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特開2023-47875ポリイミド前駆体とポリイミド、ポリイミドフィルムならびに多層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047875
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体とポリイミド、ポリイミドフィルムならびに多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20230330BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230330BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20230330BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
C08G73/10
B32B27/34
B32B15/088
H05K1/03 610N
H05K1/03 670
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157040
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嵩浩
(72)【発明者】
【氏名】大熊 敬介
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100BA02
4F100BA03
4F100GB41
4F100JB16B
4F100JD15
4F100JG05
4F100YY00A
4J043PA06
4J043PC015
4J043PC016
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB03
4J043SB04
4J043TA14
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA172
4J043UB022
4J043UB122
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043XA03
4J043XA16
4J043XB02
4J043XB35
4J043YA06
4J043ZA22
4J043ZA43
4J043ZB11
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、FPCに求められる基本的な特性を損なうことなく、誘電率や誘電正接が小さく、それらの特性が均一に発現される、高周波回路基板に用いることが可能なポリイミド、ポリイミドフィルム、そのポリイミド前駆体を提供することである。
【解決手段】凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミドおよびその前駆体であり、凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルとの反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの反応により得られる構造であることを特徴とするポリイミド前駆体、そのイミド化物であるポリイミド、ポリイミドフィルムにより、上記目的を達成できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミド。
【請求項2】
前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニルとの反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとの反応により得られる構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリイミド。
【請求項3】
前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’-オキシジフタル酸とパラフェニレンジアミンの反応により得られる構造であることを特徴とする請求項2に記載のポリイミド。
【請求項4】
凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミドの前駆体であって、凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニルとの反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとの反応により得られる構造を有することを特徴とするポリイミド前駆体。
【請求項5】
前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’-オキシジフタル酸とパラフェニレンジアミンの反応により得られる構造であることを特徴とする請求項4に記載のポリイミド前駆体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイミドのフィルム状物であるポリイミドフィルムであって、厚さが10~100μmであり、周波数10GHz、温度23℃、湿度50%における誘電正接が0.0050以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイミドのフィルム状物であるポリイミドフィルムであって、厚さが10~100μmであり、当該ポリイミドフィルムの吸水率が1%以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項6または7に記載のポリイミドのフィルムの少なくとも1面に熱可塑性ポリイミド層を積層した多層フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の多層ポリイミドフィルムに金属層を設けたフレキシブル金属張積層体。
【請求項10】
請求項9記載のフレキシブル金属張積層体の金属層に回路を形成してなるフレキシブルプリント基板。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路基板に好適に使用できるポリイミド、ポリイミドフィルムならびに多層フィルム、そのポリイミド前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子基板材料用途で多く利用されている。例えば、ポリイミドフィルムを基板材料とし、少なくとも片面に銅箔を積層したフレキシブル銅張積層板(以下、FCCLともいう)や、さらに回路を作成したフレキシブルプリント基板(以下、FPCともいう)などが製造され、各種電子機器に使用されている。
【0003】
近年、電子機器における情報処理能力の向上を目的として、回路を伝達する電気信号の高周波化が進められている。この電気信号の高周波化に伴い、回路基板に対しては、電気信頼性を保つとともに、回路における電気信号の伝達速度の低下の抑制及び電気信号の損失の抑制が望まれている。高周波化の傾向は進んでおり、今後は、例えば5GHz以上、さらには10GHz以上といった領域においても誘電率および誘電正接の低い材料が求められると考えられる。電子回路における信号の伝播速度は基板材料の誘電率が増加すると低下し、また誘電率と誘電正接が増加すれば誘電損失が増加し、信号の伝送損失も増大する。したがって、基板材料であるポリイミドフィルムの低誘電率化、低誘電正接化、さらにはFPCとした状態での伝送損失が小さいことなどが、電子機器の高性能化にとって重要となる。
【0004】
高周波化に対応したポリイミドフィルムを提供する試みとして、種々の方法が提案されており、例えば、特許文献1には、主に、フレキシブル金属張積層板用絶縁樹脂層の低誘電率化を目的としており、具体的に、90モル%のピロメリット酸二無水物、10モル%の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、100モル%の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから誘導されるポリイミドにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉を含有させた絶縁層が開示されている。
【0005】
特許文献2では、粗面化処理をしていない低粗度の銅箔を用いることで、フレキシブル金属張積層板の誘電率、誘電正接を下げることができると記載されている。
【0006】
また特許文献3には、4層以上に多層化し、機能を付与することで高周波回路基板に好適に使用できる多層ポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2014-526399号公報
【特許文献2】特開2009-246201号公報
【特許文献3】特開2018-126886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるようなポリイミド樹脂へのフッ素樹脂の配合では、フッ素樹脂の均一分散化が難しい場合があり、フィルムの場所により特性がばらつきやすという課題がある。
【0009】
特許文献2には、粗面化処理をしていない低粗度の銅箔を用いることがフレキシブル金属張積層板の低誘電率化、低誘電正接化に有効であることが記載されているが、ポリイミド自体の低誘電化、低誘電正接化については特定の組成の開示があるのみである。
【0010】
特許文献3に記載の多層ポリイミドフィルムは、従来の2または3層のポリイミドフィルム比較して、非常に煩雑な製造工程となり、大幅なコストアップとなる。また、多層化によって、異なる物性の積層体となるために反りやカールなどの課題を引き起こすことが懸念される。
【0011】
本発明の目的は、FPCに求められる基本的な特性を損なうことなく、誘電率や誘電正接が小さく、それらの特性が均一に発現される、高周波回路基板に用いることが可能なポリイミド、ポリイミドフィルムならびに多層フィルム、ポリイミド前駆体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の現状を鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、以下の構成により上記課題を達成しうることを見出した。
【0013】
1).凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミド。
【0014】
2).前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニルとの反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとの反応により得られる構造を有することを特徴とする1)に記載のポリイミド。
【0015】
3).前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’-オキシジフタル酸とパラフェニレンジアミンの反応により得られる構造であることを特徴とする2)に記載のポリイミド。
【0016】
4).凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミドの前駆体であって、凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニルとの反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとの反応により得られる構造を有することを特徴とするポリイミド前駆体。
【0017】
5).前記凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’-オキシジフタル酸とパラフェニレンジアミンの反応により得られる構造であることを特徴とする4)に記載のポリイミド前駆体。
【0018】
6).1)~3)のいずれか一項に記載のポリイミドのフィルム状物であるポリイミドフィルムであって、厚さが10~100μmであり、周波数10GHz、温度23℃、湿度50%における誘電正接が0.0050以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
7).1)~3)のいずれか一項に記載のポリイミドのフィルム状物であるポリイミドフィルムであって、厚さが10~100μmであり、当該ポリイミドフィルムの吸水率が1%以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【0019】
8).6)または7)に記載のポリイミドのフィルムの少なくとも1面に熱可塑性ポリイミド層を積層した多層フィルム。
【0020】
9).8)に記載の多層ポリイミドフィルムに金属層を設けたフレキシブル金属張積層体。
【0021】
10).9)記載のフレキシブル金属張積層体の金属層に回路を形成してなるフレキシブルプリント基板。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、FPCに求められる基本的な特性を損なうことなく、誘電率や誘電正接が小さく、それらの特性が均一に発現される、高周波回路基板に用いることが可能なポリイミド、ポリイミドフィルムならびに多層フィルム、ポリイミド前駆体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリイミドは、凝集相と低吸水相の両方を有することを特徴とする。
本明細書における凝集相とは、直線的で剛直な構造であって、秩序性が高い構造を示す。具体的には、平均軸比が15以上であることを表す。平均軸比は、Kuhnセグメント長と結晶中の分子鎖断面積から推定した平均直径を用いて算出した値であり、本明細書では、最新ポリイミド(日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会 編)に記載の値を用いた。なお、本明細書においては、共重合体の場合は、含まれるホモポリマーのモル分率で算出した値を用いることとした。また、平均軸比は主鎖構造の影響が支配的であることから、置換基の影響は無視して算出した。
【0024】
凝集相の構造は、上述した定義を満たしていれば特に制限されないが例えば、酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、ジアミンとしてパラフェニレンジアミン(PDA)および/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニルを選択することができる。これらのモノマーは入手性の観点からも好適に用いることができる。
【0025】
また凝集相として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンに加え、4,4’-オキシジフタル酸を含有することがより好ましい。適度な運動性が付与されるため、より凝集力の高い構造となり、分子運動を抑制することが可能となる。
【0026】
低吸水相とは、吸水率が低い構造を示す。本明細書における低吸水相は、具体的には、吸水率が1重量%以下である構造を表す。低吸水相の具体例としては2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの反応により得られる構造があげられる。
【0027】
凝集相と低吸水相の両方を含むことで、誘電緩和を抑制し、さらに吸水が抑制されるために非常に優れた誘電特性を示す。凝集相と低吸水相は、凝集相:低吸水相=20:80~80:20の割合であることが好ましい。
【0028】
ポリイミド前駆体の製造方法について説明する。
(ポリイミドの前駆体の製造方法)
本発明のポリイミド前駆体の製造方法について記載する。本発明に用いられるポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、少なくとも一種のジアミンと少なくとも1種の酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を製造するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であればいかなるものも用いることができ、特に限定されない。上記溶媒としては、例えば、アミド系溶媒、すなわちN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチル-2-ピロリドンなどを挙げることができる。なかでも、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%~35重量%の範囲内であればポリイミドフィルムとした際に十分な機械強度を有するポリアミド酸が得られる。
【0029】
ポリイミドの前駆体の製造方法に用いられる全酸二無水物と全ジアミン化合物のモル比(全酸二無水物/全ジアミン化合物)は、1に近い(等モル量)であるほど、得られるポリイミドの前駆体の分子量が高い傾向にあり、0.90以上1.20未満の範囲であることが好ましく、0.97以上1.10未満の範囲であることがより好ましく、0.97以上1.05未満の範囲であることが更に好ましい。
【0030】
まず、凝集相と低吸水相の両方を有するポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の合成法方法について、凝集相が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび/または2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-TBと表すこともある)との反応により得られる構造を有し、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物(BISDAと表すこともある)と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMBと表すこともある)の反応により得られる構造である場合を例に好ましい合成方法について述べる。
【0031】
前記ポリアミド酸の合成方法としては、下記a)~d)の添加方法(重合方法)を例示することができる。
a)s-BPDAとPDAをBDPAよりもPDAのモル数が多い状態で反応させ、アミノ基末端のオリゴマーとし、末端のアミノ基よりも多い酸無水物基量のBISDAを反応させて、酸末端のオリゴマーとしたあと、TFMBと反応させる方法。
b)s-BPDAとPDAをPDAよりもs-BPDAのモル数が多い状態で反応させ、酸無水物末端のオリゴマーとし、酸無水物末端の酸無水物基よりも多いアミノ基量のTFMBを反応させて、アミノ基末端のオリゴマーとしたあと、BISDAと反応させる方法。
c)s-BPDAとPDAをBDPAよりもPDAのモル数が多い状態で反応させ、アミノ基末端のオリゴマーを合成し、別途BISDAとTFMBをTFMBよりもBIDSAのモル数が多い状態で反応させ、酸無水物末端のオリゴマーを合成し前記アミノ基末端のオリゴマーと反応させる方法。
d)s-BPDAとPDAをPDAよりもs-BPDAのモル数が多い状態で反応させ、酸無水物基末端のオリゴマーを合成し、別途BISDAとTFMBをBIDSAよりものTFMBモル数が多い状態で反応させアミノ基末端のオリゴマーを合成し前記酸無水物基末端のオリゴマーと反応させる方法。
【0032】
尚、ジアミン化合物をPDAとしたが、PDAの代わりにm-TBとしても同様に合成することができる。また、PDAの代わりにPDAとm-TB合わせたものを用いてもよい。
【0033】
好ましい各モノマーの組成比としては、全酸二無水物中、s―BPDAが20~80モル%、BISDAが20~80モル%、全ジアミン中TFMBが20~80モル%、PDAまたはm-TBが20~80モル%であることが好ましく、s―BPDAが25~70モル%、BISDAが30~75モル%、全ジアミン中TFMBが30~70モル%、PDAまたはm-TBが30~70モル%であることがより好ましい。
【0034】
また、PDAとm-TBを併用する場合の好ましい組成としては、全酸二無水物中、s―BPDAが20~80モル%、BISDAが20~80モル%、全ジアミン中TFMBが20~80モル%、PDAとm-TBの合計が20~80モル%であることが好ましく、s―BPDAが25~70モル%、BISDAが30~75モル%、全ジアミン中TFMBが30~70モル%、PDAとm-TBの合計が30~70モル%であることがより好ましい。
【0035】
凝集相として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンに加え、4,4’-オキシジフタル酸(s-ODPAと表すこともある)との反応により得られる構造であり、低吸水相が2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの反応により得られる構造を有するポリイミド前駆体について説明する。
【0036】
前記ポリアミド酸の合成方法としては、下記a)~d)の添加方法(重合方法)を例示することができる。
e)s-BPDA、s-ODPA及びPDAを酸二無水物よりもPDAのモル数が多い状態で反応させ、アミノ基末端のオリゴマーとし、末端のアミノ基よりも多い酸無水物基量のBISDAを反応させて、酸末端のオリゴマーとしたあと、TFMBと反応させる方法。(アミノ末端のオリゴマーに、BISDAとTFMBを加えても、実質同じ反応となる。)
f)s-BPDA、s-ODPA及びPDAをPDAよりも酸二無水物のモル数が多い状態で反応させ、酸無水物末端のオリゴマーとし、酸無水物末端の酸無水物基よりも多いアミノ基量のTFMBを反応させて、アミノ基末端のオリゴマーとしたあと、BISDAと反応させる方法。
(酸末端のオリゴマーに、BISDAとTFMBを加えても、実質同じ反応となる。)
g)s-BPDA、s-ODPA及びPDAを酸二無水物よりもPDAのモル数が多い状態で反応させ、アミノ基末端のオリゴマーを合成し、別途BISDAとTFMBをTFMBよりもBIDSAのモル数が多い状態で反応させ、酸無水物末端のオリゴマーを合成し前記アミノ基末端のオリゴマーと反応させる方法。
h)s-BPDA、s-ODPA及びPDAをPDAよりも酸二無水物のモル数が多い状態で反応させ、酸無水物基末端のオリゴマーを合成し、別途BISDAとTFMBをBIDSAよりものTFMBモル数が多い状態で反応させアミノ基末端のオリゴマーを合成し前記酸無水物基末端のオリゴマーと反応させる方法。
【0037】
尚、ジアミン化合物をPDAとしたが、PDAの代わりにm-TBとしても同様に合成することができる。また、PDAの代わりにPDAとm-TB合わせたものを用いてもよい。
【0038】
好ましい各モノマーの組成比としては、全酸二無水物中、s―BPDAが25~75モル%、s-ODPAが、5~30モル%、BISDAが20~70モル%、全ジアミン中TFMBが20~80モル%、PDAが50~80モル%であることが好ましい。s―BPDAが30~65モル%、s-ODPAが、5~20モル%、BISDAが30~65モル%、全ジアミン中TFMBが20~60モル%、PDAが40~80モル%であることがより好ましい。
【0039】
上記ポリイミドの前駆体には、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0040】
上記たポリイミド前駆体をイミド化することにより、ポリイミドを得ることができる。
また、ポリミドのフィルム状物であるポリイミドフィルムとすることで、高周波回路基板等に好適に用いることができる。
【0041】
ポリイミドの前駆体をイミド化するには、熱イミド化法と化学イミド化法に大別される。熱イミド化法は、脱水閉環剤等を使用せず、ポリアミド酸溶液を製膜ドープとして支持体に流延、加熱だけでイミド化を進める方法である。一方の化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、イミド化促進剤として脱水閉環剤及び触媒の少なくともいずれかを添加したものを製膜ドープとして使用し、イミド化を促進する方法である。どちらの方法を用いても構わないが、化学イミド化法の方が生産性に優れる。
【0042】
脱水閉環剤としては、無水酢酸に代表される酸無水物が好適に用いられ得る。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の三級アミンが好適に用いられ得る。
【0043】
製膜ドープを流延する支持体としては、ガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラム等が好適に用いられ得る。最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて加熱条件を設定し、部分的にイミド化または乾燥の少なくとも一方を行った後、支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
【0044】
上記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、ゲルフィルムから、水、残留溶媒、イミド化促進剤を除去し、そして残ったアミド酸を完全にイミド化して、ポリイミドを含有するフィルムが得られる。加熱条件については、最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
ポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されないが、10~100μm程度の厚さが、生産性の面で好ましい。また、本発明のポリイミドフィルムは、凝集相と低吸水相の両方を有するため、周波数10GHz、温度23℃、湿度50%における誘電正接が0.0050以下とすることができる。また、当該ポリイミドフィルムの吸水率が1%以下とすることもできる。
【0046】
本発明のポリイミドの前駆体をイミド化して得られたポリイミドフィルム(以下ポリイミドフィルムと略する)は、接着剤を介して銅箔と積層して、フレキシブル銅張積層板とすることもできる。また、上記ポリイミドフィルムの片面あるいは両面に熱可塑ポリイミド層を積層し、多層ポリイミドフィルムとし、多層ポリイミドフィルムと銅箔とを積層して、フレキシブル銅張積層板とすることもできる。多層ポリイミドフィルムについて説明する。
【0047】
(多層ポリイミドフィルム)
多層ポリイミドフィルムは、前記ポリイミドフィルムに加えて、少なくとも1層以上の熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムであり、具体例としては、前記ポリイミドフィルムの片面もしくは両面に熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミドフィルムである。
【0048】
前記熱可塑性ポリイミド層に含まれる熱可塑性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸をイミド化して得られる。
【0049】
FPC(フレキシブルプリント配線板)は、例えば前記ポリイミドのような絶縁性フィルム層をコアフィルムとし、このコアフィルムの表面に、各種接着材料による接着層を介して金属箔層を加熱・圧着することにより貼り合わされたフレキシブル金属張積層板に製造し、さらに回路パターンを形成することで得られる。接着層には従来、エポキシ樹脂やアクリル樹脂が使用されていたが、これらは耐熱性に乏しく、使用用途が限定されてしまう。しかし、接着層として熱可塑性ポリイミドを用いた2層フレキシブルプリント配線板(以下、2層FPCともいう)は、耐熱性、屈曲性に優れることから需要が更に伸びることが期待される。
【0050】
本発明において用いられる熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸に使用されるジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分は、前記ポリイミド層に使用しうるジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分で例示したものと同じものが挙げられるが、熱可塑性のポリイミドフィルムとするためには、屈曲性を有するジアミンと酸二無水物とを反応させることが好ましい。屈曲性を有するジアミンの例として、4,4‘-ジアミノジフェニルエーテル 、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。またこれらのジアミンと好適に組合せられる酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。
【0051】
本発明における熱可塑性ポリアミド酸の製造方法は、得られるポリアミド酸をイミド化して得られる熱可塑性ポリイミドが従来のフレキシブルプリント基板材料に求められる金属箔との接着性、半田耐熱性、寸法安定性、難燃性を有するものであれば、公知のどうような方法も用いることが可能である。本発明において多層ポリイミドフィルムを製造する方法としては、以下の工程
i)有機溶剤中でジアミンと酸二無水物を反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、
iii)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
iii)支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
iv)更に加熱して、残ったポリアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、により非熱可塑性ポリイミドフィルムを製造した後、当該非熱可塑性ポリイミドフィルムを非熱可塑性ポリイミド層として用い、その少なくとも片面に、塗工などにより接着層を設ける方法がある。また、上記ii)工程において複数の流路を有する共押出しダイを使用して、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液と、接着層を形成するためのポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液とを支持体上に流延・塗布することにより、複層の樹脂層を同時に形成する方法(共押出流延・塗布法)もある。
【0052】
また、後述のフレキシブル金属張積層板の項目で詳述するが、金属箔上に複数のポリアミド酸溶液を順次キャストし、次いでイミド化することにより金属箔上に多層ポリイミドフィルムに相当する層を直接形成する方法(金属箔キャスト法)もある。
【0053】
ii)以降の工程においては、熱イミド化法と化学イミド化法に大別される。熱イミド化法は、脱水閉環剤等を使用せず、ポリアミド酸溶液を製膜ドープとして支持体に流延、加熱だけでイミド化を進める方法である。一方の化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、イミド化促進剤として脱水閉環剤及び触媒の少なくともいずれか一方を添加したものを製膜ドープとして使用し、イミド化を促進する方法である。熱イミド化法と化学イミド化法のどちらの方法を用いても構わないが、化学イミド化法の方が生産性に優れる。
【0054】
脱水閉環剤としては、無水酢酸に代表される酸無水物が好適に用いられ得る。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の三級アミンが好適に用いられ得る。
【0055】
iii)以降の工程で、製膜ドープを流延する支持体としては、ガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラム等が好適に用いられ得る。最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて加熱条件を設定し、部分的にイミド化及び乾燥の少なくともいずれかを行った後、支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルム、またはゲル膜ともいう)を得る。
【0056】
iv)以降の工程で、前記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、フィルム中に残存するイミド化促進剤を除去し、そして残ったポリアミド酸を完全にイミド化して、ポリイミドを含有するフィルムが得られる。ゲルフィルムの端部は固定するだけでなく、搬送方向もしくは搬送方向に対して垂直方向に延伸してもよい。
【0057】
本発明の多層ポリイミドフィルムの厚みは、12.5μm以上であることが好ましい。多層ポリイミドフィルムの厚みの上限は特にはないが、多層ポリイミドフィルムの製造のしやすさ、生産性などを考慮すると、50μm以下であることが好ましい。
【0058】
イミド化には非常に高い温度が必要となるため、ポリイミド以外の樹脂層を設ける場合は、熱分解を抑えるために後者の手段を採った方が好ましい。なお、塗工により熱可塑性ポリイミドフィルムを設ける場合は、熱可塑性ポリイミドの前駆体を塗布し、その後イミド化を行ってもよいし、熱可塑性ポリイミド溶液を塗布・乾燥してもよい。また、熱可塑性ポリイミドフィルムは、上述の工程において、ポリアミック酸溶液を支持体に流延する代わりに、ポリイミド溶液を流延し、冷却することにより得てもよい。
【0059】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムを含むの優れた誘電特性を効果的に発現させるという観点では、熱可塑性ポリイミド層の厚みは1~8μmであることが好ましく、また、非熱可塑性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミド層の比は、17:8~19:6であることが好ましい。
【0060】
本発明の多層ポリイミドフィルムの温度23度、湿度50%での10GHzにおける比誘電率は3.5以下で、誘電正接は0.005以下であることが好ましい。
【0061】
(フレキシブル金属積層体)
本発明の非熱可塑性ポリイミドフィルムには、少なくとも一方の表面に乾式成膜法で製造された層を形成し、後の工程で無電解めっき層が形成するなどして直接金属層を形成するしてフレキシブル金属積層体を製造してもよい。乾式めっき法による金属層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などが適用できる。
【0062】
また、他の手段としては以下の方法が挙げられる。
a)上述のようにして多層ポリイミドフィルムを得た後、加熱加圧により金属箔を貼り合せてフレキシブル金属箔積層体を得る手段
b)金属箔上に、ポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液をキャストし、加熱により溶剤除去、イミド化を行ってフレキシブル金属箔積層体を得る手段
【0063】
a)の手段では、得られた多層ポリイミドフィルムに、金属箔を加熱加圧(ラミネート)により貼り合せることにより、本発明のフレキシブル金属箔積層体が得られる。金属箔を貼り合せる手段、条件については、従来公知のものを適宜選択すればよい。
【0064】
b)の手段では、金属箔上にポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液をキャストする手段については特に限定されず、ダイコーターやコンマコーター(登録商標)、リバースコーター、ナイフコーターなどの従来公知の手段を使用できる。溶剤除去、イミド化を行うための加熱手段についても従来公知の手段を利用可能であり、例えば熱風炉、遠赤外線炉が挙げられる。
【0065】
非熱可塑性ポリイミドフィルムに、他のポリイミド層を複層設ける場合、もしくはポリイミド以外の樹脂層も設ける場合は、上記キャスト、加熱工程を複数回繰り返すか、共押出しや連続キャストによりキャスト層を複層形成して一度に加熱する手段が好適に用いられ得る。
b)の手段では、イミド化が完了すると同時に、本発明のフレキシブル金属箔積層体が得られる。樹脂層の両面に金属箔層を設ける場合、加熱加圧により反対側の樹脂層面に金属箔を貼り合わせれば良い。
【0066】
本発明において用いることができる金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。また、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
【0067】
(フレキシブルプリント基板)
本発明に係るフレキシブル金属張積層体の金属層をエッチングして得られるフレキシブルプリント基板は、速い伝送速度、小さい伝送損失の高周波回路基板となる。
【実施例0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、誘電率、誘電正接、線膨張係数および吸水率の評価方法は次の通りである。
【0069】
<誘電率及び誘電正接(Df)の測定>
誘電率及び誘電正接は、HEWLETTPACKARD社製のネットワークアナライザ8719Cと株式会社関東電子応用開発製の空洞共振器振動法誘電率測定装置CP511とを用いて測定した。サンプルを2mm×100mmに切り出し、23℃/50%R.H.環境下で24時間調湿後に測定を行った。測定は10GHzで行った。(常態)
(絶乾)
サンプルを2mm×100mmに切り出し、熱風オーブンで150℃において30分間乾燥したのち、直ちに測定を実施した。その他は常態と同じ測定方法で実施した。
【0070】
<吸水率>
50mm×50mmに切り出した積層体を150℃×30min乾燥させ、絶乾状態での重量(w1)を測定した後、水に浸漬させた。24hr後、試験片を水から取り出し、表面の水分をふき取って重量(w2)を測定した。得られたw1、w2を用いて式(3)より吸水率を算出した。
式(3):吸水率(%)={(w2-w1)/w1}×100
【0071】
<使用した原料モノマーおよびその略号>
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
PDA:パラフェニレンジアミン
TFMB:2,2’―トリフルオロメチルベンジジン
m-TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
s-BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
s-ODPA:4,4’-オキシジフタル酸
BISDA:2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェニル)フェノキシ]プロパン酸二無水物
【0072】
(実施例1)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを734.2gにm-TB 48.6gを添加し、続いてs-BPDAを65.5g添加後、窒素雰囲気下で2時間攪拌した。ここまでの工程が凝集相の合成である。続いて、低吸水相の合成に入る。この溶液に、TFMB31.4g添加し、さらにBISDA49.4を添加して2時間攪拌した。。最後に、5.1gのBISDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。このとき、ポリアミド酸溶液の固形分濃度は20重量%となっていた。
【0073】
このポリアミド酸溶液65.0gに、DMF10.6g、イソキノリン4.9g、無水酢酸16.9gの割合で混合して調製した硬化剤を、添加して0℃以下の温度に設定した遠心分離機にて、攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を110℃×180秒乾燥させた後、ゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がして、ゲルフィルムが収縮しないように注意しながら金属製の枠に固定した。金属製の枠に固定したゲルフィルムを、あらかじめ予熱された熱風循環オーブンで250℃60秒、300℃200秒、続いて350℃200秒加熱し、固定枠から切り離して厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。
【0074】
(実施例2~7)
凝集相および低吸水相の成分および成分比率を変更した以外は実施例1と同様にしポリイミドフィルムを得た。なお、各モノマーのモル比について表1に記載した。
【0075】
(比較例1)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを811.7gにs-BPDAを109.7gを添加し、その後、PDA 38.3gを添加し窒素雰囲気下で30分間攪拌した。最後に、2.0gのPDAを固形分濃度5.0%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0076】
このポリアミド酸溶液65.0gに、DMF18.6g、イソキノリン4.1g、無水酢酸9.9gの割合で混合して調製した硬化剤を、添加して0℃以下の温度に設定した遠心分離機にて、攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を110℃×133秒乾燥させた後、ゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がして、ゲルフィルムが収縮しないように注意しながら金属製の枠に固定した。金属製の枠に固定したゲルフィルムを、あらかじめ予熱された熱風循環オーブンで250℃15秒、続いて350℃79秒加熱し、固定枠から切り離して厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。
【0077】
(比較例2)
反応系内を20℃に保った状態で、DMFを591.1gにTFMBを125.7gを添加し、その後、BISDA 198.2gを添加し窒素雰囲気下で3時間攪拌した。最後に、6.1gのBISDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0078】
このポリアミド酸溶液65.0gに、DMF6.0g、イソキノリン6.1g、無水酢酸20.3gの割合で混合して調製した硬化剤を、添加して0℃以下の温度に設定した遠心分離機にて、攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を110℃×180秒乾燥させた後、ゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がして、ゲルフィルムが収縮しないように注意しながら金属製の枠に固定した。金属製の枠に固定したゲルフィルムを、あらかじめ予熱された熱風循環オーブンで250℃60秒、300℃200秒、続いて350℃200秒加熱し、固定枠から切り離して厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。
【0079】
【表1】