(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047649
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20230330BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20230330BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
F16N31/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156692
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ヒロミ
【テーマコード(参考)】
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA23
3J104AA24
3J104AA36
3J104AA64
3J104AA74
3J104BA21
3J104BA33
3J104DA05
3J104DA15
3J701AA02
3J701AA34
3J701AA44
3J701AA52
3J701AA64
3J701CA14
3J701FA32
(57)【要約】
【課題】転動体に対して長期間にわたって安定に潤滑剤を供給することが可能な直動案内ユニットを提供する。
【解決手段】直動案内ユニットは、レールと、ケーシングと、複数の転動体と、一対の方向変換部材とを備える。方向変換部材は、ケーシング側を向く第1端面と、第1端面と反対の端面であって第1端面側に向かって凹む凹部が形成される第2端面と、を含む。直動案内ユニットは、ケーシング内に配置され、多孔質材料からなり、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間が形成される潤滑剤タンクと、上記凹部内に配置され、多孔質材料からなり、方向変換路に露出する部分を含む潤滑部材と、潤滑剤タンクに繋がる第1端部および潤滑部材に繋がる第2端部を含み、方向変換部材を長手方向に貫通し、多孔質材料からなる接続部材と、をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、
前記レールおよび前記ケーシングの間に前記レールおよび前記ケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、
前記ケーシングの前記長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備え、
前記レールは、前記長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、前記長手方向に延びる一対のレール側転走面を含み、
前記ケーシングは、
ケーシング本体と、
前記ケーシング本体の前記幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含み、
前記一対の袖部には、前記一対のレール側転走面に対向するとともに前記長手方向に延び、前記レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されており、
前記ケーシングには、前記一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、前記ケーシングを前記長手方向に貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されており、
前記一対の方向変換部材には、前記転動体転走路と前記リターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されており、
前記転動体は、前記転動体転走路、前記リターン路および前記方向変換路によって形成される環状の軌道を循環し、
前記方向変換部材は、前記ケーシング側を向く第1端面と、前記第1端面と反対の端面であって前記第1端面側に向かって凹む凹部が形成される第2端面と、を含み、
前記ケーシング内に配置され、多孔質材料からなり、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間が形成される潤滑剤タンクと、
前記凹部内に配置され、多孔質材料からなり、前記方向変換路に露出する部分を含む潤滑部材と、
前記潤滑剤タンクに繋がる第1端部および前記潤滑部材に繋がる第2端部を含み、前記方向変換部材を前記長手方向に貫通し、多孔質材料からなる接続部材と、をさらに備えた、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記潤滑剤タンクは、前記長手方向に延びる形状を有し、
前記潤滑剤タンクは、開口端と、前記長手方向において前記開口端と反対の閉口端と、を含み、
前記潤滑剤タンクは、前記開口端を前記方向変換部材側に向けて配置され、
前記開口端は、前記第1端部により塞がれている、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記長手方向に並べて配置される複数の前記潤滑剤タンクを備え、
複数の前記潤滑剤タンクは、互いに接触するように配置されている、請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記接続部材は、中実の部材である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転動体に潤滑剤(潤滑油)を供給するための潤滑部材を備えた直動案内ユニットが知られている。この種の技術が、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、直動案内ユニットにおいて、転動体の保持板にパイプが挿入されるとともに、当該パイプ内に潤滑油が貯留されることが開示されている。特許文献1では、当該パイプの長手方向の端部が貯油板に接続されており、当該パイプ内の貯油室から貯油板へ潤滑油が流動可能となっている。特許文献2には、スライダ内に潤滑剤が貯留される直動案内ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-181724号公報
【特許文献2】特開2016-56936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される直動案内ユニットでは、パイプ内の貯油室から貯油板への潤滑剤の流入量を調整することが困難である。このため、パイプ内の貯油室から貯油板へ多量の潤滑剤が流入し、当該貯油室内における潤滑剤の貯留量が早期に減少する場合がある。したがって、従来の直動案内ユニットでは、転動体に対して長期間にわたって安定に潤滑剤を供給するのが困難という課題がある。
【0006】
本開示の目的は、転動体に対して長期間にわたって安定に潤滑剤を供給することが可能な直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、レールおよびケーシングの間にレールおよびケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、ケーシングの長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備える。レールは、長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、長手方向に延びる一対のレール側転走面を含む。ケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含む。上記一対の袖部には、上記一対のレール側転走面に対向するとともに長手方向に延び、レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されている。ケーシングには、上記一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシングを長手方向に貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されている。上記一対の方向変換部材には、上記転動体転走路とリターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されている。転動体は、上記転動体転走路、リターン路および上記方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。方向変換部材は、ケーシング側を向く第1端面と、第1端面と反対の端面であって第1端面側に向かって凹む凹部が形成される第2端面と、を含む。上記直動案内ユニットは、ケーシング内に配置され、多孔質材料からなり、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間が形成される潤滑剤タンクと、上記凹部内に配置され、多孔質材料からなり、上記方向変換路に露出する部分を含む潤滑部材と、潤滑剤タンクに繋がる第1端部および潤滑部材に繋がる第2端部を含み、方向変換部材を長手方向に貫通し、多孔質材料からなる接続部材と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、転動体に対して長期間にわたって安定に潤滑剤を供給することが可能な直動案内ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る直動案内ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、スライダの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2中の線分III-IIIに沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図2中の線分IV-IVに沿った断面図である。
【
図5】
図5は、潤滑剤タンクの全体構成を示す側面図である。
【
図6】
図6は、潤滑剤タンクの全体構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、接続部材の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、レールの長手方向に沿って移動可能なケーシングと、レールおよびケーシングの間にレールおよびケーシングに接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体と、ケーシングの長手方向の両端に配置される一対の方向変換部材と、を備える。レールは、長手方向に垂直な幅方向の両側に配置され、長手方向に延びる一対のレール側転走面を含む。ケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の幅方向の両側に接続される一対の袖部と、を含む。上記一対の袖部には、上記一対のレール側転走面に対向するとともに長手方向に延び、レール側転走面との間に一対の転動体転走路を形成するケーシング側転走面が形成されている。ケーシングには、上記一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシングを長手方向に貫通する貫通孔である一対のリターン路が形成されている。上記一対の方向変換部材には、上記転動体転走路とリターン路とを繋ぐ方向変換路が形成されている。転動体は、上記転動体転走路、リターン路および上記方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。方向変換部材は、ケーシング側を向く第1端面と、第1端面と反対の端面であって第1端面側に向かって凹む凹部が形成される第2端面と、を含む。上記直動案内ユニットは、ケーシング内に配置され、多孔質材料からなり、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間が形成される潤滑剤タンクと、上記凹部内に配置され、多孔質材料からなり、上記方向変換路に露出する部分を含む潤滑部材と、潤滑剤タンクに繋がる第1端部および潤滑部材に繋がる第2端部を含み、方向変換部材を長手方向に貫通し、多孔質材料からなる接続部材と、をさらに備える。
【0011】
上記直動案内ユニットによれば、潤滑剤タンクが多孔質材料からなるため、液状の潤滑剤が潤滑剤タンクの細孔構造内に保持される。そして、潤滑剤タンクに貯留される液状の潤滑剤が、接続部材の細孔構造内に保持されるとともに潤滑部材へと徐々に供給される。このため、潤滑剤タンクから潤滑部材への潤滑剤の供給速度が、接続部材の細孔構造により抑制される。したがって、潤滑剤タンクから潤滑部材へ潤滑剤が直接供給される場合と異なり、潤滑剤タンクから潤滑部材への潤滑剤の供給速度が過剰になるのを抑制することができる。よって、上記直動案内ユニットによれば、潤滑剤タンクに貯留される潤滑剤が早期に消費されるのを抑制し、転動体に対して長期間にわたって安定に潤滑剤を供給することができる。
【0012】
上記直動案内ユニットにおいて、潤滑剤タンクは、長手方向に延びる形状を有していてもよい。潤滑剤タンクは、開口端と、長手方向において上記開口端と反対の閉口端と、を含んでいてもよい。潤滑剤タンクは、上記開口端を方向変換部材側に向けて配置されていてもよい。上記開口端は、第1端部により塞がれていてもよい。この構成によれば、潤滑剤タンクの開口端から接続部材へ潤滑剤を効率的に供給することができるとともに、当該開口端から潤滑剤が漏れるのを抑制することができる。
【0013】
上記直動案内ユニットは、長手方向に並べて配置される複数の潤滑剤タンクを備えていてもよい。複数の潤滑剤タンクは、互いに接触するように配置されていてもよい。この構成によれば、長手方向が鉛直方向に沿った姿勢で直動案内ユニットが配置される場合に、鉛直方向下側の潤滑剤タンク(多孔質材料からなる潤滑剤タンク)の潤滑剤が消費された後も、鉛直方向上側の潤滑剤タンク(多孔質材料からなる潤滑剤タンク)の潤滑剤を鉛直方向下側の潤滑剤タンクへ供給することができる。したがって、直動案内ユニットのメンテナンスフリーの期間をより長期化することができる。
【0014】
上記直動案内ユニットにおいて、接続部材は、中実の部材であってもよい。この構成によれば、潤滑剤タンクから潤滑部材への潤滑剤の供給速度が過剰になるのをより効果的に抑制することができる。
【0015】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
まず、本実施の形態に係る直動案内ユニット1の構成を、
図1~
図7に基づいて説明する。
図1は、直動案内ユニット1の全体構成を示す斜視図である。
図2は、スライダ20の全体構成を示す斜視図である。
図3は、
図2中の線分III-IIIに沿った断面図である。
図4は、
図2中の線分IV-IVに沿った断面図である。
図5は、潤滑剤タンクの構成を示す側面図である。
図6は、潤滑剤タンクの構成を示す斜視図である。
図7は、接続部材の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、直動案内ユニット1は、レール10と、スライダ20とを主に備える。レール10は、長手方向D1に直線状に延びている。スライダ20は、レール10を幅方向D2の両側から挟むように、当該レール10に取り付けられている。スライダ20は、レール10の長手方向D1に沿って移動可能(スライド可能)になっている。スライダ20は、ケーシング21と、一対の方向変換部材(第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23)とを含む。
図1に示すように、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23は、ケーシング21の長手方向D1の両端にそれぞれ配置されている。
【0018】
図4に示すように、レール10は、第1レール面13と、第2レール面14と、一対のレール側転走面(第1レール側転走面11および第2レール側転走面12)とを含む。第1レール面13は、ケーシング21側を向く面である。第2レール面14は、上下方向D3(長手方向D1および幅方向D2の両方に直交する方向)において、第1レール面13と反対を向く面である。第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、レール10の幅方向D2(長手方向D1および上下方向D3に垂直な方向)の両側に配置されている。第1レール面13、第2レール面14、第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、それぞれ長手方向D1に延びている。
図4に示すように、第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、長手方向D1に見て、幅方向D2および上下方向D3の両方に対して傾斜している。本実施の形態では、第1レール側転走面11および第2レール側転走面12は、上下方向D3に2つずつ並んで形成されている。
【0019】
ケーシング21は、ケーシング本体63と、一対の袖部(第1袖部61および第2袖部62)とを含む。
図4に示すように、ケーシング本体63は、長手方向D1に見て、幅方向D2に直線状に延びている。ケーシング本体63は、幅方向D2においてレール10よりも外側に位置する第1端部63Aと、幅方向D2においてレール10よりも外側に位置するとともに第1端部63Aと反対の第2端部63Bとを含む。上記一対の袖部は、ケーシング本体63の幅方向D2の両側に接続されている。
図4に示すように、第1袖部61は、ケーシング本体63の幅方向D2の中央部と第1端部63Aとの間から第2レール面14に近づくように上下方向D3に延びている。第2袖部62は、ケーシング本体63の幅方向D2の中央部と第2端部63Bとの間から第2レール面14に近づくように上下方向D3に延びている。
【0020】
ケーシング本体63には、複数(本実施の形態では2つ)の貫通穴26が幅方向D2に互いに間隔を空けて形成されている。貫通穴26は、長手方向D1に見て円形を有し(
図4)、ケーシング本体63を長手方向D1に貫通する(
図3)。
【0021】
上記一対の袖部には、上記一対のレール側転走面に対向する一対のケーシング側転走面(第1ケーシング側転走面61Aおよび第2ケーシング側転走面62A)が形成されている。第1ケーシング側転走面61Aは、第1レール側転走面11に平行であり、長手方向D1に延びている。第2ケーシング側転走面62Aは、第2レール側転走面12に平行であり、長手方向D1に延びている。
図4に示すように、第1ケーシング側転走面61Aおよび第2ケーシング側転走面62Aは、上下方向D3に2つずつ並んで形成されている。
【0022】
ケーシング21は、長手方向D1における端面であるケーシング端面29を含む(
図4)。ケーシング端面29に、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23(
図1)がそれぞれ接触するように配置されている。
図4に示すように、第1袖部61は、幅方向D2においてレール10と反対を向く第1ケーシング側面61Cを含む。第2袖部62は、幅方向D2においてレール10と反対を向く第2ケーシング側面62Cを含む。
【0023】
図4に示すように、直動案内ユニット1は、レール10およびケーシング21の間にレール10およびケーシング21に接触しつつ転走可能に配置される複数の転動体(第1転動体71および第2転動体72)を備える。第1ケーシング側転走面61Aは、第1レール側転走面11との間に第1転動体転走路(一対の転動体転走路のうち一方)を形成している。当該第1転動体転走路に、複数の第1転動体71が長手方向D1に並べて配置されている。第1転動体71は、円筒ころであり、外周面が第1レール側転走面11および第1ケーシング側転走面61Aに接触している。
【0024】
第2ケーシング側転走面62Aは、第2レール側転走面12との間に第2転動体転走路(一対の転動体転走路のうち他方)を形成している。当該第2転動体転走路に、複数の第2転動体72が長手方向D1に並べて配置されている。第2転動体72は、円筒ころであり、外周面が第2レール側転走面12および第2ケーシング側転走面62Aに接触している。なお、第1転動体71および第2転動体72は、円筒ころに限定されず、例えばボールであってもよい。
【0025】
ケーシング21には、一対のリターン路(第1リターン路61Bおよび第2リターン路62B)が形成されている。上記一対のリターン路は、上記一対のレール側転走面のそれぞれに沿って延び、ケーシング21を長手方向D1に貫通する貫通孔である。
図4に示すように、第1リターン路61Bは、長手方向D1に見て円形の貫通孔であり、一方のケーシング端面29から他方のケーシング端面29まで至るように第1袖部61を長手方向D1に貫通している。本実施の形態では、第1リターン路61Bは、第1袖部61において上下方向D3に2つ並んで形成されている。
【0026】
第2リターン路62Bは、第1リターン路61Bと同様に、長手方向D1に見て円形の貫通孔である。第2リターン路62Bは、一方のケーシング端面29から他方のケーシング端面29まで至るように第2袖部62を長手方向D1に貫通している。本実施の形態では、第2リターン路62Bは、第2袖部62において上下方向D3に2つ並んで形成されている。第1袖部61の長手方向D1の端面には、第1リターン路61Bの長手方向D1の端部である開口が形成されている。第2袖部62の長手方向D1の端面には、第2リターン路62Bの長手方向D1の端部である開口が形成されている。
【0027】
直動案内ユニット1は、第1転動体71をケーシング21(第1袖部61)に対して保持する第1保持板81と、第2転動体72をケーシング21(第2袖部62)に対して保持する第2保持板82とを備える。第1保持板81は、長手方向D1に延び、第1袖部61とともに第1転動体71を挟持する。より具体的には、第1転動体71の軸方向の一方の端面が第1袖部61の内面に接触し、第1転動体71の軸方向の他方の端面が第1保持板81に接触する。第1保持板81は、例えば第1バンド81Aにより第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23(
図1)に対して支持されている。
【0028】
第1保持板81と同様に、第2保持板82は、長手方向D1に延び、第2袖部62とともに第2転動体72を挟持する。より具体的には、第2転動体72の軸方向の一方の端面が第2袖部62の内面に接触し、第2転動体72の軸方向の他方の端面が第2保持板82に接触する。第2保持板82は、例えば第2バンド82Aにより第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23(
図1)に対して支持されている。
【0029】
図3に示すように、第1エンドキャップ22には、上記第1転動体転走路と第1リターン路61B(
図4)とを繋ぐ第1方向変換路22Aが形成されている。より具体的には、上下2つの第1転動体転走路のうち第1レール面13に近い方の第1転動体転走路と、上下2つの第1リターン路61Bのうち第1レール面13から遠い方の第1リターン路61Bとが、第1方向変換路22Aにより繋がっている。また上下2つの第1転動体転走路のうち第1レール面13から遠い方の第1転動体転走路と、上下2つの第1リターン路61Bのうち第1レール面13に近い方の第1リターン路61Bとが、第1方向変換路22Aにより繋がっている。
【0030】
図3に示すように、第2エンドキャップ23にも、第1エンドキャップ22と同様に、2つの第1方向変換路23Aが形成されている。スライダ20(
図1)がレール10の長手方向D1に沿って直線的に移動すると、第1転動体71(
図4)は、上記第1転動体転走路、第1リターン路61Bおよび第1方向変換路22A,23Aによって形成される環状の軌道を循環する。
【0031】
図示は省略するが、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23には、上記第2転動体転走路と第2リターン路62B(
図4)とを繋ぐ第2方向変換路が、第1方向変換路22A,23A(
図3)と同様に形成されている。このため、スライダ20(
図1)がレール10に沿って直線的に移動するのに伴い、第2転動体72(
図4)は、上記第2転動体転走路、第2リターン路62Bおよび第2方向変換路によって形成される環状の軌道を循環する。
【0032】
図3に示すように、第1エンドキャップ22は、ケーシング21側を向く第1端面24と、長手方向D1において第1端面24と反対の端面である第2端面25とを含む。第2端面25には、第1端面24に向かって凹む第1凹部22Bが形成されている。第1エンドキャップ22には、第1凹部22Bの底面から第1端面24まで長手方向D1に第1エンドキャップ22を貫通する第1貫通穴22Cが形成されている。第1貫通穴22Cは、例えば円柱形状を有する。
【0033】
第1エンドキャップ22と同様に、第2エンドキャップ23は、ケーシング21側を向く第1端面28と、長手方向D1において第1端面28と反対の端面である第2端面27とを含む。第2端面27には、第1端面28に向かって凹む第2凹部23Bが形成されている。第2エンドキャップ23には、第2凹部23Bの底面から第1端面28まで長手方向D1に第2エンドキャップ23を貫通する第2貫通穴23Cが形成されている。第2貫通穴23Cは、例えば円柱形状を有する。
【0034】
図3に示すように、直動案内ユニット1は、複数(本実施の形態では2つ)の潤滑剤タンク(第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33)と、複数(本実施の形態では2つ)の潤滑部材(第1潤滑部材52および第2潤滑部材53)と、複数(本実施の形態では2つ)の接続部材(第1接続部材42および第2接続部材43)とを備える。
【0035】
第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33は、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間32A,33Aが形成されるものであり、ケーシング21内に配置されている。より具体的には、
図3に示すように、第1潤滑剤タンク32は、長手方向D1に延びる形状を有し、第1開口端32Bおよび長手方向D1において第1開口端32Bと反対の第1閉口端32Cを含む。第1潤滑剤タンク32は、第1開口端32Bを第1エンドキャップ22側(第1潤滑部材52側)に向けて、より具体的には第1開口端32Bの端面がケーシング21の長手方向D1の端面と略面一になるように、貫通穴26に挿入されている。
【0036】
第2潤滑剤タンク33は、第1潤滑剤タンク32と略同じ大きさおよび形状を有し、第1潤滑剤タンク32と長手方向D1に並べて配置されている。より具体的には、第2潤滑剤タンク33は、第2開口端33Bおよび長手方向D1において第2開口端33Bと反対の第2閉口端33Cを含み、貫通穴26に挿入されている。第2開口端33Bは、第2潤滑部材53側を向いており、その端面はケーシング21の長手方向D1の端面と略面一になっている。
【0037】
第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33は、互いに接触するように配置されている。より具体的には、
図3に示すように、第1潤滑剤タンク32の底部(第1閉口端32Cおよび第2潤滑剤タンク33の底部(第2閉口端33C)が、互いに接触している。第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33は、いずれも、例えばポリエチレンなどの多孔質材料からなる。
図5および
図6に示すように、第1潤滑剤タンク32は、第1開口端32Bが第1開口端32B以外の部分よりも径方向に広がった形状を有する(第2潤滑剤タンク33も同様)。このような第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33の構成により、直動案内ユニット1の組み立て作業を行い易くなっている。
【0038】
図2に示すように、第1潤滑部材52および第2潤滑部材53は、第1エンドキャップ22および第2エンドキャップ23に沿った形状を有するプレート状の部材である。第1潤滑部材52は、第1潤滑剤タンク32と同様の多孔質材料からなり、第1凹部22B内に配置されている(
図3)。
図3に示すように、第1潤滑部材52は、第1凹部22B内に配置される第1プレート本体52Aと、第1プレート本体52Aの表面からケーシング21側へ突出するとともに第1方向変換路22Aに露出する第1露出部52Bとを含む。第1転動体71は、第1露出部52Bに接触することによって潤滑される。
【0039】
第2潤滑部材53は、第2潤滑剤タンク33と同様の多孔質材料からなり、第2凹部23B内に配置されている(
図3)。
図3に示すように、第2潤滑部材53は、第2凹部23B内に配置される第2プレート本体53Aと、第2プレート本体53Aの表面からケーシング21側へ突出するとともに第1方向変換路23Aに露出する第2露出部53Bとを含む。第1転動体71は、第2露出部53Bに接触することによって潤滑される。
【0040】
図3に示すように、第1接続部材42は、第1潤滑剤タンク32と第1潤滑部材52とを接続する部材であり、第1貫通穴22Cに挿入されている。第1接続部材42は、第1潤滑剤タンク32および第1潤滑部材52と同様の多孔質材料からなり、第1エンドキャップ22を長手方向D1に貫通する。
図3に示すように、第1接続部材42は、第1潤滑剤タンク32に繋がる(接触する)第1端部42Aと、第1潤滑部材52(第1プレート本体52A)に繋がる(接触する)第2端部42Bとを含む。第1開口端32Bは、第1端部42Aにより塞がれている。
【0041】
図7に示すように、本実施の形態における第1接続部材42は、中実の円筒形状を有する部材である。本実施の形態では、第1接続部材42の長手方向の長さL1が、第1接続部材42の幅方向の長さL2よりも大きくなっている。
【0042】
図3に示すように、第2接続部材43は、第2潤滑剤タンク33と第2潤滑部材53とを接続する部材であり、第1接続部材42と同様の多孔質材料からなる。第2接続部材43は、中実の円筒形状を有し、第2潤滑剤タンク33に繋がる第1端部43Aおよび第2潤滑部材53(第2プレート本体53A)に繋がる第2端部43Bを含む。第2開口端33Bは、第1端部43Aにより塞がれている。
【0043】
以上の通り、本実施の形態に係る直動案内ユニット1によれば、第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33に貯留される液状の潤滑剤が、第1接続部材42および第2接続部材43の細孔を通過して第1潤滑部材52および第2潤滑部材53にそれぞれ供給される。このため、各潤滑剤タンクから各潤滑部材への潤滑剤の供給速度が、接続部材の細孔構造により抑制される。したがって、潤滑剤タンクから潤滑部材へ潤滑剤が直接供給される場合と異なり、潤滑剤タンクから潤滑部材への潤滑剤の供給速度が過剰になるのを抑制することができる。よって、本実施の形態に係る直動案内ユニット1によれば、潤滑剤タンクに貯留される潤滑剤が早期に消費されるのを抑制し、転動体を長期間にわたって安定に潤滑することができる。
【0044】
ここで、その他実施の形態について説明する。
【0045】
上記実施の形態では、第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33がそれぞれ第1開口端32Bおよび第2開口端33Bを有する場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33は、液状の潤滑剤を貯留可能な内部空間32A,33Aが閉空間となっていてもよい。この場合、第1潤滑剤タンク32の多孔質の壁部に第1接続部材42の第1端部42Aが接続され、第2潤滑剤タンク33の多孔質の壁部に第2接続部材43の第1端部43Aが接続される。
【0046】
上記実施の形態では、第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33が貫通穴26内において互いに接触する場合を一例として説明したがこれに限定されず、第1潤滑剤タンク32および第2潤滑剤タンク33が互いに離間していてもよい。また、1つの貫通穴26内に複数の潤滑剤タンクが並べて配置される場合に限定されず、1つの貫通穴26内に単一の潤滑剤タンクのみが配置されてもよい。
【0047】
上記実施の形態では、第1接続部材42および第2接続部材43が中実の部材である場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第1接続部材42および第2接続部材43のうち一方又は両方が、中空部が形成された筒状の部材であってもよい。
【0048】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 直動案内ユニット、10 レール、11 第1レール側転走面、12 第2レール側転走面、13 第1レール面、14 第2レール面、20 スライダ、21 ケーシング、22 第1エンドキャップ、22A 第1方向変換路、22B 第1凹部、22C 第1貫通穴、23 第2エンドキャップ、23A 第1方向変換路、23B 第2凹部、23C 第2貫通穴、24,28 第1端面、25,27 第2端面、26 貫通穴、29 ケーシング端面、32 第1潤滑剤タンク、32A,33A 内部空間、32B 第1開口端、32C 第1閉口端、33 第2潤滑剤タンク、33B 第2開口端、33C 第2閉口端、42 第1接続部材、42A,43A 第1端部、42B,43B 第2端部、43 第2接続部材、52 第1潤滑部材、52A 第1プレート本体、52B 第1露出部、53 第2潤滑部材、53A 第2プレート本体、53B 第2露出部、61 第1袖部、61A 第1ケーシング側転走面、61B 第1リターン路、61C 第1ケーシング側面、62 第2袖部、62A 第2ケーシング側転走面、62B 第2リターン路、62C 第2ケーシング側面、63 ケーシング本体、63A 第1端部、63B 第2端部、71 第1転動体、72 第2転動体、81 第1保持板、81A 第1バンド、82 第2保持板、82A 第2バンド、D1 長手方向、D2 幅方向、D3 上下方向。