(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047923
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230330BHJP
G01N 1/36 20060101ALI20230330BHJP
G01N 1/06 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/36
G01N1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157118
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】大西 実恵
(72)【発明者】
【氏名】今 直誓
(72)【発明者】
【氏名】二田 伸康
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AA18
2G052AD32
2G052AD52
2G052EC02
2G052EC03
2G052FD06
2G052GA34
2G052JA11
(57)【要約】
【課題】樹脂と金属との接合材の切削時の変形を抑制して、高品質の薄肉の断面観察試料を作製する。
【解決手段】金属素材と樹脂素材とを接合してなる試料素材の接合界面を含む断面の観察試料を作製する方法であって、試料素材の接合界面が露出する先端部の周辺部を切除して、先端面を小さくするトリミング工程と、先端部の周囲を囲むように該先端部を包埋樹脂に埋め込む包埋工程と、包埋樹脂に埋め込まれた状態の試料素材の先端部を包埋樹脂とともに切削して、接合界面を含む観察用試料の切片を作製する切片作製工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属素材と樹脂素材とを接合してなる試料素材の接合界面を含む断面の観察試料を作製する方法であって、前記試料素材の前記接合界面が露出する先端部の周辺部を切除して、先端面を小さくするトリミング工程と、前記先端部の周囲を囲むように該先端部を包埋樹脂に埋め込む包埋工程と、包埋樹脂に埋め込まれた状態の前記試料素材の前記先端部を前記包埋樹脂とともに切削して、前記接合界面を含む切片からなる観察用試料を作製する切削工程とを有することを特徴とする金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法。
【請求項2】
前記包埋工程では、包埋樹脂により作製した包埋樹脂板の上に前記試料素材を載置し、この包埋樹脂板上の前記試料素材の上に包埋樹脂を滴下することにより、前記試料素材を前記包埋樹脂に埋め込むことを特徴とする請求項1に記載の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法。
【請求項3】
前記切削工程では、前記接合界面に直交する方向に切片作製用ナイフを当て、前記接合界面に沿って前記試料素材を切削することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法。
【請求項4】
前記先端面は、1辺が50μm以上70μm以下の正方形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂接合材を透過型電子顕微鏡等で断面観察する際に実施される断面観察試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属試料等を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)等で断面観察する場合、ミクロトームを用いて試料素材を極薄に切削して、観察用試料を作製することが一般に行われている。この場合、切削時に試料に変形が生じないように、観察用試料となる試料素材を合成樹脂等を用いて固める包埋処理を行い、ミクロトームでの作業を行い易いようにしている。
【0003】
特許文献1には、鏡面の上に光硬化性樹脂を載置し、光硬化性樹脂の厚さを規定して硬化させることにより2枚の樹脂チップを作製し、1枚の樹脂チップ上に試料素材を載置し、未露光の光硬化性樹脂で試料素材を覆った後、他の樹脂チップを載置して光硬化性樹脂を硬化することにより一次サンプル作製し、この一次サンプルを目的に応じて切削して、観察用試料を作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、観察対象となる試料素材が金属の場合や、樹脂単体の場合は、観察試料の作製が比較的容易であるが、試料素材が樹脂と金属との接合材である場合は、薄切りした際に丸まるなど、観察用試料が変形してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂と金属との接合材の切削時の変形を抑制して、高品質の薄肉の断面観察試料を作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法は、金属素材と樹脂素材とを接合してなる試料素材の接合界面を含む断面の観察試料を作製する方法であって、前記試料素材の前記接合界面が露出する先端部の周辺部を切除して、先端面を小さくするトリミング工程と、前記先端部の周囲を囲むように該先端部を包埋樹脂に埋め込む包埋工程と、包埋樹脂に埋め込まれた状態の前記試料素材の前記先端部を前記包埋樹脂とともに切削して、前記接合界面を含む切片からなる観察用試料を作製する切削工程とを有する。
【0008】
予め先端部加工工程により、素材試料の先端面を小さくしておき、その周囲を囲むように包埋樹脂で埋め込んでいるので、素材試料の周囲が包埋樹脂により固められ、切削時に試料が丸まってしまうなどの変形が生じにくくなる。
【0009】
本発明の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法において、前記包埋工程では、包埋樹脂により作製した包埋樹脂板の上に前記試料素材を載置し、この包埋樹脂板上の前記試料素材の上に包埋樹脂を滴下することにより、前記試料素材を前記包埋樹脂中に埋め込むとよい。
【0010】
この包埋工程では包埋容器等が用いられるが、包埋容器等の底面上に試料素材を載置して包埋樹脂を滴下して包埋試料を作製すると、試料素材の先端部の周囲を包埋樹脂で囲むことができない。上記のように包埋樹脂板を用いることにより、試料素材の先端部の周囲を確実に包埋樹脂で囲むことができる。
【0011】
本発明の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法において、前記切削工程では、前記接合界面に直交する方向に切片作製用ナイフを当て、前記接合界面に沿って前記試料素材を切削するとよい。
接合界面に直交する方向に切片作製用ナイフを当てて切削することにより、観察用試料の変形をより抑制することができる。
【0012】
本発明の金属樹脂接合材の断面観察試料作製方法において、前記先端面は、1辺が50μm以上70μm以下の正方形であるのが好ましい。
【0013】
1辺が70μm以下の小さい試料とすることでナイフへの負担を軽減して切片の変形を抑制することができる。1辺を50μm未満とするのは作製が困難になる。
なお、素材試料の平面形状を長方形とした場合、観察試料が変形しやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂と金属との接合材の切削時の変形を抑制して、高品質の薄肉の断面観察試料を作製することができ、高精度の断面観察を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る断面観察試料の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】金属樹脂接合材から試料素材を切り出す様子を説明した平面図である。
【
図4】
図3の試料素材をトリミングした状態の側面図である。
【
図5】トリミングした後の試料素材の先端面からみた正面図である。
【
図6】包埋容器にエポキシ樹脂を充填した状態を示す断面図である。
【
図8】試料素材を包埋樹脂に埋め込んだ状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9の正面図であり、トリミング前の包埋試料を示す。
【
図10】包埋試料を精密トリミングしている状態を示す斜視図である。
【
図11】トリミング後の包埋試料を示し、(a)が先端面から視た正面図、(b)は先端部付近の側面図である。
【
図12】切片を作製している状態を示す斜視図である。
【
図13】包埋試料と切片作製用ナイフとの関係を示す図である。
【
図14】実施例の切片をTEM用グリッドメッシュに載置した状態を示す顕微鏡写真である。
【
図15】比較例の切片をTEM用グリッドメッシュに載置した状態を示す顕微鏡写真である。
【
図16】実施例の切片を透過型電子顕微鏡で観察した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について説明する。
この実施形態で用いられる金属樹脂接合材1は、金属素材2と樹脂素材3とが接合界面4によって接合されたものであれば特に限定されないが、
図2及び
図3に示すように、例えば銅からなる0.3mm~0.4mm程度の厚さの金属素材2に、エポキシ樹脂からなる樹脂素材3が数10nm~100nm程度の厚さで被覆されたものである。この金属樹脂接合材1は、通常、上記の厚さで板状に形成され、その片面に樹脂素材3が形成されている。
【0017】
次に、この金属樹脂接合材1から透過型電子顕微鏡等で断面観察する際の断面観察試料を作製する場合、試料素材準備工程、試料素材トリミング工程、金属膜形成工程、包埋工程、包埋試料トリミング工程、切削工程、切片回収工程の順に行われる。以下、工程順に説明する。
【0018】
(試料素材準備工程)
図2に示すように板状の金属樹脂接合材1から切り取って、例えば3mm×2mmの長方形状の短冊状に切り取って、金属素材2の表面を研磨し、厚さが0.3mm~0.4mmの短冊状試料素材11に形成する。
【0019】
(試料素材トリミング工程)
得られた短冊状試料素材11の端部側面をミクロトーム用ダイヤモンドナイフで切削してトリミングする。具体的には、短冊状試料素材11の端面を接合界面を含んで50μm~70μmの正方形表面とするように周辺部を切り落とす。これにより、トリミング後の試料素材12は、
図4及び
図5に示すように、先端部13が角錐台形状に形成され、その角錐台の先端面13aが50μm~70μmの正方形表面となる。この正方形表面の先端面13aには金属素材2と樹脂素材3との接合界面4も露出している。
【0020】
(金属膜形成工程)
トリミング後の試料素材12の樹脂素材3の表面に金属膜14を形成する(
図5参照)。例えば、金(Au)の蒸着による膜を厚さ10nm程度で形成するとよい。この金属膜14は、後の包埋工程で包埋樹脂に埋め込まれたときの樹脂素材3と包埋樹脂との界面を特定するために形成される。
【0021】
(包埋工程)
包埋工程では、まず、常温硬化型エポキシ樹脂により包埋樹脂板21を作製する。この包埋樹脂板21は、
図7に示すように、皿状の包埋容器22の内底面に載置される大きさの板状に形成される。具体的には、シリコン製の包埋容器22内に常温硬化型エポキシ樹脂23を2~3滴程度滴下し、常温で硬化させた後、包埋容器22から取り出し、表面を研磨して、
図7に示すように両面が平行で平滑な包埋樹脂板21を形成する。研磨するのは、包埋容器22で硬化した際に表面張力によって周縁部が盛り上がった状態に形成されるからであり、その角部を主として研磨して平滑に仕上げる。
【0022】
次いで、得られた包埋樹脂板21を包埋容器22の内底面に載置し、その包埋樹脂板21の上に試料素材12を載置する。先に包埋容器22に載置した包埋樹脂板21は研磨されて表裏面が平坦面に形成されているため、試料素材12は、その包埋樹脂板21の上に水平に載置される。
次いで、この包埋樹脂板21上の試料素材12の上から常温硬化型エポキシ樹脂を滴下して、包埋樹脂板21及び試料素材12の表面をエポキシ樹脂で埋めた状態とし、その状態でエポキシ樹脂を硬化させる。これにより、包埋容器22内で、試料素材12が包埋樹脂25に埋没した状態の包埋試料31(
図8参照)が作製される。
【0023】
なお、後述するように、試料素材12の周囲を包埋樹脂25で囲った包埋試料を作製する必要があり、この包埋工程において、包埋樹脂板21を用いずに、包埋容器22の底面上に試料素材12を載置して包埋樹脂25を滴下すると、試料素材12の全体を包埋樹脂25で覆うことができないため、好ましくない。また、包埋容器22に包埋樹脂を滴下して、その上に試料素材12を載置する場合も、自重で試料素材が沈み込み易く、包埋樹脂を硬化させてから試料素材12を載置する場合は、硬化した包埋樹脂が平坦にならないため、試料素材12が傾斜して配置されるなど、いずれも不具合が生じる。
【0024】
(包埋試料トリミング工程)
この包埋試料トリミング工程は、粗削りの後、精密トリミングすることにより行われる。
まず、得られた包埋試料31を包埋容器22から取り出し、超音波カッター(図示略)で試料素材12の角錐台状の先端部13の周辺部分を含めて全体をトリミングして、
図9の鎖線で示すように包埋樹脂25を一部削り落とす(粗削り)。
【0025】
その後、粗削り後の包埋試料31をミクロトーム用試料台(図示略)に固定し、
図10に示すように、粗削りした部分をダイヤモンドナイフ36でさらに精密にトリミングする(精密トリミング)。この精密トリミングは、試料素材12の先端面13aを露出させるとともに、この先端部13の周囲にほぼ均一な厚さの包埋樹脂25が残った状態にする。例えば、前述の試料素材12の角錐台の先端面13aが50μm~70μmの正方形表面に対して、70μm~100μmの正方形表面となるように角錐台の周囲をほぼ均一な厚さの包埋樹脂25で囲った状態とする。
【0026】
図11は、このようにして精密トリミングされた後の包埋試料32を示しており、試料素材12の先端部13の周囲がほぼ均一な厚さの包埋樹脂25に囲まれているとともに、試料素材12の先端面13aが包埋樹脂25から露出している。
【0027】
(切削工程)
図12に示すように、ミクロトームの超音波振動ダイヤモンドナイフ(切片作製用ナイフ)41上のボート42に蒸留水を張った状態として、その超音波振動ダイヤモンドナイフ41で包埋試料32を切削して切片(断面観察用試料)を作製する。
【0028】
このとき、包埋試料32における試料素材12の先端面13aは、前述したように金属素材2と樹脂素材3とが接合界面4とともに露出しており、
図13に示すように、ダイヤモンドナイフ41の刃41aの長さ方向に対して、この接合界面4が直交する方向となるように配置して切削する。これにより、金属素材2と樹脂素材3との接合材を変形させることなく切削することができる。また、包埋試料32に対する超音波振動ダイヤモンドナイフ41の送り速度(固定状態のダイヤモンドナイフ41に対して包埋試料32を移動するので、包埋試料32の移動速度となる)は0.4mm/秒~0.6mm/秒、送り幅が40nm~80nmが好適である。
【0029】
(切片回収工程)
切片は、ボート42の蒸留水表面に浮かんだ状態であり、これをループと呼ばれる補助具(図示略)を用いて取り出して、透過型電子顕微鏡用グリッドメッシュ(以下、TEM用グリッドメッシュという)上に切片を載置する。
【0030】
このようにしてTEM用グリッドメッシュ上に載置した切片は、このTEM用グリッドメッシュに載置した状態で透過型電子顕微鏡に設置され、観察される。
【0031】
この実施形態の断面観察試料作製方法では、試料素材12の先端部13を小さく削っておき、その小さく削った先端部について、金属素材2と樹脂素材3の周囲を包埋樹脂25で囲った状態の包埋試料32を作製し、包埋樹脂25で囲まれた部分から切片を得るようにしたので、切片が丸まるなどの変形が生じにくい。
この場合、金属素材2と樹脂素材3の接合界面4に対して直交する方向に刃を当てて切削しているため、切片の変形をより確実に抑制することができる。
したがって、変形の少ない高品質の切片により、高精度の断面観察を行うことができる。
【実施例0032】
銅からなる金属素材とエポキシ樹脂からなる樹脂素材との接合材について、上記の方法により包埋試料を作製して、ミクロトームのダイヤモンドナイフにより切片を作製した。
接合素材は、ダイヤモンドナイフ(切片作製用ナイフ)として、DiATOME社のトリミング用ナイフである「trim45」を用いて、前述したような試料素材に加工した。試料素材の先端面は50μm×50μmの正方形とした。また、樹脂素材表面には金属膜として厚さ10nmの金の蒸着膜を施した。
【0033】
シリコン製の包埋容器に、包埋樹脂として常温硬化型エポキシ樹脂(日新EM株式会社製「NER-814」)をスポイトで2、3滴垂らして、ピン状のもので均した後、常温で48時間以上保持して硬化させ、硬化後に、SiC耐水研磨紙#800を用いて研磨することにより、包埋樹脂板を作製した。次いで、この包埋樹脂板を包埋容器に入れて、その上に試料素材を載置し、さらに、その上から新たに常温硬化型エポキシ樹脂を2,3滴たらして硬化させ、試料素材を包埋樹脂中に埋没させた。
【0034】
包埋容器から試料を取り出し、超音波カッター(日新EM株式会社製「EM-240」)とダイヤモンドナイフ(DiATOME社製「trim45」)を用いてトリミングし、
図11に示す形状とした。試料素材の先端面50μm×50μmに対して、包埋樹脂の外形を90μm×90μmとした。具体的には、超音波カッターで150~200μm×150~200μmとした後、ダイヤモンドナイフで90μm×90μmとした。
ミクロトームの超音波振動ダイヤモンドナイフ(DiATOME社製「ULTRA SONIC」)のボートに蒸留水を張り、30分保持した後に、シリンジを用いて水量の調整を行い、送り速度は0.4mm/秒~0.6mm/秒、送り幅が40nm~80nmの条件で包埋試料を切削し、切片を作製した。
【0035】
この場合、試料素材の接合界面とダイヤモンドナイフの刃とを直交させた状態で切削した切片と、接合界面と刃とを平行に配置した状態で切削した切片との二種類を作製した。いずれも、送り幅の厚さで切片が形成される。
得られた切片をループを使用してTEM用グリッドメッシュに載せ、透過型電子顕微鏡で観察した。
【0036】
なお、比較のため、包埋樹脂板を入れずに、試料素材を包埋容器の内底面の上に直接載置し、その上から常温硬化型エポキシ樹脂を数滴垂らして硬化させた包埋試料も作製した。
【0037】
このようにして作製した断面観察用試料としての切片のうち、ダイヤモンドナイフの刃と試料素材の接合界面とを平行にして切削した場合には、一部の切片において、丸まる傾向がみられ、厚さの薄い切片ではTEM用グリッドメッシュに載せられなかったものもあった。
ダイヤモンドナイフの刃と試料素材の接合界面とが直交する方向で切削したものは、変形も少なく、観察試料として提供できる品質のものを得ることができた。
【0038】
図14は実施例の包埋試料から得た切片をTEM用グリッドメッシュに載せた状態の拡大写真である。この切片は厚さ40nmであり、四方が包埋樹脂で固められたため、極薄の切片として回収できた。
図15は比較例の切片をTEM用グリッドメッシュに載せた状態であるが、切片が丸まってしまっている。
実施例の切片を透過型電子顕微鏡で観察した画像が
図16である。この
図16から明らかなように、金属素材と樹脂素材との断面だけでなく、その接合界面を明瞭に捉えることができている。