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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047825
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】電圧出力装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/12 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
H02M5/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156957
(22)【出願日】2021-09-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】下和田 周
(72)【発明者】
【氏名】平野 南洋
(72)【発明者】
【氏名】白土 紀明
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750BA01
5H750CC03
5H750CC12
5H750DD13
5H750DD17
5H750DD27
5H750FF05
(57)【要約】
【課題】切換器を介して流れる交流電流の実効値が小さい電圧出力装置を提供する。
【解決手段】電圧出力装置1では、第1直列変圧器5の2次巻線52及び第2直列変圧器6の2次巻線62を介して交流電圧が分路巻線40の両端に印加される。分路巻線40の両端から交流電圧が出力される。分路巻線40の一端及び他端それぞれから第1直列巻線41及び第2直列巻線42が延びている。分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42を含む単巻線の両端及び中途に第1タップT1、第2タップT2及び第3タップが接続されている。第1直列変圧器5の1次巻線51及び第2直列変圧器6の1次巻線61の一端は共通のタップに接続されている。1次巻線51,61の他端も共通のタップに接続されている。切換器7は、1次巻線51,61それぞれの一端又は両端の接続先を切換える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分路巻線の一端及び他端それぞれから第1直列巻線及び第2直列巻線が延びている単巻変圧器と、
1次巻線と、前記分路巻線の一端に接続される第1接続線の中途に配置される2次巻線とを有する第1直列変圧器と、
1次巻線と、前記分路巻線の他端に接続される第2接続線の中途に配置される2次巻線とを有する第2直列変圧器と、
前記分路巻線、第1直列巻線及び第2直列巻線を含む単巻線の両端及び中途に接続されている複数のタップと、
前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の一端を、前記複数のタップ中の1つに接続し、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の他端を前記複数のタップ中の1つに接続し、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の一端又は両端の接続先を切換える切換器と
を備え、
前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器が有する2つの2次巻線を介して、交流電圧が前記分路巻線の両端に印加され、
前記分路巻線の両端から交流電圧が出力される
電圧出力装置。
【請求項2】
前記第1直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数比は、前記第2直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数比と同じである
請求項1に記載の電圧出力装置。
【請求項3】
前記分路巻線の中途に中性線が接続されており、
前記分路巻線の一端から前記中性線の接続点までの前記分路巻線の巻数は、前記分路巻線の他端から前記中性線の接続点までの前記分路巻線の巻数と同じである
請求項2に記載の電圧出力装置。
【請求項4】
前記切換器は、オン又はオフに切換わる複数の切換スイッチ回路を有し、
前記複数の切換スイッチ回路それぞれは、2つのサイリスタ又はトライアックを有する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電圧出力装置。
【請求項5】
前記複数のタップには、前記単巻線の一端及び他端それぞれに接続されている第1タップ及び第2タップと、前記単巻線の中途に接続されている第3タップとが含まれ、
前記単巻線に関して、前記第1タップから前記第3タップまでの巻数は、前記第2タップから前記第3タップまでの巻数の半分である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電圧出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電圧出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電圧を出力する構成が開示されている。特許文献1の構成では、第1直列変圧器及び第2直列変圧器が用いられる。第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれは、1次巻線及び2次巻線を有する。単巻線の一端及び他端それぞれに第1接続線及び第2接続線が接続されている。第1接続線の中途に第1直列変圧器の2次巻線が配置されている。第2接続線の中途に第2直列変圧器の2次巻線が配置されている。単巻線の両端及び中途に複数のタップが設けられている。複数のタップ中の1つのタップが第1直列変圧器及び第2直列変圧器の1次巻線の一端に接続される。複数のタップ中の他のタップが第1直列変圧器及び第2直列変圧器の1次巻線の他端に接続される。
【0003】
第1直列変圧器及び第2直列変圧器が有する2つの2次巻線を介して交流電圧が単巻線の両端に印加される。更に、単巻線の両端から交流電圧が外部に出力される。単巻線の両端に交流電圧が印加された場合、単巻線の2つのタップから第1直列変圧器及び第2直列変圧器の1次巻線の両端に交流電圧が印加される。これにより、第1直列変圧器及び第2直列変圧器は、単巻線の両端から外部に出力される交流電圧の実効値を調整する。
【0004】
第1直列変圧器及び第2直列変圧器の1次巻線の一端及び他端に接続される2つのタップそれぞれは、切換器によって切換えられる。2つの2次巻線を介して出力される交流電圧の実効値は、第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の両端に印加される交流電圧に応じて異なる。切換器は、第1直列変圧器及び第2直列変圧器の1次巻線に接続される2つのタップそれぞれを切換えることによって、第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の両端に印加される交流電圧を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-187374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では切換器を介して交流電流が流れる。しかしながら、特許文献1では、切換器を介して流れる交流電流の実効値は考慮されていない。
【0007】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切換器を介して流れる交流電流の実効値が小さい電圧出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電圧出力装置は、分路巻線の一端及び他端それぞれから第1直列巻線及び第2直列巻線が延びている単巻変圧器と、1次巻線と、前記分路巻線の一端に接続される第1接続線の中途に配置される2次巻線とを有する第1直列変圧器と、1次巻線と、前記分路巻線の他端に接続される第2接続線の中途に配置される2次巻線とを有する第2直列変圧器と、前記分路巻線、第1直列巻線及び第2直列巻線を含む単巻線の両端及び中途に接続されている複数のタップと、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の一端を、前記複数のタップ中の1つに接続し、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の他端を前記複数のタップ中の1つに接続し、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の一端又は両端の接続先を切換える切換器とを備え、前記第1直列変圧器及び第2直列変圧器が有する2つの2次巻線を介して、交流電圧が前記分路巻線の両端に印加され、前記分路巻線の両端から交流電圧が出力される。
【0009】
上記の態様にあっては、分路巻線、第1直列巻線及び第2直列巻線を含む単巻線の両端及び中途に配置された複数のタップ中の2つから、交流電圧が、切換器を介して、第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の両端に印加される。このため、実効値が大きい交流電圧が、単巻線から切換器を介して、2つの1次巻線それぞれの両端に印加される。従って、切換器を介して流れる交流電流の実効値は小さい。この場合、切換器を耐電流性能が低い小型の部品によって構成することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る電圧出力装置では、前記第1直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数比は、前記第2直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数比と同じである。
【0011】
上記の態様にあっては、切換器から第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの1次巻線の両端に交流電圧が印加された場合、第1直列変圧器及び第2直列変圧器それぞれの2次巻線は、分路巻線に印加される交流電圧の実効値を上昇又は低下させる。第1直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数の比は、前記第2直列変圧器の1次巻線及び2次巻線の巻数の比と同じである。このため、第1直列変圧器の2次巻線が上昇又は低下させる実効値の幅は、第2直列変圧器の2次巻線が上昇又は低下させる実効値の幅と同じである。
【0012】
本開示の一態様に係る電圧出力装置では、前記分路巻線の中途に中性線が接続されており、前記分路巻線の一端から前記中性線の接続点までの前記分路巻線の巻数は、前記分路巻線の他端から前記中性線の接続点までの前記分路巻線の巻数と同じである。
【0013】
上記の態様にあっては、分路巻線の一端から中性線の接続点までの分路巻線の巻数は、単巻線の他端から中性線の接続点までの分路巻線の巻数と同じである。このため、分路巻線の一端及び中性線から出力される交流電圧の実効値は、分路巻線の他端及び中性線から出力される交流電圧の実効値と同じである。
【0014】
本開示の一態様に係る電圧出力装置では、前記切換器は、オン又はオフに切換わる複数の切換スイッチ回路を有し、前記複数の切換スイッチ回路それぞれは、2つのサイリスタ又はトライアックを有する。
【0015】
上記の態様にあっては、サイリスタ及びトライアックは半導体素子である。切換スイッチ回路は、一又は複数の半導体素子によって構成されるので小型である。結果、切換器も小型である。
【0016】
本開示の一態様に係る電圧出力装置では、前記複数のタップには、前記単巻線の一端及び他端それぞれに接続されている第1タップ及び第2タップと、前記単巻線の中途に接続されている第3タップとが含まれ、前記単巻線に関して、前記第1タップから前記第3タップまでの巻数は、前記第2タップから前記第3タップまでの巻数の半分である。
【0017】
上記の態様にあっては、第1タップから第3タップまでの巻線が、第2タップから第3タップまでの巻線の半分であるので、共通の間隔で交流電圧の実効値を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記の態様によれば、切換器を介して流れる電流が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態における電圧出力装置の回路図である。
図2】切換器の要部構成を示すブロック図である。
図3】切換スイッチ回路の回路図である。
図4】交流電圧の実効値を低下させる方法の説明図である。
図5】交流電圧の実効値を上昇させる方法の説明図である。
図6】切換器の出力電圧の実効値の説明図である。
図7】第1直列変圧器及び第2直列変圧器の電圧調整量の例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態における電圧出力装置1の回路図である。まず、電圧出力装置1の動作を説明する。電圧出力装置1は、交流電源2の両端に接続されている。電圧出力装置1は第1負荷31の一端に接続されている。第1負荷31の他端は第2負荷32の一端に接続されている。第2負荷32の他端は電圧出力装置1に接続されている。第1負荷31及び第2負荷32間の接続ノードも電圧出力装置1に接続されている。
【0021】
交流電源2は交流電圧を電圧出力装置1に出力する。交流電源2が出力する交流電圧は、交流電圧の実効値を、例えば、6600[V]から低下させることによって生成される交流電圧である。交流電圧に関して、実効値は(振幅値)/√2で表される。交流電源2から電圧出力装置1に入力される交流電圧の実効値は、例えば210[V]近傍の値であり、変動する。電圧出力装置1は、交流電源2から入力された交流電圧の実効値を、一定の目標値、例えば210[V]に調整し、実効値が調整された交流電圧を出力する。電圧出力装置1は、第1負荷31及び第2負荷32それぞれに交流電圧を印加する。
【0022】
第1負荷31及び第2負荷32それぞれは電気機器である。交流電圧が第1負荷31に印加された場合、第1負荷31に交流電力が供給される。交流電圧が第2負荷32に印加された場合、第2負荷32に交流電力が供給される。
【0023】
次に、電圧出力装置1の具体的な構成を説明する。電圧出力装置1は、単巻変圧器4、第1直列変圧器5、第2直列変圧器6、切換器7及び計測変圧器8を備える。単巻変圧器4は、分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42を有する。単巻変圧器4では、分路巻線40の一端から第1直列巻線41が延びている。分路巻線40の他端から第2直列巻線42が延びている。分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42によって1つの巻線が構成されている。分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42を含む単巻線は、図示しない磁性体に巻き付けられている。
【0024】
電圧出力装置1は、更に、第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3を備える。第1タップT1は、単巻線の一端に接続されている。第2タップT2は単巻線の他端に接続されている。第3タップT3は単巻線の中途に接続されている。単巻線の一端は第1直列巻線41の一端である。単巻線の他端は第2直列巻線42の一端である。分路巻線40の一端には、第1接続線G1の一端が接続されている。分路巻線40の他端には、第2接続線G2の一端が接続されている。第1接続線G1及び第2接続線G2の他端間に交流電源2が接続されている。
【0025】
第1直列変圧器5は1次巻線51及び2次巻線52を有する。第1直列変圧器5では、例えば、環状の磁性体に1次巻線51及び2次巻線52は巻き付けられている。第1直列変圧器5の2次巻線52は、第1接続線G1の中途に配置されている。第2直列変圧器6は1次巻線61及び2次巻線62を有する。第2直列変圧器6では、例えば、環状の磁性体に1次巻線61及び2次巻線62は巻き付けられている。第2直列変圧器6の2次巻線62は、第2接続線G2の中途に配置されている。第1直列変圧器5の1次巻線51の一端及び他端それぞれは、第2直列変圧器6の1次巻線61の一端及び他端に接続されている。
【0026】
以下では、第1直列変圧器5の1次巻線51の一端と、第2直列変圧器6の1次巻線61の一端との間の接続ノードを第1ノードと記載する。第1直列変圧器5の1次巻線51の他端と、第2直列変圧器6の1次巻線61の他端との間の接続ノードを第2ノードと記載する。第1ノード及び第2ノードは切換器7に各別に接続されている。第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3も切換器7に各別に接続されている。
【0027】
分路巻線40の一端には、第1出力線H1の一端が接続されている。分路巻線40の他端には、第2出力線H2の一端が接続されている。分路巻線40の中途には中性線Qの一端が接続されている。分路巻線40に関して、第1出力線H1の接続点から中性線Qの接続点までの巻数は、第2出力線H2の接続点から中性線Qの接続点までの巻数と同じである。なお、2つの巻数は実質的に同じあればよい。従って、2つの巻数の差が設計上の誤差の範囲内である場合、2つの巻数は同じである。中性線Qは接地される。
【0028】
第1出力線H1及び中性線Qの他端間に第1負荷31が接続されている。第2出力線H2及び中性線Qの他端間に第2負荷32が接続されている。計測変圧器8は1次巻線81及び2次巻線82を有する。計測変圧器8では、例えば、環状の磁性体に1次巻線81及び2次巻線82は巻き付けられている。1次巻線81の一端及び他端それぞれは、第1出力線H1及び第2出力線H2の中途に接続されている。2次巻線82の両端は切換器7に各別に接続されている。
【0029】
各構成部の作用を説明する。切換器7は、第1ノードを第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3中の1つに接続する。切換器7は、更に、第2ノードを第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3中の1つに接続する。切換器7は、第1ノード及び第2ノードの一方又は両方の接続先を切換える。
【0030】
交流電源2は、第1直列変圧器5の2次巻線52及び第2直列変圧器6の2次巻線62に交流電圧を出力する。2次巻線52,62を介して分路巻線40の両端に交流電圧が印加される。これにより、第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3中の2つから、切換器7を介して、1次巻線51,61それぞれの両端に交流電圧が印加される。1次巻線51,61それぞれの両端に交流電圧が印加された場合、2次巻線52,62から分路巻線40に出力される交流電圧の実効値が変更される。
【0031】
切換器7は、第1ノード及び第2ノードの一方又は両方の接続先を変更することによって、2次巻線52,62それぞれの両端に印加される交流電圧を変更する。これにより、2次巻線52,62から分路巻線40に出力される交流電圧の実効値が種々の値に変更される。
【0032】
2次巻線52,62が分路巻線40の両端に交流電圧を印加した場合、分路巻線40の両端から第1負荷31及び第2負荷32に交流電圧が出力される。前述したように、分路巻線40の一端から中性線Qの接続点までの分路巻線40の巻数は、分路巻線40の他端から中性線Qの接続点までの分路巻線40の巻数と同じである。このため、第1出力線H1及び中性線Qを介して第1負荷31に印加される交流電圧の実効値は、第2出力線H2及び中性線Qを介して第2負荷32に印加される交流電圧の実効値は同じである。
【0033】
分路巻線40の両端から出力された交流電圧は、計測変圧器8の1次巻線81の両端に印加される。これにより、計測変圧器8の2次巻線82から切換器7に交流電圧が出力される。1次巻線81の巻数は2次巻線82の巻数よりも多い。このため、計測変圧器8では、交流電圧の実効値を低下させる。2次巻線82から出力される交流電圧の実効値は、1次巻線81の両端に印加された交流電圧の実効値を所定数で除算することによって算出される。所定数は(1次巻線81の巻数)/(2次巻線82の巻線)で表される。
【0034】
切換器7は、計測変圧器8の2次巻線82の両端から出力された交流電圧の実効値に基づいて、分路巻線40の両端から出力された交流電圧の実効値を算出する。切換器7は、算出した実効値に基づいて、第1ノード及び第2ノードの一方又は両方の接続先を切換える。これにより、1次巻線51,61それぞれの両端に印加する交流電圧が変更される。結果、2次巻線52,62から分路巻線40に出力する交流電圧、即ち、分路巻線40の両端から出力される交流電圧の実効値が変化する。1次巻線51,61それぞれの両端に印加する交流電圧と、2次巻線52,62から分路巻線40に出力される交流電圧との関係については後述する。
【0035】
以上のように、切換器7は、分路巻線40の両端から出力される交流電圧の実効値に応じて、第1ノード及び第2ノードの一方又は両方の接続先を切換える。これにより、切換器7は、分路巻線40の両端から出力される交流電圧の実効値を目標値に調整する。
【0036】
次に、切換器7の構成を説明する。図2は切換器7の要部構成を示すブロック図である。切換器7は、制御部70、駆動部71、6つの切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3、接続スイッチ回路E,F及び抵抗Rを有する。制御部70は、駆動部71と、計測変圧器8の2次巻線82の両端とに各別に接続されている。
【0037】
切換スイッチ回路A1,B1は第1タップT1に接続されている。切換スイッチ回路A2,B2は第2タップT2に接続されている。切換スイッチ回路A3,B3は第3タップT3に接続されている。切換スイッチ回路A1,A2,A3それぞれは、更に、第1ノードに接続されている。切換スイッチ回路B1,B2,B3それぞれは、更に、第2ノードに接続されている。接続スイッチ回路Eは第1ノード及び第2ノード間に接続されている。接続スイッチ回路Fは抵抗Rに直列に接続されている。接続スイッチ回路F及び抵抗Rを含む直列回路は、第1ノード及び第2ノード間に接続されている。
【0038】
制御部70は、例えばマイクロコンピュータである。制御部70は、処理を実行する処理素子と、コンピュータプログラムが記憶されている記憶部とを有する。処理素子は例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部70の処理素子は、記憶部に記憶されているコンピュータプログラムを実行することによって種々の処理を実行する。制御部70は、駆動部71に指示して、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれをオン又はオフに切換えさせる。従って、制御部70は、駆動部71を通じて、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれをオン又はオフに切替える。
【0039】
切換スイッチ回路A1がオンである場合、切換スイッチ回路A1を介して交流電流が流れることが可能である。切換スイッチ回路A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれがオンである場合、切換スイッチ回路A1と同様に作用する。切換スイッチ回路A1がオフである場合、切換スイッチ回路A1を介して電流が流れることはない。切換スイッチ回路A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれがオフである場合、切換スイッチ回路A1と同様に作用する。
【0040】
切換スイッチ回路A1の構成を説明する。図3は切換スイッチ回路A1の回路図である。切換スイッチ回路A1は第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92を有する。第1サイリスタ91のアノードは第2サイリスタ92のカソードに接続されている。第1サイリスタ91のカソードは、第2サイリスタ92のアノードに接続されている。第1サイリスタ91のアノード及び第2サイリスタ92のカソード間の接続ノードは第1タップT1に接続されている。第1サイリスタ91のカソード及び第2サイリスタ92のアノード間の接続ノードは第1ノードに接続されている。第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92のゲートは駆動部71に接続されている。
【0041】
駆動部71は、第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92のゲートの電圧を一定のオン電圧に上昇させることによって、切換スイッチ回路A1をオンに切替える。ここで、ゲートの電圧の基準電位は、例えば、交流電源2に直接に接続されている第2接続線の電位である。オン電圧は正値である。切換スイッチ回路A1がオンである場合、第1タップT1から入力された電流は、第1サイリスタ91を介して第1ノードへ流れる。同様の場合において、第1ノードから入力された電流は第2サイリスタ92を介して第1タップT1に流れる。
【0042】
駆動部71は、第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92のゲートの電圧を一定のオフ電圧に低下させることによって、切換スイッチ回路A1をオフに切替える。オフ電圧は、オン電圧未満である。オフ電圧は例えば0[V]である。切換スイッチ回路A1がオフである場合、第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92それぞれを介して電流が流れることはない。
【0043】
切換スイッチ回路A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれは、切換スイッチ回路A1と同様に構成されている。駆動部71は、切換スイッチ回路A1と同様に、切換スイッチ回路A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれをオン又はオフに切替える。
【0044】
なお、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれは、第1サイリスタ91及び第2サイリスタ92の代わりに、トライアックを有してもよい。トライアックは、3つの端子を有し、第1サイリスタ91が第2サイリスタ92によって構成される回路と同様に作用する。
【0045】
以上のように、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれは、一又は複数の半導体素子によって構成される。このため、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれは、例えば、一又は複数のメカリレーによって構成される回路と比較して小型である。従って、切換器7も小型である。
【0046】
切換器7の詳細な動作を説明する。切換器7が動作を停止している場合、図2に示す接続スイッチ回路Eのみがオンである。制御部70は、切換器7を作動させる場合、3つの切換スイッチ回路A1,A2,A3中の1つと、3つの切換スイッチ回路B1,B2,B3中の1つとをオンに切替える。これにより、第1ノード及び第2ノードそれぞれは、第1タップT1、第2タップT2及び第3タップ中の1つに接続される。その後、制御部70は接続スイッチ回路Eをオフに切替える。ここで、第1ノードの接続先が第2ノードの接続先とは異なる場合、第1直列変圧器5の1次巻線51及び第2直列変圧器6の1次巻線61に交流電圧が印加される。これにより、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値が変更される。
【0047】
制御部70は、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中でオンである切換スイッチ回路を変更する場合、接続スイッチ回路Fをオンに切替える。その後、制御部70は、オンである切換スイッチ回路をオフに切替える。接続スイッチ回路Fがオンである場合、1次巻線51,61それぞれについて、電流が一端から抵抗Rを介して他端へ流れる。これにより、1次巻線51,61に蓄えられているエネルギーが消費される。結果、1次巻線51の一端又は他端の電圧の絶対値が異常な値に上昇することが防止される。
【0048】
次に、制御部70は、3つの切換スイッチ回路A1,A2,A3中の1つと、3つの切換スイッチ回路B1,B2,B3中の1つとをオンに切替える。その後、制御部70は、接続スイッチ回路Fをオフに切替える。第1ノードの接続先が第2ノードの接続先と異なる場合、再び、1次巻線51,61それぞれの両端に交流電圧が印加される。これにより、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値が変更される。第1ノードの接続先が第2ノードの接続先と一致している場合、1次巻線51,61それぞれへの交流電圧の印加は停止する。
【0049】
以上のように、制御部70は、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路Fを各別にオン又はオフに切替える。これにより、1次巻線51,61それぞれの両端に印加されている交流電圧の変更と、1次巻線51,61それぞれの両端への交流電圧の印加の停止とが実現される。制御部70は、切換器7の動作を停止させる場合、接続スイッチ回路Eをオンに切替える。その後、制御部70は、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路Fをオフに切替える。なお、制御部70は、切換器7内で過電流が発生した場合も接続スイッチ回路Eをオフに切替える。
【0050】
次に、1次巻線51,61それぞれの両端に印加する交流電圧と、2次巻線52,62から分路巻線40に出力する交流電圧との関係を説明する。図4は、交流電圧の実効値を低下させる方法の説明図である。図4において、破線の矢印は電流の向きを示し、プラス及びマイナスは極性を示す。切換スイッチ回路A1,B3がオンである場合、第1直列変圧器5の2次巻線52及び第2直列変圧器6の2次巻線62は、交流電源2から入力された交流電圧の実効値を低下させる。
【0051】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が正である場合、第1直列変圧器5の2次巻線52では、電流は、交流電源2側から分路巻線40側へ流れる。一方で、電流は切換スイッチ回路A1及び第1ノードの順に流れ、1次巻線51では、電流は第1ノード側(左側)から第2ノード側(右側)へ流れる。第1直列変圧器5について、2次巻線52の極性は交流電源2側であり、1次巻線51の極性は第1ノード側である。従って、2次巻線52は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を低下させる。結果、2次巻線52は、交流電源2のプラス側の一端の電位を低下させる。
【0052】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が正である場合、第2直列変圧器6の2次巻線62では、電流は、分路巻線40側から交流電源2側へ流れる。一方で、電流は切換スイッチ回路A1及び第1ノードの順に流れ、1次巻線61では、電流は第1ノード(左側)から第2ノード(右側)へ流れる。第2直列変圧器6について、2次巻線62の極性は分路巻線40側であり、1次巻線61の極性は第1ノード側である。従って、2次巻線62は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を上昇させる。従って、2次巻線62は、交流電源2のマイナス側の一端の電位を上昇させる。
【0053】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が負である場合、図4において、電流の向きは反転し、プラスの極性はマイナスの極性に反転し、マイナスの極性はプラスの極性に反転する。従って、第1直列変圧器5の2次巻線52では、電流は、分路巻線40側から交流電源2側へ流れる。一方で、1次巻線51では、第2ノード側(右側)から第1ノード側(左側)へ流れる。結果、2次巻線52は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を上昇させる。従って、2次巻線52は、交流電源2のマイナス側の一端の電位を上昇させる。
【0054】
また、交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が負である場合、第2直列変圧器6の2次巻線62では、電流は、交流電源2側から分路巻線40側へ流れる。一方で、1次巻線61では、第2ノード(右側)から第1ノード(左側)へ流れる。従って、2次巻線62は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を低下させる。結果、2次巻線62は、交流電源2のプラス側の一端の電位を低下させる。
【0055】
以上のことから、切換スイッチ回路A1,B3がオンである場合、交流電源2のプラス側の一端の電位が低下し、交流電源2のマイナス側の一端の電位が上昇する。このため、2次巻線52,62から分路巻線40に出力さされる交流電圧の実効値は低下する。
【0056】
1次巻線51,61及び2次巻線52,62それぞれを介して流れる電流に関して、切換スイッチ回路A1,B2がオンである場合の電流の向きは、切換スイッチ回路A1,B3がオンである場合の電流の向きと同じである。更に、切換スイッチ回路A2,B3がオンである場合の電流の向きは、切換スイッチ回路A1,B3がオンである場合の電流の向きと同じである。従って、切換スイッチ回路A1,B2又は切換スイッチ回路A2,B3がオンである場合、2次巻線52,62から分路巻線40に出力さされる交流電圧の実効値は低下する。
【0057】
第1直列変圧器5の1次巻線51及び2次巻線52の巻数比は、第2直列変圧器6の1次巻線61及び2次巻線62の巻数比と同じである。なお、2つの巻数比は実質的に同一であればよい。2つの巻数比の差が設計上の誤差の範囲内である場合、2つの巻数比は同一である。
【0058】
(1次巻線51の巻数)/(2次巻線52の巻数)、即ち、(1次巻線61の巻数)/(2次巻線62の巻数)をkで表す。切換器7が1次巻線51,61それぞれの両端に印加する共通の交流電圧の実効値をYで表す。この場合、2次巻線52,62それぞれが低下させる実効値の幅はY/kで表される。例えば、実効値Yが420[V]であり、かつ、巻数比kが56である場合、1次巻線51,61それぞれが低下させる実効値の幅は7.5[V]である。実効値Yは、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中でオンである切換スイッチ回路を変更することによって変更される。
【0059】
図5は、交流電圧の実効値を上昇させる方法の説明図である。図5において、破線の矢印は電流の向きを示し、プラス及びマイナスは極性を示す。切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、第1直列変圧器5の2次巻線52及び第2直列変圧器6の2次巻線62は、交流電源2から入力された交流電圧の実効値を上昇させる。
【0060】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が正である場合、第1直列変圧器5の2次巻線52では、電流は、交流電源2側から分路巻線40側へ流れる。一方で、電流は切換スイッチ回路B1及び第2ノードの順に流れ、1次巻線51では、電流は第2ノード側(右側)から第2ノード側(左側)へ流れる。従って、2次巻線52は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を上昇させる。結果、2次巻線52は、交流電源2のプラス側の一端の電位を上昇させる。
【0061】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が正である場合、第2直列変圧器6の2次巻線62では、電流は、分路巻線40側から交流電源2側へ流れる。一方で、電流は切換スイッチ回路B1及び第2ノードの順に流れ、1次巻線61では、電流は第2ノード側(右側)から第1ノード側(左側)へ流れる。従って、2次巻線62は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を低下させる。結果、2次巻線62は、交流電源2のマイナス側の一端の電位を低下させる。
【0062】
交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が負である場合、図5において、電流の向きは反転し、プラスの極性はマイナスの極性に反転し、マイナスの極性はプラスの極性に反転する。従って、第1直列変圧器5の2次巻線52では、電流は、分路巻線40側から交流電源2側へ流れる。一方で、1次巻線51では、第1ノード側(左側)から第2ノード側(右側)へ流れる。結果、2次巻線52は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を低下させる。従って、2次巻線52は、交流電源2のマイナス側の一端の電位を低下させる。
【0063】
また、交流電源2が出力している交流電圧について、基準電位が第2接続線G2の電位である第1接続線G1の電圧が負である場合、第2直列変圧器6の2次巻線62では、電流は、交流電源2側から分路巻線40側へ流れる。一方で、1次巻線61では、第1ノード(左側)から第2ノード(右側)へ流れる。従って、2次巻線62は、交流電源2側の一端の電位を基準として、分路巻線40側の一端の電位を上昇させる。結果、2次巻線62は、交流電源2のプラス側の一端の電位を上昇させる。
【0064】
以上のことから、切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、交流電源2のプラス側の電位が上昇し、交流電源2のマイナス側の電位が低下する。このため、2次巻線52,62から分路巻線40に出力さされる交流電圧の実効値は上昇する。
【0065】
1次巻線51,61及び2次巻線52,62それぞれを介して流れる電流に関して、切換スイッチ回路A2,B1がオンである場合の電流の向きは、切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合の電流の向きと同じである。更に、切換スイッチ回路A3,B2がオンである場合の電流の向きは、切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合の電流の向きと同じである。従って、切換スイッチ回路A3,B1又は切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、2次巻線52,62から分路巻線40に出力さされる交流電圧の実効値は上昇する。
【0066】
2次巻線52,62それぞれが上昇させる実効値の幅は、Y/kで表される。例えば、実効値Yが420[V]であり、かつ、巻数比kが56である場合、1次巻線51,61それぞれが上昇させる実効値の幅は7.5[V]である。実効値Yは、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中でオンである切換スイッチ回路を変更することによって変更される。
【0067】
次に、切換器7が出力する交流電圧の実効値について説明する。図6は切換器7の出力電圧の実効値の説明図である。図6では、分路巻線40の両端に印加される電圧を入力電圧と記載している。Xは入力電圧の実効値を示す。切換器7が1次巻線51,61それぞれの両端に印加する交流電圧を出力電圧と記載している。前述したように、出力電圧の実効値はYで表される。また、2次巻線52,62それぞれが上昇又は低下させる実効値の幅はY/kで表される。
【0068】
前述したように、分路巻線40に関して、第1出力線H1の接続点から中性線Qの接続点までの巻数は、第2出力線H2の接続点から中性線Qの接続点までの巻数と同じである。従って、第1出力線H1及び中性線Qを介して第1負荷31に出力する交流電圧の実効値はX/2[V]である。第2出力線H2及び中性線Qを介して第2負荷32に出力する交流電圧の実効値もX/2[V]である。
【0069】
第1直列巻線41及び第2直列巻線42それぞれは、入力電圧の実効値Xを上昇させる。第1直列巻線41及び第2直列巻線42それぞれの巻数は、(分路巻線40の巻数)/2で表される。従って、第1直列巻線41及び第2直列巻線42それぞれが上昇させる実効値の上昇幅はX/2[V]である。従って、単巻線の両端から出力される交流電圧の実効値は2・Xである。「・」は積を表す。
【0070】
分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42を含む単巻線に関して、第1タップT1から第3タップT3までの巻数は(単巻線の巻数)/3で表される。単巻線に関して、第2タップT2から第3タップT3までの巻数は(単巻線の巻数)・2/3で表される。
【0071】
従って、切換スイッチ回路A1,B3又は切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、出力電圧の実効値Yは2・X[V]である。切換スイッチ回路A2,B3又は切換スイッチ回路A3,B2がオンである場合、出力電圧の実効値Yは4・X/3[V]である。切換スイッチ回路A1,B2又は切換スイッチ回路A2,B1がオンである場合、出力電圧の実効値Yは2・X/3[V]である。
【0072】
図7は、第1直列変圧器5及び第2直列変圧器6の電圧調整量の例を示す図表である。電圧調整量は、2次巻線52,62それぞれが上昇又は低下させる実効値の幅を示す。電圧調整量が正である場合、2次巻線52,62それぞれは、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値を上昇させる。電圧調整量が負である場合、2次巻線52,62それぞれは、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値を低下させる。
【0073】
切換スイッチ回路A1,B3、切換スイッチ回路A2,B3又は切換スイッチ回路A1,B2がオンである場合、2次巻線52,62それぞれは、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値を低下させる。切換スイッチ回路A2,B1、切換スイッチ回路A3,B2又は切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、2次巻線52,62それぞれは、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値を上昇させる。
【0074】
切換スイッチ回路A1,B1、切換スイッチ回路A2,B2又は切換スイッチ回路A3,B3がオンである場合、出力電圧の実効値Yは0[V]である。2次巻線52,62それぞれは、交流電源2が出力した交流電圧の実効値を変更することはない。図7では、オン状態の切換スイッチ回路として、切換スイッチ回路A2,B2、及び、切換スイッチ回路A3,B3の記載を省略している。
【0075】
図7には、入力電圧の実効値Xが210[V]であり、かつ、巻数比kが56である場合の電圧調整量が示されている。切換スイッチ回路A1,B3又は切換スイッチ回路A3,B1がオンである場合、出力電圧の実効値Yは420[V]である。このとき、2次巻線52,62それぞれについて、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値の電圧調整量の絶対値は7.5[V]である。全体の電圧調整量の絶対値は15[V]である。
【0076】
切換スイッチ回路A2,B3又は切換スイッチ回路A3,B2がオンである場合、出力電圧の実効値Yは280[V]である。このとき、2次巻線52,62それぞれについて、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値の電圧調整量の絶対値は5[V]である。全体の電圧調整量の絶対値は10[V]である。切換スイッチ回路A1,B2又は切換スイッチ回路A3,B2がオンである場合、出力電圧の実効値Yは140[V]である。このとき、2次巻線52,62それぞれについて、分路巻線40の両端に印加される交流電圧の実効値の電圧調整量の絶対値は2.5[V]である。全体の電圧調整量の絶対値は5[V]である。
【0077】
以上のことから、入力電圧の実効値Xが210[V]である場合、2次巻線52,62全体は5[V]間隔で交流電圧の実効値を調整することができる。巻数比kが64である場合において、入力電圧の実効値Xが240[V]であるときも、2次巻線52,62全体は5[V]間隔で交流電圧の実効値を調整することができる。巻数比kが80である場合において、入力電圧の実効値Xが300[V]であるときも、2次巻線52,62全体は5[V]間隔で交流電圧の実効値を調整することができる。
【0078】
切換器7の制御部70には、計測変圧器8の2次巻線82の両端から交流電圧が入力される。制御部70は、計測変圧器8の2次巻線82の両端から入力された交流電圧の実効値に基づいて、分路巻線40の両端から出力されている交流電圧の実効値を算出する。制御部70は、算出した実効値に基づいて、6つの切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中から、オンである切換スイッチ回路を変更する。
【0079】
制御部70は、オンである切換スイッチ回路を変更することによって、分路巻線40の両端に印加されている交流電圧の実効値の上昇及び低下を行うことができる。制御部70は、オンである切換スイッチ回路を変更することによって、実効値の上昇幅及び低下幅を調整することができる。制御部70は、分路巻線40の両端から出力されている交流電圧の実効値が目標値となるように、6つの切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中から、オンである切換スイッチ回路を変更する。
【0080】
電圧出力装置1では、分路巻線40、第1直列巻線41及び第2直列巻線42を含む単巻線の両端及び中途に配置された第1タップT1、第2タップT2及び第3タップT3中の2つから、交流電圧が切換器7を介して1次巻線51,61それぞれの両端に印加される。このため、実効値が大きい交流電圧が、単巻線から切換器7を介して1次巻線51,61それぞれの両端に印加される。交流電圧が伝播する導線の抵抗値は一定であるため、交流電圧の実効値が大きい場合、交流電流の実効値は小さい。従って、切換器7を介して流れる交流電流の実効値は小さい。この場合、切換器を耐電流性能が低い小型の部品によって構成することができる。交流電流に関して、実効値は(振幅値)/√2で表される。単巻線の巻数が多い程、単巻線が出力する交流電圧の実効値は大きいので、切換器7を介して流れる交流電圧の実効値は小さい。
【0081】
また、第1直列変圧器5の1次巻線51及び2次巻線52の巻数比は、第2直列変圧器6の1次巻線61及び2次巻線62の巻数比と同じであるため、第1直列変圧器5の2次巻線52が上昇又は低下させる実効値の幅は、第2直列変圧器6の2次巻線62が上昇又は低下させる実効値の幅と同じである。
【0082】
なお、第1直列巻線41及び第2直列巻線42それぞれの巻数は(分路巻線40の巻数)/2に限定されない。また、第1直列巻線41の巻数は第2直列巻線42の巻数と異なっていてもよい。この場合であっても、単巻線の両端から出力される交流電圧の実効値は、分路巻線40の両端から出力される交流電圧の実効値よりも大きい。このため、切換器7を介して流れる交流電流の実効値は小さい。
【0083】
また、第3タップT3の位置は、第1タップT1から第3タップT3までの巻数が(単巻線の巻数)/3で表される位置に限定されない。ただし、第3タップT3の位置は、第1タップT1から第3タップT3までの巻数が(単巻線の巻数)/2で表される位置とは異なっていることが好ましい。第1タップT1から第3タップT3までの巻数が(単巻線の巻数)/2で表される位置に第3タップT3が配置されている場合、切換器7が出力することができる出力電圧の実効値の数が少ない。
【0084】
切換器7では、制御部70は、分路巻線40の両端から出力される交流電圧の実効値ではなく、交流電源2が出力した交流電圧の実効値に応じて、6つの切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3の中でオンである切換スイッチ回路を変更してもよい。この場合、計測変圧器8の1次巻線81の一端及び他端それぞれは、交流電源2の一端及び他端に接続される。また、交流電圧の実効値を検出する構成は、変圧器を用いた構成に限定されない。
【0085】
単巻線の中途に接続されるタップの数は、1に限定されず、2以上であってもよい。単巻線の中途に接続されるタップの数が増えた場合、切換器7が有する切換スイッチ回路の数も増える。また、切換スイッチ回路A1,A2,A3,B1,B2,B3及び接続スイッチ回路E,Fそれぞれは、一又は複数のメカリレーによって構成されもよい。
【0086】
開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 電圧出力装置、2 交流電源、4 単巻変圧器、5 第1直列変圧器、6 第2直列変圧器、7 切換器、8 計測変圧器、31 第1負荷、32 第2負荷、40 分路巻線、41 第1直列巻線、42 第2直列巻線、51,61,81 1次巻線、52,62,82 2次巻線、70 制御部、71 駆動部、91 第1サイリスタ、92 第2サイリスタ、A1,A2,A3,B1,B2,B3 切換スイッチ回路、E,F 接続スイッチ回路、G1 第1接続線、G2 第2接続線、H1 第1出力線、H2 第2出力線、Q 中性線、R 抵抗、T1 第1タップ、T2 第2タップ、T3 第3タップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7