(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047769
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】フード持ち上げ装置用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/38 20110101AFI20230330BHJP
F15B 15/26 20060101ALI20230330BHJP
F15B 15/19 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B60R21/38 323
F15B15/26
F15B15/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156870
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】村上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 大地
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB06
3H081BB16
3H081CC01
3H081FF11
3H081FF37
3H081HH08
(57)【要約】
【課題】ピストンロッドの突出後、フードからの荷重が所定値以下の場合はピストンロッドの退動を規制し、フードからの荷重が所定値を超えるとピストンロッドを退動させることができるフード持ち上げ装置用アクチュエータを提供する。
【解決手段】フード持ち上げ装置用アクチュエータ1は、シリンダ2内に配置されたピストンロッド3をガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げる。このアクチュエータ1は、シリンダ2の先端部の内周面に固定され、ピストンロッド3の突出後、ピストンロッド3を保持して退動を阻止する保持機構12を備える。保持機構12は、前記フードからピストンロッド3への荷重が所定値以下の場合はシリンダ2の内周面に固定されたままピストンロッド3の退動を阻止し、該荷重が該所定値を越えると、シリンダ2の内周面から解離し、ピストンロッド3と共にシリンダ2内を退動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、
前記シリンダの先端部の内周面に固定され、前記ピストンロッドの突出後、該ピストンロッドを保持して退動を阻止する保持機構を備え、
前記保持機構は、前記フードから前記ピストンロッドへの荷重が所定値以下の場合は前記シリンダの内周面に固定されたまま該ピストンロッドの退動を阻止し、該荷重が該所定値を越えると、該シリンダの内周面から解離し、該ピストンロッドと共に該シリンダ内を退動する、フード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記ピストンロッドの基端側に溝が周設されており、
前記保持機構は、縮径方向に付勢され、前記ピストンロッドの外周面に当接する係止リングを有し、
前記ピストンロッドが突出すると、前記係止リングが前記溝に進入する、請求項1に記載のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項3】
前記保持機構は、下方ほど前記シリンダの内周面との間隔が小さくなるテーパ面と、該テーパ面の上方に位置する溝部とを有し、
前記ピストンロッドの基端側に、拡径方向に付勢された係止リングが配置され、
前記係止リングは、前記ピストンロッドの突出時に、前記テーパ面に沿って縮径しながら上方移動し、該テーパ面を越えると縮径された状態から復元するように拡径し、前記溝部に進入する、請求項1に記載のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項4】
シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、
前記ピストンロッドの基端部の外周面に固定され、該ピストンロッドの突出時に上方移動し、該ピストンロッドを前記シリンダの先端部で保持して退動を阻止する保持機構を備え、
前記フードから前記ピストンロッドへの荷重が所定値以下の場合、前記保持機構は、前記ピストンロッドの外周面に固定されたまま該ピストンロッドの退動を阻止し、
前記荷重が前記所定値を越えると、前記保持機構が前記ピストンロッドの外周面から解離し、該保持機構を前記シリンダの先端部に残した状態で、該ピストンロッドが該シリンダ内を退動する、フード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項5】
前記保持機構は、上方ほどピストンロッド外周面との間隔が小さくなるテーパ面と、該テーパ面の下方に位置する溝部とを有し、
前記シリンダの先端部に、縮径方向に付勢され、前記ピストンロッドの外周面に当接する係止リングが配置され、
前記係止リングは、前記ピストンロッドの突出時に、前記テーパ面に沿って拡径しながら該ピストンロッドに対し相対的に下方移動し、該テーパ面を越えると拡径された状態から復元するように縮径し、前記溝部に進入する、請求項4に記載のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項6】
前記保持機構は、拡径方向に付勢された係止リングを有し、
前記シリンダの先端部の内周面に溝が設けられており、
前記ピストンロッドが突出すると、前記係止リングが前記溝に進入する、請求項4に記載のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者等との衝突が検知又は予知されたときに、自動車のフード(ボンネットフード)を押し上げるためのフード持ち上げ装置用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフード持ち上げ装置に用いられるアクチュエータとして、ガス発生装置と、シリンダと、ピストンロッドとを備えたものがある。このアクチュエータにあっては、ガス発生装置が作動すると、シリンダからピストンロッドが突出することによりフードが持ち上げられる。
【0003】
特許文献1には、フードを持ち上げた後にフードを下降させないように、突出したピストンロッドの後退を阻止するロック機構が内蔵されたアクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ピストンロッドの突出後、フードからの荷重が所定値以下の場合はピストンロッドの退動を規制し、フードからの荷重が所定値を超えるとピストンロッドを退動させることができるフード持ち上げ装置用アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフード持ち上げ装置用アクチュエータは、シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、前記シリンダの先端部の内周面に固定され、前記ピストンロッドの突出後、該ピストンロッドを保持して退動を阻止する保持機構を備え、前記保持機構は、前記フードから前記ピストンロッドへの荷重が所定値以下の場合は前記シリンダの内周面に固定されたまま該ピストンロッドの退動を阻止し、該荷重が該所定値を越えると、該シリンダの内周面から解離し、該ピストンロッドと共に該シリンダ内を退動するものである。
【0007】
本発明の一態様では、前記ピストンロッドの基端側に溝が周設されており、前記保持機構は、縮径方向に付勢され、前記ピストンロッドの外周面に当接する係止リングを有し、前記ピストンロッドが突出すると、前記係止リングが前記溝に進入する。
【0008】
本発明の一態様では、前記保持機構は、下方ほど前記シリンダの内周面との間隔が小さくなるテーパ面と、該テーパ面の上方に位置する溝部とを有し、前記ピストンロッドの基端側に、拡径方向に付勢された係止リングが配置され、前記係止リングは、前記ピストンロッドの突出時に、前記テーパ面に沿って縮径しながら上方移動し、該テーパ面を越えると縮径された状態から復元するように拡径し、前記溝部に進入する。
【0009】
本発明のフード持ち上げ装置用アクチュエータは、シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、前記ピストンロッドの基端部の外周面に固定され、該ピストンロッドの突出時に上方移動し、該ピストンロッドを前記シリンダの先端部で保持して退動を阻止する保持機構を備え、前記フードから前記ピストンロッドへの荷重が所定値以下の場合、前記保持機構は、前記ピストンロッドの外周面に固定されたまま該ピストンロッドの退動を阻止し、前記荷重が前記所定値を越えると、前記保持機構が前記ピストンロッドの外周面から解離し、該保持機構を前記シリンダの先端部に残した状態で、該ピストンロッドが該シリンダ内を退動するものである。
【0010】
本発明の一態様では、前記保持機構は、上方ほどピストンロッド外周面との間隔が小さくなるテーパ面と、該テーパ面の下方に位置する溝部とを有し、前記シリンダの先端部に、縮径方向に付勢され、前記ピストンロッドの外周面に当接する係止リングが配置され、前記係止リングは、前記ピストンロッドの突出時に、前記テーパ面に沿って拡径しながら該ピストンロッドに対し相対的に下方移動し、該テーパ面を越えると拡径された状態から復元するように縮径し、前記溝部に進入する。
【0011】
本発明の一態様では、前記保持機構は、拡径方向に付勢された係止リングを有し、前記シリンダの先端部の内周面に溝が設けられており、前記ピストンロッドが突出すると、前記係止リングが前記溝に進入する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピストンロッドの突出後、フードからの荷重が所定値以下の場合はピストンロッドの退動を規制し、フードからの荷重が所定値を超えるとピストンロッドを退動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るアクチュエータの作動前の状態における長手方向の断面図である。
【
図4】別の実施の形態に係るアクチュエータの断面図である。
【
図6】別の実施の形態に係るアクチュエータの断面図である。
【
図8】別の実施の形態に係るアクチュエータの断面図である。
【
図10】ピストンロッド退動時にフードに反力を与える構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は実施の形態に係るフード持ち上げ装置用アクチュエータ1を示す。このフード持ち上げ装置は、車両が歩行者に衝突した際にフードを持ち上げて歩行者の衝撃を緩和するためのものである。
【0016】
なお、以下の説明では、ピストンロッドの突出方向の端部を上端又は先端、突出方向とは反対方向の端部を下端又は後端と称する。
【0017】
このアクチュエータ1は、シリンダ2、及びピストンロッド3を有する直動型のアクチュエータである。シリンダ2の後端にはガス発生装置4が設けられている。ガス発生装置4は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、ECUの指令に基づいて作動し、高圧ガスを発生させる。この高圧ガスにより、ピストンロッド3を押し上げてシリンダ2から突出させる。
【0018】
シリンダ2の先端側には、中央に孔部を有したフランジ状のエンドメンバ5が固定設置されている。エンドメンバ5の内周縁側は、シリンダ2の内周縁よりも中央側に張り出している。
【0019】
ピストンロッド3の先端側はエンドメンバ5の中央孔部を通って上方へ突出している。エンドメンバ5の内周面に溝が周回して設けられており、これらの溝にストッパリング6が係合している。
【0020】
図示は省略するが、ストッパリング6の外周縁からは放射方向に爪片が突設されている。爪片は、ストッパリング6の周方向に間隔をおいて複数個設けられている。
【0021】
ストッパリング6は、定常時(ガス発生装置非作動時)におけるピストンロッド3の上方への突出を阻止している。ピストンロッド3の先端にはカバーキャップ7が装着されている。
【0022】
ピストンロッド3の後端部はピストン部8となっている。ピストン部8の外周面には溝9が周設されている。Oリング10が溝9内に配置され、シリンダ2の内周面に気密にかつ摺動自在に接している。
【0023】
ピストン部8より上方のピストンロッド3の後端部(基端部)の外周面には溝11が周設されている。溝11は、底面11aと、底面11aの上端からピストンロッド軸方向に直交するように延びる上側面11bと、底面11aの下端からピストンロッド軸方向に直交するように延びる下側面11cとを有する。溝11は、ピストンロッド3の退動を阻止する際に、後述する係止リング13が収納される収納溝である。
【0024】
シリンダ2の先端側は先端壁部2aにより閉鎖されており、先端壁部2aの中央部にはピストンロッド3が挿通された挿通孔が設けられている。
【0025】
シリンダ2の先端部において、シリンダ内周面とピストンロッド3との間に、ピストンロッド3を保持して退動を阻止する保持機構12が設けられている。
図2に示すように、保持機構12は、略円筒状の側壁部12aと、側壁部12aの先端からピストンロッド軸方向に直交するようにピストンロッド軸心側に延びる先端壁部12cと、側壁部12aの後端からピストンロッド軸心側に延びる後端壁部12eと、を有する。先端壁部12cの中央部には、ピストンロッド3が挿通された挿通孔が設けられている。
【0026】
後端壁部12eの中央部には、ピストンロッド3が挿通された挿通孔12gが設けられており、この挿通孔12gの径は、ピストン部8より小さく、ピストン部8は通過できないようになっている。また、挿通孔12gの径は、溝11内に収納された係止リング13が挿通孔12gを通過できない大きさである。言い換えれば、挿通孔12gの径は、溝11部分におけるピストンロッド3の径(太さ)と、係止リング13の太さの2倍との和よりも小さくなっている。
【0027】
後端壁部12eの上面側、すなわち側壁部12aの内周面12bと後端壁部12eとの境界部の段差面は、下方ほどピストンロッド外周面との間隔が小さくなるテーパ面12fとなっている。側壁部12aの内周面12bと、先端壁部12cの下側の平坦面12dと、テーパ面12fとピストンロッド外周面とで囲まれた領域に、係止リング13が配置されている。係止リング13は縮径方向に付勢されており、通常時は、ピストンロッド外周面に当接している。
【0028】
シリンダ3の先端部の内周面には、雌ねじが形成されている。保持機構12の側壁部12aの外周面には雄ねじが形成されている。シリンダ内周面の雌ねじを、保持機構12の外周面の雄ねじに螺合させることにより、保持機構12をシリンダ3に取り付けることができる。
【0029】
次に、このアクチュエータ1の動作を、
図3A~
図3Eを参照して説明する。なお、
図3A~
図3Eは、突出したピストンロッド3の退動を阻止する機能について説明するものであり、ガス発生装置4やカバーキャップ7等の図示は省略している。
【0030】
検知システムにより、車両と歩行者との衝突が検知又は予知されると、ガス発生装置4がECUの指令に基づいて作動し、高圧ガスを発生させる。
図3A、
図3Bに示すように、高圧ガスがシリンダ2内に供給され、ピストンロッド3を上方に移動させる。
【0031】
ピストンロッド3は、ストッパリング6の爪片を変形させて上方に突出し、ボンネットフードを押し上げる。ピストンロッド3は、ピストン部8が保持機構12に当たるまで上方移動する。
【0032】
ピストン部8が保持機構12に当たるまでピストンロッド3が上方移動すると、係止リング13が溝11に進入する。縮径方向に付勢されている係止リング13は、溝11の底面11aに当接する。
【0033】
押し上げられたボンネットフードから荷重が加えられ、ピストンロッド3が退動(下降)しようとすると、
図3Cに示すように、係止リング13が、溝11の上側面11bと、保持機構12のテーパ面12fとの間に噛み込まれた状態となり、ピストンロッド3の退動を規制する。
【0034】
ボンネットフードからの荷重が所定値を超えると、シリンダ内周面の雌ねじと、保持機構12の外周面の雄ねじとの噛み合いが外れ、
図3D、
図3Eに示すように、ピストンロッド3が保持機構12と共にシリンダ2内を退動する。これにより、衝撃が吸収される。
【0035】
図4に別の実施形態に係るアクチュエータ1Aを示す。このアクチュエータ1Aでは、ピストンロッド3の下部(ピストン部8の上方)に第1大径部21及び第2大径部23が設けられており、第1大径部21と第2大径部22との間が溝部22になっている。
【0036】
第1大径部21の上面は、下方ほどシリンダ内周面との間隔が小さくなるテーパ面21aとなっている。第2大径部23の下面は、上方ほどシリンダ内周面との間隔が小さくなるテーパ面23aとなっている。
【0037】
第1大径部21のテーパ面21aの下端部及びシリンダ内周面に当接して、拡径方向に付勢された係止リング24が配置されている。
【0038】
第2大径部23の径は、シリンダ2の先端壁部2aの中央部に設けられたピストンロッド挿通孔を通過できない大きさである。
【0039】
シリンダ2の先端部において、シリンダ内周面とピストンロッド3との間に、ピストンロッド3を保持して退動を阻止する保持機構25が設けられている。保持機構25は、略円筒状の側壁部25aと、側壁部25aの先端からピストンロッド軸方向に直交するように中心側に延びる先端壁部25cと、側壁部25aの後端からピストンロッド軸心側に張り出す後端壁部25eと、を有する。
【0040】
先端壁部25cの中央部には、第2大径部23の径より僅かに大きい開口部が設けられている。先端壁部25cの下側の面は、ピストンロッド軸方向に直交する平坦面25dになっている。
【0041】
後端壁部25eの上面側、すなわち側壁部25aの内周面25bと後端壁部25eとの境界部の段差面は、ピストンロッド軸方向に直交する平坦面25fとなっている。平坦面25fの幅は、係止リング24の太さより小さい。後端壁部25eの下面側は、下方ほどシリンダ内周面との間隔が小さくなるテーパ面25gとなっている。平坦面25fとテーパ面25gとは端部同士が接続している。
【0042】
シリンダ3の先端部の内周面には、雌ねじが形成されている。保持機構25の側壁部25aの外周面には雄ねじが形成されている。シリンダ内周面の雌ねじを、保持機構25の外周面の雄ねじに螺合させることにより、保持機構25をシリンダ3に取り付けることができる。
【0043】
このアクチュエータ1Aが作動し、ピストンロッド3が上方移動すると、
図5Aに示すように、係止リング24が、テーパ面21a及びテーパ面25gに沿って縮径しながら上方移動する。
【0044】
図5Bに示すように、第2大径部23がシリンダ2の先端壁部2aに当たるまでピストンロッド3が上方移動すると、係止リング24は、テーパ面25gの上端を越え、縮径された状態から復元するように拡径し、先端壁部25cの下面側の平坦面25dと、側壁部25aの内周面25bと、後端壁部25eの上面側の平坦面25fとに囲まれる領域(溝部)に進入し、内周面25bに当接する。
【0045】
押し上げられたボンネットフードに歩行者等から荷重が加えられ、ボンネットフード及びピストンロッド3が退動(下降)しようとすると、
図5Cに示すように、係止リング24が、第2大径部23のテーパ面23aと、保持機構25の平坦面25fとの間に噛み込まれた状態となり、ピストンロッド3の退動を規制する。
【0046】
ボンネットフードからの荷重が所定値を超えると、シリンダ内周面の雌ねじと、保持機構25の外周面の雄ねじとの噛み合いが外れ、
図5D、
図5Eに示すように、ピストンロッド3が保持機構25と共にシリンダ2内を退動する。これにより、衝撃が吸収される。
【0047】
図6に別の実施形態に係るアクチュエータ1Bを示す。このアクチュエータ1Bでは、ピストンロッド3の下部(ピストン部8の上方)に保持機構30が取り付けられている。
【0048】
保持機構30は、筒状であり、中心部がピストンロッド3の挿通孔となっている。保持機構30の基端側(後端側)の鍔部34の下面は、ピストン部8の上面(又は後述する
図10の大径部82の上面)に当接している。鍔部34の外径は、シリンダ2の内径よりもごく僅かに小さいものとなっている。鍔部34の上方には中間筒部33が設けられており、鍔部34は中間筒部33の下端から放射方向に張り出している。鍔部34の上面、すなわち中間筒部33の外周面33aと鍔部34との境界部の段差面は、放射方向に延在する平坦面34aとなっている。
【0049】
保持機構30の先端部31の側面は、上方ほどピストンロッド外周面との間隔が小さくなるテーパ面31aとなっている。テーパ面31aと先端部31の内周面とは、上端同士が接続されている。
【0050】
先端部31と中間筒部33との間は溝部32になっている。先端部31の下面、すなわち溝部32の底面と先端部31との境界部の段差面は、放射方向に延在する平坦面31bとなっている。また、中間筒部33の上面、すなわち溝部32の底面と中間筒部33との境界部の段差面は、放射方向に延在する平坦面33bとなっている。
【0051】
保持機構30の内周面には、雌ねじが形成されている。ピストンロッド3の下部の外周面には雄ねじが形成されている。保持機構30の内周面の雌ねじを、ピストンロッド3の外周面の雄ねじに螺合させることにより、保持機構30をピストンロッド3に取り付けることができる。
【0052】
シリンダ2の先端側は厚肉部になっており、内周側に張り出す第1張出部35及び第2張出部36が設けられている。第1張出部35は、先端壁部2aに接続されている。第1張出部35の下面は、ピストンロッド軸方向に直交する方向に延在する平坦面35aである。第1張出部35の内径は、保持機構30の先端部31の最大外径と同程度である。
【0053】
第1張出部35の下方に第2張出部36が設けられている。第2張出部36の上面は、下方ほどピストンロッド外周面との間隔が小さくなるテーパ面36aとなっている。第2張出部36の下面は、ピストンロッド軸方向に直交する方向に延在する平坦面36bである。
【0054】
第1張出部35と第2張出部36との間に係止リング37が配置されている。係止リング37の太さは、第1張出部35の内周面とピストンロッド外周面との間隔より大きく、係止リング37が第1張出部35の内周面とピストンロッド外周面と間に進入できないようになっている。
【0055】
また、係止リング37の太さは、第2張出部36のテーパ面36aの下端部とピストンロッド外周面との間隔より大きく、係止リング37がシリンダ2内を第2張出部35より下方へ移動できないようになっている。
【0056】
係止リング37は、縮径方向に付勢されており、アクチュエータ1Bの作動前は、ピストンロッド外周面に当接している。
【0057】
このアクチュエータ1Bが作動すると、
図7Aに示すように、ピストンロッド3が鍔部34の上面側の平坦面34aが、第2張出部36の下面側の平坦面36bに当接するまで上方移動する。ピストンロッド3が上昇すると、保持機構30の先端部31が係止リング37とピストンロッド外周面との間に入り込む。
【0058】
係止リング37は、テーパ面31aに沿って拡径しながらピストンロッド3に対し相対的に下方移動し、テーパ面31aを越えると、溝部32に進入する。係止リング37は、拡径された状態から復元するように縮係し、溝部32の底面に当接する。
【0059】
押し上げられたボンネットフードに歩行者等から荷重が加えられ、ボンネットフード及びピストンロッド3が退動(下降)しようとすると、
図7Bに示すように、係止リング37が、先端部31の下面側の平坦面31bと、第2張出部36の上面側のテーパ面36aとの間に噛み込まれた状態となり、ピストンロッド3の退動を規制する。
【0060】
ボンネットフードからの荷重が所定値を超えると、保持機構30の内周面の雌ねじと、ピストンロッド外周面の雄ねじとの噛み合いが外れ、
図7C、
図7Dに示すように、ピストンロッド3が保持機構30から解離し、シリンダ2内を退動する。保持機構30は、シリンダ2の先端側に残ったままである。
【0061】
図8に別の実施形態に係るアクチュエータ1Cを示す。このアクチュエータ1Cでは、ピストンロッド3の下部(ピストン部8の上方)に保持機構40が取り付けられている。
【0062】
保持機構40は、筒状であり、中心部がピストンロッド3の挿通孔となっている。保持機構40の基端側の鍔部43の下面は、ピストン部8の上面(又は後述する
図10の大径部82の上面)に当接している。鍔部43の外径は、シリンダ2の内径よりもごく僅かに小さいものとなっている。鍔部43の上面は、ピストンロッド軸方向に直交する方向に延在する平坦面43aである。
【0063】
保持機構40の先端部41の上面は、ピストンロッド軸方向に直交する方向に延在する平坦面41aである。先端部41の下面は、上方ほどシリンダ内周面との間隔が小さくなるテーパ面41bとなっている。
【0064】
先端部41と鍔部43との間の溝部42に、拡径方向に付勢された係止リング44が配置されている。係止リング44は、シリンダ2内を摺動可能に、シリンダ内周面に当接している。
【0065】
保持機構40の内周面には、雌ねじが形成されている。ピストンロッド3の下部の外周面には雄ねじが形成されている。保持機構40の内周面の雌ねじを、ピストンロッド3の外周面の雄ねじに螺合させることにより、保持機構40をピストンロッド3に取り付けることができる。
【0066】
シリンダ2の先端側は放射方向(外周側)に張り出しており、内径及び外径が、先端部以外よりも大きくなっている。シリンダ先端側の内周面には、溝部45(凹部)が形成されている。溝部45は、底面45aと、底面45aの上端からシリンダ中心側に延びる上側面45bと、底面45aの下端からシリンダ中心側に延びる下側面45cとを有する。溝部45の深さは、係止リング44の太さよりも小さい。溝部45の幅は、係止リング44の太さよりも大きい。
【0067】
このアクチュエータ1Cが作動し、ピストンロッド3が上方移動すると、
図9Aに示すように、拡径した係止リング44が溝部45に進入する。係止リング44は、溝部45の底面に当接する。ピストンロッド3は、先端部41の上面側の平坦面41aが、シリンダ2の先端壁部2aに当たるまで上方移動する。
【0068】
押し上げられたボンネットフードに歩行者等から荷重が加えられ、ボンネットフード及びピストンロッド3が退動(下降)しようとすると、
図9Bに示すように、係止リング44が、先端部41の下面側のテーパ面41bと、溝部45の下側面45cとの間に噛み込まれた状態となり、ピストンロッド3の退動を規制する。
【0069】
ボンネットフードからの荷重が所定値を超えると、保持機構40の内周面の雌ねじと、ピストンロッド外周面の雄ねじとの噛み合いが外れ、
図9C、
図9Dに示すように、ピストンロッド3が保持機構40から解離し、シリンダ2内を退動する。保持機構40は、シリンダ2の先端側に残ったままである。
【0070】
上記実施形態では、保持機構12,25,30,40と、シリンダ2やピストンロッド3との固定をねじ締結で行う例について説明したが、ピンの差し込み、ダボ取り付け、かしめ、圧入など、異なる手法で両者を固定してもよい。
【0071】
アクチュエータ1、1A、1B、1Cに、ピストンロッド3の退動時にボンネットフードに反力を与える機構が設けられていてもよい。例えば、アクチュエータ1のピストンロッド3の溝11とピストン部8との間の領域に、
図10に示すような小径部81及び大径部82を設けてもよい。大径部82の直径は、シリンダ2の内径よりもごく僅かに小さいものとなっている。
【0072】
小径部81は、略逆円錐台形状となっている。小径部81の側周面は、上方ほどシリンダ内周面との間隔が小さくなるテーパ面83となっている。テーパ面83とシリンダ内周面との間に、複数個のボール又はリング等の介在体85が配置されている。小径部81の上端部とシリンダ内周面との間隔は、ボールの直径又はリングの太さよりも小さい。
【0073】
介在体85の下側には保持リング86が小径部81を取り巻くように配置されている。保持リング86は、ピストン部8の小径部81側の段差面上に当接配置されている。
【0074】
大径部82の下面側、すなわちテーパ面83と大径部82との境界部の段差面は、放射方向に延在する平面よりなる規制面84となっている。
【0075】
アクチュエータ1が作動する前の通常時、介在体85は、保持リング86の上面に当接している。また、この状態では、介在体85は、シリンダ内周面に摺動可能に接しているか、又は両者間に僅かな間隙が存在している。
【0076】
アクチュエータ1が作動し、ピストンロッド3が上方移動する間は、介在体85は、保持リング86の上面に当接しており、ピストンロッド3の移動を拘束しない。
【0077】
ピストンロッド3が保持機構12に保持された後、ボンネットフードからの荷重が所定値を超え、ピストンロッド3が退動しようとすると、介在体85がシリンダ2の内周面とテーパ面83との間に噛み込まれた状態となる。ピストンロッド3に加えられる下向き荷重により、介在体85はテーパ面83から放射方向に分力を受け、シリンダ内周面に押し付けられ、シリンダ内周面に食い込む。シリンダ内周面に食い込んだ介在体85は、ピストンロッド3に対し相対的に上方移動し、規制面84に当接し、その後は、ピストンロッド3と一体となって下方移動する。
【0078】
小径部81、大径部82、介在体85等を設けることで、ボンネットフードに反力を与えることができる。
【0079】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1、1A、1B、1C アクチュエータ
2 シリンダ
3 ピストンロッド
4 ガス発生装置
8 ピストン部
12、25、30、40 保持機構