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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047776
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】木造軸組架構
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
E04B2/56 622B
E04B2/56 622H
E04B2/56 642
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156883
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
(72)【発明者】
【氏名】辻 千佳
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002HA02
2E002HB01
2E002MA01
(57)【要約】
【課題】架構に木質パネルが真壁形式で接続される木造軸組架構において、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減できる木造軸組架構を提供すること。
【解決手段】木造の柱10と、木造の梁20もしくは土台30とを含む架構90により形成される、木造軸組架構100であり、架構90には、木質パネル40が真壁形式に配設され、木質パネル40は、柱10における架構90の面内方向外側の側面12から柱10を貫通して木質パネル40の内部に通じる軸状固定部材50により、柱10に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造の柱と、木造の梁もしくは土台とを含む架構により形成される、木造軸組架構であって、
前記架構には、木質パネルが真壁形式に配設され、該木質パネルは、前記柱における該架構の面内方向外側の側面から該柱を貫通して該木質パネルの内部に通じる軸状固定部材により、該柱に固定されていることを特徴とする、木造軸組架構。
【請求項2】
前記柱に貫通孔が設けられ、
前記木質パネルの端部から内部にかけて軸状溝が設けられており、
前記貫通孔と前記軸状溝が位置決めされて連通孔が形成され、該連通孔に前記軸状固定部材が挿通され、打ち込み固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の木造軸組架構。
【請求項3】
前記木質パネルが、該木質パネルの左右にある前記柱に対してそれぞれ前記軸状固定部材により固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の木造軸組架構。
【請求項4】
前記木質パネルに第1シアプレートが埋設され、該木質パネルと前記柱の界面に該第1シアプレートの一部が臨んでおり、
前記第1シアプレートを前記軸状固定部材が貫通していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の木造軸組架構。
【請求項5】
前記柱に第2シアプレートが埋設され、該柱と前記木質パネルの界面に該第2シアプレートの一部が臨んでおり、
前記第2シアプレートと前記第1シアプレートの双方に前記軸状固定部材が貫通していることを特徴とする、請求項4に記載の木造軸組架構。
【請求項6】
前記軸状固定部材がドリフトピンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の木造軸組架構。
【請求項7】
前記木質パネルと前記梁もしくは前記土台が、ほぞパイプにより固定されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の木造軸組架構。
【請求項8】
前記木質パネルが、CLTパネルであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の木造軸組架構。
【請求項9】
前記木質パネルの正面視形状は矩形であり、
前記矩形の四つの隅角部が切り欠かれていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の木造軸組架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造軸組架構に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法による木造軸組架構においては、木造の柱と、木造の梁もしくは土台といった木質軸部材により構成される架構の内部に、構造用合板などの木質パネルを耐力壁として釘等により接合する形式や、筋交いを配設する形式などが一般に適用されている。この耐力壁にCLT(Cross Laminated Timber)などの厚板の木質パネルを適用する場合、大壁形式にすると架構における壁厚が必要以上に大きくなって不経済である。そこで、架構の柱幅や梁幅に収まるように、真壁形式で木質パネルが架構内に配設されることになる。
【0003】
この真壁形式において架構と木質パネルを接合する場合、例えば梁や柱といった木質軸部材にピン孔を備えた鋼板を取り付けておき、木質パネルの端部に鋼板が収容される収容溝を設けておき、収容溝に鋼板を収容させながら木質軸部材と木質パネルを当接させた後、木質軸部材の外側からボルトやビス等の接続金具を差し込み、ピン孔に接続金具を挿通させて接合する方法が一般に用いられている。
【0004】
より詳細には、鋼板には、木質軸部材の側面に固定される鋼板(例えば第1鋼板)と木質パネルの収容溝に収容される鋼板(例えば第2鋼板)が相互に溶接等により一体とされた鋼板ユニットが適用され、第1鋼板と木質軸部材との接続と、第2鋼板と木質パネルとの接続は、それぞれに固有の接続金具にて接続される。すなわち、真壁形式にて架構に木質パネルを接続する場合、一枚ものの鋼板ではなくて鋼板ユニットを必要とし、さらに二種類の接続金具を必要とすることから、これらの接続具に要する材料コストと接続手間が課題となる。
【0005】
以上より、架構に木質パネルが真壁形式で接続される木造軸組架構において、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減できる技術が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、CLT構造物が提案されている。このCLT構造物は、水平方向に延びる筋部材を有するコンクリート製の基礎と、挽き板が積層されて接着されたパネル材であって、下端面に長手方向に沿って延びるスリットが形成された壁パネルと、一部が基礎に埋め込まれて、平板形状の接合板部の少なくとも一部が基礎の上面から上方へ突出する接合プレートと、基礎の上面から突出した接合板部が壁パネルのスリットに挿入された挿入状態で、接合板部と壁パネルとを連結するドリフトピンからなる連結部材とを備えている。接合板部は、その長手方向が筋部材の延びる方向に沿った姿勢で、筋部材の上方に位置しており、接合プレートは、接合板部と、基礎に埋め込まれて接合板部から鉛直方向と交差する方向へ延びる鍔部と、基礎に埋め込まれて鍔部から下方へ延びるアンカー部材とを有し、アンカー部材は下端が筋部材より下方に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-172743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のCLT構造物においても、壁パネルと基礎の接続に際して、接合板部と鍔部からなる接続金具を要し、ドリフトピンとアンカー部材といった二種類の接続金具を要することに変わりはない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、架構に木質パネルが真壁形式で接続される木造軸組架構において、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減できる木造軸組架構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による木造軸組架構の一態様は、
木造の柱と、木造の梁もしくは土台とを含む架構により形成される、木造軸組架構であって、
前記架構には、木質パネルが真壁形式に配設され、該木質パネルは、前記柱における該架構の面内方向外側の側面から該柱を貫通して該木質パネルの内部に通じる軸状固定部材により、該柱に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、木質パネルが架構に真壁形式に配設されている木造軸組架構において、木質パネルが、柱における架構の面内方向外側の側面から柱を貫通して木質パネルの内部に通じる軸状固定部材によって柱に固定されていることにより、複数の鋼板が相互に溶接等された鋼板ユニットを不要にでき、架構を構成する柱と木質パネルが一種類の軸状固定部材にて固定されることから、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減することができる。ここで、軸状固定部材には、ボルトやビス、釘、ドリフトピン等が適用できる。また、木質パネルには、構造用合板や集成材(複数の製材を接着剤やビス等により固定した材)、CLTパネル等が適用できる。
【0012】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記柱に貫通孔が設けられ、
前記木質パネルの端部から内部にかけて軸状溝が設けられており、
前記貫通孔と前記軸状溝が位置決めされて連通孔が形成され、該連通孔に前記軸状固定部材が挿通され、打ち込み固定されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、柱に予め設けられている貫通孔と、木質パネルに予め設けられている軸状溝が相互に位置決めされて連通孔が形成され、連通孔に軸状固定部材が挿通され、打ち込み固定されていることにより、所望の打ち込み位置に対して高精度かつ効率的に軸状固定部材を打ち込むことができる。
【0014】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記木質パネルが、該木質パネルの左右にある前記柱に対してそれぞれ前記軸状固定部材により固定されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、木質パネルの左右にある柱に対して木質パネルが固定されることから、架構を構成する柱にのみ固定される木質パネルの固定強度を高めることができる。
【0016】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記木質パネルに第1シアプレートが埋設され、該木質パネルと前記柱の界面に該第1シアプレートの一部が臨んでおり、
前記第1シアプレートを前記軸状固定部材が貫通していることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第1シアプレートが木質パネルと柱の界面に臨んだ状態で木質パネルに埋設され、軸状固定部材が第1シアプレートを貫通しながら柱と木質パネルを繋いでいることにより、軸状固定部材のせん断耐力を向上させることができ、軸状固定部材の必要本数を低減することが可能になる。この第1シアプレートは、木質パネルと柱のいずれか一方に埋設することが考えられるが、柱に比べて一般に木質パネルが軟質であることから、木質パネルに埋設するのが好ましい。
【0018】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記柱に第2シアプレートが埋設され、該柱と前記木質パネルの界面に該第2シアプレートの一部が臨んでおり、
前記第2シアプレートと前記第1シアプレートの双方に前記軸状固定部材が貫通していることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、木質パネルに第1シアプレートが埋設されることに加えて、柱に第2シアプレートが埋設され、第1シアプレートと第2シアプレートが柱と木質パネルの界面にて当接した状態で、軸状固定部材が第1シアプレートと第2シアプレートを貫通しながら柱と木質パネルを繋いでいることにより、軸状固定部材のせん断耐力をより一層向上させることができ、軸状固定部材の必要本数をより一層低減することが可能になる。
【0020】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記軸状固定部材がドリフトピンであることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、軸状固定部材がドリフトピンであることにより、柱と木質パネルの接続強度を高めることができる。また、柱に予め設けられている貫通孔と、木質パネルに予め設けられている軸状溝が相互に位置決めされることにより形成される連通孔に対して挿通され、打ち込み固定される軸状固定部材として、ドリフトピンは好適となる。
【0022】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様において、
前記木質パネルと前記梁もしくは前記土台が、ほぞパイプにより固定されていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、木質パネルと梁もしくは土台がほぞパイプにより固定されていることにより、木質パネルに生じるせん断力をほぞパイプにて負担することができる。
【0024】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様は、
前記木質パネルが、CLTパネルであることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、木質パネルがCLTパネルであることにより、例えば、縦横の寸法が12m×2.6mまでの広範なパネルを適用できることから、現場におけるパネル同士の接続箇所を可及的に低減することができる。このことにより、木造軸組架構の耐力の向上と施工効率の向上を図ることができる。また、CLTパネルは、複数の板材が繊維方向を交差(直交)させた態様で積層されていることから、変形に強く、耐力壁として好適である。
【0026】
また、本発明による木造軸組架構の他の態様において、
前記木質パネルの正面視形状は矩形であり、
前記矩形の四つの隅角部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、正面視矩形の木質パネルの四つの隅角部が切り欠かれていることにより、地震時に木造軸組架構が変形した際に、木質パネルの隅角部が梁や土台等に当接し、相互に押圧することによる圧縮力にて荷重上昇することを解消できる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から理解できるように、本発明の木造軸組架構によれば、架構に木質パネルが真壁形式で接続される木造軸組架構において、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る木造軸組架構の一例を示す正面図である。
図2図1のII-II矢視図であって、柱と木質パネルを軸状固定部材が固定している状態を説明する図である。
図3】(a),(b)はいずれも、柱と木質パネルの界面にシアプレートを備えて軸状固定部材が双方を固定している状態を説明する図である。
図4】シアプレートの一例の斜視図である。
図5】第1実施形態に係る木造軸組架構の一例の構造モデル図である。
図6】第2実施形態に係る木造軸組架構の一例を示す正面図である。
図7】第2実施形態に係る木造軸組架構の一例の構造モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、各実施形態に係る木造軸組架構の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0031】
[第1実施形態に係る木造軸組架構]
はじめに、図1乃至図5を参照して、第1実施形態に係る木造軸組架構の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る木造軸組架構の一例を示す正面図であり、図2は、図1のII-II矢視図であって、柱と木質パネルを軸状固定部材が固定している状態を説明する図である。
【0032】
木造軸組架構100は、木造の柱10と、木造の梁20及び土台30とを含む架構90により形成され、架構90には木質パネル40が真壁形式に配設される。ここで、図示例は、建物の1階の架構90を示しているが、2階以上の建物の上階の架構が対象の場合は、左右の柱と上下の梁により架構が形成される。
【0033】
木質パネル40は、その左右の側面41が左右にある柱10に対してそれぞれ当接され、上面42が梁20に当接され、下面43が土台30に当接された状態で、左右の側面41と当接する左右の柱10に対して固定される。より具体的には、柱10における架構90の面内方向外側の側面12から、柱10を貫通して木質パネル40の内部に通じるドリフトピン50(軸状固定部材の一例)により、木質パネル40が柱10に固定される。
【0034】
木質パネル40は、正面視形状が矩形であり、高さがh、幅がdである。木質パネル40には、構造用合板や集成材、CLTパネルなどが適用できるが、縦横の寸法が12m×2.6mまでの広範なパネルを利用でき、現場におけるパネル同士の接続箇所を可及的に低減できること、このことによって木造軸組架構100の耐力の向上と施工効率の向上に繋がることから、CLTパネルが好適である。
【0035】
左右の柱10の芯間距離Dは、0.5m乃至2.0mの範囲の複数の形態があり、例えば、0.5m、0.75m、1.0m、1.5m、及び2.0mの形態が挙げられる。
【0036】
木質パネル40の四つの隅角部には、切り欠き44が設けられている。この隅角部における切り欠き44により、地震時に木造軸組架構100に水平力Fが作用して変形した際に、木質パネル40の隅角部が左右の柱10や梁20、土台30に当接して、相互に押圧することによる圧縮力にて荷重上昇することを防止できる。
【0037】
図1に示すように、木質パネル40の幅dに対して、切り欠き44の高さh1は、d/30(1/30ラジアン)に設定される。本発明者等の経験則によれば、切り欠き44が1/30ラジアンに設定されることにより、地震時に架構90が変形した際に、木質パネル40の隅角部が梁20や土台30に当接しないことが分かっており、この経験則に依拠している。
【0038】
また、木質パネル40の上面42と下面43のうち、左右の切り欠き44を除いた中央領域の長さはd/2に設定されている(中央領域の長さがd/2となるように、切り欠き44の長さが設定される)。
【0039】
図2に示すように、柱10には貫通孔15が設けられ、木質パネル40の端部から内部にかけて軸状溝45が設けられており、貫通孔15と軸状溝45が位置決めされて連通孔18が形成されている。ここで、貫通孔15と軸状溝45の長さは同一もしくは略同一に設定されている。
【0040】
そして、連通孔18に対してドリフトピン50が挿通され、打ち込み固定されている。
【0041】
図1に示すように、左右の柱10と木質パネル40は、複数のドリフトピン50により固定される。ここで、木質パネル40の左右それぞれのドリフトピン50の本数は、以下の二つの算定式により設定できる。
【0042】
具体的には、地震時に水平力Fが作用した際の、木造軸組架構100における、CLTパネルと柱の接合部の降伏耐力Pyは、以下の式(1)により表すことができる。
【0043】
【数1】
【0044】
式(1)において、ny×pyは、図1における全てのドリフトピンのせん断降伏耐力Qyに相当する。
【0045】
一方、木造建物の耐震性能においては、地震時の層間変形角:1/150が一般的な指標であることから、CLTパネルと柱の接合部の剛性P150は、以下の式(2)により表すことができる。
【0046】
【数2】
【0047】
ドリフトピン50の必要本数は、上式(1)、(2)の小さい方を設計耐力とすることにより、設定される。
【0048】
図3(a)、(b)には、柱10と木質パネル40の間の界面におけるせん断耐力を向上させる接合形態が図示されている。ここで、図3(a)、(b)はいずれも、柱と木質パネルの界面にシアプレートを備えて軸状固定部材が双方を固定している状態を説明する図である。
【0049】
図3(a)に示す形態は、木質パネル40に第1シアプレート55A(シアプレート55)が埋設され、木質パネル40の側面41(柱10との界面)に第1シアプレート55Aが臨んでいる。
【0050】
図4に示すように、シアプレート55は、ピン孔55cを備えた円盤55aと、円盤55aの輪郭に沿って立設する筒壁55bとを有している。筒壁55bが木質パネル40の内部に埋設され、円盤55aの背面が柱10との界面に臨んでおり、ドリフトピン50がピン孔55cを貫通して木質パネル40の内部に埋設されている。
【0051】
一方、図3(b)に示す形態は、木質パネル40に第1シアプレート55Aが埋設されていることに加えて、柱10に別途の第2シアプレート55B(シアプレート55)が埋設され、第2シアプレート55Bもその円盤55aが木質パネル40との界面に臨んでいて、第1シアプレート55Aと第2シアプレート55Bの双方の円盤55aの背面同士が界面において当接している。そして、双方の円盤55aのピン孔55cをドリフトピン50が貫通して、木質パネル40の内部に埋設されている。
【0052】
図3(a),(b)のいずれの形態においても、一つもしくは二つのシアプレート55にて柱10と木質パネル40の界面のせん断耐力が向上することにより、設計上算定されるドリフトピン50の必要本数を低減することが可能になる。
【0053】
ここで、本発明者等は、図3(a)に示す一つのシアプレート55にて補強された形態と、図3(b)に示す二つのシアプレート55にて補強された形態における、ドリフトピン1本当たりの耐荷重を求める検証実験を行っている。
【0054】
その結果、図3(a)の形態では、ドリフトピンが5mm程度変位した際に最大耐荷重12kN程度となり、その後は塑性変形する結果となっている。
【0055】
一方、図3(b)の形態では、ドリフトピンが10mm程度変位した際に最大耐荷重15kN程度となり、その後は塑性変形する結果となっている。
【0056】
すなわち、シアプレート55の枚数を2倍にしても耐荷重は1.3倍程度の増加に過ぎないことから、費用対効果の観点では1枚のシアプレート55にて補強する形態が望ましい。
【0057】
また、柱10に比べて一般に木質パネル40が軟質であることから、図3(a)に示すように、一つのシアプレート55を界面に設ける場合は、木質パネル40にシアプレート55を埋設するのが好ましい。
【0058】
図5は、図1に示す木造軸組架構100の構造モデルの一例を示す図である。構造モデルM1において、梁B1や土台B2に対する柱Cの接合(仕口)は、ホゾや鎌継(カマ)、蟻継(アリ)などによる接合形態や、ほぞパイプ等の接合金具を介した接合形態などがあるが、いずれも、構造モデル上はピンP1となる。
【0059】
一方、左右の柱Cと木質パネルWとの複数のドリフトピンによる接合は、バネSpによりモデル化できる。
【0060】
図1に示す木造軸組架構100によれば、木質パネル40が、柱10における架構90の面内方向外側の側面から柱10を貫通して木質パネル40の内部に通じるドリフトピン50によって柱10に固定されていることにより、鋼板ユニット等をの接続治具を不要にでき、柱10と木質パネル40を一種類の軸状固定部材にて固定できることから、接続具に要する材料コストと接続手間の双方を低減することができる。
【0061】
[第2実施形態に係る木造軸組架構]
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係る木造軸組架構の一例について説明する。ここで、図6は、第2実施形態に係る木造軸組架構の一例を示す正面図である。
【0062】
木造軸組架構100Aは、木質パネル40と梁20及び土台30が、ほぞパイプ60を介して固定されている点において木造軸組架構100と相違する。
【0063】
ほぞパイプ60には不図示のピン孔が開設されており、ピン孔にドリフトピン等のピン65が挿通されることにより、ほぞパイプ60が梁20や土台30に固定されながら、梁20及び土台30と、木質パネル40の上面42及び下面43を固定する。
【0064】
図示例では、木質パネル40の上面42と下面43にそれぞれ二つのほぞパイプ60が設けられているが、ほぞパイプ60の数は図示例に限定されない。また、ほぞパイプ60の径をφとした際に、二つのほぞパイプ60間の距離d2は5φ以上に設定され、ほぞパイプ60と切り欠き44の間の距離d1は2.5φ以上に設定される。
【0065】
図6に示すように、木質パネル40の上下面と梁20及び土台30をほぞパイプ60にて固定することにより、地震時に架構90が変形した際に木質パネル40と梁20等の界面に作用するせん断力Sを、ほぞパイプ60にて負担することができる。
【0066】
図7は、木造軸組架構100Aの構造モデルの一例を示す図である。構造モデルM2は、図5に示す構造モデルM1に対して、ほぞパイプをモデル化したピンP2を付加することにより形成できる。
【0067】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0068】
10:柱
11:側面
12:側面(面内方向外側の側面)
15:貫通孔
18:連通孔
20:梁
30:土台
40:木質パネル(CLTパネル)
41:側面
42:上面
43:下面
44:切り欠き
45:軸状溝
50:軸状固定部材(ドリフトピン)
55:シアプレート
55A:第1シアプレート
55B:第2シアプレート
55a:円盤
55b:筒壁
55c:ピン孔
60:ほぞパイプ
65:ピン
90:架構
100,100A:木造軸組架構
F:水平力
Py:降伏耐力
Qy:せん断降伏耐力
S:せん断力
M1,M2:構造モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7