(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047638
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230330BHJP
A61M 5/32 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
A61M37/00 510
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156662
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000185868
【氏名又は名称】タクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義久
(72)【発明者】
【氏名】清野 龍太郎
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE06
4C066FF10
4C066KK05
4C267AA71
4C267BB24
4C267BB37
4C267BB40
4C267CC01
4C267HH07
4C267HH09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスを提供する。
【解決手段】液体を収容したシリンジ1の先端に着脱自在に装着される筒状のアプリケーター本体3と、アプリケーター本体の先端側に取り付けられ、マイクロニードル5bを備えたニードルアレイ5を備えたマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAであり、アプリケーター本体の基端部側にシリンジの先端の液体注出部2に接続される接続筒部が形成され、アプリケーター本体の先端部側に接続筒部に連通された延出筒部13が形成され、延出筒部の先端部にマイクロニードルを複数アレイ状に配置したニードルアレイが取り付けられるとともに、アプリケーター本体の先端側に接続筒部の長さ方向に移動自在、かつ、アプリケーター本体の先端側に突出自在にテンションリング8が装着され、延出筒部の外周に前記テンションリングを接続筒部の先端前方側に付勢する付勢部材17が設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容したシリンジの先端に着脱自在に装着される筒状のアプリケーター本体と、該アプリケーター本体の先端側に取り付けられ、マイクロニードルを備えたニードルアレイを備えたマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスであり、
前記アプリケーター本体の基端部側に前記シリンジの先端の液体注出部に接続される接続筒部が形成され、前記アプリケーター本体の先端部側に前記接続筒部に連通された延出筒部が形成され、該延出筒部の先端部に前記マイクロニードルを複数アレイ状に配置した前記ニードルアレイが取り付けられるとともに、前記アプリケーター本体の先端に該先端から突出され、前記アプリケーター本体の長さ方向に移動自在にテンションリングが装着され、前記アプリケーター本体の内部に前記テンションリングを前記アプリケーター本体の先端側に付勢する付勢部材が設けられたことを特徴とするマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【請求項2】
前記付勢部材が前記延出筒部の外周に巻装されたコイルスプリングであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【請求項3】
前記付勢部材が前記延出筒部の外周に巻装された樹脂製のラバーリングであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【請求項4】
前記アプリケーター本体の先端部内面に該アプリケーター本体の長さ方向に沿う案内凹部が形成され、前記テンションリングがその外周部に突出形成された案内凸部を前記案内凹部に挿入し、前記アプリケーター本体の先端部内面に沿って前記接続筒部の長さ方向に移動自在に挿入されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【請求項5】
前記テンションリングの先端面に滑り止め部材が一体または別体で装着されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【請求項6】
液体を収容したシリンジの先端に着脱自在に装着される筒状のアプリケーター本体と、該アプリケーター本体の先端側に装着され、マイクロニードルを備えたニードルアレイを備えたマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスであり、
前記アプリケーター本体の基端部側に前記シリンジの先端の液体注出部に接続される接続筒部が形成され、前記アプリケーター本体の先端部側に前記接続筒部に連通された延出筒部が形成され、該延出筒部の先端部に前記マイクロニードルを複数アレイ状に配置した前記ニードルアレイが取り付けられるとともに、前記アプリケーター本体の先端側に樹脂からなるラッパ状の拡張部材が前記延出筒部の先端の前記マイクロニードルよりも前方かつ周囲に拡張するように取り付けられたことを特徴とするマイクロニードルアレイ穿刺用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬物を非侵襲的に投与する手段の一つとして、経皮吸収製剤による経皮的な薬物投与が行なわれているが、皮膚には極めて高度なバリアー機能が備わっているため、投与部位である皮膚から薬物を吸収させて、体の広い範囲に薬効を発現させることは一般的に困難とされている。
従って、高分子薬物のような皮膚透過性が低い薬物は経皮吸収剤への応用が困難であり、現状でこれらの薬物は依然として注射剤による投与が主流となっている。
【0003】
以上のような背景の下、侵襲性が低い注射の技術開発が進められており、その一つとしてマイクロニードルが開発されている。マイクロニードルは、皮膚に刺しても痛みを感じないほどに微細化された針である。マイクロニードルの材質としては、従来の注射針と同じ金属製の他、シリコン等の高分子材料からなるマイクロニードルが開発されている。
【0004】
これらのマイクロニードルは、注射針と同様の中空構造を有するもので、針長が数百μm程度の大きさであり、皮膚に薬液を注入するタイプである。
従来のマイクロニードルとして、上述の長さの複数の針をアレイ状に複数本配列した構造が知られている。
しかし、従来のマイクロニードルは、包装容器から取り出す際、意図せずに針の先端に触れてしまい、針を汚染させるか、または破損させてしまう懸念があった。
このため、以下の特許文献1に記載の技術のように、包装容器からのマイクロニードルアレイの取り出し、穿刺、保持、廃棄の一連のプロセスを、意図せずに針に触れることなく実施できるマイクロニードル穿刺デバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のマイクロニードルアレイは、外筒に内筒をスライド自在に嵌め込み、外筒の頂壁と内筒の頂壁を貫通したプランジャの先端にマイクロニードルを取り付け、内筒によってマイクロニードルを保護した構造としている。そして、内筒下端の開口部を皮膚に押し当て、プランジャによってマイクロニードルを皮膚に接近させて穿刺し、表皮を貫通したマイクロニードルによって真皮まで薬液を注入できるようになっている。
【0007】
しかし、マイクロニードルを穿刺する表皮は柔軟であり、マイクロニードルの針長が数百μm程度であることから、穿刺する場合に表皮が穿刺方向に逃げて、穿刺が不充分となるおそれがあり、真皮まで薬液を注入できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑み、なされたものであり、マイクロニードルを皮膚に確実に穿刺することができ、穿刺性を向上させることができるマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスは、液体を収容したシリンジの先端に着脱自在に装着される筒状のアプリケーター本体と、該アプリケーター本体の先端側に取り付けられ、マイクロニードルを備えたニードルアレイを備えたマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスであり、前記アプリケーター本体の基端部側に前記シリンジの先端の液体注出部に接続される接続筒部が形成され、前記アプリケーター本体の先端部側に前記接続筒部に連通された延出筒部が形成され、該延出筒部の先端部に前記マイクロニードルを複数アレイ状に配置した前記ニードルアレイが取り付けられるとともに、前記アプリケーター本体の先端に該先端から突出され、前記アプリケーター本体の長さ方向に移動自在にテンションリングが装着され、前記アプリケーター本体の内部に前記テンションリングを前記アプリケーター本体の先端側に付勢する付勢部材が設けられたことを特徴とする。
【0010】
(2)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスにおいて、前記付勢部材が前記延出筒部の外周に巻装されたコイルスプリングであることが好ましい。
【0011】
(3)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスにおいて、前記付勢部材が前記延出筒部の外周に巻装された樹脂製のラバーリングであることが好ましい。
【0012】
(4)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスにおいて、前記アプリケーター本体の先端部内面に該アプリケーター本体の長さ方向に沿う案内凹部が形成され、前記テンションリングがその外周部に突出形成された案内凸部を前記案内凹部に挿入し、前記アプリケーター本体の先端部内面に沿って前記接続筒部の長さ方向に移動自在に挿入されたことが好ましい。
【0013】
(5)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスにおいて、前記テンションリングの先端面に滑り止め部材が一体または別体で装着されたことが好ましい。
【0014】
(6)本形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスは、液体を収容したシリンジの先端に着脱自在に装着される筒状のアプリケーター本体と、該アプリケーター本体の先端側に装着され、マイクロニードルを備えたニードルアレイを備えたマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスであり、前記アプリケーター本体の基端部側に前記シリンジの先端の液体注出部に接続される接続筒部が形成され、前記アプリケーター本体の先端部側に前記接続筒部に連通された延出筒部が形成され、該延出筒部の先端部に前記マイクロニードルを複数アレイ状に配置した前記ニードルアレイが取り付けられるとともに、前記アプリケーター本体の先端側に樹脂からなるラッパ状の拡張部材が前記延出筒部の先端の前記マイクロニードルよりも前方かつ周囲に拡張するように取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリンジに収容した液体をマイクロニードルを用いて皮膚に注射する場合、アプリケーター本体の先端部に突出しているテンションリングを皮膚に押し付け、皮膚の一部をテンションリングの先端部で押し込むことにより、テンションリングの内側の皮膚を凸型に盛り上げつつ皮膚を拡張した状態に保持できる。
この状態からシリンジの先端を更に皮膚に接近させると、マイクロニードルを皮膚に穿刺することができる。凸型に盛り上げ、拡張した状態の皮膚はマイクロニードルの穿刺を受けても、皮膚逃げが起こり難いので、長さと太さが1mm以下のマイクロニードルであっても皮膚の目的の位置に目的の深さに正確に穿刺することができる。
従って、シリンジに収容したインスリンや麻酔などの投与、各種ワクチンの接種、あるいは美容液、その他の医薬品などの液体を経皮下へマイクロニードルにより注入する場合、確実かつ正確な注入ができる。
【0016】
また、マイクロニードルが樹脂製である場合、折損の危険があるが、穿刺操作以外の保管時や搬送時、包装容器からの取り出し時、穿刺するための取り扱い中などにおいて、マイクロニードルをアプリケーター本体とテンションリングがガードしているので、穿刺時以外の取り扱い時におけるマイクロニードルの折損を防止できる。
【0017】
付勢部材による弾性力に抗するようにアプリケーター本体先端部のテンションリングをアプリケーター本体内に押し込むことでマイクロニードルを皮膚に接近させ穿刺することができる。この場合、皮膚に対しシリンジの方向を直角に向けたままシリンジを皮膚に対し押し込むことで、マイクロニードルを皮膚に対し直角に穿刺することができる。従って、マイクロニードルを皮膚の必要な深さに穿刺し、液体を皮膚の必要な深さに正確に注入することができる。
【0018】
本発明において、アプリケーター本体の先端側に樹脂からなるラッパ状の拡張部材をマイクロニードルよりも前方かつ周囲に拡張するように取り付けることで、マイクロニードルの穿刺時にマイクロニードルよりも先にラッパ状の拡張部材先端を皮膚に押し付け、皮膚を押し広げることができる。この状態の皮膚にマイクロニードルを穿刺することで、皮膚逃げを防止し、正確かつ確実に皮膚にマイクロニードルを穿刺できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの部分断面図である。
【
図2】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に接触させた状態を示す部分断面図である。
【
図3】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に押し付けて皮膚を伸長させた状態を示す部分断面図である。
【
図4】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部により伸長させた皮膚にマイクロニードルアレイの針部を穿刺した状態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの部分断面図である。
【
図6】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に接触させた状態を示す部分断面図である。
【
図7】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に押し付けて皮膚を伸長させた状態を示す部分断面図である。
【
図8】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部により伸長させた皮膚にマイクロニードルアレイの針部を穿刺した状態を示す部分断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの部分断面図である。
【
図10】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に接触させた状態を示す部分断面図である。
【
図11】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部により伸長させた皮膚にマイクロニードルアレイの針部を穿刺した状態を示す部分断面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの部分断面図である。
【
図13】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部を皮膚に接触させた状態を示す部分断面図である。
【
図14】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部により伸長させた皮膚にマイクロニードルアレイの針部を穿刺した状態を示す部分断面図である。
【
図15】同マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスの先端部により伸長させた皮膚にマイクロニードルアレイの針部を穿刺した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図16】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイとニードルホルダを一体成形した構成を示す部分断面図である。
【
図17】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイとニードルホルダを接着した構成を示す部分断面図である。
【
図18】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるテンションリングの第2形態を示す断面図である。
【
図19】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるテンションリングの第3形態を示す断面図である。
【
図20】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイの第2の例を示す断面図である。
【
図21】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイの第3の例を示す断面図である。
【
図22】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイの第4の例を示す断面図である。
【
図23】マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスに適用されるマイクロニードルアレイの第5の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1実施形態」
以下、第1実施形態に基づいて本発明に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスについて詳細に説明するが、本発明は以下に記載する実施形態に制限されるものではない。
図1は、第1実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスを示す。本実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAは、
図1に示すように先端部を下に向けて皮膚などの穿刺対象物Fに対し対向させたシリンジ1の先端側に装着されている。マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAは、シリンジ1の先端部に突出されている薬液等の液体注出筒(液体注出部)2に装着された筒状のアプリケーター本体3を有し、このアプリケーター本体3の先端側中央にニードルアレイ5が取り付けられている。
【0021】
本実施形態のニードルアレイ5は、樹脂により成形された円盤状の基部5aとこの基部5aの表面に樹脂により基部5aに対し一体成形された複数本のマイクロニードル5bを備える。マイクロニードル5bの長さは1mm以下、例えば200μm~800μm程度、太さも1mm以下に形成され、マイクロニードル5bは、例えば、先端を徐々に先細り形状とする針状に形状され、アレイ状に配置されている。
図1では略されているが、マイクロニードル5bの内部にはその底部から先端部に至る液体注出孔が形成されている。また、基部5aの裏面側に裏面の半径より若干小さい平面視円形状の凹部が形成され、マイクロニードル5bの液体注出孔がこの凹部に連通されている。なお、基部5aに設けた凹部を略し、マイクロニードル5bの液体注出孔が基部5aの厚さ方向を貫通して基部5aの裏面側まで到達されている構成としても良い。
マイクロニードル5bは基部5aの表面に数本~数10本、互いの間に所定の間隔をあけてアレイ状に配列されている。
【0022】
ニードルアレイ5を形成するための材料には、各種の合成樹脂を適用することができる。ニードルアレイ5が合成樹脂から形成される場合、基部5aおよびマイクロニードル5bは、一体に成形された樹脂製の一体成形物であってもよい。
合成樹脂には、例えば、汎用の合成樹脂、医療用の合成樹脂、および、化粧品用の合成樹脂などを挙げることができる。より具体的に、合成樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、および、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを選択することができる。合成樹脂には、上述した樹脂の群に含まれる2つ以上の樹脂を共重合させた樹脂を用いることもできる。ニードルアレイ5を構成する各部は、互いに異なる樹脂から形成されてもよい。また、ニードルアレイ5をPGA樹脂(ポリグリコール酸樹脂)等の生体分解性の樹脂で形成することもできる。なお、マイクロニードル5bはステンレス鋼などの金属材料から構成されていても良い。
【0023】
シリンジ1は、一端に開口部を有し、他端の端面壁1aに小径の液体注出筒2を形成した筒本体6からなる円筒状であり、
図1では液体注出筒2を下向きとしてシリンジ1を直立させた状態で描いている。筒本体6の下端部には液体注出筒2の周囲を囲むように筒本体6に一体形成された外筒部7が形成され、外筒部7の内周面には内ねじ部8が形成されている。この内ねじ部8に螺合するようにアプリケーター本体3が設けられている。
図1に示すアプリケーター本体3は、外筒部7より若干内径の大きな円筒状の筒壁部10と、この筒壁部10の高さ(長さ)方向中央部に形成された仕切壁部11と、この仕切壁部11の上部側に形成された接続筒部12と、仕切壁部11の下部側に形成された延出筒部13を備えている。
図1に示すようにシリンジ1の先端に装着されたアプリケーター本体3において接続筒部12はアプリケーター本体3の基端部側に形成され、延出筒部13はアプリケーター本体3の先端部側に形成されている。
【0024】
接続筒部12は、液体注出筒2に外挿可能な内径を有する。
図1の構成で液体注出筒2は若干先窄まり状に形成されているので、接続筒部12は若干上広がり状に形成されている。接続筒部12は、その先端部に形成された周突部15を外筒部7の内ねじ部8に係合することで液体注出筒2に対し着脱自在に螺合されている。
図1に示すように接続筒部12の上端を内ねじ部8の最奥側まで達するように螺合した場合、外筒部7の下端は接続筒部12の下部側に達する長さに形成され、同状態で筒壁部10の上端部は外筒部7の高さ(長さ)方向中央部側に達する長さに形成されている。
【0025】
延出筒部13は、接続筒部12よりも若干短く形成され、その上部から下部までほぼ同一の内径と同一の外径を有する筒状に形成されている。延出筒部13は接続筒部12よりも若干肉厚に形成され、延出筒部13の外周側にはコイルスプリングからなる付勢部材17が巻装されている。また、延出筒部13の下端(先端)側にテンションリング18が設けられている。
テンションリング18は、
図1に示す状態において、その上部側を筒壁部10の内側に挿入し、その下部側を筒壁部10の下端から下方(外側)に突出させて延出筒部13の下端部と筒壁部10の下端部の間に延出筒部13の長さ方向に移動自在に挿入されている。
テンションリング18の外周面下部側にテンションリング18の先端部18bを徐々に薄くするような凹曲面18cが形成されている。テンションリング18の外周面に凹曲面18cを設けることでテンションリング18の先端側は若干先窄まり形状とされている。
【0026】
筒壁部10の下端部内周面に筒壁部10の長さ(高さ)方向に沿って所定長さを有する所定の深さの案内凹部19が形成されている。そして、テンションリング18の上部外周に形成されている案内突部18aを上述の案内凹部19に挿入してテンションリング18が上下移動できる範囲が規定され、テンションリング18が抜け止めされている。
案内凹部19が形成されているのは、筒壁部10において仕切壁部11の形成位置よりも若干下方から、筒壁部10の下端部近くまでである。テンションリング18の高さは仕切壁部11の形成位置から筒壁部10の下端(先端)までの高さより若干低く形成されている。
【0027】
また、テンションリング18の上にはコイルスプリングからなる付勢部材17が設けられている。付勢部材17の自由高さは、仕切壁部11の下端から案内凹部19の下端までの距離より若干低く設定されている。
図1に示すようにマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAを下向きとした場合、案内突部18aを案内凹部19の下端近くまで下降させた位置でテンションリング18は静止し、付勢部材17は仕切壁部11とテンションリング18との間に位置する。
【0028】
また、上述の状態において、テンションリング18は、その先端部18bを筒壁部10の先端(下端)から外方(下方)に所定長さ突出させている。
図1の例では、マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAを下向きとした場合、凹曲面18cと先端部18bが筒壁部10の先端から外側に突出されている。
また、テンションリング18を筒壁部10の内部に押し込むように上昇させると、付勢部材17が弾性反発力を作用させてテンションリング18の上昇に抗する力を発生させる。
【0029】
先に説明したニードルアレイ5が延出筒部13の先端面に接着などの接合方法により取り付けられている。先に説明したように基部5aの裏面側中央に凹部が形成されているので、この凹部が延出筒部13の内部流路に連通するようにニードルアレイ5が延出筒部13の先端面に固定されている。
【0030】
マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAは、インスリンや麻酔などの投与、各種ワクチンの接種、あるいは美容液、その他の医薬品などの液体を経皮下へ注入するために使用する。
マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAを使用するには、シリンジ1の内部に必要な薬液などの液体を収容し、シリンジ1の開口部側に図示略のプランジャを差し込み、
図1に示すようにテンションリング18の先端部18bを下に向けて皮膚などの穿刺対象物Fに対し対向させる。
次に、
図2に示すようにテンションリング18の先端部18bを穿刺対象物Fの表面に突き当て、
図3に示すようにテンションリング18の先端部18bを穿刺対象物Fの表面に押し付ける。この操作により、テンションリング18の先端部18bを穿刺対象物Fの表面に食い込ませるように押し付けることができる。
図3に示す状態ではテンションリング18が付勢部材17を撓ませながらその弾発力により一定の食い込み力を発生させつつテンションリング18の内側の皮膚の表面に張力を与え、皮膚の表面を凸型に隆起させることができる。
【0031】
張力を与えて凸型に隆起させた皮膚の表面に向け、シリンジ1を更に押し込むことにより、マイクロニードル5bを確実に皮膚に穿刺することができる。また、シリンジ1にプランジャを押し込むことでシリンジ1内の液体を皮膚に対しマイクロニードル5bを介し確実に注入することができる。人間や動物の皮膚は軟らかいので、マイクロニードル5bのみを直接被覆に穿刺しようとした場合、皮膚逃げが起こり、皮膚にマイクロニードル5bを充分に穿刺できないおそれがある。
人間の皮膚の表面10~15μm程度は角質層であると云われ、その下に厚さ200μm程の表皮が存在し、その下の厚さ1~3mm程度が真皮であるといわれている。
例えば、300~800μm程度の長さのマイクロニードル5bであれば、表皮あるいは真皮に対し確実に薬液などの液体を注入することができる。また、マイクロニードル5bは1本1本が極めて細いため、適用者に痛みを与えることなく経皮下への液体の注入が可能となる。
【0032】
マイクロニードル5bは細さと長さが1mm未満であり、極めて細く、樹脂製である場合に簡単に折損するおそれがある。これに対し、
図1に示すマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAであれば、テンションリング18とアプリケーター本体3がマイクロニードル5bの周囲を取り囲み、保護しているので液体の注入時以外の取扱中にマイクロニードル5bが折損するなどの問題は生じ難い。
【0033】
また、マイクロニードル5bが上述の細さと長さを有し、樹脂製であると、皮膚に穿刺した状態で患者が腕を動かすとマイクロニードル5bが折損するおそれもある。この点においてテンションリング18により皮膚を押さえて拡張し、凸型に隆起させた状態で穿刺する動作であると、マイクロニードル5bが位置ずれするおそれも少なく、マイクロニードル5bの折損を防止できる。また、付勢部材17の弾性力を利用し、テンションリング18を皮膚に押し付ける場合、付勢部材17の弾性力によりテンションリング18を皮膚に対し均一に押し付け可能となる。テンションリング18を皮膚に対し均一な力で押し付けることにより、マイクロニードル5bを皮膚表面に対し直角に近い理想的な角度で穿刺可能となる。
【0034】
なお、マイクロニードル5bを穿刺する位置が骨の直上の皮膚である場合、皮膚に単純に引張力を与えつつ穿刺しようとすると、マイクロニードル5bが穿刺するべき位置において充分な厚さの皮膚を確保できず、マイクロニードル5bの穿刺性が不安定となるおそれがある。これに対し、皮膚を凸型に隆起させつつマイクロニードル5bを穿刺する構成であると、必要な厚さの皮膚を確実に確保することができ、マイクロニードル5bの穿刺性向上に寄与する。
従って、シリンジに収容したインスリンや麻酔などの投与、各種ワクチンの接種、あるいは美容液や、その他医薬品などの液体を経皮下へマイクロニードルにより注入する場合、確実かつ正確な注入ができる。
【0035】
なお、マイクロニードル5bが樹脂製である場合、折損の危険があるが、穿刺操作以外の保管時や搬送時、包装容器からの取り出し時、穿刺するための取り扱い中などにおいて、マイクロニードル5bをアプリケーター本体3とテンションリング18がガードしているので、穿刺時以外の取り扱い時におけるマイクロニードル5bの折損を防止できる。
【0036】
「第2実施形態」
図5は、第2実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスを示す。
本実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスBは、
図5に示すように先端部を下に向けて皮膚などの穿刺対象物Fに対し対向させたシリンジ1の先端側に装着されている。マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスBは、シリンジ1の先端部に突出されている薬液等の液体注出筒(液体注出部)2に装着された筒状のアプリケーター本体3を有し、このアプリケーター本体3の先端側中央にニードルホルダ20を介しニードルアレイ5が取り付けられている。
【0037】
アプリケーター本体3は、第1実施形態のアプリケーター本体3と同等構造である。アプリケーター本体3の延出筒部13の先端にキャップ状のニードルホルダ20が嵌着されている。ニードルホルダ20は、リング状の基板21の外周に周壁部21aが形成され、基板21の中央部に注出孔21cが形成されている。注出孔21cの内径は延出筒部13の内径と等しく形成されている。
基板21の外面側に注出孔21cの開口部を閉じるようにニードルホルダ20が接着等の固定手段により取り付けられ、シリンジ1に収容した液体を液体注出筒2と延出筒部13とニードルホルダ20とマイクロニードル5bを介し注出することができる。
その他の構成は第1実施形態の構成と同様であるので、同じ構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
図5に示す第2実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスBにおいても、第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同様の目的に使用することができる。
即ち、
図6に示す状態から
図7に示すようにテンションリング18の先端部18bを皮膚に押し込み、マイクロニードル5bを皮膚に直角に穿刺し、薬液の注入などの目的を達成できる。その他の作用効果についても、マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスBは第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同等の作用効果を得ることができる。
【0039】
「第3実施形態」
図9は、第3実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスを示す。
本実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスCは、
図9に示すように先端部を下に向けて皮膚などの穿刺対象物Fに対し対向させたシリンジ1の先端側に装着されている。マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスCは、シリンジ1の先端部に突出されている薬液等の液体注出筒(液体注出部)2に装着された筒状のアプリケーター本体3を有し、このアプリケーター本体3の先端側中央にニードルアレイ5が取り付けられている構造について、第1実施形態の構造と同等である。
第3実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスCにおいては、アプリケーター本体3の内部であって、延出筒部13の外周側に配置されている付勢部材22が弾性体からなる筒状に形成されている。その他の構成は第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同一であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0040】
図9に示す第3実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスCにおいても、第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同様の目的に使用することができる。
即ち、
図10に示す状態から
図11に示すようにテンションリング18の先端部18bを皮膚に押し込み、マイクロニードル5bを皮膚に直角に穿刺し、薬液の注入などの目的を達成できる。第3実施形態においては、コイルスプリングから構成されていた第1実施形態の付勢部材17の代わりに弾性体からなる筒状の付勢部材22を設けたので、テンションリング18の先端部18bを皮膚に押し込んだ場合、
図11に示すように付勢部材22の断面がC字状に撓み、テンションリング18の先端部18b全周を皮膚に対し均等の圧力で押し込み、目的を達成することができる。
第3実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスCは、その他の作用効果についても、第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同等の作用効果を得ることができる。
【0041】
「第4実施形態」
図12は、第4実施形態に係るマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスを示す。
本実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスDは、
図12に示すように先端部を下に向けて皮膚などの穿刺対象物Fに対し対向させたシリンジ1の先端側に装着されている。マイクロニードルアレイ穿刺用デバイスDは、シリンジ1の先端部に突出されている薬液等の液体注出筒(液体注出部)2に装着された筒状のアプリケーター本体30を有し、このアプリケーター本体30の先端側中央にニードルアレイ5が取り付けられている構造について、第1実施形態の構造と同等である。
【0042】
第4実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスDにおいて、アプリケーター本体30は、第1実施形態に係るアプリケーター本体3の筒壁部10に対し、半分程度の高さの筒壁部31を有する。筒壁部31の下部に仕切壁部11が形成されているが、仕切壁部11の下方に設けられていた第1実施形態の筒壁部10の下部側に相当する部分が略されている。
第4実施形態では、仕切壁部11の下方に延出筒部13のみが突出形成されている。延出筒部13の高さ(長さ)と厚さは第1実施形態の延出筒部13と同等である。
【0043】
この延出筒部13の外周部には下向きのラッパ型の肉厚の拡張部材(ラバーリング)33が取り付けられている。
この拡張部材33は、全体がゴムなどの弾性体からなり、延出筒部13の外周に嵌め込まれた筒状の固定部33aと、固定部33aの下方側であって延出筒部13の下方に向かうにつれてラッパ型に拡張された拡張部33bとからなる。
図12に示す第4実施形態の構成において、拡張部33bの外径は、延出筒部13の外径より1.5倍程度大きく形成されている。拡張部材33の肉厚は延出筒部13の肉厚と同程度の肉厚に形成されている。
【0044】
固定部33aはその上端から下端まで同一内径を有し、延出筒部13の外周に嵌着されている。拡張部33bの内面側には拡張部材33の内面全周に渡るリング突部33c、33dが隣接形成されている。リング突部33c、33dはいずれも横断面三角錘型の突条であり、内周側のリング突部33cより外周側のリング突部33dの方が若干大きな内径に形成されている。
その他の構成は第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同一であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0045】
図12に示す第4実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスDにおいても、第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同様の目的に使用することができる。
即ち、
図13に示す状態から
図14に示すように拡張部材33を皮膚に対し押し込み、マイクロニードル5bを皮膚表面に対し直角に穿刺し、薬液の注入などの目的を達成できる。
第4実施形態は、コイルスプリングから構成されていた第1実施形態の付勢部材17の代わりに、ゴムなどの弾性体からなるラッパ状の肉厚の拡張部材33を設けたことを特徴とする。
【0046】
シリンジ1を皮膚に対し直角に押し込み、拡張部33bの内面側を皮膚の表面に押し付けると、
図14、
図15に示すように拡張部33bの内面側のリング突部33c、33dを皮膚の表面に押し付けることができるとともに、押し付けた皮膚をリング突部33c、33dで外側方向に押し拡げるように、かつ、リング突部33c、33dで皮膚を押し込んで皮膚の表面に第14図に示すような環状の凹溝部38を形成するように力を付加できる。
このため、リング突部33cの内側の皮膚の表面を凸型に隆起させ、皮膚表面に張力を付加できる。そして、この隆起した凸型の皮膚の表面に対しマイクロニードル5bを直角に穿刺し、薬液の注入などの目的を達成できる。
第4実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスDは、その他の作用効果についても、第1実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスAと同等の作用効果を得ることができる。
【0047】
図16は、
図5~
図8を基に説明した第2実施形態のニードルアレイ5とニードルホルダ20に関し、ニードルアレイ5とニードルホルダ20を同一の樹脂で一体成形した例を示し、
図17は、ニードルアレイ5とニードルホルダ20を別々に形成し、両者を接着などの接合手段で一体化した場合の構成を示す。
図17に示すニードルアレイ5の基部5aにおいて、裏面側(上面側)外周部に接着剤を塗布し、基部5aの裏面側をニードルホルダ20の基板21の下面側に接着し、両者を一体化することができる。
【0048】
図18は、第1~第3実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスA、B、Cに設けられているテンションリング18に対し、その先端部18bの先端面に、滑り止め用の凹凸部を表面に有する滑り止め部材(滑り止め防止リング)40を設けた例を示す。
滑り止め部材40を設けることで、例えば、
図2~
図3に示すように穿刺対象物Fに対しテンションリング18を押し込んだ場合、横ずれを防止できる。従って、皮膚に対する穿刺時にマイクロニードル5bの針折れを防止できる。
【0049】
図19は、第1~第3実施形態のマイクロニードルアレイ穿刺用デバイスA、B、Cに設けられているテンションリング18に対し、その先端部18bの先端面に、滑り止め用の凹凸部を表面に有する滑り止め材(滑り防止リング)41を接着あるいは嵌め込み等の取付手段により設けた例を示す。
滑り止め部材41を設けることで、例えば、
図2~
図3に示すように穿刺対象物Fに対しテンションリング18を押し込んだ場合、横ずれを防止できる。従って、皮膚に対する穿刺時にマイクロニードル5bの針折れを防止できる。
【0050】
図20は、ニードルアレイ5を接着により延出筒部13の先端に取り付ける場合の第2の例を示し、
図21は、ニードルアレイ5を備えたキャップ状のニードルホルダ20を延出筒部13の先端に取り付ける場合の第3の例を示す。
ニードルホルダ20を利用してニードルアレイ5を延出筒部13に取り付ける場合、
図22に示す第4の例のように延出筒部13の先端部に外ねじ部13aを形成し、この外ねじ部13aに螺合可能な内ねじ部21bをニードルホルダ20の周壁部内面に形成した構造を採用することができる。
図22に示す構成を採用することで、外ねじ部13aと内ねじ部21bの螺合により延出筒部13の前端部にニードルホルダ20を取り付けることができる。
【0051】
図22の構成では、外ねじ部13aと内ねじ部21bの螺合を解除し、ニードルホルダ20とニードルアレイ5を簡単に取り外すことができる。ニードルホルダ20とニードルアレイ5を取り外した後、別の新しい未使用のニードルホルダ20とニードルアレイ5に交換することができる。
図22の構造を採用すると、使用前に、仮に取付済のニードルアレイ5に支障を生じた場合、別の新しい未使用のニードルホルダ20とニードルアレイ5に交換することができる。
【0052】
図23は、ニードルホルダ20を利用してニードルアレイ5を延出筒部13に取り付ける場合の第5の例を示し、
図23に示すように延出筒部13の先端部の周回りに複数のフック部13b間欠的に形成し、このフック部13bに嵌合可能な凹溝部21dをニードルホルダ20の周壁部21aの内面に間欠的に複数設けた構造を採用することができる。
図23では図示を略しているが、周壁部21aの開口部にフック部13bを凹溝部21dに導入するための溝部を形成しておき、この溝部を介しフック部13bが凹溝部21dに嵌入自在としておくことで、延出筒部13に対するニードルホルダ20の取り付けができる。
【0053】
図23に示す凹溝部21cに延出筒部13のフック部13bを係止することにより、ニードルホルダ20を利用し、ニードルアレイ5をワンタッチで簡単に嵌合し、取り付けができる。
図23に示す構成であれば、ニードルアレイ5を備えたニードルホルダ20をワンタッチで簡単に取り外し可能である。このため、仮に取付済のニードルアレイ5に支障を生じた場合、別の新しい未使用のニードルホルダ20とニードルアレイ5に簡単に交換することができる。
【符号の説明】
【0054】
A、B、C、D…マイクロニードルアレイ穿刺用デバイス、1…シリンジ、2…液体注出筒(液体注出部)、3…アプリケーター本体、5…ニードルアレイ、5a…基部、5b…マイクロニードル、6…筒本体、7…外筒部、8…内ねじ部、10…筒壁部、11…仕切壁部、12…接続筒部、13…延出筒部、17…付勢部材、18…テンションリング、18a…案内凸部、18b…先端部、19…案内凹部、20…ニードルホルダ、22…付勢部材、30…アプリケーター本体、33…拡張部材(ラバーリング)、40、41…滑り止め材。