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特開2023-47849活性エネルギー線硬化型組成物および活性エネルギー線硬化型インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047849
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物および活性エネルギー線硬化型インキ
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20230330BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20230330BHJP
【FI】
C08F283/01
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156994
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大川内 啓至郎
(72)【発明者】
【氏名】松島 広典
(72)【発明者】
【氏名】大畑 仁志
【テーマコード(参考)】
4J039
4J127
【Fターム(参考)】
4J039AB08
4J039AD21
4J039AE06
4J039BC27
4J039BC36
4J039BE24
4J039BE27
4J039BE32
4J039EA06
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB281
4J127BC061
4J127BC151
4J127BD131
4J127BE391
4J127BE39X
4J127BE411
4J127BE41Y
4J127BF091
4J127BF09X
4J127BF131
4J127BF13Z
4J127BF141
4J127BF14Z
4J127BF22Z
4J127BG041
4J127BG04Z
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127BG18Z
4J127CB341
4J127CB371
4J127DA19
4J127DA26
4J127DA27
4J127EA12
4J127FA12
(57)【要約】
【課題】貯蔵安定性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物、および、その活性エネルギー線硬化型組成物を含有する活性エネルギー線硬化型インキを提供すること。
【解決手段】
活性エネルギー線硬化型組成物が、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)とを含有する。活性エネルギー線硬化型組成物において、ロジン系樹脂(A)が、金属原子を含有している場合にも、その金属原子は、金属捕捉剤(C)により捕捉される。そのため、金属原子に由来するラジカルの発生が抑制され、活性エネルギー線硬化型組成物の増粘およびゲル化を抑制できる。その結果、活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン系樹脂(A)と、
活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、
金属捕捉剤(C)と
を含有する、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記金属捕捉剤(C)が、リン含有捕捉剤を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む、活性エネルギー線硬化型インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、および、活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化膜を形成する組成物である。活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、インキ分野、塗料分野およびコート剤分野において、広く用いられている。
【0003】
一般に、活性エネルギー線硬化型組成物は、樹脂と、その樹脂を溶解させる活性エネルギー線硬化型モノマーとを含んでいる。活性エネルギー線硬化型組成物としては、例えば、以下の方法で得られる活性エネルギー線硬化型平板印刷インキが、知られている。
【0004】
より具体的には、まず、ガムロジンと無水マレイン酸とをディールスアルダー付加反応させる。次いで、その反応混合物に、テトラヒドロ無水フタル酸および1,4-ジシクロヘキサンジメタノールを添加し、脱水縮合させ、樹脂を得る。次いで、樹脂と、トリメチロールプロパントリアクリレートとを混合し、ワニスを得る。その後、ワニスと顔料とを混合し、活性エネルギー線硬化型平板印刷インキを得る(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-066649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の活性エネルギー線硬化型平板印刷インキは、貯蔵安定性が十分ではない。
【0007】
本発明は、貯蔵安定性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物、および、その活性エネルギー線硬化型組成物を含有する活性エネルギー線硬化型インキである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)とを含有する、活性エネルギー線硬化型組成物を、含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記金属捕捉剤(C)が、リン含有捕捉剤を含む、上記[1]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を、含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む、活性エネルギー線硬化型インキを、含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ロジン系樹脂(A)および活性エネルギー線硬化型モノマー(B)を含み、かつ、金属捕捉剤(C)を含んでいる。そのため、上記の活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。
【0012】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、上記の活性エネルギー線硬化型組成物を含んでいる。そのため、上記の活性エネルギー線硬化型インキは、優れた貯蔵安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)とを含有する。
【0014】
ロジン系樹脂(A)は、原料としてロジン類を用いて得られる樹脂である。すなわち、ロジン系樹脂(A)の原料成分は、ロジン類を含有する。
【0015】
ロジン類としては、例えば、無変性ロジンおよびロジン変性体が挙げられる。
【0016】
無変性ロジンとしては、例えば、天然ロジンが挙げられる。天然ロジンは、主成分として樹脂酸を含有する天然樹脂である。樹脂酸は、樹木由来のカルボキシル基を有する化合物である。樹脂酸としては、例えば、共役二重結合を有する樹脂酸および共役二重結合を有しない樹脂酸が挙げられる。共役二重結合を有する樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸およびレボピマール酸が挙げられる。共役二重結合を有しない樹脂酸としては、例えば、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸およびテトラヒドロアビエチン酸が挙げられる。天然ロジンとして、より具体的には、例えば、トール油ロジン、ガムロジンおよびウッドロジンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0017】
ロジン変性体は、上記した無変性ロジンの変性体である。ロジン変性体としては、例えば、酸変性ロジンおよび安定化処理ロジンが挙げられる。酸変性ロジンは、例えば、上記の無変性ロジンと、公知のα,β-不飽和カルボン酸とを反応させることにより得られる。安定化処理ロジンは、上記した無変性ロジンを安定化処理した変性体である。安定化処理は、上記した共役二重結合を有する樹脂酸の共役二重結合を、低減または消失させる処理である。安定化処理として、より具体的には、水添処理、不均化処理および重合処理が挙げられ、好ましくは、水添処理および不均化処理が挙げられる。すなわち、安定化処理ロジンとしては、例えば、天然ロジンを水添処理した水添ロジン、天然ロジンを不均化処理した不均化ロジン、および、天然ロジンを重合処理した重合ロジンが挙げられる。また、安定化処理ロジンとしては、さらに、重合ロジンの水添処理物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0018】
これらロジン類は、単独使用または2種類以上併用できる。ロジン類として、好ましくは、天然ロジンの単独使用、および、安定化処理ロジンの単独使用が挙げられる。
【0019】
ロジン類は、通常、不可避的不純物として、金属原子を含有する。金属原子としては、例えば、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、および、マグネシウムが挙げられる。ロジン類に対する金属原子の含有割合は、特に制限されず、例えば、0ppmを超過し、1000ppm以下である。
【0020】
ロジン系樹脂(A)としては、ロジン類を原料として使用して得られる樹脂であれば、特に制限されない。ロジン系樹脂(A)として、より具体的には、例えば、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アクリル樹脂およびエポキシ変性ロジン樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ロジン系樹脂(A)として、好ましくは、ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0021】
ロジン変性ポリエステル樹脂は、例えば、ロジン類と、カルボキシ基含有化合物と、水酸基含有化合物との反応生成物である。
【0022】
カルボキシ基含有化合物としては、例えば、多塩基酸および一塩基酸が挙げられる。
【0023】
多塩基酸は、1分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物およびその無水物である。多塩基酸としては、例えば、二塩基酸、三塩基酸および四塩基酸が挙げられる。多塩基酸として、好ましくは、二塩基酸が挙げられる。
【0024】
二塩基酸は、1分子中に2つのカルボキシ基を有する化合物およびその無水物である。二塩基酸としては、例えば、飽和二塩基酸および不飽和二塩基酸が挙げられる。
【0025】
飽和二塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸(鎖状飽和脂肪族二塩基酸)、および、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、および、これらの無水物が挙げられる。飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジ酢酸、1,3-シクロヘキサンジ酢酸、1,4-シクロヘキサンジ酢酸、ヘキサヒドロフタル酸、および、これらの無水物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
不飽和二塩基酸としては、例えば、不飽和脂肪族二塩基酸(鎖状不飽和脂肪族二塩基酸)、不飽和脂環族二塩基酸、および、芳香族二塩基酸が挙げられる。不飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、および、これらの無水物が挙げられる。不飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、および、これらの無水物が挙げられる。芳香族二塩基酸としては、例えば、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、および、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0027】
一塩基酸は、1分子中に1つのカルボキシ基を有する化合物である。一塩基酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸およびトール脂肪酸が挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、メチル安息香酸、パラ-t-ブチル安息香酸、オルトベンゾイル安息香酸、および、ナフトエ酸が挙げられる。さらに、モノカルボン酸としては、例えば、油脂酸が挙げられる。油脂酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸およびパーム核油脂肪酸が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0028】
カルボキシ基含有化合物として、好ましくは、多塩基酸の単独使用、または、多塩基酸と一塩基酸との併用が挙げられる。なお、多塩基酸と一塩基酸との併用割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0029】
水酸基含有化合物としては、例えば、ポリオールおよびモノオールが挙げられる。
【0030】
ポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物である。ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコールおよび4価アルコールが挙げられる。ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0031】
2価アルコールは、1分子中に2つの水酸基を有する化合物である。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシメチルメタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、および、ビスフェノールFが挙げられる。さらに、2価アルコールとしては、これらにアルキレンオキサイドを付加したポリオキシアルキレンジオールが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
3価アルコールは、1分子中に3つの水酸基を有する化合物である。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、および、1,2,5-ヘキサントリオールが挙げられる。さらに、3価アルコールとしては、これらにアルキレンオキサイドを付加したポリオキシアルキレントリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
モノオールは、1分子中に1つの水酸基を有する化合物である。モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、アルケニルアルコール、2-プロペン-1-オール、および、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
水酸基含有化合物として、好ましくは、ポリオールの単独使用、または、ポリオールとモノオールとの併用が挙げられる。なお、ポリオールとモノオールとの併用割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0035】
ロジン類とカルボキシ基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させる方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0036】
例えば、ロジン類として無変性ロジンが用いられる場合には、好ましくは、カルボキシ基含有化合物として、不飽和二塩基酸が用いられる。また、水酸基含有化合物として、ポリオールが用いられる。
【0037】
このような場合、まず、ロジン類と不飽和二塩基酸とを、公知の方法で付加反応させる。付加反応では、例えば、ロジン類の樹脂酸に含まれる共役二重結合と、不飽和二塩基酸の不飽和結合とを、ディールスアルダー反応させる。これにより、ロジン類と不飽和二塩基酸との反応生成物として、カルボキシ基を有するロジン変性体(酸変性ロジン)が得られる。
【0038】
その後、この方法では、カルボキシ基を有するロジン変性体(酸変性ロジン)と、水酸基含有化合物とを、公知の方法で脱水縮合反応させる。これにより、カルボキシ基を有するロジン変性体(酸変性ロジン)と、水酸基含有化合物との反応生成物として、ロジン変性ポリエステル樹脂が得られる。より具体的には、酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂が得られる。
【0039】
酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂の製造において、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0040】
例えば、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、ロジン類が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、ロジン類が、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0041】
また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、カルボキシ基含有化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、カルボキシ基含有化合物が、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0042】
また、例えば、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、水酸基含有化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、水酸基含有化合物が、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0043】
また、例えば、ロジン類として安定化処理ロジンが用いられる場合には、好ましくは、カルボキシ基含有化合物として、不飽和二塩基酸が用いられ、必要により、芳香族モノカルボン酸が併用される。また、好ましくは、水酸基含有化合物として、2価アルコールおよび3価アルコールが用いられる。
【0044】
より具体的には、安定化処理ロジンでは、安定化処理によって、共役二重結合の含有割合が低減されている。そのため、ロジン類として安定化処理ロジンが用いられる場合には、ロジン類と不飽和二塩基酸とのディールスアルダー反応が、低減される。
【0045】
そこで、この方法では、ロジン類と、カルボキシ基含有化合物と、水酸基含有化合物とを、公知の方法で脱水縮合反応させる。より具体的には、ロジン類の樹脂酸に含まれるカルボキシ基、および、カルボキシ基含有化合物に含まれるカルボキシ基と、水酸基含有化合物に含まれる水酸基とを、脱水縮合反応させる。これにより、ロジン類と、カルボキシ基含有化合物と、水酸基含有化合物との反応生成物として、ロジン変性ポリエステル樹脂が得られる。より具体的には、安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂が得られる。
【0046】
安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂の製造において、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0047】
例えば、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、ロジン類が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、ロジン類が、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0048】
また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、カルボキシ基含有化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、カルボキシ基含有化合物が、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0049】
また、例えば、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、水酸基含有化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、ロジン類、カルボキシ基含有化合物および水酸基含有化合物の総量100質量部に対して、水酸基含有化合物が、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0050】
ロジン系樹脂(A)として、好ましくは、ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂および安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0051】
ロジン系樹脂(A)は、単独使用または2種類以上併用することができる。例えば、酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂を単独使用してもよく、安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂を単独使用してもよく、これらを併用してもよい。好ましくは、酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂を単独使用する。また、好ましくは、安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂を単独使用する。
【0052】
ロジン系樹脂(A)において、ロジン類に由来する骨格、カルボキシ基含有化合物に由来する骨格、および、水酸基含有化合物に由来する骨格の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0053】
例えば、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、ロジン類に由来する骨格の含有割合が、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上である。また、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、ロジン類に由来する骨格の含有割合が、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0054】
また、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、カルボキシ基含有化合物に由来する骨格の含有割合が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、カルボキシ基含有化合物に由来する骨格の含有割合が、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0055】
また、例えば、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、水酸基含有化合物に由来する骨格の含有割合が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、ロジン系樹脂(A)の総量に対して、水酸基含有化合物に由来する骨格の含有割合が、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0056】
活性エネルギー線硬化型モノマー(B)は、活性エネルギー線の照射により重合可能な光重合性基を、1つ以上有する化合物である。活性エネルギー線硬化型モノマー(B)として、より具体的には、光重合性官能基含有化合物が挙げられる。光重合性官能基含有化合物としては、例えば、1分子中に1つの光重合性基を有する光重合性単官能化合物、および、1分子中に2つ以上の光重合性基を有する光重合性多官能化合物が挙げられる。
【0057】
光重合性単官能化合物としては、例えば、スチレン類およびモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。スチレン類としては、例えば、スチレン、α?メチルスチレンおよびビニルトルエンが挙げられる。モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-カルビトール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(ECH)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、および、アクリロイルモルフォリンが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示す。
【0058】
光重合性多官能化合物としては、例えば、1分子中に2つの光重合性基を有する光重合性2官能化合物、1分子中に3つの光重合性基を有する光重合性3官能化合物、1分子中に4つの光重合性基を有する光重合性4官能化合物、1分子中に5つの光重合性基を有する光重合性5官能化合物、および、1分子中に6つの光重合性基を有する光重合性6官能化合物が挙げられる。
【0059】
光重合性2官能化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加ジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテルジプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製の商品名「AH-600」)、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製の商品名「AT-600」)、および、これらのアルキレンオキシド変性体が挙げられる。
【0060】
光重合性3官能化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸アルキレンオキシド変性体のトリ(メタ)アクリレート、および、これらのアルキレンオキシド変性体が挙げられる。
【0061】
光重合性4官能化合物としては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、これらのアルキレンオキシド変性体が挙げられる。
【0062】
光重合性5官能化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、これらのアルキレンオキシド変性体が挙げられる。
【0063】
光重合性6官能化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製の商品名「UA-306H」)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、これらのアルキレンオキシド変性体が挙げられる。
【0064】
これら活性エネルギー線硬化型モノマー(B)は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性エネルギー線硬化型モノマー(B)として、好ましくは、光重合性3官能化合物が挙げられ、より好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPT(M)A)が挙げられる。
【0065】
金属捕捉剤(C)は、ロジン類に含まれる金属原子を捕捉可能な化合物である。金属捕捉剤(C)としては、例えば、カルボキシ基含有捕捉剤、アミノカルボキシ基含有捕捉剤、および、リン含有捕捉剤が挙げられる。
【0066】
カルボキシ基含有捕捉剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、オキサル酢酸、および、これらの塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。カルボキシ基含有捕捉剤として、好ましくは、グルコン酸が挙げられる。
【0067】
アミノカルボキシ基含有捕捉剤としては、例えば、トリニトリック酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、N-ヒドロキシエチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン、イミノ二酢酸、トランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、および、これらの塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0068】
リン含有捕捉剤としては、例えば、リン酸基含有捕捉剤およびホスホン酸基含有捕捉剤が挙げられる。リン酸基含有捕捉剤としては、例えば、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、フィチン酸、および、これらの塩が挙げられる。ホスホン酸基含有捕捉剤としては、例えば、ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、および、これらの塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。リン含有捕捉剤として、好ましくは、リン酸基含有捕捉剤およびホスホン酸基含有捕捉剤が挙げられ、より好ましくは、フィチン酸、エチドロン酸、および、これらの塩が挙げられる。
【0069】
金属捕捉剤(C)は、単独使用または2種類以上併用できる。ロジン系樹脂(A)および活性エネルギー線硬化型モノマー(B)に対する相溶性の観点から、金属捕捉剤(C)として、好ましくは、リン含有捕捉剤が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線硬化型組成物は、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)とを、公知の方法で混合することによって得られる。
【0071】
ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との3成分の質量比率は、以下の通りである。
【0072】
すなわち、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、ロジン系樹脂(A)が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、35質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、ロジン系樹脂(A)が、例えば、80質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、45質量部以下である。
【0073】
また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)が、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、55質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)が、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、65質量部以下である。
【0074】
また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、金属捕捉剤(C)が、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)と、金属捕捉剤(C)との総量100質量部に対して、金属捕捉剤(C)が、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以下である。
【0075】
また、例えば、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との2成分の質量比率は、以下の通りである。
【0076】
すなわち、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、ロジン系樹脂(A)が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、35質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、ロジン系樹脂(A)が、例えば、80質量部以下、好ましくは、60質量部以下、より好ましくは、45質量部以下である。
【0077】
また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)が、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、55質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)が、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、65質量部以下である。
【0078】
また、ロジン系樹脂(A)および活性エネルギー線硬化型モノマー(B)に対する、金属捕捉剤(C)の割合は、以下の通りである。
【0079】
すなわち、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、金属捕捉剤(C)が、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上である。また、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)との総量100質量部に対して、金属捕捉剤(C)が、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以下である。
【0080】
活性エネルギー線硬化型組成物は、必要により、公知の添加剤を含有することができる。
【0081】
添加剤としては、例えば、重合禁止剤、充填剤、増粘剤、発泡剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、および、難燃剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。添加剤として、好ましくは、重合禁止剤が挙げられる。
【0082】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキシフェノール、メチルハイドロキノン、2-ターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ターシャリーブチルp-ベンゾキノン、および、フェノチアジンが挙げられる。これら重合禁止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。重合禁止剤として、好ましくは、ハイドロキノンが挙げられる。
【0083】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。添加剤の添加量および添加のタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0084】
そして、このような活性エネルギー線硬化型組成物は、ロジン系樹脂(A)および活性エネルギー線硬化型モノマー(B)を含み、かつ、金属捕捉剤(C)を含んでいる。そのため、上記の活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。
【0085】
より具体的には、通常、活性エネルギー線硬化型組成物が、ロジン系樹脂(A)および活性エネルギー線硬化型モノマー(B)を含む場合、活性エネルギー線硬化型組成物の貯蔵によって、増粘およびゲル化を生じ易くなる。
【0086】
そのメカニズムは、以下の通りと推察される。すなわち、ロジン系樹脂(A)は、原料のロジン類に由来する二重結合を含む。そのため、活性エネルギー線硬化型組成物の貯蔵によって、二重結合が酸化し、過酸化物が生成する場合がある。また、ロジン系樹脂(A)の原料のロジン類は、金属原子(鉄など)を含む場合がある。つまり、ロジン系樹脂(A)が、金属原子を含む場合がある。
【0087】
そのため、ロジン系樹脂(A)の貯蔵によって生成した過酸化物が、金属原子により分解され、その結果、ラジカルが生成する場合がある。そして、ラジカルによって、活性エネルギー線硬化型組成物が重合し、増粘およびゲル化する場合がある。
【0088】
これに対して、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、ロジン系樹脂(A)と、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)とを含有し、さらに、金属捕捉剤(C)を含有する。
【0089】
このような活性エネルギー線硬化型組成物では、ロジン系樹脂(A)が、金属原子を含有している場合にも、その金属原子が、金属捕捉剤(C)により捕捉される。そのため、金属原子に由来するラジカルの発生が抑制され、活性エネルギー線硬化型組成物の重合が抑制される。
【0090】
その結果、活性エネルギー線硬化型組成物の増粘およびゲル化を抑制できる。すなわち、上記の活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。
【0091】
そして、このような活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化膜を形成する。そのため、活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、インキ分野、塗料分野およびコート剤分野において、好適に用いられる。とりわけ、活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線硬化型インキのワニスとして、好適に用いられる。
【0092】
すなわち、活性エネルギー線硬化型インキは、上記の活性エネルギー線硬化型組成物を、含有している。また、活性エネルギー線硬化型インキは、必要により、顔料を含有することができる。
【0093】
顔料としては、特に制限されないが、無機顔料および有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉、および、ベンガラが挙げられる。有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、および、キノフタロン系顔料が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0094】
活性エネルギー線硬化型インキにおいて、顔料の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、顔料の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、顔料の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、250質量部以下、好ましくは、150質量部以下である。
【0095】
また、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物と顔料との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型組成物が、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上である。また、活性エネルギー線硬化型組成物と顔料との総量100質量部に対して、活性エネルギー線硬化型組成物が、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。また、活性エネルギー線硬化型組成物と顔料との総量100質量部に対して、顔料が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、活性エネルギー線硬化型組成物と顔料との総量100質量部に対して、顔料が、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0096】
また、活性エネルギー線硬化型インキは、必要により、さらに、活性エネルギー線硬化型組成物とは別途、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)を含有できる。
【0097】
活性エネルギー線硬化型インキにおいて、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上である。また、活性エネルギー線硬化型モノマー(B)の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、45質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0098】
また、活性エネルギー線硬化型インキは、必要により、さらに、公知の光重合開始剤を含有できる。
【0099】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン、ベンゾフェノン、および、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0100】
活性エネルギー線硬化型インキにおいて、光重合開始剤の含有割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、光重合開始剤の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上である。また、光重合開始剤の含有割合は、活性エネルギー線硬化型組成物の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0101】
また、活性エネルギー線硬化型インキは、必要により、さらに、公知の添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、硬化促進剤、充填剤、増粘剤、発泡剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、および、難燃剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。なお、添加剤の添加量および添加のタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0102】
このような活性エネルギー線硬化型インキは、上記の活性エネルギー線硬化型組成物を含んでいる。そのため、活性エネルギー線硬化型インキは、優れた貯蔵安定性を有する。
【0103】
上記の活性エネルギー線硬化型組成物および活性エネルギー線硬化型インキは、印刷分野において、広範に用いられる。より具体的には、印刷では、活性エネルギー線硬化型組成物、または、活性エネルギー線硬化型インキを、公知の方法により基材に塗布する。
【0104】
基材としては、特に制限されず、例えば、非塗工紙、塗工紙、板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、および、プラスチックシートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0105】
塗布方法としては、特に制限されず、公知の印刷方法が採用される。印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷およびロール印刷が挙げられる。
【0106】
これにより、活性エネルギー線硬化型組成物の塗膜、または、活性エネルギー線硬化型インキの塗膜が得られる。その後、この方法では、得られた塗膜に、活性エネルギー線を照射して、硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線および電子線が挙げられる。
【0107】
紫外線により硬化させる場合には、光源として、紫外線照射装置が挙げられる。紫外線照射装置としては、例えば、キセノンランプ、高圧水銀灯およびメタルハライドランプが挙げられる。照射条件は、必要により適宜調整される。照射条件としては、例えば、紫外線照射量、紫外線照射装置の光量、および、光源の配置が調整される。
【0108】
より具体的には、高圧水銀灯が使用される場合、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物または活性エネルギー線硬化型インキが塗布された基材を、光度80~1000W/cm程度の1灯に対して、搬送速度5~50m/分で搬送する。また、電子線により硬化させる場合には、コーティング剤が塗布された基材を、例えば、10~300kVの加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5~50m/分で搬送する。
【0109】
そして、上記の活性エネルギー線の照射によって、活性エネルギー線硬化型組成物または活性エネルギー線硬化型インキが、架橋および硬化する。その結果、活性エネルギー線硬化型インキの硬化物として、硬化膜が得られる。
【0110】
このように、上記の活性エネルギー線硬化型組成物、および、活性エネルギー線硬化型インキは、公知の印刷方式によって印刷物を得るために、好適に用いられる。
【実施例0111】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0112】
準備例1(酸変性ロジン変性ポリエステル樹脂)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および、温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン54質量部と無水マレイン酸18質量部とを仕込んだ。フラスコに窒素ガスを吹き込みながら、フラスコ内を180℃で1時間加熱し、これらをディールスアルダー反応させた。その後、フラスコに1,4-シクロヘキサンジメタノール28質量部を添加し、250℃で脱水縮合反応させた。これにより、酸変性ロジンにより変性されたポリエステル樹脂を得た。これを、ロジン系樹脂(A1)とした。
【0113】
準備例2(安定化処理ロジン変性ポリエステル樹脂)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および、温度計を備えた4つ口フラスコに、不均化ロジン53質量部と、安息香酸5質量部と、無水マレイン酸5質量部と、テトラヒドロ無水フタル酸18質量部と、プロピレングリコール6質量部と、グリセリン13質量部とを仕込んだ。フラスコに窒素ガスを吹き込みながら、フラスコ内を260℃に加熱し、これらを脱水縮合させた。これにより、安定化処理ロジン(不均化ロジン)により変性されたポリエステル樹脂を得た。これを、ロジン系樹脂(A2)とした。
【0114】
準備例3(ジアリルフタレート樹脂)
ジアリルフタレート樹脂(製品名「ダイソーダップA」、大阪ソーダ社製)を用意した。これを、非ロジン系樹脂(A3)とした。
【0115】
実施例1~4、比較例1~2および参考例1
表1に示される処方に基づいて、活性エネルギー線硬化型インキ用組成物を得た。
【0116】
すなわち、表1に示される処方で、ロジン系樹脂または非ロジン系樹脂と、活性エネルギー線硬化型モノマーと、金属捕捉剤と、ハイドロキノン(重合禁止剤)とを混合し、110℃で加熱溶解させた。これにより、活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0117】
なお、各実施例および各比較例では、活性エネルギー線硬化型モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を使用した。また、各実施例では、金属捕捉剤として、グルコン酸、エチドロン酸およびフィチン酸を使用した。なお、各比較例および参考例では、金属捕捉剤を使用しなかった。
【0118】
<評価>
活性エネルギー線硬化組成物をガラス瓶に入れ、100℃のオーブン中で保管した。また、活性エネルギー線硬化組成物がゲル化するまでの時間を計測した。そして、保存安定性を、以下の基準で評価した。なお、実用性の観点から、3点以上が要求される。
【0119】
5点:100時間以上、ゲル化が観察されなかった。
4点:75時間以上100時間未満で、ゲル化が観察された。
3点:50時間以上75時間未満で、ゲル化が観察された。
2点:25時間以上50時間未満で、ゲル化が観察された。
1点:25時間未満で、ゲル化が観察された。
【0120】
【表1】
【0121】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
HQ:ハイドロキノン