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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048094
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】燃料導入ノズル
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20230330BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20230330BHJP
   F02M 26/07 20160101ALI20230330BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20230330BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F02M21/02 S
F02M21/02 N
F02M26/22
F02M26/07 301
F02D19/02 D
F02D21/08 311B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079844
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】21199154.2
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シュナイター
(72)【発明者】
【氏名】フリドリン ウンフグ
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062EA10
3G062ED02
3G062ED06
3G062ED08
3G092AB06
3G092AB12
3G092AC10
3G092FA50
(57)【要約】
【課題】燃料導入ノズルを備える内燃機関100、燃料導入ノズル、及び、内燃機関の燃焼室に燃料ガスを供給する方法、並びに、燃料導入ノズルの製造方法を提供すること。
【解決手段】内燃機関100は、少なくとも1つのシリンダ1を有しており、すなわち、少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1つのシリンダ1を有する大型船舶エンジン、好ましくは、シリンダ1を有する低圧燃料ガス・エンジン又はデュアル・フューエル・エンジンである。内燃機関100は、シリンダ壁2を通って低圧燃料流体をシリンダ1内に直接噴射するための少なくとも1つの燃料導入ノズル10を有する。燃料導入ノズル10は、燃料供給導管21に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの燃料流体供給ライン11と、不活性ガス供給導管22に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの不活性ガス供給ライン12とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ(1)を有する内燃機関(100)、すなわち、少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1つのシリンダ(1)を備えた大型船舶エンジン、好ましくは、シリンダ(1)を備えた低圧燃料ガス・エンジン又はデュアル・フューエル・エンジンであって、
シリンダ壁(2)を通って低圧燃料流体を前記シリンダ(1)内に直接噴射するための少なくとも1つの燃料流体導入ノズル(10)を有する前記内燃機関(100)において、
前記燃料導入ノズル(10)が、
燃料供給導管(21)に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの燃料流体供給ライン(11)と、
不活性ガス供給導管(22)に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)と、
を備えることを特徴とする、内燃機関(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの不活性ガス供給導管(22)のうちの少なくとも1つが、排気ガスを供給する供給導管であり、及び/又は、
前記少なくとも1つの不活性ガス供給導管(22)のうちの少なくとも1つが、N、CO又はアルゴンを供給する供給導管である、請求項1に記載の内燃機関(100)。
【請求項3】
前記内燃機関(100)が、排気出口(24)と空気取入口(25)との間に配置されたEGR経路(23)を有する排気ガス再循環のためのシステム(1)を備え、前記少なくとも1つの不活性ガス供給導管(22)が前記EGR経路(23)に流体接続され、その結果、再循環排気ガスの一部は、前記流体燃料導入ノズル(10)を介して前記シリンダ(1)内に導入可能である、請求項1又は2に記載の内燃機関(100)。
【請求項4】
前記不活性ガス供給ライン(11)は、前記不活性ガスが前記燃料流体供給ライン(12)の周りを流れることができるように前記流体燃料導入ノズルに配置され、又は、前記燃料流体供給ライン(12)は、燃料流体が前記不活性ガス供給ライン(11)の周りを流れることができるように前記流体燃料導入ノズル(10)に配置される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)の断面積が、前記少なくとも燃料流体供給ライン(11)の断面積と等しいか、又は前記少なくとも燃料流体供給ライン(11)の前記断面積よりも最大で7倍大きい、請求項1から4までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの燃料流体供給ライン(11)及び前記少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)が、前記燃料流体導入ノズル(10)内で合流し、前記燃料流体導入ノズル(10)が、好ましくは、1つの出口(13)のみを備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)。
【請求項7】
前記燃料流体導入ノズル(10)が、追加の冷却手段、好ましくは、冷却流体を導くための少なくとも1つの流路(14)を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)。
【請求項8】
前記内燃機関(100)が、好ましくは、不活性ガス供給導管(22)の上流に配置された不活性ガスを冷却するための冷却装置を備える、請求項1から7までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)。
【請求項9】
燃料供給導管(21)に接続可能な少なくとも1つの燃料流体供給ライン(11)と、不活性ガス供給導管(22)に接続可能な少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)とを備える、請求項1から8までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)のシリンダ(1)用の燃料流体導入ノズル(10)。
【請求項10】
前記燃料流体供給ライン(11)が、液状流体の気化を可能にするように設計されている、請求項9に記載の燃料流体導入ノズル(10)。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の燃料流体導入ノズル(10)を使用して、請求項1から8までのいずれか一項に記載の内燃機関(100)の燃焼室()に燃料流体を供給するための方法であって、燃料流体の導入中に、不活性ガスが前記シリンダ(1)内に導入され、前記燃料流体が前記不活性ガスを冷却し、前記燃料流体が、好ましくは気化し、より好ましくは前記燃料流体導入ノズル(10)内で気化する、方法。
【請求項12】
再循環排気ガスの第1の一部が、不活性ガスとして、前記燃料導入ノズル(10)の少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)に導かれ、再循環排気ガスの第2の一部が、前記内燃機関(100)の空気取入口(25)に導かれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記不活性ガスが、導入時に、少なくとも150℃~350℃冷却され、及び/又は前記燃料流体が140℃~190℃加熱される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃料流体導入ノズル(4)が、3Dプリント工程によって製造されるか、又は、
前記燃料流体供給ライン(11)及び前記少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(12)が、浸食法、レーザ法、穿孔、又はフライス加工によって、ノズル本体(15)内に形成される、請求項9又は10に記載の燃料流体導入ノズル(4)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料導入ノズルを備える内燃機関、燃料導入ノズル、及び、内燃機関の燃焼室に燃料ガスを供給する方法、並びに、燃料導入ノズルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、大型の船舶用エンジン又は定置式エンジンのような内燃機関に関し、そのシリンダは、少なくとも200mmの内径を有する。エンジンは、好ましくは、2ストローク・エンジン又は2ストローク・クロスヘッド・エンジンである。エンジンは、ガス・エンジン、デュアル・フューエル・エンジン、又はマルチ・フューエル・エンジンであってもよい。このようなエンジンでは、液体燃料及び/又は気体燃料の燃焼が可能であり、自己着火又は強制点火も可能である。
【0003】
内燃機関という用語は、特にデュアル・フューエル・エンジン、第1の燃料の自己着火及び燃焼が第2の燃料のポジティブ点火に利用される大型エンジンを含む。
【0004】
内燃機関という用語はまた、点火プラグによって点火される純ガス・エンジンを含む。
【0005】
エンジンは、ピストンを有する少なくとも1つのシリンダを有する。ピストンは、クランク軸に接続される。ピストンは、エンジンの運転中に上死点(TDC:top dead center)と下死点(BDC:bottom dead center)との間で往復運動する。シリンダは、通常、吸気用の少なくとも1つの空気通路開口部であって、特にシリンダのライナに配置される空気取入口と、排気用の少なくとも1つの空気通路開口部であって、特にシリンダのカバーに配置された排気出口とを有する。
【0006】
空気取入口は、新鮮な空気及び排気ガスの混合物を掃気ガスとして吸入するために使用することができる。
【0007】
内燃機関は、縦型フラッシュ式2ストローク・エンジンであってもよい。
【0008】
エンジン回転数は、800RPM未満(4ストローク)が好ましく、低速エンジンの指定を示す200RPM未満(2ストローク)がより好ましい。
【0009】
燃料ガスは、液化天然ガス(LNG:liquid natural gas)、液化石油ガス(LPG:liquid petrol gas)、メタノール又はエタノールなどのようなガスであってもよい。要求に応じてさらに追加可能な燃料は、液化バイオガス(LBG:Liquified Biogas)、生物燃料(例えば、藻類燃料又は海藻油)、水素又はアンモニア、及び合成燃料(例えば、パワー・トゥ・ガス又はパワー・トゥ・リキッドによって作られる)である。
【0010】
内燃機関は、ディーゼル油、船舶用ディーゼル油、重質燃料油、エマルション、又は、スラリーによって代替的に駆動することが可能である。
【0011】
大型船、特に商品を輸送する船は、通常、内燃機関によって、特にガス・エンジン及び/又はデュアル・フューエル・エンジン、ほとんどが2ストロークのクロスヘッド・エンジンによって動く。重質燃料油、船舶用ディーゼル油、ディーゼル又は他の液体のような液体燃料の場合だけでなく、LNG、LPG又はその他のような気体燃料の場合も、エンジンによって燃焼され、この燃焼過程から生じる排気は、国際海事機関第3次規制(IMO Tier III)などの現行の汚染物質の規則に適合させるために浄化する必要がある。
【0012】
排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)は、ディーゼル・エンジンでの窒素化合物(NOx)の低減及びTier III規制を実現するためだけでなく、ガス又はデュアル・フューエル・エンジンでの過早着火及びノッキングを制御するための技術でもある。
【0013】
燃焼を安定化させるために、再循環排気ガスを冷却することが好都合である。例えば、欧州特許出願第21184689.4号に開示されているように、内燃機関は、排気ガス冷却器を備えていてもよい。冷却器には、チューブ式とフィン式とがあり得る。排気ガスは、フィンに接触することができ、排気ガスからの熱は、チューブで導くことができる冷却媒体に伝達することができる。再循環排気ガスを十分に冷却するための適切な冷却器は、船舶に搭載するのが困難な可能性のある体積を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第21184689.4号
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、従来技術の欠点をなくすことであり、特に、内燃機関と、従来技術の解決策よりも経済的に内燃機関の燃焼室に燃料流体を供給する方法とを提供することである。
【0016】
この目的は、独立請求項に記載の内燃機関と、内燃機関を運転する方法とによって達成される。
【0017】
内燃機関は、少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1つのシリンダを有する。内燃機関は、大型船舶用エンジン又は定置式エンジンである。
【0018】
内燃機関は、低圧燃料ガス・エンジン又はデュアル・フューエル・エンジンであってもよい。したがって、エンジンは、ガス運転モードと、液体燃料運転モードとを含んでいてもよい。
【0019】
少なくとも1つのシリンダは、少なくとも1つの排気出口を有していてもよい。排出弁は、排気出口内に配置されていてもよい。内燃機関は、シリンダから排気ガスを排出するための排気出口を介してシリンダに接続された排気ガス・レシーバを含んでいてもよい。排気ガス・レシーバは、複数のシリンダから排気ガスを収集することができる。
【0020】
内燃機関は、さらに掃気ガス・レシーバを備えていてもよい。掃気ガスは、シリンダ壁内の掃気口を介してシリンダに入ることができる。掃気口は、シリンダの下部に配置することができ、長手方向のフラッシングを提供することができる。掃気口は、シリンダ・ライナと一体化されていてもよく、少なくとも1つの排気弁がシリンダ・ヘッドに配置されるとともに、ピストンの動きによって制御されてもよい。
【0021】
少なくとも1つのシリンダは、シリンダ壁を通って低圧燃料流体をシリンダ内に直接噴射するための少なくとも1つの燃料導入ノズルを有する。好ましくは、シリンダは、2つの燃料導入ノズルを備える。例えば、少なくとも1つの燃料導入ノズルは、シリンダ・ライナ内に配置される。
【0022】
燃料導入ノズルは、燃料供給導管に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの燃料流体供給ラインと、不活性ガス供給導管に流体接続された、又は接続可能な、少なくとも1つの不活性ガス供給ラインとを備える。
【0023】
燃料流体は、極低温液体、非極低温液体、又は非極低温ガスであってもよい。LNGなどの流体燃料は、通常、加圧容器に液体として貯蔵される。
【0024】
流体燃料は、極低温液体、非極低温液体の形態で、及び/又は非極低温ガスとして、燃料導入ノズルに、及び/又は燃料導入ノズル内に導かれ得る。燃料液体は、燃料導入ノズルに向かう途中で、及び/又は燃料導入ノズル内で、及び/又はシリンダ内で、気化する場合がある。
【0025】
燃料供給導管は、特に、液体天然ガス供給導管である。燃料供給導管はまた、例えば、周囲温度で、非極低温液体及び/又は非極低温ガスを導くための導管であってもよい。
【0026】
通常、燃料流体の温度は、周囲温度よりもはるかに低い。不活性ガスの温度は、周囲温度と等しいか、又は周囲温度よりも高い。燃料導入ノズルは、燃料導入ノズル内及び/又は燃料導入ノズルの前方で、燃料流体と不活性ガスとの間の熱交換を提供することができる。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つの燃料導入ノズルは、空気取入口の上方及び排気弁の下方のシリンダ壁に配置される。
【0028】
空気取入口は、ハーフ・ストローク以下の高さに配置してもよい。空気取入口は、ハーフ・ストロークの高さよりもピストン・ストロークの下死点に近い高さに配置してもよい。
【0029】
長手方向フラッシュ式2ストローク・エンジンの場合、排気ガスとともに天然ガスを導入するために、シリンダ壁内、好ましくはシリンダ・ライナ内に燃料導入ノズルを配置することによって、燃料の質量分率がより高いシリンダ内の場所に、より高い質量分率の排気ガスを引き入れることが可能になる。これにより、反応プロセスを遅らせるために最も必要とされるシリンダ内に排気ガスを入れることができる。
【0030】
少なくとも1つの不活性ガス供給導管のうちの少なくとも1つは、排気ガスを供給する供給導管であってもよい。この場合、不活性ガス供給導管は、排気ガスの供給源、典型的には、EGR経路に流体接続されている。
【0031】
さらに又は代わりに、少なくとも1つの不活性ガス供給導管のうちの少なくとも1つは、N、CO又はアルゴンを供給する供給導管であってもよい。この場合、不活性ガス供給導管は、N、CO又はアルゴンの供給源に流体接続している。
【0032】
燃料供給導管及び/又は不活性ガス供給導管は、調整可能な弁を備えることができる。内燃機関は、それぞれの弁を調節してそれぞれの流量を調節することにより、燃料及び/又は不活性ガスの量を制御するように構成することができる制御ユニットを備えていてもよい。燃料及び/又は不活性ガスは、燃焼サイクルの所定のクランク角の間のみ供給することができる。燃料の量と不活性ガスの量との比率は、エンジンの負荷及び他のエンジン・パラメータ、並びに周囲条件によって異なっていてもよい。
【0033】
内燃機関は、EGR経路を有する排気ガス再循環のためのシステムを備えることができる。通常、排気ガス再循環システムのEGR経路は、シリンダの排気出口からシリンダの空気取入口に、例えば、掃気レシーバを通る掃気口につながる。
【0034】
少なくとも1つの不活性ガス供給導管は、EGR経路に流体接続することができ、その結果、再循環排気ガスの一部は、燃料導入ノズルを通ってシリンダ内に導入可能である。
【0035】
内燃機関は、好ましくは、タービンと圧縮機とを有する少なくとも1つのターボチャージャをさらに備える。
【0036】
排気ガス再循環のためのシステムは、低圧システムであってもよく、再循環排気ガスは、ターボチャージャのタービンを通って導入可能である。再循環排気ガスは、ターボチャージャの圧縮機を介してシリンダの空気取入口に導入可能である。低圧のEGRシステムでは、ターボチャージャは、EGR経路に配置され、その結果、再循環排気ガスは、ターボチャージャを駆動するのに役立つ。
【0037】
シリンダの排気出口からシリンダの空気取入口につながるEGR経路は、ターボチャージャのタービンを含み、ターボチャージャの圧縮機も含み得る。通常、排気ガスは、新鮮な空気と混合されたターボチャージャによって、シリンダの空気取入口に導入可能である。したがって、ターボチャージャの圧縮機は、再循環される排気ガスと新鮮な空気とを吸い込む。
【0038】
通常、EGR経路は、好ましくはターボチャージャのタービンの下流にある接合部を備え、そこから、排気ガスを、好ましくはターボチャージャの圧縮機へ、シリンダの空気取入口に向かって、又は、排気ガスの通風筒に向かって導くことができる。
【0039】
或いは、排気ガス再循環のためのシステムは、高圧システムであってもよく、排気ガスは、圧縮機を通ることなく、好ましくは、ターボチャージャのタービンを通ることなく、シリンダの空気取入口に導かれる。排気ガス送風機は、EGR経路内に配置することができる。
【0040】
EGR経路は、不活性ガス供給導管が一部の再循環排気ガスを流体燃料導入ノズルの不活性ガス供給ラインに導くためにメインのEGR経路から分岐するように、二股に分かれていてもよい。再循環排気ガスのさらなる一部は、空気取入口に導くことができる。
【0041】
EGR経路は、排気ガス冷却器を備えていてもよく、デミスタを備えていてもよい。好ましくは、不活性ガス供給導管は、排気ガス冷却器の上流でEGR経路から分岐する。
【0042】
したがって、排気ガス冷却器を通って導かれる必要があるのは、再循環される排気ガスの全量ではない。排気ガス冷却器は、排気ガスの量が再循環される合計量よりも少ないように構成されていてもよい。
【0043】
不活性ガス供給導管は、燃料流体と同様の圧力まで、例えば、10~15バールまで不活性ガスを加圧するための圧縮機を含んでいてもよい。
【0044】
不活性ガスの供給は、燃料流体の圧力より低い圧力で流体燃料導入ノズルに供給することができる。この場合、供給量は、より多くなければならないが、それは、供給時間をより長くするか、又は供給断面をより大きくすることによって達成され得る。
【0045】
制御ユニットは、空気取入口へ再循環された排気ガスの量及び流体燃料導入ノズルへ導かれた排気ガスの量を制御するように構成されてもよい。その量は、不活性ガス供給導管に配置された弁を調節することにより、及び/又は、不活性ガス供給導管に配置された圧縮機の電力を調節することにより制御することができる。
【0046】
不活性ガス供給ラインは、不活性ガスが燃料流体供給ラインの周りを流れることができるように燃料導入ノズルに配置することができる。
【0047】
或いは、燃料流体供給ラインは、燃料流体が不活性ガス供給ラインの周りを流れることができるように流体燃料導入ノズルに配置することができる。
【0048】
中央の供給ラインは、同心円状に配置された複数の供給ラインによって、又は、環状及び同心円状に配置された1本の供給ラインによって囲まれていてもよい。
【0049】
燃料流体供給ライン及び不活性ガス供給ラインの配置によって、ノズル内での燃料と不活性ガスとの間の熱交換、及び、ノズルのちょうど外側のシリンダ内で起こり得る燃料と不活性ガスとの混合が促進される。
【0050】
少なくとも1つの燃料流体供給ライン、及び少なくとも1つの不活性ガス供給ラインは、燃料導入ノズル内で合流することができ、その結果、燃料流体及び不活性ガスは、ノズル内で混合される。燃料導入ノズルは、好ましくは、1つの出口のみを備える。
【0051】
少なくとも1つの不活性ガス供給ラインの断面積は、少なくとも燃料流体供給ラインの断面積と等しくてもよく、又は、少なくとも燃料流体供給ラインの断面積よりも最大で7倍大きくてもよい。
【0052】
この文脈では、断面積とは、供給ライン内の流れ方向に垂直な断面積、好ましくは、燃料導入ノズルの入口での断面積を意味している。
【0053】
導入された燃料流体及び不活性ガスの圧力が同様だと仮定すると、断面積の比率によって、燃料流体及び不活性ガスの量を適切な比率にして、混合物の目標温度を達成すること、特に燃焼を安定化させるシリンダ内の排気ガスの温度を達成することが確実になる。
【0054】
通常、燃料流体は加熱され、不活性ガスは、約40℃の温度に冷却される。
【0055】
燃料導入ノズルは、追加の冷却手段、好ましくは、冷却流体を導くための少なくとも1つの流路を含んでいてもよい。
【0056】
流体燃料導入ノズルは、多孔ベンチュリ・ノズル、例えば、6孔ベンチュリ・ミキサであってもよく、燃料流体は主入口を通ってミキサに入り、排気ガスは、ベンチュリ・ミキサを通る燃料流体流れに対して90度の角度でスロートに配置された導入孔を通って入る。導入孔は、スロートの最も狭い部分の周囲に等間隔に配置されてもよい。
【0057】
内燃機関は、好ましくは、不活性ガス供給導管の上流に配置された、不活性ガスを冷却するための冷却装置を備えていてもよい。冷却装置では、不活性ガス、例えば排気ガスは、燃料導入ノズルに到達する前及び流体燃料に接触する前に予冷してもよい。
【0058】
したがって、燃料と不活性ガスとの間の温度差は小さくなり、その結果、より多くの不活性ガスが燃料導入ノズルを通って導かれ、目標温度に到達することができる。空気取入口に導かれる排気ガスの量は、減少する。したがって、空気取入口に導かれる排気ガスを冷却するための排気ガス冷却器のサイズは、より小さいものが選ばれてもよい。
【0059】
冷却装置は、EGR経路内に配置された排気ガス冷却器によって、又は、排気ガス冷却器の一部によって形成することができ、その結果、不活性ガス供給導管は、排気ガス冷却器の下流又は排気ガス冷却器の一部の下流でEGR経路から分岐する。
【0060】
本発明の目的はまた、上述した内燃機関のシリンダ用の燃料導入ノズルによって達成される。
【0061】
燃料導入ノズルは、燃料流体供給導管に接続可能な少なくとも1つの燃料流体供給ラインと、不活性ガス供給導管と接続可能な少なくとも1つの不活性ガス供給ラインとを備える。
【0062】
燃料流体供給ラインは、液体ガスの気化を可能にするように、又は促進するように設計され得る。燃料流体供給ラインは、フレア状であってもよい。
【0063】
燃料流体供給ライン及び不活性ガス供給ラインは、円形状の断面を有するボアとして形成することができる。燃料流体供給ラインの断面は、少なくとも燃料導入ノズルの入口側で、10~40mmの直径、特に20mm又は38mmの直径を有していてもよい。
【0064】
燃料流体供給ラインの断面とシリンダ当たりのストローク容積との比率は、0.3mm/dm~1.2mm/dmの間、好ましくは、0.4mm/dm~0.8mm/dmの間であってもよい。
【0065】
燃料流体供給ラインと同じ断面を有する不活性ガス供給ラインは、1つから7つあってもよい。
【0066】
燃料流体供給ラインの断面と等しい断面、又は燃料流体供給ラインの断面の最大で7倍の断面を有する不活性ガス供給ラインがさらに1つあってもよい。
【0067】
本発明の目的はまた、上述した燃料導入ノズルを使用して、上述した内燃機関の燃焼室に燃料流体を供給するための方法によって達成される。燃料流体の導入の間、排気ガス、N、CO又はアルゴンなどの不活性ガスは、シリンダ内に導入され、燃料流体は不活性ガスを冷却する。好ましくは、燃料流体は、より好ましくは燃料導入ノズル内で気化する。
【0068】
燃焼室の中身又は供給された燃料と不活性ガスとの混合物の点火性は、減少する。
【0069】
燃料流体及び不活性ガスは、同じ燃料導入ノズルによってシリンダ内に導入される。
【0070】
好ましくは、冷却される不活性ガスは、燃料流体との組み合わせでのみ流れる。したがって、燃料導入ノズルの閉まっている間の滞留時間によって、冷却効果が高まる可能性がある。
【0071】
不活性ガスは、EGR経路から取り込むことができる。
【0072】
再循環排気ガスの第1の一部は、不活性ガスとして燃料導入ノズルの少なくとも1つの不活性ガス供給ラインに導くことができ、再循環排気ガスの第2の一部は、内燃機関の空気取入口に導くことができる。
【0073】
上述した内燃機関を運転するために、シリンダ内に再循環された排気の総量の第1の一部は、上述した燃料導入ノズルによって加えられたときに、燃料流体によって冷却することができ、再循環排気ガスの第2の一部は、排気ガス冷却器内で冷却することができる。
【0074】
不活性ガスは、導入の間、少なくとも150℃~350℃冷却することができる。
【0075】
排気ガスは、通常、約240℃~460℃を有し、特にシリンダを出るときは370℃の温度を有する。タービンを通過後、排気は、負荷やターボチャージャの効率によるが、なおも約200℃~280℃の温度を有する。
【0076】
燃料流体は、導入の間、120℃~230℃、好ましくは140℃~190℃加熱されてもよい。
【0077】
極低温の燃料液は、約-162℃又はさらに低い温度を有していてもよく、非極低温の燃料ガスは、-100℃の温度を有していてもよい。混合物の目標温度は、通常、20℃~70℃の間、例えば40℃である。
【0078】
タービンの上流で分岐された再循環排気ガスを非極低温の燃料ガスによって冷却するとき、ほぼ等量の燃料ガス及び排気ガスが、例えば約40℃の混合温度を達成するために、シリンダに導かれなければならない。
【0079】
タービンの下流で分岐された再循環排気ガスを極低温の燃料液によって冷却するとき、シリンダに導かれる排気ガスの量は、例えば約40℃の混合温度を達成するために、極低温の燃料液の量のほぼ7倍でなければならない。
【0080】
排気ガス冷却器の電力は、排気ガスが燃料導入ノズルにどれだけ分岐されるかによって、5%~最大35%まで削減することができる。したがって、より小さな排気ガス冷却器を使用することによって、船舶のエンジン・ルームを省スペース化することができる。
【0081】
本発明の目的はまた、上述した燃料導入ノズルを製造する方法によって達成され、燃料導入ノズルは、3Dプリント工程などの積層工程によって製造される。
【0082】
積層工程により、燃料流体と不活性ガスとの熱伝導及び混合を促進する複雑な幾何学的形状が可能になる。
【0083】
代わりに又はさらに、燃料流体供給ライン及び少なくとも1つの不活性ガス供給ラインは、浸食法、レーザ法、穿孔、又はフライス加工によって、ノズル本体内に形成される。
【0084】
以下では、本発明は、図面を用いて実施例でさらに説明される。同じ参照番号は、機能的に対応する特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】燃焼機関の第1の実例の概略図を示す。
図2】燃料導入ノズルの第1の実例の概略図を断面図で示す。
図3】燃料導入ノズルの第2の実例の概略図を断面図で示す。
図4】燃料導入ノズルの第3の実例の概略図を断面図で示す。
図5】燃焼機関の第2の実例の概略図を示す。
図6】燃焼機関の第3の実例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1は、ピストン3及び出口弁4を備えたシリンダ1を有する大型内燃機関100の第1の実例の概略図を示す。内燃機関100は、シリンダ壁2を通って、ここではシリンダ・ライナを通って、低圧燃料流体をシリンダ内に直接噴射するための燃料導入ノズル10を備える。
【0087】
燃料導入ノズル10は、燃料供給導管21に流体接続した燃料流体供給ライン11を備える。燃料供給導管は、燃料液容器37(図4、5参照)に流体接続することができる。
【0088】
燃料導入ノズル10は、不活性ガス供給導管22に流体接続された不活性ガス供給ライン12を備える。
【0089】
図2は、燃料導入ノズル10の第1の実例の概略図を断面図で示す。燃料流体供給ライン11は、液状流体の気化を促進するために出口13に向かってフレア状になっている。
【0090】
燃料導入ノズル10は、冷却流体を導くために、且つ、不活性ガスをさらに冷却するために、ノズル本体15に配置された流路14を備える。
【0091】
図3は、燃料導入ノズル10の第2の実例の概略図を断面図で示す。
【0092】
燃料流体供給ライン11及び不活性ガス供給ライン12は、ノズル本体15内で合流する。不活性ガス及び燃料流体は、燃料導入ノズル10内で混ざる。
【0093】
燃料導入ノズル10は、1つの出口13のみを備える。
【0094】
図4は、燃料導入ノズル10の第3の実例の概略図を断面図で示す。燃料導入ノズル10は、6孔ベンチュリ・ミキサである。
【0095】
燃料流体は、中央パイプ17の主入口16を通ってミキサに入ることができる。排気は、ベンチュリ・ミキサを通る燃料流体流れ18に対して90度の角度で中央パイプ17のスロート19に配置された6つの導入孔15を通って入ることができる。導入孔15は、スロート19の最も狭い部分の周囲に等間隔に配置される。
【0096】
図5は、シリンダ1を備える大型内燃機関100の第2の実例の概略図を示す。
【0097】
内燃機関100は、シリンダ1の排気出口24と空気取入口25との間に配置されたEGR経路23を有する排気ガス再循環のためのシステムを備える。
【0098】
内燃機関100は、タービン27と圧縮機28とを有するターボチャージャ26を備える。
【0099】
排気ガス再循環のためのシステムは、低圧のシステムであり、再循環排気ガスは、ターボチャージャ26の圧縮機28を経由してシリンダ1の空気取入口25に導入可能であり、排気ガスは新鮮な空気29と混合され、再循環排気ガスの少なくとも一部は、ターボチャージャ26のタービン27を通って導入可能である。
【0100】
排気ガスの別の一部は、ターボチャージャ26をバイパスすることができ、排気ウェイスト・ゲート・バルブ31が開くときにタービン・バイパス30を通って導かれる。
【0101】
再循環排気ガスの量は、EGR経路23と排気ガスの通風筒33との間に配置された背圧弁32を調節することによって制御することができる。
【0102】
排気ガスは、排気ガス・レシーバ34内で収集される。EGR経路23は、排気ガス冷却器35を備える。再循環排気ガス及び新鮮な空気は、掃気レシーバ36に導かれる。
【0103】
排気ガスを燃料導入ノズル10に導く不活性ガス供給導管22は、タービン27の下流で、且つ排気ガス冷却器35の上流でEGR経路23から分岐する。弁39を調節することにより、EGR経路23から分岐した排気ガスの量は、制御することができる。
【0104】
不活性ガス供給導管22は、燃料導入ノズル10に導かれた排気ガスを加圧するための圧縮機38を備える。
【0105】
燃料流体導管21は、容器37から燃料導入ノズル10に燃料液を導く。
【0106】
制御ユニット41は、不活性ガス供給導管22内で弁39を調節すること、及び燃料流体導管21内で弁40を調節することにより、燃料導入ノズル10に導かれた燃料及び/又は不活性ガスの量と、その導入タイミングとを制御する。
【0107】
図6は、低圧排気ガス再循環を伴う第2の実例と同様の大型内燃機関100の第3の実例の概略図を示す。
【0108】
この実例では、排気ガスを燃料導入ノズル10に導くための不活性ガス供給導管22は、タービン27の上流でEGR経路23から分岐する。
【0109】
この場合、ターボチャージャ26の上流の排気ガスの圧力が3.5バールで、その圧力は、燃料導入ノズル10内の燃料流体と同じ圧力に到達するために10~13バールに昇圧することができるので、不活性ガス供給導管22には、なおも圧縮機38が必要であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】