(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047859
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】内視鏡装置、照明方法及び照明制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
A61B1/06 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157011
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 瑞希
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161FF47
4C161NN01
4C161QQ06
4C161QQ07
4C161QQ09
4C161RR05
4C161RR06
4C161RR26
(57)【要約】
【課題】照明の配光分布を制御することでシェーディングの発生を抑制しすることができる。
【解決手段】 内視鏡装置は、光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し、前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部と、 前記2つの入射光路の切り替えに応じて前記照明モードの切り替えを制御する制御部と、備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し、前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、
前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部と、
前記2つの入射光路の切り替えに応じて前記照明モードの切り替えを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記照明部は、前記2つの入射光路のうちの一方の入射光路を通過し前記センサに入射する入射光の入射角と前記センサの入射角特性との差分に応じて前記センサの出力に生じるシェーディングを補正する配光分布が設定された照明モードと、前記2つの入射光路のうちの他方の入射光路を通過し前記センサに入射する入射光の入射角と前記センサの入射角特性との差分に応じて前記センサの出力に生じるシェーディングを補正する配光分布が設定された照明モードでの照明を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記照明部は、主光源と、補助光源とを有し、
前記制御部は、前記補助光源による配光分布を切り替えることで前記照明モードを切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記照明部は、主光源と、異なる配光分布での照明が可能な1つ以上の補助光源とを有し、
前記制御部は、前記1つ以上の補助光源による配光分布を切り替えることで前記照明モードを切り替える、
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記照明部は、主光源と、それぞれ異なる配光分布での照明が可能な複数の補助光源とを有し、
前記制御部は、前記複数の補助光源のうち被写体の照明に用いる補助光源を切り替えることで前記照明モードを切り替える、
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記入射角特性は、前記センサの撮像面の中央付近は該撮像面に対して垂直であり、前記センサの撮像面の端に向かうにつれて前記撮像面に対する傾斜角が小さくなる、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部と、制御部とを備えた内視鏡装置の照明方法において、
制御部が、前記観察部を制御して前記2つの入射光路のうちの一方における光の通過を可能にし、前記照明部を制御して前記光が通過する入射光路に対応する照明モードで被写体を照明する、
照明方法。
【請求項8】
光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し、前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部とを備えた内視鏡装置の照明制御を行うための照明制御プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記観察部を制御して前記2つの入射光路のうちの一方における光の通過を可能にし、前記照明部を制御して前記光が通過する入射光路に対応する照明モードで被写体を照明する、
手順を実行させるための照明制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムに使用される内視鏡装置、照明方法及び照明制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、例えば医療分野、工業分野など、様々な分野において用いられている。このような内視鏡として、被写体を撮像する撮像部を備えたものもある。被写体からの光学像は、挿入部に設けた光学系を経由して撮像部を構成する撮像素子の撮像面に結像する。撮像素子は、入射した光学像を光電変換して撮像信号を得るようになっている。
【0003】
ところで、管腔等の内部を観察する内視鏡では、被写体を照明する光源装置が必要である。光源装置が発生した照明光は、内視鏡の挿入部を挿通したライトガイドを介して撮像部のある先端部から観察対象の被写体に照射される。この照明光の光量は、撮像信号に基づいて生成される内視鏡画像の明るさに応じて、自動調整されるようになっている。なお、特許文献1においては、観察光学系のズーム状態に応じて適切な配光を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つの光学系を有するスイッチングステレオ内視鏡が採用されることがある。スイッチングステレオ内視鏡は、被写体により反射した照明光の戻り光が、2つの光学系(ステレオ光学系)により構成される光路をそれぞれ通過し、時分割に単一の撮像素子に入射されるように構成される。2つの光学系の各光軸は、いずれも撮像素子の撮像面の中心からずれて偏心している。
このため、ステレオ光学系を採用する内視鏡においては、撮像素子の特性と光線入射角とのミスマッチによって、取得した画像にシェーディング(明るさの勾配)が生じるという問題があった。
本発明は、シェーディングの発生を抑制することができる内視鏡装置、照明方法及び照明制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による内視鏡装置は、光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し、前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部と、前記2つの入射光路の切り替えに応じて前記照明モードの切り替えを制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様による照明方法は、光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部と、制御部とを備えた内視鏡装置の照明方法において、制御部が、前記観察部を制御して前記2つの入射光路のうちの一方における光の通過を可能にし、前記照明部を制御して前記光が通過する入射光路に対応する照明モードで被写体を照明する。
【0008】
本発明の一態様による照明制御プログラムは、光軸がセンサの撮像中心に対して偏心状態である2つの光学系による2つの入射光路を有し、前記2つの入射光路を切り替え可能な機構を備えた観察部と、前記2つの入射光路のそれぞれに対応する照明モードでの照明が可能な照明部とを備えた内視鏡装置の照明制御を行うための照明制御プログラムにおいて、コンピュータに、前記観察部を制御して前記2つの入射光路のうちの一方における光の通過を可能にし、前記照明部を制御して前記光が通過する入射光路に対応する照明モードで被写体を照明する、手順を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シェーディングの発生を抑制することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る内視鏡装置の構成を示す構成図。
【
図2】挿入部5の先端部11及び装置本体2の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】観察光学系21及び撮像素子23の概略構成を示す説明図。
【
図4】シェーディングの発生原因を説明するための説明図。
【
図5】横軸に照明強度をとり縦軸に被写体の位置をとって、被写体の各位置における照明強度を示すグラフ。
【
図6】横軸に入射角の差をとり、縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフ。
【
図7】横軸に輝度値をとり縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフ。
【
図8】
図4と同様の記載方法によりLEDユニット26の作用を説明するための説明図。
【
図9】横軸に照明強度をとり縦軸に被写体の位置をとって、被写体の各位置におけるLEDユニット26の照明強度を示すグラフ。
【
図10】横軸に入射角の差をとり、縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフ。
【
図11】横軸に輝度値をとり縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフ。
【
図12】
図8と同様の記載方法により
図8とは異なる入射角特性の例を説明するための説明図。
【
図13】被写体の各位置におけるLEDユニット26の照明強度を示すグラフ。
【
図14】撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフ。
【
図15】撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフ。
【
図16】LEDユニット26の配置の2つの例を示す説明図。
【
図17】
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図。
【
図18】
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図。
【
図19】偏った配光分布を得るためのLEDユニット26の構成例を示す説明図。
【
図20】第1の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【
図21】第1の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【
図22】本発明の第2の実施形態を示すブロック図。
【
図23】LEDユニット51,52のように複数の補助光源を配置する3つの例を示す説明図。
【
図24】
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図。
【
図25】
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図。
【
図26】第2の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【
図27】第2の実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【
図28】本発明の第3の実施形態を示すブロック図。
【
図29】LEDユニット61,62のように複数の補助光源を配置する3つの例を示す説明図。
【
図31】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図32】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図33】
図32に対応するLEDユニットの配置の例を示す説明図。
【
図34】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図35】
図24に対応する光源83a~83cの配置の例を示す説明図。
【
図36】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図38】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図40】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図41】
図40中の楔形プリズム88a,88bを示す斜視図。
【
図42】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図43】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図44】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図46】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図47】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図48】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図49】偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図。
【
図50】上記各実施形態において採用可能なシェーディング補正を示すフローチャート。
【
図51】シェーディング補正を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る内視鏡装置の構成を示す構成図である。本実施形態は被写体を照明する照明光の配光分布を、2つの光学系の光軸と撮像素子の撮像面の視差方向の中心(以下、撮像中心ともいう)からの偏心の状態に応じて調整することにより、シェーディングの発生を抑制することを可能にするものである。例えば、本実施形態においては、主光源の外に、配光分布調整用の補助光源を採用してもよい。
【0013】
図1に示すように、内視鏡装置1は、ビデオプロセッサ等の機能を備えた装置本体2と、装置本体2に接続される内視鏡3とを有して構成されている。装置本体2は、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される、例えば液晶パネル(LCD)等の表示部4を有する。この表示部4には、タッチパネルが設けられていてもよい。
【0014】
内視鏡3は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部としての挿入部5と、挿入部5の基端に連設された操作部6と、操作部6から延出したユニバーサルコード7とを有して構成されている。内視鏡3は、ユニバーサルコード7を介して装置本体2と着脱可能になっている。
【0015】
挿入部5は、先端側から順に、先端部11と、湾曲部12と、長尺な可撓部13とを有して構成されている。湾曲部12は、先端部11の基端に連設され、例えば上下左右方向に湾曲自在に構成されている。可撓部13は、湾曲部12に基端に連設され、可撓性を有する。
【0016】
挿入部5の先端部11には、例えばCMOSイメージセンサ等の撮像素子23(
図2参照)が内蔵されている。撮像素子23は、挿入部5の先端部11に設けられた観察窓に入射した入射光を受光する。
【0017】
操作部6には、湾曲部12を上下左右方向に湾曲させる湾曲ジョイスティック6aが設けられている。ユーザは、湾曲ジョイスティック6aを傾倒操作することで、湾曲部12を所望の方向に湾曲させることができる。また、操作部6には、湾曲ジョイスティック6aの他に、内視鏡機能を指示するボタン類、例えば、フリーズボタン、湾曲ロックボタン、記録指示ボタン等の各種操作ボタンが設けられている。
【0018】
装置本体2の表示部4には、先端部11内に設けられた撮像ユニットの撮像素子23(
図2参照)によって撮像された内視鏡画像が表示される。また、装置本体2の内部には、画像処理や各種制御を行う制御部31(
図2参照)、処理画像を記録媒体(図示せず)に記録する記録装置、等々の各種回路が設けられている。
【0019】
操作部6には、さらに、後述する右眼及び左眼のいずれの画像を取得するかの画像切替ボタン6b1,6b2も設けられている。なお、表示部4にタッチパネルが設けられている構成の場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、内視鏡装置1の種々の操作を指示してもよい。
【0020】
図2は挿入部5の先端部11及び装置本体2の構成の一例を示すブロック図である。また、
図3は観察光学系21及び撮像素子23の概略構成を示す説明図である。
図2及び
図3を用いて、先端部11及び装置本体2の構成について説明する。
【0021】
装置本体2は、制御部31と、撮像素子駆動回路32と、光源装置33と、光源駆動回路34と、光路切替駆動回路35と、LED駆動回路36と、画像処理回路37、表示部4と、操作部38と、メモリ39とを有して構成されている。
【0022】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたプロセッサによって構成されていてもよい。制御部31は、メモリ39に記憶されたプログラムに従って動作して各部を制御するものであってもよいし、ハードウェアの電子回路で機能の一部又は全部を実現するものであってもよい。制御部31は、装置本体2の各部を制御すると共に、内視鏡装置1の全体の動作制御を行う。
【0023】
撮像素子駆動回路32は、撮像素子23を駆動するための各種駆動信号を発生して撮像素子23に供給する。画像処理回路37は、撮像素子23からの撮像信号を受信して、各種画像処理を施して、内視鏡画像信号を生成し、内視鏡画像信号を制御部31に出力する。制御部31は、内視鏡画像信号を表示部4に与えて、表示部4の表示画面上に内視鏡画像を表示する。画像処理回路37は、生成した内視鏡画像信号を、メモリ39に記録するようにしてもよい。
【0024】
主光源を構成する光源装置33は、例えばキセノンランプ、LED、レーザーダイオード等により構成されている。装置本体2、内視鏡3及び先端部11内には、ライトガイド25aが挿通されており、光源装置33は、ライトガイド25aの基端面に対向して配置されている。光源駆動回路34は、制御部31に制御されて、光源装置33を駆動する。光源装置33は、光源駆動回路34による制御によって、ライトガイド25aの基端面に照明光を入射する。ライトガイド25aの基端面に入射された照明光は、先端部11の先端面の照明窓(図示せず)から出射され、被写体に照明光が照射される。なお、光源装置33は、装置本体2に設けられているが、例えば、内視鏡3の操作部6内に設けられていてもよい。
【0025】
装置本体2に設けられた操作部38は、スイッチやボタン等の各種操作装置によって構成されており、制御部31に対するユーザ操作を受け付けて、制御部31に操作信号を出力する。
【0026】
先端部11にはステレオ光学系20、光路切替シャッタ22及び撮像素子23が配設される。これらのステレオ光学系20、光路切替シャッタ22及び撮像素子23により観察部(観察装置)が構成される。これらの先端部11は、着脱可能な光学アダプタ11aを有する。
図3に示すように、ステレオ光学系20は、右及び左の2つの観察光学系である第1の光学系21R及び第2の光学系21L(以下、これらを区別する必要がない場合には観察光学系21という)と、結像光学系22とにより構成される。
【0027】
なお、
図3は先端部11に光学アダプタ11aを装着する例を示しており、光学アダプタ11a内に観察光学系21と結像光学系22の一部を設けた構成にしているが、光学アダプタ11aを省略し、光学アダプタ11a内の構成を先端部11の先端に構成するようになっていてもよい。
【0028】
第1の光学系21Rは、レンズ21aR,21bRにより構成され、第2の光学系21Lは、レンズ21aL,21bLにより構成される。また、結像光学系22は、レンズ22a,22bにより構成される。観察光学系21のレンズ21bR,21bLと結像光学系22のレンズ22aとの間に光路切替シャッタ24が設けられる。
【0029】
第1の光学系21Rのレンズ21aR,21bRと第2の光学系21Lのレンズ21aL,21bLとは、視差方向に互いに離間して配置されている。第1の光学系21Rの光軸と第2の光学系21Lの光軸とは、視差方向に離間し、これらの光軸はいずれも視差方向に直交する方向に延びている。結像光学系22を構成するレンズ22a,22bの光軸は、撮像素子23の撮像面の中心を通り、且つ第1の光学系21Rの光軸と第2の光学系21Lの光軸に平行で、第1の光学系21Rの光軸と第2の光学系21Lの光軸との中間の位置を通過するように構成される。
【0030】
この構成により、被写体を反射した戻り光は、先端部11の先端(光学アダプタ11aの先端)面に設けた図示しない観察窓を通過して、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lに入射する。第1の光学系21Rを通過し撮像素子23の撮像面に至る戻り光の光路(以下、第1の光路ともいう)と、第2の光学系21Lを通過し撮像素子23の撮像面に至る戻り光の光路(以下、第2の光路ともいう)とは、相互に異なり、後述する光路切替シャッタ24により切り替え可能である。第1の光路及び第2の光路を通過した光が、撮像素子23の撮像面に結像する。
【0031】
図2において、撮像素子23は、撮像ケーブル23sを介して装置本体2の撮像素子駆動回路32及び画像処理回路37に接続されている。撮像素子駆動回路32は、撮像素子23を駆動するための各種信号を発生して撮像素子23に与える。撮像素子23は、撮像素子駆動回路32により制御されて、撮像面に結像された光学像を光電変換して撮像信号を得る。この撮像信号は、撮像ケーブル23sを経由して、画像処理回路37に供給される。
【0032】
光路切替シャッタ24は、第1及び第2の光路の絞りを構成する。例えば、光路切替シャッタ24は、第1及び第2の光路の一方の光の通過を阻止する遮断部材及び遮断部材を第1又は第2の光路の一方を閉塞する位置に移動させる移動機構により構成してもよい。例えば、このような移動機構は、コイルと磁石とにより構成し、コイルと磁石による電磁作用によって遮断部材を移動させるように構成されていてもよい。これにより、光路切替シャッタ24は、第1及び第2の光路の一方の光の通過を阻止して、第1の光路を通過した光のみを撮像素子23の撮像面に結像させるか又は第2の光路を通過した光のみを撮像素子23の撮像面に結像させる。
【0033】
例えば、ユーザは、光路切替シャッタ24により光路を切り替える場合、装置本体2に接続されている操作部6を操作する。操作部6には、
図1に示すように、第1の光学系21Rによる右眼画像を取得するために、光路切替シャッタ24により第2の光学系21Lの光の通過を遮断するための右眼画像取得用の画像切替ボタン6b1と、第2の光学系21Lによる左眼画像を取得するために、光路切替シャッタ24により第1の光学系21Rの光の通過を遮断するための左眼画像取得用の画像切替ボタン6b2とが設けられる。
【0034】
ユーザは、右眼画像取得用の画像切替ボタン6b1と左眼画像取得用の画像切替ボタン6b2の所望のいずれ一方を操作する。画像切替ボタン6b1が操作されると、操作部6から制御部31を経由して光路切替駆動回路35に左眼遮断指示信号が出力され、画像切替ボタン6b2が操作されると、操作部6から制御部31を経由して光路切替駆動回路35に右眼遮断指示信号が出力される。なお、光路切替シャッタ24の切り替えは、装置本体2の操作部38や表示部4のタッチパネル等を用いて行ってもよい。光路切替駆動回路35は、左眼遮断指示信号又は右眼遮断指示信号に応じて、信号線24sを経由してLEDユニット26に駆動信号を出力して遮断部材を駆動し、第1の光学系21Rによる第1の光路又は第2の光学系21Lによる第2の光路を遮断する。こうして、撮像素子23の撮像面には、第1の光路又は第2の光路を経由した視差を有する光学像が結像することになる。これにより、内視鏡装置1は、ステレオ計測若しくはステレオ観察内視鏡装置を構成することができる。
【0035】
なお、第1の光学系21R,第2の光学系21Lとして、相互に焦点距離が異なる光学系を採用することにより、ステレオ計測又はステレオ観察以外の用途に内視鏡装置1を用いることができる。即ち、希望する焦点距離の観察光学系を選択することで、異なる焦点距離での観察を可能にするのである。本実施形態はこのような用途に用いる場合にも有効である。
【0036】
ところで、光学アダプタ11aには、ライトガイド25aの出射面に対向する位置に入射面を有し、照明窓に対向して出射面を有する照明光学系25が配設されている。照明光学系25は、ロッドレンズ等のレンズやプリズム等の各種光学素子により構成されており、光源装置33からの照明光を所定の配光分布で被写体に照明する。即ち、主光源による照明光の配光分布は照明光学系25によって規定される。仮に、主光源による照明光のみによって照明を行った場合には、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの光軸のずれに起因して、撮像素子23による撮像画像にシェーディングが生じる。
【0037】
(ステレオ光学系とシェーディングの関係)
図4はシェーディングの発生原因を説明するための説明図である。また、
図5は横軸に照明強度をとり縦軸に被写体の位置をとって、被写体の各位置における照明強度を示すグラフである。また、
図6は横軸に入射角の差をとり、縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフである。また、
図7は横軸に輝度値をとり縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフである。
【0038】
第1の光路41及び第2の光路42は、例えば第1の光学系21R及び光学系21Rにより構成される光路であるものとする。上述したように、第1の光学系21Rと第2の光学系21Lの各光軸は視差方向(
図4の紙面上下方向)に所定の距離離間して配置される。被写体43により反射した光は、第1の光路41又は第2の光路42を通過し、撮像素子23を構成する撮像面44上に入射する。
【0039】
いま、主光源である光源装置33からの照明光を出射する照明光学系25により、被写体43が略一様な光量で照明されるものとする。被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過して撮像素子23の撮像面44に入射する例を説明する。
図4の実線は、被写体43上の各点A’,B’,C’からの光が撮像面44上の点A,B,Cに結像することを示している。
【0040】
ところで、一般的に撮像素子には、撮像中心の前方の点光源からの光を受光すると、撮像面周辺において撮像面の中央よりも光量が減少するシェーディングが発生する。そこで、撮像素子によっては、撮像面に入射する光の入射角に応じて、マイクロレンズの配置や増幅特性等を画素位置に応じて変更することで、周辺においても中央と同様の感度での受光を可能にする。このように、撮像面内の位置に拘わらず均一な感度で光を受光可能にするように、撮像面位置毎に設定された光線入射角度の特性を入射角特性という。
【0041】
図4の破線は、このような入射角特性を、入射角特性に基づく入射角を示す光線(以下、入射角特性光線という)により示すものであり、一般的な撮像素子に設定される入射角特性と同様の特性を示している。
図4に示す入射角特性は、例えば、撮像面44の中央では撮像面44に垂直な入射角、撮像面44の周辺では所定の角度の入射角で光が入射された場合に、受光感度が撮像面44内で均一になって最適な撮像を可能にするものである。即ち、撮像面44の全ての位置において入射角特性光線と同じ入射角で光線が入射された場合に、撮像面44の位置に拘わらず一様な感度が得られる。
【0042】
しかしながら、このような入射角特性は、単一の撮像素子に対して観察光学系の光軸が撮像中心から偏心していない場合を想定している。ところが、ステレオ光学系では、視差方向にずれた2つの観察光学系を採用しており、これらの観察光学系の光軸は、撮像素子23の撮像中心からずれて偏心している。この結果、撮像面44の位置A,B,Cにおける入射角特性光線と、撮像面44の位置A,B,Cにおける実際の入射光線との入射角の差は、位置毎に異なる。撮像面44上の各位置において、この入射角の差が大きいほど、受光感度が低下する。位置A,B,Cにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθA,θB,θCとすると、
図4の例では、
図6に示すように、θA<θB<θCとなる。従って、
図5に示すように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合において、撮像素子23により得られる撮像画像45には、
図7に示すように、位置Aに対応する領域が最も明るく、位置Cの領域に向かって徐々に暗くなるシェーディングが生じる。
【0043】
(補助光源)
そこで、本実施形態においては、シェーディングの発生を抑制する補助光源を採用する。
【0044】
図2において、LEDユニット26は補助光源を構成する。照明部(照明装置)を構成するLEDユニット26は、図示しないLED(light emitting diode)及び照明光学系により構成される。LEDユニット26の照明光学系は、レンズやプリズム等の各種光学素子により構成されており、LEDが発生した照明光を所定の配光分布で被写体に照明する。
【0045】
LEDユニット26は、配線26sにより装置本体2内のLED駆動回路36に接続される。LED駆動回路36は、制御部31に制御されて、LEDユニット26を駆動する。これにより、LEDユニット26は、各種照明モードで、照明光を出射することができるようになっている。即ち、LEDユニット26は、出射する照明光の強度が変更可能であると共に、後述するように、所定の配光分布による照明が可能なように構成されている。なお、LEDユニット26は、配光分布が変更可能に構成されていてもよい。
【0046】
次に、このように構成された実施形態の作用について
図8から
図11を参照して説明する。
図8は
図4と同様の記載方法によりLEDユニット26の作用を説明するための説明図である。また、
図9は横軸に照明強度をとり縦軸に被写体の位置をとって、被写体の各位置におけるLEDユニット26の照明強度を示すグラフである。また、
図10は横軸に入射角の差をとり、縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフである。また、
図11は横軸に輝度値をとり縦軸に撮像面44の位置をとって、撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフである。
【0047】
第1の光学系21Rにより構成される第1の光路41と第2の光学系21Lにより構成される第2の光路42とは、各光軸が視差方向(紙面上下方向)に所定の距離離間して配置される。主光源である光源装置33からの照明光を出射する照明光学系25により、被写体43が略一様な光量で照明されるものとする。
【0048】
図8の例では、補助光源であるLEDユニット26は、視差方向には、第1の光路41の光軸と第2の光路42の光軸との間の略中央に配置される。
図8では、LEDユニット26から延びた直線によってLEDユニット26による大まかな照明範囲を示している。LEDユニット26は、被写体43の位置C’に対する光量が最も大きく、位置C’から位置A’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布で照明を行う。
【0049】
いま、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット26により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図8の実線は、被写体43上の各点A’,B’,C’からの光が撮像面44上の点A,B,Cに結像することを示している。
図8の破線は入射角特性光線を示している。
【0050】
上述したように、位置A,B,Cにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθA,θB,θCとすると、
図8の例では、
図10に示すように、θA<θB<θCとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像45には、位置Aに対応する領域が最も明るく、位置Cの領域に向かって徐々に暗くなるシェーディングが生じてしまう。
【0051】
これに対し、本実施形態においては、
図9に示すように、LEDユニット26による被写体43の位置C’,B’,A’における照明強度(光量)をそれぞれLC’,LB’,LA’とすると、LC’>LB’>LA’となる。即ち、LEDユニット26の配光分布は、位置C’において最も照明強度が強く、位置A’に向かって位置C’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、LEDユニット26の配光分布は、撮像面44における位置Cに対応する領域を明るくし、位置Aの領域に向かって位置Cから離れる程徐々に暗くする特性を付与する。これにより、
図11に示すように、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図8に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像45aのシェーディングが解消される。
【0052】
なお、
図8においては、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過する例について説明したが、被写体43からの戻り光が第2の光路42を通過する場合においても、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、シェーディングの発生を抑制できることは明らかである。
【0053】
上記説明では、LEDユニット26は、視差方向には、第1の光路41の光軸と第2の光路42の光軸との間の略中央に配置され、その配光分布は、位置C’において最も照明強度が強く、位置A’に向かって位置C’から離れる程、照明強度は低下するものと説明した。しかし、LEDユニット26の配光分布は、これに限定されるものではなく、撮像素子23の入射角特性に応じて設定されるものであり、所望の配光分布が得られるならば、LEDユニット26を設ける位置等は特に限定されるものではない。
【0054】
(入射角特性の他の例)(真っ直ぐな入射角特性)
図12は
図8と同様の記載方法により
図8とは異なる入射角特性の例を説明するための説明図である。また、
図13から
図15はそれぞれ
図9から
図11と同様の記載方法により、
図12の例を説明するためのグラフである。即ち、
図13は被写体の各位置におけるLEDユニット26の照明強度を示すグラフ、
図14は撮像面44の各位置における入射角特性光線と実際の入射光線との入射角の差を示すグラフ、
図15は撮像面44の各位置における輝度値の変化を示すグラフを示している。
【0055】
図12の例では、補助光源であるLEDユニット26は、視差方向には、第2の光路42から最も離間した第1の光路41の端部に配置される。
図12のLEDユニット26は、被写体43の位置A’に対する光量が最も大きく、位置A’から位置C’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布で照明を行う。
【0056】
いま、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット26により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図12の実線は、被写体43上の各点A’,B’,C’からの光が撮像面44上の点A,B,Cに結像することを示している。
図12の破線は入射角特性光線を示している。即ち、
図12の例は、撮像素子23として、撮像面44の全域で撮像面に垂直な方向から光線が入射された場合に、撮像面44の各位置で均一な受光感度を得られる素子が採用される例を示している。
【0057】
位置A,B,Cにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθA,θB,θCとすると、
図12の例では、
図14に示すように、θA>θB>θCとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像47には、位置Aに対応する領域が最も暗く、位置Cに対応する領域に向かって徐々に明るくなるシェーディングが生じてしまう。
【0058】
これに対し、本実施形態においては、
図13に示すように、LEDユニット26による被写体43の位置A’,B’,C’における照明強度(光量)をそれぞれLA’,LB’,LC’とすると、LA’>LB’>LC’となる。即ち、LEDユニット26の配光分布は、位置A’において最も照明強度が強く、位置C’に向かって位置A’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、
図12の例では、LEDユニット26の配光分布は、撮像面44における位置Aに対応する領域を明るくし、位置Cに対応する領域に向かって位置Aから離れる程徐々に暗くする特性を付与する。これにより、
図15に示すように、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図12に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像47のシェーディングが解消される。
【0059】
なお、
図12においては、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過する例について説明したが、被写体43からの戻り光が第2の光路42を通過する場合においても、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、シェーディングの発生を抑制できることは明らかである。
【0060】
(補助光源の配置位置の例)
図16はLEDユニット26の配置の2つの例を示す説明図である。
【0061】
図16は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、照明光学系25の出射面と、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。
図16の上段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット26を構成する照明光学系26aの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系26aの出射面は、光学アダプタ11aの円周に沿った所定幅の円弧形状を有しており、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線によって線対称な形状を有する。
【0062】
また、
図16の下段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット26を構成する照明光学系26bの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系26bの出射面は、視差方向には、光学系21R,21Lの光軸同士の中間の位置に設けられて、四角形状を有しており、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線によって線対称な形状に構成される。
【0063】
(光路の切り替え)
図17及び
図18はそれぞれ
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図である。
【0064】
図17及び
図18の例では、補助光源であるLEDユニット26は、相互に配光分布が異なる第1及び第2の照明モードでの照明が可能である。例えば、LEDユニット26は、LEDの発光面とこの発光面に対向する照明光学系との位置関係を変更することで、配光分布を変更することが可能である。例えば、照明光学系とLEDの発光面との相対位置を移動させる移動機構を設け、LED駆動回路36によって、この移動機構を駆動することにより、異なる配光分布を得ることが可能である。
【0065】
図17及び
図18の例では、補助光源であるLEDユニット26は、視差方向には、第1の光路41の光軸と第2の光路42の光軸との間の略中央に配置される。
図17の例では、LEDユニット26は、被写体43の位置C’に対する光量が最も大きく、位置C’から位置A’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布を有する第1の照明モードで照明を行う。
【0066】
いま、
図17に示すように、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット26により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図17の実線は、この場合において、被写体43上の各点A’,B’,C’からの光が撮像面44上の点A,B,Cに結像することを示している。
図17の破線は入射角特性光線を示している。
【0067】
位置A,B,Cにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθA,θB,θCとすると、
図17の例では、θA<θB<θCとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像48には、位置Aに対応する領域が最も明るく、位置Cに対応する領域に向かって徐々に暗くなるシェーディングが生じてしまう。
【0068】
これに対し、
図17の例では、LEDユニット26による被写体43の位置A’,B’,C’における照明強度(光量)をそれぞれLA’,LB’,LC’とすると、LA’<LB’<LC’となる。即ち、LEDユニット26の配光分布は、位置C’において最も照明強度が強く、位置A’に向かって位置C’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、
図17の例では、LEDユニット26の配光分布は、撮像面44における位置Aに対応する領域を暗くし、位置Cに対応する領域に向かって位置Aから離れる程徐々に明るくする特性を付与する。これにより、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図17に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像48のシェーディングが解消される。
【0069】
一方、
図18の例では、LEDユニット26は、被写体43の位置D’に対する光量が最も大きく、位置D’から位置F’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布を有する第2の照明モードで照明を行う。いま、
図18に示すように、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット26により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第2の光路42を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図18の実線は、被写体43上の各点D’,E’,F’からの光が撮像面44上の点D,E,Fに結像することを示している。
図18の破線は入射角特性光線を示している。
【0070】
位置D,E,Fにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθD,θE,θFとすると、
図18の例では、θD>θE>θFとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像49には、位置Dに対応する領域が最も暗く、位置Fに対応する領域に向かって徐々に明るくなるシェーディングが生じてしまう。
【0071】
これに対し、
図18の例では、LEDユニット26による被写体43の位置D’,E’,F’における照明強度(光量)をそれぞれLD’,LE’,LF’とすると、LD’>LE’>LF’となる。即ち、LEDユニット26の配光分布は、位置D’において最も照明強度が強く、位置F’に向かって位置D’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、
図18の例では、LEDユニット26の配光分布は、撮像面44における位置Dに対応する領域を明るくし、位置Fに対応する領域に向かって位置Dから離れる程徐々に暗くする特性を付与する。これにより、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図18に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像49のシェーディングが解消される。
【0072】
このように、
図17及び
図18の例では、ステレオ計測やステレオ観察のために、第1の光学系21Rと第2の光学系21Lを切り替えて用いる場合においても、第1の光学系21Rと第2の光学系21Lの切り替えに応じてLEDユニット26の照明モードを第1の照明モードと第2の照明モードに切り替えることによって、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にしてシェーディングの発生を抑制することができる。
【0073】
(偏った配光分布)
このように、LEDユニット26は、視差方向において偏った配光分布を得ることができる。偏った配光分布とは、視差方向には、照明強度が照明範囲の一方から他方に向かって例えば明るい照明から暗い照明に変化する照明強度の分布のことである。例えば、LEDユニット26は、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの各光軸を含む平面に平行な平面上では、各光軸に平行な直線に対して線対称ではない偏った配光分布を形成するものであってもよい。
【0074】
図19は偏った配光分布を得るためのLEDユニット26の構成例を示す説明図である。
図19の上段に示すLEDユニット26は、半球状の出射面26cに対向してプリズム26pを配置した例を示している。出射面26cの底面は、光学系21R,21Lの光軸に直交するように配置される。プリズム26pの作用により偏った配光分布を得ることができる。
【0075】
また、
図19の中段に示すLEDユニット26は、半球状の出射面26cに対向してレンズ26rを配置した例を示している。出射面26cの底面は、光学系21R,21Lの光軸に直交するように配置される。レンズ26rは、光軸が出射面26cの底面の中心からずれて視差方向に偏心している。これにより、
図19の中段のLEDユニット26は、偏った配光分布を得ることができる。
【0076】
また、
図19の下段に示すLEDユニット26は、半球状の出射面26cを、底面に垂直な線を光学系21R,21Lの光軸に対して傾斜させたものである。これにより、
図19の下段のLEDユニット26は、偏った配光分布を得ることができる。
【0077】
次に、このように構成された実施形態の作用について
図20及び
図21を参照して説明する。
図20及び
図21は第1の実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。なお、
図20はユーザが光路切り替え操作を行う場合の例を示しており、
図21はステレオ計測等のために自動的に光路切り替えが行われる場合の例を示している。
【0078】
先ず、ユーザによる光路切り替え操作が行われる場合について説明する。
【0079】
制御部31は、
図20のステップS1において、光路切り替え操作が発生したか否かを判定する。例えば、ユーザによって光路の切り替えのための操作ボタン(図示せず)が操作されるものとする。制御部31は、ユーザの光路切り替え操作を検出すると(S1のYES判定)、ステップS2において、現在の戻り光を入射している光路が第1の光学系21Rによる第1の光路41であるか否かを判定する。制御部31は、現在の光路が第1の光学系21Rによる第1の光路41である場合(S2のYES判定)、即ち、
図17の状態である場合には、光路切替駆動回路35に第2の光学系21Lによる第2の光路42への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第2の照明モードでの照明を指示する。
【0080】
これにより、光路切替駆動回路35は、光路切替シャッタ24により第1の光学系21Rの光路を遮断させる。また、LED駆動回路36は、LEDユニット26の照明モードを第1の照明モードから第2の照明モードに切り替える。これにより、
図18の状態となり、第2の光学系21Lを用いて被写体光学像が取り込まれて、撮像素子23から撮像信号が出力される。画像処理回路37は、撮像素子23からの撮像信号に対して画像処理を施し、撮像画像を表示部4に与えて表示する。こうして、表示部4の表示画面上に内視鏡画像が表示される。この内視鏡画像は、補助光源であるLEDユニット26により、シェーディングの発生が抑制されており、表示部4の表示画面において高画質の画像表示が行われる。
【0081】
一方、ステップS2において、制御部31が現在の光路は第1の光学系21Rによる第1の光路41ではないと判定した場合(S2のNO判定)、即ち、
図18の状態である場合には、制御部31は、光路切替駆動回路35に第1の光学系21Rによる第1の光路41への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第1の照明モードでの照明を指示する。
【0082】
これにより、光路切替駆動回路35は、光路切替シャッタ24により第2の光学系21Lの光路を遮断させる。また、LED駆動回路36は、LEDユニット26の照明モードを第2の照明モードから第1の照明モードに切り替える。これにより、
図17の状態となり、第1の光学系21Rを用いて被写体光学像が取り込まれて、撮像素子23から撮像信号が出力される。画像処理回路37は、撮像素子23からの撮像信号に対して画像処理を施し、撮像画像を表示部4に与えて表示する。こうして、表示部4の表示画面上に内視鏡画像が表示される。この内視鏡画像は、補助光源であるLEDユニット26により、シェーディングの発生が抑制されており、表示部4の表示画面において高画質の画像表示が行われる。
【0083】
次に、自動的な光路切り替えが行われる場合について説明する。
【0084】
制御部31は、
図21のステップS5において、ステレオ計測モードの実行を開始する。制御部31は、ステップS6において、光路切替駆動回路35に第1の光学系21Rによる第1の光路41への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第1の照明モードでの照明を指示する。これにより、
図17の状態となり、第1の光路41を経由して被写体光学像が撮像素子23に結像する。制御部31は、撮像素子23からの撮像信号を取得して撮像画像(第1画像)を得る(ステップS7)。
【0085】
次に、制御部31は、ステップS8において、光路切替駆動回路35に第2の光学系21Lによる第2の光路42への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第2の照明モードでの照明を指示する。これにより、
図18の状態となり、第2の光路42を経由して被写体光学像が撮像素子23に結像する。制御部31は、撮像素子23からの撮像信号を取得して撮像画像(第2画像)を得る(ステップS9)。
【0086】
制御部31は、取得した第1画像及び第2画像を用いて計測を実行する。第1画像及び第2画像は、いずれも補助光源であるLEDユニット26によりシェーディングの発生が抑制されており、高精度の計測結果を得ることができる。
【0087】
なお、ステレオ観察を行う場合には、ステップS6~S9の処理が繰り返されて、第1画像及び第2画像によるステレオ画像が得られる。
【0088】
(第2の実施形態)
図22は本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
図12において
図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態はLEDユニット26に代えて2つのLEDユニット51,52を採用した点が
図2の挿入部の先端部11の構成とて異なる。第1の実施形態においては、1つの補助光源を採用する例について説明したが、本実施形態は複数の補助光源を採用するものである。
【0089】
LEDユニット51,52はそれぞれ補助光源を構成する。なお、
図22は2つの補助光源を採用する例を示しているが、3つ以上の補助光源を採用してもよい。LEDユニット51,52は、LEDユニット26と同様の構成である。LEDユニット51,52は、いずれも図示しないLED及び照明光学系により構成される。LEDユニット51,52の照明光学系は、レンズやプリズム等の各種光学素子により構成されており、LEDが発生した照明光を所定の配光分布で被写体に照明する。
【0090】
LEDユニット51,52は、装置本体2内のLED駆動回路53により駆動される。LED駆動回路53は、制御部31に制御されて、LEDユニット51,52を駆動する。これにより、LEDユニット51,52は、それぞれLED駆動回路53により指定された照明モードで、照明光を出射することができるようになっている。即ち、LEDユニット51,52は、それぞれ出射する照明光の配光分布を、独立して制御されるようになっている。例えば、LED駆動回路53は、LEDユニット51を第1の光路41に対応する第1の照明モードで点灯させ、LEDユニット52を第2の光路42に対応する第2の照明モードで点灯させるように、照明制御を行ってもよい。
【0091】
(補助光源の配置位置の例)
図23はLEDユニット51,52のように複数の補助光源を配置する3つの例を示す説明図である。
【0092】
図23は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、照明光学系25の出射面と、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。
図23の上段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット51を構成する照明光学系27aの出射面と、LEDユニット52を構成する照明光学系27bの出射面とが臨んでいることを示している。照明光学系27a、27bの出射面は、それぞれ第2の光学系21Lの入射面の近傍及び第1の光学系21Rの入射面の近傍の光学アダプタ11a先端面の視差方向の中央側に、互いに視差方向に並んで配置されている。即ち、照明光学系27a,27bは、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0093】
また、
図23の中段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット51,52を構成する照明光学系28a,28bの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系28a、28bの出射面は、それぞれ第1の光学系21Rの入射面の近傍及び第2の光学系21Lの入射面の近傍の光学アダプタ11aの円周近傍に配置されている。即ち、照明光学系28a,28bは、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0094】
また、
図23の下段の例は、
図23の中段に示した照明光学系28a,28bの外に、照明光学系29の出射面が臨んでいることを示している。照明光学系29の出射面は、視差方向には、光学系21R,21Lの光軸同士の中間の位置に設けられて、四角形状を有しており、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線によって線対称な形状に構成される。
【0095】
(光路の切り替え)
図24及び
図25はそれぞれ
図8と同様の記載方法により、光路を切り替える例を説明するための説明図である。
【0096】
図24及び
図25の例では、補助光源であるLEDユニット51,52のうち、LEDユニット51は、第1の光路41に対応した配光分布による第1の照明モードでの照明が可能であり、LEDユニット52は、第2の光路42に対応した配光分布による第2の照明モードでの照明が可能である。即ち、LED駆動回路53により、LEDユニット51は、被写体43の位置C’に対する光量が最も大きく、位置C’から位置A’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布を有する第1の照明モードで照明を行う(
図24)。また、LEDユニット52は、LED駆動回路53に制御されて、被写体43の位置D’に対する光量が最も大きく、位置D’から位置F’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布を有する第2の照明モードで照明を行う(
図25)。
【0097】
いま、
図24に示すように、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット51により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第1の光路41を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図24の実線は、この場合において、被写体43上の各点A’,B’,C’からの光が撮像面44上の点A,B,Cに結像することを示している。
図24の破線は入射角特性光線を示している。
【0098】
位置A,B,Cにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθA,θB,θCとすると、
図24の例では、θA<θB<θCとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像50aには、位置Aに対応する領域が最も明るく、位置Cに対応する領域に向かって徐々に暗くなるシェーディングが生じてしまう。
【0099】
これに対し、
図24の例では、LEDユニット52はオフであり、LEDユニット51が点灯する。LEDユニット51による被写体43の位置A’,B’,C’における照明強度(光量)をそれぞれLA’,LB’,LC’とすると、LA’<LB’<LC’となる。即ち、LEDユニット51の配光分布は、位置C’において最も照明強度が強く、位置A’に向かって位置C’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、
図24の例では、LEDユニット51の配光分布は、撮像面44における位置Aに対応する領域を暗くし、位置Cに対応する領域に向かって位置Aから離れる程徐々に明るくする特性を付与する。これにより、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図24に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像50aのシェーディングが解消される。
【0100】
一方、
図25の例では、LEDユニット51はオフであり、LEDユニット52が点灯する。LEDユニット52は、被写体43の位置D’に対する光量が最も大きく、位置D’から位置F’に向かうにつれて光量が小さくなるような配光分布を有する第2の照明モードで照明を行う。いま、
図25に示すように、主光源を構成する照明光学系25及び補助光源を構成するLEDユニット52により被写体43が照明され、被写体43からの戻り光が第2の光路42を通過して撮像素子23の撮像面44に入射するものとする。
図25の実線は、被写体43上の各点D’,E’,F’からの光が撮像面44上の点D,E,Fに結像することを示している。
図25の破線は入射角特性光線を示している。
【0101】
位置D,E,Fにおける入射角特性光線と入射光線との入射角の差をそれぞれθD,θE,θFとすると、
図25の例では、θD>θE>θFとなる。従って、
図4の例のように、被写体43の各位置から一様な光量の反射光が得られた場合には、撮像素子23により得られる撮像画像50bには、位置Dに対応する領域が最も暗く、位置Fに対応する領域に向かって徐々に明るくなるシェーディングが生じてしまう。
【0102】
これに対し、
図25の例では、LEDユニット52による被写体43の位置D’,E’,F’における照明強度(光量)をそれぞれLD’,LE’,LF’とすると、LD’>LE’>LF’となる。即ち、LEDユニット52の配光分布は、位置D’において最も照明強度が強く、位置F’に向かって位置D’から離れる程、照明強度が低下する特性を有する。つまり、
図25の例では、LEDユニット52の配光分布は、撮像面44における位置Dに対応する領域を明るくし、位置Fに対応する領域に向かって位置Dから離れる程徐々に暗くする特性を付与する。これにより、撮像面44の位置Aから位置Cを含む全域において一様な輝度を得ることができる。即ち、LEDユニット26の配光分布を適宜設定することにより、撮像面44の各位置における感度を撮像面44内で均一にすることが可能である。こうして、
図25に示すように、撮像素子23により得られる撮像画像50bのシェーディングが解消される。
【0103】
次に、このように構成された実施形態の作用について
図26及び
図27を参照して説明する。
図26及び
図27は第2の実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。なお、
図26はユーザが光路切り替え操作を行う場合の例を示しており、
図27はステレオ計測等のために自動的に光路切り替えが行われる場合の例を示している。
【0104】
先ず、ユーザによる光路切り替え操作が行われる場合について説明する。
【0105】
制御部31は、
図26のステップS11において、光路切り替え操作が発生したか否かを判定する。例えば、ユーザによって光路の切り替えのための操作ボタン(図示せず)が操作されるものとする。制御部31は、ユーザの光路切り替え操作を検出すると(S11のYES判定)、ステップS12において、現在の戻り光を入射している光路が第1の光学系21Rによる第1の光路41であるか否かを判定する。制御部31は、現在の光路が第1の光学系21Rによる第1の光路41である場合(S12のYES判定)、即ち、
図24の状態である場合には、光路切替駆動回路35に第2の光学系21Lによる第2の光路42への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第2の照明モードでの照明を指示する。
【0106】
これにより、光路切替駆動回路35は、光路切替シャッタ24により第1の光学系21Rの光路を遮断させる。また、LED駆動回路36は、LEDユニット51を消灯し、LEDユニット52を第2の照明モードで点灯させる。これにより、
図25の状態となり、第2の光学系21Lを用いて被写体光学像が取り込まれて、撮像素子23から撮像信号が出力される。画像処理回路37は、撮像素子23からの撮像信号に対して画像処理を施し、撮像画像を表示部4に与えて表示する。こうして、表示部4の表示画面上に内視鏡画像が表示される。この内視鏡画像は、補助光源であるLEDユニット52により、シェーディングの発生が抑制されており、表示部4の表示画面において高画質の画像表示が行われる。
【0107】
一方、ステップS12において、制御部31が現在の光路は第1の光学系21Rによる第1の光路41ではないと判定した場合(S12のNO判定)、即ち、
図25の状態である場合には、制御部31は、光路切替駆動回路35に第1の光学系21Rによる第1の光路41への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第1の照明モードでの照明を指示する。
【0108】
これにより、光路切替駆動回路35は、光路切替シャッタ24により第2の光学系21Lの光路を遮断させる。また、LED駆動回路36は、LEDユニット52を消灯し、LEDユニット51を第1の照明モードで点灯させる。これにより、
図24の状態となり、第1の光学系21Rを用いて被写体光学像が取り込まれて、撮像素子23から撮像信号が出力される。画像処理回路37は、撮像素子23からの撮像信号に対して画像処理を施し、撮像画像を表示部4に与えて表示する。こうして、表示部4の表示画面上に内視鏡画像が表示される。この内視鏡画像は、補助光源であるLEDユニット51により、シェーディングの発生が抑制されており、表示部4の表示画面において高画質の画像表示が行われる。
【0109】
次に、自動的な光路切り替えが行われる場合について説明する。
【0110】
制御部31は、
図27のステップS15において、ステレオ計測モードの実行を開始する。制御部31は、ステップS16において、光路切替駆動回路35に第1の光学系21Rによる第1の光路41への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第1の照明モードでの照明を指示する。これにより、
図24の状態となり、第1の光路41を経由して被写体光学像が撮像素子23に結像する。制御部31は、撮像素子23からの撮像信号を取得して撮像画像(第1画像)を得る(ステップS17)。
【0111】
次に、制御部31は、ステップS18において、光路切替駆動回路35に第2の光学系21Lによる第2の光路42への切り替えを指示し、LED駆動回路36に第2の照明モードでの照明を指示する。これにより、
図25の状態となり、第2の光路42を経由して被写体光学像が撮像素子23に結像する。制御部31は、撮像素子23からの撮像信号を取得して撮像画像(第2画像)を得る(ステップS19)。
【0112】
制御部31は、取得した第1画像及び第2画像を用いて計測を実行する。第1画像及び第2画像は、いずれも補助光源であるLEDユニット51,52によりシェーディングの発生が抑制されており、高精度の計測結果を得ることができる。
【0113】
なお、ステレオ観察を行う場合には、ステップS16~S19の処理が繰り返されて、第1画像及び第2画像によるステレオ画像が得られる。
【0114】
このように、本実施形態においては、主光源の外に複数の補助光源を用いることで、撮像面44の受光量を面内で均一にすることができ、シェーディングを抑制することができる。
【0115】
(第3の実施形態)
図28は本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
図28において
図22と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態は主光源を省略すると共に、LEDユニット51,52それぞれに代えて、LEDユニット61,62を採用した点が
図22の挿入部の先端部11の構成と異なる。また、本実施形態では、装置本体2から光源装置33及び光源駆動回路34を省略した装置本体2Aを採用する。第1及び第2の実施形態においては、主光源と補助光源を採用する例について説明したが、本実施形態は複数の補助光源を採用するものである。
【0116】
LEDユニット61,62はそれぞれ主光源と補助光源との機能を有する。
図28は2つの光源を採用する例を示しているが、3つ以上の光源を採用してもよい。LEDユニット61,62は、LEDユニット51,52と同様の構成である。LEDユニット61,62は、いずれも図示しないLED及び照明光学系により構成される。LEDユニット61,62の照明光学系は、レンズやプリズム等の各種光学素子により構成されており、LEDが発生した照明光を所定の配光分布で被写体に照明する。
【0117】
LEDユニット61,62は、装置本体2内のLED駆動回路63により駆動される。LED駆動回路63は、制御部31に制御されて、LEDユニット61,62を駆動する。これにより、LEDユニット61,62は、それぞれLED駆動回路63により指定された照明モードで、照明光を出射することができるようになっている。即ち、LEDユニット61,62は、それぞれ出射する照明光の配光分布を、独立して制御されるようになっている。例えば、LED駆動回路63は、第1の光学系21Rの光軸が撮像素子23の撮像中心から偏心していることにより生じるシェーディングを抑制するために必要な偏った配光分布でEDユニット61を点灯させる。また、LED駆動回路63は、第2の光学系21Lの光軸が撮像素子23の撮像中心から偏心していることにより生じるシェーディングを抑制するために必要な偏った配光分布でEDユニット62を点灯させる。
【0118】
(補助光源の配置位置の例)
図29はLEDユニット61,62のように複数の補助光源を配置する3つの例を示す説明図である。
【0119】
図29は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。
図29の上段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット61,62を構成する照明光学系65a,65bの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系65a、65bの出射面は、それぞれ第1の光学系21Rの入射面の近傍及び第2の光学系21Lの入射面の近傍の光学アダプタ11aの円周近傍に配置されている。即ち、照明光学系65a,65bは、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0120】
また、
図29の中段の例は、照明光学系66a,66bの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系66a,66bの出射面は、視差方向には、いずれも光学系21R,21Lの光軸同士の中間の位置に設けられる。照明光学系66a,66bは、四角形状を有しており、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向の直線に線対称な位置に、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線によって線対称な形状に構成される。
【0121】
また、
図19の下段の例は、光学アダプタ11aの先端面に、LEDユニット61,62を構成する照明光学系67a,67bの出射面が臨んでいることを示している。照明光学系67a、67bの出射面は、それぞれ第2の光学系21Lの入射面の近傍及び第1の光学系21Rの入射面の近傍の光学アダプタ11a先端面の視差方向の中央側に、互いに視差方向に並んで配置されている。即ち、照明光学系27a,27bは、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0122】
実施形態においては、例えば、EDユニット61により、主光源を構成する照明光学系25による照明とLEDユニット51による照明とを合わせた照明を可能にし、EDユニット62により、主光源を構成する照明光学系25による照明とLEDユニット52による照明とを合わせた照明を可能にする。
【0123】
従って、第3の実施形態における作用は、第2の実施形態において、照明光学系25及びLEDユニット51による照明に代えてEDユニット61による照明を行い、照明光学系25及びLEDユニット52による照明に代えてEDユニット62による照明を行う点が第2実施形態と異なるのみである。
【0124】
このように、本実施形態においても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
(変形例)
図30は変形例を示すブロック図である。
図30において
図28と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態は主光源を省略すると共に、LEDユニット61,62に代えて、LEDユニット71を採用した点が
図28の挿入部の先端部の構成と異なる。第2の実施形態においては、主光源を省略し2つの補助光源を採用する例について説明したが、本実施形態は1つの補助光源を採用するものである。
【0126】
LEDユニット71は主光源と補助光源との機能を有する。LEDユニット71は、LEDユニット26と同様の構成である。LEDユニット71は、図示しないLED及び照明光学系により構成される。LEDユニット71の照明光学系は、レンズやプリズム等の各種光学素子により構成されており、LEDが発生した照明光を指定された配光分布で被写体に照明する。
【0127】
LEDユニット71は、装置本体2内のLED駆動回路72により駆動される。LED駆動回路72は、制御部31に制御されて、LEDユニット71を駆動する。これにより、LEDユニット71は、LED駆動回路72により指定された照明モードで、照明光を出射することができるようになっている。即ち、LEDユニット71は、出射する照明光の配光分布を、照明モードに応じて制御されるようになっている。例えば、LED駆動回路72は、第1の光学系21Rの光軸が撮像素子23の撮像面44の中心から偏心していることにより生じるシェーディングを抑制するために必要な偏った配光分布でEDユニット71を点灯させる。また、LED駆動回路72は、第2の光学系21Lの光軸が撮像素子23の撮像面44の中心から偏心していることにより生じるシェーディングを抑制するために必要な偏った配光分布でEDユニット71を点灯させる。
【0128】
即ち、実施形態においては、EDユニット71により、LEDユニット61による照明を可能にすると共に、LEDユニット62による照明を可能にする。従って、第3の実施形態における作用は、使用する光路に応じてLEDユニット71の照明モードを切り替える点が第2実施形態と異なるのみである。
【0129】
このように、本実施形態においても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
(偏った配光分布を得る具体的な構成の例)
上記各実施形態の説明では、説明の都合上、上述したシェーディングの問題を回避するために設けられる、偏った配光分布を発生する光源を補助光源とし、シェーディングの問題を考慮していない一般的な光源を主光源として説明したが、このような偏った配光分布を有する照明は、単一の光源によって得ることも可能である。そこで、以後の説明では、主光源及び補助光源の用語を用いずに、偏った配光分布を発生する光源についても単に光源として説明する。
【0131】
図31から
図49は、上記各実施形態における偏った配光分布を得るための光源の構成の例を示す説明図である。なお、
図31、
図32、
図34、
図36、
図38、
図40、
図42、
図44、
図46、
図47及び
図48において、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの光軸に平行な方向を紙面横方向にとっている。また、第1の光学系21Rと第2の光学系21Lとの視差方向を紙面上下方向にとり、第1の光学系21Rが紙面上方向、第2の光学系21Lが紙面下方向に配置されているものとする。以下、これらの各図に示す光源により照明される照明範囲のうち紙面上方側をR(右)側、紙面下方側をL(左)側として説明する。また、各図の配光分布LDは、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの光軸に平行な方向の強度を示している。
【0132】
(例1)
図31の例は2つの光源81a,81bを用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。例えば、
図29の3つの例に示すように、2つの補助光源を採用した場合の例である。
【0133】
図31では、実線矢印によって、光源81aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源81bの照明範囲を示している。
図31の例は、光源81a,81bの光軸を第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの光軸から傾斜させて配置したものである。これにより、光源81aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源81bによる配光分布(図示省略)は、光源81aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。なお、比較的容易に光源81a、81bを構成することが可能である。
【0134】
(例2)
図32の例は4つの光源82a,82b,82c,82dを用いて、偏った配光分布を得る例を示している。
図33は
図32に対応するLEDユニットの配置の例を示す説明図である。
【0135】
図33は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。光源82a~82dの出射面は、互いに隣接して第1の光学系21Rの入射面の近傍及び第2の光学系21Lの入射面の近傍の光学アダプタ11aの円周端部に、視差方向に並んで配置されている。光源82a,82bの出射面と光源82d,82cの出射面とは、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0136】
図32では、矢印線分の太さによって光源82a~82dから放射される照明光の強度を示している。例えば、光源82a,82dは相互に同様の強度で光を出射し、光源82b,82cは光源82a,82dよりも強い強度で光を出射する。また、光源82b,82cは、互いに強度を変更可能であり、
図32の例では光源82bの出射光の強度の方が光源82cの出射光の強度よりも強いことを示している。
【0137】
この場合には、光源82a~82dの配光分布LDは、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源82cの出射光の強度を光源82bの出射光の強度よりも強くした場合には、光源82a~82dによる配光分布(図示省略)は、図示した配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布となる。
【0138】
(例3)
図34の例は、光学アダプタ11aの先端に配置したLEDユニット等の光源83a~83cと、光源装置84aとライトガイド84bを利用した光源83cとにより、偏った配光分布を得る例を示している。
図35は
図24に対応する光源83a~83cの配置の例を示す説明図である。
【0139】
図35は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。光源83a,83dの出射面は、それぞれ第1の光学系21Rの入射面の近傍及び第2の光学系21Lの入射面の近傍の光学アダプタ11aの円周端部に、視差方向に互いに離間して配置されている。また、光源83cは、第1の光学系21Rの入射面及び第2の光学系21Lの入射面の近傍の光学アダプタ11aの円周端部に、視差方向には、光源83a,83bの中間の位置に配置されている。光源83a~83c出射面は、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して相互に線対称に配置される。
【0140】
図34では、実線矢印によって、光源83a,83cの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源83bの照明範囲を示している。
図34では、光源83cは常に照明するのに対し、光源83a,83bは、照明モードに応じて、点灯又は消灯する。
図34の配光分布LDは、実線矢印に示すように、光源83a,83cが点灯し、光源83bが消灯した例を示している。この場合には、光源83a,83bによる配光分布LDは、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源83c,83bを点灯し、光源83aを消灯することにより、図示した配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を得ることができる。
【0141】
なお、
図34の例は、
図23の上段及び中段に示す配置の光源によっても達成することができる。
【0142】
また、光源装置84としてはレーザーダイオード光源を採用してもよい。なお、ライトガイド84bにロッドレンズを付加してもよい。
【0143】
(例4)
図36の例は2つの光源85a,85bとシリンドリカルレンズ86を用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。
図37は
図36中のシリンドリカルレンズ86を示す斜視図である。
【0144】
図37に示すように、シリンドリカルレンズ86は、立方体の一面が円筒面形状に形成されている。
図36に示すように、光源85a,85bを、シリンドリカルレンズ86の円筒面に対向させ、シリンドリカルレンズ86の光軸から視差方向に互いに離間する方向にずらして配置する。
【0145】
図36では、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源85bの照明範囲を示している。シリンドリカルレンズ86の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源85bによる配光分布(図示省略)は、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。
【0146】
なお、シェーディングは、観察系の偏心方向である左右に生じるため、一方向にのみパワーを有するレンズを用いるのが効率的である。また、設計次第で、任意の配光分布を実現できる。
【0147】
(例5)
図38の例は2つの光源85a,85bとフレネルレンズ87を用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。
図39は
図38中のフレネルレンズ87を示す斜視図である。
【0148】
図39に示すように、フレネルレンズ87は、立方体の一面が同心円状の複数の領域に分割された形状を有し、薄型化が可能である。
図38に示すように、光源85a,85bを、フレネルレンズ87の円筒面に対向させ、フレネルレンズ87の光軸から視差方向に互いに離間する方向にずらして配置する。
【0149】
図38では、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源85bの照明範囲を示している。フレネルレンズ87の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源85bによる配光分布(図示省略)は、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。
【0150】
(例6)
図40の例は2つの光源85a,85bと楔形プリズム88a,88bを用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。
図41は
図40中の楔形プリズム88a,88bを示す斜視図である。
【0151】
図41に示すように、楔形プリズム88a,88bは、立方体の一面がこの一面に対向する面に対して傾斜することで、一方の側面が他方の側面に対して狭幅となる楔形形状を有する。
図40に示すように、楔形プリズム88a,88bを幅広の側面同士を対向させ傾斜していない面を視線方向に配置し、楔形プリズム88a,88bの傾斜した面にそれぞれ対向させて光源85a,85bを配置する。
【0152】
図40では、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源85bの照明範囲を示している。楔形プリズム88a,88bの作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源85bによる配光分布(図示省略)は、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。
【0153】
なお、楔形プリズム88a,88bは、加工が容易であるとう利点を有すると共に、分割配置も容易である。
【0154】
(例7)
図42の例は2つの光源85a,85bと負のパワーを有する凹レンズ89を用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。また、
図43は凹レンズ89に代えて採用可能なフレネルレンズ91又はプリズム90a,90bの例を示している。なお、プリズム90a,90bについては、それぞれを
図40と同様に光源85a,85bに対向配置する。
【0155】
図42に示すように、凹レンズ89は、立方体の一面が円筒面形状に切り欠かれた面を有する。
図42に示すように、光源85a,85bを、凹レンズ89の曲面に対向させ、光源85a,85bの光軸と凹レンズ89の光軸とを視差方向に偏心させた状態で配置する。
【0156】
図42では、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源85bの照明範囲を示している。凹レンズ89の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源85bによる配光分布(図示省略)は、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。
【0157】
なお、凹レンズ89に代えて、同様の特性を有するフレネルレンズ91やプリズム90a,90bを採用してもよい。
【0158】
(例8)
図44の例は2つの光源85a,85bと液晶レンズ92を用いて、2つの偏った配光分布を得る例を示している。また、
図45は液晶レンズ92の作用を示す説明図である。
図45の左側は液晶レンズ92に電圧を印加しない状態(電圧V:OFF)を示し、右側は液晶レンズ92に電圧を印加した状態(電圧V:ON)を示している。電圧V:OFFの状態では、光は液晶レンズ92を直線的に進行するのに対し、電圧V:ONの状態では、光は液晶レンズ92による光偏向効果によって、光は偏向して進行する。
【0159】
図44に示すように、光源85a,85bを、液晶レンズ92に対向配置すると共に、光源85a,85bの光軸を液晶レンズ92の中心から偏心させた状態で配置する。
【0160】
図44では、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示し、破線矢印によって、光源85bの照明範囲を示している。液晶レンズ92の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、光源85bによる配光分布(図示省略)は、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布を有する。
【0161】
このように、この例では電気的に配光分布を制御可能である。
【0162】
(例9)
図46の例は光源85aとグラデーションNDフィルタ94を用いて、偏った配光分布を得る例を示している。なお、
図46では、上記各図の光源85bについては省略しているが、光源85bとグラデーションNDフィルタ94とを用いて偏った配光分布が得られることは明らかである。グラデーションNDフィルタ94は、透過率の勾配を有する素子であり、視差方向に透過率が変化するように、光源85aに対向配置する。
【0163】
図46の実線矢印は、光源85aの照明範囲を示している。グラデーションNDフィルタ94の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、上述したように、光源85b及びグラデーションNDフィルタ94を用いることで、光源85bによる配光分布を、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布にすることも可能である。
【0164】
また、グラデーションNDフィルタ94を用いることで、レンズを用いる場合よりも、任意の配光分布のパターンを比較的容易に得ることができる。
【0165】
(例10)
図47の例は光源85aと拡散素子95を用いて、偏った配光分布を得る例を示している。なお、
図47では、上記各図の光源85bについては省略しているが、光源85bと拡散素子95とを用いて偏った配光分布が得られることは明らかである。拡散素子95は、拡散度が異なる素子であり、視差方向に拡散度が変化するように、光源85aに対向配置する。
【0166】
図47に示すように、実線矢印によって、光源85aの照明範囲を示している。拡散素子95の作用により、光源85aの配光分布LD(実線)は、照明範囲のR側において比較的強度が高く、照明範囲のL側に向かうに従って強度が低下する分布となる。なお、上述したように、光源85b及び拡散素子95を用いることで、光源85bによる配光分布を、光源85aによる配光分布LDに対して、視差方向に垂直な直線に線対称な分布にすることも可能である。
【0167】
なお、上記例1~例10においては、光学アダプタ11aに光源となるLEDユニットを配置するものに限らず、光源からの光をライトガイドにより伝送して、レンズを介して出射するようになっていてもよい。
【0168】
図48はこの場合の例を示す説明図である。また、
図49は
図48に対応する光学アダプタ11aの光源出射面の配置の例を示す説明図である。
【0169】
光源96aは、第1の光学系21R用の光源であり、光源96bは、第2の光学系21L用の光源である。光源96a,96bの出射光は、それぞれライトガイド97a,97bによって光学アダプタ11aに導かれる。ライトガイド97a,97bの出射端面は、それぞれレンズ98a,98bに対向し、レンズ98a,98bの中心から視差方向に互いに離間する方向に偏心した位置に配置される。これにより、光源96aによる照明光の配光分布と光源96bによる照明光の配光分布とを偏った配光分布であって、互いに視差方向に垂直な直線に対して線対称な配光分布にすることができる。
【0170】
図49は光学アダプタ11aの先端面を示している。光学アダプタ11aの先端面には、第1の光学系21Rの入射面と第2の光学系21Lの入射面とが臨んでいる。
図49の上段において、レンズ98a,98bの出射面は、光学アダプタ11aの先端面の中心を通り光学系21R,21Lの視差方向に垂直な直線に対して互いに線対称の形状を有する。
【0171】
また、
図49の下段の例は、レンズ98に代えて、ライトガイド97a,97bの各出射面に対向する位置に、上述した分割配置するレンズ99a,99bを有する例を示している。光学アダプタ11aには鉗子口等のチャネル開口99が設けられており、レンズ99a,99bの出射面は、このチャネル開口99を避ける位置に設けられる。
【0172】
(画像処理によりシェーディング補正)
上記各実施形態の説明では、第1の光学系21R及び第2の光学系21Lの光軸と撮像素子23の撮像面44の中心との偏心により生じるシェーディングを偏った配光分布を有する光源を用いることで補正する例について説明した。更に、光源の配光分布制御だけではシェーディングが十分でないことを考慮して、画像処理によるシェーディング補正を実施することも考えられる。
【0173】
図50は上記各実施形態において採用可能なシェーディング補正を示すフローチャートであり、
図51はシェーディング補正を説明するためのグラフである。
図51は横軸に輝度値をとり縦軸に撮像面44の位置をとって、
図4の例において、撮像面44の各位置における輝度値の変化を示している。いま、説明の都合上、
図8に示すようにLEDユニット26による偏った配光分布による照明を行った場合でも、シェーディングを解消できずに、
図51に示す輝度値の変化が生じているものとする。
【0174】
制御部31は、
図50のステップS21において、第1の光路41と第2の光路42のいずれの入射光路が用いられているかを判定する。制御部31は、路切替駆動回路35を制御して光路切替シャッタ24による光路の切り替えを行っており、入射光路については把握している。制御部31は、ステップS21において、撮像素子23の撮像面44上の各画素位置における輝度値(画素値)に対して、補正目標値を設定する。
【0175】
図51の輝度値一定の直線はこの補正目標値を示している。撮像面44上の各画素位置における信号レベルを一定値の補正目標値に設定することで、シェーディング補正が行われる。
【0176】
即ち、制御部31は、画像処理回路37を制御して、各画素位置の輝度値を算出する(ステップS23)。制御部31は、算出した輝度値を補正目標値にするために必要なゲイン値を画素毎に算出する。なお、制御部31は、このゲイン値をメモリ39に記憶させるようになっていてもよい。画像処理回路37は、制御部31が求めたゲイン値を、画像処理において各画素に付与することでシェーディング補正を行う(ステップS24)。
【0177】
このように、
図50のフローを採用することで、光源の配光分布制御と画像処理によるシェーディング補正によって、確実にシェーディングの発生を防止することができる。
【0178】
本発明は、上記各実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0179】
2…装置本体、11…先端部、20…ステレオ光学系、22…光路切替シャッタ、23…撮像素子、24…、25…照明光学系、26…LEDユニット、31…制御部、32…撮像素子駆動回路、33…光源装置、34…光源駆動回路、35…、光路切替駆動回路、36…LED駆動回路、37…画像処理回路。