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特開2023-47746物体識別装置、移動体および物体識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047746
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】物体識別装置、移動体および物体識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20230330BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230330BHJP
【FI】
G01S15/931
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156844
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠介
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】楊 逸銘
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕貴
【テーマコード(参考)】
5J070
5J083
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC04
5J070AC19
5J070AF03
5J070AK14
5J070BF01
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC29
5J083AD01
5J083AD07
5J083AD13
5J083AE10
5J083AF08
5J083BE21
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】物体を正確に識別することが可能な物体識別装置、移動体および物体識別方法を提供する。
【解決手段】物体識別装置は、移動体に搭載されたセンサにより送受波された検出波に基づいて検出された物体が、移動体の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定する領域判定回路と、領域判定回路により物体が所定領域内に位置すると判定された場合、検出波に基づいて推定される物体の反射面の曲率に応じて、物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別回路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたセンサにより送受波された検出波に基づいて検出された物体が、前記移動体の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定する領域判定回路と、
前記領域判定回路により前記物体が前記所定領域内に位置すると判定された場合、前記検出波に基づいて推定される前記物体の反射面の曲率に応じて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別回路と、
を備える物体識別装置。
【請求項2】
前記識別回路は、前記検出波の前記物体における反射点の座標の時系列変化に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する、
請求項1に記載の物体識別装置。
【請求項3】
前記識別回路は、前記移動体が第1位置で受波した検出波の前記物体における第1反射点の第1座標と、前記移動体が第2位置で受波した検出波の前記物体における第2反射点の第2座標との差分に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する、
請求項2に記載の物体識別装置。
【請求項4】
前記識別回路は、前記第1座標と前記第2座標との差分が所定値以下である場合、前記物体が非制御対象物であると識別する、
請求項3に記載の物体識別装置。
【請求項5】
前記識別回路は、前記領域判定回路により前記物体が前記所定領域内に位置すると判定された場合、前記物体の座標における3以上の時刻の時系列変化に基づいて物体が前記制御対象物であるか否かについて判定する、
請求項2~4の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項6】
前記識別回路は、前記物体が非制御対象物であると判定した回数が複数回である場合、前記物体が非制御対象物であると識別する、
請求項2~5の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項7】
前記所定領域は、前記移動体の側面から所定幅離れた領域である、
請求項1~6の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項8】
前記領域判定回路は、前記所定領域内に位置する物体が、前記制御対象物ではない物体と識別された場合、当該物体の位置が前記所定領域外となるように前記所定領域を狭める、
請求項7に記載の物体識別装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の物体識別装置と、
前記検出波を送受波するセンサを有し、前記検出波に基づいて前記物体を検出する物体検出部と、
を備える移動体。
【請求項10】
物体識別方法であって、
移動体に搭載されたセンサにより送受波された検出波に基づいて検出された物体が、前記移動体の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定し、
前記物体が前記所定領域内に位置すると判定した場合、前記検出波に基づいて推定される前記物体の反射面の曲率に応じて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する、
物体識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体識別装置、移動体および物体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の移動体と、物体との間における検出波の往復に基づいて物体を検出可能な物体識別装置が知られている。例えば、特許文献1には、物体の高さと、車両から物体までの距離とに応じて検出波の反射強度を補正して、補正後の反射強度に基づいて、物体の種別を識別可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-247215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体識別装置では、検出波の往復に基づいて物体を検出するため、移動体の側方等、走行路外の箇所に配置された物体についても検出される。このような物体であっても、その種類によっては移動体と衝突する可能性があるため、物体識別装置では、当該物体についても制御対象物としておく場合がある。
【0005】
しかしながら、上記の物体を制御対象物とすると、移動体と衝突する可能性がほとんどないポールのような所定値よりも小さな小物体についても識別されることがある。このような識別は、当該識別に基づいて動作する他装置の誤動作を誘発するおそれがあり、ユーザが煩わしさを覚えるおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、物体を正確に識別することが可能な物体識別装置、移動体および物体識別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る物体識別装置は、
移動体に搭載されたセンサにより送受波された検出波に基づいて検出された物体が、前記移動体の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定する領域判定回路と、
前記領域判定回路により前記物体が前記所定領域内に位置すると判定された場合、前記検出波に基づいて推定される前記物体の反射面の曲率に応じて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別回路と、
を備える。
【0008】
本開示に係る移動体は、
上記の物体識別装置と、
前記検出波を送受波するセンサを有し、前記検出波に基づいて前記物体を検出する物体検出部と、
を備える。
【0009】
本開示に係る物体識別方法は、
物体識別方法であって、
移動体に搭載されたセンサにより送受波された検出波に基づいて検出された物体が、前記移動体の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定し、
前記物体が前記所定領域内に位置すると判定した場合、前記検出波に基づいて推定される前記物体の反射面の曲率に応じて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する。
【0010】
本開示によれば、物体を正確に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る車両制御ユニットが適用された車両の構成例を示すブロック図である。
図2】車両における物体検出部の配置の一例を示す図である。
図3】反射強度に対する識別閾値の設定における一般的な方法について説明するための図である。
図4】下方物と検出波との関係性について説明するための図である。
図5】下方物に係る反射強度の距離に対する変化の一例を示す図である。
図6】物体が柱状物体である場合の検出波の経路の一例を示す図である。
図7】形状判定閾値と距離との関係性の一例を示す図である。
図8】柱状物体に係る反射強度と、識別閾値との関係性の一例を示す図である。
図9】所定領域内に位置する物体の検出の一例を示す図である。
図10】所定領域内に位置する物体の検出の一例を示す図である。
図11】物体までのY方向の距離と、物体の座標の差分との関係を示す図である。
図12】所定領域内に位置する物体の検出の一例を示す図である。
図13】所定領域内に位置する物体の検出の一例を示す図である。
図14】車両制御ユニットにおける識別制御の動作例を示すフローチャートである。
図15】車両制御ユニットにおける識別制御の動作例を示すフローチャートである。
図16】車両における物体検出部の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係る車両制御ユニット100が適用された車両1の構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、車両1は、例えば、進行経路の周辺に存在する物体が車両1と衝突する可能性があるか否かを識別する機能を有する移動体である。車両1は、加速部10と、制動部20と、車速情報取得部30と、物体検出部40と、車両制御ユニット100とを有する。
【0014】
加速部10は、車両制御ユニット100の加速要求に応じて車両1の加減速を行う加速装置である。
【0015】
制動部20は、車両制御ユニット100の制動要求に応じて車両1の制動を行う制動装置である。
【0016】
車速情報取得部30は、車両1の速度に関する情報を取得する。具体的には、車速情報取得部30は、加速部10等から、車両1の車速、加速度の情報を取得し、かつ、制動部20等から、ブレーキの情報等を取得する。また、車速情報取得部30は、図示しないハンドル等の操作部から舵角等の情報を取得する。
【0017】
物体検出部40は、例えば、ソナー、レーダー等の車載センサであり、超音波やミリ波(電磁波)等の検出波を送波し、物体に反射して戻ってきた検出波を受波することで、車両1の進行経路の周辺に存在する物体を検出する。物体検出部40は、車両1の前端部や後端部に設けられている。
【0018】
図2は、車両1における物体検出部40の配置の一例を示す図である。なお、以下の説明においては、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。例えば、X方向が車両1の左右方向を示し、Y方向が車両1の前後方向(進行方向)、Z方向が車両1の上下方向(高さ方向)を示している。
【0019】
例えば、図2に示すように、物体検出部40は、車両1のY方向の+側の端部において、X方向の両端部に1つずつ、また、X方向の中央部に2つの計4つの送受波センサ41を有する。
【0020】
送受波センサ41は、検出波を送受波可能なセンサである。送受波センサ41は、例えばソナーの場合、圧電素子に所定の周波数の電圧をかけることで、同じ周波数の超音波(検出波)を生成して送波する。
【0021】
また、送受波センサ41は、4つの送受波センサ41の何れかから送波された後、物体2に当たって反射した検出波を受波する。送受波センサ41は、例えばソナーの場合、圧電素子が検出波の音圧を電圧に変換し、変換後の電圧を整流することにより、受波した検出波を音波受信強度(反射強度)に変換する。
【0022】
4つの送受波センサ41の何れかから物体2を経由して、4つの送受波センサ41の何れかまでの検出波が往復する際の飛翔時間が計測されることで、車両1と物体2との距離を算出することが可能となる。また、車両1と物体2との距離が算出されることで、三角測量の原理に基づき、検出波が物体2に反射された位置の座標を算出することが可能となる。
【0023】
また、送受波センサ41が計4つ設けられているので、送受波センサ41から送波された検出波を、4つの送受波センサ41のそれぞれで受波することができる。そのため、少なくとも1つの送受波センサ41から送波された検出波を2つの送受波センサ41で受波した場合、2つの送受波センサ41で受波される検出波のそれぞれは、異なる経路D1,D2を通って各送受波センサ41に戻る。
【0024】
経路D1,D2では、物体2における異なる位置P1,P2で検出波が反射されるため、2つの送受波センサ41で検出波を受波できた場合、物体2の位置P1,P2における2つの座標を算出することが可能となる。なお、図2における物体2は、X方向に平行な平面を有する壁である。
【0025】
図1に戻り、車両制御ユニット100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等であり、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。車両制御ユニット100は、予め設定されたプログラムに基づいて、進行経路の周辺に存在する物体が制御対象物(例えば、衝突の可能性がある対象物)であるか否かを識別し、所定の走行制御を行う。
【0026】
車両制御ユニット100は、識別部110と、形状判定部120と、変更部130と、領域判定部140と、制御部150とを有する。識別部110および領域判定部140は、本開示の「物体識別装置」に対応する。識別部110は、本開示の「識別回路」に対応し、領域判定部140は、本開示の「領域判定回路」に対応する。
【0027】
識別部110は、車両1の前方領域に物体2が位置する場合において、車両1から物体に向けて送波された検出波が、物体で反射されて車両1で受波された場合、検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、物体を制御対象物であるか否かについて識別する。前方領域は、例えば車両1のY方向の+側の領域であり、後述する第1制御対象判定線L1よりも車両1側の領域である。
【0028】
具体的には、識別部110は、何れかの送受波センサ41で受波した検出波に基づく反射強度が識別閾値以上である場合、物体が制御対象物であると識別し、反射強度が識別閾値未満である場合、物体が制御対象物ではない非制御対象物と識別する。
【0029】
識別閾値は、送受波センサ41で受波した検出波に基づく反射強度と比較されることで、物体が車両1の制御対象物であるかの識別基準となる閾値である。識別部110では、前方領域に位置する物体2に対して、反射強度が識別閾値以上となると、物体2が制御対象物であると識別する。
【0030】
また、検出波は、空気中で急速に減衰するため、車両1と物体との距離が長くなるほど、その減衰量が大きくなる。そのため、送受波センサ41で受波される検出波に基づく反射強度も、例えば図3に示すように、車両1と物体との距離が長くなるほど低くなるので、一般的に、識別閾値は、その反射強度に合わせて、車両1と物体との距離が長くなるほど低くなるように設定される。
【0031】
しかし、縁石等の下方物は、例えば検出波の入射角と反射角の関係上、図3のような距離に対する反射強度の変化傾向と同じにはならない。例えば、図4に示すように、車両1と距離が下方物2Bよりも近い下方物2Aが存在する場合、下方物2Aは送受波センサ41から送波された検出波が当たりにくい位置にあるため、距離が近い位置に存在する下方物2Aについては、反射強度は小さい。
【0032】
それに対し、比較的、車両1と距離が離れた位置に存在する下方物2Bは、検出波が当たりやすく、また、下方物2Bで反射した検出波も送受波センサ41に入射しやすくなるため、反射強度が大きくなる。具体的には、図5に示すように、距離に対する反射強度の変化傾向は、距離T1離れた位置から距離が離れるにつれ、徐々に反射強度が上昇し、距離T2で反射強度が最大値となった後、反射強度が下がっていくような、変化傾向となる。
【0033】
そのため、図3に示すような、距離が離れるほど小さくなる識別閾値を設定すると、下方物に係る反射強度が識別閾値を超えてしまう。下方物は、路面に位置しており、車両1の本体と衝突を回避可能な高さを有するため、障害物とはなり得ないもの(非制御対象物)である。そのような下方物が、反射強度が強調されることに起因して、制御対象物と識別されてしまう可能性がある。なお、図4では、車両1の後部に位置する物体(下方物)についての例が示されているが、車両1の前部に位置する物体の場合でも同様である。
【0034】
そのため、本実施の形態では、図5に示す破線のように、下方物に係る反射強度が識別閾値を超えないように、識別閾値が設定される。具体的には、識別閾値が、車両1から距離T1離れた位置から、反射強度が最大値に達する距離T2まで段階的に大きくなった後、車両1から距離が離れるにつれ、小さくなるように設定される。
【0035】
これにより、縁石のような下方物を制御対象物(障害物)と識別することを抑制することができる。
【0036】
形状判定部120は、異なる経路を伝搬した前記検出波を検出することにより算出される物体の2つの座標に基づいて物体の形状を判定する。具体的には、形状判定部120は、2つの座標に基づいて、物体が柱状物体であるか否かについて判定する。柱状物体は、例えば、道路の端に設けられるポール等の円柱状の物体である。
【0037】
具体的には、形状判定部120は、検出波の往復によって算出される、車両1と物体との間の距離から三角測量の原理に基づき、物体における検出波が反射した位置を示す座標を算出する。
【0038】
形状判定部120は、少なくとも2つの送受波センサ41で受波した検出波に基づいて、2つの座標を算出する。そして、形状判定部120は、2つの座標の座標差に応じて、物体が柱状物体であるか否かについて判定する。具体的には、形状判定部120は、座標差が形状判定閾値以上である場合、物体が柱状物体ではないと判定し、座標差が形状判定閾値未満である場合、物体が柱状物体であると判定する。
【0039】
形状判定閾値は、柱状物体のように歩行者、車両よりも細く、2つの座標の座標差が密接する値に対応した閾値であり、柱状物体の太さ等に応じて適宜設定される。
【0040】
図6に示すように、柱状物体2Cは、円周面を有することから、座標位置が近接する異なる2点P3,P4のそれぞれから、異なる経路D3,D4により、2つの送受波センサ41のそれぞれに向けて検出波を反射する。
【0041】
それに対し、柱状物体2C以外の非柱状物体(例えば、図2に示すX方向に延びる平面を有する壁等の物体2)は、座標位置が離間する異なる2点P1,P2のそれぞれから、異なる経路D1,D2により、2つの送受波センサ41のそれぞれに向けて検出波を反射する。
【0042】
このように、2つの座標の座標差に、柱状物体と非柱状物体とで明確な違いがあるため、形状判定閾値を基準にして物体が柱状物体であるか否かについて判定することが可能である。また、反射強度は、外乱(風、雨、熱等)の影響を受けて値が変動しやすいが、座標差は、外乱の影響を受け難いので、物体が柱状物体であるか否かを正確に判定することができる。
【0043】
また、座標差は、2つの座標のX方向成分およびY方向成分のうち少なくともX方向成分の距離で示される。なお、座標差は、X方向成分に加えてY方向成分の距離が考慮されても良い。
【0044】
また、車両1と物体との距離に応じて、算出される座標差が異なる場合があるので、この場合、例えば、図7に示すように、車両1と物体との距離ごとに異なる形状判定閾値が設定されていても良い。図7に示す例では、形状判定閾値は、車両1と物体との距離が長くなるにつれ、大きくなるように設定されている。
【0045】
変更部130は、検出波が物体の2つの点で反射されて車両1で受波された場合、当該2つの点の位置に応じて、物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別部110の識別感度を変更する。具体的には、変更部130は、2つの座標の座標差に応じて識別閾値を変更する。例えば、変更部130は、形状判定部120の判定結果に基づき、物体が柱状物体であるか否かに応じて識別閾値を変更することにより上記識別感度を変更する。
【0046】
本実施の形態では、図8に示すように、非柱状物体である場合の識別閾値は、縁石のような下方物に対応した第1閾値に設定されている。第1閾値は、上記の、図5に示す識別閾値である。例えば、識別閾値は、2つの座標の座標差(2つの点の間の距離)が形状判定閾値以上である場合、非制御対象物に対する検出波の反射強度に合わせて設定される。
【0047】
柱状物体は路面に立設されて、ある程度の高さを有することから、下方物のように、距離が遠くなるほど反射強度が大きくなるということがないので、柱状物体に係る検出波に基づく反射強度は、車両1と柱状物体との距離が遠くなるほど小さくなっていく。
【0048】
車両1と柱状物体との距離がある程度離れると、柱状物体に係る反射強度が第1閾値を下回るので、識別部110が柱状物体を制御対象物ではない非制御対象物と識別することとなる。
【0049】
そのため、変更部130が、物体が柱状物体である場合、識別閾値を柱状物体に係る反射強度に対応した第2閾値に変更する。第2閾値は、柱状物体に係る反射強度と同様に、車両1と柱状物体との距離が遠くなるほど小さくなるように変化する。
【0050】
このようにすることで、識別部110が柱状物体を制御対象物であると確実に識別することができる。
【0051】
また、変更部130は、車両1と物体との距離に応じて、識別閾値を変更する制御を行うか否かについて判定しても良い。車両1と物体との距離が遠くなるほど、算出される物体の座標の誤差が大きくなるので、柱状物体の判定精度に影響しやすくなる。
【0052】
そのため、変更部130は、車両1と物体との距離が所定距離以下である場合、上記の識別閾値を変更する制御を行う。所定距離は、例えば、物体の座標の算出精度がある程度確保される距離であり、物体検出部40の検出波に基づく反射強度等に応じて適宜設定される。
【0053】
こうすることで、柱状物体の判定精度が確保された範囲で柱状物体を制御対象物であると識別することができる。
【0054】
領域判定部140は、車両1から送受波可能な検出波に基づいて検出された物体2が、車両1の前方の所定領域内に位置するか否かについて判定する。図9に示すように、所定領域は、車両1の側方の領域であり、かつ、第1制御対象判定線L1と第2制御対象判定線L2との間の領域である。
【0055】
第1制御対象判定線L1は、車両1の側面から所定幅離れた位置を通る線である。所定幅は、例えば、車両1が道路の中央を走行していた際の、道路の端と車両1の側面とのX方向の距離であり、安全性等を考慮して適宜設定することができる。
【0056】
第2制御対象判定線L2は、第1制御対象判定線L1よりも車両1から離れた位置を通る線である。第2制御対象判定線L2は、例えば、第1制御対象判定線L1と第2制御対象判定線L2との間に物体2が位置する場合、車両1が進行方向(Y方向)に移動して、物体2に接近した際に、当該物体2と車両1とが衝突する可能性が高くなるような位置を通る線であり、安全性等を考慮して適宜設定することができる。
【0057】
なお、第1制御対象判定線L1および第2制御対象判定線L2は、図9等においては、車両1のX方向の-側に示されているが、車両1のX方向の+側にも設定されてもよい。
【0058】
領域判定部140は、変更部130によって設定された識別閾値と、検出された物体2に基づく反射強度とを比較して、反射強度が識別閾値以上である場合、当該物体2の位置を示す座標に基づいて、物体2が所定領域内に位置するか否かについて判定する。
【0059】
領域判定部140により、物体2の座標が所定領域外、例えば、第1制御対象判定線L1と第2制御対象判定線L2との間に挟まれた範囲よりも車両1側(上記の前方領域)に位置すると判定された場合、識別部110は、当該物体が制御対象物であると識別する。
【0060】
なお、領域判定部140により、物体2の座標が所定領域外であって、第2制御対象判定線L2に対して、車両1とは反対側の領域に位置する場合、識別部110は、当該物体が非制御対象物であると識別する。
【0061】
また、領域判定部140により、物体の座標が所定領域内に位置すると判定された場合、識別部110は、検出波に基づいて推定される物体2の反射面の曲率に応じて、当該物体が制御対象物であるか否かについて判定する。
【0062】
具体的には、識別部110は、領域判定部140により、物体2の座標が所定領域内に位置すると判定された場合、物体2の座標の時系列変化に基づいて、当該物体が制御対象物であるか否かについて判定する。より詳細には、識別部110は、第1座標と第2座標との差分に基づいて、当該物体が制御対象物であるか否かについて判定する。
【0063】
第1座標は、車両1が第1位置で受波した検出波の物体2における第1反射点を示す座標である。第2座標は、車両1が第2位置で受波した検出波の物体2における第2反射点を示す座標である。
【0064】
なお、第1座標と第2座標との差分、例えば、2つの座標の差分は、例えばX―Y平面における距離で示されても良い。
【0065】
第1位置は、例えば時刻t1で、送受波センサ41bで検出波を受波したときの車両1の位置である。第2位置は、例えば、時刻t1よりも後の時刻t2で、送受波センサ41aで検出波を受波したときの車両1の位置である。
【0066】
なお、以下の説明では、図9に示す車両1の位置を第1位置とし、図10に示す車両1の位置を第2位置とする。図9および図10では、第2位置は、第1位置よりもY方向の+側に位置している。
【0067】
第1位置と、第2位置とでは、送受波センサ41(41a、41b)の検出波の送波位置が異なるため、車両1と物体2との間を往復する検出波の経路が異なるものとなる。例えば、図9では、X方向の-側から2番目の送受波センサ41bが送波した検出波が、第1反射点P5を介して、X方向の-側の端部に位置する送受波センサ41aで受波されている。また、図10では、X方向の-側の端部に位置する送受波センサ41aから送波された検出波が、第2反射点P6を介して、X方向の-側から2番目の送受波センサ41bで受波されている。なお、図9等では、X方向の-側から3番目の送受波センサを、符号41cで示し、X方向の+側の端部に位置する送受波センサを、符号41dで示している。
【0068】
検出波の入射角および反射角の関係性から、第1反射点P5に係る第1座標と第2反射点P6に係る第2座標とに差が生じる。
【0069】
図11は、車両1を移動させながら、車両1の走行する道路の側方に配置された円柱状物体の座標を取得し、その2つの座標の差分を車両1の距離毎に計算した結果を示している。
【0070】
図11における縦軸は、2つの座標の差分を示し、横軸は、Y方向の距離を示している。2つの座標の差分は、最初に検出された座標と、各距離に対応する位置で検出された座標との差分である。Y方向の距離は、最初に座標が検出された位置から車両端までの距離である。なお、車両1は、図9の第1位置と図10の第2位置で、送波する送受波センサ41が異なる例を示したが、同じ送受波センサ41から送波してもよい。
【0071】
図11では、符号L3が、L4,L5よりも径が大きい円柱状物体の座標の差分の変化を示し、符号L4が、L3,L5よりも径が小さい円柱状物体の座標の差分の変化を示している。また、符号L5が、L3およびL4の各径の間の径を有する円柱状物体の座標の差分の変化を示している。
【0072】
図11に示すように、円柱状の物体の径が小さくなるほど、第1座標と第2座標との差分が小さくなる。
【0073】
このことは、物体2の反射面の曲率が大きくなる(径が小さくなる)ほど、座標の時系列変化が小さくなることを示している。そのため、識別部110は、第1座標と第2座標との差分と、所定値とを比較し、その比較結果に基づいて、物体2が制御対象物であるか否かについて判定する。
【0074】
所定値は、例えば、物体が柱状物体(ポール)である場合の、第1座標と第2座標との差分に相当する値であり、制御対象物とする物体の種類の曲率に応じて適宜設定される値である。
【0075】
識別部110は、例えば、第1座標と第2座標との差分が所定値より大きい場合、物体2の反射面の曲率が所定値よりも小さく、大きい柱状物体であると識別する。識別部110は、この場合、物体2を制御対象物であると識別する。なお、大きい柱状物体には、例えば、電柱を含むが、部分的に曲率の小さい反射面を有する物体であってもよい。
【0076】
例えば、図12に示すように、物体2が図9図10と比較して大きい場合、図9の第1反射点P5、図10の第2反射点P6と比較して座標差の大きい第1反射点P7と第2反射点P8とを介して、車両1が検出波を受波する。具体的には、車両1が、第1位置(二点鎖線の位置)で、送受波センサ41aから検出波を送波し、第1反射点P7を介して検出波を送受波センサ41bで受波する。また、車両1が、第2位置(実線の位置)で、送受波センサ41bから検出波を送波し、第1反射点P7とは所定値以上の座標差を有する第2反射点P8を介して送受波センサ41aで検出波を受波する。なお、図12では、車両1は、第1位置と第2位置で、送波する送受波センサ41が異なる例を示したが、同じ送受波センサから送波してもよい。
【0077】
大きい物体が所定領域内に位置する場合、車両1と衝突する可能性を考慮して、当該物体を制御対象物として検討する。本実施の形態では、上記のように、第1位置および第2位置で反射点の座標の差異が明確にできるため、このような物体を制御対象物として正確に識別することができる。
【0078】
識別部110は、第1座標と第2座標との差分が所定値以下である場合、物体2の反射面の曲率が大きい、小さな径を有する物体であると識別する。識別部110は、この場合、物体2を非制御対象物であると識別する。
【0079】
所定領域は、車両1に近い領域ではあるが、車両1の前方へのせり出し量が少ないため、車両1が接近しても衝突する可能性が低いポールのような小物体が所定領域内に存在する場合がある。このような小物体も制御対象物としてしまうと、当該小物体に対して、ブレーキ装置等、他装置を動作させてしまうことにつながる。また、このような他装置の誤動作は、ユーザにとって煩わしいものとなる。
【0080】
本実施の形態では、識別部110が、反射面の曲率が大きく、衝突する可能性が低い小物体である場合、当該小物体を非制御対象物であると識別する。例えば図9および図10に示すように、物体2が小さい場合、第1反射点P5と第2反射点P6とで座標の差が小さくなる。
【0081】
その結果、第1反射点P5と第2反射点P6とで座標の差に基づいて、物体2が小物体であることを識別できる。なお、本実施の形態では、識別部110が当該物体2を非制御対象物であると識別することができるので、ひいては他装置の誤動作を誘発することを防止することができる。
【0082】
また、識別部110は、領域判定部140により物体が所定領域内に位置すると判定されて以降、当該物体の座標における3以上の時刻の時系列変化に基づいて物体2が制御対象物であるか否かについて判定しても良い。
【0083】
例えば、図9および図10のように、時刻t1の座標と時刻t2の座標との差分のような、2つの時刻の時系列変化に基づく判定である場合、車両1の移動速度や、各送受波センサ41の検出波の送受波状況によっては、2つの座標が近い位置となることもある。
【0084】
そのため、時刻t1、t2における座標の差分に加えて、図13に示すように、時刻t3(t3>t2)における位置で反射点P9の座標を取得して、時刻t2、t3における座標の差分を算出する。そして、2組の座標の差分がともに所定値以下であると判定された(非制御対象物であると判定された)場合、識別部110は、当該物体を非制御対象物であると識別する。
【0085】
このように、2組の座標の差分の情報を識別制御に用いることにより、物体識別装置における識別精度を向上させることができる。
【0086】
なお、ここでは2組の座標の差分の情報を用いることとしたが、3組以上の座標の差分の情報を用いることとしてもよい。そして、3組以上の座標の差分のうち、座標の差分が所定値以下であると判定された回数(非制御対象物であると判定された回数)が所定回数以上である場合、識別部110は、当該物体を非制御対象物であると識別する。
【0087】
所定回数は、少なくとも2回等、任意に設定することができる。
【0088】
このようにすることで、識別部110による識別精度をさらに向上させることができる。
【0089】
制御部150は、識別部110により識別された制御対象物の動きや、車両1の動き(車速の情報)に基づく制御対象物の相対速度等に基づいて、車両1と制御対象物との衝突可能性を予測する。衝突可能性の予測方法は、例えば公知の技術を適用することができる。
【0090】
そして、制御部150は、衝突可能性と、車両1の加速度の状態とに応じて、加速部10に対して加速要求を、または、制動部20に対して制動要求を出力する。
【0091】
これにより、正確に識別した制御対象物に対して制動動作の制御を行う等、適切な走行制御を行うことができる。
【0092】
以上のように構成された車両制御ユニット100における識別制御の動作例について説明する。図14および図15は、車両制御ユニット100における識別制御の動作例を示すフローチャートである。図14および図15における処理は、例えば、車両1が走行している際に適宜実行される。また、本フローチャートでは、送受波センサ41から検出波が送波されたことを前提としている。
【0093】
図14に示すように、車両制御ユニット100は、2つの送受波センサ41で検出波を受波したか否かについて判定する(ステップS101)。判定の結果、2つの送受波センサ41で検出波を受波していない場合(ステップS101、NO)、ステップS101の処理が繰り返される。
【0094】
一方、2つの送受波センサ41で検出波を受波した場合(ステップS101、YES)、車両制御ユニット100は、車両1と物体との距離と、検出波の反射強度の情報を取得する(ステップS102)。
【0095】
次に、車両制御ユニット100は、車両1と物体との距離が所定距離以内であるか否かについて判定する(ステップS103)。判定の結果、距離が所定距離より大きい場合(ステップS103、NO)、処理はステップS105に遷移する。
【0096】
一方、距離が所定距離以内である場合(ステップS103、YES)、車両制御ユニット100は、2つの座標の座標差が形状判定閾値未満であるか否かについて判定する(ステップS104)。
【0097】
判定の結果、座標差が形状判定閾値以上である場合(ステップS104、NO)、車両制御ユニット100は、識別閾値を非柱状物体に係る第1閾値に設定する(ステップS105)。一方、座標差が形状判定閾値未満である場合(ステップS104、YES)、車両制御ユニット100は、識別閾値を柱状物体に係る第2閾値に設定する(ステップS106)。
【0098】
図15に示すように、ステップS105またはステップS106の後、車両制御ユニット100は、反射強度が識別閾値以上であるか否かについて判定する(ステップS107)。判定の結果、反射強度が識別閾値未満である場合(ステップS107、NO)、処理はステップS111に遷移する。
【0099】
一方、反射強度が識別閾値以上である場合(ステップS107、YES)、車両制御ユニット100は、座標が所定領域内であるか否かについて判定する(ステップS108)。
【0100】
判定の結果、座標が所定領域内ではない場合(ステップS108、NO)、処理はステップS112に遷移する。なお、ステップS108における、座標が所定領域内ではない場合とは、座標が車両1の前方領域内に位置することを意味している。第2制御対象判定線L2に対して、車両1とは反対側の領域と、前方領域とを区別する判定処理については、ステップS108の前後で、追加で行われても良い。
【0101】
一方、座標が所定領域内である場合(ステップS108、YES)、車両制御ユニット100は、異なる位置で取得した2つの座標の差分が所定値より大きいか否かについて判定する(ステップS109)。
【0102】
判定の結果、差分が所定値以下である場合(ステップS109、NO)、車両制御ユニット100は、差分が所定値以下である回数が所定回数未満であるか否かについて判定する(ステップS110)。判定の結果、回数が所定回数未満である場合(ステップS110、YES)、処理はステップS112に遷移する。ここで、所定回数とは、2以上の予め設定された数である。
【0103】
一方、回数が所定回数以上である場合(ステップS110、NO)、車両制御ユニット100は、物体が非制御対象物であると識別する(ステップS111)。
【0104】
ステップS109の判定に戻り、差分が所定値より大きい場合(ステップS109、YES)、車両制御ユニット100は、物体が制御対象物であると識別する(ステップS112)。ステップS111またはステップS112の後、本制御は終了する。
【0105】
なお、ステップS112の後、車両制御ユニット100により、車両1に対して所定の走行制御が行われる。
【0106】
以上のように構成された本実施の形態によれば、物体2の反射面の曲率に応じて、物体2が制御対象物であるか否かについて判定する。具体的には、物体2の座標の時系列変化、例えば、第1位置に係る第1座標と、第2位置に係る第2座標との差分に基づいて、物体2が制御対象物であるか否かについて判定する。
【0107】
これによって、物体2の大きさを識別することができる。その結果、当該物体2が制御対象物であるか否かを正確に識別することができる。
【0108】
また、2つの座標の差分が所定値以下である場合、物体2をポールのような小物体であると判定することができるので、車両1と衝突する可能性がほとんどないものを非制御対象物と識別することができる。なお、本実施の形態では、物体を正確に識別することができる。
【0109】
また、物体2の座標における3以上の時刻の時系列変化に基づいて物体2の識別を行うので、2つの時刻の時系列変化に基づいて物体2の識別を行う構成と比較して、物体2の識別精度を向上させることができる。
【0110】
また、物体2が非制御対象物であると判定した回数が所定回数以上である場合、物体2を非制御対象物であると識別するので、物体2の識別精度をさらに向上させることができる。
【0111】
また、所定領域が車両1の側面から所定幅離れた側方の領域であるので、反射面の曲率に応じた物体識別の対象を、車両1の側方の領域の物体に特定することができる。その結果、前方領域に位置する物体とは別に、車両1の側方にある物体が制御対象物であるか否かの識別を行うことができるので、物体2を正確に識別しやすくすることができる。
【0112】
また、物体が柱状物体であるか否かによって識別閾値を変更するので、柱状物体を制御対象物として正確に識別することができる。
【0113】
また、識別閾値(第1閾値)が、非制御対象物に識別閾値が非制御対象物の反射強度に合わせて設定されているので、物体が非制御対象物である場合、当該物体を制御対象物と識別することを確実に抑制することができる。
【0114】
なお、本実施の形態では、物体の形状により、反射強度の変化傾向が同じではないことに起因して、物体を誤って識別することを抑制することができる。その結果、本実施の形態では、物体を安定して識別することができる。
【0115】
また、2つの座標の座標差に基づいて物体が柱状物体であるか否かについて判定するので、外乱の影響に起因して物体の形状を誤って判定することを抑制することができる。その結果、本実施の形態では、物体の形状を正確に判定することができる。
【0116】
また、車両1と物体との距離に応じて、識別感度を変更するか否かについて判定するので、柱状物体の判定精度が確保された範囲で柱状物体を制御対象物であると識別することができる。その結果、物体が柱状物体であることを正確に判定することできる。
【0117】
なお、上記実施の形態では、物体2の座標の時系列変化に基づいて、物体2が制御対象物であるか否かについて識別していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、物体2の反射面の曲がり具合の情報を外部装置から取得することによって、物体2が制御対象物であるか否かについて識別しても良い。
【0118】
また、上記実施の形態では、物体2が非制御対象物であると判定した回数が所定回数以上である場合、物体2が非制御対象物であると識別していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、物体2が制御対象物であると、1回でも判定したら、物体2が制御対象物であると識別しても良い。
【0119】
また、上記実施の形態では、識別部110が2つの時刻の物体2の座標の時系列変化に基づいて、物体2が制御対象物であるか否かについて識別していたが、本開示はこれに限定されず、図6に示したように、1つの時刻において異なる検出波の経路により検出された物体2の反射面の2つの座標の差分に基づいて、物体2が制御対象物であるか否かについて識別しても良い。
【0120】
なお、1つの時刻において検出された物体2の反射面の2つの座標の差分が所定値よりも大きい場合に、識別部110は、物体2の反射面の曲率が小さい、大きな柱状物体であるとし、物体2を制御対象物であると識別してもよい。
【0121】
一方、1つの時刻において検出された物体2の反射面の2つの座標の差分が所定値以下である場合に、識別部110は、物体2の反射面の曲率が大きい、小さな径を有する物体であるとし、物体2を非制御対象物であると識別する。
【0122】
また、上記実施の形態では、所定領域内の物体2が、曲率が大きい小物体であると判定された場合、識別部110が当該物体2を非制御対象物であると識別していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、領域判定部140が、第2制御対象判定線L2を車両1側にシフトさせて、所定領域を狭めるようにしても良い。
【0123】
このようにすることで、当該物体2が所定領域から外れるので、所定領域を狭めて以降、物体2を識別部110による識別対象から外すことができる。
【0124】
また、上記実施の形態では、形状判定部120や変更部130を有していたが、本開示はこれに限定されず、形状判定部120や変更部130を有していなくても良い。
【0125】
また、上記実施の形態では、識別感度を識別閾値とし、識別閾値を変更することとしていたが、本開示はこれに限定されず、例えば、識別感度を反射強度とし、識別閾値を変更する代わりに反射強度を変更することとしても良い。識別感度を反射強度とする場合、検出波の出力圧(音圧等)や、検出波の増幅度を変更することで、反射強度が変更される。
【0126】
具体的には、物体が柱状物体である場合に検出波の出力圧や、検出波の増幅度を強くして、反射強度が識別閾値(第1閾値)を超えるように、変更部130が反射強度を変更する。
【0127】
このようにしても、物体を安定して識別することができる。
【0128】
また、上記実施の形態では、柱状物体として、ポール等の円柱状の物体を例示したが、本開示はこれに限定されず、送受波センサ41から送波された検出波を物体の2つの点で、2つの送受波センサ41に向けて反射可能な形状の物体(例えば、H鋼等のような反射部位が複数あるような柱状物体)である限り、どのような柱状物体であっても良い。
【0129】
また、制御対象物であるか否かの対象となる物体には、車両が含まれていてもよい。例えば、車体の角部は曲面を有するが、この曲面の曲率は、小さなポールの曲面の曲率に比べて小さい。
【0130】
そのため、車体の曲面である反射面で検出波が反射した反射点の座標である第1座標と第2座標との差分が所定値より大きい場合、小さなポールと区別して、車両を制御対象物であると識別することができる。
【0131】
また、上記実施の形態では、物体検出部40が、4つのセンサを有する構成であったが、本開示はこれに限定されず、検出波を送波可能な1つのセンサと、検出波を受波可能な2つのセンサとを少なくとも有している限り、センサを何個有していても良い。例えば、図16に示すように、物体検出部40が6つの送受波センサを有している。
【0132】
6つのセンサは、X方向の中央部に2つ、X方向の両端部に1つずつ、車両1の両側面に1つずつ配置されている。物体検出部40が6つのセンサを有する構成の場合、図2に示す構成と比較して、検出波の往復経路の組み合わせのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0133】
また、上記実施の形態では、検出波が物体の2つの点で反射されて車両1で受波された場合、識別感度を変更していたが、本開示はこれに限定されず、物体の3つ以上の点で反射されて車両1で受波された場合でも識別感度を変更しても良い。また、この場合、3つ以上の送受波センサで受波可能なように設けられていれば良い。
【0134】
また、上記実施の形態では、2つの送受波センサで検出波を受波した場合に識別制御を行っていたが、本開示はこれに限定されず、1つの送受波センサで検出波を受波した場合、識別閾値を非柱状物体に係る第1閾値に設定して物体を識別しても良い。
【0135】
また、上記実施の形態では、物体識別装置(識別部、形状判定部および変更部)が車両制御ユニットに組み込まれていたが、本開示はこれに限定されず、車両制御ユニットに組み込まれていなくても良い。
【0136】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0137】
なお、上述の実施形態および変形例の物体検出装置において、各構成要素に用いた「・・・部」という表記は、上述のとおり、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されうる。
【0138】
また、上述の実施形態および変形例の物体検出装置は、例えばROM13にインストールされているプログラムをCPU11が実行することにより、物体検出処理を行うこととした。
【0139】
しかし、物体検出装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。あるいは、ネットワークを介してプログラムをダウンロードし、コンピュータで実行させてもよい。
【0140】
また、物体検出装置の機能の少なくとも一部が、CPUを有さない専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0141】
このように、上述の実施形態および変形例の物体検出装置は、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。また、上述の実施形態および変形例の物体検出装置は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。なお、プログラム製品は、コンピュータープログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な媒体である。
【0142】
また、上述の実施形態および変形例の物体検出装置の各機能ブロックは、部分的に、または全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上述の実施形態および変形例の物体検出装置の各処理は、部分的に、または全体的に、1つのLSIまたはLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように1つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力とを備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0143】
ただし、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。上述の実施形態および変形例の物体検出装置の各処理が、デジタル処理またはアナログ処理として実現されてもよい。
【0144】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本開示の物体識別装置は、物体を安定して識別することが可能な物体識別装置、車両および物体識別方法として有用である。
【符号の説明】
【0146】
1 車両
10 加速部
20 制動部
30 車速情報取得部
40 物体検出部
41、41a、41b、41c、41d 送受波センサ
100 車両制御ユニット
110 識別部
120 形状判定部
130 変更部
140 領域判定部
150 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16