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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048031
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】衛生陶器
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20230330BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20230330BHJP
   C04B 33/34 20060101ALI20230330BHJP
   C04B 33/24 20060101ALI20230330BHJP
   C04B 33/13 20060101ALI20230330BHJP
   E03D 11/02 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
C04B41/86 A
C03C8/04
C04B33/34
C04B33/24
C04B33/13
C04B41/86 R
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157281
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿野 知史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 直樹
(72)【発明者】
【氏名】亀重 裕由
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 義則
【テーマコード(参考)】
2D039
4G062
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AA04
2D039AD00
4G062AA08
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC03
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE03
4G062EE04
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
4G062FC04
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM07
4G062NN29
(57)【要約】
【課題】 低吸水性、低軟化変形性、低焼成収縮性、高強度、耐冷め割れ性、および軽量性を兼ね備える衛生陶器が開示されている。
【解決手段】 この衛生陶器は、熔化素地質の陶器素地と釉薬層とを備え、前記素地の一部が釉薬層なしに外部に露出している衛生陶器であって、前記素地が、(A)アノーサイトと、(B)アルカリ成分とを含有し、アルカリ成分の量が酸化物(AO)換算で、前記素地に対して5~10重量%であり、前記素地の閉気孔率が12~15容積%とされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熔化素地質の陶器素地と釉薬層とを備え、前記素地の一部が釉薬層なしに外部に露出している衛生陶器であって、
前記素地が、
(A)アノーサイトと、
(B)アルカリ成分とを含有し、
ここで、前記アルカリ成分の量が酸化物(AO)換算で、前記素地に対して5~10重量%であり、前記素地の閉気孔率が12~15容積%であることを特徴とする、衛生陶器。
【請求項2】
前記素地が、(C)コランダム、シャモット、クオーツ、中空シリカ、中空アルミナ、ジルコニア、ジルコン、コージエライト、ムライトからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項3】
前記(C)成分がコランダムである、請求項2に記載の衛生陶器。
【請求項4】
前記釉薬層が、SiOを55~80重量部、Alを5~13重量部、Feを0.1~0.4重量部、MgOを0.8~3.0重量部、CaOを8~17重量部、ZnOを3~8重量部、KOを1~4重量部、そしてNaOを0.5~2.5重量部含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の衛生陶器。
【請求項5】
前記釉薬層が、さらに、ZrOを0~15重量部、顔料を0~20重量部含有する、請求項4項に記載の衛生陶器。
【請求項6】
前記素地の吸水率が2%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の衛生陶器。
【請求項7】
前記素地が、カルシウムを、酸化物(CaO)換算で、3~10重量%含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の衛生陶器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器、洗面器等で使用される衛生陶器に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生陶器はその重量が食器などに比べかなり大きいため、ガラス質が多い磁器を用いると焼成中に自重による変形が非常に大きくなり、製造が困難となる。一方、ガラス質が少なく結晶質の多い陶器を用いると、釉薬が施されていない部分で吸水性が生じる。そのため汚水を吸う、凍害により破損するなどの問題を生じるおそれがある。そこで、衛生陶器では、磁器と陶器の間にあたる、焼成中の変形を抑え、極力吸水性を小さくした熔化素地質の陶器素地を用いている。
【0003】
すなわち、現在、衛生陶器は、一般的に、熔化素地質の陶器素地と、釉薬層とを備え、前記熔化素地質の大部分は釉薬層が形成され、前記熔化素地質の一部は露出してなる構造体となっている。例えば、便器の場合、このような構造であることにより、着座荷重でほとんど変形せず、充分な強度を保持するとともに、表面に傷が生じにくく、衛生性が保持される。また、熔化素地質の陶器素地が緻密化され、吸水性をできるだけなくしていることから、露出部分の吸水性による不具合も防止される。
【0004】
衛生陶器は、陶磁器製品の中でも比較的大型でかつ複雑な形状をとっているため、製品の強度を保つために肉厚の構造になっている。従来の上記素地において、その曲げ強度は50~80MPaであり、この強度では、製品の肉厚は7~12mm程度必要である。そのために、製品重量が大きくなり、運搬・施工・大型化において、より軽量な衛生陶器が依然求められていた。
【0005】
また、衛生陶器は、その大型さゆえに成形体の自重は大きくなり、焼成中において重力の影響による軟化変形の影響を著しく受ける。さらに、衛生陶器は吸水性を可能な限り低くするために素地を緻密に焼しめる必要がある。その際に素地内部の気泡が外部に移動してしまうため焼成収縮が大きくなる。これらの軟化変形や焼成収縮への対策としては一般的には割り掛けと呼ばれる、焼成による変形を予測し狙いの形状よりも大きく成形体を作成する処置が行われる。しかし、焼成温度ばらつき等の影響による軟化変形量のばらつきを抑えることは難しく、場合によっては研磨等による修正作業が必要となる。また、焼成収縮率が大きい場合、割り掛けによる大面積における直線性の再現は難しい。さらに、近年は製品の大型化が進む傾向があり、割り掛けにより成形体を大きくする場合には成形設備の大型化も必要となり既存設備では対応できなくなる。つまり、衛生陶器は軟化変形や焼成収縮によりデザイン性や生産性で大きな制約を受けている。
【0006】
また、大きく複雑な構造が原因で窯から出てきた際に焼成体内部で大きな温度差が生じやすく、この温度差により製品内部で熱膨張差に起因する応力が生じる。この発生応力が素地強度を越えた場合に冷め割れと呼ばれる欠点が発生する。着座等による繰り返し荷重を受ける衛生陶器にとって強度は重要な設計因子であり、強度を低下させる冷め割れは致命的な問題であるため、冷め割れが発生した場合には製品の歩留まりは大きく低下する。そのため、強度と低吸水性を担保しつつ軟化変形と焼成収縮を抑えることのできる、冷め割れに強い衛生陶器が求められていた。
【0007】
曲げ強度を上記以上に維持させ、吸水性を低めつつ、製品重量を低める技術が従来提案されている。
【0008】
例えば、特開2000-319061(特許文献1)には、素地とその上の必要な部分に形成される釉薬層からなる陶磁器であって、前記素地の中央部は吸水性のある陶器質素地からなり、前記素地の表面のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分では、吸水性が前記素地の中央部よりも小さくなるように、アルカリ成分を成形体に含浸させた後に焼成することが開示されている。
【0009】
特開2002-68821(特許文献2)には、陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、前記素地を構成する主成分が、SiO:50~75wt%、Al:20~45wt%、NaO:0.5wt%以上であり、また、NaOと、LiO、KOからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分と、CaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分との和が2~6wt%であり、さらに結晶として石英、クリストバライト、ムライト、コランダムの中から選ばれた少なくとも1種類以上を含み、全結晶量が素地全体100に対して10~60wt%であることを特徴とする衛生陶器が開示されている。本技術は軟化変形量を抑えているが、焼成収縮は抑制できていない。
【0010】
特開2001-348263(特許文献3)には、陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、前記素地は、ムライト及び石英を主成分とする結晶相と、SiO、Alを主成分とするガラス相と、必要に応じてクリストバライト、アンダルサイト、シリマナイト、カイヤナイト、コランダムから選ばれた鉱物からなる結晶相とを含む素地であり、素地の主要な成分がSiO:50~65wt%、Al:30~45wt%、アルカリ酸化物0.1~2wt%、2価金属酸化物0.1~10wt%であり、前記2価金属酸化物成分として、少なくともCaO成分を含有し、前記素地中に前記CaO成分が偏析しているCaO成分偏析部が散在していることを特徴とする衛生陶器が開示されている。本技術は焼成収縮と軟化変形を抑えているが、低吸水性を実現できていない。
【0011】
特開2002-68825(特許文献4)には、陶石、珪石、蝋石、シャモット、バン土頁岩、カオリンに代表される骨格形成材料と蛙目粘土、木節粘土、カオリンに代表される可塑性原料、珪灰石、石灰石、灰長石に代表されるカルシウム原料、場合によっては、長石、ドロマイトに代表される焼結助剤原料からなる窯業原料を成形して成形素地を得る成形工程と、必要に応じて必要な部分に施釉する施釉工程と、焼成工程とを含む方法により製造可能な衛生陶器用素地において、前記成形工程の成形素地の充填率が68体積%以上であり、かつ、素地の主成分の組成が、SiO:45~70重量%、Al:25~50重量%であり、その他の組成成分として、NaO、KO、LiOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物及び/又はCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を含み、NaO、KO、LiOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物の総量が2重量%以下であり、かつNaO、KO、LiOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物とCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物の総量が10重量%以下であり、アルカリ土類金属酸化物成分として、少なくともCaO成分を含有することを特徴とする陶磁器が開示されている。
【0012】
WO97/26223(特許文献5)には、結晶相とガラス相から構成され、ガラス相にアルカリ酸化物とアルカリ土類酸化物を含む陶磁器素地において、前記アルカリ酸化物とアルカリ土類酸化物の総量に対するアルカリ土類酸化物のモル比が30mol%以上であることを特徴とする陶磁器素地が開示されている。
本技術は、焼成変形量を低めているが、低吸水性と軽量化の両立はできていない。
【0013】
特開2001-287981(特許文献6)には、陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、前記素地を構成する主成分の組成がSiO2:45~70重量%、Al:25~50重量%であり、前記素地中には、さらにアルカリ金属酸化物及びCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物が併せて6重量%以下含有されており、前記素地中におけるアルカリ金属酸化物量は2重量%以下であり、アルカリ金属酸化物のうちの必須成分としてNaOを、任意成分としてKOを含有し、かつ、NaOとKOとの合計量に対してNaOが20重量%以上であることを特徴とする衛生陶器が開示されている。
【0014】
特開2002-255630(特許文献7)には、陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、前記素地を構成する主成分の組成がSiO:45~70重量%、Al:25~50重量%であり、前記素地中には、更にアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物が併せて10重量%以下含有されており、前記素地中におけるアルカリ金属酸化物量は2重量%以下であり、アルカリ土類金属酸化物のうちの必須成分としてCaOとMgOとを含有しており、CaOとMgOとの合計量に対してMgOが20重量%以上であることを特徴とする衛生陶器が開示されている。
【0015】
特開2002-80266(特許文献8)には、陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、前記素地は、ムライト及び石英を主成分とする結晶相と、SiO、Alを主成分とするガラス相と、必要に応じてクリストバライト、アンダルサイト、シリマナイト、カイヤナイト、コランダムから選ばれた鉱物からなる結晶相とを含む素地であり、素地の主要な成分がSiO:50~65wt%、Al:30~45wt%、アルカリ酸化物0.1~2wt%、2価金属酸化物0.1~10wt%であり、前記2価金属酸化物成分として、少なくともCaO成分を含有し、前記素地中に前記CaO成分が偏析しているCaO成分偏析部が散在しており、前記素地原料として、アスペクト比が10以上の繊維状ワラストナイトを使用したことを特徴とする衛生陶器が開示されている。本技術は焼成収縮を抑え、高強度と軽量化を両立できているが、低吸水性は実現できていない。
【0016】
特開2011-162376(特許文献9)には、少なくともムライト、石英、アノーサイトを主成分とする結晶相とSiO、Alを主成分とするガラス相からなる焼成体素地において、前記焼成体素地中にはアノーサイトに周りを取り囲まれた独立気孔が多数形成され、嵩密度が2.0~2.4g/cm3であることを特徴とする軽量陶器が開示されている。
【0017】
さらに特開2002-97068(特許文献10)、特開2002-114565(特許文献11)、特開2002-114566(特許文献12)にも曲げ強度を維持させつつ、製品重量も低めていた衛生陶器が開示されている。
【0018】
一方、衛生陶器用の釉薬としては、例えば、WO99/61392(特許文献13)に記載の釉薬が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2000-319061
【特許文献2】特開2002-68821
【特許文献3】特開2001-348263
【特許文献4】特開2002-68825
【特許文献5】WO97/26223
【特許文献6】特開2001-287981
【特許文献7】特開2002-255630
【特許文献8】特開2002-80266
【特許文献9】特開2011-162376
【特許文献10】特開2002-97068
【特許文献11】特開2002-114565
【特許文献12】特開2002-114566
【特許文献13】WO99/61392
【特許文献14】特開平4-2679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
衛生陶器について、低吸水性を確保しつつ、強度を維持して製品重量を低くでき、焼成収縮と軟化変形を抑え、冷め割れに強い技術が依然として求められている。
【0021】
本発明は、低吸水性、軽量性、低焼成収縮性、低軟化変形性、高強度および耐冷め割れ性を兼ね備えうる衛生陶器を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、今般、熔化素地質において、従来の知見では衛生陶器の組成としては適切とは言い難い組成により、低吸水性、軽量性、低焼成収縮性、低軟化変形性、高強度および耐冷め割れ性を兼ね備えうる衛生陶器が実現できるとの知見を得た。本発明は係る知見に基づくものである。
【0023】
そして、本発明による衛生陶器は、
熔化素地質の陶器素地と釉薬層とを備え、前記素地の一部が釉薬層なしに外部に露出している衛生陶器であって、
前記素地が、
(A)アノーサイトと、
(B)アルカリ成分とを含有し、
ここで、前記アルカリ成分の量が酸化物(AO)換算で、前記素地に対して5~10重量%であり、前記素地の閉気孔率が12~15容積%であることを特徴とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
衛生陶器および素地
本明細書において「衛生陶器」とは、トイレ及び洗面器、またその周辺で用いられる陶器製品を意味し、具体的には大便器、小便器、タンク、目皿(サナ)、洗面器、手洗器などを意味する。本発明による衛生陶器は、その材質がJIS A5207:2019の「7.1 材料の種類」に記載された陶器であって、かつ、「7.2 陶器の品質」に記載された諸特性を満たすものであることが好ましい。
【0025】
本発明による衛生陶器は、その素地が基本的には熔化素地質の陶器素地とされる。本明細書において、用語「熔化素地質の陶器素地」とは、衛生陶器に関する当業界において理解されている通常の意味を有し、したがって、本発明による衛生陶器の素地としての「熔化素地質の陶器素地」は後記する本発明による特徴を備えることを除き、通常の意味に理解される。
【0026】
本発明による衛生陶器における「熔化素地質の陶器素地」は、(A)アノーサイトと、(B)アルカリ成分とを含有し、このアルカリ成分の量は酸化物(AO)換算で、素地に対して5~10重量%とされ、好適には、5~8重量%であり、より好適には5~7重量%である。ここで、アルカリ成分とはLi、NaおよびKが好ましいものとして挙げられ、したがってその酸化物とはLiO、NaO、KOである。
【0027】
本発明による衛生陶器の素地は、さらに、その閉気孔により特徴付けられる。本明細書において、「閉気孔」とは、素地内部に存在する外気とつながっていない気孔を意味し、本発明の好ましい態様にあっては、後記する「閉気孔率」の測定方法に従い得られる閉気孔率が12~15容積%とされる。
【0028】
従来の知見によれば、衛生陶器のような大型の陶器製品において、アルカリ成分量が上記範囲にあることは、製品の強度および焼成中の変形等の点で不利であり、ふさわしくない量と通常は理解される。しかしながら、このような多量と考えられるアルカリ成分が(A)アノーサイトと共存された素地にあっては、低吸水性、低焼成収縮、低軟化変形を実現できる。さらに、気孔率を制御することにより高い強度と耐冷め割れ性をも兼ね備えることができ製品の軽量化も可能とした。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による衛生陶器の素地は、その吸水率によっても特徴付けられる。本明細書において、後記する「吸水率」の測定方法に従い得られる吸水率は2%未満であることが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による衛生陶器の素地は、その耐冷め割れ性によっても特徴付けられる。本明細書において、後記する「耐冷め割れ性」の測定方法に従い得られる耐冷め割れ性は120℃以上であることが好ましい。本発明において、耐冷め割れ性の測定は窯出口での製品温度と外気温度という製品に対して最も熱負荷が生じる状況において、全製品で冷め割れを生じない温度を想定している。また、本明細書において後記する「耐熱衝撃性」は様々な使用環境下で繰り返し熱応力がかかることによる劣化により特定の温度で製品が破壊する確率を想定している。
【0031】
本発明において、低吸水性であり、かつ軽量化された低軟化変形性、低焼成収縮性、高強度、耐冷め割れ性を有する衛生陶器が実現される理由については定かではないが、以下の理論が考えられる。この理論はあくまで仮説であって、この理論により本発明が拘束されることはない。
【0032】
一つの理論として、素地において、900℃~1000℃でアノーサイトが生成するときに生じる気孔が最高焼成温度まで保持され、その後開気孔を閉塞させることができたとする以下の理論が考えらえる。
【0033】
カオリンを含む熔化質素地を昇温していくと、まず、カオリンの脱水反応でメタカオリンが生成する。素地原料として石灰石を配合しておくと、900~1000℃で、メタカオリンと石灰石が反応し、アノーサイト(CaAl2Si2O8)が生成する。
Al2O3・2SiO2 + CaCO3 → CaAl2Si2O8 + CO2・・・(1)
このときに、石灰石が消費される部分が気孔になり、気孔の周囲にアノーサイトが生成される。
【0034】
通常の衛生陶器素地の場合は、1000℃以上でメタカオリンが分解してムライトとSiOガラスが生成する。その分、閉気孔量が低減するとともに、最高温度におけるフラックス成分が増加してしまう可能性がある。
3(Al2O3・2SiO2) → 3Al2O3・2SiO2 + 4 SiO2・・・(2)
【0035】
しかし、昇温中のより低い温度で生じるアノーサイト生成反応(反応式(1))で、メタカオリンを消費してしまうことで、反応式(2)は生じず、ムライトおよびSiOガラスは生成せず、かつ、アノーサイト生成反応で生じた気孔はそのまま残存しやすくなると思われる。
【0036】
このようにして、熔化反応が生じる1100~1200℃の最高焼成温度までの気孔量が最大化され、熔化反応では、昇温中の増量を抑制した比較的少量のガラスの粘性を、高アルカリ成分にすることで低めて流動性を向上させて、確実に開気孔を閉塞させることができたものと考えられる。熔化反応で長石からガラスを生じた際に、長石の存在していた箇所に残された空間は周囲のアノーサイトにより固定されており、軟化したガラス中でも押しつぶされることなく残り続け外部に移動しないため焼成収縮を抑制できる。また、アノーサイトが骨格となり素地全体を支えているため流動性の高いガラスにおいても軟化変形の影響も受けにくい。この結果、開気孔が閉塞するとともに、多量の閉気孔も残存させることができ、優れた低吸水性、低軟化変形性、低焼成収縮性が実現されたものと考えられる。また、閉気孔が多いほど軽量化が可能であるが、閉気孔はクラックの起点となるため、素地に対する割合が多い場合には低強度化や冷め割れの発生の増加につながる。しかし、閉気孔率を制御することにより、軽量性かつ高強度、耐冷め割れ性も有した素地の実現を可能とした。
【0037】
アノーサイトの生成に寄与する原料として、石灰石の代わりに、ワラストナイトなどの、カルシウム(Ca)を含有する原料を使用することができる。本発明において、カルシウムを含有する原料は、石灰石、ワラストナイト、ドロマイト、およびアパタイトからなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくは、石灰石、ワラストナイトのいずれかまたは双方である。これらのカルシウムを含有する原料は、900~1000℃で、メタカオリン(Al2O3・2SiO2)と反応して、アノーサイトが生成する。
【0038】
カルシウムを含有する原料としてワラストナイトを使用した場合、アノーサイトは次式(反応式(3))の反応によって生成すると考えられる。
Al2O3・2SiO2 + CaSiO3 → CaAl2Si2O8 +SiO2 ・・・(3)
アノーサイト生成の反応式(3)の反応においては、COガスを生成しないため、気孔の増加を伴わず、焼成過程での密度変化は小さい。また、反応式(3)の反応においては、余剰のSiOガラスが生成するため、この余剰のSiOガラスがその後の熔化反応で生成されるガラスとともに、開気孔を閉塞させることに寄与する。すなわち、カルシウムを含有する原料としてワラストナイトを使用した場合、石灰石を使用した場合と比べて、焼成後の素地は、閉気孔量は小さくなるが、焼成に伴う変形を小さくすることが可能となる点で有利である。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、アノーサイトの素地における量は10~45重量%が好ましく、より好ましくは10~31重量%であり、さらに好ましくは10~25重量%である。アノーサイトの量は、粉末解析法により得たX線回折パターンに対してリートベルト解析を行い、決定したスケール係数から各結晶相の存在量を推定することにより、求められる。詳細なアノーサイトの定量方法は、後述の実施例に記載されたとおりである。
【0040】
本発明の好ましい態様によれば、アルカリ成分の酸化物換算量は、素地に対して、5~10重量%であり、より好ましくは5~9重量%であり、さらに好ましくは5~8重量%である。また、閉気孔率は、より好ましい範囲は12~15容積%である。また、吸水率は好ましくは1%未満である。
【0041】
また、本発明の好ましい態様によれば、衛生陶器素地はカルシウムを、酸化物(CaO)換算で、3~10重量%含有し、好ましくは3~9重量%含有し、より好ましくは3~7重量%含有する。
【0042】
(C)成分:骨材
本発明による衛生陶器素地は、その強度の観点から骨材成分を含有していてもよい。骨材成分としては、通常、熔化素地質の陶器素地に添加される、焼成時に反応せず、焼成時の収縮や軟化変形を抑制するまたは焼成体の強度に影響を与える成分を利用できる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、骨材成分、すなわち(C)成分として、コランダム、シャモット、クオーツ、中空シリカ、中空アルミナ、ジルコニア、ジルコン、コージエライト、ムライトからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0044】
本発明にあっては、これら骨材成分を用いることで、以下のような利点が得られることが予想される。すなわち、上記のように、アノーサイト生成反応(反応式(1))でメタカオリンを消費させ、比較的多量にアノーサイトを生成させた場合、その反応温度域では、大きな収縮が生じる可能性がある。この収縮が生じると釉薬とのマッチングを損ねてしまう。ここで上記骨材は、上記反応式(1)に関与せず、かつ、熔化反応でフラックス成分を増加させにくい材料であることが見出された。したがって、これら骨材の利用は、低吸水性および軽量化の観点から有利である。さらに、本発明の好ましい態様によれば、これら骨材成分を用いることで、耐熱衝撃性に優れた衛生陶器を得ることができる。
【0045】
本発明において、骨材成分は、衛生陶器の研摩面を走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像、およびエネルギー分散型X線分析(EDX)の元素マッピングから、形状と成分を同定することができる。
【0046】
衛生陶器素地の原料および組成
衛生陶器素地となる原料は、組成を勘案して従来知られた原料から調製することができる。具体的には、珪砂・長石・石灰石・ワラストナイト・粘土・アルミナ・シャモットなど用いることができる。本発明による衛生陶器の素地の組成は、好ましくは下記であり、陶器素地原料を下記の組成となるように配合する。
SiO 40~65重量部
Al 20~50重量部
CaO 3~10重量部
MgO 0.1~1重量部
O 3~6重量部
NaO 0.5~5重量部
LiO 0~2重量部
【0047】
釉薬層
本発明による衛生陶器の釉薬層は限定されないが、本発明の好ましい態様によれば、釉薬層の組成は、酸化物に換算して以下に示される組成を備えるものが好ましい。
SiO 55~80重量部
Al 5~13重量部
Fe 0.1~0.4重量部
CaO 8~17重量部
MgO 0.8~3.0重量部
ZnO 3~8重量部
O 1~4重量部
NaO 0.5~2.5重量部
ZrO 0~15重量部
顔料 0~20重量部
【0048】
釉薬層の原料は、組成を勘案して従来知られた原料から調製することができる。例えば、珪砂・長石・石灰石・ドロマイト・アルミナ・亜鉛華・ジルコンなどが挙げられる。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、衛生陶器素地と釉薬層は、焼成後において、素地と釉薬層が互いに変形量において大きな相違がなく、衛生陶器の形状または表面の状態に悪影響を及ぼさない組み合わせであることが好ましい。
【0050】
この好ましい組み合せは、例えば、後記する実施例における釉薬とのマッチングは変形量で5mm以内である。また、本発明の別の態様によれば、素地の線膨張係数が釉薬の線膨張係数よりも5×10-7/K~10×10-7/K程度高いものであることが好ましい。
【0051】
衛生陶器の製造
本発明による衛生陶器は、上記した素地原料から調製した泥漿を、石膏等の型で鋳込み成形体を得て、これを乾燥した後、施釉し、焼成して得ることができる。本発明にあっては、上記したとおり、アノーサイトが生成するときに生じる気孔が最高焼成温度まで保持され、その後開気孔を閉塞させ素地中に特定量の閉気孔を残存させることにより良好な低吸水性、低焼成収縮性、低軟化変形性、高強度、耐冷め割れ性、そして軽量化が実現できることから、これら反応および現象が確実に生じるようその焼成条件を定めることが好ましい。本発明の一つの態様によれば、焼成は毎時200℃程度の昇温で、最高温度1180~1200℃において2時間保持して行うことが好ましい。
【0052】
本発明において定義される「吸水率」、「閉気孔率」、「焼成収縮率」、「軟化変形量」、「曲げ強度」および「耐冷め割れ性」の測定方法は以下のとおりである。
【0053】
吸水率
測定サンプルとして、7mm×8mm×70mmに成形または切り出した焼成体を用意する。このサンプルを110℃で24時間、乾燥させ、サンプル重量を測定して、これを乾燥重量とする。その後、サンプルを容器に入れ、真空ポンプにて20分間脱気する。真空を保った状態で蒸留水をサンプルの入った容器へ注入し、さらに60分間脱気する。大気開放し、サンプルを水につけ、引き上げサンプル表面の水を布等で取り除き、重量を測定する。これを吸水時の重量とする。吸水率を以下の計算式[数1]で算出する。
【0054】
【数1】
【0055】
閉気孔率
上記吸水率を得るため得られた数値から、見掛密度を以下の式[数2]で求める。
【0056】
【数2】
【0057】
さらに、「真密度」を以下のとおり測定した。すなわち、素地焼成体を、閉気孔を含まない程度まで粉砕し、その粉体の密度を、水を溶媒とし比重瓶を使用して測定した。これを素地の「真密度」とした.
【0058】
以上得られた見掛密度および真密度から、閉気孔率は下記の式[数3]で定義される。
【0059】
【数3】
【0060】
焼成収縮率
焼成前の素地を7mm×8mm×70mmに切り出して、成形体サンプルを用意した。この成形体サンプルの、中央部の長さを測定した。次にこのサンプルを焼成し、焼成後のサンプルの、中央部の長さを測定した。収縮量の差分から収縮率を算出した。
【0061】
軟化変形量
幅30mm、厚み10mm、長さ250mmの成形体のテストピースを、スパン200mmで保持した状態にて焼成し、焼成後のテストピース中央部の垂れ下がり量を測定し軟化変形の測定値とした。軟化変形の大きさは厚さの二乗に反比例するため10mmの厚さに換算した値を軟化変形量の値とした。
【0062】
曲げ強度
JIS A1509-4:2014に準じて曲げ強度を測定した。具体的には以下のとおりである。直方体サンプルとして、7mm×8mm×70mmに成形または切り出した焼成体を用意した。このサンプルの3点曲げ強度を測定した。測定条件は、スパン50mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minとした。
【0063】
丸棒サンプルとして直径14mm×150mmの焼成体を用意した。このサンプルの3点曲げ強度を測定した。測定条件は、スパン100mm、クロスヘッドスピード2.5mm/minとした。
【0064】
耐冷め割れ性
幅25mm厚み10mm長さ110mmの焼成体をテストピースとした。テストピースを所定温度に加熱し、その温度で1時間以上保持した後、水中に投入して急冷しクラックの発生をインクチェックにより確認した。急冷の温度差(加熱する所定温度と水の温度との差)を徐々に大きくし、テストピースにクラックが発生するまでこの操作を繰り返した。テストピースN数のうち1つ目にクラックが発生した急冷の温度差を、試験素地の耐冷め割れ性とした。
【実施例0065】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
衛生陶器の製造
原料
下記の表1に記載の原料を用意し、これらから表2に記載の組み合わせによって、表3に記載の組成となるよう混合し、必要に応じてボールミル等にて粉砕し衛生陶器素地原料とした。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表中、素地組成は、焼成した素地を粉砕し、蛍光X線分析装置(XRF)にてガラスビード法により測定した。ただし、素地組成中LiO量については、使用した原料(ペタライト)中のLiO量と配合量からの計算値を示した。
【0071】
釉薬として、以下の組成のものを用意し、上記衛生陶器素地に施釉し、表2に示される焼成温度を最高温度として焼成した。
【0072】
SiO 56.8重量部
Al 8.3重量部
Fe 0.1重量部
CaO 10.1重量部
MgO 1.1重量部
ZnO 5.1重量部
O 1.9重量部
NaO 1.4重量部
ZrO 5.6重量部
顔料 0.01重量部
【0073】
焼成して得られた衛生陶器の諸物性は下記表4に記載のとおりであった。
【0074】
【表4】
【0075】
表中、アルカリ金属酸化物総量は表3素地組成中の、LiO、NaO、KO成分の合計量を示す。
【0076】
また、含有鉱物の同定は、焼成した素地を粉砕し、その粉砕紛をディスク状にプレス成形したものを測定試料として、X線回折装置(XRD)による定性分析により行った。
【0077】
アノーサイト定量
アノーサイトの量は、粉末解析法により得たX線回折パターンに対してリートベルト解析を行い、決定したスケール係数から各結晶相の存在量を推定することにより求めた。具体的には、以下の手順による。
【0078】
前処理として、得られた素地を平均粒子径が10μm以下となるまで粉砕して粉末を得た。本例においては、タングステンカーバイド(WC)製の乳鉢および乳棒を用いた。なお、粉砕方法に制限はなく、一般的なボールミルや乳鉢などの粉砕用道具を使用してもよい。
【0079】
平均粒子径は以下の手順で測定した。
Malvern Panalytical社製の超音波式分散装置HYDRO LVを使用して、素地の粉末の水分散体を調製した。分散条件は以下に示すとおりとした。
・分散剤:なし
・周波数:40kHz
・照射時間:15秒
・測定開始までの休止時間:10秒
・ポンプ速度:3500rpm
【0080】
得られた水分散体を使用して、前記の平均粒子径を計測した。計測には、Malvern Panalytical社製 MASTERSIZER3000レーザー回折式粒子測定装置およびソフトウエアMASTERSIZER ver3.72を使用し、Mie理論に基づくレーザー回析・散乱法により、体積平均値を求めた。分散媒体の屈折率は1.33とした。
【0081】
次いで、前記粉末を使用してX線回折パターンを取得した。X線回折パターンは、Malvern Panalytical社製のX’Pertを用い、X線源CuKα線(波長 λ=0.15406nm)、回折角(2θ)10~60°、サンプリング幅0.02°の条件により取得された。得られた結晶相のX線回折ピークが大きいほど、定量の精度が高くなるとされているため、X線回折ピークの中で最も高いピークの強度が1万カウント以上となるように測定した。得られたX線回折ピークをソフトウエアHigh Score Plus (ver. 4.9)を用いて解析した。
【0082】
素地中に含有する結晶相は、前記条件にて取得したX線回折パターンを、ICDD(International Centre for Diffraction Data)のPDF(Powder Diffraction File)データと比較し、一致する結晶相を選定することによって同定した。
【0083】
同定された結晶相について、リートベルト解析を外部標準法によって行った。外部標準試料として用いる物質は、純度99.99%以上のAl2O3を使用した。この外部標準試料から前記粉末と同一測定条件でX線回折パターンを取得し、COD(Crystallography Open Database)ファイルに従って、得られたX線回折の面積と比較して、その存在量(重量%)を算出し、これを基準とした。
【0084】
続いて、実施例および比較例の各素地について、X線回折データを取得し、同定された結晶相のみの回折パターンについて、各結晶相に対応したCODファイルを参照し、定量評価を行った。得られた各結晶相の総量(重量%)は100%に満たないため、100%から各結晶相の総量を減じた量をガラス相(非晶相)の定量値(重量%)とした。
【0085】
バックグランドの処理、Kα2やKβによる回折ピークやスムージングなどの定量化に必要なX線回折パターンの処理などは、“HighScore Plus”ソフトによって実施した。
【0086】
また、表中の「吸水率」および「閉気孔率」、「焼成収縮率」、「軟化変形量」、「曲げ強度」は上述の測定方法のとおり測定し、さらに「嵩密度」、「釉薬とのマッチング」、「耐熱衝撃性」の測定は、以下のとおりとした。
【0087】
嵩密度
JIS R1634:1988 ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法に準じて測定した。
【0088】
釉薬とのマッチング
まず、衛生陶器素地原料を成形し、20mm×8mm×150mmのテストピースを用意した。この試験片の一面に、釉薬を0.6~0.7mmの厚さで施釉し、厚み8mm×長さ150mm面(側面)を下にし、焼成した。焼成後、未施釉面側の中央部の反りを、長さ方向を基準とし計測し、その反り量を変形量とした。
【0089】
耐熱衝撃性
幅25mm厚み10mm長さ110mmの焼成体をテストピースとした。テストピースを所定温度に加熱し、その温度で1時間以上保持した後、水中に投入して急冷しクラックの発生をインクチェックにより確認した。急冷の温度差(加熱する所定温度と水の温度との差)を徐々に大きくし、テストピースにクラックが発生するまでこの操作を繰り返した。テストピースのN数の50%にクラックが発生する急冷の温度差を、試験素地の耐熱衝撃性とした。