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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047722
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】紫外線除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156810
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】502437492
【氏名又は名称】株式会社ヨシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 芳隆
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA26
4C058BB06
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】紫外線光源の数を少なくしても被処理物の表面全体を除菌することができる紫外線除菌装置を提供する。
【解決手段】紫外線除菌装置10は、被処理物(ボールB)を所定の処理位置100に1個ずつ供給する被処理物供給機構11と、処理位置100で被処理物を回転させる被処理物回転機構16と、処理位置100で回転する被処理物に紫外線を照射する紫外線照射部13と、処理位置100から被処理物を排出する被処理物排出機構17とを備える。回転しつつ処理位置100に留まっている被処理物に紫外線を照射するため、紫外線光源の数を少なくしつつ、被処理物の表面全体を除菌することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を所定の処理位置に1個ずつ供給する被処理物供給機構と、
前記処理位置で被処理物を回転させる被処理物回転機構と、
前記処理位置で回転する被処理物に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記処理位置から被処理物を排出する被処理物排出機構と
を備えることを特徴とする紫外線除菌装置。
【請求項2】
前記被処理物回転機構が、前記被処理物をその下部において支持する3個以上の回転体と、前記回転体のうちの少なくとも1個を回転させる駆動部とを有する、請求項1に記載の紫外線除菌装置。
【請求項3】
前記被処理物回転機構が、平行に配置された2個の回転軸を備え、前記回転体が、前記2個の回転軸の各々に2個ずつ設けられた計4個の回転体からなり、
前記被処理物排出機構が、前記2個の回転軸のそれぞれを支持する2個の支持部と、前記4個の回転体が被処理物を支持可能なように前記2個の回転軸を近づけた第1状態と、前記4個の回転体が該被処理物を支持不能なように前記2個の回転軸を離間させた第2状態との間で前記支持部のうちの一方又は双方を移動させる移動機構とを有する、
請求項2に記載の紫外線除菌装置。
【請求項4】
前記紫外線照射部が、前記被処理物回転機構が前記被処理物を回転させる方向と交差する方向に沿って円弧状に配置された複数個の紫外線光源を備える、請求項3に記載の紫外線除菌装置。
【請求項5】
前記被処理物供給機構が、
前記処理位置に被処理物を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記処理位置側の端部に、被処理物の搬送方向に回転可能に設けられた回転体であって、該回転体の回転中心から放射状に延びる複数本のアーム部を有する順送り回転体と、
前記複数本のアーム部のうち隣り合う2本のアーム部に挟まれた領域が順に前記処理位置を向くように前記順送り回転体を間欠的に回転させるモータと
を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に紫外線を照射することにより該被処理物を除菌する装置に関し、特に、球形、楕円球形若しくは円筒形、又はそれらの形状に近似した形状を有する被処理物を除菌する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バスケットボールやバレーボール等のボールを使用するスポーツでは、競技中及び練習中において、複数の選手が同じボールに触れる。もし、それら複数の選手中に病原性の細菌、ウィルス等の感染者が存在すると、感染者が触れたボールが細菌やウィルスに汚染されそのボールを介して他の選手に感染するリスクがある。そのようなリスクを低減するために、使用後のボールを除菌したいという要請がある。
【0003】
特許文献1には、多数のローラを並置して成るローラコンベアを備え、該ローラコンベアで搬送中の被処理物に紫外線を照射する紫外線除菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64-026041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被処理物の除菌効果を高めるためには、該被処理物表面の全体にくまなく紫外線を照射する必要がある。そこで、特許文献1に記載の紫外線除菌装置では、ローラコンベアの上方の被処理物搬送空間を取り囲むように、該搬送空間の上側、両側方、及び各隣接ローラ間(下方)のそれぞれに紫外線光源を配置している。ところが、被処理物搬送空間を取り囲む複数箇所に紫外線光源を配置する構成では、多くの紫外線光源が必要になるという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線光源の数を少なくしても被処理物の表面全体を除菌することができる紫外線除菌装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る紫外線除菌装置は、
被処理物を所定の処理位置に1個ずつ供給する被処理物供給機構と、
前記処理位置で被処理物を回転させる被処理物回転機構と、
前記処理位置で回転する被処理物に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記処理位置から被処理物を排出する被処理物排出機構と
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る紫外線除菌装置によれば、被処理物回転機構によって回転しつつ処理位置に留まっている被処理物に紫外線を照射するため、従来の(被処理物が搬送される空間を取り囲むように紫外線光源が設けられた)紫外線除菌装置よりも紫外線照射部(紫外線光源)の数を少なくしても、被処理物の表面全体を除菌することができる。
【0009】
本発明では、被処理物回転機構によって回転させることが可能なものを被処理物とする。典型的には、バレーボールやバスケットボールのような球形のボールが挙げられるが、ラグビーボールのような楕円球形のボールであってもよい。また、球形、楕円球形若しくは円筒形、又はそれらの形状に近似した形状等(但し、ここで例示した形状には限定されない)のように、被処理物回転機構によって回転させることが可能な形状を有している物であれば、果物や野菜等、ボール以外のものを被処理物としてもよい。
【0010】
前記被処理物回転機構は、前記被処理物をその下部において支持する3個以上の回転体と、該回転体のうちの少なくとも1個を回転させる駆動部とから構成することができる。
前記3個以上の回転体が例えば全方向に回転自在な車輪であり、前記駆動部が前記回転体のうちの1個を様々な方向に回転させる構成である場合、該1個の回転体の回転に伴い被処理物が該回転体の回転方向と反対方向に回転し、これに伴い残りの回転体が該1個の回転体と同方向に回転する。このような構成によれば、紫外線照射部からの紫外線が被処理物の表面の一部に照射するだけで、該被処理物の表面全体を除菌することができる。
【0011】
また、前記3個以上の回転体が例えば一方向に回転自在な車輪であり、前記駆動部が前記回転体のうちの1個を一方向に回転させる構成である場合は、紫外線照射部からの紫外線が、被処理物の表面のうち該被処理物の回転方向と交差する帯状の領域に照射されるようにする。このような構成によれば、被処理物が1回転する間に該被処理物の表面全体に紫外線照射部からの紫外線が照射されるため、該被処理物の表面全体を除菌することができる。
【0012】
さらにまた、前記被処理物回転機構は、平行に配置された2本の回転軸と、該2本の回転軸の各々に2個ずつ設けられた計4個の回転体と、前記2本の回転軸のうちの一方を回転する駆動部とから構成することができる。この構成では、被処理物を4個の回転体の上に載置したうえで、前記2本の回転軸の一方を回転させる。これにより、その回転軸に設けられた2個の回転体が回転し、それに伴い被処理物が該回転体の回転方向と逆方向に回転する。また、他方の回転軸に設けられた2個の回転体は、被処理物の回転に伴い該被処理物の回転方向と逆方向に回転する。このような構成によれば、4個の回転体によって被処理物を安定的に支持した状態で該被処理物を回転させることができる。なお、被処理物の重量が大きい場合などは、前記駆動部は前記2本の回転軸の両方を回転させるとよい。
【0013】
前記2本の回転軸の各々に2個ずつ設けられた計4個の回転体によって被処理物を支持しつつ回転させる構成の場合、前記被処理物排出機構を、前記2個の回転軸のそれぞれを支持する2個の支持部と、前記4個の回転体が被処理物を支持可能なように前記2個の回転軸が近づいた第1状態と、前記4個の回転体が該被処理物を支持不能なように前記2個の回転軸が離間した第2状態との間で前記支持部のうちの一方又は双方を移動させる移動機構とから構成することができる。
【0014】
上記構成では、前記支持部を第1状態にした上で、処理位置に被処理物を供給する。また、被処理物の除菌が終了すると、前記支持部を移動させて第2状態にする。これにより、2本の回転軸が離間して被処理物が4個の回転体によって支持されなくなり、該被処理物が処理位置から排出される。処理位置から排出された被処理物は、例えば処理位置の下方にカゴ等の回収容器を配置しておくことで該回収容器に回収することができる。
【0015】
また、本発明に係る紫外線除菌装置においては、前記被処理物供給機構が、
前記処理位置に被処理物を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記処理位置側の端部に、被処理物の搬送方向に回転可能に設けられた回転体であって、該回転体の回転中心から放射状に延びる複数本のアーム部を有する順送り回転体と、
前記順送り回転体を間欠的に回転させる順送り回転体駆動機構と
を備える、という構成をとることができる。
【0016】
前記順送り回転体は、搬送路を搬送されてくる被処理物を1個ずつ処理位置に供給するための部材であり、複数本のアーム部のうち隣り合う2本のアーム部で1個の被処理物を保持できるように、各アーム部の長さ、隣り合うアーム部の角度間隔、アーム部の本数等が設定されている。上記構成によれば、搬送路に沿って該搬送路の処理位置側の端部まで搬送されてきた被処理物は、順送り回転体の隣り合う2本のアーム部で保持されつつ、該順送り回転体の間欠的な回転により処理位置に投入される。順送り回転体は、例えば120度の角度間隔で設けられた3本のアーム部を有する構成とすることができる。
【0017】
上記搬送路は、例えば2本のレールから構成することができる。また、前記搬送路を、被処理物の投入側の端部から処理位置側の端部に向かって下方に傾斜するように構成すると、該搬送路の投入側の端部上に載置された被処理物を自重によって処理位置側の端部に到達させることができる。
【0018】
なお、本発明に係る紫外線除菌装置においては、前記処理位置に被処理物が存在するか否かを判定する被処理物存在判定部を備え、前記処理位置に被処理物が存在することが前記被処理物存在判定部によって判定されると、前記紫外線照射部が被処理物に対して紫外線を照射するという構成を取ることができる。
上記構成によれば、処理位置に被処理物が存在しない状態で紫外線照射部から紫外線が無駄に出射されることがなくなる。
【0019】
被処理物存在判定部としては、処理位置に被処理物が存在するか否かを直接的に検出する例えば光センサや重量センサを用いることができる。また、被処理物存在判定部は、被処理物供給機構が被処理物を処理位置に供給したことに基づき該処理位置に被処理物が存在すると判定するようにしてもよい。
【0020】
また、本発明に係る紫外線除菌装置は、前記処理位置に供給された被処理物と前記紫外線照射部の距離を検出する測距センサと、前記測距センサで検出された距離が所定の範囲内となるように前記紫外線照射部を移動させる光源移動機構とを備える構成とすることができる。
【0021】
上記構成によれば、被処理物の大きさに関係なく紫外線照射部と被処理物の距離を適切に設定することができ、それにより適切な強度の紫外線を被処理物に照射することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る紫外線除菌装置によれば、紫外線光源の数を少なくしても被処理物の表面全体を除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る紫外線除菌装置の一実施形態を示す側面図(a)及び上面図(b)。
図2】本実施形態の紫外線除菌装置が有する被処理物供給機構の構成を示す側面図。
図3】本実施形態の紫外線除菌装置が有する被処理物回転機構及び被処理物排出機構の構成を示す側面図(a)、並びに被処理物排出機構の動作を示す側面図(b)。
図4】本実施形態の紫外線除菌装置が有する紫外線照射部及び光源移動機構を示す側面図。
図5】本実施形態の紫外線除菌装置が有する遮光カバー及び遮光カバー移動機構を示す側面図。
図6】被処理物供給機構の動作を時系列に沿って示す側面図。
図7図6の例とは異なる径のボール(被処理物)を対象とした場合における被処理物供給機構の動作を時系列に沿って示す側面図。
図8】光源移動機構の動作を示す側面図であって、或るボールの大きさに合わせて紫外線照射部を移動させた状態を示す図(a)、及び該ボールよりも小さいボールの大きさに合わせて紫外線照射部を移動させた状態を示す図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図8を用いて、本発明の一実施形態に係る紫外線除菌装置10を説明する。この紫外線除菌装置10は、主にバスケットボール、バレーボール、ハンドボール等のボール(被処理物)を除菌することを目的として製作された装置である。
【0025】
図1に示すように、この紫外線除菌装置10は、被処理物供給機構11と、被処理物検知センサ12と、紫外線照射部13と、光源移動機構14と、遮光カバー15と、被処理物回転機構16と、被処理物排出機構17と、これら各部を制御する制御部(図示せず)とを備える。これら各部は、平面視で「コ」の字形である金属製の台枠18の上に設けられている。台枠18は4本の脚19(図1(a)では手前側の2本のみ示す)で支持されている。また、台枠18の上には、被処理物供給機構11の一部と、被処理物検知センサ12と、紫外線照射部13と、光源移動機構14と、遮光カバー15と、被処理物回転機構16と、被処理物排出機構17を覆う第1ハウジング21が設けられている。また、第1ハウジング21と連接して、被処理物供給機構11の他の一部を覆う第2ハウジング22が設けられている。第1ハウジング21と第2ハウジング22の境界には第1開口211が、第2ハウジング22の第1ハウジング21とは反対側の側面には第2開口221が、それぞれ設けられている。第1開口211及び第2開口221はいずれも、被処理物が通過可能な大きさを有する。以下、上記各部の構成を詳細に説明する。
【0026】
被処理物供給機構11は、図1及び図2に示すように、ガイドレール111(搬送路)と、ボールストッパ112(順送り回転体)と、ボールストッパ回転用のギヤモータ(順送り回転体駆動部)113と、ボールセンサ114と、ボールストッパ112の回転位置検出用の回転位置センサ115と、ソレノイドロック116と、ソレノイドタイマー117とを備える。
【0027】
ガイドレール111は、被処理物であるボールのいずれの直径(ハンドボールの直径(160mm)、バレーボールの直径(190mm)及びバスケットボールの直径(245mm))よりも短い長さである131.3mmの間隔をおいて並設された2本の金属製のレールから成る。ガイドレール111は上面視(図1(b))して略U字、より具体的には「U」の字の左右の縦線のうちの一方が他方よりもやや長い形状を有しており、該一方の端部から該他方の端部に向かって下降するように傾斜している。以下、ガイドレール111の一方の端部側を上流側、他方の端部側を下流側という。また、該他方(下流側)の端部を「端部1110」という。被処理物はガイドレール111の被処理物供給機構11よりも上流側に載置される。
【0028】
ボールストッパ112は、ガイドレール111の端部1110付近の2本のレール間に配置されている。前記ボールストッパ112は、ガイドレール111の下部に配置された該ガイドレール111と直交する方向に延びる回転軸1121と、この回転軸1121の外周面に等角度間隔で設けられた放射状に延びる3本の棒状のアーム部1122とから成る。回転軸1121にはギアモータ113の出力軸が連結されている。
【0029】
本実施形態では、3本のアーム部1122のうちの1本が回転軸1121の上に直立した状態で停止するように、ギアモータ113は回転軸1121を120°ずつ間欠的に回転させる。また、1本のアーム部1122が回転軸1121の上に直立した状態にあるとき、該アーム部1122がガイドレール111よりも所定の長さだけ上方に突出するように、回転軸1121の位置、アーム部1122の長さが定められている。ここで「所定の長さ」とは、ガイドレール111に沿って搬送されてきたボールが、直立状態にあるアーム部1122を乗り越えることなく該アーム部1122に当接する長さをいう。アーム部1122をこのような長さに設定することにより、ガイドレール111の端部1110においてボールを停止させることができる。
【0030】
なお、ボールストッパ112は4本以上のアーム部を備えていてもよいが、アーム部の数が多すぎると隣り合う2本のアーム部の間隔が狭くなり、ボールを停止させることができないため、アーム部の数は3本~5本程度が好ましい。
【0031】
ボールセンサ114は、ガイドレール111の下部であってボールストッパ112よりも上流側の位置に配置されており、該位置にボールが存在するか否かを検出する。回転位置センサ115は、ボールストッパ112の1本のアーム部1122が直立状態にあることを検出する。
【0032】
ソレノイドロック116は、鉄芯とバネとソレノイド(コイル)から成るものである。ソレノイドロック116は、ソレノイドに通電されていないときには鉄芯がバネによってソレノイドから突出した状態となり、ソレノイドに通電されているときにはソレノイドによって生じる磁界によってバネの付勢力に抗して鉄芯がソレノイド内に没入した状態となる。ソレノイドロック116は、ソレノイドから突出した鉄芯がボールストッパ112のアーム1122と交差するように配置されており、ボールストッパ112が有する3本のアーム部1122のうちの1本が直立状態にあるとき、ソレノイドから突出状態にある鉄芯にアーム部1122の他の2本のアーム部1122のうちの一方が接触し、ボールストッパ112の回転が阻止される。一方、ソレノイド内に鉄芯が没入しているときは該鉄芯はアーム部1122から離れている。ソレノイドタイマー117は後述のように、ソレノイドロック116のソレノイドに電流を供給してから所定時間が経過後に電流の供給を停止させるよう、該所定時間をカウントするタイマーである。
【0033】
被処理物回転機構16及び被処理物排出機構17は、ガイドレール111の端部1110側に配置されている。前記被処理物回転機構16の上がボールBの除菌処理を行う処理位置100となる。被処理物検知センサ12は、処理位置100にボールBが存在するか否かを検出するセンサである。
【0034】
図3(a)及び(b)に示すように、被処理物回転機構16は、ガイドレール111の延びる方向に対してほぼ垂直で且つほぼ水平な2本の軸のうちの一方に支持された2個の動輪161と、他方の軸に支持された2個の従輪162と、前記動輪161が支持された軸を矢印A2方向に回転させる動輪回転モータ163とを備える。2個の動輪161と2個の従輪162はほぼ同じ高さに位置している。また、2個の動輪161の間隔、2個の従輪162の間隔は、いずれもガイドレール111の間隔よりもやや大きく設定されている。
【0035】
被処理物排出機構17は、前記2個の動輪161を支持する軸が取り付けられた固定台170と、前記2個の従輪162を支持する軸が取り付けられた可動台171と、該可動台171を移動させる可動台移動モータ172と、第1可動台検知センサ173と、第2可動台検知センサ174とを備える。固定台170と可動台171はほぼ同じ高さに位置しており、可動台移動モータ172の動作により、可動台171は固定台170に近接する位置と該固定台170と離間した位置との間で移動される。第1可動台検知センサ173、第2可動台検知センサ174は、可動台171が近接位置、離間位置にあることを検出する。
【0036】
可動台171が近接位置にあるとき(図3(a))、2個の動輪161と2個の従輪162との間の距離が被処理物となるボールの直径の最小値よりも小さくなるように構成されており、2個の動輪161と2個の従輪162はボールを支持可能な状態となる。このとき、可動台171と固定台170によって2個の動輪161と2個の従輪162の下方部が閉鎖された状態にある。
【0037】
一方、可動台171が離間位置にあるとき(図3(b))は2個の動輪161と2個の従輪162との間の距離が被処理物となるボールの直径の最大値よりも大きくなるように構成されており、2個の動輪161と2個の従輪162はボールを支持不能な状態となる。また、このとき、2個の動輪161と2個の従輪162の下方部は開口し、ボールが通過可能な状態となる。このため、2個の動輪161と2個の従輪162によって支持されなくなったボールが処理位置100から排出される。
【0038】
台枠18の下側であって処理位置100の下方には空間が設けられており、被処理物排出機構17から排出された除菌処理後のボールを収容するボール収容カゴ90をこの空間に配置することができるようになっている(図1参照)。また、台枠18の下には、処理位置100の下方における障害物の有無を検知する障害物センサ175が設けられている(図3参照)。
【0039】
紫外線照射部13及び光源移動機構14は処理位置100の上部に配置されている。図4に示すように、紫外線照射部13は6個の紫外線光源131と、紫外線光源131と同数個の腕部132を備える。これら6個の腕部132は直列状に連結されており、隣接する腕部132間にはそれぞれ連結具(合計5個)が設けられている。5個の連結具のうち中央に設けられた中央連結具1330、左端に設けられた左連結具1331及び右端に設けられた右連結具1332はそれぞれ、隣接する2個の腕部132を、それらの間が所定の角度(例えば150°)を成すように連結している。それら以外の2つの連結具は、隣接する腕部132の成す角度が可変となるように、それら2個の腕部132を回動可能に連結する関節部133となっている。このように連結された腕部132は全体として上に凸の楕円弧状であり、各腕部132の内側面に紫外線光源131が取り付けられている。なお、この例では1個の腕部132に1個の紫外線光源131を取り付けているが、1個の腕部132に複数個の紫外線光源131を取り付けてもよい。紫外線照射部13の上端付近には、処理位置100に供給されたボールBとの距離を計測する距離計測センサ134が設けられている。
【0040】
光源移動機構14は、台枠18(図1参照)上に立設された略十字状の板状の基材141と、基材141の中央部に設けられた上下に長い主ガイド孔142と、基材141の左右両端部にそれぞれ設けられた左副ガイド孔1431及び右副ガイド孔1432と、紫外線照射部13を上下方向に移動させるモータ144とを備える。主ガイド孔142には中央連結具1330が挿通されている。左副ガイド孔1431及び右副ガイド孔1432は、上側から下側に向かうに従って互いに近接するように形成された長孔であり、それぞれ左連結具1331及び右連結具1332が挿通されている。左副ガイド孔1431及び右副ガイド孔1432の上端は主ガイド孔142の上端よりも下側にあり、左副ガイド孔1431及び右副ガイド孔1432の下端は主ガイド孔142の下端よりも下側にある。
【0041】
中央連結具1330は、モータ144によって主ガイド孔142に沿って上下動するように構成されており、該中央連結具1330の上下動に伴い、左連結具1331及び右連結具1332がそれぞれ左副ガイド孔1431、右副ガイド孔1432に沿って上下動する。これに伴い、直列状に連結された6個の腕部132が上下に移動するとともに2個の関節部133において隣接する2個の腕部132が成す角度が変化することにより、左連結具1331と右連結具1332の間の距離が長短変化する。なお、ここで「左」及び「右」は図4に示された図に従って便宜的に定めたものに過ぎず、紫外線除菌装置10の使用時の向きを限定するものではない。
【0042】
遮光カバー15は、処理位置100とガイドレール111との間に位置する状態(図1(a)及び図5に一点鎖線で示す遮光状態)と、該遮光状態から上方に回動した状態(図1(a)及び図5に実線で示す退避状態)との間で変位可能に構成されている。遮光カバー15が遮光状態にあるとき、該遮光カバー15は第1開口211を閉鎖する(図1(a)参照)。遮光カバー15は、モータ151によって遮光状態と退避状態との間で変位される。遮光カバー15の近傍には上限位置検出センサ152と、下限位置検出センサ153が設けられている。上限位置検出センサ152によって遮光カバー15が退避状態にあることが検出され、下限位置検出センサ153によって遮光カバー15が遮光状態にあることが検出される。
【0043】
次に図1図8を参照しつつ紫外線除菌装置10による除菌動作について説明する。
【0044】
紫外線除菌装置10の電源が投入されると、紫外線除菌装置10の各部が初期状態になる。具体的には、被処理物回転機構16及び被処理物排出機構17では、可動台171が近接位置にあり、2個の動輪161と2個の従輪162がボールを支持可能な状態にある。また、処理位置100の下部が可動台171と固定台170によって閉鎖された状態にある。
被処理物供給機構11においては、ボールストッパ112が、3本のアーム部1122のうちの1本が直立した状態にある。ソレノイドロック16はソレノイドへの電流の供給が停止した状態にあり、3本のアーム部1122のうちの1本のアーム部1122がソレノイドロック16の鉄芯に接触していることにより、ボールストッパ112がロックされた状態となっている。紫外線照射部13及び光源移動機構14においては、中央連結具1330は主ガイド孔142内の最上部に位置した状態にある。また、遮光カバー15は退避状態にある。
【0045】
上記の初期状態で、ボールストッパ112よりも上流寄りのガイドレール111上にボールBが載置されると、該ボールBはガイドレール111の勾配によって転がりながらガイドレール111の端部1110まで移動し、直立しているアーム部1122に当接して停止する(図6(a))。そして、該端部1110にボールBが存在することがボールセンサ114によって検出されると、該センサ114が検出してから所定の待機時間が経過した後、ソレノイドロック16のソレノイドに電流が供給されることにより、前記1本のアーム部1122に接触していたソレノイドロック16の鉄芯が該アーム部1122から離れることによりボールストッパ112のロックが解除され、ギアモータ113が駆動してボールストッパ112が矢印A1方向に回転する。ボールストッパ112が約120°回転したこと(つまり、アーム部1122が直立した状態にあること)が回転位置センサ115によって検出されるとギアモータ113が停止する。また、ソレノイドタイマー117が、ボールストッパ112が120°回転する時間よりもやや短い所定時間をカウントしたとき、ソレノイドロック16のソレノイドへの電流の供給が停止され、ボールストッパ112の回転によってアーム部1122に向けてソレノイドロック16の鉄芯が付勢され、ボールストッパ112の回転がロックされる。
【0046】
ボールストッパ112が回転することによって、直立していたアーム部1122が矢印A1方向に傾き、該アーム部1122と、これと隣接するアーム部1122との間にボールBが入り込み、保持される(図6(b), (c))。そして、ボールストッパ112が120°回転するまでの間に2本のアーム部1122に保持されていたボールBは処理位置100に送出される(図6(d), (e))。
【0047】
以上の動作により、再び、3本のアーム部1122のうちの1本が直立した状態となる。このとき、別のボールBがガイドレール111の端部1110に存在するときは、該ボールBは直立状態にあるアーム部1122に当接して停止し(図6(e))、先に処理位置100に送出されたボールBの除菌処理が終了するまで待機する。
【0048】
なお、図7は、図6に示したボールBよりも直径が小さいボールB’を処理位置100に供給する場合の動作を示している。本実施形態の被処理物供給機構11は、直径が異なる複数種類のボールを同様に処理位置100まで供給することができる。また、互いに異なる直径を有する複数個のボールがガイドレール111上に載置された場合でも、それら複数個のボールBを順次、処理位置100に供給することもできる。
【0049】
処理位置100に供給されたボールは、2個の動輪161及び2個の従輪162によって支持される。また、主ガイド孔142内の最上部に位置していた中央連結具1330がモータ144によって下降し、ボールとの距離が所定の値になったことが距離計測センサ134に検出された時点でモータ144が停止する(図8)。中央連結具1330の下降に伴い、左連結具1331及び右連結具1332がそれぞれ左副ガイド孔1431、右副ガイド孔1432に沿って下降する。これにより前記6個の腕部132の全体がボールに近づき、該ボールの少なくとも上半部を覆う。
【0050】
なお、直径が大きいボールBが処理位置100に供給された場合(図8(a))よりも、直径が小さいボールB’が処理位置100に供給された場合(図8(b))の方が、中央連結具1330の位置が低くなり、左連結具1331と右連結具1332との距離が小さくなる。つまり、いずれの場合も前記6個の腕部132の全体とボールの上半部の表面との距離がほぼ同じになる。
【0051】
また、ボールBが処理位置100に供給されるまでは退避状態にあった遮光カバー15がモータ151の動作により変位し、遮光状態とされる。これにより、第1開口211が閉鎖される。
【0052】
続いて、動輪161が矢印A2方向に回転すると、ボールBは動輪161と逆方向に回転し、このボールBの回転に伴って従輪162がボールBとは逆方向、つまり動輪161と同方向に回転する(図3(a))。
【0053】
この状態で、紫外線照射部13の紫外線光源131から紫外線が出射され、ボールBの回転により該ボールBに対する紫外線の照射位置が徐々に変化し、ボールBが一回転する間に該ボールBの表面全体に紫外線が照射されて除菌される。
【0054】
紫外線は被処理物に対しては除菌効果を奏するが、もし人体に照射されると眼や皮膚等に有害な影響を与える。そこで本実施形態の紫外線除菌装置10は、処理位置100の上側を第1ハウジング21で覆うと共に、第1ハウジング21の第1開口211を遮光カバー15で閉鎖する(図1(a)に一点鎖線で示した状態)。また、被処理物排出機構17の固定台170は処理位置100の下方を覆う役割を有し、可動台171は、紫外線の照射中には処理位置100の下部の開口を閉鎖する役割を有する。これらの構成により、紫外線照射部13からボールBに向けて照射される紫外線は、第1ハウジング21、遮光カバー15、固定台170及び可動台171により遮られ、第1開口211及び第2開口221、並びに処理位置100の下部の開口を通して外部に漏出することが防止される。
【0055】
ボールへの紫外線照射部13からの紫外線が所定時間ボールに照射され、該ボールの除菌処理が終了すると、可動台171が離間位置に移動され、処理位置100の下部が開口する。これにより、2個の動輪161及び2個の従輪162によって支持されなくなったボールが処理位置100の下部の開口から排出される(図3(b))。また、モータ151の動作により遮光カバー15が変位して退避状態とされる。これにより、処理位置100に次のボールBが受け入れ可能な状態となる。以上により、1個のボールに対する除菌の動作が完了する。また、上述した動作が繰り返し行われることにより、複数個のボールに対する除菌処理を連続的に行うことができる。
【0056】
多数個のボールに対して除菌処理を連続的に行うことで、除菌処理後のボールがボール収容カゴ90内に溜まってゆくと、障害物センサ175がボールを検知する。すると、被処理物供給機構11から被処理物排出機構17へのボールの供給及び被処理物排出機構17からのボールの排出の動作が停止すると共に、警報装置(図示せず)がランプの光やブザー音で警報を発し、除菌処理後のボールの回収をユーザに促す。ユーザがボールを回収することで障害物センサ175がボールを検知しなくなれば、ユーザが所定の操作を行うことによって紫外線除菌装置10の動作を再開させることができるようになる。
【0057】
本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の主旨の範囲内で種々の変形を行うことが許容される。
【符号の説明】
【0058】
10…紫外線除菌装置
100…処理位置
11…被処理物供給機構
111…ガイドレール(搬送路)
1110…ガイドレールの下流側の端部
112…ボールストッパ(順送り回転体)
1121…回転軸
1122…アーム部
113…ギアモータ(順送り回転体駆動部)
114…ボールセンサ
115…回転位置センサ
116…ソレノイドロック
117…ソレノイドタイマー
12…被処理物検知センサ
13…紫外線照射部
131…紫外線光源
132…腕部
133…関節部
1330…中央連結具
1331…左連結具
1332…右連結具
134…距離計測センサ
14…光源移動機構
141…基材
142…主ガイド孔
1431…左副ガイド孔
1432…右副ガイド孔
144…モータ
15…遮光カバー
151…モータ
152…上限位置検出センサ
153…下限位置検出センサ
16…被処理物回転機構
161…動輪
162…従輪
163…動輪回転モータ
17…被処理物排出機構
170…固定台
171…可動台
172…可動台移動モータ
173…第1可動台検知センサ
174…第2可動台検知センサ
175…障害物センサ
18…台枠
19…脚
21…第1ハウジング
211…第1開口
22…第2ハウジング
221…第2開口
90…ボール収容カゴ
B、B’…ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8