施工のしかたや対象となる既設管の形状により適宜選択される。
【0038】
たとえば、仮に注入孔が片側の側面にのみ設けられる場合、検査孔は、中心ではなく、反対側の側面に近接した付近に設けることが好ましい。また、本図の既設管は非円形の形状(矩形)であり、その底部は平面であるが、充填検査装置100が用いられるのはこれに限定されず、既設管は円形であってもよい。この場合、たとえ注入孔を両側側面に設けた場合であっても、検査孔は、最下部となる中心ではなく、最下部から離れた位置で充填材の所定の水位を計測できる位置に設けられることが好ましい。すなわち、検査孔が設けられる位置は、注入孔が設けられる位置や既設管の形状などに基づき、充填材が到達し難い位置や充填材が所定高さに充填されたことを確認したい位置を考慮し、適宜選択される。なお、検査孔の大きさは、浮子10の先端テーパー形状部11を下にし、検出器20を上にして立てた状態で充填検査装置100が十分に入る大きさ、または後述する取付具200に適合した大きさであればよい。
【0039】
検査孔が開けられた後、その検査孔のそれぞれに充填検査装置100を取り付ける。充填検査装置100の取り付け方は、たとえば
図4および
図5に示すような、内部に充填検査装置100を保持し、検査孔に嵌る取付具200を用いて取り付けることが好ましい。取付具200は、検査孔に嵌合する円筒であり、内部において検出器20の部分を保持し、浮子10は上下方向に移動可能になっている。
【0040】
次いで、注入孔に充填材注入ホースを差し込み、充填材を間隙に注入する。そうすると、充填材は、
図3の矢印で示すように、注入圧力により既設管の底面上を軸方向および中心方向に向かって流れる。
図4と
図5は、充填材が充填検査装置100に流れてくる様を拡大して表したものである。
図4は、充填検査装置100の所まで流れてきたばかりであり、取付具200内部において充填検査装置100が想定する充填材の設定液面高以下には滞留水が残存している状態を示す。このような状態だと、充填検査装置100では、浮子10は浮き上がらず、点灯部30は点灯せず、所定の比重の充填材がこの充填検査装置100まで十分に到達していない状態を示している。
【0041】
一方、
図5は、充填材が充填検査装置100の所まで流れてきて、取付具200内部において充填検査装置100が想定する充填材の設定液面高まで充填材が到達した状態を示す。このような状態だと、充填検査装置100では、浮子10は所定の比重により浮き上がり、点灯部30は点灯し、所定の比重の充填材がこの充填検査装置100まで十分に到達した状態と言える。このように、充填検査装置100を用いた既設管と管状体の間の間隙に充填材を施すに際し、充填材の注入中に検査孔に取り付けられた充填検査装置100が流動物の比重を検出する。なお、
図4が示す取付具200の内部に残っていた滞留水は、
図5では充填材により設定液面高より上に持ち上げられている様子が示されているが、設定液面高付近に滞留水を取付具200の外へ逃がすための溢流口(図示せず)を設けてもよいし、取付具200内の設定液面高以上の滞留水をポンプ(図示せず)により吸い上げてもよい。
【0042】
充填材は、通常注入孔に近い方の検査孔に取り付けられた充填検査装置100から順に到達する。所定の比重の充填材が到達した検査孔に取り付けられた充填検査装置100は、点灯部30(特に第2点灯部32)が点灯する。複数の充填検査装置100が施工領域に配置された場合には、注入孔に近い方の充填検査装置100から点灯部30が順に点灯し、注入孔から最も遠い位置に配置された充填検査装置100の点灯部30が点灯したとき、施工領域のすべてに充填材が充填されたことを確認する。このように、充填検査装置100が所定の比重の流動物を検出した場合、所定の比重の流動物を検出した充填検査装置100が取り付けられた検査孔が位置する既設管と管状体の間隙に充填材が充填されたことを確認する。
【0043】
上述した充填材注入方法によれば、充填を確認すべき位置の管状体の底部に複数設けられた検査孔に取り付けられた充填検査装置100が流動物の所定の比重を検出することで、施工中に既設管とその内側に設けられる管状体との間の間隙に充填材が適切に充填されたことを施工全域に亘って確認することができる。
【0044】
<第二実施例>
以下では、
図6を参照し、本実施例における充填検査装置100Aについて説明する。なお、重複記載を避けるため、上記と同じ構成要素には同じ符号を付してなるべく記載を省略し、異なる部分を中心に説明する。充填検査装置100Aは、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子10Aと、浮子10Aの移動量を検出する検出器20Aと、浮子10Aの所定の移動量を視覚的に報知する点灯部30とを備える。
【0045】
浮子10Aは、外形が四角柱の胴部12Aと、胴部12Aの下端に側面視でほぼ正三角形の四角錐の先端テーパー形状部11Aとから構成される。先端テーパー形状部11Aは、胴部12Aの底面と同じ四角形から、浮子10Aの下端側の先端に向かって狭められるテーパー形状をなし、先端が点となる四角錐形状である。本実施例の充填検査装置100Aのように、浮子10Aの下端が四角錐形であることで、既設管の内壁との間に侵入する充填材から上方へ持ち上げるように受ける圧力を最小化することができる。胴部12Aは、縦方向に凹凸がないため充填材が付着等することがない。胴部12Aの内部は、中空となっており、検出器20Aの摺動軸21を上下方向に移動可能に受け入れるようになっている。
【0046】
浮子10Aは、流動物と接触する部分において、四角柱の胴部12Aと先端に向かって狭められる四角錐形を有する先端テーパー形状部11Aを、すなわち一部に浮子10Aの下端側に向かって狭められるテーパー形状を備える。これにより、滞流水が充填材に置換されることを正確に検出するため、充填検査装置100Aは、検査孔における滞流水と充填材の僅かな比重差を正確に検出することができる。また、浮子10Aは、浮子10Aの下端側に向かって広がる形状(逆テーパー形状)や胴部12Aから垂直に(水位と平行に)張り出した形状などの、充填材が上方から付着したり覆い被さったりする形状を有さない。これにより、かかる形状部分に充填材が被ってしまい、浮子10Aが正しい浮力で浮上しなくなることを回避できる。
【0047】
検出器20Aは、胴部12Aの内部に上下移動可能に嵌合する摺動軸21と、摺動軸21の周囲を取り囲むように胴部12Aの頭部に固定されるマグネット部22Aと、マグネット部22Aと摺動軸21の位置関係から浮子10Aの上下移動の移動量を検出する検出制御部23とを備える。マグネット部22Aは、胴部12Aが四角柱であることに合わせて、周囲の外形が矩形となっている。
【0048】
<第三実施例>
以下では、
図7を参照し、本実施例における充填検査装置100Bについて説明する。なお、重複記載を避けるため、上記と同じ構成要素には同じ符号を付してなるべく記載を省略し、異なる部分を中心に説明する。充填検査装置100Bは、管状体の底部に設けられる検査孔における流動物の比重に応じて上下移動する浮子10Bと、浮子10Bの移動量を検出する検出器20と、浮子10Bの所定の移動量を視覚的に報知する点灯部30とを備える。
【0049】
浮子10Bは、円錐形状を有する胴部12Bから構成される。この胴部12Bは、マグネット部22と同じ直径から、浮子10Bの下端側の先端に向かって狭められるテーパー形状をなし、先端が点となる円錐形状である。本実施例の充填検査装置100Bのように、浮子10Bの全体が円錐形であることで、既設管の内壁との間に侵入する充填材から上方へ持ち上げるように受ける圧力を最小化することができる。胴部12Bは、縦方向に凹凸がないため充填材が付着等することがない。胴部12Bの内部は、中空となっており、検出器20の摺動軸21を上下方向に移動可能に受け入れるようになっている。
【0050】
浮子10Bは、流動物と接触する部分において、先端に向かって狭められる円錐形を有する胴部12Bを、すなわち浮子10Bの下端側に向かって狭められるテーパー形状を備える。これにより、滞流水が充填材に置換されることを正確に検出するため、充填検査装置100Bは、検査孔における滞流水と充填材の僅かな比重差を正確に検出することができる。また、浮子10Bは、浮子10Bの下端側に向かって広がる形状(逆テーパー形状)や胴部12Bから垂直に(水位と平行に)張り出した形状などの、充填材が上方から付着したり覆い被さったりする形状を有さない。これにより、かかる形状部分に充填材が被ってしまい、浮子10Bが正しい浮力で浮上しなくなることを回避できる。
【0051】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0052】
100 充填検査装置
10 浮子
11 先端テーパー形状部
12 胴部
20 検出器
21 摺動軸
22 マグネット部
23 検出制御部
30 点灯部
31 第1点灯部
32 第2点灯部
200 取付具