(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047723
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
F01D9/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156811
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA07
3G202GB05
(57)【要約】
【課題】動翼への不均一な流れを抑制すること。
【解決手段】タービン10は、シャフトの円周方向に沿って配列される複数の第1の静翼V1であって、複数の第1の静翼V1のうちの少なくとも1つの第1の静翼V1の翼出口角度α2は、残りの第1の静翼V1の翼出口角度と異なる、複数の第1の静翼V1を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの円周方向に沿って配列される複数の第1の静翼であって、前記複数の第1の静翼のうちの少なくとも1つの第1の静翼の翼出口角度は、残りの第1の静翼の翼出口角度と異なる、複数の第1の静翼、
を備える、タービン。
【請求項2】
隣り合う第1の静翼の間のスロートの断面積は、前記複数の第1の静翼の間で一定である、請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
流体の温度がより高い領域に配置される第1の静翼は、より小さい翼出口角度を有する、請求項1または2に記載のタービン。
【請求項4】
前記円周方向に沿って配列され、かつ、前記シャフトの中心軸線方向において前記複数の第1の静翼の下流に配置される複数の第2の静翼であって、前記複数の第2の静翼の翼出口角度は、前記円周方向に沿って変化するように互いに異なる、複数の第2の静翼、
をさらに備え、
前記複数の第1の静翼において最も小さい翼出口角度を有する第1の静翼と、前記複数の第2の静翼において最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼とは、前記円周方向において互いに異なる位置に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項5】
前記複数の第1の静翼において最も小さい翼出口角度は、前記複数の第2の静翼において最も小さい翼出口角度とは異なる、請求項4に記載のタービン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のタービンと、
シャフトの円周方向において前記タービンに対して所定の位置に配置される燃焼器と、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野では、タービン内の流れを制御するための様々な構成が提案されている。例えば、特許文献1は、燃焼器と、低圧タービンと、を備えるガスタービンを開示する。低圧タービンは、取付角度を変化させることが可能な可変静翼を含む。このガスタービンでは、燃焼器にて消費される燃料流量が測定され、測定される燃料流量と、燃焼器に流入する空気流量との割合が一定範囲内で変化するように、低圧タービン入口の可変動翼の取付角度が変えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービンでは、流体が円周方向に不均一な温度分布を有する場合がある。温度分布が不均一であると、流体が動翼に不均一に流入するおそれがある。このような流れは、タービンの性能を低下させ得る。
【0005】
本開示は、動翼への不均一な流れを抑制することができるタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るタービンは、シャフトの円周方向に沿って配列される複数の第1の静翼であって、複数の第1の静翼のうちの少なくとも1つの第1の静翼の翼出口角度は、残りの第1の静翼の翼出口角度と異なる、複数の第1の静翼を備える。
【0007】
隣り合う第1の静翼の間のスロートの断面積は、複数の第1の静翼の間で一定であってもよい。
【0008】
より高い温度を有する流体が流れる領域に配置される第1の静翼は、より小さい翼出口角度を有してもよい。
【0009】
タービンは、円周方向に沿って配列され、かつ、シャフトの中心軸線方向において複数の第1の静翼の下流に配置される複数の第2の静翼であって、複数の第2の静翼の翼出口角度は、円周方向に沿って変化するように互いに異なる、複数の第2の静翼をさらに備えてもよく、複数の第1の静翼において最も小さい翼出口角度を有する第1の静翼と、複数の第2の静翼において最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼とは、円周方向において互いに異なる位置に配置されてもよい。
【0010】
複数の第1の静翼において最も小さい翼出口角度は、複数の第2の静翼において最も小さい翼出口角度と異なってもよい。
【0011】
本開示の他の態様は、上記のいずれかのタービンと、シャフトの円周方向においてタービンに対して所定の位置に配置される燃焼器と、を備えるシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、動翼への不均一な流れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係るタービンを備える発電システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1中のタービンを示す概略的な部分断面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿った概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係るタービン10を備える発電システム100を示す概略図である。本実施形態では、タービン10は、発電装置1を備える発電システム(以下、単に「システム」と称され得る)100に適用される。タービン10の適用先はこれに限定されず、タービン10は、発電システム以外の様々な設備に適用されてもよい。システム100は、発電装置1と、圧縮機2と、燃焼器3と、シャフト4と、タービン10と、を備える。
【0016】
圧縮機2は、吸入された空気を加圧する。加圧された空気は、燃焼器3に供給され、燃料と混合される。空気および燃料の混合ガスが、燃焼器3において燃焼される。燃焼器3からの排ガスは、タービン10に供給される。
【0017】
システム100では、燃焼器3は、タービン10に対して特定の位置に配置される。例えば、本実施形態では、燃焼器3は、タービン10に対して上方に配置される。別の表現では、シャフト4の円周方向において鉛直上方を0度と設定すると、本実施形態では、燃焼器3は、円周方向においてタービン10に対して0度の位置に配置される。さらに別の表現では、燃焼器3は、タービン10に対して円周方向に偏った位置に配置される。燃焼器3の位置はこれに限定されず、燃焼器3は、タービン10に対して上方または0度以外の他の位置に配置されてもよい。
【0018】
図2は、
図1中のタービン10を示す概略的な部分断面図である。タービン10は、ハウジング11を含む。また、タービン10は、上記のシャフト4の一部を含む。シャフト4は、ハウジング11内を延在する。
【0019】
本開示において、シャフト4の中心軸線方向、径方向および円周方向は、他に指示が無い限り、それぞれ単に中心軸線方向、径方向および円周方向と称され得る。
【0020】
ハウジング11は、接続流路12を含む。接続流路12は、環状形状を有する。接続流路12は、シャフト4の径方向外側に位置する。接続流路12は、不図示のスクロール流路を介して、上記の燃焼器3に接続される。燃焼器3からの排ガスgは、スクロール流路を介して接続流路12に供給される。
【0021】
タービン10は、中心軸線方向に沿って接続流路12に近い順に、第1の静翼列VR1と、第1の動翼列BR1と、第2の静翼列VR2と、第2の動翼列BR2と、第3の静翼列VR3と、第3の動翼列BR3と、を含む。
【0022】
第1の静翼列VR1は、円周方向に沿って配列される複数の第1の静翼V1を含む。第1の静翼V1は、ハウジング11に固定され、ハウジング11から径方向内側に突出する。第1の動翼列BR1は、円周方向に沿って配列される複数の第1の動翼B1を含む。第1の動翼B1は、シャフト4に固定され、シャフト4から径方向外側に突出する。第2の静翼列VR2は、円周方向に沿って配列される複数の第2の静翼V2を含む。第2の静翼V2は、ハウジング11に固定され、ハウジング11から径方向内側に突出する。第2の動翼列BR2は、円周方向に沿って配列される複数の第2の動翼B2を含む。第2の動翼B2は、シャフト4に固定され、シャフト4から径方向外側に突出する。第3の静翼列VR3は、円周方向に沿って配列される複数の第3の静翼V3を含む。第3の静翼V3は、ハウジング11に固定され、ハウジング11から径方向内側に突出する。第3の動翼列BR3は、円周方向に沿って配列される複数の第3の動翼B3を含む。第3の動翼B3は、シャフト4に固定され、シャフト4から径方向外側に突出する。本実施形態では、静翼は、外側の静止壁(ハウジング11)に固定されるが、内側(ハブ側)に静止壁が設けられてもよく、内側の静止壁に静翼が取り付けられてもよい。
【0023】
排ガスgは、第1の静翼列VR1、第1の動翼列BR1、第2の静翼列VR2、第2の動翼列BR2、第3の静翼列VR3および第3の動翼列BR3を通過する際に、第1の動翼B1、第2の動翼B2および第3の動翼B3をシャフト4と共に回転させる。
【0024】
図1を参照して、シャフト4の回転力は、発電装置1において発電に使用される。また、シャフト4の回転力は、圧縮機2において空気の加圧に使用される。タービン10を通過した排ガスは、例えばボイラ等の様々な設備で使用されてもよい。
【0025】
図3は、
図2中のIII-III線に沿った概略的な断面図であり、第1の静翼V1および第1の動翼B1の断面形状を示す。第1の静翼V1は、正圧面Vpおよび負圧面Vsを含む。また、第1の静翼V1は、リーディングエッジVeおよびトレイリングエッジVtを含む。
【0026】
第1の静翼V1は、翼出口角度α1を有する。翼出口角度α1は、正圧面Vpの出口における、正圧面Vpと中心軸線方向との間の角度である。排ガスgは、中心軸線方向に対して翼出口角度α1だけ傾いた方向に沿って、第1の静翼V1から流れ出る。
【0027】
隣り合う第1の静翼V1の間において、負圧面Vsと正圧面Vpとの間の最小距離はスロートthと定義される。例えば、スロートthは、正圧面Vpの出口から負圧面Vsに下した垂線で形成される。本開示では、スロートthは、排ガスgの流量が第1の静翼V1の間において一定に抑えられるように、すなわち、排ガスgが第1の静翼V1の間でチョークされるように、決定される。スロートthの断面積は、複数の第1の静翼V1の間で一定である。
【0028】
第1の動翼B1は、概ね、中心軸線方向周りに第1の静翼V1が180度回転されたような断面形状を有する。第1の動翼B1は、正圧面Bpおよび負圧面Bsを含む。また、第1の動翼B1は、リーディングエッジBeおよびトレイリングエッジBtを含む。
【0029】
上記の第1の静翼V1の翼出口角度α1は、以下のように決定される。
【0030】
排ガスgが第1の静翼V1の間でチョークされる場合、スロートthの断面積が複数の第1の静翼V1の間で一定であるため、排ガスgの流量は、全ての第1の静翼V1の間で一定である。この場合、矢印M1で示される中心軸線方向に沿った排ガスgの流れ方向マッハ数は、全ての第1の静翼V1の間で一定である。翼出口角度α1に沿った排ガスgの絶対マッハ数は、矢印M2で示される。流れ方向マッハ数M1と、絶対マッハ数M2との関係は、
図3に示される通りである。
【0031】
また、回転方向に沿った第1の動翼B1の周速マッハ数は、実線の矢印M3で示される。周速マッハ数M3は、以下の式(1)で示される。
【0032】
【0033】
但し、
U:第1の動翼B1の回転速度
γ:排ガスgの比熱比
R:排ガスgの気体定数
T:排ガスgの温度
式(1)の分母は、音速に相当する。
【0034】
第1の動翼B1から見た排ガスgの相対マッハ数は、実線の矢印M4で示される。相対マッハ数M4は、絶対マッハ数M2および周速マッハ数M3を用いて、
図3のように表せる。すなわち、第1の動翼B1から見ると、排ガスgは、実線の矢印M4の方向に沿って第1の動翼B1の間の空間に流入する。第1の静翼V1の翼出口角度α1は、この矢印M4で示される排ガスgが、正圧面Bpに向かって流れるように決定される。
【0035】
上記の式(1)から理解可能なように、排ガスgの温度Tが増加すると、第1の動翼B1の周速マッハ数M3は減少する。
図3に示されるように、もし周速マッハ数M3が破線の矢印で示されるように減少すると、相対マッハ数M4も、破線の矢印で示されるように変わる。この場合、排ガスgは、破線の矢印M4の方向に沿って流れるため、排ガスgは、第1の動翼B1の負圧面Bsに向かって流れる。このような流れは、タービン10の性能を低下させ得る。
【0036】
図1および
図2を参照して、上記のように、高温の排ガスgは、タービン10に対して円周方向に偏った位置に配置される燃焼器3から接続流路12に供給されるため、タービン10に流入する排ガスgのスクロール流は、円周方向に不均一な温度分布を有する場合がある。したがって、排ガスgの温度Tが高い領域では、上記の式(1)から理解可能なように、第1の動翼B1の周速マッハ数M3が減少し、排ガスgは第1の動翼B1の負圧面Bsに向かって流れる。本開示では、このような排ガスgの温度Tが高い領域に位置する第1の静翼V1の翼出口角度が、排ガスgが第1の動翼B1の正圧面Bpに向かって正しく流れるように、決定される。
図2を参照して、本実施形態では、より良い理解のために、第1の静翼列VR1では、
図2においてシャフト4の下方の領域で、排ガスgの温度Tが最も高いとして説明する。しかしながら、排ガスgの温度分布はこれに限定されず、燃焼器3の位置、スクロール流路および接続流路12の長さ等の様々な要因に応じて変化し得る。なお、タービン10が定格出力で運転している場合には、この不均一な温度分布の位置は概ね一定である。
【0037】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った概略的な断面図であり、排ガスgの温度Tが高い領域に配置される第1の静翼V1および第1の動翼B1の断面形状を示す。なお、より良い比較のために、
図3の第1の静翼V1の断面形状が破線で示される。同様に、
図3の絶対マッハ数M2および周速マッハ数M3の各々が、一点鎖線で示される。上記のように、排ガスgが第1の静翼V1の間においてチョークされる場合、流れ方向マッハ数M1は、全ての第1の静翼V1の間で一定である。したがって、流れ方向マッハ数M1は、
図3から変わらない。
【0038】
図4に示される領域では、排ガスgの温度Tが高いため、実線で示される周速マッハ数M3は、一点鎖線で示される
図3の周速マッハ数M3よりも小さくなる。しかしながら、周速マッハ数M3が小さい場合であっても、相対マッハ数を示す矢印M4が
図3から変わらないように、絶対マッハ数を示す矢印M2の角度、すなわち、第1の静翼V1の翼出口角度α2が、上記の翼出口角度α1よりも小さく設定される。このような構成によれば、排ガスgの温度Tが高い領域においても、相対マッハ数を示す矢印M4で示されるように、排ガスgは、第1の動翼B1の正圧面Bpに向かって正しく流れる。また、複数の第1の静翼V1の間では、翼出口角度は、α1以下かつα2以上の範囲内において、円周方向に沿って変化する。例えば、複数の第1の静翼V1の翼出口角度は、α1以下かつα2以上の範囲内において、滑らかに連続的に変化してもよい。また、例えば、一部の第1の静翼V1の翼出口角度のみがα2であってもよく、残りの全ての第1の静翼V1の翼出口角度はα1であってもよい。すなわち、複数の第1の静翼V1の翼出口角度は、α1およびα2の間で、ステップ的に変化してもよい。
【0039】
図2を参照して、タービン10では、第2の静翼列VR2および第3の静翼列VR3においても、翼出口角度が上記と同様に設定される。
【0040】
具体的には、複数の第2の静翼V2のうち、排ガスgの温度Tが高い領域に配置される第2の静翼V2の翼出口角度は、他の領域に配置される第2の静翼V2の翼出口角度よりも小さい。また、排ガスgは、第2の静翼列VR2に流入する前に、第1の動翼列BR1によって回転させられる。このため、第2の静翼列VR2において排ガスgの温度Tが高い領域は、第1の静翼列VR1において排ガスgの温度Tが高い領域に対して、円周方向において異なる位置である可能性がある。この場合、最も小さい翼出口角度α2を有する第1の静翼V1と、最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼V2とは、円周方向において互いに異なる位置に配置される。
【0041】
静翼列VR1から動翼B1流入した排ガスgが、動翼B1により周方向に運搬される。本実施形態においては、最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼V2は、最も小さい翼出口角度α2を有する第1の静翼V1に対し、動翼B1の回転方向にずれた周方向位置に設けられている。つまり、回転軸線方向に見た場合に、最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼V2は、最も小さい翼出口角度α2を有する第1の静翼V1に対し、動翼B1の回転方向に劣角をなす位置に設けられている。また、本実施形態の複数の第2の静翼列VR2は、第1の静翼列VR1と対応する、翼出口角度分布を持っている。すなわち、周方向に配列された静翼列の翼出口角度の極大と極小の数が、第2の静翼列VR2と、第1の静翼列VR1とで一致している。
【0042】
また、排ガスgが第1の静翼列VR1から第2の静翼列VR2に向かって流れる間に、排ガスgの温度Tは、低下する可能性がある。この場合、第1の静翼列VR1と第2の静翼列VR2との間で、翼出口角度の調整量は互いに異なり得る。この場合、複数の第1の静翼V1において最も小さい翼出口角度α2は、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度とは異なる。具体的には、複数の第1の静翼V1において最も小さい翼出口角度α2は、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度よりも小さい。
【0043】
同様に、複数の第3の静翼V3のうち、排ガスgの温度Tが高い領域に配置される第3の静翼V3の翼出口角度は、他の領域に配置される第3の静翼V3の翼出口角度よりも小さい。また、排ガスgは、第3の静翼列VR3に流入する前に、第2の動翼列BR2によって回転させられる。このため、第3の静翼列VR3において排ガスgの温度Tが高い領域は、第2の静翼列VR2において排ガスgの温度Tが高い領域に対して、円周方向において異なる位置である可能性がある。この場合、最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼V2と、最も小さい翼出口角度を有する第3の静翼V3とは、円周方向において互いに異なる位置に配置される。
【0044】
また、排ガスgが第2の静翼列VR2から第3の静翼列VR3に向かって流れる間に、排ガスgの温度Tは、低下する可能性がある。この場合、第2の静翼列VR2と第3の静翼列VR3との間で、翼出口角度の調整量は互いに異なり得る。この場合、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度は、複数の第3の静翼V3において最も小さい翼出口角度とは異なる。具体的には、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度は、複数の第3の静翼V3において最も小さい翼出口角度よりも小さい。
【0045】
以上のようなタービン10は、シャフト4の円周方向に沿って配列される複数の第1の静翼V1であって、複数の第1の静翼V1のうちの少なくとも1つの第1の静翼V1の翼出口角度α2は、残りの第1の静翼V1の翼出口角度α1と異なる、複数の第1の静翼V1を備える。このような構成によれば、円周方向における流体(排ガスg)の温度分布に応じて、第1の静翼V1を流れ出る排ガスgが第1の動翼B1の正圧面Bpに向かって流れるように、各第1の静翼V1の翼出口角度α1,α2を設定することによって、第1の動翼B1への不均一な流れを抑制することができる。
【0046】
また、タービン10では、隣り合う第1の静翼V1の間のスロートthの断面積は、複数の第1の静翼V1の間で一定である。このような構成によれば、中心軸線方向に沿った排ガスgの流れ方向マッハ数M1を、全ての第1の静翼V1の間で一定にすることができる。したがって、翼出口角度α1,α2の演算を簡略化することができる。
【0047】
また、タービン10では、排ガスgの温度Tがより高い領域に配置される第1の静翼V1は、より小さい翼出口角度α2を有する。このような構成によれば、第1の動翼B1の正圧面Bpに向かって流れるように、排ガスgの向きを制御することができる。
【0048】
また、タービン10は、円周方向に沿って配列され、かつ、中心軸線方向において複数の第1の静翼V1の下流に配置される複数の第2の静翼V2であって、複数の第2の静翼V2の翼出口角度は、円周方向に沿って変化するように互いに異なる、複数の第2の静翼V2をさらに備え、複数の第1の静翼V1において最も小さい翼出口角度α2を有する第1の静翼V1と、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度を有する第2の静翼V2とは、円周方向において互いに異なる位置に配置される。このような構成によれば、第1の静翼V1および第2の静翼V2の各々における排ガスgの温度分布に応じて、第1の静翼V1および第2の静翼V2の翼出口角度を設定することによって、複数段の動翼B1,B2への不均一な流れを抑制することができる。
【0049】
また、タービン10では、複数の第1の静翼V1において最も小さい翼出口角度α2は、複数の第2の静翼V2において最も小さい翼出口角度とは異なる。このような構成によれば、第1の静翼V1から第2の静翼V2に向かって流れる間の排ガスgの温度低下に応じて、第1の静翼V1および第2の静翼V2の翼出口角度を設定することができる。
【0050】
また、発電システム100は、上記のようなタービン10と、円周方向においてタービン10に対して所定の位置に配置される燃焼器3と、を備える。このような構成によれば、円周方向において排ガスgの不均一な温度分布が生じやすいので、タービン10は、上記のような効果をより発揮することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、タービン10は、3組の静翼V1,V2,V3および動翼B1,B2,B3を備える。しかしながら、他の実施形態では、タービン10は、静翼V1および動翼B1のみを備えてもよく、または、4組以上の静翼および動翼を備えてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、第1の静翼V1、第2の静翼V2および第3の静翼V3の全てにおいて、翼出口角度が円周方向に沿って変化する。しかしながら、他の実施形態では、第1の静翼V1、第2の静翼V2または第3の静翼V3の少なくとも1つにおいて、翼出口角度が円周方向に沿って変化してもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、第1の静翼V1、第2の静翼V2および第3の静翼V3は、ハウジング11に固定される。しかしながら、他の実施形態では、第1の静翼V1、第2の静翼V2または第3の静翼V3の少なくとも1つは、翼出口角度が変更可能であるように、可動式であってもよい。この場合、例えば、タービン10は、可動式の静翼の周りの排ガスの温度分布を測定する温度センサと、可動式の静翼の翼出口角度を制御する制御装置と、を備えてもよい。制御装置は、温度センサによって測定される排ガスの温度分布に基づいて、可動式の静翼の翼出口角度を調整してもよい。
【0055】
例えば、本開示は、非常用発電装置の性能および信頼性の向上に貢献するので、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0056】
3 燃焼器
4 シャフト
10 タービン
100 発電システム
th スロート
V1 第1の静翼
V2 第2の静翼(第1の静翼)
V3 第3の静翼(第2の静翼)
α1 翼出口角度
α2 翼出口角度