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特開2023-47904非接触搬送装置、およびフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047904
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】非接触搬送装置、およびフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/10 20060101AFI20230330BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20230330BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B65H20/10 A
B65H27/00 Z
B29D7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157090
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】増田 友昭
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
4F213
【Fターム(参考)】
3F103AA03
3F103AA05
3F103BC04
3F103BC10
3F104AA03
3F104AA05
3F104JA08
3F104JB07
4F213AC03
4F213WA97
4F213WB02
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、搬送物が非接触搬送装置に接触するおそれを低減できる安価な非接触搬送装置、および該非接触搬送装置を用いたフィルムの製造方法を提供する
【解決手段】非接触搬送装置(1)は、搬送経路の上流側から搬送された長尺の搬送物(K)を搬送経路の下流側にガイドする搬送面(13)を有する円柱状のロール(11)を備える。搬送面(13)には、搬送物(K)を浮上させる気体を噴出する複数の噴出孔(13a)が形成されており、搬送面(K)における上流側および下流側の領域、かつ前記噴出孔とは異なる位置において、搬送経路の幅方向に沿って凸部(13b)若しくは凹部が延びているか、又は、複数の凸部若しくは凹部が前記搬送経路の幅方向に沿って設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路の上流側から搬送された長尺の搬送物を前記搬送経路の下流側にガイドする搬送面を有する円柱状のロールを備え、
前記搬送面には、前記搬送物を浮上させる気体を噴出する複数の噴出孔が形成されており、
前記搬送面における前記上流側および前記下流側の領域、かつ前記噴出孔とは異なる位置において、前記搬送経路の幅方向に沿って凸部若しくは凹部が延びているか、又は、複数の凸部若しくは凹部が前記搬送経路の幅方向に沿って設けられている、非接触搬送装置。
【請求項2】
前記搬送面において前記上流側から前記下流側に前記搬送物を折り返す部分を頂部と称し、
前記凸部又は前記凹部は、前記ロールの中心軸に対して垂直な平面で前記ロールを切断したときの切断面において、前記頂部と前記切断面の中心とを結ぶ線に直交し、かつ前記中心を通る線に対して前記頂部側に0.5度から5度の範囲内に設けられている、請求項1に記載の非接触搬送装置。
【請求項3】
前記凸部又は前記凹部は、前記ロールの中心軸に対して垂直な平面で前記ロールを切断したときの切断面において、半円状をなす、請求項1又は2に記載の非接触搬送装置。
【請求項4】
前記凸部又は前記凹部は、少なくとも前記搬送物が前記搬送面を覆う領域に設けられている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の非接触搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の非接触搬送装置を用いて長尺の搬送物を搬送する工程を一工程として有する、フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の搬送物を気体によって浮上させつつ搬送する非接触搬送装置、および該非接触搬送装置を用いたフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルム、金属箔等の長尺の搬送物を空気等の気体によって浮上させつつ搬送する非接触搬送装置が種々考案されている。代表的な非接触搬送装置として、例えば搬送経路の上流側から下流側に搬送される搬送物をガイドする搬送面を有する円柱状のロールを備え、搬送面に多数の微細な気体の噴出孔が施工されたものが挙げられる。この非接触搬送装置においては、搬送面から気体を噴出させて非接触状態で搬送物を搬送することができる。しかし、搬送物が搬送面に搬入される場合、又は次の工程に向かって搬送面から搬出される場合に、搬送物がロールに接触し、搬送物に瑕がつくという問題が発生している。
【0003】
この対策として、非接触搬送装置のロールの形状を改善することが多い。例えば特許文献1の非接触搬送装置のロールは、断面視でかまぼこ型をなし、即ち半円柱の円弧の両端部にそれぞれ平面が連なった形状をなす。この非接触搬送装置では、搬送物を一方の平面へ搬入し、曲面の頂部で折り返し、他方の平面から搬出する。曲面と両方の平面とに形成される噴出孔は、綿密に設計された開口角度、および形状を有する。即ち、搬送物がロールに搬入される場合、およびロールから搬出される場合に、搬送物の浮上を確保するために必要な量の気体が噴出されるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-23371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の非接触搬送装置は、搬送面に形成される噴出孔は綿密に計算された開口角度、および形状で形成される必要があり、ロールの内部の流路の設計も複雑である。非接触搬送装置を設置する現場に合わせた専用の設計となる場合が多く、加工の難易度が高いため、加工コストもかかる。搬送物は、連続して非接触搬送させることが多く、非接触搬送装置が多数必要な場合は、設備コストが多大になり、搬送物に係る製品の製造コストが大きくなることが問題となっている。
【0006】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な構造で、搬送物が非接触搬送装置に接触するおそれを低減できる非接触搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、以下の態様を含む。
【0008】
〔1〕搬送経路の上流側から搬送された長尺の搬送物を前記搬送経路の下流側にガイドする搬送面を有する円柱状のロールを備え、
前記搬送面には、前記搬送物を浮上させる気体を噴出する複数の噴出孔が形成されており、
前記搬送面における前記上流側および前記下流側の領域、かつ前記噴出孔とは異なる位置において、前記搬送経路の幅方向に沿って凸部若しくは凹部が延びているか、又は、複数の凸部若しくは凹部が前記搬送経路の幅方向に沿って設けられている、非接触搬送装置。
【0009】
〔2〕前記搬送面において前記上流側から前記下流側に前記搬送物を折り返す部分を頂部と称し、
前記凸部又は前記凹部は、前記ロールの中心軸に対して垂直な平面で前記ロールを切断したときの切断面において、前記頂部と前記切断面の中心とを結ぶ線に直交し、かつ前記中心を通る線に対して前記頂部側に0.5度から5度の範囲内に設けられている、〔1〕に記載の非接触搬送装置。
【0010】
〔3〕前記凸部又は前記凹部は、前記ロールの中心軸に対して垂直な平面で前記ロールを切断したときの切断面において、半円状をなす、〔1〕又は〔2〕に記載の非接触搬送装置。
【0011】
〔4〕前記凸部又は前記凹部は、少なくとも前記搬送物が前記搬送面を覆う領域に設けられている、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の非接触搬送装置。
【0012】
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の非接触搬送装置を用いて長尺の搬送物を搬送する工程を一工程として有する、フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態の非接触搬送装置によれば、簡単な構造で、搬送物が非接触搬送装置に接触するおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る非接触搬送装置を示す側面図である。
図2】非接触搬送装置を示す斜視図である。
図3】ロールの中心軸に対して垂直な平面でロールを切断したときの断面図である。
図4】搬送面の凸部が設けられている部分の拡大図である。
図5】ロールの搬送面の上流側および下流側に凸部が設けられていない場合に、ロールの中心軸に対して垂直な平面でロールを切断したときの断面図である。
図6】ロールの搬送面の上流側および下流側に凸部が設けられている場合に、ロールの中心軸に対して垂直な平面でロールを切断したときの断面図である。
図7】変形例1に係る非接触搬送装置を示す斜視図である。
図8】変形例2に係る非接触搬送装置を示す斜視図である。
図9】搬送システムを示す正面図である。
図10】実施形態2に係る非接触搬送装置を示す斜視図である。
図11】ロールの中心軸に対して垂直な平面でロールを切断したときの断面図である。
図12】搬送面の凹部が設けられている部分の拡大図である。
図13】変形例3に係る非接触搬送装置を示す斜視図である。
図14】変形例4に係る非接触搬送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された特許文献は、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0016】
〔本発明の実施形態の技術的思想〕
本発明者は、鋭意検討した結果、円柱状の安価なロールを用い、ロールの軸心方向の一端部又は両端部に圧縮気体を供給する機構を設け、ロールの搬送面には、気体の噴出孔を所定のピッチでロールの軸心方向と周方向とに配列して施工することにした。搬送面における搬送経路の上流側および下流側の領域において、搬送経路の幅方向に沿って凸部若しくは凹部を延びるように設けるか、又は、複数の凸部若しくは凹部を搬送経路の幅方向に沿って設けることで、非接触搬送装置と接触しないように搬送物を浮上させ、疵付けずに搬送できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
以下、図面に基づいて具体的に説明する。
〔実施形態1〕
【0018】
<非接触搬送装置1の構成>
図1は、実施形態1に係る非接触搬送装置1を示す側面図である。図1では、ロール11の中心軸方向をX軸方向としている。
非接触搬送装置1は、ロール11と、長尺の搬送物Kを浮上させる空気等の気体の供給管12とを備える。ロール11は、例えばポリ塩化ビニル製であり、円柱状をなし、内部に気体が充填される空洞が設けられている。ロール11はポリエチレン製、ポリプロピレン製等の他の合成樹脂製、又は金属製であってもよい。ロール11としては、例えば端面の直径が40mm~300mm、X軸方向の長さが250mm~2000mmのものが挙げられる。搬送物Kは、図1における紙面の奥側から手前側の搬送経路に沿って、ロール11から浮上した状態で搬送される。搬送物Kとしては、帯状の搬送物であればよく、その材質、形状、大きさおよび厚さは特に限定されない。搬送物Kとして、例えばフィルム、金属箔、織物、紙、テープ等が挙げられる。搬送物Kとしては、例えば幅が50mm~1900mm、厚みが0.01mm~0.4mmのフィルムが挙げられる。
【0019】
ロール11は、搬送経路の上流側(以下、単に「上流側」ともいう)から搬送された搬送物Kを非接触で搬送経路の下流側(以下、単に「下流側」ともいう)にガイドする搬送面13を有する。搬送面13には、X軸方向の全長に亘って、 内側から気体を噴出させて搬送物Kを浮上させるための後述する噴出孔13a(不図示)が複数、等間隔で設けられている。図1においては、説明の便宜上搬送面13を実線で囲んで示しているが、搬送面13はロール11の表面の一部の領域であり、ロール11の表面の他の部分と区別され得る領域でなくてもよい。搬送面13は、X軸方向の端部が側面視で半円状をなす曲面であり、図1における搬送面13のZ軸方向の寸法はロール11のZ軸方向の寸法の略半分である(図3参照)。
【0020】
搬送面13の図1におけるX軸方向の長さは少なくとも搬送物Kの幅以上であることが好ましい。この場合、搬送物Kの搬送時に、良好に搬送物Kを浮上させることができ、非接触搬送装置1との接触が抑制される。搬送物Kの幅に対する、搬送面13のX軸方向の長さの比は1.01~1.40であることがより好ましく、1.01~1.10であることがさらに好ましい。例えばロール11のX軸方向の長さが1500mm、搬送物Kの幅が1300mmであるとき、搬送面13のX軸方向の長さが1400mmである場合が挙げられる。
【0021】
ロール11の中心軸方向の両端部に供給管12が接続されている。ブロア装置(不図示)により圧縮された空気等の気体が供給管12を介しロール11の内部に導入される。ロール11内に導入された気体が搬送面13の噴出孔から噴出することにより、搬送物Kは浮上した状態で、搬送面13にガイドされて搬送される。供給管12は、ロール11の一端部に接続することにしてもよい。
【0022】
<搬送面13の構成>
以下、搬送面13について詳述する。図2は、非接触搬送装置1を示す斜視図である。図3は、ロール11を端面に平行な平面で切断したとき(ロール11の中心軸に対して垂直な平面でロール11を切断したとき)の断面図である。図4は、凸部13bが設けられている部分の拡大図である。ロール11の搬送面13において、搬送物Kの搬送経路の上流側から下流側に搬送物Kを折り返す部分を頂部13tと称す。図2および図3に示すように、搬送面13には、頂部13tから上流側および下流側に亘って、気体の噴出孔13aが複数設けられている。
【0023】
噴出孔13aは、図3の断面面において、周方向に2°~15°の範囲の所定の角度ごとに形成されている。即ち、周方向で隣り合う噴出孔13aの中心の間の距離は等しい。噴出孔13aを形成する角度は3°~10°の範囲であることが好ましい。噴出孔13aの直径は0.1mm~3mmの範囲であることが好ましく、0.5mm~2mmの範囲であることがより好ましい。
【0024】
噴出孔13aを周方向に、3°~10°の範囲の所定の角度ごとに形成し、直径が0.5mm~2mmの範囲である場合、加工がしやすく、気体を噴出させるロール11の内圧が得られ、良好な気体の噴出速度および粘度が得られる。噴出孔を形成する角度、および直径の増加割合は、搬送物Kの重量、厚み、および幅、ロール11の大きさも加味して設定する。図3においては、一例として、噴出孔13aは10°ごとに形成されている。一例として、噴出孔13aの直径は1mmである。
【0025】
図1から図3に示すように、搬送面13の搬送経路の上流側および下流側には、X軸方向に延びる凸部13bが設けられている。凸部13bにより、後述するように搬送物Kの浮上量が確保される。凸部13bが下流側に設けられている場合、凸部13bは、搬送面13の最も下流側に配置された噴出孔13aの列よりさらに下流側に、該噴出孔13aの列に沿って設けられている。凸部13bが搬送経路の上流側に設けられている場合、凸部13bは、搬送面13の最も上流側に配置された噴出孔13aの列よりさらに上流側に、該噴出孔13aの列に沿って設けられている。図1および図2においては、凸部13bの長さが搬送面13の幅より長く、ロール11の幅に略等しい場合を示しているが、この場合に限定されない。上述したように、搬送面13の幅は搬送物Kの幅以上であることが好ましく、凸部13bの長さは搬送面13の幅以上、即ち、搬送物Kの幅以上であることが好ましい。
【0026】
図3の断面図において、凸部13bは、頂部13tと切断面の中心13mとを結ぶ線uに直交し、かつ中心13mを通る線vに対して頂部13t側に、0.5°から5°の範囲の所定の角度をなすように設けられていることが好ましい。この場合、気体が抜けやすい領域において、後述するように、良好に搬送物Kの浮上量を確保できる。凸部13bは、1°から4°の範囲の角度で設けられていることがより好ましい。凸部13bは半円柱状、即ち、端面が半円状であることが好ましい。この場合、加工が容易である。凸部13bの端面の半円は正円ではなく、搬送面13の表面から起立する凸部13bの側壁部分が搬送面13の表面に対して略垂直であるような形状でもよい。凸部13bは端面が多角形である角柱状であってもよい。凸部13bが半円柱状である場合、端面の半円の直径は0.5mm~3mmであることが好ましい。直径は1mm~2.5mmであることがより好ましい。一例として、凸部13bの半円の直径が1mmの場合が挙げられる。
【0027】
図3および図4においては、中心13mと最も下流側の噴出孔13aとを結ぶ線jと、線vとがなす角度が10°であり、中心13mと下流側の凸部13bを結ぶ線iと、線vとが3.3°の角度をなす場合を示している。
【0028】
図5は、ロール11の搬送面13の搬送経路の上流側および下流側に凸部13bが設けられていない場合に、ロール11の中心軸に垂直な平面で切断したときの断面図である。図5における左側が上流側、右側が下流側である。図5において、搬送面13と搬送物Kとの間の空間における、ロール11の内部から噴出した気体の流れを矢印で示す。上流側および下流側においては、気体は搬送物Kに沿って圧力が解放されやすい方向(図中下向き)に流れるため、搬送面13と搬送物Kとの空間に生じる圧力は、頂部13t側と比較して低く、搬送物Kの浮上量が低下する。このため、搬送面13と搬送物Kとが接触することで疵等が生じることがある。
【0029】
図6は、ロール11の搬送面13の上流側および下流側に凸部13bが設けられている場合に、ロール11の中心軸に垂直な平面で切断したときの断面図である。凸部13bが存在することにより、凸部13bの表面の曲面に沿って、遠心方向に近い追随流が発生するため、搬送面13と搬送物Kとの間の空間に生じる圧力が頂部13t側と同程度に維持されることになり、搬送物Kの浮上量が低下せず、接触不具合が生じない。この作用の観点から、凸部13bは、搬送面13の最も上流側および下流側に配置された噴出孔13aの列よりさらに上流側および下流側(図6の下側)で、当該断面図において、ロール11の中心を通り、Y軸に平行な線に対し頂部13t側に1°から5°の角度をなす位置に設けることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る非接触搬送装置1は以上のように搬送物Kがロール11に搬入される場合、およびロール11から搬出される場合に、搬送物Kがロール11と接触しない浮上量を確保でき、ロール11に接触する虞が低減し、疵の発生が抑制される。ロール11の構成は簡単であり、ポリ塩化ビニル等の安価な材料を用いて作製でき、非接触搬送装置1の製造コストは安価である。
【0031】
少なくとも搬送物Kが搬送面13を覆う領域において、凸部13bを設けることにより、搬送物Kの搬送時に、良好に非接触搬送装置1との接触が抑制される。
【0032】
<変形例1>
図7は、変形例1に係る非接触搬送装置14を示す斜視図である。非接触搬送装置14は、ロール15と、気体の供給管12とを備える。ロール15は、ロール11と同様の構成を有する。ロール15の搬送面16には、搬送面13と同様に、複数の気体の噴出孔16aが設けられている。
【0033】
変形例1においては、凸部16bは半円柱状をなし、搬送面16の最も下流側に配置された噴出孔16aの列より下流側に、該噴出孔16aの列に沿って、連続的ではなく、断続的に設けられている。搬送面16の上流側も同様に、凸部16bは断続的に設けられている。X軸方向に隣り合う凸部16bの間隔は、搬送物Kがロール15に搬入される場合、およびロール15から搬出される場合に、搬送物Kがロール15と接触しない浮上量を確保できるように設定する。凸部16bは、端面が多角形である角柱状であってもよい。また、凸部16bは、半球のドーム状であってもよい。
【0034】
<変形例2>
図8は、変形例2に係る非接触搬送装置17を示す斜視図である。非接触搬送装置17は、ロール18と、気体の供給管12とを備える。ロール18は、ロール11と同様の構成を有する。ロール18の搬送面19には、搬送面13と同様に、複数の気体の噴出孔19aが設けられている。
【0035】
変形例2においては、凸部19bは半円柱状をなし、搬送面19の上流側および下流側に、X軸方向に沿ってそれぞれ2列ずつ設けられている。即ち、下流側の場合、搬送面19の最も下流側に配置された噴出孔19aの列の上流側および下流側に、凸部19bが各1列設けられている。上流側の場合も、同様に凸部19bが2列設けられている。凸部19bの列同士の間隔は、搬送物のロール18からの浮上量を確保して、疵の発生を低減できるように設定する。変形例2においては、上流側および下流側において、搬送面13と搬送物Kとの空間に生じる圧力が1列の場合より高くなり、搬出がロール18に搬入される場合、およびロール18から搬出される場合に、搬送物Kがロール18と接触しない浮上量をより確保できる。なお、搬送物Kの搬入側および搬出側の凸部19bの高さを、頂部側の列における高さより高くしてもよい。
【0036】
<搬送システム100の構成>
図9は、搬送システム100を示す正面図である。図9におけるZ軸方向を上下方向とした場合、搬送システム100においては、複数の非接触搬送装置1が、上下が互い違いとなるように、X軸方向に沿って配置されている。上述のように構成されているので、搬送面13の上流側および下流側において搬送物Kと搬送面13との空間の圧力は高く、搬送物Kがロール11に搬入される場合、およびロール11から搬出される場合に、搬送物Kがロールと接触しない浮上量を確保できる。従って、搬送物Kは、疵が生じることなく、搬送システム100により搬送される。搬送面13の構成は簡単であり、非接触搬送装置1を安価に製造できるので、搬送システム100も安価に製造できる。
【0037】
<フィルムの製造方法>
以下、搬送システム100を用い、フィルムを製造する場合につき説明する。一例として、搬送システム100が乾燥炉(不図示)内に収納されており、基材に樹脂層を積層した積層体が搬送物Kとして搬送される場合につき説明する。乾燥炉内は所定の温度に保持されている。積層体は搬送システム100により加熱炉内を搬送される間に、熱収縮され、フィルムが形成される。積層体はロール11に接触しないので、疵が生じることなくフィルムが形成される。なお、積層体は搬送システム100を用いて加熱される場合に限定されず、搬送システム100をフィルムの他の製造工程に用いることもできる。
【0038】
〔実施形態2〕
<非接触搬送装置20の構成>
図10は、実施形態2に係る非接触搬送装置20を示す斜視図である。図11は、ロール21を中心軸に垂直な平面でロール21を切断したときの断面図である。図12は、凹部22bが設けられている部分の拡大図である。
【0039】
非接触搬送装置20は、ロール21と、気体の供給管12とを備える。ロール21は、ロール11と同様の構成を有する。ロール21の搬送面22には、搬送面13と同様に、複数の気体の噴出孔22aが設けられている。
【0040】
<搬送面22の構成>
図10から図12に示すように、非接触搬送装置20は、搬送面22の搬送経路の上流側および下流側に、X軸方向に延びる凹部22bが設けられている点において非接触搬送装置1と異なっている。凹部22bにより搬送物Kの浮上量が確保される。凹部22bが下流側に設けられている場合、凹部22bは、搬送面22の最も下流側に配置された噴出孔22aの列よりさらに下流側に、該噴出孔22aの列に沿って設けられている。上流側の場合、凹部22bは、搬送面22の最も上流側に配置された噴出孔22aの列よりさらに上流側に、該噴出孔22aの列に沿って設けられている。図10よび図11においては、凹部22bの長さが搬送面22の幅より長く、ロール21の幅に略等しい場合を示しているが、この場合に限定されない。搬送面22の幅は搬送物Kの幅以上であることが好ましく、凹部22bの長さは搬送面22の幅以上、即ち、搬送物Kの幅以上であることが好ましい。
【0041】
図11の断面図において、凹部22bは、頂部22tと切断面の中心22mとを結ぶ線uに直交し、かつ中心22mを通る線vに対して頂部22t側で、0.5°から5°の範囲の所定の角度をなす位置に設けられている。この場合、気体が抜けやすい領域において、良好に搬送物Kの浮上量を確保できる。凹部22bは、1°から4°の範囲の角度で設けられていることが好ましい。図12に示すように、凹部22bは端面が半円状である丸溝であることが好ましい。この場合、加工が容易である。凹部22bの端面は正円ではなく、凹部22bの側面が搬送面22の表面に対して略垂直であるような形状でもよい。凹部22bは端面が多角形である角溝であってもよい。凹部22bの端面が半円状である場合、端面の半円の直径は0.5mm~3mmであることが好ましい。直径は1mm~2.5mmであることがより好ましい。一例として、凹部22bの半円の直径が1mmの場合が挙げられる。
【0042】
図11および図12においては、中心22mと最も下流側の噴出孔22aとを結ぶ線jと、頂部22tと中心22mとを結ぶ線uに直交し、かつ中心22mを通る線vとがなす角度が10°であり、中心22mと下流側の凹部22bを結ぶ線iと、線vとが3.3°の角度をなす場合を示している。
【0043】
非接触搬送装置20は以上のように構成されている。噴出孔22aから噴出された気体は、搬送物Kの搬入側又は搬出側に抜ける前に凹部22bの内部に流入し、凹部22bから流出するときに、搬送面22の表面から遠ざかる方向に進行する。従って、搬送物Kの搬入側又は搬出側で、搬送面22と搬送物Kとの間の空間に生じる圧力は、凹部22bが設けられていない場合よりも高くなり、搬送物Kの浮上量が低下せず、接触不具合が生じず、疵の発生が低減する。上記作用の観点から、凹部22bは、搬送面22の最も上流側および下流側に配置された噴出孔22aの列よりさらに上流側および下流側(図11の下側)で、線iと線vとが1°から5°の角度をなす位置に設けることが好ましい。少なくとも搬送物Kが搬送面22を覆う領域において、凹部22bを設けることにより、搬送物Kの搬送時に、良好に非接触搬送装置20との接触が抑制される。
【0044】
ロール21の構成は簡単であり、ポリ塩化ビニル等の安価な材料を用いて作製でき、非接触搬送装置20の製造コストは安価である。
【0045】
複数の非接触搬送装置20により搬送システムを構成した場合、各非接触搬送装置20において搬送物Kがロール21に搬入される場合、およびロール21から搬出される場合に、搬送物Kがロール21と接触しない浮上量を確保できる。従って、搬送物Kは、疵が生じることなく、搬送システムにより搬送される。搬送面22の構成は簡単であり、非接触搬送装置20を安価に製造できるので、搬送システムも安価に製造できる。搬送システムをフィルムの製造工程において用いた場合、疵が生じることなくフィルムが形成される。
【0046】
<変形例3>
図13は、変形例3に係る非接触搬送装置23を示す斜視図である。非接触搬送装置23は、ロール24と、気体の供給管12とを備える。ロール24は、ロール11と同様の構成を有する。ロール24の搬送面25には、搬送面13と同様に、複数の気体の噴出孔25aが設けられている。
【0047】
変形例3においては、凹部25bは端面が半円状である丸溝であり、搬送面25の最も下流側に配置された噴出孔25aの列より下流側に、列に沿って、連続的ではなく、断続的に設けられている。搬送面25の上流側も同様に、凹部25bは断続的に設けられている。X軸方向に隣り合う凹部25bの間隔は、搬送物Kがロール24に搬入される場合、およびロール24から搬出される場合に、搬送物Kがロール24と接触しない浮上量を確保できるように設定する。凹部25bは、端面が多角形である角溝であってもよい。また、凹部25bは、半球状の凹みであってもよい。
【0048】
<変形例4>
図14は、変形例4に係る非接触搬送装置26を示す斜視図である。非接触搬送装置26は、ロール27と、気体の供給管12とを備える。ロール27は、ロール11と同様の構成を有する。ロール27の搬送面28には、搬送面13と同様に、複数の気体の噴出孔28aが設けられている。
【0049】
変形例4においては、凹部28bは、上流側および下流側に、X軸方向に沿って2列ずつ設けられている。即ち、下流側の場合、搬送面28の最も下流側に配置された噴出孔28aの列の上流側および下流側に、凹部28bが各1列設けられている。上流側の場合も、同様に凹部28bが2列設けられている。凹部28bの列同士の間隔は、搬送物のロール27からの浮上量を確保して、疵の発生を低減できるように設定する。変形例4においては、上流側および下流側において、搬送面28と搬送物Kとの空間に生じる圧力が一列の場合より高くなり、搬出がロール27に搬入される場合、およびロール27から搬出される場合に、搬送物Kがロール27と接触しない浮上量をより確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、簡単な構造で、搬送物が非接触搬送装置に接触するおそれを低減できる安価な非接触搬送装置を提供することができる。そのため、本発明は、フィルム等の薄い搬送物の非接触搬送に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1、14、17、20、23、26 非接触搬送装置
11、15、18、21、24、27 ロール
12 供給管
13、16、19、22、25、28 搬送面
13a、16a、19a、22a、25a、26a、28a 噴出孔
13b、16b、19b 凸部
22b、25b、28b 凹部
100 搬送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14