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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047818
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】光路変更装置及び投写型画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20230330BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20230330BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H04N5/74 A
G02B26/08 D
G03B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156948
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】行天 敬明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信幸
【テーマコード(参考)】
2H141
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H141MB39
2H141MC04
2H141MC05
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD23
2H141MD24
2H141MD38
2H141ME01
2H141ME18
2H141ME23
2H141ME25
2H141MF30
2H141MG09
2H141MZ06
2H141MZ12
2H141MZ13
2K203FA04
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA54
2K203GC07
2K203GC20
2K203HA79
2K203HB10
2K203KA63
2K203MA24
5C058BA25
5C058EA02
5C058EA11
5C058EA27
(57)【要約】
【課題】低騒音で駆動することができる光路変更装置及びそれを使用した投写型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光路変更装置は、光を透過する光透過部と、一軸方向に移動制御される可動部を有する、少なくとも2つのアクチュエータと、一端がアクチュエータの可動部に接続され、他端が光透過部と接続され、弾性を有するアームと、アクチュエータを特定の周期で往復駆動制御する制御部と、を備える。制御部は、アクチュエータを往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータが停止するタイミングで光透過部が静止するように、アクチュエータを駆動制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する光透過部と、
一軸方向に移動制御される可動部を有する、少なくとも2つのアクチュエータと、
一端が前記アクチュエータの可動部に接続され、他端が前記光透過部と接続され、弾性を有するアームと、
前記アクチュエータを特定の周期で往復駆動制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記アクチュエータを前記往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、前記アクチュエータが停止するタイミングで前記光透過部が静止するように、前記アクチュエータを駆動制御する、
光路変更装置。
【請求項2】
それぞれの前記アクチュエータの駆動波形を生成する駆動波形生成回路と、
前記アクチュエータの位置を検出する位置検出素子と、を備え、
前記制御部は、前記駆動波形生成回路により生成された駆動波形と、前記位置検出素子の検出値とを比較して、前記駆動波形と前記検出値とが等しくなるように前記アクチュエータを駆動制御し、
前記駆動波形生成回路は、前記アクチュエータを前記往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、前記アクチュエータが停止するタイミングで前記光透過部が静止するような駆動波形を生成する、
請求項1に記載の光路変更装置。
【請求項3】
前記駆動波形生成回路は、前記光透過部の慣性力と前記アームの弾性率とから決まる時定数に応じて設定された遷移時間に基づいて、アクチュエータが移動を開始して停止するまでの駆動波形の時間を調整する、
請求項2に記載の光路変更装置。
【請求項4】
前記光透過部の慣性力と前記アームの弾性率とから決まる時定数によって決まる共振周波数は、同期信号の奇数倍とならないように設定されている、
請求項2または3に記載の光路変更装置。
【請求項5】
前記アームは弾性率の異なる第1の弾性部分と第2の弾性部分とを有し、前記アームの前記光透過部側に前記第1の弾性部分を有し、前記アームの中央部に前記第2の弾性部分を有する、
請求項1から4のいずれか1つに記載の光路変更装置。
【請求項6】
前記第1の弾性部分は前記アームが折れ曲がった第1の屈曲部であり、
前記第2の弾性部分は前記アームが直線状に延びる第1の板状部であり、
前記第1の屈曲部の一端は、第2の板状部を介して前記光透過部と接続し、前記第1の屈曲部の他端が前記第1の板状部の一端と接続している、
請求項5に記載の光路変更装置。
【請求項7】
前記アームは、一端が第3の板状部を介して前記アクチュエータと接続する第2の屈曲部と、
一端が前記第1の板状部の他端と接続し、他端が第4の板状部を介して前記第2の屈曲部の他端と接続する第3の屈曲部と、を有する、
請求項6に記載の光路変更装置。
【請求項8】
前記アームは、SUS304系またはSUS301系の材質である、
請求項6に記載の光路変更装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光路変更装置を備える、
投写型画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光路変更装置及びそれを備えた投写型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、平行平板ガラスを傾けることで入射する光線の光路を変更する光学部材駆動制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/098120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年において、投写画像の高解像度化が求められており、より高速に駆動する光路変更装置が望まれている。しかしながら、高速に駆動するほど大きな駆動力が必要となり、光路変更装置を支える筐体に伝達する振動が大きくなり、大きな騒音が発生する場合がある。
【0005】
本開示は、より低騒音で駆動することができる光路変更装置及びそれを使用した投写型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光路変更装置は、光を透過する光透過部と、一軸方向に移動制御される可動部を有する、少なくとも2つのアクチュエータと、一端がアクチュエータの可動部に接続され、他端が光透過部と接続され、弾性を有するアームと、アクチュエータを特定の周期で往復駆動制御する制御部と、を備える。制御部は、アクチュエータを往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータが停止するタイミングで光透過部が静止するように、アクチュエータを駆動制御する。
【0007】
本開示の投写型画像表示装置は、上述した光路変更装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より低騒音で駆動することができる光路変更装置及びそれを使用した投写型画像表示装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の投写型画像表示装置の構成を示す全体図
図2A】投写型画像表示装置に取り付けられた投写レンズユニットの斜視図
図2B】投写型画像表示装置から取り外された投写レンズユニットの斜視図
図2C】実施の形態の光路変更装置、投写レンズユニット、光学シャーシの断面図
図3】実施の形態の光路変更装置の外観斜視図
図4】実施の形態の光透過部及びアームの側面図
図5】実施の形態の光路変更装置の構造を示すブロック図
図6】実施の形態における光透過部の動き量を説明する説明図
図7】比較例における光透過部の動き量を説明する説明図
図8】実施形態における可動部の変位と光透過部材の端部の変位とを示すグラフ
図9】実施形態における可動部の位置の変位を示すグラフ
図10】実施形態における光透過部材の端部の位置の変位を示すグラフ
図11】比較例における可動部の位置の変位を示すグラフ
図12】比較例における光透過部材の端部の位置の変位を示すグラフ
図13A】アクチュエータの初期位置を説明する説明図
図13B】アクチュエータ105の駆動動作を説明する説明図
図14】第1のポジションにあるアクチュエータの駆動動作を説明する説明図
図15】第2のポジションにあるアクチュエータの駆動動作を説明する説明図
図16】第3のポジションにあるアクチュエータの駆動動作を説明する説明図
図17】第4のポジションにあるアクチュエータの駆動動作を説明する説明図
図18A】変形例におけるアクチュエータの初期位置を説明する説明図
図18B】変形例におけるアクチュエータの駆動動作を説明する説明図
図19A】アクチュエータの駆動制御の波形を示すグラフ
図19B】アクチュエータの駆動制御の波形を示すグラフ
図20】シミュレーションのモデルを示す説明図
図21】基本周波数の奇数倍を示す表
図22】基本周波数の奇数倍の周波数を並べた説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
(実施の形態)
以下、図1を参照して、実施の形態を説明する。図1は、本開示の光路変更装置100を備えた投写型画像表示装置200の光学系の構成を説明するための全体図である。以下の説明において、図1に示すようにX1Y1Z1直交座標系を設定する。
【0013】
[1-1.全体構成]
レーザ光源は、高輝度の照明装置を実現するために、複数の青色半導体レーザ301により構成されている。それぞれの青色半導体レーザ301から出射されたレーザ光は、それぞれ対応するコリメータレンズ302によってコリメートされる。コリメータレンズ302を出射した光は、略平行光になり、集光レンズ303によって、その全体光束が集光され、拡散板304を通過した後、レンズ305によって、再び略平行光化される。レンズ305で略平行光化されたレーザ光束は、光軸に対して略45度に配置された、ダイクロイックミラー306に入射する。
【0014】
拡散板304はガラス平板であり、片面には微細な凹凸を施された拡散面が形成されている。また、ダイクロイックミラー306は、青色半導体レーザ301の波長域の光を反射し、それ以外の波長域の光を透過する特性を有している。
【0015】
ダイクロイックミラー306に-X1方向へ入射したレーザ光は、ダイクロイックミラー306で反射し-Z1方向へ出射する。その後、レーザ光は集光レンズ307、308によって集光され、蛍光体ホイール320上に形成された蛍光体を励起する。
【0016】
蛍光体ホイール320は、円盤形状の基板上において円周方向に赤色蛍光体、緑色蛍光体が形成されたセグメントが設けれ、さらに光透過領域としての開口部が設けられる。
【0017】
蛍光体ホイール320の赤色蛍光体、緑色蛍光体からで得られる赤色光、緑色光は蛍光体ホイール320から出射される。これら赤色光、緑色光は集光レンズ308、307によって略平行化されダイクロイックミラー306を透過し、集光レンズ317で集光されてロッドインテグレータ318に入射する。
【0018】
一方、蛍光体ホイール320の開口部を通過した青色半導体レーザ301の青色光は、レンズ309、レンズ310、ミラー311、レンズ312、ミラー313、レンズ314、ミラー315、レンズ316の経路で進み、ダイクロイックミラー306で反射し、集光レンズ317で集光されてロッドインテグレータ318に入射する。レンズ312、314、316はリレーレンズとして機能する。
【0019】
ロッドインテグレータ318から出射された光はレンズ330、331、332を通して、一対のプリズム333、334からなる全反射プリズム335に入射し、光変調素子であるDMD(Digital Mirror Device)336で、映像信号によって入射光が変調され、画像光として出射される。レンズ330、331はリレーレンズ、レンズ332は、ロッドインテグレータ318の出射面の光をDMD336に結像させる機能を有する。
【0020】
DMD336から出射された画像光は光路変更装置100内に配置されている光透過部材101aに入射する。光透過部材108を透過した光は投写レンズユニット337に入射され、投写レンズユニット337からの出射光が画像光としてスクリーンに拡大投写される。
【0021】
光路変更装置100は、光透過部材101aの光軸ALに対して傾斜させることで、画像光の表示位置を移動させることができる。この機能により、ウォブリング表示を投写型画像表示装置200で行うことができる。ここで、ウォブリング表示とは、入力映像の1フレーム期間に、複数回表示位置をずらしながら異なった映像を表示して、等価的に表示映像の解像度を向上させる方法であり、画素シフト表示とも呼ばれる。駆動制御装置110(図5参照)は、DMD336の駆動に同期した制御信号で、アクチュエータ105を駆動する。
【0022】
次に、図2A図2B及び図2Cを参照して、投写レンズユニット337の投写型画像表示装置200への着脱を説明する。図2Aは、投写型画像表示装置に取り付けられた投写レンズユニットの斜視図である。図2Bは、投写型画像表示装置から取り外された投写レンズユニットの斜視図である。図2Cは、光路変更装置100、投写レンズユニット337、及び光学シャーシ338の断面図である。図2以下では、光軸ALの方向をZ軸方向とし、Z軸方向と直交する平面をXY平面となるように、XYZ直交座標系を設定する。
【0023】
投写レンズユニット337は、入射する画像光を拡大投写する投写レンズ337aを有する。投写レンズユニット337は、投写型画像表示装置200のケースの一部である光学シャーシ338に着脱可能である。投写レンズ337aは、投写レンズマウンター337bに取り付けられ、投写レンズマウンター337bが光学シャーシ338に取り付けられる。光路変更装置100は、光学シャーシ338に取り付けられている。図2Cに示すように、光軸AL上に、光路変更装置100の光透過部101と、投写レンズ337aとが配置されている。光路変更装置100は、光学シャーシ338内の投写レンズ337aや他の光学系部品の間の狭小空間に配置されている。
【0024】
[1-2.光路変更装置]
次に図3を参照して光路変更装置100の主要な構成を詳しく説明する。図3は、光路変更装置100の外観斜視図である。
【0025】
光路変更装置100は、光透過部101と、アーム103と、第1のアクチュエータ105A、第2のアクチュエータ105B、第3のアクチュエータ105C、及び第4のアクチュエータ105Dと、位置検出素子107と、を備える。
【0026】
光透過部101は、光を光軸AL上に、及び、光軸ALと平行にシフトさせて透過させる。光透過部101は、光透過部材101aと、支持枠101bとを有する。光透過部材101aは、画像光が透過する部材であり、例えば、平行平板ガラスである。支持枠102は、剛性を有し、光透過部材101aの外周を支持する。支持枠101bは、例えば、略正方形の外周形状であり、4つの角部が落とされて斜辺状に形成されている箇所に4つのアーム103がそれぞれ接続される。光透過部101は、アーム103がアクチュエータ105により光軸AL方向に駆動されることにより、光軸ALに交差する方向に傾斜することができる。
【0027】
アクチュエータ105A、105B、105C及び105Dはそれぞれ、接続されるアーム103を一軸方向に、例えば、光軸AL方向に沿って往復移動させる。なお、以下の説明で、アクチュエータ105A~105Dに共通の説明をする場合、単にアクチュエータ105と表記する。アクチュエータ105は、例えば、ボイスコールモータ(VCM)を使用している。
【0028】
アーム103は、光透過部101を支持し、光透過部101との接続箇所を光軸AL方向に駆動する。アーム103は、弾性を有する部材で形成されている。アームに103に用いられる材料は、屈曲部において外部要因により角度変位が可能で、かつ、アクチュエータ105の動きが逆転する際に、元の角度に戻ろうとする弾性を有する。したがって、アーム103は、伸縮する弾性よりも曲げや反りによる弾性の方が大きい。アーム103は、例えば、SUS304系、またはSUS301系の部材である。SUS304系、またはSUS301系の部材は、オースナイト系ステンレスに分類される鋼種である。アーム103の厚みは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下である。
【0029】
アーム103は、板状の部材が3カ所でそれぞれ折り曲げられた第1の屈曲部103a、第2の屈曲部103b、及び第3の屈曲部103cと、を有する。また、アーム103は、直線状に延びる第1の板状部103d、第2の板状部103e、第3の板状部103f及び第4の板状部103gを有する。
【0030】
第1の屈曲部103aの一端は、第2の板状部103eを介して光透過部101と接続し、第1の屈曲部103aの他端が第1の板状部103dの一端と接続している。第2の屈曲部103bの一端は、第3の板状部103fを介してアクチュエータ105と接続し、第2の屈曲部103bの他端は、第4の板状部103gを介して第3の屈曲部103cと接続する。第3の板状部103fはアクチュエータ105の上端に例えばネジにより固定されている。第3の屈曲部103cの一端は、第1の板状部103dの一端と接続している。
【0031】
第1の屈曲部103a、第2の屈曲部103b、及び第3の屈曲部103cは曲げ角度の変化による弾性を有する。また、第1の板状部103d、第2の板状部103e、第3の板状部103f及び第4の板状部103gは、反りや捩れによる弾性を有する。したがって、第1の弾性部分である第1の屈曲部103aと、第2の弾性部分である第1の板状部103dとにおいて、弾性率が異なる。
【0032】
4つのアーム103において、一方の組のアーム103が他方の組のアーム103とそれぞれ直交するように配置されている。一組のアーム103において、2つのアーム103がそれぞれ対向するように配置されている。
【0033】
位置検出素子107は、可動部106に取り付けられており、可動部106の移動量からアーム103のアクチュエータ105が取り付けられている部分の位置を検出する。位置検出素子107はアクチュエータ105の内部で往復可動する可動部106の移動量からアーム103の位置を検出する。
【0034】
次に図5を参照して、光路変更装置100の制御系の構成を説明する。光路変更装置100は、それぞれのアクチュエータ105を駆動制御する駆動制御装置110と、それぞれのアクチュエータの駆動波形を生成する駆動波形生成回路111と、駆動タイミング発生回路113をさらに備える。
【0035】
駆動タイミング発生回路113は、入力される画像信号に同期し入力される画像信号の周期をもった同期信号入力を基準に、各アクチュエータ105に対応するそれぞれの駆動波形を生成するためのタイミング信号を発生する。
【0036】
駆動波形生成回路111は、駆動タイミング発生回路113から供給された駆動波形を生成するためのタイミング信号を用い、外部から入力される画像信号に同期する各アクチュエータ105に対応するそれぞれの駆動波形を生成する。したがって、駆動波形は、可動部106の理想的な変位量を示している。生成されたそれぞれの駆動波形は対応する駆動制御装置110へ送られる。
【0037】
駆動制御装置110は、受信した駆動波形にしたがって、位置検出素子107から入力される位置信号を基に、各アクチュエータ105の駆動量をフィードバック制御する。制御方法は、例えば、PID制御を用いる。これにより、それぞれのアクチュエータ105が駆動され、連結するそれぞれのアーム103のアクチュエータ105の内部で往復可動する可動部106に接続された部分が変位し、この変位がアーム103を伝わって光透過部101を変位させる。このようにして、光透過部101の光軸に対する動きが制御される。駆動制御装置110は、例えば、マイクロコンピュータ、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASICで構成することができる。それぞれのアクチュエータ105に対応した駆動制御装置110は、1つの制御装置に統合してもよい。
【0038】
次に図6及び図7を参照して、アーム103における第1の屈曲部103aの機能について説明する。図6は、実施の形態における光透過部の動き量を説明する説明図である。図7は、比較例における光透過部の動き量を説明する説明図である。
【0039】
実施の形態において、光透過部101の中心軸から光透過部101の支持枠101bの端部までの距離をLaとし、光透過部101の中心軸からアクチュエータ105の可動部106までの距離をLbとする。一例として、La:Lb=1:2の場合を説明する。実施の形態において、光透過部101と接続されるアーム103は、光透過部101と接続される接続点P1の近傍に第1の屈曲部103aを有する。これにより、アーム103と光透過部101との接続点P1の移動量L1と、可動部106が光軸AL方向に沿って移動した移動量L2との関係は、L1:L2=1.4:2となる。つまり。L1/L2>La/Lbとなるので、接続点P1の移動量を大きくすることができる。
【0040】
これに対して、図7に示す比較例の場合、光透過部101と接続されるアーム103Zは、光透過部101と接続される接続点P1の近傍に屈曲部を有さずに、アーム103Zの中央部の板状部がそのまま延びて光透過部101に接続する構成である。この構成の場合、それぞれの、アーム103Zと光透過部101との角度θが同じ角度になる。アーム103Zと光透過部101との接続点P1の移動量L3と、可動部106が光軸AL方向に沿って移動した移動量L2との関係は、L3:L2=1:2となる。つまり。L3/L2=La/Lbとなるので、接続点P1の移動量が実施の形態の場合よりも小さい。ここで、第1の屈曲部103aが接続点P1の近傍に位置するとは、例えば、第2の板状部103eがアーム103の全長の10分の1以下の長さであるか、または、5mm以下の長さである。
【0041】
このように、実施の形態によれば、アーム103は、光透過部101と接続される接続点P1の近傍に第1の屈曲部103aを有することで、屈曲した形状による弾性によって光透過部101との接続点P1をより光軸AL方向に沿って移動させることができる。これは、可動部106が移動する際、連動するアーム103の第1の屈曲部103aが曲がることによりアーム103が曲がるので、図8に示すように、可動部106の動き量と異なる移動が接続点P1に生じる。図8は、実施形態における可動部106の変位PV1と光透過部材101aの端部の変位PV2とを示すグラフである。
【0042】
可動部106の動き量が小さい時、光透過部101の質量による慣性力によって、アーム103が曲がることにより接続点P1は移動せず、さらに可動部106の動き量が増加すると、光透過部101はアーム103が曲がることによるバネ力で加速され移動を開始後高速に移動し、可動部106の動き量よりも大きな移動量に到達し、その後アーム103が逆方向に曲がることによるバネ力で減速され、移動を停止する。このような動きにより、実施の形態の光透過部101は、より高速に変位することができる。
【0043】
図9は実施の形態の実際の可動部106の変位を示すグラフであり、図10は実施の形態の実際の光透過部材101aの端部の変位を示すグラフである。図11は比較例の実際の可動部106の変位を示すグラフであり、図12は比較例の実際の光透過部材101aの端部の変位を示すグラフである。
【0044】
図9及び図10に示すように、実施の形態において、可動部106が1.7msecの間に約0.1mm変位している場合、光透過部材101aの端部は、0.8msecの間に約0.07mm変位している。これに対して、従来例の場合、図11に示すように、可動部106が1.7msecの間に約0.1mm変位している場合、光透過部材101aの端部は、約0.8~1.7msecの間に0.05mm変位している。このように、可動部106を同じ変位量だけ移動させても、比較例よりも実施の形態の方が光透過部材101aの端部の変位量が大きく短時間で変位できる。また、図10に示すように、実施の形態において、第1の弾性部として第1の屈曲部103aを用いているので、例えば、コイルスプリングを用いる場合に比べて、光透過部材の端部の揺れを早期に収束することができる。
【0045】
次に、図13A図17を参照して、4つのアクチュエータ105の駆動動作の一例について説明する。図13Aは、アクチュエータ105の初期位置を示す説明図である。図13Bは、アクチュエータ105の駆動位置を示す表である。図14図17は、それぞれアクチュエータ105の駆動動作を説明する説明図である。
【0046】
図13Aに示すように、対向するアクチュエータ105を結ぶ線を光透過部101の重心位置まで平行移動した軸が2組のアクチュエータ105により2本直交して定義され、それらの線の交点の位置は上下左右に移動しない動きをするようにしている。この動きを実現するために、光透過部101が2つの回転軸Ra1、Ra2の周りを回転するようにアクチュエータ105を駆動制御する。
【0047】
駆動制御装置110は、例えば、4つのアクチュエータ105の内2つのアクチュエータ105の可動部106を隣り合ういずれかの方向に順に作動するように、4つのアクチュエータ105を協調して制御する。図13Bに示すように、4つのアクチュエータ105A~105Dは、初期位置のポジション0の他に、ポジション1~ポジション4の4種類の状態に協調制御される。図13Bにおいて、4つのアクチュエータ105A~105Dに対して、「0」は、センター位置を示し、「+1」はZ軸方向に上昇した位置にあることを示し、「-1」はZ軸方向に下降した位置にあることを示す。図13Aは、ポジション0における4つのアクチュエータ105が初期位置にある状態を示す。なお、画素ずらしのモードで光を投写しない場合は、それぞれのアクチュエータ105を駆動することなく、ポジション0の状態で光を透過させる。
【0048】
図14は、ポジション1における4つのアクチュエータ105の状態を示す。第2のアクチュエータ105Bは可動部106を収容し、第4のアクチュエータ105Dは可動部106を駆動して突出させる。これにより、第1のアクチュエータ105A及び第2のアクチュエータ105Bは、それぞれの可動部106を突出しておらず、第3のアクチュエータ105C及び第4のアクチュエータ105Dは、それぞれの可動部106を駆動して突出し、対応するそれぞれのアーム103を光軸AL方向に押し出している。
【0049】
次に、図15は、ポジション2における4つのアクチュエータ105の状態を示す。第3のアクチュエータ105Cは可動部106を収容し、第1のアクチュエータ105Aは可動部106を駆動して突出させる。これにより、第2のアクチュエータ105B及び第3のアクチュエータ105Cは、それぞれの可動部106を突出しておらず、第4のアクチュエータ105D及び第1のアクチュエータ105Aは、それぞれの可動部106を駆動して突出し、対応するそれぞれのアーム103を光軸AL方向に押し出している。
【0050】
次に、図16は、ポジション3における4つのアクチュエータ105の状態を示す。第4のアクチュエータ105Dは可動部106を収容し、第2のアクチュエータ105Bは可動部106を駆動して突出させる。これにより、第3のアクチュエータ105C及び第4のアクチュエータ105Dは、それぞれの可動部106を突出しておらず、第1のアクチュエータ105A及び第2のアクチュエータ105Bは、それぞれの可動部106を駆動して突出し、対応するそれぞれのアーム103を光軸AL方向に押し出している。
【0051】
次に、図17は、ポジション4における4つのアクチュエータ105の状態を示す。第1のアクチュエータ105Aは可動部106を収容し、第3のアクチュエータ105Cは可動部106を駆動して突出させる。これにより、第4のアクチュエータ105D及び第1のアクチュエータ105Aは、それぞれの可動部106を突出しておらず、第2のアクチュエータ105B及び第3のアクチュエータ105Cは、それぞれの可動部106を駆動して突出し、対応するそれぞれのアーム103を光軸AL方向に押し出している。
【0052】
次に、再び、図14に示すように、ポジション1における4つのアクチュエータ105の状態に戻る。第1のアクチュエータ105Aは可動部106を収容し、第3のアクチュエータ105Cは可動部106を駆動して突出させる。このように、隣り合うアクチュエータ105のいずれかの方向に順に作動するように、各駆動制御装置110が対応する各アクチュエータ105を駆動制御することで、光透過部材101aを光軸ALに対して傾斜した状態で次々に傾斜状態を変更することができ、透過する光を4つの位置に順にシフト移動させることができる。
【0053】
また、図18Aに示すように、2つの回転軸Ra1、Ra2を上述した例から45度光軸周りに回転し、それぞれのアーム103の延びる方向に設定してもよい。この場合、図18Bに示すように、4つのアクチュエータ105A~105Dは、初期位置のポジション0の他に、ポジション5~ポジション9の4種類の状態に協調制御してもよい。
【0054】
このように、4つのアクチュエータ105を協調して制御することで、水平方向および垂直方向の2軸方向に光の進行方向をシフトすることができ、より精密で高速な画素シフト制御を実現することができる。
【0055】
以上、4つのアクチュエータ105の連携した駆動制御について説明した。次に、図5及び図19A図19B図20を参照して、それぞれのアクチュエータ105の駆動制御について説明する。まず、駆動波形生成回路111において生成されるアクチュエータ105の駆動波形について説明する。なお、図19A及び図19Bにおいて、時間について、周期Tで正規化した時間で示している。
【0056】
図5に示す駆動タイミング発生回路113は、図19Aの(a)に示すような外部から入力される入力映像信号の周期Tを持つ同期信号を基準に、図19A(b)に示すような駆動タイミング信号を発生する。図19Aの(a)は、周期Tを持つ同期信号を示している。同期信号は、周期Tを有する繰り返しのタイミング信号である。図19Aの(b)は、駆動タイミング発生回路113が発生させる駆動タイミング信号を示している。駆動タイミング発生回路113は、周期Tの同期信号を基に、時系列のタイミング信号である駆動タイミング信号を生成する。
【0057】
図5に示す駆動波形生成回路111は、図19Aの(c)に示すような。アクチェータ105の制御目標位置信号を生成する。図19Aの(c)は、駆動波形生成回路111が生成するアクチェータ位置の目標信号を示している。
【0058】
図5の駆動制御装置110は、位置検出素子107の出力と図19Aの(c)に示すアクチェータ位置目標信号を比較し、図19Aの(d)に示すようなアクチェータ105の加速力を発生する。図19Aの(d)は、アクチェータ105の加速力を示している。
【0059】
図19Aの(d)のアクチェータ105の加速力のグラフを積分することで、図19Aの(e)に示すアクチュエータ105の速度のグラフを得ることができる。図19Aの(e)は、アクチェータ105の速度を示している。図19Aの(e)のグラフをさらに積分すると、図19Aの(f)に示すアクチュエータ105の位置のグラフを得ることができる。図19Aの(c)に示すような、アクチェータ105の制御目標位置信号と、図19Aの(f)に示すアクチュエータ105の位置は、駆動制御装置110の、位置検出素子107の出力と図19Aの(c)に示すアクチェータ位置目標信号を比較し、図19Aの(d)に示すようなアクチェータ105の加速力を発生する構成により、等しくなるように制御される。図19Aの(f)は、アクチュエータ105の位置の波形を示している。
【0060】
光透過部101は慣性力Mを有し、弾性率Dのアーム103と接続されていると考えることができる。光透過部101の変位量と、アクチュエータ105の変位量との関係の波形を図19Bの(g)に示す。
【0061】
図19Aの(f)に示すアクチュエータ105の位置と、図19Bの(g)に示すシミュレーション結果による光透過部101の位置との差分のグラフが図19Bの(h)に示される。アクチュエータ105の位置と光透過部101の位置との差分は、アクチュエータ105の歪みに相当する。この、アクチュエータ105の位置と光透過部101の位置との差分に比例した加速力が光透過部101に発生する。この加速力の時間積分により図19Bの(i)に示す光透過部101の速度が決定される。さらに、図19Bの(i)のグラフを積分することで、図19Bの(g)に示す光透過部101の位置のグラフになる。また、図19Aの(c)の波形を作成するとき、シミュレーションで求めた図19Bの(g)の波形を参照して、図19Aの(c)の波形を微修正することでさらに精度を向上させることができる。
【0062】
図19Aの(c)に示すアクチュエータ位置目標の遷移時間Ttを、光透過部101の慣性力Mと弾性率Dから決まる時定数に応じて設定する。この遷移時間Ttはユーザによって入力される遷移時間調整値によって制御される。遷移時間調整値は、実際の装置の図19Aの(g)に相当する光透過部位置の波形を観測し、波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しない値に調整される。駆動波形の繰返し周期Tは入力された同期信号の繰返し周期となる。遷移時間Ttは入力された同期信号の周期によらず一定で、アクチュエータ105が停止する時間Tiは入力された同期信号の周期に応じて変化する。
【0063】
駆動波形生成回路111及び駆動タイミング発生回路113に入力される遷移時間調整値は、4つのアクチュエータ105のそれぞれのアーム103の弾性率のバラツキを補正する値である。遷移時間調整値は、アクチュエータ105が移動を開始して停止するまでの時間Ttを設定する値である。
【0064】
また、駆動タイミング発生回路113には、映像信号の基本周波数が入力される。基本周波数は、48、50、及び60Hzである。入力された基本周波数を基に、アクチュエータ105が停止する時間Tiを決定する。
【0065】
駆動波形生成回路111及び駆動タイミング発生回路113は、図19(f)に示すように、アクチュエータ105が停止する時間Tiにおける光透過部101の速度がゼロになるように、図19(c)のアクチュエータ105の位置目標波形を生成する。駆動制御装置110は、例えば、PID制御により、アクチュエータ位置目標波形と位置検出素子107からの検出値とが等しくなるようにアクチュエータ105を駆動制御する。
【0066】
次に図21及び図22を参照して、狙いの共振周波数について説明する。光路変更装置100の共振周波数は、光透過部101の形状及び重量で決まる慣性力Mと、アーム103の材質、幅、厚さや形状で決まる弾性率Dとから決まる時定数で決まる。狙いとする共振周波数は、入力される同期信号の周波数の奇数倍の周波数になるのを避けるように設定され、設定された共振周波数となるように光透過部101とアーム103とを設計する。入力される同期信号の周波数は、例えば、48、50、及び60Hzの場合があり、図21は、これらの周波数の奇数倍の周波数を示す。
【0067】
これらの奇数倍の周波数を図22に示すように並べると、隣り合った周波数の差が大きい部分がある。例えば、350~420Hz間、420~528Hzの間、550~624Hzの間などである。これらの隣り合った周波数の中間の周波数である、385Hz、474Hz、587Hzを共振周波数の狙いの値とすることで、慣性力Mと弾性率Dのバラツキにより共振周波数がばらついても、入力される同期信号の周波数である、48、50、及び60Hzの奇数倍に共振周波数が一致することを避けることができる。これにより、光透過部101に不要な振動が発生することを回避できる。
【0068】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態に係る光路変更装置100は、光を透過する光透過部101と、光軸AL方向に移動制御される可動部106を有する、少なくとも2つのアクチュエータ105と、一端がアクチュエータ105の可動部106に接続され、他端が光透過部101と接続されるアーム103と、を備える。光路変更装置100は、さらに、アクチュエータ105を特定の周期で往復駆動制御する駆動制御装置110を備える。駆動制御装置110は、アクチュエータ105を往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータ105が停止するタイミングで光透過部101が静止するように、アクチュエータ105を駆動制御する。
【0069】
本実施の形態に係る光路変更装置100は、光透過部101の端面が移動する速度が、アクチュエータ105の可動部106の移動速度より大きくなるため、光透過部101が傾く速度を必要な速度とした場合、可動部106の移動速度を小さくすることが可能になる。光路変更装置100の動作時に発生する動作音は、光透過部101やアクチュエータ105の可動部106を駆動する力の反作用として発生する力によって発生し、対象物が移動する速度の2乗に比例して大きくなる。本発明の光路変更装置100は、高速動作する部分が、光透過部101のみとなるため、この動作音を低減することが可能となる。
【0070】
また、光路変更装置100は、それぞれのアクチュエータ105の駆動波形を生成する駆動波形生成回路111と、アクチュエータ105の位置を検出する位置検出素子107と、を備える。駆動制御装置110は、駆動波形生成回路111により生成された駆動波形と、位置検出素子107の検出値とを比較して、駆動波形と検出値とが等しくなるようにアクチュエータ105を駆動制御する。駆動波形生成回路111は、アクチュエータ105を往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータ105が停止するタイミングで光透過部101が静止するような駆動波形を生成する。
【0071】
アーム103は弾性率の異なる第1の弾性部分としての第1の屈曲部103aと第2の弾性部分としての第1の板状部103dを有し、アーム103の光透過部101側に第1の弾性部分としての第1の屈曲部103aを有し、アームの中央部に第2の弾性部分としての第1の板状部103dを有する。
【0072】
アーム103において、中央部の第1の板状部103dよりも光透過部101側に第1の屈曲部103aを有するので、光透過部101をアクチュエータ105の可動部106の変位量に近い値まで変位させることができ、アクチュエータ105の可動部106の変位量を低減することが可能となり、動作速度を低減して動作音を低減することが可能となる。
【0073】
また、アーム103は、一端が第3の板状部103fを介してアクチュエータ105と接続する第2の屈曲部103bと、一端が第1の板状部103dの他端と接続し、他端が第4の板状部103gを介して第2の屈曲部103bの他端と接続する第3の屈曲部103cと、を有する。
【0074】
このように、アーム103が複数の屈曲部を有することで、投写レンズユニット337における狭小な空間であっても干渉することなく光路変更装置100を配置することができる。
【0075】
(他の実施の形態)
以上のように、本開示における技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0076】
上述した実施の形態では、アーム103において第1の弾性部分として、第1の屈曲部103aが形成されていたが、これに限らない。例えば、第1の弾性部分として、第1の板状部103dの幅よりも小さい幅の板状部であってもよい。この構成であっても、第1の弾性部分は、第2の弾性部としての第1の板状部103dよりも弾性率が大きくなり、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
上述した実施の形態では、光路変更装置100は、4つのアーム103を備えていたが、これに限らない。光路変更装置100は、2つ、3つ、または5つ以上のアーム103を備えていてもよい。また、光路変更装置100は、4つのアクチュエータ105に限らず、アーム103の数に対応する数のアクチュエータ105を備えてもよい。
【0078】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0079】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0080】
(実施の形態の概要)
(1)本開示の光路変更装置は、光を透過する光透過部と、一軸方向に移動制御される可動部を有する、少なくとも2つのアクチュエータと、一端がアクチュエータの可動部に接続され、他端が光透過部と接続され、弾性を有するアームと、アクチュエータを特定の周期で往復駆動制御する制御部と、を備える。制御部は、アクチュエータを往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータが停止するタイミングで光透過部が静止するように、アクチュエータを駆動制御する。
【0081】
制御部は、アクチュエータが停止するタイミングで光透過部が静止するようにアクチュエータを駆動制御する。これにより、本実施の形態に係る光路変更装置は、光透過部の端面が移動する速度が、アクチュエータの可動部の移動速度より大きくなるため、光透過部が傾く速度を必要な速度とした場合、可動部の移動速度を小さくすることが可能になる。光路変更装置の動作時に発生する動作音は、光透過部やアクチュエータの可動部を駆動する力の反作用として発生する力によって発生し、対象物が移動する速度の2乗に比例して大きくなる。本発明の光路変更装置は、高速動作する部分が、光透過部のみとなるため、この動作音を低減することが可能となる。
【0082】
(2)(1)の光路変更装置において、それぞれのアクチュエータの駆動波形を生成する駆動波形生成回路と、アクチュエータの位置を検出する位置検出素子と、を備える。制御部は、波形生成部により生成された駆動波形と、位置検出素子の検出値とを比較して、駆動波形と検出値とが等しくなるようにアクチュエータを駆動制御する。波形生成部は、アクチュエータを往復駆動における一方の最大変位量の位置から他方の最大変位量の位置まで駆動制御する際に、アクチュエータが停止するタイミングで光透過部が静止するような駆動波形を生成する。
【0083】
(3)(2)の光路変更装置において、駆動波形生成回路は、光透過部の慣性力とアームの弾性率とから決まる時定数に応じて設定された遷移時間に基づいて、アクチュエータが移動を開始して停止するまでの駆動波形の時間を調整する。
【0084】
(4)(2)または(3)の光路変更装置において、光透過部の慣性力とアームの弾性率とから決まる時定数によって決まる共振周波数は、同期信号の奇数倍とならないように設定されている。
【0085】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの光路変更装置において、アームは弾性率の異なる第1の弾性部分と第2の弾性部分とを有し、アームの光透過部側に第1の弾性部分を有し、アームの中央部に第2の弾性部分を有する。
【0086】
(6)(5)の光路変更装置において、第1の弾性部分はアームが折れ曲がった第1の屈曲部であり、第2の弾性部分はアームが直線状に延びる第1の板状部である。第1の屈曲部の一端は、第2の板状部を介して光透過部と接続し、第1の屈曲部の他端が第1の板状部の一端と接続している。
【0087】
(7)(5)の光路変更装置において、アームは、一端が第3の板状部を介してアクチュエータと接続する第2の屈曲部と、一端が第1の板状部の他端と接続し、他端が第4の板状部を介して第2の屈曲部の他端と接続する第3の屈曲部と、を有する。
【0088】
(8)(6)の光路変更装置において、アームは、SUS304系またはSUS301系の材質である。
【0089】
(9)本開示の投写型画像表示装置は、(1)から(8)のいずれか1つの光路変更装置を備える。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示は、画素の表示位置を変更しながら画像を表示する投写型表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 光路変更装置
101 光透過部
101a 光透過部材
101b 支持枠
103 アーム
103a 第1の屈曲部
103b 第2の屈曲部
103c 第3の屈曲部
103d 第1の板状部
103e 第2の板状部
103f 第3の板状部
103g 第4の板状部
105 アクチュエータ
105A 第1のアクチュエータ
105B 第2のアクチュエータ
105C 第3のアクチュエータ
105D 第4のアクチュエータ
106 可動部
107 位置検出素子
109 位置検出回路
110 駆動制御装置
111 駆動波形生成回路
200 投写型画像表示装置
337 投写レンズユニット
337a 投写レンズ
338 光学シャーシ
AL 光軸
L1、L2、L3 移動量
P1 接続点
PV1、PV2 変位
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22