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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047827
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/06 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
D06F37/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156960
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】西川 智貴
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA02
3B165AA04
3B165AA24
3B165AB23
3B165AB30
3B165AB32
3B165AE01
3B165AE02
3B165AE07
3B165BA08
3B165BA42
3B165BA52
3B165CA01
3B165CB01
3B165CB31
3B165CB33
3B165CB53
3B165CB55
3B165CB59
3B165CB64
3B165CB66
3B165CC02
3B165DW03
3B165DW05
3B165EW01
3B165EW03
3B165EW04
3B165EW05
3B165GA02
3B165GA12
(57)【要約】
【課題】洗い工程における垂直回転水流を安定的に発生できる。
【解決手段】本開示に係る洗濯機は、筐体内に弾性支持された外槽と、外槽の内部で、外槽の底部を通過する回転軸の周りで回転可能に設けられた内槽と、内槽の底部に設けられ、回転軸に沿った軸方向に立ち上がった底面リブと、内槽の筒部に設けられ、筒部の内周面から回転軸に近づく中心方向に立ち上がった周面リブと、を備え、底面リブの高さは、周面リブの高さより大きい。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性支持された外槽と、
前記外槽の内部で、前記外槽の底部を通過する回転軸の周りで回転可能に設けられた内槽と、
前記内槽の底部に設けられ、前記回転軸に沿った軸方向に立ち上がった底面リブと、
前記内槽の筒部に設けられ、前記筒部の内周面から前記回転軸に近づく中心方向に立ち上がった周面リブと、
を備え、
前記底面リブの高さは、前記周面リブの高さより大きい、洗濯機。
【請求項2】
前記底部は、前記外槽と連通する貫通孔を形成するメッシュ部を有し、
前記底面リブの頂点と前記底面リブに隣接した前記メッシュ部の最深部との間の前記軸方向における距離は、前記周面リブの頂点と前記内周面との間の前記中心方向における距離より大きい、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記底面リブにおいて、前記頂点と隣接した前記メッシュ部との間で、前記軸方向に沿って、前記メッシュ部から露出した側面が形成される、請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記メッシュ部の最深部は、前記内槽の外周と、前記回転軸との間に形成される、請求項2または3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記底面リブは、前記回転軸から離れる方向に延びる、請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記外槽に供給する空気を加熱する加熱手段と、
前記外槽と前記加熱手段との間で循環する空気が流れる循環流路と、
前記循環流路において空気の流れを発生させる送風手段と、
をさらに備え、
前記周面リブは、前記周面リブの頂点に対する両側に傾斜面を形成し、
前記傾斜面同士の間には90°以上120°以下の角度が形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記周面リブの前記頂点は、前記傾斜面に対して、前記中心方向に突出した凸部によって形成される、請求項6に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記周面リブの前記頂点は、前記軸方向と平行に延びる、請求項6または7に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記内周面に接続された前記傾斜面のエッジは、前記軸方向と平行に延びる、請求項6から8のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、衣類が収容されるドラムと、ドラムを回転駆動する駆動装置と、ドラム内に給水する給水装置とを備える洗濯機が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された洗濯機において、ドラムの背面部には、放射方向に延び前方に凸となる背面リブが設けられている。また、ドラムの内周面には、ドラムの回転軸方向に平行に延びるバッフルが設けられている。洗い工程において、背面リブ及び内周面のバッフルによって洗濯水が撹拌され、垂直軸周りの回転水流が発生する。
【0004】
垂直回転水流によって、洗濯物をたたき洗いする場合と比較して、充分な洗浄効果を維持しつつ、洗濯物を優しく洗うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-97866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の洗濯機において、回転水流を発生させるためには、浴比を充分に大きくする必要がある。一方で、洗濯処理において、使用する水を節水することが求められている。そのため、外槽に投入される水が少ない場合においても、洗い工程における垂直回転水流を安定的に発生させるといった点で未だ改善の余地がある。
【0007】
したがって、本開示の目的は、上記課題を解決することにあって、洗い工程における垂直回転水流を安定的に発生できる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の洗濯機は、筐体内に弾性支持された外槽と、外槽の内部で、外槽の底部を通過する回転軸の周りで回転可能に設けられた内槽と、内槽の底部に設けられ、回転軸に沿った軸方向に立ち上がった底面リブと、内槽の筒部に設けられ、筒部の内周面から回転軸に近づく中心方向に立ち上がった周面リブと、を備え、底面リブの高さは、周面リブの高さより大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、洗い工程における垂直回転水流を安定的に発生できる洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る実施形態の洗濯機の模式断面図
図2】洗濯機の斜視図
図3】内槽の分解図
図4】底部の斜視図
図5】底面リブの拡大図
図6】底部の断面図
図7】周面リブの斜視図
図8】周面リブの斜視図
図9】内槽の斜視断面図
図10】拡大された内槽の斜視断面図
図11】洗濯機の模式システム図
図12A】洗い工程における内槽の模式図
図12B】洗い工程における内槽の上面図
図13】洗い工程における内槽の模式図
図14】乾燥工程における内槽の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本開示の実施形態に係る洗濯機について説明する。
【0012】
[全体構成]
図1は、本開示に係る実施形態の洗濯機1を示す模式断面図である。図2は、洗濯機1の斜視図である。図2では、便宜上、筐体2を省略している。
【0013】
本実施形態の洗濯機1は、乾燥機能を有する洗濯乾燥機(いわゆるドラム式洗濯機)である。図1に示すよう、洗濯機1は、筐体2と、外槽3と、内槽4と、駆動部5と、ヒートポンプ装置6と、循環流路8と、送風手段9と、給水弁10と、排水弁11と、制御部12と、を備える。
【0014】
<筐体>
図1に示すように、筐体2は、洗濯機1の外観を形成する部材である。筐体2の前面には、開口20と、開口20を覆う開閉自在な扉21とが設けられている。
【0015】
<外槽>
外槽3は、筐体2の内部に設けられ、洗濯水を溜める機能を有する大略円筒状の部材である。外槽3は水槽と称してもよい。外槽3は、筐体2の開口20に面する位置に開口31を有し、ベローズ32によって、筐体2の開口20と密閉されて連結される。外槽3にはさらに複数の開口33、34、35が設けられる。開口33、34は循環流路8に接続される開口であり、開口35は外槽3の水を外部に排水するための排水口である。
【0016】
<内槽>
内槽4は、外槽3の内側において回転軸V0の周りで回転可能に設けられ、衣類等の洗濯物15を収容する大略円筒状の部材である。内槽4は、ドラムと称してもよい。内槽4は、回転軸V0が通過する底部42と、一端が底部42によって閉じられた筒部44と有する。図2に示すように、内槽4の底部42は、多数の貫通孔40が形成されるメッシュ部45と、底面リブ46を備える。筒部44(図1)の内周面には周面リブ47が形成される。内槽4は、筐体2の開口20及び開口31に面した開口41を有する。
【0017】
<駆動部>
図1に戻ると、駆動部5は、内槽4を回転軸V0の周りで回転駆動させる部材である。駆動部5は例えば、内槽4を回転させるモータを有する。
【0018】
<ヒートポンプ装置>
ヒートポンプ装置6は、循環流路8を流れる空気を除湿して加熱するための装置である。ヒートポンプ装置6は、除湿用熱交換器65と加熱用熱交換器66を含んでいる。ヒートポンプ装置6は、筐体2の上部に設けられる。ヒートポンプ装置6は、外槽3からの空気が流入する空気入口60と、除湿して加熱した空気を排出する空気出口61と、を形成する。空気入口60は上流側で外槽3の開口33に接続し、空気出口61は下流側で外槽3の開口34に接続する。
【0019】
<循環流路>
循環流路8は、筐体2の内部に設けられ、外槽3とヒートポンプ装置6の間で空気を循環させる流路である。循環流路8は、外槽3とヒートポンプ装置6とを接続する流路として、第1循環流路81と、第2循環流路82とを備える。第1循環流路81は、外槽3の開口33と空気入口60とを接続する流路である。第2循環流路82は、空気出口61と外槽3の開口34とを接続する流路である。循環流路8は複数の貫通孔40を通じて内槽4にも連通する。
【0020】
<送風手段>
送風手段9は、循環流路8に空気の流れを発生されるファン等の機構である。送風手段9の運転によって、矢印Aで示す方向に沿って、循環流路8を循環する空気の流れが発生する。
【0021】
<給水弁>
給水弁10は、外槽3に水を供給するための弁である。給水弁10は、筐体2の上部に設けられる。
【0022】
<排水弁>
排水弁11は、開閉可能に構成され、開かれると、外槽3に溜められた水を外槽3の開口35を通じて排水するための弁である。排水弁11は、筐体2の下部に設けられる。
【0023】
<制御部>
制御部(図示せず)は、洗濯機1の運転を制御する部材である。制御部は、駆動部5、ヒートポンプ装置6、送風手段9、給水弁10、及び排水弁11等の洗濯機1の構成要素を制御する。制御部は、例えば、プログラムを記憶したメモリ(図示せず)と、CPUなどのプロセッサに対応する処理回路(図示せず)とを備え、プロセッサがプログラムを実行することでこれらの要素として機能してもよい。
【0024】
続いて、内槽4の構成要素について、図3を参照しながら説明する。図3は、内槽4の分解図である。図3に示す軸方向Mは内槽4の回転軸V0に沿う方向であり、中心方向Kは回転軸V0に直交する方向である。軸方向Mにおいて、底部42から開口41に向かう向きを前側M1、開口41から底部42に向かう向きを底側M2とする。また、中心方向Kにおいて、回転軸V0に向かう方向を中心側K1(図4)、回転軸V0から離れる方向を外側K2(図4)とする。
【0025】
内槽4は、底部42と筒部44とを有する。底部42は、筒部44の一方の端部43を閉じるように筒部44に取り付けられる。底部42と筒部44とはあわせて、洗濯物15を収容する空間を画定する。
【0026】
底部42は、軸方向Mに対向して配置される円盤状の部材であり、メッシュ部45と底面リブ46とを有する。メッシュ部45は、複数の貫通孔40を形成し、貫通孔40を通じて空気を外槽3から筒部44に流入させる部材である。また、底面リブ46は、回転軸V0に沿って立ち上がり、メッシュ部45に対して突出した構造である。底面リブ46は、内槽4の回転によって、洗い工程において内槽4の水を撹拌する機能を有する。底面リブ46は回転軸V0の周りで放射状に配置され、隣接する底面リブ46の間にメッシュ部45が配置される。
【0027】
筒部44は、端部43と開口41との間で軸方向Mに沿って延びる筒状の部材である。筒部44の内周面S1には、中心方向Kに貫通した複数の貫通孔44Aが形成される。貫通孔44Aは外槽3に連通し、貫通孔44Aを通じて洗濯水が外槽3から内槽4内に流入する。また、筒部44の内周面S1に形成された周面リブ47は、内周面S1から中心側K1に向かって突出して軸方向Mに沿って延びる構造である。周面リブ47は、内槽4の回転によって、洗い工程において、洗濯物15を引掛けた状態で回転して所定の高さで落とす機能と、内槽4の水を撹拌する機能とを有する。さらに、周面リブ47は、乾燥工程において洗濯物15を引掛けた状態で回転して、洗濯物15を持ち上げる機能を有する。
【0028】
メッシュ部45、底面リブ46及び周面リブ47については、後で詳述する。
【0029】
内槽4は後バランサ48をさらに有する。後バランサ48は、底部42に締結される部材である。後バランサ48は、内部に液体を収容しており、回転する内槽4の振動を抑制する。
【0030】
図4は、底部42の斜視図である。図5は、底面リブ46の拡大図である。図6は、図4に示す想定される最高水面S0に沿った底部42の断面図である。ここで、水面と回転軸V0との関係を明確にする。図1及び図4に示すように、内槽4は水平方向に対して底部42に向かって下方に傾斜されている。そのため、水平方向に延びる水面は回転軸V0に対して傾斜されている。水面は、洗濯機1で選択されるコース内容や洗濯物15の量によって、内槽4の内周面S1(図3)と最高水面S0との間で変動する。
【0031】
図3及び図4に示すように、メッシュ部45は、筒部44の端部43(図3)を含む平面に対して底側M2にくぼんでいる。メッシュ部45の形状によって、メッシュ部45を通過する空気は、速度分布を形成し、外側K2の比較的速い空気に引っ張られ、空気の流れは内周面S1に向かって偏向される。底部42は、回転軸V0の周りで、放射状に配置された複数のメッシュ部45を形成する。
【0032】
図4に示すように、隣接するメッシュ部45の間には、回転軸V0から放射状に延びる底面リブ46が形成される。底面リブ46は、凹んでいるメッシュ部45に対して露出している。具体的には、底面リブ46は、前面51と、前面51の両側に形成される側面52とを有し、前面51及び側面52は、側面52に接したメッシュ部45より前側M1に形成される。前面51は、中心方向Kと平行に延びて、底面リブ46の頂点を形成する。側面52は、前面51から隣接するメッシュ部45まで底側M2に軸方向Mと平行に延びる。そのため、側面52は、内槽4の回転方向Lに直交している。側面52に接したメッシュ部45において、最も底側M2の位置を底面リブ46の最深部とする。
【0033】
図5及び図6に示すように、底面リブ46は、前面51と側面52における最深部との間で高さH1とする。高さH1を有する底面リブ46の部分は、回転軸V0と底部42の外周との間に位置する(図4)。洗い工程において想定している最高水面S0は、内槽4の回転によって底面リブ46が最下点に位置すると、高さH1を有する底面リブ46の部分を通過する。
【0034】
図6に示すように、最高水面S0が当たる底部42の断面において、底面リブ46は高さH1を有する。また、底面リブ46が上下方向Zに延びた状態において、底面リブ46の側面52は最高水面S0に直交している。内槽4が回転方向Lに回転することによって、側面52は水平方向(Y方向)に移動し、内槽4の水は水平方向(Y方向)に押される。
【0035】
図7及び図8は、周面リブ47の斜視図である。
【0036】
図7に示すように、周面リブ47は、互いに近づく2つの傾斜面54と、凸部55とを有する台形部材である。凸部55は、互いに近づいた傾斜面54同士の間に設けられる。互いから離れた傾斜面54のエッジ54Aが内周面S1(図3)に接続され、エッジ54Aは軸方向Mと平行に延びる。そのため、周面リブ47は内周面S1に向かって広がる。
【0037】
2つの傾斜面54の間には角度θが形成される。角度θは90°以上120°以下である。本実施形態において、それぞれの傾斜面54は凸部55に対して50°で一様に傾斜されており、2つの傾斜面54の間に形成される角度θは100°である。また、それぞれの傾斜面54のエッジ54Aは、互いに平行に延びる。そのため、周面リブ47は、傾斜面54の間において内槽4の回転方向に沿った一定の幅W2を有する。
【0038】
凸部55は傾斜面54から離れる方向に突出する。凸部55において、中心方向Kに対向する面は周面リブ47の頂点55Aを形成する。周面リブ47は、内周面S1に接続されたエッジ54Aと頂点55Aとの間で高さH2を有する。本実施形態において、高さH2は、2つの傾斜面54の間において一定である。
【0039】
周面リブ47は、水の出入りのために、複数の貫通孔56をさらに形成する。貫通孔56の形成によって、周面リブ47において、洗濯物15を持ち上げる機能を維持しつつ、水を撹拌する力を弱くすることができる。したがって、周面リブ47が水を過剰に撹拌することを抑制できる。
【0040】
図8に示すように、周面リブ47は内部に空洞57を形成する。このような構造によって、周面リブ47の軽量化を実現できる。周面リブ47の軽量化によって、洗い工程や乾燥工程において内槽4を回転させるために必要な力を小さくすることができる。周面リブ47の空洞57には、支持部58が設けられている。支持部58によって、周面リブ47の強度を維持した状態で、軽量化が実現される。
【0041】
図9及び図10を参照しながら、底面リブ46と周面リブ47との関係について説明する。図9は、内槽4の斜視断面図である。図10は、拡大された内槽4の斜視断面図である。
【0042】
図9に示すように、底面リブ46は周面リブ47に対して底側M2及び中心側K1に配置される。また、周面リブ47の底側M2の端部と底部42との間には、間隔P1が形成される。充分な大きさを有する間隔P1を形成することによって、洗濯物15が間隔P1に入って挟まることを防止できる。
【0043】
底面リブ46は回転軸V0と直交しており、周面リブ47は回転軸V0と平行に形成される。即ち、底面リブ46と周面リブ47とは直交する方向に延びる。
【0044】
また、図10に示すように、底面リブ46の側面52と、周面リブ47の傾斜面54とは、回転方向Lに面する。したがって、内槽4の回転によって、底面リブ46の側面52と周面リブ47の傾斜面54とは、水に力を伝達する。さらに、最高水面S0より低い位置における、即ち水に浸っている底面リブ46の高さH1は、周面リブ47の高さH2より大きい。また、底面リブ46において水に当たる面積は、周面リブ47において水に当たる面積より大きくてもよい。
【0045】
底面リブ46は、高さH1より小さい高さを有する部分を有してもよい。また、底面リブ46部は、高さH2よりも小さい高さを有する部分を有してもよい。
【0046】
[動作]
以上のような構成において、次に洗濯機1の動作の一例について、図11図12A及び図12Bを参照しながら説明する。図11は、洗濯機1の模式システム図である。図12A及び図13は、洗い工程における内槽4の模式図である。図12Bは、洗い工程における内槽4の上面図である。図14は、乾燥工程における内槽4の模式図である。
【0047】
洗濯機1の動作は、洗い工程と、すすぎ工程と、脱水工程と、乾燥工程とを備える。制御部は、各工程を逐次制御する。
【0048】
洗い工程では、内槽4に洗濯物15を入れて、排水弁11(図1)を閉じた状態で、外槽3に所定の水位に達するまで給水を行う。本実施形態において、洗濯物15の重量に対して浴比が13以下となるように外槽3に水が投入される。例えば、1.5kgの洗濯物15に対して、20Lの水が外槽3に投入される。
【0049】
図12Aに示すように、内槽4に洗濯物15及び水が投入された状態で、駆動部5によって内槽4は回転させて洗濯物15の洗い工程を実行する。駆動部5によって筒部44と底部42とが回転すると、底面リブ46の側面52と周面リブ47の傾斜面54とが水に当たる。
【0050】
図13に示すように、底面リブ46及び周面リブ47は、水を回転方向L(図12A)に沿って撹拌する。具体的には、底面リブ46の側面52及び周面リブ47の傾斜面54が回転方向Lに面しているため、側面52は底部42の近くの水を押して、傾斜面54は筒部44全体の水を押して持ち上げる。底面リブ46の高さH1が周面リブ47の高さH2より大きく、内槽4が底側M2に傾斜されているため、底面リブ46により多くの水を当てることができる。そのため、水は周面リブ47から受ける力よりも底面リブ46から受ける力の方が強くなる。即ち、底部42の近くの水は、回転方向Lに沿った力を他の水より強く受ける。筒部44における水が受ける力の差によって、水面に沿った垂直方向において、垂直回転水流R1が生じる。
【0051】
そこで、図12A及び図12Bに示すように、垂直回転水流R1によって、洗濯物15は水に浸った状態で回転することで洗浄される。より具体的には、洗濯物15は内周面S1から離れて、内槽4に広がった状態で水平方向に回転する。周面リブ47の傾斜面54に引っ掛けて、持ち上げて落下させるたたき洗いと比較すると、垂直回転水流R1によって、充分な洗浄力を確保しつつ優しく洗浄することができる。
【0052】
また、底面リブ46及び周面リブ47が回転軸V0に対して対称な構造を有するため、内槽4が反対方向に回転した場合においても、垂直回転水流R1と反対方向に回転する垂直回転水流が生じる。
【0053】
洗い工程後のすすぎ工程でも、洗い工程と同様に外槽3に給水を行い、内槽4を回転させて洗濯物15のすすぎを行う。脱水工程では、排水弁11を開いて筐体2の外部へ洗濯水を排水した後、駆動部5によって、洗濯物15の入った内槽4を高速回転して脱水する。
【0054】
続いて、乾燥工程では、制御部12がヒートポンプ装置6及び送風手段9を運転させて、洗濯物15の乾燥を行う。
【0055】
送風手段9が運転すると、洗濯機1において、空気A0の循環が発生する。内槽4における空気A0は、内槽4を回転させて上下に撹拌させた洗濯物15の隙間を通るときに、洗濯物15から水分を奪う。空気A0は、湿った状態で、外槽3の開口33及び第1循環流路81を通じて、ヒートポンプ装置6に流入する。湿った空気A0は、ヒートポンプ装置6によって除湿及び加熱され、第2循環流路82を通じて、開口34から外槽3及び内槽4に再度流入する。上記の動作を繰り返し、空気A0を循環させ、内槽4の湿った空気A0を乾燥及び加熱して内槽4に戻すことにより、洗濯物15の乾燥が進行される。
【0056】
図14に示すように、乾燥工程において、周面リブ47は、洗濯物15を傾斜面54及び凸部55に引っ掛けて持ち上げる。持ち上げられた洗濯物15は、内槽4の回転によってある高さに到達すると周面リブ47から離れ、空中で空気A0に当たり乾燥する(矢印B参照)。洗濯物15を持ち上げることによって、より多くの空気A0を当てて、洗濯物15を効率よく乾燥できる。傾斜面54の角度θによって、洗濯物15が到達する高さが異なる。角度θが小さいと、洗濯物15は持ち上がり過ぎる。また、乾燥工程において、洗濯物15が到達する高さに関しては、凸部55より角度θが支配的である。
【0057】
洗濯物15の乾燥が進むと、洗濯物15の重量が軽くなる。傾斜面54の角度θが小さい場合、周面リブ47が洗濯物15を過度に持ち上げて、洗濯物15の絡みやねじれが発生し、乾燥後の洗濯物15においてシワが形成される。一方で、洗濯機1においては、傾斜面54の角度θが大きいため、周面リブ47が洗濯物15を過度に持ち上げることを抑制し、洗濯物15の絡みやねじれの発生を抑制できる。したがって、乾燥工程において洗濯物15におけるシワの形成を抑制できる。
【0058】
上記の説明をまとめて、本開示の特徴を述べる。
【0059】
従来の洗濯機は、浴比を充分に大きくすることで垂直回転水流を発生させて、洗濯物を優しく洗うことができる。そのため、洗濯による衣類等への型くずれやダメージを軽減することができる。しかしながら、洗濯処理において、使用する水を節水することが求められている。
【0060】
本発明者らは、洗い工程において外槽3に投入する水を少なくした場合、内槽4の内周面S1に設けられた周面リブ47が垂直回転水流R1の発生を阻害するおそれがあることを見出した。周面リブ47は、内槽4の全体の水を一様に回転方向Lに沿って押すため、垂直方向に沿った渦の形成を抑制する。一方で、周面リブ47は乾燥工程において洗濯物15を適当に持ち上げる機能を有し、効率的に乾燥工程を実行するために有効な構成である。したがって、乾燥工程の効率を向上できるとともに、垂直回転水流R1を発生させる底面リブ46及び周面リブ47の構造が求められている。
【0061】
そこで、本実施形態に係る洗濯機1では、底面リブ46は、回転方向Lに面する側面52を有し、側面52の高さH1は周面リブ47の高さH2より大きい。底面リブ46の側面52によって、底面リブ46により多くの水を当てることができる。そのため、底面リブ46は容易に底部42に近い水を水平方向に押すことができる。また、高さH1、H2の関係によって、底面リブ46が水に加える力は、周面リブ47が水に加える力より大きくなりやすい。そのため、周面リブ47が水を回転方向Lに沿って押して、垂直回転水流R1の発生を阻害することを抑制できる。したがって、洗濯機1では、外槽3に少ない水を投入した場合においても、安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0062】
一方で、洗い工程において、周面リブ47の持ち上げる機能を確保するために、周面リブ47の高さH2を大きくする代わりに、周面リブ47は凸部55を有する。そのため、周面リブ47の高さH2を小さく維持しつつ、洗い工程における洗濯物15に対する周面リブ47の持ち上げる機能を向上できる。
【0063】
乾燥工程においては、周面リブ47の持ち上げる機能を適切に維持し、洗濯物15を過度に持ち上げることを抑制することが求められている。また、乾燥工程においては、凸部55の影響は小さい。本開示では、周面リブ47が凸部55に加えて90°以上の角度θを有する傾斜面54を設けることで、乾燥によって軽くなった洗濯物15の転がりやねじれを抑制できる。上述より、洗い工程において安定的に垂直回転水流R1を発生させるとともに、乾燥工程において洗濯物15におけるシワの形成を抑制できる。
【0064】
[効果]
実施の形態に係る洗濯機1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0065】
上述したように、本実施形態の洗濯機1は、外槽3と、内槽4と、底面リブ46と、周面リブ47とを備える。外槽3は、筐体2内に弾性支持される。内槽4は、外槽3の内部で、外槽3の底部42を通過する回転軸V0の周りで回転可能に設けられる。底面リブ46は、内槽4の底部42に設けられ、回転軸V0に沿った軸方向Mに立ち上がっている。周面リブ47は、内槽4の筒部44に設けられ、筒部44の内周面S1から回転軸V0に近づく中心方向に立ち上がっている底面リブ46の高さH1は、周面リブ47の高さH2より大きい。
【0066】
このような構成によって、底面リブ46が軸方向Mに立ち上がっているため、底面リブ46により多くの水を当てることができる。底面リブ46から水に水平成分を含む力が伝達しやすくなる。また、高さH1が高さH2より大きいため、底面リブ46が水に加える力は、周面リブ47が水に加える力より大きくなりやすい。そのため、周面リブ47が垂直回転水流R1の発生を阻害することを抑制できる。したがって、外槽3に少ない水を投入した場合においても、安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0067】
また、本実施形態の洗濯機1において、底部42は、外槽3と連通する貫通孔40を形成するメッシュ部45を有する。底面リブ46の頂点(前面51)と底面リブ46に隣接したメッシュ部45の最深部との間の軸方向における距離(高さH1)は、周面リブ47の頂点55Aと内周面S1との間の中心方向における距離(高さH2)より大きい。
【0068】
このような構成によって、底面リブ46の前面51とメッシュ部45の最深部との間の底面リブ46の面により多くの水を当てることができる。したがって、さらに安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0069】
また、本実施形態の洗濯機1において、底面リブ46において、前面51と隣接したメッシュ部45との間で、軸方向に沿って、メッシュ部45から露出した側面52が形成される。
【0070】
このような構成によって、側面52がメッシュ部45に覆われている場合と比較して、底面リブ46の側面52により多くの水を直接当てて、水に力をより伝達しやすくなる。したがって、さらに安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0071】
また、本実施形態の洗濯機1において、メッシュ部45の最深部は、内槽4の外周と、回転軸V0との間に形成される。
【0072】
このような構成によって、水面は、内槽4の外周と回転軸V0との間に形成される。メッシュ部45の最深部が水面近傍に位置するように形成されることで、水に力をより伝達しやすくなる。したがって、さらに安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0073】
また、本実施形態の洗濯機1において、底面リブ46は、回転軸V0から離れる方向に延びる。
【0074】
このような構成によって、底面リブ46が延びる方向が回転方向Lと交差しているため、底面リブ46により多くの水を当てることができる。したがって、さらに安定的に垂直回転水流R1を発生させることができる。
【0075】
また、本実施形態の洗濯機1は、加熱手段(ヒートポンプ装置6)と、循環流路8と、送風手段9とをさらに備える。ヒートポンプ装置6は、外槽3に供給する空気を加熱する。循環流路8には、外槽と加熱手段との間で循環する空気が流れる。送風手段9は、循環流路8において空気の流れを発生させる。周面リブ47は、周面リブ47の頂点55Aに対する両側に傾斜面54を形成する。傾斜面54同士の間には90°以上120°以下の角度が形成される。
【0076】
このような構成によって、洗濯機1は、衣類乾燥機能を有する。傾斜面54の角度θが大きいため、乾燥工程において、洗濯物15が周面リブ47から離れなくなり持ち上がり過ぎることを抑制できる。そのため、洗い工程において安定的に垂直回転水流R1を発生させるとともに、乾燥工程において洗濯物15のねじれや絡みを抑制し、シワの形成を抑制できる。
【0077】
また、本実施形態の洗濯機1において、周面リブ47の頂点55Aは、傾斜面54に対して、中心方向に突出した凸部55によって形成される。
【0078】
このような構成によって、洗い工程において、周面リブ47による洗濯物15の持ち上げ機能を維持しつつ、垂直回転水流R1を効果的に発生させることができる。
【0079】
また、本実施形態の洗濯機1において、周面リブ47の頂点55Aは、軸方向と平行に延びる。
【0080】
このような構成によって、周面リブ47の頂点55Aが軸方向に対して傾斜されている場合と比較して、洗濯物15のねじれをさらに抑制し、シワの形成を抑制できる。
【0081】
また、本実施形態の洗濯機1において、内周面S1に接続された傾斜面54のエッジは、軸方向と平行に延びる。
【0082】
このような構成によって、傾斜面54における周面リブ47の軸方向の幅W2が一定である。周面リブ47の幅W2が軸方向に向かって変化する場合と比較して、洗濯物15のねじれをさらに抑制し、シワの形成を抑制できる。
【0083】
なお、本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。洗濯機1が乾燥機能を備えるドラム式洗濯機である場合について説明したが、このような場合に限らない。
【0084】
なお、本実施形態において、傾斜面54は一定の角度で傾斜される例について説明したが、これに限定しない。例えば、傾斜面54は曲面であってもよい。
【0085】
なお、本実施形態において、底面リブ46が軸方向Mに沿って略同一幅を有する例について説明したが、これに限定されない。底面リブ46の幅は、軸方向Mに沿って徐々に増加してもよく、減少してもよい。一方で、底面リブ46の幅が軸方向Mに沿って略同一幅であると、底面リブ46の体積を小さくすることが可能になり、内槽4の容積を大きくすることができる。
【0086】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示の洗濯機は、洗い工程における垂直回転水流を安定的に発生できるため、家庭用の衣類乾燥機、業務用の衣類乾燥機、あるいは任意の種類の洗濯乾燥機(例えば家庭用のドラム式洗濯機)として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 洗濯機
2 筐体
3 外槽
4 内槽
5 駆動部
6 ヒートポンプ装置
8 循環流路
9 送風手段
10 給水弁
11 排水弁
12 制御部
15 洗濯物
34 開口
40 貫通孔
42 底部
44 筒部
46 底面リブ
47 周面リブ
V0 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14