(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004799
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】展示品吊り下げ具
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20230110BHJP
A47F 5/11 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A47F5/00 D
A47F5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146529
(22)【出願日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021106206
(32)【優先日】2021-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516089810
【氏名又は名称】OSAMU CRAFT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】森 美喜男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118FA05
3B118GA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フック板の横ブレを有効に抑制した展示品吊り下げ具を提供する。
【解決手段】展示品吊り下げ具1であって、取付構造は、当該展示板の展示面を正面視したとき、少なくとも一つの一方の貫通スリット5aと、少なくとも一つの他方の貫通スリット5cとが、逆V字状若しくは八の字状に配されている。フック板11は、一方のフック板13並びに他方のフック板19と、当該一方のフック片と当該他方のフック片を横繋ぎする連結部と、を含めて構成されている。当該一方のフック板の基端部には一方の支持片17が、当該他方のフック板の基端部には他方の支持片が設けられ、当該一方及び他方の支持片それぞれを当該一方及び他方のスリットそれぞれに貫通支持されてなる。貫通スリットを、逆V字状若しくは八の字状に配することで横ブレを有効抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示面と裏面を有するとともに1または複数の取付構造を有する厚紙の展示板と、当該取付構造を介して当該展示板の当該展示面側に取り外し可能に取り付けられた展示品吊り下げ用のフック板とを含めて構成された展示品吊り下げ具であって、
当該取付構造は、当該展示板の展示面を正面視したとき逆V字状若しくは八の字状に配された、少なくとも一つの一方の貫通スリットと、少なくとも一つの他方の貫通スリットとを含めて構成され、
当該フック板は、それぞれ基端部並びに開放端部を有する一方のフック板及び他方のフック板と、当該一方のフック片と当該他方のフック片を横繋ぎすることで正面視逆V字状の姿勢を形成可能とする連結部と、を含めて構成され、
当該一方のフック板の基端部には、当該一方の貫通スリットそれぞれに貫通支持可能な一方の支持片が当該一方の貫通スリットの数と同数設けられ、
当該他方のフック板の基端部には、当該他方の貫通スリットに貫通支持可能な他方の支持片が当該他方の貫通スリットの数と同数設けられ、
当該一方及び他方の支持片それぞれを当該一方及び他方のスリットそれぞれに貫通支持されてなる、
ことを特徴とする展示品吊り下げ具。
【請求項2】
前記少なくとも一つの一方の支持片と前記少なくとも一つの他方の支持片の貫通スリットの何れかの支持片には、前記開放端部を上方傾斜させた状態で、対応する前記貫通スリットに貫通支持させた後、前記開放端部を下降させることにより前記展示板の裏面に当接する裏面当接片が設けられてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の展示品吊り下げ具。
【請求項3】
展示面と裏面を有するとともに1または複数の取付構造を有する厚紙の展示板と、当該取付構造を介して当該展示板の当該展示面側に取り外し可能に取り付けられた展示品吊り下げ用のフック板とを含めて構成された展示品吊り下げ具であって、
当該取付構造は、当該展示板の展示面を正面視したとき逆V字状若しくは八の字状に配された、左右何れかの側に所定間隔を介して略直線状に並ぶ少なくとも二つの一方の貫通スリットと、反対側の少なくとも一つの他方の貫通スリットとを含めて構成され、
当該フック板は、それぞれ基端部並びに開放端部を有する一方のフック板及び他方のフック板と、当該一方のフック片と当該他方のフック片を横繋ぎすることで正面視逆V字状の姿勢を形成可能とする連結部と、を含めて構成され、
当該一方のフック板の基端部には、当該一方の貫通スリットそれぞれに貫通支持可能な一方の支持片が当該一方の貫通スリットの数と同数設けられ、
当該他方のフック片の基端部には、当該他方の貫通スリットに貫通支持可能な他方の支持片が当該他方の貫通スリットの数と同数設けられ、
当該一方及び他方の支持辺それぞれが当該一方及び他方のスリットそれぞれに貫通支持されてなる、
ことを特徴とする展示品吊り下げ具。
【請求項4】
前記少なくとも二つの一方の支持片のうち最上位にある一方の支持片には、前記開放端部を上方傾斜させた状態で、対応する前記貫通スリットに貫通支持させた後、前記開放端部を下降させることにより前記展示板の裏面に当接する裏面当接片が設けられてなる、
ことを特徴とする請求項3記載の展示品吊り下げ具。
【請求項5】
前記他方の貫通スリットの最上端を通過する仮想水平線が、前記少なくとも二つの一方の貫通スリットのうち最上位にある一方の貫通スリットと当該最上位にある一方の貫通スリットの直下にある一方の貫通スリットの間を通過するように位置設定されてなる、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の展示品吊り下げ具。
【請求項6】
前記一方のフック片と前記他方のフック片と前記連結部とは、一枚の厚紙を型抜きして形成され、
前記連結部を挟む前記一方のフック片の端面と前記他方のフック片の端面それぞれには、ハーフカット型抜き跡が形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至5何れか記載の展示品吊り下げ具。
【請求項7】
前記一方のフック片の開放端部と前記他方のフック片の開放端部とは、型抜きした状態で何れか一方が他方より長さ方向に突き出して構成され、かつ、他方側に突き出すフック部が設けられてなる、
ことを特徴とする請求項6記載の展示品吊り下げ具。
【請求項8】
前記少なくとも二つの一方の支持片のうち最下位にある一方の支持片に前記一方の貫通スリットの下端縁を侵入可能とするために下方開口する一方の下端切り欠きが形成され、
前記少なくとも一つの他方の支持片のうち最下位にある他方の支持片に前記他方の貫通スリットの下端縁を侵入可能とするために下方開口する他方の下端切り欠きが形成され、
当該一方及び他方の貫通スリットそれぞれに貫通支持された前記一方及び他方の支持片それぞれを、前記展示板に対し押し下げることで、当該一方の下端切り欠きの中に前記一方の貫通スリットの下端縁が侵入し、かつ、当該他方の下端切り欠きの中に前記他方の貫通スリットの下端縁が侵入して、前記フック板が前記展示面の少なくとも垂直方向に抜け止めされる、
ことを特徴とする請求項3、4、6、7何れか記載の展示品吊り下げ具。
【請求項9】
前記取付構造は、前記展示板を正面視したとき、二つの一方の貫通スリットと、二つの他方の貫通スリットとが、上部共通左右対称の逆V字状に配され、
前記一方の支持片と前記他方の支持片とが、互換可能に構成されることで、
当該一方及び他方の支持片それぞれを当該一方及び他方のスリットそれぞれに、前記展示板の背面側からをも貫通支持可能に構成されてなる、
ことを特徴とする請求項8記載の展示品吊り下げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボード、ディスプレイ板、段ボール板等の厚紙展示板に展示品吊り下げ用のフック板を取付け、商品を代表とする展示品を吊り下げ展示する展示品吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
1または複数の縦方向に延びる長孔を有する取付用台紙板と、前記長孔に着脱可能に装着される1または複数の板紙製商品吊下具とからなる商品展示用具が知られている(特許文献1)。この板紙製商品吊下具は折り合わせた板紙2枚から構成され、両者閉じた状態で一つの長孔を通過させ、通過後に折り合わせの復帰力により開き、取付用台紙板の裏側に差込可能部が、同じく表側に下部側押さえ部がそれぞれ当接することで抜け止めと固定とがなされるようになっている。
【0003】
また、特許文献1の長孔に類似する長孔内に側方から押圧突起が付きだすことにより、長孔に挿入された厚紙製のフックの基端部を押圧して固定補助されるようになっている(特許文献2)。特許文献2の吊り下げ具も、特許文献1のそれと同様に一つの長孔を通過させ、上記固定補助とともに取付用台紙の表裏でフックが当接する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3161386号公報
【特許文献2】特許第6557088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吊り下げ具は、その商品吊り下げ具は、閉じた状態で一つの長孔を通過した板紙2枚が折り合わせの復帰力により開くようになっているが、取付用台紙板との関係は接触摩擦により保たれる。このため、特に横方向のブレが生じやすいという問題点がある。
【0006】
特許文献2の吊り下げ具も、特許文献1の吊り下げ部と同様の問題点がある。すなわち、一つの長孔だけでフック全体の横ブレを効果的に抑制することはとても難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解消するのが本発明の課題であり、以下が課題を解決するための手段である。
【0008】
(請求項1の発明の特徴)
請求項1の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項1の吊り下げ具)は、展示面と裏面を有するとともに1または複数の取付構造を有する厚紙の展示板と、当該取付構造を介して当該展示板の当該展示面側に取り外し可能に取り付けられた展示品吊り下げ用のフック板とを含めて構成された展示品吊り下げ具である。ここで当該取付構造は、当該展示板の展示面を正面視したとき逆V字状若しくは八の字状に配された、少なくとも一つの一方の貫通スリットと、少なくとも一つの他方の貫通スリットとを含めて構成されている。当該フック板は、それぞれ基端部並びに開放端部を有する一方のフック片及び他方のフック片と、当該一方のフック片と当該他方のフック片を横繋ぎすることで正面視逆V字状の姿勢を形成可能とする連結部と、を含めて構成されている。当該一方のフック片の基端部には、当該一方の貫通スリットそれぞれに貫通支持可能な一方の支持片が当該一方の貫通スリットの数と同数設けられ、当該他方のフック片の基端部には、当該他方の貫通スリットに貫通支持可能な他方の支持片が当該他方の貫通スリットの数と同数設けられている。その上で、当該一方及び他方の支持片それぞれが当該一方及び他方のスリットそれぞれに貫通支持されてなる、ことを特徴とする。
【0009】
(請求項2の発明の特徴)
請求項2の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項2の吊り下げ具)は、請求項1の吊り下げ具の好ましい態様として、前記少なくとも一つの一方の支持片と前記少なくとも一つの他方の支持片の貫通スリットの何れかの支持片には、前記開放端部を上方傾斜させた状態で、対応する前記貫通スリットに貫通支持させた後、前記開放端部を下降させることにより前記展示板の裏面に当接する裏面当接片が設けられてなる、ことを特徴とする。
【0010】
(請求項3の発明の特徴)
請求項3の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項3の吊り下げ具)は、展示面と裏面を有するとともに1または複数の取付構造を有する厚紙の展示板と、当該取付構造を介して当該展示板の当該展示面側に取り外し可能に取り付けられた展示品吊り下げ用のフック板とを含めて構成された展示品吊り下げ具である。ここで当該取付構造は、当該展示板の展示面を正面視したとき逆V字状若しくは八の字状に配された、左右何れかの側に所定間隔を介して略直線状に並ぶ少なくとも二つの一方の貫通スリットと、反対側の少なくとも一つの他方の貫通スリットとを含めて構成されている。当該フック板は、それぞれ基端部並びに開放端部を有する一方のフック片及び他方のフック片と、当該一方のフック片と当該他方のフック片を横繋ぎすることで正面視逆V字状の姿勢を形成可能とする連結部と、を含めて構成されている。当該一方のフック片の基端部には、当該一方の貫通スリットそれぞれに貫通支持可能な一方の支持片が当該一方の貫通スリットの数と同数設けられ、当該他方のフック片の基端部には、当該他方の貫通スリットに貫通支持可能な他方の支持片が当該他方の貫通スリットの数と同数設けられている。その上で、当該一方及び他方の支持辺それぞれが当該一方及び他方のスリットそれぞれに貫通支持されてなる、ことを特徴とする。
【0011】
(請求項4の発明の特徴)
請求項4の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項4の吊り下げ具)は、請求項3の吊り下げ具の好ましい態様として、前記少なくとも二つの一方の支持片のうち最上位にある一方の支持片には、前記開放端部を上方傾斜させた状態で、対応する前記貫通スリットに貫通支持させた後、前記開放端部を下降させることにより前記展示板の裏面に当接する裏面当接片が設けられてなる、ことを特徴とする。
【0012】
(請求項5の発明の特徴)
請求項5の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項5の吊り下げ具)は、請求項3又は4の吊り下げ具の好ましい態様として、前記他方の貫通スリットの最上端を通過する仮想水平線が、前記少なくとも二つの一方の貫通スリットのうち最上位にある一方の貫通スリットと当該最上位にある一方の貫通スリットの直下にある一方の貫通スリットの間を通過するように位置設定されてなる、ことを特徴とする。
【0013】
(請求項6の発明の特徴)
請求項6の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項6の吊り下げ具)は、請求項1乃至5何れかの吊り下げ具の好ましい態様として、前記一方のフック片と前記他方のフック片と前記連結部とは、一枚の厚紙を型抜きして形成され、前記連結部を挟む前記一方のフック片の端面と前記他方のフック片の端面それぞれには、ハーフカット型抜き跡が形成されてなる、ことを特徴とする。
【0014】
(請求項7の発明の特徴)
請求項7の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項7の吊り下げ具)は、請求項6の吊り下げ具の好ましい態様として、前記一方のフック片の開放端部と前記他方のフック片の開放端部とは、型抜きした状態で何れか一方が他方より長さ方向に突き出して構成され、かつ、他方側に突き出すフック部が設けられてなる、ことを特徴とする。
【0015】
(請求項8の発明の特徴)
請求項8の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項8の吊り下げ具)は、請求項3、4、6、7何れかの吊り下げ具の好ましい態様として、前記一方の支持片に前記一方の貫通スリットの下端縁を侵入可能とするために下方開口する一方の下端切り欠きが形成され、 前記他方の支持片に前記他方の貫通スリットの下端縁を侵入可能とするために下方開口する他方の下端切り欠きが形成されている。当該一方及び他方の貫通スリットそれぞれに貫通支持された前記一方及び他方の支持片それぞれを、前記展示板に対し押し下げることで、当該一方の下端切り欠きの中に前記一方の貫通スリットの下端縁が侵入し、かつ、当該他方の下端切り欠きの中に前記他方の貫通スリットの下端縁が侵入して、前記フック板が前記展示面の少なくとも垂直方向に抜け止めされる、ことを特徴とする。
【0016】
(請求項9の発明の特徴)
請求項9の発明に係る展示品吊り下げ具(請求項9の吊り下げ具)は、請求項8の吊り下げ具の好ましい態様として、前記取付構造は、前記展示板を正面視したとき、二つの一方の貫通スリットと、二つの他方の貫通スリットとが、上部共通左右対称の逆V字状に配されている。前記一方の支持片と前記他方の支持片とが、互換可能に構成されることで、当該一方及び他方の支持片それぞれを当該一方及び他方のスリットそれぞれに、前記展示板の背面側からをも貫通支持可能に構成されてなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の貫通スリットを介してフック板を貫通支持するので、展示板に対して横ブレが抑制され安定した展示品吊り下げ具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る(以下、
図10まで同じ)展示品吊り下げ具の正面斜視図である。
【
図6】一枚の厚紙からフック板を型抜きする様子を示す平面図である。
【
図7】フック板を下左側から見た斜視図(a)、同下右側から見た斜視図(b)、上左側から見た斜視図(c)である。
【
図8】(a)→(b)→(c)順の取付手順を示す展示品吊り下げ具の斜視図である。
【
図9】取付手順を示す展示品吊り下げ具の部分拡大左側面図である。
【
図10】
図3に示す展示品吊り下げ具のX-X断面図である。
【
図11】本実施形態の変形例に係る(以下、同じ)展示品吊り下げ具の正面斜視図である。
【
図12】展示品吊り下げ具に係る展示板の正面図(a)及び背面図(b)である。
【
図13】上段にフック板を支持した展示品吊り下げ具の正面図である。
【
図14】上段にフック板を支持した展示品吊り下げ具の背面図である。
【
図18】フック板の取付手順を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。本実施形態では、
図3に示す状態を正面視の状態といい、これを基準に左右上下表裏の方向を定義する。なお、以下、展示品吊り下げ具のことを、単に「吊り下げ具」と呼ぶ。さらに、以下では具体的な寸法や形状を示すが、これは次に説明する吊り下げ具の大きさ感を含むイメージを読者が掴みやすくするためのものであって、その値や形状に限定されるものではない。いずれの寸法や形状も、本発明の目的から外れない限り、適宜変更して設計することができる。また、本願では「一方」と「他方」という表現を用いるが、これらは何れかを特定する意味ではなく、一方と他方が逆になってもそれらが意味することに変わりはない。
【0020】
(吊り下げ具の全体構造)
図1乃至4が示すように、吊り下げ具1は、展示板3とフック板11とを主要部材とする。展示板3は、互いに同じ構造の取付構造5を二つ(1でもよいし、3以上でもよい、上下複数の列を複数としてもよい)有している。取付構造5は、フック板11と協働してフック板11全体を展示板3に取り付けつけるためのものである。
【0021】
(展示板の構造)
展示板3は、表面となる展示面厚紙を型抜き加工して縦長四角形に形成されている。展示板3の展示品の大きさや展示場所の違いによって様々な寸法を設定できるが、本実施形態の展示板3の概略寸法は、縦500mm横100mmである。展示品の重さに耐える剛性が十分であるなら設ける必要はないが、反り返り防止のため展示板1の裏面両側それぞれには、展示板3のそれと同じ縦寸法で横幅3分の1弱の幅寸法の裏板3c,3cが接着層(図示を省略)を介して貼り付けられている(
図2、4)。裏板3aの幅寸法は、上記以外でもよいが、取付構造5の機能を害するものであってはならない。裏板3c,3cそれぞれの上端の近くには、紐孔3h,3hが貫通しており、そこに通した吊り紐Sを使って吊り下げ具1を展示品G(
図5)とともに、図外の壁や展示什器などに吊り下げることができる。なお、見やすくするため、
図1、2以外の図面では吊り紐Sを省略する。
【0022】
展示板3の材質は、展示品吊り下げに耐える十分な剛性があり極端に加工しづらくないものであれば特に限定はない。たとえば合成樹脂板を用いることもできるが、環境負荷を軽減するなどの目的のため本実施形態では、複数枚の紙を接着剤で張り合わせ積層して1枚の厚紙に仕上げた合紙を用いている。付け加えると、表裏の一番外になる紙は、光沢のある光沢紙になっている。展示品を引き立てて見栄えをよくするためである。光沢紙の採用は使用者の好みであるから、採用しないでもよい。展示板3の表面は展示品Gによって隠れる部分が多いが、これを表示部と捉え、その表面に、たとえば、展示品Gが吊り下げられる場所にその絵を印刷しておくこともできる。展示品Gが売れて展示板3の表面が露出したとしても、そこに絵があれば、品切れ感が薄れ広告媒体として機能させることができるからである。
【0023】
本実施形態の展示板3は、上述のように縦長四角形としたが、装飾的な効果を足すための別の形、たとえば、縦長楕円形や縦長ひし形としてもよい。また、展示板3の角部に丸みを設けたり、切り欠きや打ち抜き孔などを形成したりすることも妨げない。いずれの場合にあっても、吊り下げ具としての強度を保てることが前提であることは言うまでもない。
【0024】
(取付構造の詳細構造)
図1乃至7を参照する。取付構造5は、フック板11と協働してフック板11全体を展示板3に取り付けつけるためのものであることは、前述の通りである。取付構造5は、展示板3の所定位置に貫通形成された複数(本実施形態では合計三つ、少なくとも二つあればよく、四つ以上でもよい)の貫通スリット5a~5cにより構成されている。貫通スリット5a~5cは、後述する支持片を圧入して貫通支持するという目的を達成できる範囲で様々な形状を採択しうるが、本実施形態では、いずれも略同じ大きさの角部に小さな丸みを持った細長四角形(もしくは、細長楕円形)に形成されている。
【0025】
これら三つの貫通スリット5a~5cは、展示面3aを正面視したとき、中央から右側に所定間隔を介して略直線状に並ぶ貫通スリット5a,5b(一方の貫通スリット)が、同じく左側に貫通スリット5c(他方の貫通スリット)が配され、左右のスリット全体で漢字の「八」の字状になっている。ここで八の字状と表現したのは、書き順でいう左側の画は右側の画より短く、左側の画の上方向延長線が右側の画の画を横切る位置関係にあるからであるが、文字通り厳密なものではなく、一般的に末広がり形状と解釈すべきものである。逆V字状若しくはカタカナ「ハ」の字状もこの末広がり形状に含まれる。左右対称であってもよいし、非対称であってもよい。上記の一方の貫通スリットと他方の貫通スリットが反対となってもよい。
【0026】
次は、貫通スリット同士の好ましい位置関係について解説する。一方の貫通スリットのうち最上位にある貫通スリット5aとその直下にある貫通スリット5bとは、所定間隔(本実施形態では、8mm前後に設定)を介して略直線状に並んでいる。本実施形態では採用しないが、一方の貫通スリットを本実施形態の二つから三つ又は四つ以上とすることを妨げず、その場合も互いに所定間隔を介して略直線状に並べることになる。この点は、他方の貫通スリットを二つ以上設ける場合にあっても同じである。
【0027】
図3に示すように、他方の貫通スリットである貫通スリット5cの最上端を通過する仮想水平線L1が、貫通スリット5aと貫通スリット5bの間を通過するように位置設定されている。別の言い方をすると、貫通スリット5a~5cが、庭に置かれる飛び石のように交互に配置されている。飛び石配置の代わりに、後述する本実施形態の変形例のような対称配置を採用することもできるが、このように飛び石配置を採用した一つの理由は、展示板3の強度をなるべく損ねないようにするためである(他の理由については、後述する)。そうすると、素材合紙の過剰品質を避けられるので、その分コスト的に有利となる。
【0028】
(フック板の構造)
図1,6、7を中心に参照する。まず、材質であるが、フック板11は、合成樹脂やアルミニウムなどの金属を素材とすることもできるが、本実施形態では、その好ましい態様として、適切な剛性をもった厚さ3mm前後の厚紙を採用した。紙製であれば、同じく紙製の展示板3とともに廃棄(場合によってはリサイクル)できるので、環境に対する負荷が小さくて済むからである。本実施形態のフック板11の素材は、紙または板紙を積層圧着させて乾燥した厚紙を使用し、これを後述するように型抜きして作ったものである。次に、フック板11の構造を説明する。なお、フック板11を、パルプを金型成形してなる成形パルプとしてもよい。
【0029】
フック板11は、一方のフック片13と、他方のフック片19と、一方のフック片13と他方のフック片19を横繋ぎする連結部25により概略構成されている。一方のフック片13は貫通スリット5a,5bに対応し、他方のフック片19は貫通スリット5cに対応する。フック板11を正面視すると連結部25を頂部とする逆V字状になっている(
図3)。なお、連結部25の構造については、後述のフック板の製造方法の説明の中で解説する。
【0030】
フック片13は、展示板3に近い側に基端部13aを、その反対側に開放端部13bを、それぞれ有している。フック片13の開放端部13bは、フック片19の開放端部19bより長さ方向に突き出して構成され、かつ、後述する型抜きした状態の開放端部13bは開放端部19b側に突き出してフック部が構成されている(
図6)。基端部13aには、貫通スリット5aに貫通可能な支持片(裏面当接片15)と、貫通スリット5bに貫通可能な支持片17とが、取付姿勢時にそれぞれ展示板3に向かってせり出している(
図1に示す下側のフック板11)。なお、上記構造とは逆に、フック片19の開放端部19bを、フック片13の開放端部13bより長さ方向に突き出させ、それをフック部としてもよい。
【0031】
本実施形態の支持片15は、弧端面15aと弦端面15bによって画定された略半円形状をなしていて、その上半分がフック片13の接続部21上端から上方に突き出ている。略半円形状としたのは、開放端部13bを上方傾斜させた状態(
図8(a)に示す状態)での圧入により貫通スリット5aを貫通させた後、上方傾斜している開放端部13bを水平方向に下降させることを容易かつ安定に行わせるためである。開放端部13bを下降させることで支持片15は支持片15のつけ根を中心として回転移動し、やがて弦端面15cを展示板3の裏面3bに当接して停止する(
図2)。この回転移動の間、弧端面14bが貫通スリット5aの下端縁に摺動し続け、これによって回転移動を下支えする。つまり、安定した回転移動に貢献する。略半円形状以外の形状の採用は可能だが、同形状を採用した理由は、上記した回転移動の安定した下支えにある。
【0032】
支持片17は、先端膨出部17aと、先端膨出部17aと基端部13aとを連結するくびれ部17bとを主要部材とする。先端膨出部17aは、抜け止めのためくびれ部17bに比べ扁平楕円状に膨らんでいる。先端膨出部17aは、これを貫通スリット5bに強く押し入れることで、先端膨出部17aと貫通スリット5bの周縁とを僅かに変形させ貫通する。貫通後は先端膨出部17aが抜け止めとなって、支持片17が展示板3に安定的に支持される。フック片13が支持片15と支持片17という二つの支持片を有するのは、二つの一方の貫通スリットとなる貫通スリット5a,5bと同数にしたためである。一方の貫通スリットを一つ若しくは三つ以上としたときは、これらと同数の支持片を設けることになる。
【0033】
フック片19は、展示板3の側に基端部19aを、反対側に開放端部13bを、それぞれ有している。基端部19aには、貫通スリット5cに貫通可能な支持片21が展示板3に向かってせり出している。支持片21は、先端膨出部21aと、先端膨出部21aと基端部19aとを連結するくびれ部21bとを主要部材とする。先端膨出部21aは、抜け止めのためくびれ部21bに比べ扁平楕円状に膨らんでいる。先端膨出部21aは、これを貫通スリット5cに強く押し入れることで、先端膨出部21aと貫通スリット5cの周縁とを僅かに変形させ貫通を許す。貫通後は先端膨出部21aが抜け止めとなって、支持片21が展示板3に安定的に支持される。他方の支持片となる支持片21が一つなのは、貫通スリット5cが一つだからであり、他方の貫通スリットを二つ以上としたなら、これらと同数の他方の支持片を設けることになる点は、先に述べた一方の支持片の場合と異ならない。
【0034】
(フック板の製造方法)
前述の通り好ましい態様のフック板11の素材は、紙または板紙を積層圧着させて乾燥した厚紙を使用し、これを型抜きして作ったものである。
図6は、一枚の厚紙51からフック板11a~11cを同時型抜きする様子を示す。
図6において、11a~11cという符号を使うが、これは、複数同形のフック板11のそれぞれを区別するためだけに使用する符号である。フック板11a~11cのように、基端部と開放端部を互い違いに配置することで、同じ一枚の厚紙51から多数のフック板を同時に作ることができる。
【0035】
図6の符号53は、
図6の右端のフック板11cを型抜きした後、厚紙51に残る抜き開口を示す。
図6のフック板11cから明らかなように、型抜きした状態で開放端部13bがフック片19bの先方(
図6の右側)にせり出している。これは、一枚の厚紙51からフック板11、すなわち、型抜きする際に、
図5が示すように、展示品Gを容易に落下させないための上向き傾斜を、フック片19と干渉せずにフック部13bに持たせるためである。別の観点から言えば、両フック片に上向き傾斜を持たせることは、両方からせり出して互いに干渉し合うので不可能である。
【0036】
型抜きのときの連結部25は、ハーフカット型抜きして積層された紙の裏面側一部を残すことで形成するとよい。フルカットの輪郭型抜きと同時に連結部25を形成できるので手間が省けるからである。残された紙がヒンジのように機能してフック部13とフック部19との横繋ぎを簡単に行うことができる。ハーフカットの型抜きにより、連結部25を挟むフック板13の端面とフック板19の端面それぞれには、ハーフカット型抜き跡が形成されることになる(
図10)。もっとも、ハーフカットの代わりにフルカットすることでフック片13とフック片19を完全分離することを妨げない。完全分離した場合は、柔軟な粘着テープなど(図示せず)を貼ることでフック片13とフック片19を横繋ぎすることができる。
【0037】
(フック板の取付手順)
図8乃至10を参照する。最上位にある支持片15には、フック板11の開放端部13bを上方傾斜させた状態で(
図8(a)、
図9)、対応する貫通スリット5aに貫通支持させ(矢印A)、その後、開放端部13bを矢印Bで示すように下降させることにより(
図8(b)、
図9)、支持片15は、展示板3の裏面3bに当接して裏面当接片として機能し(
図10)、それ以上の下降を止めるとともに位置決めを行う。次いで、支持片17を貫通スリット5bに、支持片21を貫通スリット5cに、それぞれ圧入する(
図8(c)、
図9)。フック板11は、支持片15,17,21により三点支持されるので、展示板3の非常に安定的である。フック板11の取り外しは、上記手順を逆に行えばよい。なお、
図10に示す連結部25(ハッチングの部分)は、理解を助けるため、その厚さを誇張して描いてある。
【0038】
(本実施形態特有の効果)
厚紙製の展示板3の弾性を利用した取り付け・取り外しは簡単であるから、たいへん使い勝手がよい。
図3に示す正面視のフック板11は、左右のバランスが崩れているが、生け花がそうであるように、きっちりと左右対称とならない方が美観を生じさせる場合は少なくない。吊り下げ具1は、その左右のアンバランスが見る者に美観を生じさせるといえる。
【0039】
(本実施形態の変形例)
図11乃至17を参照しながら、本実施形態の変形例(以下、「本変形例」という)を説明する。本実施形態の吊り下げ具1と本変形例の吊り下げ具61との違いは、第1は支持片の形態であり、第2は取付構造の形態である。上記2点以外の基本形態については、本実施形態と本変形例とにおいて共通する。よって、本欄では両者の構造的に異なる部材を中心に説明し、共通部分についての説明は理解を妨げない範囲で省略する。また、本実施形態と本変形例との間の部材の対応を理解しやすくするために、本実施形態で使用した部材符号を本変形例の対応部材の部材符号を共通化し、後者の部材符号にダッシュ「´」を付してある。
【0040】
(取付構造の詳細構造)
図11乃至14を参照しながら、本変形例の取付構造5´の説明を行う。取付構造5´が本実施形態の取付構造5と異なる点は、2点ある。そのうち1点は貫通スリットが5´が正面視左右二つずつの合計四つ(5´a~5´d)ある点である。5´dは、支持片15´を貫通支持させるためのスリットである。残りの1点は、左右の上にある貫通スリット5´aと貫通スリット5´dとが上部共通(本変形例では上5分の4ほどが重なっている)左右対称の逆V字状に配されている点である。このように配することで、展示板3´を裏返しても同じ形の取付構造5´が現れることになる。つまり、展示板5´をリバーシブル化することができ、これにより
図12(a)の展示面3aを商品A用とし、同じ展示版3´の裏面3´bを商品B用とするなどの使用が可能になる。
【0041】
(支持片の構造)
二つあるうちの最下位にある支持片17´のくびれ部17bには、貫通スリット5´bの下端縁7´bを僅かな遊びを持たせて侵入可能とするために下方開口する下端切り欠き17´cが形成されている。また、二つあるうちの最下位にある支持片21´のくびれ部21bには、貫通スリット5´cの下端縁7´cを僅かな遊びを持たせて侵入可能とするために下方開口する下端切り欠き21´cが形成されている。
【0042】
ここで、
図18(a)(b)に示すように貫通スリット5´b、5´cそれぞれに貫通支持された支持片17´、21´(先端膨出部17´a、21´a)それぞれを、展示板3´に対し押し下げる(
図18(c)下向き矢印)ことで、下端切り欠き17´cの中に貫通スリット5´bの下端縁7bが侵入し、かつ、下端切り欠き21cの中に貫通スリット5´cの下端縁7cが侵入して、フック板11´が展示面3aの少なくとも垂直方向(
図18の右水平方向)に抜け止めされる。これにより、展示板3´に対するフック板11´の貫通支持がより安定する。ただし、この時点で貫通スリット5´dは使用されない。不使用の理由は、次で述べる。なお、貫通スリット5´dが不使用であることから、フック板11´は本実施形態の展示板3の取付構造5にも使用可能であることが理解されよう。
【0043】
」
ここで好ましくは、支持片17´と支持片21´を同じ形状、具体的には、連結部25を通過する仮想線L2(
図15)を対象軸として左右対称に形成する。換言すると、支持片17´と支持片21´とが、左右対称とはならないまでも互換可能になることである。支持片15´17´、21´それぞれをスリット5´b、5´cそれぞれに、展示板3´背面3´bの側からをも貫通支持可能になる。つまり、展示具1´全体のリバーシブル化が実現する。
【符号の説明】
【0044】
1 展示品吊り下げ具(吊り下げ具)
3 展示板
3a 展示面
3b 裏面
3c 裏板
3h 紐孔
5,5´ 取付構造
5a~5c 貫通スリット
5‘a~5’d 貫通スリット
7´b、7´d 下端縁
11 フック板(11a~11c)
13 フック片(一方のフック片)
13a 基端部
13b 開放端部(フック部)
15 支持片(一方の支持片、裏面当接片)
15a 弧端面
15b 弦端面
17,17´ 支持片(一方の支持片)
17a 先端膨出部
17b くびれ部
17c 下端切り欠き
19 フック片(他方のフック片)
19a 基端部
19b 開放端部(フック部)
21 支持片
21a 先端膨出部
21b くびれ部
21c 下端切り欠き
25 連結部
51 厚紙
53 抜き開口
A 矢印
G 展示品(商品)
L1 仮想水平線
S 吊り紐