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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047759
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】サドル付分水栓
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
F16L41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156857
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳史
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019CA01
(57)【要約】
【課題】サドル付分水栓を配水管に取り付ける際に使用する平座金の落下を抑制できるサドル付分水栓を提供する。
【解決手段】サドル付分水栓100では、ボルトB1は、下側絶縁体6が装着されたバンド3のボルト挿通孔3c、上側絶縁体5が装着されたサドル2のボルト挿通孔2c、及び平座金8を順に挿通してナットN1と螺合されている。上側絶縁体5は、円筒部5aと、鍔部5bと、突出部5dとを有している。円筒部5aは、円筒状に形成されている。鍔部5bは、円筒部5aの上端部に形成されており、平座金8が載置される。突出部5dは、鍔部5bの外周側の表面から上方に延びており、平座金8の径方向の移動を規制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管の外周に配置され、前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有し、分水栓本体に接合されたサドルと、
前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置され、前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、
前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、
前記サドルのフランジ部に形成されたボルト挿通孔に装着される上側絶縁体と、
前記バンドのフランジ部に形成されたボルト挿通孔に装着される下側絶縁体と、を備え、
前記ボルトは、前記下側絶縁体が装着された前記バンドのボルト挿通孔、前記上側絶縁体が装着された前記サドルのボルト挿通孔、及び平座金を順に挿通して、前記ナットと螺合されており、
前記上側絶縁体は、円筒状に形成された円筒部と、前記円筒部の前記ナット側の端部に形成されて前記平座金が載置される鍔部と、前記鍔部の表面から前記ナット側に延び、前記平座金の径方向の移動を規制する突出部と、を有すること
を特徴とするサドル付分水栓。
【請求項2】
前記突出部は、周方向に分離して複数形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項3】
前記上側絶縁体は、前記突出部の先端側に形成されて前記平座金の軸方向の移動を規制する引っ掛かり部を有すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のサドル付分水栓。
【請求項4】
前記引っ掛かり部は、周方向に分離して複数形成されていること
を特徴とする請求項3に記載のサドル付分水栓。
【請求項5】
前記引っ掛かり部の内接円径は、前記ナットの外接円径よりも大きいこと
を特徴とする請求項3または請求項4に記載のサドル付分水栓。
【請求項6】
前記平座金は、前記鍔部に粘着部材によって貼り付けられていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のサドル付分水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サドル付分水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サドル付分水栓は、水道本管等の配水管から各住宅等に水を供給する給水管を分岐する際に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のサドル付分水栓を配水管に取り付ける場合は、分水栓本体に接合されたサドルと、バンドとで配水管を挟持して、サドルとバンドとをボルト及びナットで締結する。これにより、サドル付分水栓が配水管に固定される。
【0004】
ボルト及びナットでの締結時には、ボルトは、下側絶縁体が装着されたバンドのボルト挿通孔、上側絶縁体が装着されたサドルのボルト挿通孔、及び平座金を順に挿通して、ナットと螺合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-80598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上側絶縁体は、平座金とサドルのフランジ部との間に介在する鍔部を有している。これにより、上側絶縁体は、ナットの締め付け時に平座金でサドルの塗装がはがれることによる腐食の発生を防止することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のサドル付分水栓を配水管に取り付ける作業中においては、平座金にボルトの軸部を挿通するまでは、平座金は位置決めされない。このため、平座金が作業中に落下したり、平座金にボルトの軸部を挿通する際に平座金がボルトの軸部に接触して落下したりするおそれがあった。サドル付分水栓の配水管への取付け作業は、路面等を掘削した狭く暗い場所での作業となるため、平座金が落下すると、平座金を紛失したり、平座金に泥、砂等が付着したりして、作業性が低下してしまう。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するために創作されたものであり、サドル付分水栓を配水管に取り付ける際に使用する平座金の落下を抑制できるサドル付分水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係るサドル付分水栓は、配水管の外周に配置され、前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有し、分水栓本体に接合されたサドルと、前記配水管を挟んで前記サドルに対向配置され、前記配水管に固定するための一対のフランジ部を有するバンドと、前記サドルと前記バンドとを前記配水管に連結固定するためのボルト及びナットと、前記サドルのフランジ部に形成されたボルト挿通孔に装着される上側絶縁体と、前記バンドのフランジ部に形成されたボルト挿通孔に装着される下側絶縁体と、を備え、前記ボルトは、前記下側絶縁体が装着された前記バンドのボルト挿通孔、前記上側絶縁体が装着された前記サドルのボルト挿通孔、及び平座金を順に挿通して、前記ナットと螺合されており、前記上側絶縁体は、円筒状に形成された円筒部と、前記円筒部の前記ナット側の端部に形成されて前記平座金が載置される鍔部と、前記鍔部の表面から前記ナット側に延び、前記平座金の径方向の移動を規制する突出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、サドル付分水栓を配水管に取り付ける際に使用する平座金の落下を抑制できるサドル付分水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るサドル付分水栓の一部断面を有する正面図である。
図2】サドル付分水栓の拡大側面図である。
図3図1に示される上側絶縁体周辺の拡大図である。
図4】上側絶縁体の拡大斜視図である。
図5】上側絶縁体の拡大平面図である。
図6】上側絶縁体の拡大正面図である。
図7】第1変形例に係る上側絶縁体の拡大斜視図である。
図8】第1変形例に係る上側絶縁体の拡大平面図である。
図9図8のA-A線断面図である。
図10】第2変形例に係る上側絶縁体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1図6を参照して本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100を説明する。なお、方向を説明する際は、図1に示すサドル付分水栓100側を上、一対のボルトB1及びナットN1側を左右として説明する。
なお、サドル付分水栓100は、分水栓本体1の給水管接続用雄ねじ部1e、及び、栓棒13を除いて、全体が左右対称形状に形成されているため、左右の一方側を主に説明して他方側の説明は適宜省略する。また、同じ構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0013】
<サドル付分水栓>
図1図2に示すように、サドル付分水栓100は、水道本管等の金属または樹脂製の配水管P1から各住宅等に水を供給するための給水管(図示省略)を分岐するのに使用される分水栓である。サドル付分水栓100は、分水栓本体1と、左右にフランジ部2bを有するサドル2と、左右にフランジ部3b有するバンド3と、一対のボルトB1と、一対のボルトB1にそれぞれ螺着されるナットN1とを備えている。サドル2は、分水栓本体1に接合されている。換言すると、サドル付分水栓100は、分水栓本体1に設けられた止水機構10と、サドル2、バンド3、一対のボルトB1、及び一対のナットN1を有するサドル機構20と、を主に備えている。サドル付分水栓100は、配水管P1の材質や径の大きさに合わせて、適宜大きさ、形状を変えたものが使用される。
【0014】
ボルトB1は、下側絶縁体6が装着されたバンド3のフランジ部3bのボルト挿通孔3c、上側絶縁体5が装着されたサドル2のフランジ部2bのボルト挿通孔2c、及び平座金8を順に挿通してナットN1と螺合される。ボルトB1に螺合されたナットN1を締め付けることで、サドル付分水栓100は、配水管P1の外周に取り付けられる。
【0015】
<分水栓本体>
分水栓本体1は、止水機構10の外ケースを形成する筐体である。分水栓本体1は、縦孔1aと、横孔1bとを有し、正面視して略十字形状に形成された金属製の中空部材から成る。分水栓本体1には、前記縦孔1aと、前記横孔1bと、雄ねじ部1cと、サドル連結用雄ねじ部1dと、給水管接続用雄ねじ部1eと、コア挿設孔1fと、が形成されている。分水栓本体1は、縦孔1aと、横孔1bと、縦孔1a及び横孔1bの中央部に配置された球弁12と、横孔1bの右端部に設けられた栓棒13と、によって止水機構10を主に構成している。
【0016】
縦孔1aは、分水栓本体1の軸心線に沿って上下方向に貫通して形成されている。縦孔1aの中央部には、球弁12が配置されている。縦孔1aの上側開口部の外周部には、キャップ11を螺着するための雄ねじ部1cが形成されている。縦孔1aの下側のコア挿設孔1fには、コア7が装着されている。そのコア挿設孔1fは、サドル連結用雄ねじ部1dの軸心側に軸心線に沿って形成されている。なお、コア7の装着は任意である。
【0017】
また、配水管P1にコア7を取り付けるための穿孔孔P1aを配水管P1に穿孔する場合は、穿孔機(図示省略)が使用される。穿孔機は、図1に示すサドル機構20を配水管P1に締結することで、配水管P1に取り付けられたサドル付分水栓100の縦孔1aに、上側開口から挿入される。その穿孔機(図示省略)によって配水管P1に穿孔孔P1aが穿孔される。穿孔孔P1aが穿孔された後、縦孔1aの下端部のコア挿設孔1fには、前記コア7が装着される。コア挿設孔1fの外側には、サドル連結用雄ねじ部1dが形成されている。サドル連結用雄ねじ部1dには、サドル2に形成された分水栓連結用雌ねじ部2dが螺着される。
【0018】
横孔1bは、縦孔1aに直交するように分水栓本体1の上下方向中央部に左右方向に貫通して形成されている。横孔1bの左端部の外側には、給水管接続用雄ねじ部1eが形成されている。その給水管接続用雄ねじ部1eには、給水管(図示省略)を分水栓本体1に取り付けるための給水支管継手(図示省略)が螺着される。横孔1bの右端部には、球弁12に連結された栓棒13が装着されている。
【0019】
<サドル機構>
サドル機構20は、サドル2とバンド3とを配水管P1の周囲に取り付けるための機構である。サドル機構20は、サドル2と、バンド3と、ボルトB1と、ナットN1と、上側絶縁体5と、下側絶縁体6と、平座金8と、を備えて主に構成されている。サドル機構20は、ボルトB1を、バンド3のフランジ部3bのボルト挿通孔3cに挿通し、サドル2のフランジ部2bのボルト挿通孔2cに挿通して、ボルトB1の先端側のナットN1と螺合させて成る。サドル2とバンド3とは、例えばエポキシ樹脂を主成分とした粉体塗料を用いて表面が塗装されている。
【0020】
<サドル>
図1に示すように、サドル2は、配水管P1の上側外周部を抱持するように、配水管P1の外周に配置された上側半体である。サドル2は、分水栓本体1の下端部に接合されている。サドル2は、抱持部2aと、フランジ部2bと、ボルト挿通孔2cと、分水栓連結用雌ねじ部2dと、段差部2eと、を有している。サドル2は、平面視して左右方向に延びる帯状の金属から成り、中央部に分水栓連結用雌ねじ部2dを有し、左右両端部にボルト挿通孔2cをそれぞれ有している。サドル2は、正面視して略Ω字状に形成されて、中央部の抱持部2aが円弧状に形成されて、両端部のフランジ部2bが平板状に形成されている。なお、段差部2eは任意とする。
【0021】
抱持部2aは、配水管P1を片側(上側)から抱持する部分である。抱持部2aは、正面視して円弧状に形成されている。
フランジ部2bは、抱持部2aの左右両端部から外方向に水平に突出形成された左右一対の平板状部分である。
ボルト挿通孔2cは、ボルトB1の雄ねじ部B1cが挿入される孔である。ボルト挿通孔2cは、一対のフランジ部2bにそれぞれ形成されている。
分水栓連結用雌ねじ部2dは、分水栓本体1のサドル連結用雄ねじ部1dが螺着されるねじ孔である。分水栓連結用雌ねじ部2dは、抱持部2aの中央部に形成されている。
段差部2eは、上側絶縁体5の係止爪5cが係止する箇所である。段差部2eは、フランジ部2b内に形成されている。
【0022】
<バンド>
バンド3は、配水管P1を挟んでサドル2に対向配置されて、サドル2とで配水管P1を抱持するための下側半体である。バンド3は、正面視して円弧状に形成された抱持部3aと、抱持部3aの左右両端部から外方向に水平に突出形成された一対のフランジ部3bと、一対のフランジ部3bにそれぞれ形成されたボルト挿通孔3cと、フランジ部3b内に形成された段差部3eと、を有している。バンド3は、サドル2に対して、正面視して略対称な形状に形成されている。バンド3は、正面視して略逆Ω字状に形成されて、中央部の抱持部3aが円弧状に形成され、両端部のフランジ部3bが平板状に形成されている。バンド3は、平面視して左右方向に延びる帯状の金属から成り、左右両端部にボルト挿通孔3cをそれぞれ有している。なお、段差部3eは任意とする。
【0023】
<ボルト>
ボルトB1は、サドル2とバンド3とを配水管P1の外周部に連結固定するための一対の締結部材である。ボルトB1は、頭部B1aと、軸部である円柱形状の胴部B1b及び雄ねじ部B1cと、を有する市販のボルトである。なお、ボルトB1は、軸部の全体が雄ねじ部B1cから構成された、いわゆる全ねじボルトであってもよい。
【0024】
<ナット>
ナットN1は、ボルトB1の雄ねじ部B1cに螺合させて締め付けることで、サドル2のフランジ部2bに、平座金8及び上側絶縁体5を介在して締め付けて、サドル2をバンド3に固定するための締結具である。ナットN1は、市販の六角ナットである。ナットN1は、サドル2のボルト挿通孔2cに内嵌された上側絶縁体5と、上側絶縁体5の上に載置された平座金8と、を挿通したボルトB1の雄ねじ部B1cに螺着される。ナットN1は、レンチ等の締付工具で締め付けた際に、ナットN1の下面が平座金8を介在して上側絶縁体5に当接した状態で、ボルトB1にねじ込まれる。
【0025】
<上側絶縁体>
図3に示すように、上側絶縁体5は、ボルト挿通孔2c内に押し込んで装着されて、ボルト挿通孔2cの内壁及び開口縁周辺部に配置される弾性絶縁体である。上側絶縁体5は、円筒部5aと、鍔部5bと、係止爪5cと、突出部5dとを有している。また、上側絶縁体5は、引っ掛かり部5eを有していることが好ましい。
【0026】
円筒部5aは、円筒状に形成されている。円筒部5aは、ボルト挿通孔2cの内壁に内嵌するように配置された円筒部分である。鍔部5bは、円筒部5aの上端部(ナットN1側の端部)に形成されている。鍔部5bは、円筒部5aの上端の開口縁から径方向外側に延設された円環状の板部であり、鍔部5bの上に平座金8が載置される。鍔部5bは、平座金8がサドル2に直接触れるのを防ぐ機能を有している。係止爪5cは、円筒部5aの下端部に形成されている。係止爪5cは、段差部2eに係止されて、上側絶縁体5がサドル2から容易に離脱しないように保持するための係止部分である。
【0027】
図4図6に示すように、突出部5dは、鍔部5bの外周側の表面から上方(ナットN1側)に延びており、平座金8(図3参照)の径方向の移動を規制する。すなわち、平座金8の外周面が突出部5dに当接することで、平座金8の径方向の移動が規制される。本実施形態では、突出部5dは、周方向に分離して複数(例えば4個)形成されている。突出部5dは、ここでは円弧面状を呈しているが、これに限定されるものではなく、例えばピン(円柱)状を呈していてもよい。
【0028】
引っ掛かり部5eは、突出部5dの先端側に形成されており、平座金8の軸方向の移動を規制する。すなわち、平座金8の上面が引っ掛かり部5eに当接することで、平座金8の軸方向の移動が規制される。本実施形態では、引っ掛かり部5eは、周方向に分離して複数(例えば4個)形成されている。ここでは、引っ掛かり部5eは、複数の突出部5dのすべてにそれぞれ形成されている。なお、引っ掛かり部5eは、複数の突出部5dの全部ではなく一部に形成されていてもよい。また、引っ掛かり部5eは、突出部5dの先端側の周方向全長区間にわたって形成されていなくてもよく、突出部5dの先端側の周方向全長区間の一部に形成されていてもよい。
【0029】
図3に示すように、引っ掛かり部5eは、突出部5dの内面から径方向内側に突き出た突起部分を有しており、引っ掛かり部5eの形状は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。本実施形態では、平面視において、引っ掛かり部5eの内接円径は、ナットN1の外接円径よりも大きく、平座金8の外径よりも小さく設定されている。
上側絶縁体5は、本実施形態では、一体形成されたポリカーボネート等の樹脂製の略筒状部材である。なお、上側絶縁体5は、全体が一体形成された構成に限定されるものではない。例えば、突出部5dと鍔部5bとは、それぞれ分離して別体に形成された上で、結合されるように構成されていてもよい。
【0030】
<下側絶縁体>
図1に示すように、下側絶縁体6は、上側絶縁体5と同様、ボルト挿通孔3c内に押し込んで装着されて、ボルト挿通孔3cの内壁及び開口縁周辺部に配置される弾性絶縁体である。下側絶縁体6は、円筒状に形成された円筒部6aと、円筒部6aの下端部に形成された鍔部6bと、円筒部6aの上端部に形成された係止爪6cと、鍔部6bの前端及び後端から下方向に突出した突出片から成るガイド覆着部6dと、が一体形成されたポリカーボネート等の樹脂製の略筒状部材である。
【0031】
<絶縁体ガイド>
絶縁体ガイド9は、図2に示すように、下側絶縁体6の側面視して逆凹形状に折曲形成された鍔部6b及びガイド覆着部6d内に装着される部材である。絶縁体ガイド9は、ステンレス鋼板等の金属板によって形成されている。絶縁体ガイド9は、不図示のボルト挿入孔を有する座金部9aと、座金部9aの前端及び後端から下方向に突出した折曲片9bと、を有して成る。前後の折曲片9b間には、ボルトB1の頭部B1aが挿着される。
【0032】
<平座金>
平座金8は、例えば市販のものであり、リング板状を呈している。平座金8は、ナットN1の下面と、上側絶縁体5の鍔部5bとの間に介在されている。平座金8は、例えばステンレス鋼板等の金属板によって形成されている。
【0033】
<コア>
図1に示すように、コア7は、配水管P1内と、サドル付分水栓100の縦孔1aの下端のコア挿設孔1fに取付けられ、穿孔孔P1aの錆による縮小を抑制する略円筒形状の部材である。コア7の下端部は、サドル付分水栓100の縦孔1a内に挿入した穿孔機(図示省略)によって穿孔された穿孔孔P1aに挿着されている。コア7の上端部は、コア挿設孔1fに装着されている。
【0034】
[サドル付分水栓の作用]
次に、本発明の実施形態に係るサドル付分水栓100の作用を、取付け手順に沿って説明する。
【0035】
まず、図1に示すように、上側絶縁体5を、サドル2のフランジ部2bに形成されたボルト挿通孔2c内に押し込んで装着する。また、下側絶縁体6を、バンド3のフランジ部3bに形成されたボルト挿通孔3c内に押し込んで装着する。
【0036】
続いて、図3に示すように、平座金8を、上側絶縁体5の突出部5dの内部に向けて、引っ掛かり部5eを径方向外側に僅かに移動させながら押し込むことで、突出部5dの内部に着脱可能に装着する。これにより、平座金8は、上側絶縁体5の鍔部5bの上に載置された状態で係止される。ただし、まず、平座金8を上側絶縁体5に装着し、この後に、平座金8を装着した上側絶縁体5を、サドル2のフランジ部2bのボルト挿通孔2c内に装着してもよい。
【0037】
次に、図1に示すように、ボルトB1の雄ねじ部B1cを、下側絶縁体6が装着されたバンド3のボルト挿通孔3cに下側から挿入する。続いて、上方向に突出している雄ねじ部B1cを、上側絶縁体5が装着されたサドル2のボルト挿通孔2cに下側から挿入する。続いて、その雄ねじ部B1cにナットN1を嵌めて、レンチ等の締付工具で締め付ける。これにより、サドル付分水栓100が配水管P1に固定される。
【0038】
ナットN1を締め付けるとき、ナットN1の回転に伴って、通常、平座金8のみが上側絶縁体5の鍔部5b上で回転し、上側絶縁体5が回転することは殆どない。また、上側絶縁体5の鍔部5bが、平座金8とサドル2のフランジ部2bとの間に介在する。したがって、上側絶縁体5は、ナットN1の締め付け時に平座金8でサドル2の塗装がはがれることによる腐食の発生を防止できる。また、上側絶縁体5は、ナットN1の緩み防止や、締め付け荷重の均等化の作用も奏する。
【0039】
前記した本実施形態では、ボルトB1は、下側絶縁体6が装着されたバンド3のボルト挿通孔3c、上側絶縁体5が装着されたサドル2のボルト挿通孔2c、及び平座金8を順に挿通してナットN1と螺合されている。上側絶縁体5は、円筒部5aと、鍔部5bと、突出部5dとを有している。円筒部5aは、円筒状に形成されている。鍔部5bは、円筒部5aの上端部に形成されており、平座金8が載置される。突出部5dは、鍔部5bの外周側の表面から上方に延びており、平座金8の径方向の移動を規制する。
【0040】
このような本実施形態によれば、サドル付分水栓100を配水管P1に取り付ける作業中には、平座金8は、上側絶縁体5の鍔部5b上に載置された状態で、突出部5dによって径方向の移動が規制されて位置決めされる。
したがって、本実施形態は、サドル付分水栓100を配水管P1に取り付ける際に使用する平座金8の落下を抑制できるサドル付分水栓100を提供することができる。
これにより、路面等を掘削した狭く暗い場所での取付け作業において、平座金8が落下して、平座金8を紛失したり、平座金8に泥、砂等が付着したりして、作業性が低下してしまう事態を回避できる。
【0041】
また、本実施形態では、上側絶縁体5は、突出部5dの先端側に形成されて平座金8の軸方向の移動を規制する引っ掛かり部5eを有している。この構成では、平座金8は、上側絶縁体5の鍔部5b上に載置された状態で、突出部5dによって径方向の移動が規制されるとともに、引っ掛かり部5eによって軸方向の移動が規制されて位置決めされる。したがって、平座金8の落下をより抑制できるサドル付分水栓100を提供することができる。サドル付分水栓100の出荷時において、上側絶縁体5はサドル2に装着されている。この場合、サドル付分水栓100の出荷時から、上側絶縁体5に平座金8が装着されていてもよい。このようにすれば、平座金8の装着忘れを効果的に予防することができる。なお、サドル付分水栓100の設置時に、平座金8を上側絶縁体5に装着してもよい。
【0042】
なお、上側絶縁体5は、引っ掛かり部5eを有しない構成とすることも可能である。この場合でも、平座金8は突出部5dによって径方向の移動が規制されるため、平座金8の落下を抑制できる効果は得られる。
この場合、平座金8は、上側絶縁体5の鍔部5bに粘着部材によって貼り付けられていることが好ましい。粘着部材としては、例えば粘着剤や両面テープが使用され得る。このようにすれば、平座金8の落下をより抑制することができる。
ここで、粘着部材による粘着力は比較的弱いので、平座金8は、ナットN1の締め付け前には鍔部5bに粘着部材によって貼り付いているが、ナットN1の締め付け時には、ナットN1の回転に伴って回転する。
【0043】
また、本実施形態では、突出部5dは、周方向に分離して複数形成されている。この構成では、少ない材料で効率的に平座金8の径方向の移動を規制できる。平座金8の突出部5d内への装着も容易となる。また、引っ掛かり部5eを有する場合には、比較的小さな力で引っ掛かり部5eを径方向外側に僅かに移動させながら、平座金8を押し込むことができる。
【0044】
また、本実施形態では、引っ掛かり部5eは、周方向に分離して複数形成されている。この構成では、平座金8を、複数の引っ掛かり部5eによって、周方向の複数箇所で、より確実に軸方向の移動を規制することができる。ただし、引っ掛かり部5eは、周方向の一箇所に設けられていてもよい。この場合でも、平座金8は、突出部5dと引っ掛かり部5eとの協働によって移動が規制されて位置決めされ得る。
【0045】
また、本実施形態では、引っ掛かり部5eの内接円径は、ナットN1の外接円径よりも大きい。この構成では、引っ掛かり部5eとナットN1が干渉することがないため、ナットN1をレンチ等の締付工具を使用して容易に締め付けでき、従来と同様の施工が可能である。ただし、引っ掛かり部5eの内接円径は、ナットN1の外接円径と同等または僅かに小さくてもよい。この場合、ナットN1の締め付け時に、ナットN1が回転して引っ掛かり部5eに接触するが、引っ掛かり部5eが径方向外側に僅かに移動する。
【0046】
図7は、第1変形例に係る上側絶縁体51の拡大斜視図である。図8は、第1変形例に係る上側絶縁体51の拡大平面図である。図9は、図8のA-A線断面図である。
図7図9に示すように、第1変形例に係る上側絶縁体51では、突出部5d1は、周方向に連続して一つ形成されており、引っ掛かり部5e1は、突出部5d1の先端側に形成されている。それ以外の点では、上側絶縁体51は、前記した上側絶縁体5と同様である。突出部5d1は、平座金8の径方向の移動を規制するために、周方向に沿って180度を超える範囲に形成されている。この構成では、平座金8をより確実に位置決めすることができる。なお、図7図9では、突出部5d1は、周方向に沿って360度未満の範囲に形成されているが、周方向の全周に沿って形成されてもよい。
【0047】
図10は、第2変形例に係る上側絶縁体52の拡大断面図である。
図10に示すように、第2変形例に係る上側絶縁体52では、突出部5d2は、鍔部5bの内周側の表面から上方に延びており、平座金8(図3参照)の径方向の移動を規制する。すなわち、平座金8の内周面が突出部5d2に当接することで、平座金8の径方向の移動が規制される。また、引っ掛かり部5e2は、突出部5d2の先端側に形成されている。それ以外の点では、上側絶縁体52は、前記した上側絶縁体5と同様である。この構成によっても、前記した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記した実施形態や変形例に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記した実施形態や変形例に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記した実施形態や変形例の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0049】
例えば、前記した実施形態では、サドル2のフランジ部2bの表面が水平であるが、これに限定されるものではない。本発明は、サドルのフランジ部の表面が水平面に対して傾いているサドル付分水栓にも適用可能である。このようなサドル付分水栓は、特に平座金が落下するおそれが大きいため、本発明を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
1 分水栓本体
2 サドル
2b フランジ部
2c ボルト挿通孔
3 バンド
3b フランジ部
3c ボルト挿通孔
5,51,52 上側絶縁体
5a 円筒部
5b 鍔部
5d,5d1,5d2 突出部
5e,5e1,5e2 引っ掛かり部
6 下側絶縁体
8 平座金
100 サドル付分水栓
B1 ボルト
N1 ナット
P1 配水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10